JP3603327B2 - 糖尿病治療剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より糖尿病治療剤としては、インシュリン、スルホニルウレア系化合物及びビグアナイド系化合物が知られている。しかしながら、インシュリンは経口投与が困難であり、スルホニルウレア系化合物は強力な血糖低下作用を有するが、しばしば重篤かつ遷延性の低血糖を惹き起こすため問題となっており、またビグアナイド系化合物は重篤な乳酸アシドーシス及び低血糖を惹き起こすため現在ではほとんど用いられていない。従って、糖尿病患者に対しては、食事療法及び運動療法を中心に治療がなされているのが現状である。また最近グリチルリチンに血糖低下作用があることが報告されているが(渡仲三ら、代謝、第29巻、254−263頁、1992年)、長期にわたる大量経口投与によって偽アルドステロン症と呼ばれる副作用があることが知られている。
【0003】
一方、本発明者らは本発明化合物を包含する、種々のベンゾピラン誘導体並びにその生理学的に許容される塩が優れた抗アレルギー作用を有することを既に見出している(WO92/13852)。しかしながら、本発明のベンゾピラン誘導体が優れた糖尿病治療作用を有することは、従来全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、経口投与可能で安全性に優れた糖尿病治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、既存糖尿病治療薬の問題点を解決するため、多数の化合物を合成し、それらの糖尿病治療作用を検討した結果、一般式(1)で表されるベンゾピラン誘導体が、経口投与により優れた糖尿病治療作用を有するとともにその毒性が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、一般式(1)
【0007】
【化2】
【0008】
(式中R1は水素原子、アシル基、アルキル基又はアルケニル基を、R2はアルキル基又はアルケニル基を、R3は水素原子又はアシル基を示す)で表されるベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤に関するものである。
【0009】
以下本発明の糖尿病治療作用を有する化合物について説明する。
本発明の糖尿病治療剤は上記一般式(1)で示される化合物を有効成分とする。一般式(1)において、R1としては水素原子、アシル基、アルキル基、アルケニル基である。
【0010】
アシル基の好ましい例としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等のアルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基が挙げられる。特に好ましくは、炭素数2〜5のアルカノイル基、ベンゾイル基が挙げられる。
【0011】
アルキル基は、直鎖状又は分岐状のどちらでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0012】
R1のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐状のどちらでもよく、好ましくは例えばビニル基、プロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、3ーメチル−2−ブテニル基、3ーメチル−3−ブテニル基、ゲラニル基、デセニル基等が挙げられる。特に好ましくは、炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0013】
また一般式(1)のR2としてはアルキル基、アルケニル基が挙げられる。
R2のアルキル基としては直鎖状又は分岐状どちらでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられ、好ましくはエチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数2〜8のアルキル基であり、更に好ましくはヘキシル基等の炭素数6のアルキル基である。。
【0014】
R2のアルケニル基としては直鎖状又は分岐状のどちらでもよく、例えばビニル基、プロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3ーメチル−3−ブテニル基、ノニル基、デセニル基、ゲラニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の炭素数2〜8のアルケニル基であり、更に好ましくはヘキセニル基等炭素数6のアルケニル基である。
【0015】
一般式(1)のR3としては水素原子又はアシル基が挙げられる。
R3のアシル基の例としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等のアルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のアルカノイル基が挙げられる。
【0016】
本発明の糖尿病治療剤の有効成分は、特に好ましいものとして、一般式(1)においてR1及びR2がアルキル基でありR3が水素原子である化合物や、R1及びR3が水素原子でありR2がアルキル基である化合物や、R1及びR3がアシル基でありR2がアルキル基である化合物等が挙げられる。
【0017】
次に本発明の具体的な化合物例を表1〜6に列挙する。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】
