JP3603341B2 - 内燃機関の筒内状態検出装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関の燃焼室内(以下、気筒内、筒内とも言う)における着火の有無、着火時期、或いは混合気の空燃比等の状態を検出する筒内状態検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、機関の燃焼制御(空燃比制御、点火時期制御、燃料供給時期制御等)を最適化するためには、内燃機関の筒内状態(着火の有無、着火時期、空燃比等)を知ることが重要であり、このため、従来より、内燃機関の筒内状態を検出する装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開昭57−73647号公報には、内燃機関の気筒内に導入された混合気の着火の有無(具体的には、プレイグニッション)を検出する装置が開示されている。このものは、石英ガラス等で作られた光ファイバーによって燃焼室内の光をセンサに導き、検出される光の立上がりから着火を検出するようにしている。
【0004】
また、例えば、燃焼室内における燃焼光を検出することにより燃焼室内の混合気の空燃比(A/F)を測定する装置が知られており、特開平1−247740号公報に開示される空燃比検出装置では、点火栓に埋め込んだ光ファイバーによって燃焼光を取り出し、該取り出した燃焼光を光電変換し、火炎発光スペクトルに基づいて空燃比を検出する構成としてある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開昭57−73647号公報に開示されるのものでは、着火に伴い発生する極僅かな光量の立上がりを光ファイバーを介して検出する構成であるため、ノイズ等の影響を受け易い。また、着火光と点火栓によるスパーク放電光との判別も簡単ではなく、高精度な着火検出が困難である。なお、上記特開平1−247740号公報に開示のものも光ファイバーを介して燃焼室内の光を検出できる構成であることから、着火検出装置として機能させることも考えられるが、上記の特開昭57−73647号公報に開示されるのものと同様の問題がある。
【0006】
また、上記特開平1−247740号公報の空燃比検出装置は、光ファイバーによって検出される「着火後の比較的成長した燃焼光」を利用して空燃比を検出するものであるが故に、以下のような問題がある。
即ち、
図20に示すように、光ファイバーによって燃焼光が取り出される領域(ホロコーン領域)内では、光ファイバーの端面に近いA領域での発光と共に、前記端面から比較的遠いB領域での発光も全て取り出されることになる。
【0007】
ここで、前記A領域とB領域とでは、燃焼室内におけるガス流動によって空燃比が異なる場合があり、空燃比が異なれば火炎発光スペクトルが異なる。また、光ファイバー端面からの距離が異なれば、その強度は距離の二乗に反比例して変化する。
従って、光ファイバーで燃焼光を取り出す構成では、空燃比が異なり、また、距離の異なる領域での発光が混ざって取り出されることになり、例えば火花点火式機関における点火限界の決定因子である点火栓近傍のA領域の空燃比を正確に求めたくても、B領域の発光が影響して高精度な空燃比検出ができないという原理的な問題がある。
【0008】
このため、従来では、ホロコーン領域内では空燃比一定であると見做したり、火炎発光を取り込む時間を短くすることで測定ホロコーン領域を距離方向に狭めるなどして、燃焼光の取り出しによる空燃比検出を実現させている。
しかしながら、前述のようにホロコーン領域内の空燃比は一定とは限らないし、また、取込み時間を短くすれば取り出される光強度が低下し、結果的に測定精度が低下してしまうという問題があった。
【0009】
また、点火限界を決定する因子である点火栓近傍の空燃比は、燃料噴霧の粒径の他、噴射タイミングに強く依存して時系列的な変動を示す。従って、着火性向上のために点火時期における点火栓近傍の空燃比を制御するためには、点火前における点火栓近傍の空燃比を検出することが望まれるが、前記燃焼光に基づく空燃比検出では、点火前の空燃比を検出することができず、点火時期における点火栓近傍の空燃比を精度良く制御することができないという問題がある。
【0010】
このため、従来においては、気筒内における着火を高精度に検出できる装置はなく、また着火検出と空燃比検出とを同時かつ高精度に行える装置はなかった。従って、これら機関の筒内状態に基づいて高精度な機関の燃焼制御を行うことができなかった。
本発明は、かかる従来の実情に鑑みなされたものであり、高精度に着火検出、着火時期検出を行える内燃機関の筒内状態検出装置、及びこれらと同時に燃焼室内の空燃比をも点火前から高精度に検出することができる内燃機関の筒内状態検出装置を提供することを目的とし、延いてはこれら装置の検出結果に基づき機関の燃焼制御を最適化できるようにすることを目的とする。また、当該筒内状態検出装置の高精度化を図ることも目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1に記載にかかる内燃機関の筒内状態検出装置は、着火の検出を行うべく、図1に示すように、
内燃機関の燃焼室内に臨ませて発光側と受光側とからなる一対の光学素子を所定間隙をもって対向配置し、光源で発光した光を前記一対の光学素子を介して光電変換素子に導く透過光強度検出手段と、
前記透過光強度検出手段における前記光電変換素子の出力の変動に基づいて燃焼室内の着火を検出する着火検出手段と、
を含んで構成した。
【0012】
そして、請求項2に記載の発明では、着火時期を検出すべく、
機関のクランク角度を検出するクランク角検出手段と、前記着火検出手段の出力と、前記クランク角検出手段の出力と、に基づいて着火時期を検出する着火時期検出手段と、を含んで構成するようにした。
請求項3に記載の発明では、着火(或いは着火時期)の検出及び筒内の空燃比を検出すべく、請求項1に記載の発明の構成、或いは請求項2に記載の発明の構成に加えて、
機関の筒内圧を検出する筒内圧検出手段と、前記透過光強度検出手段における前記光電変換素子の出力と前記筒内圧検出手段で検出された筒内圧とに基づいて筒内の空燃比を検出する空燃比検出手段と、を含んで構成した。
【0013】
請求項4に記載の発明では、前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を、機関の点火栓に一体的に設けるようにした。
