JP3601488B2 - 圧着装置および圧着方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板に電子部品を圧着する圧着装置および圧着方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶パネルなどの表示パネルの組立てにおいては、ガラスなどの基板の縁部にドライバ用の電子部品が圧着により実装される。この圧着工程においては、圧着対象物である電子部品を基板に対して所定の圧着荷重で押圧することが求められる。このため、電子部品に当接して押圧する圧着ツールの駆動機構には、圧着ツールを電子部品に対して進退させる進退機能とともに電子部品に当接した状態における押圧荷重を制御する荷重制御機能が求められる。
【0003】
このような圧着ツールの駆動機構として、送りねじなどを用いた直動機構と空圧シリンダとを組み合わせた形式のものが知られている。この方式では、圧着ツールの昇降動作は直動機構によって行い、電子部品当接後の押圧は空圧シリンダが発生する空圧荷重によって行われ、直動機構と圧着ツールとの間に空圧シリンダを介在させた機構となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記圧着ツールの駆動機構を用いた従来の圧着装置においては、空圧シリンダにおいて不可避的に発生するスティック現象に起因して、以下のような圧着荷重のばらつきによる不具合が生じていた。すなわち、空圧シリンダはシリンダ内に嵌合したピストンがシリンダ内壁面と摺動しながら動作する構造となっていることから、ピストンの動作やピストンによって伝えられる荷重値は、シリンダ内壁面とピストンのシール部との摺動面の状態によって大きく左右される。
【0005】
この摺動面における潤滑が良好な場合には、ピストンはほぼ一定の摩擦抵抗で安定して摺動するが、潤滑が良好でない場合には摩擦抵抗は大きなばらつきを示す。特に空圧シリンダ内においてピストンの動作がある時間停止した状態から起動されるような場合には、シール部とシリンダ内壁面との接触面は潤滑切れの状態となりこの接触面が一時的に固着するスティック現象を生じやすく、起動時に大きな摩擦抵抗を示す。
【0006】
そしてこのスティック状態の空圧シリンダによって前述の圧着ツールへの荷重印加が行われると、圧着ツールが電子部品に当接した後の押圧時にスティック状態が解放される結果、電子部品には大きな変動荷重が衝撃的に作用する。この押圧荷重の変動は圧着品質を損なう原因となるため、従来はこのような荷重変動を避けるために、やむを得ず空圧シリンダの動作速度を低く抑える必要があった。このように従来の圧着装置には、空圧シリンダの特性に起因して、動作の高速化と押圧荷重の高精度制御を両立させて行うことができないという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、動作の高速化と押圧荷重の高精度制御を両立させて行うことができる圧着装置および圧着方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の圧着装置は、圧着ツールによって圧着対象物に圧着荷重を作用させて圧着を行う圧着装置であって、フレームに保持された本体部とこの本体部の内部で摺動するピストンとこのピストンと一体的に移動する可動部とを有し前記圧着荷重を発生する空圧シリンダと、前記可動部に連結され圧着対象物に対して進退する圧着ツールと、前記可動部に直接または間接に連結され前記圧着ツールの圧着対象物側への進出位置を規制するストッパと、このストッパを前記フレームに対して相対的に移動させることにより前記圧着ツールを圧着対象物に当接させる圧着ツール昇降手段とを備えた。
【0009】
請求項2記載の圧着装置は、請求項1記載の圧着装置であって、前記圧着ツール昇降手段は、前記ストッパの移動速度を制御可能な機構である。
【0010】
請求項3記載の圧着装置は、請求項1記載の圧着装置であって、前記圧着ツール昇降手段が、前記ストッパを移動させる送りねじとこの送りねじを回転させる回転駆動手段とを備えている。
【0011】
請求項4記載の圧着装置は、請求項1記載の圧着装置であって、前記圧着ツール昇降手段が、カム面を変位させるカム機構であり、このカム面が前記ストッパである。
【0012】