【表5】
【0023】
【表6】
本発明の一般式(1)で示されるベンゾピラン誘導体は、本発明者らが先に出願した既知化合物であり、本発明者らが提案した合成方法により製造することが出来、詳細はWO92/13852に記載してある。製造方法として一例を挙げると、例えば化合物36(3,7−ジアセトキシ−4−エトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン)を製造する場合の概略は以下の通りである。
【0024】
【化3】
【0025】
まず、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン(a)のヒドロキシル基をベンジル基で保護し(b)とする。次に炭酸ジメチルにより増炭反応を行いケトエステル体(c)とし、更に過酸化ベンゾイルと反応させ(d)とする。ここでヒドロキシル基の保護基として用いているベンジル基を水素化分解により脱保護し、酸で処理する事によりベンゾイルオキシ体(e)となる。このベンゾイルオキシ体(e)を、非水系で金属アルコキシドを用いる事によりベンゾイル基の脱離を行い、ベンゾピラン誘導体(f)が得られる。次に、ベンゾピラン誘導体(f)の3位及び7位水酸基のアシル化を行い、3,7−ジアセトキシ−4−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(g)を得、更に氷冷下、ジアセトキシ体(g)を臭化エチルと室温にて反応させ、本化合物を合成することが出来る。
【0026】
また、本発明のベンゾピラン誘導体の生理学的に許容される塩も本発明の範囲に含まれる。ここでいう生理学的に許容される塩とは、例えば上記に示される化合物のアルカリ付加塩であり、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の無毒の塩が挙げられる。
【0027】
本発明のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤は、経口又は非経口投与(例えば静脈内投与、皮下投与、経皮投与又は直腸内投与等)することが出来、投与に際してはそれぞれの投与法に適した製剤形態に調製することが出来る。
【0028】
かかる製剤は、その用途に応じて錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、トローチ剤、舌下錠、坐剤、軟膏剤、注射剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤等の製剤形体に調製することが出来る。
【0029】
これらの調製に際しては、例えばこの種の薬剤に通常使用されている無毒の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、等張化剤、緩衝剤、コーティング剤、矯味剤、溶解補助剤、基剤、分散剤、安定化剤、着色剤等の添加剤を使用して公知の方法により製剤化することが出来る。
【0030】
前記使用し得る無毒性の添加剤の具体例を列挙すると、以下のようである。
まず、賦形剤としては、でんぷん及びその誘導体(デキストリン、カルボキシメチルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、糖類(乳糖、白等、ブドウ糖等)、ケイ酸及びケイ酸塩類(天然ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等)、水酸化アルミニウム・マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、ポリオキシエチレン誘導体、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0031】
結合剤としては、でんぷん及びその誘導体(アルファー化デンプン、デキストリン等)、セルロース及びその誘導体(エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、糖類(ブドウ糖、白糖等)、エタノール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0032】
崩壊剤としては、でんぷん及びその誘導体(カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム等)、トラガント、ゼラチン、寒天等が挙げられる。
【0033】
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸及びその塩類(軽質無水ケイ酸、天然ケイ酸アルミニウム等)、酸化チタン、リン酸水素カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、マクロゴール等が挙げられる。
【0034】
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、リン酸塩類(リン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等)、アルコール類(クロロブタノール、ベンジルアルコール等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸グリセリン、糖類等が挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)、ロンガリット、エリソルビン酸、L−アスコルビン酸、システイン、チオグリセロール、ブチルヒドロキシアニゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、dl−αートコフェロール等が挙げられる。