請求項5に記載の発明では、前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を、点火栓の火花間隙を挟む両側に配設するようにした。
請求項6に記載の発明では、前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を加熱する加熱手段と、機関運転条件に応じて前記加熱手段を選択的に動作させる加熱制御手段と、を設けるようにした。
【0014】
請求項7に記載の発明では、前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を加熱する加熱手段と、前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子に対する燃料の付着状態を検知する燃料付着検知手段と、該燃料付着検知手段で燃料の付着状態が検知されたときに前記加熱手段を動作させる加熱制御手段と、を設けるようにした。
【0015】
【作用】
かかる構成を備えた請求項1に記載の発明にかかる内燃機関の筒内状態検出装置によれば、前記透過光強度検出手段において、光源からの発光は、燃焼室内に臨む一対の光学素子の間隙を通って光電変換素子に導かれる構成であり、前記間隙を通るときに、かかる空間に存在する燃料によって減衰されることになる。そして、当該減衰は燃料濃度によって変化する一方、当該燃料濃度は着火により急激に希薄化するので、この減衰の仕方(即ち、燃料濃度の検出値の変動)を観察すれば、着火を検出できることになる。しかも、強制的に光源を用いて燃料に吸収されやすい波長の光を発光させるので、従来のような極僅かな光量の立上がりを検出するものに比べ、ノイズ等の影響を受け難くすることができる。更に、燃料に吸収されやすい透過光の波長と、スパーク放電光の波長とは異なるので、スパーク放電による影響も受けなくて済む。
【0016】
従って、高精度に着火の検出が行えるので、例えば、火花点火式機関におけるプレイグニションの検出が高精度に行え、延いては当該プレイグニションの発生防止制御(点火時期制御や空燃比制御)等を高精度に行えるようになる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明の構成に加えて、クランク角検出手段を備えて、着火時期を検出できるようにして、例えば火花点火式機関における着火遅れ期間(=着火時期−点火時期、図18参照)を高精度に検出できるようにする。これにより、例えば、実用機関における着火遅れ期間を低減して着火性を向上させて機関運転性を向上させるような空燃比制御や点火時期制御の高精度化や、点火栓の放電エネルギが最適となる着火遅れ期間が得られるような空燃比制御や点火時期制御が行なえるようになる。さらに、圧縮着火式機関における着火遅れ(燃料の噴射開始から着火するまでの期間、当該期間は予混合燃焼割合を決定するもので、NOx生成量や騒音に大きな影響を与える)の計測も可能であり、当該着火遅れ期間を縮小するような燃料噴射ポンプの噴射率の制御(即ち、着火し易い混合気を形成して着火遅れを短縮して予混合燃焼割合を低減するために、燃料噴射開始初期の噴霧の微粒化の促進、即ち、初期噴射圧力を増大させるような噴射率パターンの変更制御等)を効果的かつ高精度に行うことができるようになる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、筒内圧検出手段を備えたことで、以下のような作用を奏することができる。
即ち、
前記透過光強度検出手段において検出される透過光の減衰は、燃料濃度によって変化するが、このことは燃焼室内の圧力変化(換言すれば、燃焼室容積変化)によっても変化することになる。そこで、前記間隙を通った透過光が入射する光電変換素子の出力と筒内圧検出手段で検出された筒内圧とに基づいて、筒内圧の要因を除外して燃料濃度(空燃比)を検出できるようにした。従って、高精度な着火検出や着火時期検出と、当該高精度な空燃比検出との組み合わせによって、上述の空燃比制御や点火時期制御、或いは点火栓の放電エネルギの最適化制御が、より高精度に行なえるようになる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、燃焼室内における空燃比検出においては、特に、点火栓近傍の空燃比が点火限界に大きく影響するので、前記一対の光学素子を点火栓に一体的に設けることで、点火栓近傍での着火、着火時期、或いは空燃比を精度良く検出でき、また、部品構成、組付等を簡略化できるようにした。請求項5に記載の発明では、光路が点火栓ギャップを横切るように配設するので、着火性に大きな影響を与える場所で、最も高精度に、着火、着火時期、空燃比等を高精度に検出できることになり(プレイグニション等がなければ、通常、着火は、点火後、かかる点火栓ギャップ内で開始するからである)、延いては上述の空燃比制御や点火時期制御、或いは点火栓の放電エネルギの最適化制御が、より高精度に行なえるようになる。
【0019】
請求項6、請求項7に記載の発明では、前記一対の光学素子に液的燃料が付着すると、該付着燃料によって光が吸収されることによって燃料濃度を精度良く検出することができなくなる。そこで、前記一対の光学素子を加熱する加熱手段を設け、前記燃料付着が予測される機関運転条件のとき、又は、前記燃料付着状態を検知して、前記加熱手段を動作させ、光学素子に付着した燃料を早期に気化させることができるようにした。
【0020】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明する。
本実施例のシステム構成を示す図2において、内燃機関1の吸気ポート2には燃料噴射弁3が設けられており、図示しないエアクリーナ,スロットル弁を介して吸入される空気に対して前記燃料噴射弁3から間欠的に燃料が噴射供給されて混合気が形成される。
【0021】
そして、前記混合気は、吸気弁4を介して燃焼室5内に吸入され、点火栓6による火花点火によって着火燃焼する。
機関1からの排気は、図示しない排気弁,触媒,マフラーを介して大気中に排出される。
