JP3599222B2 - バック部を有する衣類 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バック部を有する衣類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のブラジャー等のバック部を有する衣類は、図8に示す様に、該バック部の上辺部および下辺部にテープやゴム素材を用いて、その伸縮性により該衣類を身体にフィットさせ、ずり上がり等を防ぐようになっている。該テープやゴム素材は、身体に圧着力が線状に加わって締め付けるため、不快感や圧迫感を感じることがある。また、テープやゴム素材は、フィット性や引き締め力を持たせるため、固く、厚みのある素材を用いているため、バック部の身体側に取り付けられている場合は、特に身体に部分的な圧迫を加え、不快感を感じたり、着用者の肌に跡が残ったりする。特に、身体でも脂肪のつき方の少ない脇部は、圧迫による影響が大きい。
【0003】
身体が発育途中のティーンエイジャーや妊産婦は、身体、特に脇部には強い圧迫が加わるのは好ましくない。特にティーンエイジャーは、乳腺が発達途上にあり、乳腺の発達には乳房周辺の血管組織が大きく関わっている。ティーンエイジャーは肋骨付近の脂肪が少なく、衣類により過度に締め付け、圧迫されると、それらの血管組織のうち外側胸動脈や肋間動脈が圧迫され、乳腺の発達を阻害することもあり得る。
産前・産後のマタニティ時も乳腺の発達と母乳の形成には、衣類による過度の圧迫が上記のような血管組織に悪影響を与えることがあり、特に、産前は腹部から胸部下辺が膨出してくるため、胸部下辺に圧迫が加わるのは好ましくない。また、皮膚がデリケートになっており、テープやゴム素材の固さや段差によってかゆみやかぶれ等の皮膚のトラブルを引き起こす恐れがある。
高齢の女性は、高齢になると着用感に対する感覚が鋭敏になり、強い圧迫は好まず、緩やかな着用感のものを好むようになるが、胸部や背中などに脂肪がついているため、特にブラジャー等のアンダーラインはテープやゴム素材が肌に食い込み易い上、脂肪の少ない脇部には強い圧迫が加わるため、不快感を感じ易い。また高齢の女性は、胸部を強く締め付けられると圧迫感を感じることがあり、テープやゴム素材による強い締め付けにより、やはり不快になり易い。
さらに、アトピー体質である場合、テープやゴム素材の固さや段差によって皮膚のアレルギー症状を誘発する可能性もある。
【0004】
このように胸部、特に脇部への強い締め付けや、圧迫が好ましくない場合において、衣類のテープやゴム素材によって線状に締め付けるのは問題となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、適度な圧着による衣類のフィット性や引き締め力を有しながら、テープやゴム素材による胸部、特に脇部への線状の締め付けや皮膚への圧迫のない肌ざわりの良いバック部を有する衣類を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、ブラジャーのバック部が、あるいは、ブラキャミソール、ブラスリップにおけるブラジャーのバック部が、2重に重ねた状態の、伸縮性を有する布地のみから形成されていることを特徴とするバック部を有する衣類を提供することを目的とする。
【0007】
即ち、本発明は、バック部全体が、伸縮性を有する布地を2重に重ねた状態となるように形成され、該部分の上辺部および下辺部にテープあるいはゴム素材を用いないことを特徴とする。
【0008】
本発明のバック部を有する衣類において、該バック部は上記構成を有すれば、他の部分(留め具等)の構成は特に限定されず、通常一般に使用されるものを使用することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は本発明の実施例の一例であるブラジャーのバック部を着用時に内側となる側から見た拡大図である。
バック部1が着用時に概ね身体の脇部から背面部へ沿う方向Aに主たる伸縮性を有し、かつ布地を2重に重ねた状態となるように形成され、該バック部の上辺部および下辺部にテープあるいはゴム素材を用いないものである。
【0011】
