JP3600767B2 - 情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法並びに該基板を用いた磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高密度記録再生が可能な磁気記録媒体及びその製造方法並びにその磁気記録媒体に使用する情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関し、特に、インライン型連続スパッタリングによって磁気記録媒体を製造する際、パレット内における各磁気記録媒体の磁気特性のバラツキないしは各磁気記録媒体における面内の磁気特性のバラツキを抑えて高密度記録再生を可能にするものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、さらなる高密度記録に対応可能な磁気ディスクが要請されてきている。磁気ディスクの高密度記録化を達成するためには、磁気記録媒体表面に対する磁気ヘッドの浮上高さを小さくすることが重要である。最近ではこの浮上高さを0.2〜0.1μm以下とすることが要求されている。そこで、この要求に対し高密度記録に対応可能な磁気ディスクとして、特開平5ー303735や、特開平8ー293177等の磁気ディスクが開発されている。
【0003】
特開平5ー303735の磁気ディスクは、円環状基板(ガラス基板)の表面粗さをRaで1nm以下、且つ、平面度1μm以下にすることによって、磁気ヘッドの磁気ディスクに対する浮上高さを小さくし、高密度記録を可能にするものである。尚、この公報では、円環状基板(ガラス基板)の表面粗さを非常に平滑にする研磨技術や、表面粗さがRaで0.3nm以下、Rmaxで5nm以下といった表面がスーパースムーズ仕上げされたガラス基板が開示されている。
【0004】
特開平8ー293177は、磁気ディスクの始動時及び停止時にヘッドが媒体上に休止するCSSドライブでなく、停止時にはヘッドがディスクから離れるようにしたダイナミックヘッドローディング型磁気ディスクドライブに搭載する磁気ディスクが開示されている。この磁気ディスクは、一例としてスーパースムーズ仕上げされた基板上に、スーパースムーズ仕上げ磁性表面及び、スーパースムーズ仕上げ保護表面を有する磁性層、保護層を形成することにより、ヘッド−媒体の磁気的間隔を小さくし、高密度記録を可能にするものである。さらにこの公報では、保護層の膜厚を小さくすることによる磁性層表面とヘッドとの間隔(実効フライングハイト)を小さくする技術も開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の従来の磁気記録媒体においては、RmaxやRaのそれぞれを所定値以下にすることによって、ヘッドー媒体の磁気的間隔については十分小さくすることが可能になった。しかしながら、本発明者等の研究によれば、保磁力やS/Nといった磁気特性及び記録再生特性については必ずしも近年の厳しい要請を十分に満足させるものではないことがわかった。すなわち、ガラス基板の表面粗さやその上に形成する磁性層等の条件を同一に揃えて製造しても、必ずしも常に良好な磁気特性を有する磁気ディスクを得られないことがわかった。本発明者等がこの原因について鋭意研究した結果、この原因は、ガラス基板の表面粗さのばらつきに起因し、このばらつきによってその上に形成される薄膜の結晶成長が乱れて磁気特性や記録再生特性を悪化させるものであろうとの結論が得られた。すなわち、ガラス基板表面の状態(表面粗さ及び表面粗さのばらつき)がその上に形成される下地層、磁性層の結晶粒と密接に関係しており、磁気特性良好で且つ高密度記録再生可能な磁気記録媒体を得るには、このガラス基板の表面粗さのばらつきをおさえ、その上に形成される薄膜の結晶粒を均一にすることが必要であろうとの解明結果が得られた。また、一方、上述の従来の磁気記録媒体においては、RmaxとRaとの関係を考慮されていなかったために、たとえ非常に平滑な基板であったとしても、複数枚磁気記録媒体を製造した際、各々の磁気特性にバラツキがあることがわかった。すなわち、ガラス基板の表面粗さやその上に形成する磁性層等の条件を同一に揃えて製造しても、必ずしも常に安定し、且つ良好な磁気特性を有する磁気ディスクが得られないことがわかった。特に、この磁気特性のバラツキは、インライン型連続スパッタリング法によって磁気ディスクを製造する場合に、顕著に表れた。
【0006】
本発明者らがこの原因について鋭意研究した結果、この原因は、各ガラス基板の表面粗さRmaxとRaとの関係(Rmax/Ra)が定められておらず、この関係(Rmax/Ra)の変動に伴い、各磁気ディスクにおける磁気特性のバラツキが発生するのであろうとの結論に至った。
【0007】
本発明は、この解明結果に基づいてなされたものであり、磁気ディスクや光ディスクといった情報記録媒体用に用いられるガラス基板及びその製造方法、並びに、安定且つ、良好な磁気特性を維持しつつ高密度記録再生可能な磁気記録媒体及びこの磁気記録媒体を安定して製造することができる製造方法を得ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本発明は、要するに、ガラス基板の表面粗さ及びそのばらつきを所定の範囲におさえ、その上に形成される下地層、磁性層の結晶粒を均一にすることによって、磁気特性良好で且つ高密度記録再生可能な磁気記録媒体を得るようにしたものであり、また、ガラス基板の表面粗さ(Rmax、Ra)及びそれらRmaxとRaとの関係(Rmax/Ra)等を所定の範囲におさえることによって、安定且つ、良好な磁気特性と、高密度記録再生可能な磁気記録媒体を得るようにしたものであって、具体的には以下の構成を有する。
【0009】
