JP3601573B2 - ピストンリングの組付装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのピストンにピストンリングを組付けるための装置、特に上下方向に波形をなすピストンリングを組付けるための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ピストンにピストンリングを組付けるための装置は、一般に図6に示すような構造を有していた。同図において、1はベースであり、このベース1上には、ピストンリング2の複数を重合状態でかつ拡張状態で嵌合保持する有底筒状の内径拘束治具3が載置固定されている。また、このベース1の側方には、前記内径拘束治具3に嵌合保持されたピストンリング2の全体を上昇させる押上手段4が配設されている。押上手段4は、内径拘束治具3に摺動可能に嵌合され前記ピストンリング2の全体を支持する昇降プレート5と、上および下架台6、7の間に軸受(図示略)を介して回動可能に橋架されたボールネジ8と、このボールネジ8に螺合され前記昇降プレート5を支持するナット9と、下架台7に固定され前記ボールネジ8を回転させるモータ(ステッピングモータ)10とを備えている。このような押上手段4においては、モータ10の作動によりボールネジ8を回転させると、ナット9がこのボールネジ8上を螺進退し、これと一体に昇降プレート5が昇降動するようになる。
【0003】
一方、上記内径拘束治具3内には、ピストン11を浮動可能に支持する支持手段12が配設されている。この支持手段12は、ピストン11を受ける受け板13を上端に有し、下端部が内径拘束治具3の底部に形成した軸孔3aに挿入された軸部材14と、前記軸孔3a内に配置され、常時は前記軸部材14を上方へ付勢するばね15と、内径拘束治具3の内底部に配置され、該軸部材14をガイドする軸ガイド16とからなっている。なお、内径拘束治具3内には、前記受け板13に係合し、ピストン11の下降位置を確認するためのリミットスイッチ17が配設されている。
【0004】
上記した組付装置によりピストンリング2の組付けを行うには、予め押上手段4のナット9すなわち昇降板5を最下降位置に位置決めし、内径拘束治具3に複数のピストンリング2を嵌合させながら、これらを前記昇降板8上に順次積重ねていく。そして、所定数のピストンリング2を積重ねたところで、例えば、ロボットのようなハンドリング装置(図示略)に持たせたピストン11を内径拘束治具3内に挿入し、その頂部が下向きとなるように軸部材14の上端の受け板13に載せ、そのままばね15の付勢力に抗して軸部材14を押下げる。すると、受け板13がリミットスイッチ17に係合し、その信号により前記ハンドリング装置の作動が停止され、ピストン11が所定の組付位置に位置決めされる。
【0005】
一方、上記ハンドリング装置の作動停止によりステップモータ10が作動し、ボールネジ8が回転してナット9すなわち昇降プレート5が所定量上昇する。これにより、最上段のピストンリング2aが内径拘束治具3の上端から押出され(離脱し)、自己収縮で下側のピストンリング2から分離し、ピストン11の対応するリング溝11aに嵌入する。その後は、ハンドリング装置によりピストンリング2(2a)を組付けたピストン11が搬出され、代わりに新たなピストン11が内径拘束治具3内に挿入され、以降、上記手順の繰返しにより新たなピストン11のリング溝11aに順次ピストンリング2が組付けられ、内径拘束リング3に保持されたピストンリング3の全数の組付けは終了する。
【0006】
なお、この種の組付装置としては、例えば、特開昭63−306843号公報に記載されるように、ピストン11をハンドリングするハンドリング装置にピストンリング2の上昇端を検出するセンサ(近接スイッチ)を持たせ、該センサのの検出信号に基づいて押上手段4のモータ10を停止させるようにしたものもある。このものによれば、ピストン11のリング溝11aに対するピストンリング2の位置は常に一定となり、ピストンリング2の高さ(厚さ)の累積誤差による分離不能を未然に防止できる利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ピストンリングとしては、図7および8に示すように上下方向に波形をなすオイルリング20がある。