このような構成とすることにより、テープあるいはゴム素材のように線状に締め付けるのではなく、面状に圧着力が加わるため、局所的に強い圧迫が着用者の身体に加わることはない。従って、適度な圧着力により衣類を身体に密着させ、面状に押えることによって身体にフィットして安定感を有し、しかも着用者の皮膚への強度の圧迫も軽減することができる。布地が2重の状態であるため、布地が1枚のみの場合よりも強い面状の圧着力を得ることができる。また、テープあるいはゴム素材によって生じる身体への部分的な圧迫による不快感を感じたり、着用者の肌に跡が残るという問題もない。布地が2重の状態にすることにより、テープ素材やゴム素材を布地1枚で形成されるバック部の上下辺に縫着する場合に比べ、より柔らかく、肌ざわりの良い素材を使うことができ、ソフトな着用感を得られる。
【0013】
身体の背面側は、 筋肉によって支えられていることもあって、テープあるいはゴム素材による締め付けや圧迫の影響は少ないため、圧着力をやや強くする場合にはバック部の背面部に相対する部分は、従来のものと同様に上辺部および下辺部にテープあるいはゴム素材を用いた構成としても良い。
【0014】
本発明のバック部を有する衣類の、バック部の構成としては、着用時に概ね身体の脇部から背面部へ沿う方向に主たる伸縮性を有して引き締め力を発現し、かつ布地を2重に重ねた状態となるように形成されていれば、特に限定されず、例えば図3〜6に示すような構成が挙げられる。
【0015】
図3は、2枚の布片を重ね、上辺部および下辺部を固着した筒状のパーツから形成するバック部を示す。2枚の布片を用いることにより、後述の様に目的に応じて素材の異なる2枚の布片を用い、伸縮力や着用感を変化させることができる。
【0016】
図4(a)は、1枚の布片を上辺部が折り線となるよう2つ折りにし、下辺部を固着した筒状のパーツから形成するバック部、図4(b)は、逆に1枚の布片を下辺部が折り線となるよう2つ折りにし、上辺部を固着した筒状のパーツから形成するバック部を示す。このような構成とすることにより、伸縮方向を調整し、かつ固着部を少なくして、固着部による皮膚への圧迫や刺激を軽減することができる。
【0017】
図5は、2枚の布片をそれぞれ2つ折りにし、それぞれの折り線が上辺部および下辺部となるよう配置して、布端部を互いに固着した筒状のパーツから形成するバック部を示す。このような構成とすることにより、後述の様に、目的に応じて固着部を挟んで上下で素材の異なる布片を用い、伸縮力を変化させることができる。
【0018】
図6は、筒状に形成された編物からなるバック部を示す。筒状に形成された編物を用いることで、固着部がなくなり、固着部による皮膚への圧迫や刺激を軽減することができる。
【0020】
図3〜5に示す様に、バック部の上辺部および/または下辺部を固着する方法としては、縫合など通常一般に用いられる固着方法が用いられる。また、固着部が2重の布片の間に挟み込まれるように固着するのが、固着部による皮膚への圧迫や刺激が軽減され、より好ましい。
【0021】
本発明のバック部を有する衣類の、バック部を構成する主な素材としては、伸縮性を有し、所望の適度な圧着力を発現する素材であれば特に限定はされず、例えばパワーネット、サテン調パワーネット、ツーウェイパワーネット、ツーウェイトリコット等のストレッチ素材またはそれらの素材に天然繊維を編み込んだもの等があげられる。
【0022】
さらに、バック部を2枚の布片より形成する場合は、目的に応じて素材の異なる布片を用いても良い。例えば、伸縮力の異なる素材を用いたり、2枚の布片を主たる伸縮方向が異なる様に固着し、圧着力の調整を図ったり、2枚の布片を重ねる場合には、着用時に外側となる布片を主として圧着力を発現する素材で形成し、内側となる布片を肌ざわりがよい綿やシルク等の天然素材で構成することもできる。
【0023】
伸縮力の異なる素材を用いたり、2枚の布片を伸縮方向が異なる様に固着し、圧着力の調整を図る方法としては、図5に示す様に2枚の布片をそれぞれ2つ折りにし、それぞれの折り線が上辺部および下辺部となるよう配置してバック布を構成し、この時2枚の布片の伸縮力あるいは伸縮方向を変えることで、バック布上部と下部で伸縮力あるいは伸縮方向を変える方法、図3に示す様に2枚の布片を重ね、この時図7(b)に示す様に、2枚の布片の伸縮力あるいは伸縮方向を変えることで、伸縮力あるいは伸縮方向を変える方法等が挙げられる。また、図7(a)に示す様に、2枚の布片の伸縮方向を同じにすることにより、皮膚への圧迫を軽減したまま、より強い面状の圧着力を得ることができる。
【0024】
本発明において、バック部を除く他の部分は、通常一般の構成、形状、素材、形成方法によって形成することができる。
【0025】
以下試験例を用いて本発明の効果をさらに詳細に説明する。
試験例