【0036】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、デキストリン、グリセリン、ブドウ糖等が挙げられる。
緩衝剤としては、炭酸ナトリウム、塩酸、ホウ酸、リン酸塩(リン酸水素ナトリウム等)等が挙げられる。
【0037】
コーティング剤としては、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)、セラック、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン類(ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−2−ビニル−5−エチルピリジン等)、ポリビニルアセチルジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタアクリレート・メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0038】
矯味剤としては、糖類(ブドウ糖、白糖、乳糖等)、サッカリンナトリウム、糖アルコール類等が挙げられる。
溶解補助剤としては、エチレンジアミン、ニコチン酸アミド、サッカリンナトリウム、クエン酸、クエン酸塩類、安息香酸ナトリウム、石鹸類、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン、ポリプレングリコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0039】
基剤としては、脂肪類(豚脂等)、植物油(オリーブ油、ゴマ油等)、動物油、ラノリン酸、ワセリン、パラフィン、ロウ、樹脂、ベントナイト、グリセリン、グリコール油、高級アルコール類(ステアリルアルコール、セタノール等)等が挙げられる。
【0040】
分散剤として、アラビアゴム、トラガント、セルロース誘導体(メチルセルロース等)、ステアリン酸ポリエステル類、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0041】
最後に安定化剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸水素ナトリウム等)、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。
また、かかる製剤中における本発明によるベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩の含有量は、その剤型に応じて異なるが、一般に0.01〜100重量%の濃度で含有している事が望ましい。
【0042】
本発明によるベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩を含有する糖尿病治療剤の投与量は、対象とする人間をはじめとする温血動物の種類、症状の軽重、医師の判断等により広範囲に変える事が出来るが、一般に有効成分として、経口投与の場合、体重1kg当たり1日に0.01〜300mg/kg、好ましくは、0.05〜100mg/kg、非経口投与の場合、体重1kg当たり1日に0.01〜100mg/kg、好ましくは0.01〜50mg/kg投与する事が好ましい。また、上記投与量は1日1回叉は数回に分けて投与する事が出来る。これらは患者の症状の軽重、医師の診断に応じて適宜変えることが出来る。
【0043】
以下に実施例によって本発明のベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩の糖尿病治療作用について具体的に説明するが、もとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
【実施例】
【0045】
(実施例1)マウス急性毒性試験
本実施例は、本発明によるベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩の安全性を確認するため行ったものである。以下に試験方法を説明する。
試験方法:マウス用胃ゾンデを用いて化合物1〜48の各ベンゾピラン誘導体1000及び2000mg/kgを1群5匹のマウス(ICR系雄性 体重20〜25g)に強制経口投与した。経口投与後、ケージ内にて7日間飼育し、死亡動物の有無及び一般状態を観察し、観察終了時のマウスの生存率より概略の50%致死量(LD50:mg/kg)を推定した。
この結果、表1に記載する全てのベンゾピラン誘導体のLD50は2000mg/kg以上であり、本発明のベンゾピラン誘導体は極めて安全性が高い事が判明した。
【0046】
(実施例2)ストレプトゾトシン糖尿病モデルによる薬効試験
本実施例は、本発明のベンゾピラン誘導体の糖尿病治療作用を確認するために行った。ストレプトゾトシン糖尿病モデルは、従来より一般的に糖尿病治療薬の効力評価に用いられている病態動物モデルである(新薬開発のための動物利用集成,419−422頁,R&Dプランニング,1985年)。
以下に試験方法を説明する。