ここで、前記燃焼室5内の圧力(筒内圧)を検出する筒内圧センサ(筒内圧検出手段)7が設けられると共に、前記燃焼室5を構成するシリンダヘッド8に、点火栓6に一体に、かつ光路が点火栓ギャップを横切るように透過光強度検出手段を構成する円柱状の光学素子9が嵌挿・保持されている。なお、ここでは、前記光学素子9を点火栓6と一体として説明したが、これに限るものではなく、それぞれ別個に燃焼室に臨ませて設けるようにしてもよい。
【0022】
前記円柱状の光学素子9の燃焼室5内に臨む先端部には、図3に示すように、一対の光学素子(三角プリズム)10,11が一体的に設けられている。前記一対の光学素子10,11は、基体となる光学素子9の基端面側から入射し、光学素子9の軸方向に沿って燃焼室5内に向けて進む光ビームを、その先端に形成された光学面によって他方の光学素子11に向けて反射させる発光側の光学素子10と、該光学素子10に対して所定間隙を介して対向配置され、前記光学素子10で反射された光ビームをその先端に形成された光学面によって光学素子9に向けて反射させる受光側の光学素子11とからなる。
【0023】
即ち、前記光ビームは、前記一対の光学素子10,11によって燃焼室5内を経由しUターンして進む構成となっており、前記光ビームは、前記光学素子10から光学素子11に向けて進むときに、両者の間隙、即ち、燃焼室内の空間(ここでは、点火栓ギャップを通過する構成となっている)を通過することになり、吸入行程から点火までの燃焼室5内に混合気が存在する状態のときには、前記光学素子10,11を介して光ビームを混合気中に透過させることになる。
【0024】
尚、前記光学素子9,10,11の材料としては、石英やサファイヤなどを用いるが、耐熱,耐圧を考慮すると、サファイヤを用いることが好ましい。
図4及び図5は、前記光学素子9,10,11を、サファイヤロッド24,25により形成した例であるが、点火栓の中心電極23cを挟んで点火栓先端部に突出するように一体的に設けるようにし、サファイヤロッド24の先端側の45°光学面で反射したレーザ光が、中心電極23cと接地電極23dとの間の火花間隙を通ってサファイヤロッド25側に入射するようになっている。
【0025】
かかる構成によると、点火栓による着火性を左右する空燃比をより的確に検出することができ、燃焼室5内における空燃比ばらつきに影響されずに、高精度な空燃比制御が可能である。
尚、光学素子10,11(サファイヤロッド24,25)を点火栓6に対して一体的に設ける構成を上記に限定するものではない。但し、燃焼室5内における局所空燃比を検出させる場合には、点火栓6の火花間隙部の空燃比を検出させ、該検出結果に基づいて所期空燃比とすべく燃料噴射を制御させることが望まれるので、図4,図5に示したように、点火栓6の火花間隙を挟んで両側に光学素子10,11を配設し、燃焼室5内における光路が前記火花間隙を横切るようにすることが好ましい。
【0026】
前記光ビームとしては、使用するガソリン燃料が選択的に吸収する波長の光を用いる。具体的には赤外光であり、本実施例では、波長が赤外光領域に含まれる3.39μmのレーザ光を用いている。そして、かかるレーザ光を発するレーザ源(光源)12から出射されるレーザビームは、ミラーやプリズム等からなる光学素子13によって前記光学素子9の軸に平行な方向に屈曲され、光学素子9の基端面に対して直角に入射して進む。そして、前記一対の光学素子10,11によってUターンして再び光学素子9内を通り、基端面から直角に出射する。光学素子9から出射したレーザビームは、光学素子13によって光電変換素子14に向けて屈曲されて、前記光電変換素子14に入射する。
【0027】
上記のレーザ源12、光学素子9,10,11(24,25),13、光電変換素子14によって本実施例の透過光強度検出手段が構成される。
前記光電変換素子14の出力及び筒内圧センサ7からの検出信号は、前記燃料噴射弁3による燃料噴射を制御するためのマイクロコンピュータを内蔵したコントロールユニット15に入力される。空燃比検出手段として機能するコントロールユニット15は、これらの検出信号に基づいて機関吸入混合気の空燃比を検出し、該検出された空燃比に基づいて燃料噴射を制御する。なお、コントロールユニット15は、本発明の着火検出手段、着火時期検出手段としても機能する。
【0028】
ここで、本実施例における透過光強度検出手段を用いた空燃比検出、着火検出の原理を簡単に説明する。
機関1に使用されるガソリン燃料は、一般的に、赤外光を選択的に吸収する性質があり、混合気においては該混合気中におけるガソリン濃度に略比例して前記吸収量が増大する。即ち、入射光強度をIO 、ガソリン濃度をC、吸収係数をKとすると、吸収量Iは、I=IO exp −KC として表すことができる。
【0029】
従って、混合気に対して所定強度の赤外光を照射し、ガソリンによって赤外光がどの程度吸収されたかを検出できれば、混合気中のガソリン濃度、換言すれば、混合気の空燃比を検出できることになる。
一方、着火により急激に空燃比は希薄化するので、空燃比変化を観察すれば(詳細は後述する)、着火の有無、そしてクランク角度位置の検出結果との組合わせによって着火時期を検出することができることになる。なお、強制的に光源を用いて燃料に吸収されやすい波長の光を発光させるようにしているので、従来のような極僅かな光量の立上がりを検出するものに比べ、ノイズ等の影響を受け難くすることができ、更に、燃料に吸収されやすい透過光の波長と、スパーク放電光の波長とは異ならせれば、スパーク放電による影響も受けなくて済む。
【0030】
ここで、本実施例では、透過光強度検出手段を構成する前記一対の光学素子10,11は、燃焼室5内の空間を間隙として対向配置され、かかる間隙をレーザ光が通過し、最終的に光電変換素子14に入射する構成であるから、前記間隙に存在する混合気中のガソリン濃度に見合う量だけレーザ光が吸収され、かかる吸収によって減衰したレーザ光が光電変換素子14に入射することになる。
【0031】
また、レーザ光(赤外光)の吸収量がガソリン濃度に比例するということは、燃焼室内における圧力(筒内圧)変化によっても吸収量が変化することになる。そこで、筒内圧によるキャリブレーション特性を予め測定しておき(図6参照)、前記光電変換素子14の出力と、筒内圧センサ7で検出された筒内圧とをパラメータとする空燃比の演算特性(変換マップ)をコントロールユニット15に予め設定しておくことで、混合気が吸入される吸気行程から点火時期まで間において、燃焼室5内での局所的な空燃比を演算できることになる(図7参照)。
【0032】
