JP3112754B2 - シクロアルケノン化合物及び該化合物を有効成分とする脳機能改善薬 - Google Patents

シクロアルケノン化合物及び該化合物を有効成分とする脳機能改善薬

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JP3112754B2
JP3112754B2 JP04273521A JP27352192A JP3112754B2 JP 3112754 B2 JP3112754 B2 JP 3112754B2 JP 04273521 A JP04273521 A JP 04273521A JP 27352192 A JP27352192 A JP 27352192A JP 3112754 B2 JP3112754 B2 JP 3112754B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なシクロアルケノン
化合物及び該化合物を有効成分とする脳機能改善薬、特
に脳卒中後遺症の治療薬に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明に係る式(I)で表されるシクロ
シクロアルケノンに類似した化合物は、特開昭49−5
944号公報、特開昭49−85050号公報等に記載
されている。これらの化合物は鎮痛剤、鎮静剤、精神安
定剤、解熱剤、抗けいれん剤、糖尿病治療剤等の医薬と
して有用であると述べられている。しかしながら、これ
らの化合物の脳機能改善作用については全く知られてい
ないし、示唆さえされていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、シクロ
ヘキサンジオン類及びシクロペンタンジオン類を原料と
して多くの化合物を合成し、これらの化合物につき種々
検討を重ねた結果、式(I)で表されるシクロアルケノ
ン化合物が公知の脳機能改善作用を示す薬剤とは化学構
造的に異なるにも拘らず優れた脳機能改善作用を有する
との知見を得、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は化2[式
(I)]
【0005】
【化2】
【0006】(式中、R1は塩素原子、臭素原子、沃素原
子等のハロゲン原子を表し、R2及びR3はそれぞれ水素
原子又はメチル基を表し、nは1又は2を表し、mは0
又は1を表す。)で表わされるシクロアルケノン化合物
及び該化合物を有効成分とする脳機能改善薬に関する。
【0007】本発明の脳機能改善薬として好ましい化合
物を、式(I)の各置換基で示すと、R1としては塩素
原子を、R2及びR3としてはいずれも水素原子又はいず
れもメチル基を挙げることができ、nとしては1を挙げ
ることができる。従って、本発明では前記の各置換基の
条件を複数以上満たす化合物が更に好ましい化合物とな
る。
【0008】以下に、好ましい化合物の具体例を示す。 (化合物1) (±)−3−[(トランス 2−クロロ
シクロペンチル)アミノ]−2−シクロヘキセン−1−
オン (化合物2) (±)−3−[(トランス 2−クロロ
シクロペンチル)アミノ]−5,5−ジメチル−2−シ
クロヘキセン−1−オン (化合物4) (±)−3−[(トランス 2−クロロ
シクロペンチル)アミノ]−2−シクロペンテン−1−
オン
【0009】本発明によって提供される式(I)で示さ
れるシクロアルケノン化合物は、以下の方法に従って製
造することができる。即ち、式(II)で示される1,3
−シクロアルカンジオン類と式(III)で示されるアミ
ン類を出発原料として反応させることにより、式(I)
で示されるシクロアルケノン化合物を製造することがで
きる。
【0010】
【化3】
【0011】(式(II)及び式(III)のR1,R2,R3
は式(I)のそれと同じ意味を表す。)以下、製造方法
を詳細に述べると、式(III)で示される化合物の使用
量は、式(II)で示される化合物1モルに対し、通常1
モル以上であればよく、その上限に特に限定はないが、
一般的に約1−3モル程度、さらには約1−1.5モル
程度が実用上望ましい。本反応は通常溶媒中で行なわ
れ、この溶媒としては本反応を阻害しない溶媒であれば
いかなるものでもよく、例えば芳香族炭化水素類(例、
ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、エーテル類
(例、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アルコ
ール類(例、エタノール、プロパノール、イソプロパノ
ールなど)などが使用される。反応温度、時間などの反
応条件は特に限定はないが、室温から反応に用いられる
溶媒の沸点附近の温度で1−6時間程度反応を行なうの
が一般的である。
【0012】本発明では、更に好ましい製造方法とし
て、式(II)の化合物と式(III)の化合物をベンゼ
ン、トルエンなどの芳香族炭化水素類に溶解し、パラト
ルエンスルホン酸を触媒として加え、生成する水を共沸
除去しながら還流する方法(パラトルエンスルホン酸
法)が挙げられる。かくして得られた式(I)の化合物
は公知の処理手段(例えば、抽出、蒸留、再結晶、クロ
マトグラフィーなど)によって単離、精製することがで
きる。
【0013】本発明に係る化合物は、シアン化カリウム
(KCN)致死に対する生存時間の延長を示し、かつ脳