請求項5記載の圧着方法は、フレームに保持された本体部とこの本体部の内部で摺動するピストンとこのピストンと一体的に移動する可動部とを備えた空圧シリンダによって発生した荷重を前記可動部と連結された圧着ツールを介して圧着対象物に作用させて圧着を行う圧着方法であって、前記空圧シリンダに所定の圧着荷重を発生するための空圧を供給する空圧供給工程と、前記可動部に直接もしくは間接に連結されたストッパによって前記空圧によって圧着対象物側へ進出する前記圧着ツールの進出位置を規制する進出規制工程と、前記ストッパを所定の速度でフレームに対して移動させることにより前記空圧シリンダのピストンを本体部内で摺動させながら前記圧着ツールを圧着対象物に所定の速度で接近させる圧着ツール進出工程と、圧着対象物に当接した圧着ツールを介して前記空圧シリンダによって発生した圧着荷重を圧着対象物に作用させる圧着工程とを含む。
【0013】
請求項6記載の圧着方法は、請求項5記載の圧着方法であって、前記ストッパは、送りねじとこの送りねじを回転させる回転駆動手段によって移動する。
【0014】
請求項7記載の圧着方法は、請求項5記載の圧着方法であって、前記ストッパがカム機構のカム面であり、このカム面の変位によって前記圧着ツール進出工程を行う。
【0015】
本発明によれば、フレームに保持された本体部とこの本体部の内部で摺動するピストンとこのピストンと一体的に移動する可動部とを備えた空圧シリンダの可動部に圧着ツールを連結し、可動部に直接または間接に連結されたストッパによって圧着ツールの圧着対象物側への進出位置を規制し、このストッパをフレームに対して相対的に移動させて圧着ツールを圧着対象物に当接させることにより、空圧シリンダ内での摺動抵抗を常に一定に保ち、圧着ツールによって圧着対象物に印加される圧着荷重の変動を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の表示パネルの組立装置の側面図、図2は本発明の一実施の形態の圧着方法の工程説明図、図3は本発明の一実施の形態の表示パネルの組立装置の側面図である。
【0017】
まず表示パネルの組立装置の構造を図1を参照して説明する。図1において、パネル位置決め部1は、移動テーブル(図示せず)によって移動するパネル保持テーブル2を備えており、パネル保持テーブル2には表示パネル3が保持されている。表示パネル3は2枚のガラス板3a,3bを重ね合わせた構成となっており、下側のガラス板3bの縁部3cには、以下に説明する圧着部4(圧着装置)によってドライバ用の電子部品10が実装される。
【0018】
圧着部4について説明する。垂直なフレーム5の下部および上部にはそれぞれ水平な基部5a、頂部5bが設けられている。基部5aには表示パネル3の縁部3cを下受けする下受け部11が配置されている。またフレーム5の内側面にはガイドレール6が垂直に配設されており、ガイドレール6に摺動自在に嵌合したスライダ7は逆L字形状の昇降ブラケット8に結合されている。昇降ブラケット8には圧着ツール9が装着されており、昇降ブラケット8が昇降することにより、圧着ツール9は表示パネル3の縁部3c上に搭載された圧着対象物である電子部品10に対して進退し、電子部品10を縁部3cに圧着する。
【0019】
頂部5bの上面には、空圧シリンダ12が垂直姿勢で配設されている。空圧シリンダ12はフレーム5の頂部5bによって保持された本体部14と、この本体部14の内部で摺動するピストン13と、このピストン13から上下に延出しピストン13と一体的に移動する上シャフト15b、下シャフト15aを有している。上シャフト15b、下シャフト15aは、ピストン13と一体的に移動する可動部となっている。ピストン13の外周にはシール部材13aが装着されており、シール部材13aによってピストン13の摺動面が密封される。
【0020】
下シャフト15aは昇降ブラケット8に結合されており、本体部14内の加圧室14a内に空圧を供給することにより、圧着ツール9には下向きの圧着荷重が作用する。加圧室14aは開閉バルブ23を介して圧力制御部21,圧力発生源22に接続されており、開閉バルブ23および圧力制御部21は制御部20によって制御される。制御部20によって圧力制御部21の設定圧力を制御し、開閉バルブ23の開閉タイミングを制御することにより、空圧シリンダ12に所定圧力の空圧を所定タイミングで供給することができ、これにより圧着ツール9による圧着荷重を制御することができるようになっている。
【0021】
上シャフト15bの上端部には係止部材15cが結合されており、係止部材15cの下面には、ナット17によって上下動するストッパ部材17aが当接している。ナット17には送りねじ16が螺合しており、送りねじ16をZ軸モータ18によって回転駆動することにより、ナット17は昇降する。Z軸モータ18はモータ駆動部19によって駆動され、モータ駆動部19は制御部20によって制御される。