第1の手段は、ガラス基板主表面の表面粗さがRmax≦10nm、Ra≦0.5nm、Rq≦0.7nm(但し、Rqは二乗平均平方根粗さ(=RMS)である)であり、表面粗さの比(Rmax/Ra)が10以上30以下であることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板である。(但し、前記表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定したものとする。)
【0010】
第2の手段は、ガラス基板上に少なくとも磁性層を含む薄膜を有する磁気記録媒体において、前記ガラス基板として、第1の手段にかかる情報記録媒体用ガラス基板を用いることを特徴とした磁気記録媒体である。
【0011】
第3の手段は、前記薄膜は、前記ガラス基板の表面粗さを制御することによって、ほぼ均一な結晶粒から構成されてなり、前記磁性層の結晶粒径が5〜30nmであることを特徴とする第2の手段にかかる磁気記録媒体である。
【0012】
第4の手段は、前記薄膜の結晶粒を1ミクロン平方に存在する結晶粒径分布について測定したとき、該薄膜の結晶粒径が最も多く分布する点における半値幅が20nm以下であることを特徴とする第3の手段にかかる磁気記録媒体である。
【0013】
第5の手段は、ガラス基板上に少なくとも磁性層を含む薄膜を有する磁気記録媒体において、前記ガラス基板は、ガラス基板主表面の表面粗さがRmax≦15nm、Ra≦1nm、Rq≦1.5nm(但し、Rqは二乗平均平方根粗さ(=RMS)である)であって、表面粗さの比(Rmax/Ra)が30以下であり、前記薄膜は、前記ガラス基板の表面粗さを制御することによって、ほぼ均一な結晶粒から構成されてなり、前記磁性層の結晶粒径が5〜30nmであることを特徴とする磁気記録媒体である。(但し、前記表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定したものとする。)
【0014】
第6の手段は、円盤状ガラス基板をラッピングする工程と、この工程後、前記ガラス基板の表面粗さがRmax≦15nm、Ra≦1nm、Rq≦1.5nm(但し、Rqは二乗平均平方根粗さ(=RMS))であって、表面粗さの比(Rmax/Ra)が30以下となるように予め選定された粒径の研磨粒径を含む研磨液を用いて鏡面研磨する工程と、を有することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。(但し、前記表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定したものとする。)
【0015】
第7の手段は、前記表面粗さの比(Rmax/Ra)が10以上30以下であることを特徴とする第6の手段にかかる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法である。
【0016】
第8の手段は、第6又は第7の手段にかかる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって製造されたガラス基板上に、少なくとも磁性層を含む薄膜を、該薄膜を構成する結晶粒がほぼ均一な結晶粒から構成されてなり、前記ガラス基板と磁性層との間に形成した下地層の結晶粒そのまま反映させて前記磁性層の結晶粒径が5〜30nmになるように成膜する薄膜形成工程を有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0017】
第9の手段は、ガラス基板主表面の表面粗さがRmax≦15nm、Ra≦1.3nm、Rmax/Ra≧10であることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板である。(但し、前記表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定したものとする。)
【0018】
第10の手段は、ガラス基板主表面の表面粗さがRmax≦10nm、Ra≦0.8nm、Rmax/Ra≧10.5であることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板である。(但し、前記表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定したものとする。)
【0019】
第11の手段は、前記情報記録媒体用ガラス基板は、その表面に少なくとも磁性層を含む薄膜が形成されて磁気記録媒体とされるものであり、前記薄膜はインライン型連続スパッタリングにより形成されるものであることを特徴とする第9又は第10の手段にかかる情報記録媒体用ガラス基板である。
【0020】
ガラス基板上に少なくとも磁性層を含む薄膜を有する磁気記録媒体において、前記ガラス基板として、第9〜第11のいずれかにかかる情報記録媒体用ガラス基板を用いることを特徴とした磁気記録媒体である。
【0021】
第9〜第12のいずれかにかかる情報記録媒体用ガラス基板を用意する工程と、前記ガラス基板上に少なくとも磁性層を含む薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0022】
前記薄膜はインライン型連続スパッタリング法により形成するものであることを特徴とする第13にかかる磁気記録媒体の製造方法である。
【0032】
【実施の形態】
実施例1
図1は本発明の実施例1にかかる磁気記録媒体の構成を示す部分断面図である。以下、図1を参照にしながら本発明にかかる磁気記録媒体及びその製造方法を説明する。
【0033】
図1において、この磁気記録媒体は、ガラス基板1の上に、順次、第1下地層2、第2下地層3、テクスチャー層4、Cr層5a及びCrMo層5bからなる第3下地層5、磁性層6、保護層7、並びに、潤滑層8がそれぞれ形成された磁気ディスクである。以下、この磁気ディスクの製造方法をその工程順に説明しながらその詳細な構成もあわせて説明する。
【0034】
(1)荒ずり工程
まず、ダウンドロー法で形成したシートガラスから、研削砥石で直径96mmφ、厚さ3mmの円盤状に切り出したアルミノシリケイトガラスからなるガラス基板を、比較的粗いダイヤモンド砥石で研削加工して、直径96mmφ、厚さ15mmに成形した。