6週齢の雄性ウイスター系ラットの尾静脈にストレプトゾトシン50mg/kgを1回投与することにより糖尿病を惹起した。本発明のベンゾピラン誘導体は、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁し、100mg/5ml/kgをストレプトゾトシン投与の1時間前に経口投与し、翌日より1日1回13日間連続経口投与した。最終投与の翌日、約24時間絶食した動物をエーテル麻酔し、腹大静脈より採血して血中グルコース濃度(mg/dl)を測定した(グルコキナーゼ・G−6PDH法;736−10型自動分析装置:日立製作所)。正常群としてストレプトゾトシン無投与の群、病態群として本発明のベンゾピラン誘導体の代わりに0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液のみを5ml/kg投与した群及び陽性対照群として本発明のベンゾピラン誘導体の代わりにグリチルリチン20mg/5ml/kgを投与した群を設けた。グリチルリチンは渡仲三らによりストレプトゾトシン糖尿病モデルに対して治療効果を有する事が既に報告されている(代謝,第29卷,254−263頁,1992年)。本実施例の結果を表7〜8に抑制率として示した。尚、抑制率(%)は式1により算出した。
【0047】
(式1)
抑制率(%)=〔1−(ベンゾピラン誘導体投与群又は陽性対照群の血中グルコース濃度−正常群の血中グルコース濃度)/(病態群の血中グルコース濃度−正常群の血中グルコース濃度)〕×100
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
病態群では、ストレプトゾトシン投与により血中グルコース濃度が398mg/dlと、正常群の濃度110mg/dlと比較して高値を示し、ストレプトゾトシン膵臓障害による糖尿病が惹き起こされた。陽性対照のグリチルリチンは、血中グルコース濃度の上昇を27.7%抑制した。これに対し本発明のベンゾピラン誘導体は、当該ストレプトゾトシン糖尿病モデルに対し、約35〜85%の血中グルコース濃度の抑制を示し、特に化合物38は86.5%の強力な抑制作用を有し、ほぼ正常レベルまで血中グルコース濃度を低減した。然るに、本発明のベンゾピラン誘導体は、糖尿病の治療薬として極めて有用であることが明らかである。
【0051】
(実施例3)(5%散剤)
乳鉢で、化合物22の結晶を粉砕し、それに乳糖を添加し、乳棒で粉砕しながら、充分混合し、5%散剤とした。
【0052】
(実施例4)(10%顆粒)
乳鉢内で、化合物34を等量のでんぷんと混合粉砕した。これに乳糖、でんぷんの残分を加え混合した。別にゼラチン30mgに精製水1mlを加えて、加熱溶解し、冷後かき混ぜながらこれにエタノール1mlを加え、ゼラチン液としたものを調製し、先の混合物にゼラチン液を添加練合し、造粒した後、乾燥して整粒した。
【0053】
(実施例5)(5mg錠)
乳鉢内で上記配合の20倍量の化合物を用いて5mg錠剤の製造をした。すなわち、100mgの化合物23の結晶を粉砕し、それに乳糖及びでんぷんを加え混合する。10%でんぷんのりを上記の配合体に加え練合し、造粒する。乾燥後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混合し、常法により打錠した。
【0054】
(実施例6)(20mg錠)
上記記載の10倍量を用いて、20mg錠剤を製造した。すなわち、ヒドロキシプロピルセルロース6gを適量のエタノールに溶解し、これに乳糖94gを添加して練合した。少し乾燥した後、60号ふるいにて整粒し、6%ヒドロキシプロピルセルロース乳糖とした。またステアリン酸マグネシウムとタルクを1:4の割合で混合しステアリン酸タルクとした。化合物35、6%ヒドロキシプロピルセルロース乳糖、ステアリン酸タルク、バレイショデンプンをよく混合し、常法により打錠した。
【0055】
(実施例7)(25mg錠)
乳鉢内で上記化合物の各々10倍量を用いて25mg錠剤を製造した。すなわち、乳鉢内で250mgの化合物1の結晶を粉砕し、それに乳糖を加えながら充分混合する。カルボキシメチルスターチに適量の精製水を加え、上記の混合物に添加練合し、造粒する。乾燥後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混合し、常法により打錠した。
【0056】
(実施例8)(10mgカプセル剤)
実施例4と同様の方法で顆粒を製造し、該顆粒100mgづつをカプセルに充填した。
【0057】
(実施例9)(0.1%注射剤)
ポリエチレングリコール400とポリソルベート80の混合液に化合物23を溶解し、これに注射用蒸留水を徐々に加え全量を10mlとし、無菌的にアンプルに充填した。
【0058】
【発明の効果】
優れた血糖値の低減作用を有する、経口投与可能で安全性に優れた糖尿病治療剤を提供できる。
【産業上の利用分野】
本発明は、ベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より糖尿病治療剤としては、インシュリン、スルホニルウレア系化合物及びビグアナイド系化合物が知られている。しかしながら、インシュリンは経口投与が困難であり、スルホニルウレア系化合物は強力な血糖低下作用を有するが、しばしば重篤かつ遷延性の低血糖を惹き起こすため問題となっており、またビグアナイド系化合物は重篤な乳酸アシドーシス及び低血糖を惹き起こすため現在ではほとんど用いられていない。従って、糖尿病患者に対しては、食事療法及び運動療法を中心に治療がなされているのが現状である。また最近グリチルリチンに血糖低下作用があることが報告されているが(渡仲三ら、代謝、第29巻、254−263頁、1992年)、長期にわたる大量経口投与によって偽アルドステロン症と呼ばれる副作用があることが知られている。
【0003】