このようなオイルリング20を上記した組付装置(図6)をそのまま利用してピストン11に組付けようとすると、相互の重なりによって摩擦抵抗が増大しているため、最上段のオイルリング20aが内径拘束治具3から離脱しても、その自己収縮(縮径)が抑えられ、下側のピストンリング20からの分離、すなわちピストン11のリング溝11aへの組付けが困難になる。この傾向は、図8に示すように波形の開き角度θが小さくなって、相互の重なり代Sが大きくなるほど顕著となる。そこで従来は、内径拘束治具3の外径を拡大してオイルリング20の拡張量(拡径量)を増大させ、その収縮力を高めて前記分離を促進するように対策していた。
【0008】
しかしながら、上記対策によれば、内径拘束治具3に保持されているオイルリング20と内径拘束治具3内に位置決めされたピストン11との間の距離が拡大するため、分離された最上段のオイルリング20aが、上下方向へ揺動しながら自己収縮し、シリンダ11のリング溝11aへの該オイルリング20aの嵌入が困難になる、という新たな問題が生じることとなっていた。
【0009】
また、オイルリング20の拡張量を増大させた場合、図9に示すように、内径拘束治具3に対してオイルリング20が3つの点P 〜P での当たりとなるため、上記昇降プレート5によりオイルリング20を上昇させる際、接触抵抗の違いによりオイルリング20に歪み(変形)が生じ、上記同様にリング溝11aへのオイルリング20aの嵌入が困難になる、という問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的とするところは、上下方向に波形をなすピストンリングを多段階に縮小させることにより、縮小中におけるピストンリングの揺動を抑え、もってピストンへの円滑な組付けを可能にすることにある。
また、第2の目的とするところは、上記した縮小中におけるピストンリングの揺動を抑えることに加え、該ピストンリングの内径拘束治具に対する接触面積を増加させることにより、上昇中におけるピストンリングの変形を抑制し、もってピストンへのより円滑な組付けを可能にすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するための本発明の構成は、上下方向に波形をなすピストンリングの複数を重合状態でかつ拡張状態で嵌合保持する筒状の内径拘束治具と、前記内径拘束治具に嵌合保持されたピストンリングの全体を支持し該内径拘束治具に沿って上昇させる押上手段と、前記内径拘束治具に嵌合保持された最上段のピストンリングの上昇端を検知し、前記押上手段の駆動源を停止させる制御手段とを備え、前記押上手段の作動により最上段のピストンリングを前記内径拘束治具から離脱させて、該内径拘束治具の内部に位置決めされたピストンのリング溝に嵌入させるようにしたピストンリングの組付装置において、前記内径拘束治具を、相互の分離力を増大させるべく前記ピストンリングを大きく拡張させるように大径に形成すると共に、前記内径拘束治具の内部に、該内径拘束治具から離脱したピストンリングが一旦乗り移って停止する一つまたは複数の副内径拘束治具を前記内径拘束治具に沿って昇降可能に配設し、該副内径拘束治具を昇降動させることによりこの上に停止している前記ピストンリングを該副内径拘束治具から離脱させて、前記ピストンのリング溝に嵌入させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
このように構成したピストンリングの組付装置においては、内径拘束治具から離脱した最上段のピストンリングは、一旦副内径拘束治具に乗り移った後、副内径拘束治具の昇降動によりピストンのリング溝に嵌入する。すなわち、ピストンリングは多段階に自己収縮してリング溝に組付けられることとなり、したがって分離力を増大させるべくその拡張量を増して内径拘束治具に嵌合保持させても、一回の収縮量はわずかとなり、収縮中に揺動を起すことはなくなって、ピストンのリング溝への確実な組付けが可能になる。
【0013】
上記第2の目的を達成するための本発明の構成は、上記内径拘束治具の外側に、ピストンリングの外径を、その切り口の近傍を除いて拘束し、該ピストンリングの内周の半周以上を前記内径拘束治具に接触させる外径拘束治具を配設するようにしたことを特徴とする。