【0035】
この場合、ダウンドロー法の代りに、フロート法で形成したシートガラスから、上述と同様に円盤状に切り出して加工したものや、溶融ガラスを、上型、下型、胴型を用いてダイレクト・プレスして、円盤状のガラス体を得てもよい。
【0036】
なお、アルミノシリケイトガラスとしては、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZnO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、LiO2を7〜16%、Na2Oを4〜14%、を主成分として含有する化学強化用ガラス(例えば、モル%表示で、SiO2:67.0%、ZnO2:1.0%、Al2O3:9.0%、LiO2:12.0%、Na2O:10.0%を主成分として含有する化学強化用ガラス)を使用した。
【0037】
次いで、上記砥石よりも粒度の細かいダイヤモンド砥石で上記ガラス基板の両面を片面ずつ研削加工した。このときの荷重は100kg程度とした。これにより、ガラス基板両面の表面粗さをRmaxで10μm 程度に仕上げた。
【0038】
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を開けるとともに、外周端面も研削して直径を95mmφとした後、外周端面及び内周面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板の端面(側面及び面取部9の表面粗さはRmaxで4μm程度であった。
【0039】
(2)端面鏡面加工工程
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面部分(角張った部位、側面及び面取部)の表面粗さを、Rmaxで1μm、Raで0.3μm程度に研磨した。この端面鏡面加工工程は、ガラス基板の搬送時や、洗浄工程時等に発生するガラス基板端面からの発塵によりガラス基板主表面に付着することによる膜下欠陥を防止するために有効である。
【0040】
上記端面鏡面加工を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。尚、この端面鏡面加工工程は、後述する第1、第2、第3研磨工程のどの工程の前で行ってもよく、また、この端面鏡面加工工程を設けなくてもよい。
【0041】
(3)砂掛け(ラッピング)工程
次に、ガラス基板に砂掛け加工を施した。この砂掛け工程は、寸法精度及び形状精度の向上を目的としている。砂掛け工程は、ラッピング装置を用いて行い、砥粒粒度を#400、#1000と替えて2回行った。
【0042】
詳しくは、はじめに、粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重Lを100kg程度に設定して、内転ギアと外転ギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。
【0043】
次いで、アルミナ砥粒の粒度を#1000に替えてラッピングを行い、表面粗さ(Rmax)2μm 程度とした。
【0044】
上記砂掛け加工を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0045】
(4)第1研磨工程
次に、第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は上述した砂掛け工程で残留したキズや歪みの除去を目的とするもので、研磨装置を用いて行った。
【0046】
くわしくは、ポリシャ(研磨粉)として硬質ポリシャ(セリウムパッドMHC15:スピードファム社製)を用い、以下の研磨条件で第1研磨工程を実施した。
【0047】
研磨液:酸化セリウム(粒径約1μm)+水
荷重:150〜300g/cm2(L=238kg)
研磨時間:15〜30分
除去量:25〜45μm
下定盤回転数:40rpm
上定盤回転数:35rpm
内ギア回転数:14rpm
外ギア回転数:29rpm
上記第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。尚、この洗浄工程は、次の第2研磨工程における研磨液が一緒の場合、省略することが可能である。
【0048】
(5)第2研磨工程
次に、第1研磨工程で使用した研磨装置を用い、ポリシャを硬質ポリシャから軟質ポリシャ(ポリラックス:スピードファム社製:粒径約0.8μpm)に替えて、第2研磨工程を実施した。研磨条件は、荷重を25〜150g/cm2、研磨時間を5〜20分、除去量を2.5〜10μmとしたこと以外は、第1研磨工程と同様とした。
【0049】
上記第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
【0050】
(6)第3研磨工程
次に、第2研磨工程で使用した研磨装置を用い、超軟質ポリシャ(研磨粉:0.5μm以下)に替えて、第3研磨工程を実施した。研磨条件は、研磨液をコロイダルシリカ(粒径0.2μm以下)+水に替え、荷重を25〜100g/cm2、研磨時間を5〜20分、除去量を1〜5μmとしたこと以外は、第2研磨工程と同様とした。
【0051】
上記超精密研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。この場合、各洗浄槽には超音波を印加した。
【0052】
なお、第3研磨工程に使用する研磨剤(砥粒)は、粒径の小さなものが望ましく、好ましくは0.15μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下のものが良い。
【0053】
また、上記説明で掲げた硬質ポリシャ及び軟質ポリシャとしては、上述のものに限られず、硬質ポリシャとしては、例えば、硬質ベロア、ウレタン発泡、ピッチ含浸スウェード等が挙げられ、軟質ポリシャとしては、,例えば、スウェード、ベロアを素材とするもの等が挙げられる。さらに、研磨剤(砥粒)としては、酸化セリウム、アルミナ、べんがら、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0054】