一方、本発明者らは本発明化合物を包含する、種々のベンゾピラン誘導体並びにその生理学的に許容される塩が優れた抗アレルギー作用を有することを既に見出している(WO92/13852)。しかしながら、本発明のベンゾピラン誘導体が優れた糖尿病治療作用を有することは、従来全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、経口投与可能で安全性に優れた糖尿病治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、既存糖尿病治療薬の問題点を解決するため、多数の化合物を合成し、それらの糖尿病治療作用を検討した結果、一般式(1)で表されるベンゾピラン誘導体が、経口投与により優れた糖尿病治療作用を有するとともにその毒性が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、一般式(1)
【0007】
【化2】
【0008】
(式中R1は水素原子、アシル基、アルキル基又はアルケニル基を、R2はアルキル基又はアルケニル基を、R3は水素原子又はアシル基を示す)で表されるベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤に関するものである。
【0009】
以下本発明の糖尿病治療作用を有する化合物について説明する。
本発明の糖尿病治療剤は上記一般式(1)で示される化合物を有効成分とする。一般式(1)において、R1としては水素原子、アシル基、アルキル基、アルケニル基である。
【0010】
アシル基の好ましい例としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等のアルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基が挙げられる。特に好ましくは、炭素数2〜5のアルカノイル基、ベンゾイル基が挙げられる。
【0011】
アルキル基は、直鎖状又は分岐状のどちらでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0012】
R1のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐状のどちらでもよく、好ましくは例えばビニル基、プロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、3ーメチル−2−ブテニル基、3ーメチル−3−ブテニル基、ゲラニル基、デセニル基等が挙げられる。特に好ましくは、炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0013】
また一般式(1)のR2としてはアルキル基、アルケニル基が挙げられる。
R2のアルキル基としては直鎖状又は分岐状どちらでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられ、好ましくはエチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数2〜8のアルキル基であり、更に好ましくはヘキシル基等の炭素数6のアルキル基である。。
【0014】
R2のアルケニル基としては直鎖状又は分岐状のどちらでもよく、例えばビニル基、プロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3ーメチル−3−ブテニル基、ノニル基、デセニル基、ゲラニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の炭素数2〜8のアルケニル基であり、更に好ましくはヘキセニル基等炭素数6のアルケニル基である。
【0015】
一般式(1)のR3としては水素原子又はアシル基が挙げられる。
R3のアシル基の例としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等のアルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のアルカノイル基が挙げられる。
【0016】
本発明の糖尿病治療剤の有効成分は、特に好ましいものとして、一般式(1)においてR1及びR2がアルキル基でありR3が水素原子である化合物や、R1及びR3が水素原子でありR2がアルキル基である化合物や、R1及びR3がアシル基でありR2がアルキル基である化合物等が挙げられる。
【0017】
次に本発明の具体的な化合物例を表1〜6に列挙する。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】
【表5】
【0023】
【表6】
本発明の一般式(1)で示されるベンゾピラン誘導体は、本発明者らが先に出願した既知化合物であり、本発明者らが提案した合成方法により製造することが出来、詳細はWO92/13852に記載してある。製造方法として一例を挙げると、例えば化合物36(3,7−ジアセトキシ−4−エトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン)を製造する場合の概略は以下の通りである。
【0024】
【化3】
【0025】