このように構成したピストンリングの組付装置においては、外径拘束治具でピストンリングの外径を拘束してその内周の半周以上を内径拘束治具に接触させるので、ピストンリングが内径拘束治具に沿って平行に上昇して、ピストンリングに歪みが生じることはなくなり、上記した収縮中におけるピストンリングの揺動が抑制されることと相まって、ピストンのリング溝へのより確実な組付けが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0015】
図1乃至図3は、本発明にかゝるピストンリングの組付装置を示したものである。本組付装置は、前出図7、8に示した、上下方向に波形をなすオイルリング(ピストンリング)20の組付けに適用されるもので、このオイルリング20の複数を重合状態でかつ拡張状態で嵌合保持する有底筒状の内径拘束治具21は、前記汎用のピストンリング2を嵌合保持する内径拘束治具3(図6)よりも大径に形成されている。換言すれば、オイルリング20は、汎用のピストンリング2よりも大きく拡張する状態で内径拘束治具21に嵌合保持されている。
【0016】
一方、上記内径拘束治具21が載置固定されるベース22は、軸23を中心に回転する回転テーブル24上にスペーサ25を介して固定されている。回転テーブル24は、リフタ(図示略)により昇降駆動されるようになっており、ベース22上の内径拘束治具21は、この回転テーブル24の回転並びに上昇動作により、図1に示す組付位置Pに搬入されるようになっている。本実施の形態において、組付位置Pの上部側には、上架台26が位置固定的に配設されている。この上架台26の中央部には、上記内径拘束治具21の遊挿を許容する開口部26aが設けられており、組付位置Pに搬入された内径拘束治具21は、その上端部を前記開口部26aからわずか上方へ突出させた状態に位置決めされるようになっている。
【0017】
また、上記組付位置Pの側方には、内径拘束治具21に嵌合保持されたオイルリング20の全体を上昇させる押上手段27が配設されている。押上手段27は、内径拘束治具21に摺動可能に嵌合されオイルリング20の全体を支持する昇降プレート28と、前記上架台26とこれに対向配置した下架台29との間に軸受(図示略)を介して回動可能に橋架されたボールネジ30と、このボールネジ30に螺合され前記昇降プレート28をカップリング31を介して脱着可能に支持するナット32と、下架台29に固定され前記ボールネジ30を回転させるモータ(ステッピングモータ)33とを備えている。このような押上手段27においては、モータ33の作動によりボールネジ30を回転させると、ナット32がこのボールネジ30上を螺進退し、これと一体に昇降プレート28が昇降動するようになり、これにより、オイルリング20の全体が内径拘束治具21に沿って上昇する。
【0018】
しかして、上架台26の開口部26aには、内径拘束治具21に嵌合保持されたオイルリング20の外径を拘束する外径拘束治具34が嵌着されている。この外径拘束治具34は、上架台26の上面に密着する環状の本体部34aと上架台26の開口部26aに嵌合する円筒部34bとを備えており、その円筒部34bの内面には、円周方向の一部を半径外方向へ拡張する逃がし溝35が形成されている(図3)。本実施の形態では、前記逃がし溝35の中心部位にオイルリング20の切り口20′が臨むように、予め外径拘束治具34に対するオイルリング20の嵌合位置を決めておく。これによりオイルリング20の外径を外径拘束治具34で拘束すると、その切り口20′の近傍が逃がし溝35内に逃げて、オイルリング20の内径の大部分(内周の半周以上)が内径拘束治具21に接触し、したがって、昇降プレート28によりオイルリング20を平行に上昇させることができるようになる。なお、この外径拘束治具34の円筒部34bの下端部には、開口端へ向けて次第に内径を拡張させる導入部36が形成されており、昇降プレート28により押上げられたオイルリング20は、この導入部36を経て外径拘束治具34内に円滑に押込められるようになる。
【0019】