【0022】
制御部20によってモータ駆動部19を制御することにより、Z軸モータ18の回転数を制御することができ、これによりナット17に連結されたストッパ部材17aの上下方向の移動速度を制御できるようになっている。このストッパ部材17aの上下方向の移動において、ストッパ部材17aの上面が係止部材15cの下面に当接していることから、可動部である上シャフト15b、下シャフト15aは下方には自由に移動できず、ストッパ部材17aによって移動が規制される。したがって、昇降ブラケット8を介して下シャフト15aに連結された圧着ツール9の下方(圧着対象物側)への進出位置が規制される。
【0023】
なおストッパ部材17aは、本実施の形態においては係止部材15cの下面に当接する形態で上シャフト15bと連結されているが、これ以外にも、ストッパ部材17aと上シャフト15bとを他の形態の連結部材を介して直接または間接に連結するようにしてもよい。
【0024】
上記構成において、Z軸モータ18を駆動してストッパ部材17aを下方に移動させることにより、圧着ツール9は下方に移動し圧着対象物である電子部品10の上面に当接する。すなわち、Z軸モータ18、送りねじ16、ナット17は、ストッパ部材17aを本体部14を保持するフレーム5に対して相対的に移動させることにより圧着ツール9を電子部品10に当接させる圧着ツール昇降手段となっている。そしてZ軸モータ18は、送りねじ16を回転させる回転駆動手段となっている。
【0025】
この表示パネルの組立装置は上記のように構成されており、以下圧着部4を用いて行われる電子部品の圧着方法について図2を参照して説明する。図2(a)において、まず空圧シリンダ12の加圧室14a内には、所定圧力の空圧が供給される(空圧供給工程)。このとき、Z軸モータ18(図1)は位置保持状態にあってナット17の上下方向の位置が保持されていることから、ストッパ部材17aと下シャフト15a、上シャフト15bを介して連結されている圧着ツール9の下方への変位が規制される。すなわち、空圧シリンダ12の加圧室14a内に供給された空圧によって下方へ進出する圧着ツール9の下方への変位は、ストッパ部材17aによって規制され、これにより圧着ツール9の電子部品10に対する進出が規制される(進出規制工程)。
【0026】
次いで圧着動作が開始される。まず図2(b)に示すように、Z軸モータ18を駆動してストッパ部材17aを下方へ移動させることにより、空圧シリンダ12のピストン13を本体部14内で下方に摺動させながら、圧着ツール9を下方の電子部品10に対して所定の速度で接近させる(圧着ツール進出工程)。このときの速度制御は、制御部20によってモータ駆動部19を制御することによって行われる。
【0027】
そして図2(c)に示すように、圧着ツール9の下端部を下受け部11で支持された表示パネル3の縁部3c上の電子部品10に当接させる。そしてストッパ部材17aが係止部材15cから離れ、空圧シリンダ12によって発生した圧着荷重を圧着ツール9によって電子部品10に作用させる。これにより、電子部品10は表示パネル3の縁部3cに圧着される。
【0028】
上記表示パネルの組立装置による圧着動作において、圧着ツール9が電子部品10に対して接近する圧着ツール進出工程において、空圧シリンダ12の本体部14内でピストン13は連続して移動していることから、シール部材13aと加圧室14aの内側面との摺動面は潤滑切れのない安定した動摩擦状態にある。このため、圧着ツール9が電子部品10の上面に当接するタイミングにおいても、シール部材13aの摺動状態に変化はなく、押圧荷重に変動を生じることなく安定した圧着荷重で電子部品10を圧着する。
【0029】
すなわち、空圧シリンダと直動機構とを組み合わせた従来の圧着装置において発生していたような、空圧シリンダ内のピストンのスティックに起因する電子部品へ衝撃的な荷重が作用することがなく、安定した圧着品質を確保することができる。したがって、従来はこのような荷重の変動を防止する目的でやむを得ず低速に設定していた圧着ツール9の電子部品10に対する進出速度を高速化することができ、動作の高速化と押圧荷重の高精度制御を両立させることが可能となっている。
【0030】
なお圧着ツール9を昇降させる圧着ツール昇降手段として、図3に示すような構成を採用してもよい。図3において、フレーム5の上部にはモータ保持ブラケット30が立設されており、モータ保持ブラケット30にはカム回転モータ31が取り付けられている。カム回転モータ31の回転軸には円板カム32が連結されており、円板カム32のカム面にはカムフォロア33が当接している。カムフォロア33は係止部材15’cに結合されており、係止部材15’cは上シャフト15’bに連結されており、さらに上シャフト15’bは空圧シリンダ12のピストン13に連結されている。