まず、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン(a)のヒドロキシル基をベンジル基で保護し(b)とする。次に炭酸ジメチルにより増炭反応を行いケトエステル体(c)とし、更に過酸化ベンゾイルと反応させ(d)とする。ここでヒドロキシル基の保護基として用いているベンジル基を水素化分解により脱保護し、酸で処理する事によりベンゾイルオキシ体(e)となる。このベンゾイルオキシ体(e)を、非水系で金属アルコキシドを用いる事によりベンゾイル基の脱離を行い、ベンゾピラン誘導体(f)が得られる。次に、ベンゾピラン誘導体(f)の3位及び7位水酸基のアシル化を行い、3,7−ジアセトキシ−4−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(g)を得、更に氷冷下、ジアセトキシ体(g)を臭化エチルと室温にて反応させ、本化合物を合成することが出来る。
【0026】
また、本発明のベンゾピラン誘導体の生理学的に許容される塩も本発明の範囲に含まれる。ここでいう生理学的に許容される塩とは、例えば上記に示される化合物のアルカリ付加塩であり、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の無毒の塩が挙げられる。
【0027】
本発明のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤は、経口又は非経口投与(例えば静脈内投与、皮下投与、経皮投与又は直腸内投与等)することが出来、投与に際してはそれぞれの投与法に適した製剤形態に調製することが出来る。
【0028】
かかる製剤は、その用途に応じて錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、トローチ剤、舌下錠、坐剤、軟膏剤、注射剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤等の製剤形体に調製することが出来る。
【0029】
これらの調製に際しては、例えばこの種の薬剤に通常使用されている無毒の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、等張化剤、緩衝剤、コーティング剤、矯味剤、溶解補助剤、基剤、分散剤、安定化剤、着色剤等の添加剤を使用して公知の方法により製剤化することが出来る。
【0030】
前記使用し得る無毒性の添加剤の具体例を列挙すると、以下のようである。
まず、賦形剤としては、でんぷん及びその誘導体(デキストリン、カルボキシメチルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、糖類(乳糖、白等、ブドウ糖等)、ケイ酸及びケイ酸塩類(天然ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等)、水酸化アルミニウム・マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、ポリオキシエチレン誘導体、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0031】
結合剤としては、でんぷん及びその誘導体(アルファー化デンプン、デキストリン等)、セルロース及びその誘導体(エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、糖類(ブドウ糖、白糖等)、エタノール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0032】
崩壊剤としては、でんぷん及びその誘導体(カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ等)、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム等)、トラガント、ゼラチン、寒天等が挙げられる。
【0033】
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸及びその塩類(軽質無水ケイ酸、天然ケイ酸アルミニウム等)、酸化チタン、リン酸水素カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、マクロゴール等が挙げられる。
【0034】
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、リン酸塩類(リン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等)、アルコール類(クロロブタノール、ベンジルアルコール等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸グリセリン、糖類等が挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)、ロンガリット、エリソルビン酸、L−アスコルビン酸、システイン、チオグリセロール、ブチルヒドロキシアニゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、dl−αートコフェロール等が挙げられる。
【0036】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、デキストリン、グリセリン、ブドウ糖等が挙げられる。
緩衝剤としては、炭酸ナトリウム、塩酸、ホウ酸、リン酸塩(リン酸水素ナトリウム等)等が挙げられる。
【0037】
コーティング剤としては、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)、セラック、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン類(ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−2−ビニル−5−エチルピリジン等)、ポリビニルアセチルジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタアクリレート・メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0038】