ここで、上述の第1〜3研磨工程に使用する研磨液の研磨剤(砥粒)の粒径は、上記使用したものに限らず、第1研磨工程では粒径1〜3μm、第2研磨工程では粒径0.5〜2μm、第3研磨工程では0.5μm以下の範囲内で適宜調整し
て行われる。上記範囲の研磨剤(砥粒)を使用することによって、平滑で且つ粗さにばらつきのない基板を効率よく平面処理することができる。
【0055】
(7)化学強化工程
次に、上記研削、研磨工程を終えたガラス基板に化学強化を施した。
【0056】
化学強化は、硝酸セリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を400℃に加熱し、300℃に予熱された洗浄済みのガラス基板を約3時間浸漬して行った。この浸漬の際に、ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるようにホルダーに収納した状態で行った。
【0057】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板表層のリチウムイオン、ナトリウムイオンは、化学強化溶液中のナトリウムイオン、カリウムイオンにそれぞれ置換されガラス基板は強化される。
【0058】
ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100〜200μmであった。
【0059】
上記化学強化を終えたガラス基板を、20℃の水槽に浸漬して急冷し約10分間維持した。
【0060】
上記急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した硫酸に浸漬し、超音波をかけながら洗浄を行い、基板主表面を超精密研磨したガラス基板を得た。
【0061】
以上のような条件で研磨工程を数段階に別けて行い、かつ、各段階で用いる研磨砥粒の粒径を通常の場合よりも細かい径のものを用いることにより、スーパースムーズの表面を有するガラス基板を得ることができ、また、生産効率も格段に向上させることができる。
【0062】
このときのガラス基板主表面の表面粗さを測定したところ、Rmaxで2.6nm、Raで0.23nm、表面粗さの比(Rmax/Ra)は11.3であった。尚、表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)で測定を行った。
【0063】
なお、以上の例では第3研磨工程は化学強化工程の前に行う場合を説明したが、化学強化によるガラス基板の析出塩発生に伴う膜下欠陥を防止する意味で、第3研磨工程を化学強化工程の後に行ってもよい。
【0064】
(8)磁気ディスク製造工程
次に、上記ガラス基板に対し、ガラス基板の加熱処理、第1下地層の成膜、第2下地層の成膜、凹凸形成層の成膜、第3下地層の成膜、磁性層の成膜及び保護層の成膜の各工程を、インライン型スパッタリング装置を用いて連続的に行う。
【0065】
このインライン型スパッタリング装置は、図示しないが、搬送方向に向かって、基板加 熱ヒーターが設けられた第1のチャンバー、Alターゲット、Crターゲット、及びAlターゲットが設置された第2のチャンバー、加熱ヒータが設置された第3のチャンバー、Crターゲット、CrMoターゲット(Cr:94at%、Mo:6at%)及びCoCrPtTaターゲット(Co:78at%、Cr:13at%、Pt:6at%、Ta:3at%)が順次設置された第4のチャンバー、並びにカーボンターゲットが設置された第5のチャンバーがそれぞれ設けられたものである。
【0066】
そして、チタン等からなるパレットに、上記のガラス基板を50枚装着し、ロードロック室を介して第1のチャンバー内に導入すると、これらのガラス基板は所定の搬送装置によって上記各チャンバー内を次々と所定の一定速度で搬送され、その間に以下の条件等で成膜や処理がなされる。
【0067】
即ち、第1のチャンバー内では、基板を350℃で2分間加熱する処理がなされる。第2のチャンバー内では、第1下地層2たる平均膜厚5nmのAl膜、第2下地層3たる膜厚20nmのCr膜、凹凸形成層4たる平均膜厚5nm、表面粗さ(Rmax)24nmのAlからなる連続したテクスチャー膜が成膜される。第3のチャンバー内では350℃で1分間の加熱処理がなされる。第4のチャンバー内では第3下地層5たる平均膜厚50nmのCr膜5a及び、平均膜厚30nmのCrMo膜5b、磁性層6たる平均膜厚24nmのCoCrPtTa膜が順次成膜される。第5のチャンバー内では保護層7を構成する平均膜厚15nmのカーボン膜が順次成膜される。
【0068】
尚、上記の第2、第4、第5チャンバー内のスパッタリング条件は、スパッタ圧力が第2のチャンバー内では5mTorr、第4のチャンバー内では3mTorr、第5のチャンバー内では5mTorrであり、第2、第4チャンバーのスパッタ雰囲気はアルゴンの不活性ガスとし、第5チャンバーのスパッタ雰囲気は、アルゴンの不活性ガス又は、アルゴンに1〜25%の水素及び/又は窒素が混合された混合ガスか、アルゴンに1〜25%の炭化水素ガス(メタン等)が混合された混合ガスが使用される。また、各スパッタ電力は、第3のチャンバーでは200W、第5のチャンバーでは200W、第6のチャンバーでは100Wとした。
【0069】
次いで、保護層の形成までの工程を終えた基板を、上記インライン型スパッタリング装置から取り出し、その保護層の表面に、浸漬法によってパーフルオロポリエーテルを塗布し、平均膜厚1nmの潤滑層を形成して実施例1にかかる磁気記録媒体を得た。
【0070】