なお、当該透過光強度検出手段を着火検出装置、或いは着火時期検出装置として用いる場合には、正確な空燃比の検出は必要ないので、前記筒内圧によるキャリブレーションもそれ程必要ない。即ち、急激な空燃比変化さえ検出できれば十分であるからである。勿論、より着火検出の精度を向上させたい場合には、正確な空燃比の検出を行うようにして構わない。
【0033】
前述のようにして検出された空燃比(点火栓6近傍の局所空燃比)は、コントロールユニット15による噴射制御(噴射量制御,噴射時期制御)の制御情報として用いられる。点火時期における点火栓近傍の空燃比は、点火限界を決定することになり、特に、着火性が悪化する希薄燃焼機関では重要な要素となるが、上記のようにして点火前の点火栓近傍における空燃比を検出できれば、点火栓近傍の空燃比を高精度に制御して、良好な着火性を安定的に得ることが可能となる。
【0034】
また、前記光電変換素子14で検出される透過光強度は、一対の光学素子10,11の間隙における空燃比状態のみに影響されるから、局所的な空燃比を他の燃焼室内領域での空燃比に影響されずに、高精度に検出できる。
前記空燃比の検出結果を用いた燃料噴射制御としては、検出された空燃比を目標空燃比に一致させるべく噴射量をフィードバック制御したり、また、空燃比変動のリッチピーク時期が点火時期と重なるように噴射弁による噴射タイミングを制御することで、点火栓近傍の空燃比を所期状態に制御できる。尚、かかる噴射制御については、後に詳細に説明する。
【0035】
一方、透過光強度検出手段を利用して行われる着火検出結果に基づいて、例えば火花点火式機関におけるプレイグニションの検出が高精度に行えるから、プレイグニションの発生防止制御(点火時期制御や空燃比制御)が高精度に行えることになる。更に、着火時期を検出するようにすれば、火花点火式機関における着火遅れ期間(=着火時期−点火時期、図18参照)を高精度に検出できるから、これにより、例えば、実用機関における着火遅れ期間を低減して着火性を向上させて機関運転性を向上させるような空燃比制御や点火時期制御の高精度化や、点火栓の放電エネルギが最適となる着火遅れ期間が得られるような空燃比制御や点火時期制御が行なえるようになる。なお、着火時期検出結果と空燃比検出結果とを同時に利用した場合については、後述する。
【0036】
ところで、上記のようにして、レーザ光を導く光学素子10,11を燃焼室5内に臨ませて配設すると、燃焼に伴う汚れが光学素子10,11に付着し、この汚れ分がレーザ光を減衰させることによって、ガソリン燃料によるレーザ光(赤外光)の吸収を精度良く検出することができなくなる惧れがある。
かかる汚れによる影響を補正する方法としては、図8に示すように、排気行程中の吸気弁が開く直前、即ち、混合気が吸引される直前で燃焼室5内に燃料が殆どないときに、前記光電変換素子14の出力A1 を取込む。そして、この出力A1 を正規化用の基準強度として、その後の吸気行程における空燃比演算期間(例えば点火時期前の所定区間)における光電変換素子14の出力Bn を、前記基準強度A1 で除算した値Bn /A1 を最終検出値とする。
【0037】
上記方法によれば、前記基準強度A1 は、一対の光学素子10,11の間隙に燃料が殆ど存在しない条件で検出されるから、主に光学素子10,11の汚れによる影響(レーザ源の劣化による出力強度の低下を含む)で変化するものと推定される。そして、汚れの進行によって前記基準強度A1 が低下すれば、光電変換素子14の出力Bn をより増大補正することになり、汚れによるレーザ光の減衰分を補償できることになる。
【0038】
しかしながら、上記補正方法によると、補正演算が比較的簡便に行えるものの、汚れの検出を空燃比演算と同時に行わせることができず、1サイクル毎に1回の汚れ検出の後に、空燃比演算用の透過光強度の検出が行われるから、空燃比演算時の汚れ状態に対してずれを生じる惧れがあり、また、一対の光学素子10,11の間隙に燃料が存在しないという仮定で汚れレベルを推定するから、高精度な補正が望めない。
【0039】
前記汚れによる影響を補正する別の方法としては、ガソリンに吸収されずに汚れ分のみに吸収されて減衰する波長の光を発する光源を別途設け、該光源から発した光ビームを、空燃比検出に用いるガソリンが吸収する波長の光と同軸に光学素子10,11に通し、図9に示すように、ガソリンに吸収される波長光の透過光強度Bn と同時に、汚れ分によってのみ吸収される波長光の透過光強度An を検出させ、前記汚れ分にのみ吸収される光の透過光強度An で前記透過光強度Bn を補正する(Bn /An )ことで、ガソリンに吸収される波長域の光の汚れによる減衰分を補正する方法がある。
【0040】
かかる補正方法によると、空燃比演算に同期してそのときの汚れ状態を推定することができ、また、一対の光学素子10,11に存在する燃料の影響を受けずに汚れ検出が行えるので、演算負担は大きくなるものの高精度な汚れ補正が可能である。
ここで、前述のような汚れに対する補正を行いながら空燃比(ガソリン濃度)を検出するコントロールユニット15の機能を、図10のフローチャートに従って説明する。尚、前記図10のフローチャートは、上記2つの補正方法に共通のものとして簡略化して示してある。
【0041】
この図10のフローチャートにおいて、まず、S1では、汚れによるレーザ光の減衰レベルを示す補正光強度An の検出を行わせる。具体的には、吸気弁が開く直前のタイミングで光電変換素子14の出力を取り込むか、又は、空燃比の演算期間内でガソリンに吸収されずに汚れによってのみ吸収される波長の光の透過強度を逐次取り込む。
【0042】
次のS2では、空燃比演算のための透過光強度Bn 検出を行わせる。
そして、S3では、空燃比実測用の透過光強度Bn を、汚れ分を補正するための光強度An で除算して、該演算結果を汚れ分が補正された光強度としてIにセットする。
S4では、前記汚れ補正が施された光強度Iと、筒内圧センサ7で検出された筒内圧とに基づいてガソリン濃度C(空燃比)を演算する。
【0043】
S5では、空燃比演算期間内で演算される空燃比のデータナンバーを示すnを1アップし、次のS6では、空燃比の実測期間(例えば点火時期前の所定区間)内であるか否かを判別する。そして、実測区間でなければ、S7で前記データナンバーをリセットし、また、実測区間内であれば、前記リセットを行うことなくS1に戻り、汚れ補正を行いながら空燃比演算を繰り返し、演算結果を時系列的に記憶する。
【0044】