矯味剤としては、糖類(ブドウ糖、白糖、乳糖等)、サッカリンナトリウム、糖アルコール類等が挙げられる。
溶解補助剤としては、エチレンジアミン、ニコチン酸アミド、サッカリンナトリウム、クエン酸、クエン酸塩類、安息香酸ナトリウム、石鹸類、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン、ポリプレングリコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0039】
基剤としては、脂肪類(豚脂等)、植物油(オリーブ油、ゴマ油等)、動物油、ラノリン酸、ワセリン、パラフィン、ロウ、樹脂、ベントナイト、グリセリン、グリコール油、高級アルコール類(ステアリルアルコール、セタノール等)等が挙げられる。
【0040】
分散剤として、アラビアゴム、トラガント、セルロース誘導体(メチルセルロース等)、ステアリン酸ポリエステル類、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0041】
最後に安定化剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸水素ナトリウム等)、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。
また、かかる製剤中における本発明によるベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩の含有量は、その剤型に応じて異なるが、一般に0.01〜100重量%の濃度で含有している事が望ましい。
【0042】
本発明によるベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩を含有する糖尿病治療剤の投与量は、対象とする人間をはじめとする温血動物の種類、症状の軽重、医師の判断等により広範囲に変える事が出来るが、一般に有効成分として、経口投与の場合、体重1kg当たり1日に0.01〜300mg/kg、好ましくは、0.05〜100mg/kg、非経口投与の場合、体重1kg当たり1日に0.01〜100mg/kg、好ましくは0.01〜50mg/kg投与する事が好ましい。また、上記投与量は1日1回叉は数回に分けて投与する事が出来る。これらは患者の症状の軽重、医師の診断に応じて適宜変えることが出来る。
【0043】
以下に実施例によって本発明のベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩の糖尿病治療作用について具体的に説明するが、もとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
【実施例】
【0045】
(実施例1)マウス急性毒性試験
本実施例は、本発明によるベンゾピラン誘導体及びその生理学的に許容される塩の安全性を確認するため行ったものである。以下に試験方法を説明する。
試験方法:マウス用胃ゾンデを用いて化合物1〜48の各ベンゾピラン誘導体1000及び2000mg/kgを1群5匹のマウス(ICR系雄性 体重20〜25g)に強制経口投与した。経口投与後、ケージ内にて7日間飼育し、死亡動物の有無及び一般状態を観察し、観察終了時のマウスの生存率より概略の50%致死量(LD50:mg/kg)を推定した。
この結果、表1に記載する全てのベンゾピラン誘導体のLD50は2000mg/kg以上であり、本発明のベンゾピラン誘導体は極めて安全性が高い事が判明した。
【0046】
(実施例2)ストレプトゾトシン糖尿病モデルによる薬効試験
本実施例は、本発明のベンゾピラン誘導体の糖尿病治療作用を確認するために行った。ストレプトゾトシン糖尿病モデルは、従来より一般的に糖尿病治療薬の効力評価に用いられている病態動物モデルである(新薬開発のための動物利用集成,419−422頁,R&Dプランニング,1985年)。
以下に試験方法を説明する。
6週齢の雄性ウイスター系ラットの尾静脈にストレプトゾトシン50mg/kgを1回投与することにより糖尿病を惹起した。本発明のベンゾピラン誘導体は、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁し、100mg/5ml/kgをストレプトゾトシン投与の1時間前に経口投与し、翌日より1日1回13日間連続経口投与した。最終投与の翌日、約24時間絶食した動物をエーテル麻酔し、腹大静脈より採血して血中グルコース濃度(mg/dl)を測定した(グルコキナーゼ・G−6PDH法;736−10型自動分析装置:日立製作所)。正常群としてストレプトゾトシン無投与の群、病態群として本発明のベンゾピラン誘導体の代わりに0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液のみを5ml/kg投与した群及び陽性対照群として本発明のベンゾピラン誘導体の代わりにグリチルリチン20mg/5ml/kgを投与した群を設けた。グリチルリチンは渡仲三らによりストレプトゾトシン糖尿病モデルに対して治療効果を有する事が既に報告されている(代謝,第29卷,254−263頁,1992年)。本実施例の結果を表7〜8に抑制率として示した。尚、抑制率(%)は式1により算出した。