また、これら得られた各磁気記録媒体の半径22mmのところにおける0°、90°、180°、270°(パレット装着によって形成されるスパッタマークの中心を0°とする。)の磁気特性及び記録再生特性を測定したところ、各地点、各磁気記録媒体の保磁力は1900〜2000 Oeの範囲に分布し、S/N比は24.2〜25.8dBの範囲に分布していた。製造工程の安定性を示す工程能力指数Cp(={(上限規格)−(下限規格)}/6σ;両側規格の場合、{(平均値)−(下限規格)}/3σ;下限規格の場合)を評価すると、保磁力(Hc)は、1950±100 Oeの両側規格に対して2.4、S/Nは19dB以上の下限規格に対して5.3となり、各磁気記録媒体における面内分布、パレット内における磁気記録媒体の磁気特性のバラツキが抑えられ、且つ、磁気特性が良好な磁気記録媒体が得られるばかりでなく、製造工程の安定性が向上した。また、荷重3gの70%ヘッドスライダーを用いた10万回のCSS耐久試験においても、磁気記録媒体と磁気ヘッドとの間で吸着現象は起こらず、またヘッドクラッシュも発生することなく、高CSS耐久性を有する磁気記録媒体が得られた。
【0071】
尚、保磁力(Hc)の測定は、製造した磁気記録媒体から8mmφの試料を切り出して膜面方向に磁場を印加し、振動試料型磁力計により最大外部印加磁場10kOeで測定した。
【0072】
また、記録再生特性(S/N比)の測定は次のようにして行った。即ち、得られた磁気ディスクを用いて、磁気ヘッド浮上量が0.055μmのMR(磁気抵抗効果型)ヘッドを用い、MRヘッドと磁気ディスクの相対速度を9.6m/sで線記録密度120kfcl(1インチあたり120,000ビットの線記録密度)における記録再生出力を測定した。また、キャリア周波数23MHzで、測定帯域を26MHzとしてスペクトルアナライザーにより、信号記録再生時の媒体ノイズを測定し、S/N比を算出した。本測定に用いたMRヘッドは、書込み/読取り側にそれぞれトラック幅3.1/2.4μm、磁気ヘッドギャップ長0.35/0.28μmである。尚、以後に示す実施例及び比較例における表面粗さ、結晶粒径、保磁力、S/N比の測定は上述の方法で行った。
【0073】
実施例2〜4、比較例1〜4
次に、研磨条件を変化させて、ガラス基板の表面粗さを変化させた他は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、これらを実施例2〜4及び比較例1〜4として、それぞれの場合について、ガラス基板主表面の表面粗さRa(nm)、Rmax(nm)、Rmax/Ra、保磁力Hc(Oe)、S/N比(dB)、Cp、CSS耐久試験の結果を表にまとめて図2に示した。
【0074】
上述の結果の通り、実施例では保磁力Hcが1850〜2050(Oe)以内、S/N比が19(dB)以上となり、Cpも1.3を超え磁気特性のバラツキが抑えられたとともに、安定して磁気記録媒体を製造できるようになった。一方、比較例では、Rmax/Raが10未満による磁気ヘッドと磁気記録媒体との間で吸着が発生し、CSS耐久性が良好でないばかりでなく、Rmax及び/又はRaが大きいことにともなう保磁力(Oe)、S/N比(dB)の各磁気記録媒体における磁気特性のバラツキが大きくなり、安定した磁気記録媒体が製造できないことがわかる。
【0075】
実施例5〜11、比較例5〜9
次に、研磨条件を変化させて、ガラス基板の表面粗さを変化させ、また、第1下地層2の平均膜厚を1nm、凹凸形成層の表面粗さ(Rmax)を24nmにした他は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、これらを実施例5〜11及び比較例5〜9として、それぞれの場合について、ガラス基板主表面の表面粗さRa(nm)、Rmax(nm)、Rq(nm)、Rmax/Ra、磁性層の平均結晶粒径(nm)、S/N比(dB)、ヘッドクラッシュの有無等を表にまとめて図3に示した。
【0076】
実施例5の磁気記録媒体の磁性層の平均結晶粒径を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて表面観察による計測したところ、下地層の結晶粒そのまま反映されており、その粒径は11nmであり、また、磁性結晶粒の結晶粒径の分布を調べたところ、最も多く分布する粒径の点からの半値幅は20nm以下という結晶粒径のそろった磁性層を得ることができた(尚、この磁性結晶粒の結晶粒径の分布については、 IEEE Tranzaction on Magnetics.VOL.32,NO.5「Microstructure/Magnetic Property Relationships in CoCrPt Magnetic Thin Films/Mary Doerner」」の論文等に掲載されているTEMによる磁性結晶粒径分布と同様の測定により、Number of Grainsをフ゜ロットし、そのNumber of Grainsの最高値からの半値幅で結晶粒径の分布の度合いを評価した。)。また、この得られた磁気記録媒体の磁気特性と記録再生特性を測定したところ、保磁力が2300 Oe、S/N比が24.7dBという良好な磁気記録媒体が得られた。また、荷重3gの70%ヘット゛スライタ゛ーを用いた10万回のCSS耐久試験においても、磁気記録媒体と磁気ヘット゛との間で吸着現象は起こらず、またヘット゛クラッシュも発生することなく、高CSS耐久性を有する磁気記録媒体が得られた。
【0077】
尚、保磁力(Hc)の測定は、製造した磁気記録媒体から8mmφの試料を切り出して膜面方向に磁場を印加し、振動試料型磁力計により最大外部印加磁場10kOeで測定した。
【0078】
また、記録再生特性(S/N比)の測定は次のようにして行った。即ち、得られた磁気ディスクを用いて、磁気ヘッド浮上量が0.055μmのMR(磁気抵抗効果型)ヘッドを用い、MRヘッドと磁気ディスクの相対速度を9.6m/sで線記録密度120kfci(1インチあたり120000ビットの線記録密度)における記録再生出力を測定した。また、キャリア周波数23MHzで、測定帯域を26MHzとしてスペクトルアナライザーにより、信号記録再生時の媒体ノイズを測定し、S/N比を算出した。本測定に用いたMRヘッドは、書込み/読取り側にそれぞれトラック幅3.1/2.4μm、磁気ヘッドギャップ長0.35/0.28μmである。尚、以後に示す実施例及び比較例における表面粗さ、結晶粒径、保磁力、S/N比の測定は上述の方法で行った。尚、実施例6〜11及び比較例5〜9における磁気記録媒体の保磁力を測定したが、2000(Oe)以上という高い保磁力を有していた。