尚、前記汚れ分に影響される透過光強度An が所定以下に低下した場合には、所期の透過光強度検出が不能であると判断し、所定のフェイルセーフモードに移行させるようにすると良い。
ところで、上記実施例では、点火栓6の近傍に、一対の光学素子10,11を備えた光学素子9(空燃比検出体)を配設する構成としたが、これは、点火栓6の電極雰囲気の空燃比を制御して点火限界を高めるためには、点火栓6(電極部)になるべく近い位置で空燃比を検出することが望まれ、また、部品点数の削減,組み立て性及び燃焼室を構成するシリンダヘッドにおけるスペース効率を考慮すると、点火栓6と前記一対の光学素子10,11とを一体化して設けることが好ましいからであり、これら利点を考慮しなくてよい場合(例えば試験室で実験等を行なう場合等)は、点火栓6と前記一対の光学素子10,11とを一体化して設けなくても勿論構わない。
【0045】
次に、上記実施例に示される構成によって検出される空燃比を用いたコントロールユニット15による空燃比フィードバック制御及び噴射タイミング制御の様子を図11のフローチャートに従って具体的に説明する。
図11のフローチャートにおいて、まず、S11では、機関回転数Neをクランク角センサ60からの検出信号に基づいて算出する。また、S12では、スロットルセンサ(図示省略)で検出されたスロットル弁開度を機関負荷の代表値として読み込む。なお、クランク角センサ60は、例えば、図示しないディストリビュータに内蔵され、機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号が検出できるものであり、コントロールユニット15ではこの信号を一定時間カウントして、又は、クランク基準角信号の周期を計測して機関回転速度Neを検出するようになっている。
【0046】
そして、S13では、図12に示すように、予め機関負荷と機関回転数とに応じた運転領域別に目標空燃比を設定したマップを参照し、目標空燃比AFRを設定する。図12に示す目標空燃比AFRを記憶したマップは、理論空燃比よりも大幅にリーンな目標空燃比を設定するリーン領域と、目標空燃比として理論空燃比を設定する理論空燃比領域と、理論空燃比よりもややリッチな目標空燃比を設定させるリッチ領域とに大きく分けられている。
【0047】
次のS14では、現在の運転条件が、前記目標空燃比AFRとして理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比が設定されるリーン領域であるか否かを判別する。
ここで、リーン領域であると判別されたときには、S15へ進み、点火時期前の所定区間で、前述のように前記光電変換素子14の出力と筒内圧センサ7との出力とに基づいて演算された空燃比を時系列的に記憶させたデータから、前記所定区間内で変動する空燃比における最小空燃比PAFM(空燃比演算区間内で最もリッチな空燃比)を求める(図13参照)。
【0048】
そして、S16では、前記目標リーン空燃比AFRと前記最小空燃比PAFMとを比較し、目標空燃比に対する最小空燃比PAFMのリッチ・リーンを判定する。
ここで、目標リーン空燃比よりも最小空燃比PAFMが小さい(リッチである)と判別されたときには、S17へ進み、前記空燃比検出が行われた所定区間内で最小空燃比PAFMが得られたクランク角位置TPAFMを求める。
【0049】
また、S18では、現状の点火時期TIGを求め、次のS19では、前記空燃比が最小となるクランク角位置TPAFMと現状の点火時期TIGとの偏差TDIFFを演算する。
更に、S20では、現状における噴射制御の基準タイミングTINJ(噴射開始時期又は噴射終了時期)を求める。
【0050】
そして、S21では、前記偏差TDIFFによって前記基準タイミングTINJを補正することで、前記最小空燃比PAFMが得られるタイミングが点火時期TIGに一致するように噴射時期を進・遅角補正する。
即ち、理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比で燃焼させる場合には、着火性が悪化するので、平均空燃比としてはリーン空燃比であっても点火栓近傍の空燃比がなるべくリッチである状態で点火させることが着火性を高めることになる。そこで、点火を行っている時期の前の所定区間における空燃比の変動を求め、空燃比が最もリッチとなるタイミングが点火時期に重なるように、噴射時期をずらすようにしている。具体的には、点火時期TIGよりもクランク角度位置TPAFMが早く現れる場合、偏差TDIFFに相当する量だけ噴射時期を遅角補正する。
【0051】
尚、前記噴射時期の補正制御においては、基本噴射時期を中心とする所定範囲内でのみ噴射時期の変更を許可する構成とすると良い。また、運転状態が変化した場合には、噴射時期を一旦その運転状態の基準タイミングTINJに戻し、再度クランク角度位置TPAFMを点火時期TIGに一致させると良い。
一方、点火栓近傍空燃比を目標空燃比に一致させるための噴射量補正が、リーン空燃比領域以外、及び、前記S16で最小空燃比PAFMが目標空燃比よりもリーンであると判別されたリーン空燃比領域のときに、S22〜S25において行われる。
【0052】
S22では、前記点火時期前の所定区間内で逐次演算された空燃比の平均値MAFMを演算する。
次のS23では、目標空燃比AFRと前記平均空燃比MAFMとの偏差AFDIFFを演算する。
S24では、現状の噴射量QTpをセットし、次のS25では、前記偏差AFDIFFに対応して設定された補正噴射量QAFDIFFを前記噴射量QTpに加算して補正する。
【0053】
かかる燃料噴射量の補正制御によると、1サイクル毎に目標空燃比に対する実際の空燃比の偏差を求め、該偏差に応じた補正を次のサイクルにおける燃料噴射量に反映させることができるので、目標空燃比に対して高い収束性を有するフィードバック制御が可能である。
上記のような噴射タイミングの制御及び噴射量の制御においては、点火栓6の着火雰囲気の空燃比を高精度に検出することが望まれるので、光学素子10,11として点火栓6の電極間にレーザ光を通す構成として点火栓に一体化させた図4及び図5に示した実施例の構成で透過光強度を検出させることが望ましい。
【0054】
尚、上記では、偏差AFDIFFを噴射量のデータに変換させたが、偏差AFDIFFから噴射量の補正係数を設定し、該補正係数を基本噴射量に乗算して補正を施す構成であっても良い。