虚血に対しても有効な効果を示すことから、脳虚血改善
薬、特に脳卒中後遺症の治療薬として有用である。
【0014】本発明に係る化合物を脳機能改善薬として
使用する場合には、経口又は非経口などの適当な投与方
法により投与することができる。経口投与用の形態とし
ては、例えば錠剤、顆粒、カプセル剤、丸剤、散剤など
が、また、非経口投与用の形態としては、例えば、注射
剤、座剤、液剤などが挙げられる。これら医薬投与用組
成物の製剤化に際しては、本発明の化合物(場合により
その塩)を常法に従い調製することができる。
【0015】例えば、経口剤の場合には乳糖、ブドウ
糖、コーンスターチ、ショ糖などの賦形剤、カルボキシ
メチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセル
ロースなどの崩壊剤、ステアリン酸カルシウム、ステア
リン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコー
ル、硬化油などの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシ
メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、
アラビアゴムなどの結合剤、グリセリン、エチレングリ
コールなどの湿潤剤、その他必要に応じて界面活性剤、
矯味剤などを使用して所望の投与剤型に調製することが
できる。
【0016】また、非経口剤の場合には、水、エタノー
ル、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレン
グリコール、寒天、トラガラントガム、などの希釈剤を
用い、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、香
料、着色剤などを用いて調製することができる。
【0017】本発明の化合物を脳機能改善剤として処方
する場合、その投与単位は本発明化合物として、成人一
人当たり、経口投与の場合、1日5〜500mg、好まし
くは5〜50mg、非経口投与の場合、1日1〜100m
g、好ましくは1〜10mgの範囲で投与され、それぞれ
1日1〜3回の分割投与により所望の治療効果が期待で
きる。
【0018】
【実施例】次に本発明に係る化合物の合成例、製剤例、
試験例を実施例として示す。 (合成例)
【0019】実施例1 (±)−3−[(トランス 2−クロロシクロペンチ
ル)アミノ]−2−シクロヘキセン−1−オン(化合物
1)の合成 (±)−トランス 2−クロロシクロペンチルアミン
0.50g(4.18ミリモル)、1,3−シクロヘキサンジ
オン 0.48g(4.18ミリモル)及びパラトルエンスルホ
ン酸0.10gをベンゼン30mlに溶解し、ディーン
スターク管で水分を共沸除去しながら1.5時間還流す
る。反応後、反応液を飽和炭酸ソーダ水にて洗浄し、芒
硝で乾燥し、溶媒を留去して結晶を得る。この結晶をベ
ンゼン溶媒で再結晶を行ない目的化合物の黄色粉状結晶
0.57g(収率64%)を得る。 分析値 H−NMR(PPM,CDCl3) 1.50−2.75(12H,m), 3.87(1H,
m), 4.14(1H,m), 5.30(1H,
s), 5.70(1H,br) 融点:158.5−159.0℃ IRνmaxcm-1(KBr) 3250,1600,1580,1535,1255,
1190
【0020】実施例2〜6 実施例1とほぼ同様にして、以下の化合物を合成した。
収率及びNMR等の分析値を以下に示す。
【0021】実施例2 (±)−3−[(トランス 2−クロロシクロペンチ
ル)アミノ]−5,5−ジメチル−2−シクロヘキセン
−1−オン(化合物2)の合成 収率:61% 分析値 H−NMR(PPM,CDCl3) 1.07(6H,s), 2.16(2H,s), 2.
19(2H,s),1.20−2.75(6H,m),
3.85(1H,m), 4.11(1H,m), 4.
30(1H,br), 5.23(1H,s) 融点:190.0−191.5℃ IRνmaxcm-1(KBr) 3225,2960,1550,1270,1255,
1155
【0022】実施例3 (±)−3−[(シス 2−クロロシクロペンチル)ア
ミノ]−5,5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−
オン(化合物3)の合成 収率:89% 分析値 H−NMR(PPM,CDCl3) 1.08(6H,s), 1.40−2.25(6H,
m), 2.21(4H,s), 3.84(1H,
m), 4.55(1H,m), 4.56(1H,b
r), 5.12(1H,s) 融点:198.5−199.0℃ IRνmaxcm-1(KBr) 3230,3040,2970,1555,1280,
1255,1155
【0023】実施例4 (±)−3−[(トランス 2−クロロシクロペンチ
ル)アミノ]−2−シクロペンテン−1−オン(化合物
4)の合成 収率:55% 分析値 H−NMR(PPM,CDCl3) 1.50−1.58(1H,m), 1.78−1.87
(1H,m), 1.93−2.05(2H,m),
2.16−2.22(1H,m), 2.36−2.43
(3H,m), 2.58(2H,m), 3.83(1
H,m), 4.13(1H,m), 5.05(1H,