上記内径拘束治具(以下、これを主内径治具という)21内には、カップ状の第1の副内径拘束治具(以下、これを第1の副内径治具という)37と第2の副内径拘束治具(以下、これを第2の副内径治具という)38とが相互に嵌合する状態で同心に配設されている。第1の副内径治具37は、主内径治具21の底部に開けた貫通孔21aおよびベース22に開けた貫通孔22aを挿通して上下方向へ延ばした中空の軸部材39の上端に載置固定されている。軸部材39は、その中間部が主内径治具21の貫通孔21aに嵌着した軸ガイド40により摺動案内されると共に、その下端が前記回転テーブル24上に固設したシリンダ41のロッド41aに連結されている。第1の副内径治具37は、その上端を主内径治具21の上端より十分高く突出させた状態(図1、2)が原位置、その上端を主内径治具21の上端よりわずか低位とした状態が最下降位置となっており、シリンダ41は、前記原位置と最下降位置との間で第1の内径治具37を上下動させるように作動する。
【0020】
第2の副内径治具38は、前記軸部材39にねじ込んだT字部材42にガイド部材43を介して摺動可能に嵌装されている。また、第2の副内径治具38の底面と前記第1の副内径治具37の内底面との間には、常時は第2の副内径治具38を上方へ付勢するばね44が介装されている。第2の副内径治具38は、前記ばね44により常時はT字部材42の頭部に当接する上昇端に位置決めされ、この状態においてその上端が第1の副内径治具37の上端より所定距離だけ突出するようになっている。第2の副内径治具38の内底部には、ピストン45を載せる受け面46が形成されており、ピストン45は、この受け面46に頂部を載せた状態で第2の副内径治具38に支持され、この時、オイルリング用のリング溝45aが第2の副内径治具38の上端から所定距離だけ上方へ突出するようになっている。
【0021】
本実施の形態において、上記外径拘束治具34の本体部34aの上面には、外径拘束治具34と同じ内・外径を有する絶縁スペーサ47を介して検知ストッパ48が固設されている。検知ストッパ48は、前記絶縁スペーサ47の上面に密着する環状の本体部48aと絶縁スペーサ47の内面に部分的に嵌合する円筒部48bとを備えており、その円筒部48bが、主内径治具21に嵌合保持されたオイルリング20の上昇を規制するストッパ片として用いられるようになっている。この場合、図2に示されるように、ストッパ片(円筒部)48bの下端と主内径治具21の上端との間隙Sは、オイルリング20の一つの高さ(厚さ)Hよりわずか大きく設定(S=H+α)されており、したがって、主内径治具21に嵌合保持された最上段のオイルリング20aが前記ストッパ片48aに当接するまで上昇させられた状態では、該オイルリング20aは主内径治具21の上端から離脱して自己収縮可能な状態となる。
【0022】
上記検知ストッパ48の上面と前記上架台26の上面には、図示を略す電源から延ばしたリード線49,50が接続されている。これら電源、リード線49,50、検知ストッパ48、絶縁スペーサ47、外径拘束治具34、上架台26等は、オイルリング20の上昇端を検知する検知手段を構成し、いま、最上段のオイルリング20が検知ストッパ48のストッパ片48bに当接すると、検知ストッパ48と上架台26とがオイルリング20を介して導通状態となり、オイルリング20が上昇端に達したことが検知される。一方、前記検知手段を一つのスイッチ回路とする制御手段(図示略)が設けられており、この制御手段は、前記検知手段の導通に応じて前記押上手段27のモータ33を停止させる信号を出力するようになっている。
【0023】
以下、上記のように構成したピストンリングの組付装置の作用を図4および図5も参照して説明する。
ピストンリングの組付けに際しては、回転テーブル24の下降および回転によりベース22上の主内径治具21を組付位置Pの外側に移動させ、その位置で主内径治具21に、前記した上下方向に波形をなす複数のオイルリング20を順次嵌合させながら、これらを前記昇降板28上に積重ねていく。そして、所定数のピストンリング2を積重ねたところで、回転テーブル24を回転させてベース22上の主内径治具21を組付位置Pに搬入し、続いて、リフタにより回転テーブル24を上昇させる。主内径治具21を所定の高さまで上昇させたところでリフタを停止し、その位置で昇降プレート28をカップリング31を介して押上手段27のナット29に連結する。また、第1の副内径治具37は、図4マル1に示すようにシリンダ41の伸長動作により原位置に位置決めしておく。なお、主内径治具21を上昇させると、これに嵌合保持されているオイルリング20の数が多い場合には、上段側のオイルリング20のいくつかが外径拘束治具34内に押込まれるようになる。