【0079】
比較例5、7では、ガラス基板の表面粗さRaが1.0nmより大きくなったこと及び/又はRqが1.5nmより大きくなったことに起因してその上に形成される下地層の結晶粒径が不規則かつ異常成長して大きくなったことによって、磁性層の結晶粒径が大きく、ばらつきが発生し、S/N比が低下したものと思われる。
【0080】
比較例6では、ガラス基板の表面粗さRmaxが15.0nmより大きくなったことにより、それが磁気ディスク表面に影響されるため、磁気ヘッドの低浮上走行が実現できず、記録再生特性が悪化するばかりか、異常な結晶粒成長によるS/N比の悪化とヘッドクラッシュが発生してしまうので好ましくない。
【0081】
比較例8では、ガラス基板の表面粗さRmaxが大きいことによる磁気ヘッドの低浮上走行が実現しないこと、また、RaとRmaxとの差が大きいことに起因してその上に形成される磁性層の結晶粒径が局所的に異常成長したことによるS/N比の悪化や、異常突起にともなうヘッドクラシュが発生してしまい好ましくない。
【0082】
比較例9では、上述の比較例5〜8の場合と同様に、磁性層の結晶粒径が大きくなったことや結晶粒径のばらつきによるS/N比の悪化と、磁気ヘッドの低浮上走行が実現できず、またヘッドクラシュが発生してしまうので好ましくない。
【0083】
尚、実施例6〜10についても実施例5と同様に、磁性層結晶粒の結晶粒径の分布を測定したところ、実施例5と同様の結果となり、結晶粒径のそろった磁性層が形成されていた。また、比較例5〜9の磁性層結晶粒の結晶粒径の分布を測定したことろ、結晶粒径がばらばらであった。
【0084】
以上の結果から、磁気特性及び、記録再生特性が良好で且つ、ヘッドクラッシュが発生しない信頼性の極めて高い磁気記録媒体を得るためには、ガラス基板の表面粗さをRmax≦15nm、Ra≦1nm、Rq≦1.5nmにすることが必要である。好ましくはガラス基板の表面粗さを、Rmax≦10nm、Ra≦0.5nm、Rq≦0.7nm、さらに好ましくは、Rmax≦5nm、Ra≦0.3nm、Rq≦0.4nmにすることが望ましい。
【0085】
また、同様に信頼性の極めて高い磁気記録媒体を得るためには、ガラス基板の表面粗さをRmax≦15nm、Ra≦1nm、Rmax/Ra≦30にし、磁性層の平均結晶粒径を5〜30nmにしなければならないことがわかる。好ましいガラス基板の表面粗さはRmax≦10nm、Ra≦0.5nm、さらに好ましくは、Rmax≦5nm、Ra≦0.3nmにすることが望ましい。
【0086】
実施例12〜15及び比較例9〜13
次に、ガラス基板表面粗さの凹凸形成層4に対する影響を調べるために凹凸形成層4の膜厚を変えた磁気記録媒体を作製し、これらを実施例12〜15及び比較例9〜13とした。すなわち、上述の実施例5のガラス基板を使用し、凹凸形成層の平均膜厚を5nm(実施例5)、6.5nm(実施例12)、6nm(実施例13)、4.5nm(実施例14)、4nm(実施例15)と変化させた他は実施例5と同様に磁気記録媒体を作製した。
【0087】
次に、本発明の範囲から外れている例として比較例5のガラス基板を使用し、凹凸形成層4の平均膜厚を6.5nm(比較例9)、6nm(比較例10)、5nm(比較例11)、4.5nm(比較例12)、4nm(比較例13)と変化させた他は実施例1と同様に磁気記録媒体を作製した。
【0088】
これら得られた磁気記録媒体の凹凸形成層4の平均膜厚(nm)、凹凸形成層4の表面粗さ(Rmax)及び凹凸形成層4の表面の(Rq/Ra)の値を表にしてそれぞれ図4及び図5に示し、また、それぞれについて凹凸形成層4の平均膜厚(nm)とその表面粗さ(Rmax)との関係をグラフにして図6及び図7に示す。
【0089】
これらの結果から判るように、実施例のガラス基板では、凹凸形成層の膜厚と表面粗さがほぼ直線関係にあるので、高いCSS耐久性を得るための表面粗さの制御が容易にでき、かつ信頼性の高い磁気記録媒体が得られるのに対し、表面粗さが大きいガラス基板(比較例)では、凹凸形成層の膜厚と表面粗さの関係がばらばらであるので、凹凸形成層の表面粗さを制御することは極めて困難であるばかりでなく、信頼性に乏しい。また、凹凸形成層の表面粗さの比(Rq/Ra)について各実施例、比較例をみると、基板の表面粗さのばらつきによる凹凸形成層の異常突起、表面粗さのばらつきが発生し、実施例のものについては基板表面あらさが良好であるため、凹凸形成層については、Rq/Ra≦1.5となりそのときヘッドクラッシュは発生していないが、比較例のものについては、基板表面粗さのばらつきや、異常突起により、Rq/Ra>1.5となり、そのときヘッドクラッシュが発生していることがわかる。
【0090】
尚、ここでは示さないが、上述の実施例6〜11、比較例6〜8に示すガラス基板についても、上記と同様にカ゛ラス基板の表面粗さの影響による、凹凸形成層の膜厚と表面粗さ、ばらつき及びヘッドクラッシュの関係を調べたが、実施例6〜11については上述の図4の表及び図6のグラフに示される傾向と同様の傾向が見られ、また、比較例6〜8については上述の図5の表及び図7のグラフに示される傾向と同様の傾向が見られた。従って、本発明のカ゛ラス基板を用いることにより、凹凸形成層の表面粗さを容易に精度良く制御でき、かつ表面粗さのばらつきも抑えられるので、信頼性の高い磁気記録媒体が得られることがわかる。
【0091】
実施例16〜20、比較例14、15及び比較例16