また、本実施例では、燃料噴射弁3から噴射された燃料によって実際に燃焼室内に吸引された混合気の空燃比を検出できるから、例えば過渡運転時又は冷間時における壁流補正を空燃比検出結果に基づいて適正化できる。即ち、燃料噴射弁3から噴射供給される燃料には、衝突や壁面付着による輸送遅れが生じ、過渡運転時や冷間時には、かかる遅れを見込んだ増量補正が必要になるが、上記実施例の空燃比検出装置によれば燃焼室内における空燃比が1サイクル毎に検出できるので、増量補正の過不足を定量的に検出でき、これによって過渡運転時用又は冷間時用の増量補正量を適正化できるものである。
【0055】
上記実施例における噴射タイミングの制御では、点火前の空燃比変動の様子を時系列的に検出し、該検出結果に基づいて空燃比がリッチ側にピークとなる時期を求め、該リッチピーク時期と点火時期との偏差分を噴射タイミングの補正量としたが、噴射タイミングを進・遅角補正し、該補正結果による点火時期における空燃比の変化方向を検出することで、点火時期における空燃比がリッチピークとなる噴射タイミングを見つけ出す構成としても良い。
【0056】
かかる噴射タイミング制御の実施例を、図14のフローチャートに示す。
まず、S51では、運転条件に応じて予め設定されている基本噴射タイミング(噴射開始クランク角又は噴射終了クランク角)をマップから読み取る。
そして、S52では、かかる基本噴射タイミングに応じた燃料噴射を行って、次のS53では、かかる燃料噴射によって形成された混合気の空燃比を、前述のように光電変換素子14で検出される透過光強度と筒内圧とに基づいて点火時期において演算する。
【0057】
S54では、前記S53で演算された空燃比と、前回の点火時期における空燃比とを比較し、前回に比べて点火時期における空燃比がリッチ方向に変化しているか否かを判別する。
点火時期における空燃比がリッチ方向に変化しているときには、S55に進み、今回の点火時期で演算された空燃比を前回空燃比として記憶させる。
【0058】
次いで、S56では、前回の噴射タイミング補正で噴射タイミングを進めたか否かを判別する。
ここで、噴射タイミングを進めた結果、点火時期の空燃比がリッチ方向に変化したと判別されるときには、更に、噴射タイミングを進めることで、よりリッチに点火時期の空燃比が変化する可能性があるので、S57へ進んで、噴射タイミングを所定微小角だけ進ませる噴射タイミングの補正を行う。そして、S58では、噴射タイミングをより進める補正を行った来歴を記憶させる。
【0059】
一方、S54で、点火時期における空燃比が前回に比べてリッチ方向に変化していないと判別されたときには、S59へ進み、前回噴射タイミングを進める補正を行ったかを判別する。
噴射タイミングを進めた結果、空燃比がリッチ方向に変化しなくなった場合には、S60へ進み、逆に噴射タイミングを所定微小角度だけ遅らせる補正を行い、次のS61では噴射タイミングを遅らせる補正を行った来歴を記憶させる。
【0060】
また、S59で、噴射タイミングを遅らせた結果、空燃比のリッチ方向への変化がなくなったと判別された場合には、逆に、噴射タイミングを進めるべくS57へ進む。
即ち、例えば噴射タイミングを進めることによって点火時期における空燃比がリッチ方向に変化する場合には、リッチ方向への変化が停止するまで徐々に噴射タイミングを進めて行き、リッチ方向への変化が停止すると今度は逆に遅らせることで、リッチピーク付近が点火時期に一致するように噴射タイミングを制御するものである。
【0061】
尚、上記のような噴射タイミングの進・遅角補正が収束したときに、そのときの噴射タイミングを運転条件別に学習記憶させるようにしても良い。
上記実施例では、レーザ光の透過光強度に基づいて検出された空燃比に基づいて噴射タイミング又は噴射量を補正する実施例を示したが、燃料噴射弁の噴孔を燃焼室内に臨ませて圧縮行程中に燃料噴射を行わせる構成の直噴式火花点火機関(特願平4−17738号参照)における噴射圧制御に、前記構成による空燃比検出結果を用いることで、前記直噴式火花点火機関における着火性能を向上させることができる。
【0062】
即ち、前記直噴式火花点火機関で希薄燃焼を行わせる場合には、点火栓近傍の空燃比を他に比べてリッチ化させる成層化が望まれ、そのためには、燃料噴射弁による噴霧を点火栓近傍に指向させると良い。
ところで、前記一対の光学素子10,11(サファイヤロッド24,25)の汚れに対する透過光強度の補正については既述したが、冷間・始動時には燃料の気化性が悪化するために、燃料が壁流となって燃焼室5内に流れ込み、燃焼室5内に突き出た光学素子10,11に前記液状の燃料が付着して、前記補正制御の限界を越える光強度の減衰が前記液的付着燃料によって生じる惧れがある。
【0063】
そこで、例えば前記図3〜図5に示した一対の光学素子10,11に対して、図15に示すように、光学素子10,11の間隙の底面部(光学素子9の端面)に加熱手段としてのヒータ(セラミックヒータ)31を付設し、ヒータ電源線32を光学素子9内に埋設して外部に取り出す構成とする。
そして、前記液的燃料付着が予測される機関運転条件のときや、演算された空燃比の変化から付着状態が検知されたときに、コントロールユニット15による制御によって前記ヒータ31に電源を供給して発熱させ、かかる発熱によって光学素子10,11を暖めて、付着した液的燃料を早期に気化させるようにする。
【0064】
上記図15に示す光学素子10,11は、図3〜図5に示される点火栓6とは異なるタイプのものであるが、図3〜図5に示されるような点火栓6と一体型の場合にも同様にしてヒータ31を付設することが可能で、後述するヒータ制御も、点火栓6に対する一体型,別体を問わずに共通の仕様によって行われるものとする。
具体的なヒータ制御を様子を図16のフローチャートに従い、図2及び図15を参照しつつ説明する。
【0065】
尚、前記図16のフローチャートに示されるコントロールユニット15のソフトウェア的機能が(運転条件による)加熱制御手段、燃料付着検知手段及び(付着検知による)加熱制御手段に相当し、本実施例では、かかる加熱制御を行う条件判定のために、後述するように、水温センサ61及びスタートスイッチ62(図2参照)の信号を用いる。
【0066】
図16のフローチャートにおいて、まず、S31では、水温センサ61で検出される冷却水温度Twと所定温度とを比較する。