【0031】
モータ駆動部19によってカム回転モータ31を駆動することにより、円板カム32が回転し、これにより円板カム32に当接したカムフォロア33が上下動する。したがって、カムフォロア33に上シャフト15’b、下シャフト15’aを介して連結された圧着ツール9が上下動する。すなわち、図3に示す例では、円板カム32のカム面を上下方向に変位させるカム機構が、圧着ツール昇降手段となっており、円板カム32のカム面が、上シャフト15’bに間接的に連結されたストッパとなっている。そして圧着動作においては、円板カム32が回転してこのカム面が下方に変位することにより、圧着ツール9が下方へ進出して電子部品の圧着を行う。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、フレームに保持された本体部とこの本体部の内部で摺動するピストンとこのピストンと一体的に移動する可動部とを備えた空圧シリンダの可動部に圧着ツールを連結し、可動部に直接または間接に連結されたストッパによって圧着ツールの圧着対象物側への進出位置を規制し、このストッパをフレームに対して相対的に移動させて圧着ツールを圧着対象物に当接させるようにしたので、空圧シリンダ内での摺動抵抗を常に一定に保ち、圧着ツールによって圧着対象物に印加される圧着荷重の変動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の表示パネルの組立装置の側面図
【図2】本発明の一実施の形態の圧着方法の工程説明図
【図3】本発明の一実施の形態の表示パネルの組立装置の側面図
【符号の説明】
3 表示パネル
4 圧着部
5 フレーム
9 圧着ツール
10 電子部品
12 空圧シリンダ
13 ピストン
15a 下シャフト
15b 上シャフト
17a ストッパ部材
18 Z軸モータ
19 モータ駆動部
20 制御部
Claims (7)
- 圧着ツールによって圧着対象物に圧着荷重を作用させて圧着を行う圧着装置であって、フレームに保持された本体部とこの本体部の内部で摺動するピストンとこのピストンと一体的に移動する可動部とを有し前記圧着荷重を発生する空圧シリンダと、前記可動部に連結され圧着対象物に対して進退する圧着ツールと、前記可動部に直接または間接に連結され前記圧着ツールの圧着対象物側への進出位置を規制するストッパと、このストッパを前記フレームに対して相対的に移動させることにより前記圧着ツールを圧着対象物に当接させる圧着ツール昇降手段とを備えたことを特徴とする圧着装置。
- 前記圧着ツール昇降手段は、前記ストッパの移動速度を制御可能な機構であることを特徴とする請求項1記載の圧着装置。
- 前記圧着ツール昇降手段が、前記ストッパを移動させる送りねじとこの送りねじを回転させる回転駆動手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の圧着装置。
- 前記圧着ツール昇降手段が、カム面を変位させるカム機構であり、このカム面が前記ストッパであることを特徴とする請求項1記載の圧着装置。
- フレームに保持された本体部とこの本体部の内部で摺動するピストンとこのピストンと一体的に移動する可動部とを備えた空圧シリンダによって発生した荷重を前記可動部と連結された圧着ツールを介して圧着対象物に作用させて圧着を行う圧着方法であって、前記空圧シリンダに所定の圧着荷重を発生するための空圧を供給する空圧供給工程と、前記可動部に直接もしくは間接に連結されたストッパによって前記空圧によって圧着対象物側へ進出する前記圧着ツールの進出位置を規制する進出規制工程と、前記ストッパを所定の速度でフレームに対して移動させることにより前記空圧シリンダのピストンを本体部内で摺動させながら前記圧着ツールを圧着対象物に所定の速度で接近させる圧着ツール進出工程と、圧着対象物に当接した圧着ツールを介して前記空圧シリンダによって発生した圧着荷重を圧着対象物に作用させる圧着工程とを含むことを特徴とする圧着方法。
- 前記ストッパは、送りねじとこの送りねじを回転させる回転駆動手段によって移動することを特徴とする請求項5記載の圧着方法。
- 前記ストッパがカム機構のカム面であり、このカム面の変位によって前記圧着ツール進出工程を行うことを特徴とする請求項5記載の圧着方法。
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