次に、凹凸形成層の膜厚とスパッタ条件を適宜調整して、凹凸形成層の表面粗さ(Rmax)を9nm(比較例14)、10nm(実施例16)、20nm(実施例17)、30nm(実施例18)、40nm(実施例19)、50nm(実施例20)、55nm(比較例15)と変化させた他は、実施例5のガラス基板を用い、実施例5と同様にして磁気記録媒体を作製した。また、上述の比較例2のガラス基板に表面粗さ(Rmax)が10nmの凹凸形成層を形成させた他は、実施例5と同様にして磁気記録媒体を作製した。その時の凹凸形成層の表面粗さとCSS耐久性及びヘッドクラッシュの特性を表にして図8に示す。
【0092】
上述の結果から判るように、凹凸形成層の表面粗さが10nmより小さい場合、磁気ヘッドと磁気記録媒体が吸着してしまい、高いCSS耐久性が得られなかった。また、比較例16のように表面粗さRmaxが大きいガラス基板を使用した場合、ガラス基板表面にある異常突起により凹凸形成層の表面粗さの突起もそれに起因して増長する。従って、図7の表に示すように、異常突起によるヘッドクラッシュが発生して、磁気ヘッドばかりでなく、磁気ディスクにも致命的な損傷を受けるので好ましくない。また、比較例15においては、表面粗さRmaxが大きいことによる磁気ヘッドの低浮上走行が実現できないので、高密度記録再生には不適切である。
【093】
実施例21、比較例17
上述の実施例では、凹凸形成層を形成させて磁気ディスク表面に凹凸を形成させた磁気ディスクを挙げたが、凹凸形成層を設けず、上述の実施例に用いたガラス基板の極めて高い平滑性、平坦性をそのまま磁気ディスク表面に反映させて、例えば、接触型磁気ディスクドライブ用の磁気ディスクとしても使用可能である。以下にその接触型磁気ディスクの例をガラス基板として実施例5のガラス基板を用いた場合を実施例21とし、ガラス基板として比較例5のガラス基板を用いた場合を比較例17として掲げる。
【0094】
図9は実施例21及び比較例9の膜構成を示す図である。図9に示すように、これらの磁気記録媒体は、ガラス基板1の上に、順次、第1下地層2(Al;平均膜厚5nm)、第2下地層3(Cr;平均膜厚50nm)、第3下地層50(CrMo;Cr:94at%、Mo:6at%、平均膜厚30nm)、磁性層6(CoCrPtTa;Co:78at%、Cr:13at%、Pt:6at%、Ta:3at%、平均膜厚24nm)、保護層7(カーボン;平均膜厚15nm)及び潤滑層8(パーフルオロポリエーテル液体潤滑層;平均膜厚1nm)が形成されたものである。
【0095】
この実施例及び比較例も上述の実施例及び比較例とほぼ同様の結果が得られた。すなわち、実施例5のガラス基板を用いた実施例21の磁気ディスクの場合、ガラス基板上に形成された下地層、磁性層を構成する結晶粒が良好となり、保磁力が2400 Oe、S/N比が24.5dBという磁気特性、記録再生特性良好な接触型磁気ディスクが得られる。一方、基板表面状態の悪い比較例9のガラス基板を用いた比較例16の磁気ディスクの場合、ガラス基板上に形成された下地層、磁性層を構成する結晶粒の粒径にばらつきが発生し、また粒径も大きくなるのでS/N比が21.0dBと悪化して、記録再生特性の悪い結果となった。
【0096】
上述の実施例では、インライン型連続スパッタリング装置を使用して磁気ディスクを製造した例を示したが、静置対向型のスパッタリング装置を使用する場合でも同様の結果が得られる。また、上述の実施例では、凹凸形成層をAl/Cr下地層の上に設けたが、下地層を介さずガラス基板表面に直接形成させてもよい。図10は下地層を介さずガラス基板表面に直接凹凸形成層を設けた例を示す図である。図10に示されるように、この磁気記録媒体は、ガラス基板1の上に、順次、凹凸形成層4、Cr層51aとCrMo層51bとからな下地層51、磁性層6、保護層7及び潤滑層8が形成されたものである。
【0097】
凹凸形成層を構成する低融点金属材料は、Al、Ti、Cr、Ag、Nb、Ta、Bi、Si、Zr、Cu、Ce、Au、Sn、Pd、Sb、Ge、Mg、In、W、Pb等の金属やそれらの合金、又はそれらの金属もしくは合金の酸化物、窒化物、炭化物等から選ばれる材料であることが望ましい。特に好ましい材料としては、Al単体や、Al合金、酸化Al、窒化AlといったAlを主成分とするものである。Al、窒化Alが最も良い。
【0098】
凹凸形成層の形状は、連続したテクスチャー膜であっても、離散的に分布した島状突起であってもよい。
【0099】
また、凹凸形成層をランディングゾーンにのみ形成させたものや、リードライトゾーンは平滑性をもたせ、ランディングゾーンの表面粗さを粗くした所謂ゾーンテクスチャーとすることも可能である。また、使用するドライブの種類に応じて、凹凸形成層を省略することもできる。
【0100】
本発明で使用するガラス基板としては、表面強化ガラス基板、結晶化ガラス基板などが挙げられ、具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、オキシナイトライドガラスなどが挙げられる。またガラスと同様の性質を有するものとして、セラミック基板、ガラスセラミック基板、シリコン基板、カーボン基板などの非金属基板が挙げられる。
【0101】
なお、本発明のガラス基板は、上述した磁気ディスクだけでなく、光ディスク、光ディスク用基板としても有用である。
【0102】
第1下地層2としては、Alの外にも、Ge、Ga、Zr、Ti等を主たる成分とするものを用いることができる。また、第2下地層3としてはCr単体に限らず、Crを主たる成分に含む合金等であってもよい。
【0103】
さらに、第3下地層5としては、Cr層5aの上に形成されるCrMo層5bの代わりに、Cr、Mo、Zr、B、Si、Zn、Ti、W、V、Ta、Alから選ばれる少なくとも1種以上の元素を主たる成分とする1層以上の層によって構成してもよい。
【0104】
なお、第1下地層2をAlとし、第2下地層3をCrとすることが各層の結晶成長の制御の上で好ましい。これによれば、その上に形成される低融点金属薄膜である凹凸形成層4の凹凸もばらつきなく高精度に制御できると共に、ガラス基板の有する特性との相乗効果により低いヘッド浮上量を実現することができ、再生出力を高くすることができる。