【0024】
上記準備完了後、押上手段27のモータ33が起動してボールネジ30が回転し、ナット32と一体に昇降プレート28が上昇する。この昇降プレート28の上昇により、複数のオイルリング20が主内径治具21に沿って上昇し、最上段のオイルリング20aが検知ストッパ48のストッパ片(円筒部)48bに当接する。すると、検知ストッパ48と上架台26とがオイルリング20を介して導通状態となり、再上段のオイルリング20aが上昇端に達したことが検知され、図示を略す制御手段からの指令で前記モータ33が停止される。一方、前記上昇端に達した最上段のオイルリング20aは、図4▲2▼に示すように主内径治具21から離脱して自己収縮し、下側のオイルリング20から分離して第1の副内径治具37上に乗り移る。しかして、オイルリング20が主内径治具21に沿って上昇するに際しては、それらの外径が外径拘束治具34により抑えられているので、オイルリング20は主内径治具21に沿って平行に上昇し、したがってオイルリング20に歪み(変形)が生じることはなくなる。また、オイルリング20が平行に上昇することにより、最上段のオイルリング20aがストッパ片48bに一様に当接し、これにより最上段のオイルリング20aが、その下側のオイルリング20に部分的に深く押込まれることもなくなって、該下側のオイルリング20から確実に分離する。
【0025】
上記したように最上段のオイルリング20aが第1の副内径治具37上に乗り移ると、シリンダ41が短縮動作し、第1の副内径治具37が第2の副内径治具38を伴いながら下降する。この時、第1の副内径治具37上のオイルリング20aは、主内径治具21により下降が停止されているので、相対的に第1の副内径治具37の上端側へ上昇し、遂には、図4▲3▼に示すように第1の副内径治具37の上端から離脱して自己収縮し、第2の副内径治具38上に乗り移る。次に、シリンダ41の伸長動作により第1の副内径治具37が、図5▲4▼に示すように原位置に復帰し、これに追従して第2の副内径治具38も上昇する。
【0026】
その後、ピストン45を手に持ち、あるいはロボット等のハンドリング装置に持たせて、これを第2の副内径治具38の受け面46上に載せ、そのまゝ、ばね44の付勢力に抗してピストン45と一体に第2の副内径治具38を押下げる。この時、第2の副内径治具38上のオイルリング20aは、第1の副内径治具27により下降が停止されているので、相対的に第2の副内径治具38の上端側へ上昇し、遂には、図4▲5▼に示すように第2の副内径治具38の上端から離脱して自己収縮し、ピストン45のリング溝45a内に嵌入し、これにてピストン45に対するピストンリングの組付けは完了する。
【0027】
このように、ピストンリング20を三段階に縮小させてピストン45に組付けるので、分離力を増大させるべくその拡張量を増して主内径治具21に嵌合保持させても、一回の収縮量はわずかとなり、収縮中に揺動を起すことはなくなって、リング溝45aへの確実な組付けが可能になる。また、検知ストッパ48等を含む検知回路でオイルリング20の上昇端を検知し、押上手段27のモータ33を停止させるようにしているので、主内径治具21に嵌合保持されるピストンリング20の個々の寸法バラツキ並びにピストンリング20相互の重なり代のバラツキによる累積誤差があっても、一個ずつ確実に分離できる。しかも、一旦分離したオイルリング20(20a)の位置を不動として、副内径治具37,38の動きを利用してオイルリング20(20a)を自己収縮させるので、従来のように予めピストン45を高精度に位置決めしておく必要はなく(図6参照)、ピストン45をハンドリングする複雑な装置は不要となる。本実施の形態では特に、オイルリング20の外径の大部分を外径拘束治具34で拘束して、それらの内径を主内径治具21に接触させるようにしているので、オイルリング20は平行に上昇し、これに歪みが生じることもなくなって、この面からもリング溝45aへの確実な組付けが可能になる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、主内径治具21の内部に二つの副内径治具37,38を配設したが、この副内径治具の数は任意であり、一つまたは三つ以上とすることができる。また、上記実施の形態では、主内径治具21に嵌合保持されたオイルリング(ピストンリング)の上昇端を検知する検知手段として、電気的導通を得る手段を用いたが、この検知手段の種類は任意であり、接触型、非接触型の種々のセンサを用いることができる。