そして、機関温度を代表する冷却水温度Twが所定温度よりも低いと判別された場合には、S32へ進み、スタートスイッチ62の信号に基づいて計測される始動からの経過時間Taと所定時間とを比較する。
【0067】
ここで、始動からの経過時間Taが所定時間に達していないと判別された場合には、S33へ進んで前記ヒータ31に電源を供給してヒータ31を発熱させることにより光学素子10,11を加熱する。
即ち、冷間始動直後の所定期間内においてヒータ31を発熱させて光学素子10,11を加熱するものであり、これにより、液状の燃料が燃焼室5内に流れ込んで光学素子10,11に付着しても、かかる液的付着燃料を早期に気化させることができ、光学素子10,11を介してレーザ光を混合気中に通過させて行われる空燃比検出の精度を冷間始動時にも保つことができる。
【0068】
一方、希薄燃焼機関などでは吸気行程中に燃料噴射を行わせる場合があり、かかる構成のときには、上記のような冷間始動直後でない場合であっても、噴射された燃料が直接的に燃焼室5内に吸引されることによって、光学素子10,11(サファイヤロッド24,25)に液的燃料が付着する場合がある。
ここで、前記液的燃料の付着が発生すると、レーザ光が前記付着燃料によって大幅に吸収されるようになることで、演算される空燃比が急激にリッチ方向に変化する。
【0069】
そこで、空燃比演算期間内で、演算された空燃比の一次微分値AFDIFを求め(図17参照)、冷却水温度Tw及び始動後時間Taが光学素子10,11に対する液的燃料の付着条件になっていない場合であっても、S34で前記一次微分値AFDIFと所定値とを比較して、空燃比演算値の大きな変動が検知されたときには、光学素子10,11に対して液的燃料が付着しているものと推定し、S33へ進んでヒータ31に電源を供給する。かかる空燃比微分値に基づく付着状態の検知が、コントロールユニット15による燃料付着検知手段としての機能を示す。
【0070】
尚、前記空燃比の微分値AFDIFに基づくヒータ制御においては、微分値の変動によって頻繁にON・OFF制御されることを回避すべく、判定レベルにヒステリシスを設けたり、一旦付着状態を検知したら強制的に所定時間だけ継続的に通電させる構成としたり、又は、微分値が判定レベル以下に所定時間以上安定してことをON→OFF制御の条件とすることが好ましい。
【0071】
上記のようにして空燃比演算値の変動から光学素子10,11に対する液的燃料の付着を検知する構成であれば、冷却水温度Twなどの機関運転条件に相関しない燃料付着状態を検知でき、吸入行程中にずれ込んで燃料噴射が行われるような機関においても、光学素子10,11に対する液的燃料の付着状態を早期に解消して空燃比検出精度を維持できる。
【0072】
一方、冷間始動直後でなく、然も、空燃比演算値が安定している場合には、S35へ進み、ヒータ31に対する電源供給を停止し、無用な電力消費を避ける。
尚、図3〜図5に示すような構成によって点火栓に対して一体的に光学素子10,11(サファイヤロッド24,25)を設ける場合に、上記ようにしてヒータ31による加熱制御を行えば、光学素子10,11に対する液的燃料の付着は点火栓6における電極部の燃料濡れを推定させることにもなるので、光学素子10,11を加熱することで点火栓の電極部も同時に加熱され、点火栓の濡れによる着火性の悪化を回避できるという副次的な効果もある。
【0073】
尚、上記ヒータ制御では、機関温度を代表するパラメータとして冷却水温度Twを用いたが、この他、潤滑油の温度や吸気ポート部の温度などを用いても良いことは明らかである。
つづけて、本実施例における着火検出の原理を、図18に基づいて詳しく説明すると共に、着火時期検出結果と、空燃比検出結果と、を同時に利用した制御の一例を、以下に説明する。
【0074】
前述したように、空燃比の検出結果は、筒内の混合気が着火燃焼することで、急激にリーン化する。ここで、図18に、クランク角(CA)に対するA/F、A/Fの微分値(A/F’)、筒内圧履歴を示す。
図18に示すように、混合気が着火燃焼すると、混合気中に含まれるガソリン燃料が消費され、その結果、赤外線を吸収するガソリンが減少し、A/Fとしては急激にリーン化する。この履歴を微分すると極値を示す。つまり、この極大値が着火を示し、この極大値が現れるクランク角(CA)が、着火時期となる。
【0075】
ところで、点火時期は、コントロールユニット15によって機関運転条件(回転速度、負荷、水温、空燃比等)に基づき設定される値であるが、図18に示すように、点火してから着火開始するまでに所定時間かかる場合があり、この遅れを着火遅れ期間(或いは時間)(=着火時期−点火時期)と称する。
本実施例では、筒内の点火栓6近傍の空燃比と、当該着火遅れ期間と、を同時に検出することができるので、図19に示すような、空燃比に対する着火遅れ期間を、実用機関において検出することが可能となる。
【0076】
この着火遅れ期間は、放電エネルギとも相関があるので、図19に示す検出結果に基づいて、その実用機関に対して必要最小の放電エネルギを求めることができる。従って、放電エネルギの大きさに影響される点火栓6の耐久性、或いはバッテリ寿命等も向上させることができる。
また、本実施例によれば、圧縮着火式機関における着火遅れ(燃料の噴射開始から着火するまでの期間、当該期間は予混合燃焼割合を決定するもので、NOx生成量や騒音に大きな影響を与える)の計測も可能であり、当該着火遅れ期間を縮小するような燃料噴射ポンプの噴射率の制御(即ち、着火し易い混合気を形成して着火遅れを短縮して予混合燃焼割合を低減するために、燃料噴射開始初期の噴霧の微粒化の促進、即ち、初期噴射圧力を増大させるような噴射率パターンの変更制御等)を効果的かつ高精度に行うことができ、延いては排気エミッション、騒音の低減を図ることも可能となる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、従来に比べ高精度に着火検出を行なうことができ、例えば、火花点火式機関におけるプレイグニションの検出が高精度に行え、延いては当該プレイグニションの発生防止制御(点火時期制御や空燃比制御)が高精度に行える。
【0078】