【0047】
(式1)
抑制率(%)=〔1−(ベンゾピラン誘導体投与群又は陽性対照群の血中グルコース濃度−正常群の血中グルコース濃度)/(病態群の血中グルコース濃度−正常群の血中グルコース濃度)〕×100
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
病態群では、ストレプトゾトシン投与により血中グルコース濃度が398mg/dlと、正常群の濃度110mg/dlと比較して高値を示し、ストレプトゾトシン膵臓障害による糖尿病が惹き起こされた。陽性対照のグリチルリチンは、血中グルコース濃度の上昇を27.7%抑制した。これに対し本発明のベンゾピラン誘導体は、当該ストレプトゾトシン糖尿病モデルに対し、約35〜85%の血中グルコース濃度の抑制を示し、特に化合物38は86.5%の強力な抑制作用を有し、ほぼ正常レベルまで血中グルコース濃度を低減した。然るに、本発明のベンゾピラン誘導体は、糖尿病の治療薬として極めて有用であることが明らかである。
【0051】
(実施例3)(5%散剤)
乳鉢で、化合物22の結晶を粉砕し、それに乳糖を添加し、乳棒で粉砕しながら、充分混合し、5%散剤とした。
【0052】
(実施例4)(10%顆粒)
乳鉢内で、化合物34を等量のでんぷんと混合粉砕した。これに乳糖、でんぷんの残分を加え混合した。別にゼラチン30mgに精製水1mlを加えて、加熱溶解し、冷後かき混ぜながらこれにエタノール1mlを加え、ゼラチン液としたものを調製し、先の混合物にゼラチン液を添加練合し、造粒した後、乾燥して整粒した。
【0053】
(実施例5)(5mg錠)
乳鉢内で上記配合の20倍量の化合物を用いて5mg錠剤の製造をした。すなわち、100mgの化合物23の結晶を粉砕し、それに乳糖及びでんぷんを加え混合する。10%でんぷんのりを上記の配合体に加え練合し、造粒する。乾燥後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混合し、常法により打錠した。
【0054】
(実施例6)(20mg錠)
上記記載の10倍量を用いて、20mg錠剤を製造した。すなわち、ヒドロキシプロピルセルロース6gを適量のエタノールに溶解し、これに乳糖94gを添加して練合した。少し乾燥した後、60号ふるいにて整粒し、6%ヒドロキシプロピルセルロース乳糖とした。またステアリン酸マグネシウムとタルクを1:4の割合で混合しステアリン酸タルクとした。化合物35、6%ヒドロキシプロピルセルロース乳糖、ステアリン酸タルク、バレイショデンプンをよく混合し、常法により打錠した。
【0055】
(実施例7)(25mg錠)
乳鉢内で上記化合物の各々10倍量を用いて25mg錠剤を製造した。すなわち、乳鉢内で250mgの化合物1の結晶を粉砕し、それに乳糖を加えながら充分混合する。カルボキシメチルスターチに適量の精製水を加え、上記の混合物に添加練合し、造粒する。乾燥後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混合し、常法により打錠した。
【0056】
(実施例8)(10mgカプセル剤)
実施例4と同様の方法で顆粒を製造し、該顆粒100mgづつをカプセルに充填した。
【0057】
(実施例9)(0.1%注射剤)
ポリエチレングリコール400とポリソルベート80の混合液に化合物23を溶解し、これに注射用蒸留水を徐々に加え全量を10mlとし、無菌的にアンプルに充填した。
【0058】
【発明の効果】
優れた血糖値の低減作用を有する、経口投与可能で安全性に優れた糖尿病治療剤を提供できる。
Claims (7)
- R1が水素原子、アシル基、アルキル基又はアルケニル基であり、R2が炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R3は水素原子又はアシル基である請求項1記載のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤。
- R1が水素原子又はアシル基であり、R2が炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R3は水素原子又はアシル基である請求項2記載のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤。
- R1及びR3が水素原子であり、R2が炭素数1〜12のアルキル基である請求項2記載のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤。
- R1及びR3がアシル基であり、R2が炭素数1〜12のアルキル基である請求項2記載のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤。
- R1が炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R2が炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R3は水素原子又はアシル基である請求項2記載のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤。
- アシル基がアルカノイル基である請求項1、2、3、5又は6記載のベンゾピラン誘導体又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする糖尿病治療剤。
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