【0029】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明にかゝるピストンリングの組付装置によれば、ピストンリングを多段階に縮小させてピストンに組付けるようにしたので、分離力を増大させるべく、上下方向に波形をなすピストンリングを大きく拡張させて内径拘束治具に嵌合保持させても、円滑にピストンに組付けることができるようになり、その利用価値は大なるものがある。
また、外径拘束治具によりピストンリングの外径を拘束した場合は、内径拘束治具に対するピストンリングの接触面積が増し、上昇中におけるピストンリングの変形を抑制することができ、上記した収縮中におけるピストンリングの揺動が抑制されることと相まって、ピストンへのより確実な組付けが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかゝるピストンリングの組付装置の全体構造を示す断面図である。
【図2】本組付装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】本組付装置で用いる内径拘束治具と外径拘束治具との組合状態を示す平面図である。
【図4】本組付装置による組付要領を順を追って示す模式図である。
【図5】本組付装置による組付要領を順を追って示す模式図である。
【図6】従来のピストンリングの組付装置の全体構造を示す断面図である。
【図7】上下方向に波形をなすピストンリングとそれらの重合状態を半径方向から見た側面図である。
【図8】上下方向に波形をなすピストンリングの重合状態を示す側面図である。
【図9】上下方向に波形をなすピストンリングを従来の組付装置を利用して組付ける場合の不具合例を示す平面図である。
【符号の説明】
20 上下方向に波形をなすオイルリング(ピストンリング)
21 内径拘束治具
22 ベース
26 上架台
27 押上手段
28 昇降プレート
34 外径拘束治具
35 逃がし溝
37 第1の副内径拘束治具
38 第2の副内径拘束治具
44 ばね
47 絶縁スペーサ
48 検知ブロック
49,50 リード線

Claims (2)

  1. 上下方向に波形をなすピストンリングの複数を重合状態でかつ拡張状態で嵌合保持する筒状の内径拘束治具と、前記内径拘束治具に嵌合保持されたピストンリングの全体を支持し該内径拘束治具に沿って上昇させる押上手段と、前記内径拘束治具に嵌合保持された最上段のピストンリングの上昇端を検知し、前記押上手段の駆動源を停止させる制御手段とを備え、前記押上手段の作動により最上段のピストンリングを前記内径拘束治具から離脱させて、該内径拘束治具の内部に位置決めされたピストンのリング溝に嵌入させるようにしたピストンリングの組付装置において、前記内径拘束治具を、相互の分離力を増大させるべく前記ピストンリングを大きく拡張させるように大径に形成すると共に、前記内径拘束治具の内部に、該内径拘束治具から離脱したピストンリングが一旦乗り移って停止する一つまたは複数の副内径拘束治具を前記内径拘束治具に沿って昇降可能に配設し、該副内径拘束治具を昇降動させることによりこの上に停止している前記ピストンリングを該副内径拘束治具から離脱させて、前記ピストンのリング溝に嵌入させるようにしたことを特徴とするピストンリングの組付装置。
  2. 内径拘束治具の外側に、ピストンリングの外径を、その切り口の近傍を除いて拘束し、該ピストンリングの内周の半周以上を前記内径拘束治具に接触させる外径拘束治具を配設したことを特徴とする請求項1に記載のピストンリングの組付装置。
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