請求項2に記載の発明によれば、高精度に着火時期を検出することができるので、例えば、機関運転実験等において有効であると共に、例えば、実用機関における着火遅れ期間を低減して着火性を向上させて機関運転性を向上させるような空燃比制御や点火時期制御の高精度化や、点火栓の放電エネルギが最適となる着火遅れ期間が得られるような空燃比制御や点火時期制御が行なえるようになる。また、圧縮着火式機関における着火遅れの計測も可能であり、当該検出結果に基づいて、例えば、燃料噴射ポンプの噴射率の制御を効果的かつ高精度に行うことができる。
【0079】
請求項3に記載の発明によれば、着火検出或いは着火時期検出と、燃焼室内の局所空燃比と、を高精度に同時に検出することができ、特に、点火栓の近傍の空燃比を点火前に検出することが可能であるので、点火時期における点火栓近傍の空燃比を高精度に制御して、点火栓による着火性を最良に維持できるという効果がある。また、上述の空燃比制御や点火時期制御、或いは点火栓の放電エネルギの最適化制御が、より高精度に行なえる。
【0080】
請求項4に記載の発明によれば、燃焼室内における空燃比検出においては、特に、点火栓近傍の空燃比が点火限界に大きく影響するので、前記一対の光学素子を点火栓に一体的に設けることで、点火栓近傍での着火、着火時期、或いは空燃比を精度良く検出でき、また、部品構成、組付等を簡略化できるようにした。請求項5に記載の発明によれば、光路が点火栓ギャップを横切るように配設するので、着火性に大きな影響を与える場所で、最も高精度に、着火、着火時期、空燃比等を高精度に検出でき、延いては上述の空燃比制御や点火時期制御、或いは点火栓の放電エネルギの最適化制御が、より高精度に行なえる。
【0081】
請求項6、請求項7に記載の発明によれば、前記光学素子に対する液的燃料の付着が予測される運転条件又は付着状態が検知されたときに、前記光学素子を加熱することで、前記液的燃料の付着による空燃比検出精度の悪化を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施例を示すシステム概略図。
【図3】光学素子を一体化させた点火栓を示す側面図。
【図4】図3の光学素子部の拡大図。
【図5】図3の底面図。
【図6】透過光強度と筒内圧とに対応する空燃比を示す線図。
【図7】透過光強度と筒内圧の変化をクランク角に応じて示す線図。
【図8】吸気弁の開直前の光強度に基づく汚れ補正の特性を示す線図。
【図9】異なる波長の光を用いた汚れ補正の特性を示す線図。
【図10】汚れを補正を伴う空燃比演算の様子を示すフローチャート。
【図11】空燃比検出結果を用いた燃料噴射制御を示すフローチャート。
【図12】目標空燃比のマップを示す線図。
【図13】燃料噴射制御のための空燃比検出の特性を示す線図。
【図14】噴射タイミング制御の別の実施例を示すフローチャート。
【図15】光学素子にヒータを付設した実施例を示す構造図。
【図16】ヒータのオン・オフ制御を示すフローチャート。
【図17】空燃比検出データの微分値とヒータ制御との関係を示す線図。
【図18】空燃比検出データの微分値と着火遅れの関係を示す線図。
【図19】最適放電エネルギを示す図。
【図20】従来の燃焼光による空燃比検出の問題点を説明するための図。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 吸気ポート
3 燃料噴射弁
4 吸気弁
5 燃焼室
6 点火栓
7 筒内圧センサ
8 シリンダヘッド
9,10,11,13 光学素子
12 レーザ源
14 光電変換素子
15 コントロールユニット
21 ホルダ
23 点火栓本体
23c 中心電極
23d 接地電極
24,25 サファイヤロッド
31 ヒータ
60 クランク角センサ
61 水温センサ
62 スタートスイッチ
Claims (7)
- 内燃機関の燃焼室内に臨ませて発光側と受光側とからなる一対の光学素子を所定間隙をもって対向配置し、光源で発光した光を前記一対の光学素子を介して光電変換素子に導く透過光強度検出手段と、
前記透過光強度検出手段における前記光電変換素子の出力の変動に基づいて燃焼室内での着火を検出する着火検出手段と、
を含んで構成したことを特徴とする内燃機関の筒内状態検出装置。 - 機関のクランク角度を検出するクランク角検出手段と、
前記着火検出手段の出力と、前記クランク角検出手段の出力と、に基づいて着火時期を検出する着火時期検出手段と、
を含んで構成したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の筒内状態検出装置。 - 機関の筒内圧を検出する筒内圧検出手段と、
前記透過光強度検出手段における前記光電変換素子の出力と前記筒内圧検出手段で検出された筒内圧とに基づいて筒内の空燃比を検出する空燃比検出手段と、
を含んで構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の筒内状態検出装置。 - 前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を、機関の点火栓に一体的に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の内燃機関の筒内状態検出装置。
- 前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を、点火栓の火花間隙を挟んで両側に配設したことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の内燃機関の筒内状態検出装置。
- 前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を加熱する加熱手段と、
機関運転条件に応じて前記加熱手段を選択的に動作させる加熱制御手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の内燃機関の筒内状態検出装置。 - 前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子を加熱する加熱手段と、
前記透過光強度検出手段における前記一対の光学素子に対する燃料の付着状態を検知する燃料付着検知手段と、
該燃料付着検知手段で燃料の付着状態が検知されたときに前記加熱手段を動作させる加熱制御手段と、
を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の内燃機関の筒内状態検出装置。
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