【0105】
磁性層6としては、CoCrPtTaの外に、CoPt、CoCr、CoNi、CoPtCr、CoCrTa、CoNiCr、CoNiPt、CoNiCrTa、CoNiCrPt、CoCrPtTaNb、CoCrPtTaZr、CoCrPtTaSiOなどのCo系合金や、フェライト系、鉄−希土類系などの磁性材料により構成してもよい。また、磁性層を非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrV等)で分割してノイズの低減を図った多層膜としてもよい。例えば、CoCrPtTa/CrMo/CoCrPtTa、CoPtCr/CrMo/CoPtCr(「/」の左側が基板に近い層である)等の層構成にしてもよい。
【0106】
また、実施例では、保護層7をカーボン保護層の単層で構成した例を示したが、これに限られることなく、このカーボン保護層と磁性層との間に、Cr、Mo、Ti、TiW、CrMo、Ta、W、Si、Ge等の非磁性材料、あるいはこれらの合金、酸化物、窒化物、炭化物等を介在させてもよい。また、カーボン保護層の代わりに、テトラアルコキシランをアルコール系溶媒で希釈した中にコロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化珪素(SiO2)膜を形成させてもよい。この場合には保護層と凹凸形成層の両方の機能を果たすことができる。
【0107】
潤滑層8の材料としては、パーフルオロポリエーテルの外に、フルオロカーボン系の液体潤滑剤や、スルホン酸のアルカリ金属塩からなる潤滑剤を用いることもできる。その膜厚は0.5〜2nmであることが望ましい。その理由は0.5nm未満であると耐摩耗性の確保が十分でなくなり、また、2nmを越えるとそれ以上にしても耐摩耗性が向上することがないばかりでなく吸着の問題が生ずるからである。尚、保護層自体に潤滑効果がある場合、潤滑層を省略することも可能である。
【0108】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、ガラス基板の表面粗さ及びばらつきを所定の範囲におさえ、その上に形成される下地層、磁性層の結晶粒を均一にしたもので、これにより、磁気特性良好で且つ高密度記録再生可能な磁気記録媒体及びその製造方法を得ているものであり、また、ガラス基板の表面粗さ(Rmax、Ra)及びそれらRmaxとRaとの関係(Rmax/Ra)を所定の範囲におさえることによって、安定且つ、良好な磁気特性と、高密度記録再生可能な磁気記録媒体及びその製造方法を得ているものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気記録媒体の構成を示す部分断面図である。
【図2】本発明の実施例1〜4及び比較例1〜4の特性等を表にして示す図である。
【図3】本発明の実施例5〜11及び比較例5〜9の特性等を表にして示す図である。
【図4】本発明の実施例5、実施例12〜15の凹凸形成層の特性等を表にして示す図である。
【図5】本発明の比較例9〜13の凹凸形成層の特性等を表にして示す図である。
【図6】本発明の実施例5、実施例12〜15の凹凸形成層の平均膜厚とRmaxとの関係をグラフにして示す図である。
【図7】本発明の比較例9〜13の凹凸形成層の平均膜厚とRmaxとの関係をグラフにして示す図である。
【図8】本発明の実施例14〜20及び比較例15〜16の特性等を表にして示す図である。
【図9】本発明の実施例21及び比較例17の膜構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例の変形例の膜構成を示す図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…第1下地層、3…第2下地層、4…凹凸形成層、5…第3下地層、6…磁性層、7…保護層、8…潤滑層。
Claims (6)
- ガラス基板主表面の表面粗さがRmax≦15nm、Ra≦1.3nm、Rmax/Ra≧10であることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板。(但し、前記表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定したものとする。)
- ガラス基板主表面の表面粗さがRmax≦10nm、Ra≦0.8nm、Rmax/Ra≧10.5であることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板。(但し、前記表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定したものとする。)
- 前記磁気ディスク用ガラス基板は、その表面に少なくとも磁性層を含む薄膜が形成されて磁気ディスクとされるものであり、前記薄膜はインライン型連続スパッタリングにより形成されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
- ガラス基板上に少なくとも磁性層を含む薄膜を有する磁気ディスクにおいて、前記ガラス基板として、請求項1乃至3のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板を用いることを特徴とした磁気ディスク。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板を用意する工程と、前記ガラス基板上に少なくとも磁性層を含む薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
- 前記薄膜はインライン型連続スパッタリング法により形成するものであることを特徴とする請求項5に記載の磁気ディスクの製造方法。
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