br), 5.18(1H,s) 融点:149.5−150.5℃ IRνmaxcm-1(KBr) 3200,2990,2930,1635,1570,
1435,1320,1275,1205
【0024】実施例5 (±)−3−[(シス 2−クロロシクロペンチル)ア
ミノ]−2−シクロペンテン−1−オン(化合物5)の
合成 収率:81% 分析値 H−NMR(PPM,CDCl3) 1.71−1.79(2H,m), 1.98−2.08
(1H,m), 2.11−2.19(3H,m),
2.40−2.43(2H,m), 2.60−2.62
(2H,m), 3.80(1H,m), 4.52(1
H,m), 5.05(1H,s), 5.21(1H,
br) 融点:171.0−172.5℃ IRνmaxcm-1(KBr) 3200,2990,1630,1570,1435,
1320,1280,1205,1150
【0025】実施例6 3−[(2−ヨードシクロヘキシル)アミノ]−2−シ
クロヘキセン−1−オン(化合物6) 分析値 H−NMR(PPM,CDCl3) 1.15−1.49(3H,m), 1.60−1.67
(1H,m), 1.80−1.83(1H,m),
1.94−2.15(3H,m), 2.26−2.53
(6H,m), 3.41−3.49(1H,m),
3.95−4.02(1H,m), 4.45(1H,b
r), 5.13(1H,s) IRνmaxcm-1(KBr) 2940,1580,1545,1270,1190
【0026】(製剤例) 実施例7(錠剤の調製) 本発明化合物(化合物1) 250g 乳糖 620g コーンスターチ 400g ヒドロキシプロピルセルロース 20g ステアリン酸マグネシウム 10g 上記の本発明化合物、乳糖及びコーンスターチを均一に
なるまで混合した後、ヒドロキシプロピルセルロースの
5W/V%エタノール溶液を加えて練合、顆粒化する。1
6メッシュの篩に通し整粒した後、常法により打錠し、
1錠当りの重量130mg、直径7mm、主薬含量25mgの
錠剤とした。
【0027】(試験例) 試験例1 シアン化カリウム(KCN)投与後の生存時間に対する
作用 試験方法:ddY系雄性マウス(5週齢、一群10匹)
にKCN3.0mg/kgを5秒間に尾静脈内投与し、呼吸
停止までの時間(生存時間)を測定した。被験化合物は
生理食塩水に溶解し、溶解不可能なものは0.5%ツイ
ーン80(Tween80)で懸濁して、50mg/kgを容量と
して10ml/kgの割合で実験開始30分前に腹腔内投与
した。なお、対照には生理食塩水を10ml/kgの割合で
実験開始30分前に腹腔内投与した。
【0028】試験結果:以下に示した。 対照群の平均生存時間(50秒)を100%として、各
被験化合物の延命率(%)を算出した。 被験化合物 延命率(%) 対照 100 化合物1 168 化合物2 215 化合物3 143 化合物4 131
【0029】試験例2 抗脳虚血試験 試験方法:戸部らの方法(日本薬理学雑誌81卷421
−429頁、1983年)に準じ、ddY系雄性マウス
(体重24−27g、対照群12匹、被験化合物群8−
11匹)に生理食塩水又は被験化合物50mg/kgを腹腔
内に投与し、投与30分後に断頭した。断頭後、頭部の
ガスピング(gasping)様呼吸が停止するまでの
時間(生存時間)を測定した。
【0030】試験結果:以下に示した。 対照群の平均生存時間(18秒)を100%として、各
被験化合物の延命率(%)を算出した。 被験化合物 ガスピング持続時間(%) 対照 100 化合物1 123 化合物2 115 化合物4 115 化合物5 120 化合物6 114
【0031】試験例3(急性毒性) 試験方法:ddY系雄性マウス(7−8週齢,2−3
匹)を用いた。被験化合物は生理食塩水に溶解し、溶解
不可能なものは0.5%カルボキシメチルセルロース
(CMC)で懸濁して、10ml/kgの割合で腹腔内に投
与した。動物の生死は投与後3日まで観察を行なった。
【0032】試験結果(死亡例/実験例)を以下に示し
た。
【0033】
【発明の効果】本発明化合物は強い低酸素障害及び脳虚
血に対する改善作用を有し、脳卒中などにより発生する
脳障害に対して脳機能改善作用をしめす。また、本発明
化合物の毒性は低く、経口及び非経口投与のどちらにお
いても効果を示すことから、人に使用するための医療用
薬剤としても有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 225/20 A61K 31/13 A61P 25/28 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】化1[式(I)] 【化1】 (式中、R1はハロゲン原子を表し、R2及びR3はそれぞ
    れ水素原子又はメチル基を表し、nは1又は2を表し、
    mは0又は1を表す)で表わされるシクロアルケノン化
    合物。
  2. 【請求項2】R1が塩素原子であり、nが1である請求
    項1記載のシクロアルケノン化合物。
  3. 【請求項3】R2及びR3がいずれもメチル基である請求
    項2記載のシクロアルケノン化合物。
  4. 【請求項4】請求項1記載の化合物を有効成分とする脳
    機能改善薬。
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