表1に示すような3種の素材についてインストロン型万能引張試験機(島津製作所(株)製:オートグラフAG−500D)を用い、テープ状の試験片を試験機に取り付けて伸長性および回復性を試験した。回復性は、30±20cm/minの引張速度で80%まで伸長回復を3回繰り返し、1回目と3回目における30%伸長時の回復力を読み取り、2点の平均値を求めた。結果を表2、表3に示す。
【0026】
【表1】試験対象
【0027】
【表2】伸長性(タテ)
【0028】
【表3】回復性(タテ)
【0029】
表2より、「パワーネット2重(試験例1)」と「パワーネット1重(比較例1)」では伸長性は同等であり、「パワーネット+ゴムテープ(比較例2)」はこれらより伸長性が高いことが分かる。また表3より、「パワーネット2重(試験例1)」は「パワーネット+ゴムテープ(比較例2)」と同等の回復性を有することが分かる。従って、「パワーネット2重(試験例1)」では、身体を過度に圧迫することなく、身体にフィットして適度な圧着力を与えることが分かる。
【0030】
【発明の効果】
本発明のバック部を有する衣類は、上述の構成であるので、バック部の上辺部および下辺部に、テープやゴム素材を用いることがないので、線状の締め付けがなく、2重に重ねた状態の伸縮性を有する布地によってもたらされる適度な圧着力により、身体に衣類が密着し、面状に引き締めることにより身体にフィットして安定感を有し、しかも着用者の皮膚への強度の圧迫も軽減することができる。また、テープあるいはゴム素材の固さや厚みによる身体への部分的な圧迫がなく、肌ざわりを改善し、不快感を感じたり、着用者の肌に跡が残るという問題もない。
従って、本発明のバック部を有する衣類は、身体が発育途中のティーンエイジャーや妊産婦、高齢の女性やアトピー体質のような、胸部、特に脇部への強い締め付けや、圧迫が好ましくない場合に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の一例であるブラジャーのバック部を着用時に内側となる側から見た拡大図である。
【図3】本発明における2枚の布片を重ねて形成されるバック部の構成の一例を示す図である。
【図4】(a)(b)共に本発明における1枚の布片を2つに折り重ねて形成されるバック部の構成の例を示す図である。
【図5】本発明における2枚の布片から形成されるバック部の構成の一例を示す図である。
【図6】本発明における筒状の編物によって形成されるバック部の構成の一例を示す図である。
【図7】(a)2枚の布片を重ねて形成されるバック部において2枚の布片の伸縮方向が同じ状態を示す図である。(b)2枚の布片を重ねて形成されるバック部において2枚の布片の伸縮方向が異なる状態を示す図である。
【図8】従来のブラジャーのバック部を着用時に内側となる側から見た拡大図である。
【符号の説明】
1 本発明におけるバック部
2 カップ部
3 留め具
4 本発明におけるバック部(脇部)
5 バック部(背面部)
6 テープ
7 縫合線
8 折り線
9 従来のバック部
A主たる伸縮方向
Claims (7)
- ブラジャーのバック部が、あるいは、ブラキャミソール、ブラスリップにおけるブラジャーのバック部が、2重に重ねた状態の、伸縮性を有する布地のみから形成されていることを特徴とするバック部を有する衣類。
- ブラジャーのバック部が、2重に重ねた状態の、伸縮性を有する布地のみから形成されていることを特徴とするバック部を有する衣類。
- 前記バック部が、2枚の布片を重ね、上辺部および下辺部を固着した筒状のパーツからなることを特徴とする請求項1または2に記載のバック部を有する衣類。
- 前記バック部が、1枚の布片を上辺部あるいは下辺部の一方が折り線となるよう2つ折にし、上辺部あるいは下辺部の他方を固着した筒状のパーツからなることを特徴とする請求項1または2に記載のバック部を有する衣類。
- 前記バック部が、2枚の布片をそれぞれ2つ折りにし、それぞれの折り線が上辺部および下辺部となるよう配置して、布端部を互いに固着した筒状のパーツからなることを特徴とする請求項1または2に記載のバック部を有する衣類。
- 固着部が2重の布片の間に挟み込まれるように固着することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載のバック部を有する衣類。
- 前記バック部が、筒状に形成された編物からなることを特徴とする請求項1または2に記載のバック部を有する衣類。
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