JP3597207B2 - 作業機の昇降制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンバインにおける刈取前処理装置等の農作業機の走行機体に対して作業機を昇降可能に連結したもの、走行機体に土木用の作業機を昇降可能に連結したものにおいて、これらの作業機の対地高さを設定値になるように昇降制御する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】
従来多用されていたコンバインにおける刈取り高さ検出装置として、地面に対して接触する接触部を備えた機械式センサでは、その接触部に穀稈の株元部等の異物が当たって破損しやすいという欠点があった。これに対して、最近では、特開昭58−142279号公報に開示されているように、非接触式の超音波センサを使用することが多くなった。
【0003】
この種の超音波センサでは、短いパルス状の発信波を地面に向かって発射し、その反射波を受信器にて受信し、超音波の発信時からその反射波を受信器に受信するまでの時間長さの計測にて対地高さを検出するのであり、一回当たりに時間的に極短い(msec.) パルス状の超音波の発信波を出すから、圃場面(地面)の極限られた点を検出する。
【0004】
他方、圃場面は凹凸やうねりがあるのが一般的であり、また、圃場面は泥土で、作業者の足跡が残っていたり、溝や亀裂があるため、1回限りの検出値では、対地高さを誤りなく、正確に検出することができない。
【0005】
この不都合を解消するため、例えば特公昭63−59641号公報等では、複数回測定した検出結果の移動平均値から対地高さを認識して、この移動平均値から設定刈高さになるように刈取前処理装置を昇降制御することを提案している。
【0006】
この移動平均値の演算処理によれば、新たに検出結果を追加入力するごとに、その追加入力分の検出結果に相当する個数の検出結果を、先に記憶されたものから順に除去する構成となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように検出結果の信号を移動平均演算処理するときには、前述のような溝や亀裂の箇所の検出信号値(ノイズ成分)が正常な地面箇所の検出信号値と著しく異なる場合であっても、前記ノイズ成分の影響は、移動平均値の幾つかに必ず入ることになり、この結果に応じて昇降制御を実行すると、制御の安定性を無くする。
【0008】
他方、前記ノイズ成分の影響を少なくするため、平均値演算に採用すべき個数を多くすると、過去の検出結果も多く取り入れることになり、その時々の対地高さに応じて作業機を昇降制御しようとするとき、例えば、圃場面と畦との境界のように、検出値が大きく異なるのが正常であるのに、過去の成分の多くを平均値演算に取り込むと、昇降制御に際して検出結果と時間的ずれが大きくなり、その後の昇降制御の判断において時間的に古い結果を元にするから最近の検出結果が反映されず、制御の応答性が劣るという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような事態であっても、作業機の対地高さを所定の状態に保持できるように、作業機の昇降制御の安定性と応答性とを同時に満足して、円滑かつ正確に昇降制御を実行できるようにすることを解決すべき技術的課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の作業機の昇降制御方法は、走行機体に昇降動可能に連結した作業機に装着した超音波センサにおける発信器から地面に向かって発信される超音波の発信時からその反射波を受信器に受信するまでの時間長の検出値に基づいて対地高さを検出し、その対地高さの検出値を処理した結果に基づいて制御部にて作業機を昇降制御するように構成してなる作業機の昇降制御方法において、
一定時間毎に得られた前記検出値を、その一定時間より短い時間間隔で細分した時系列細分データに分割し、得られた時系列細分データを一旦バッファメモリに記憶させ、
この時系列細分データの3つ以上の複数個を演算単位とし、演算単位に含まれるデータ数より少ない数だけ時系列的にずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算を実行し、前記平均値の大小に応じて作業機の昇降制御指令信号を得るものであって、
ずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算にあたって、新たに追加すべき時系列細分データと、その直前の時系列細分データとの偏差を演算し、該偏差が所定以上の偏差となるとき、当該新たに追加すべき時系列細分データの採用を一時的に保留し、その代わりに代替データを採用して平均値を得るものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業機の昇降制御方法において、演算単位ごとの時系列細分データの平均値算出演算を複数回実行するとき、新たに追加されるべき時系列細分データの値が前回の平均値算出演算時に保留したのと同程度の値であると判断した場合には、前記保留した時系列細分データ及び新たに追加されるべき時系列細分データを採用して平均値算出演算を実行するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明を具体化した実施形態について説明すると、図1はコンバインの側面図を示し、コンバインの走行クローラ1aを有する走行機体1の前部には、図2に示す油圧シリンダ9を介して刈取前処理装置2を昇降動可能に装着されており、刈取前処理装置2は下端を前方に上端を後方に傾斜配置させた穀稈引き起こし装置3と、その下端前方の分草体4と、穀稈引き起こし装置3の下部後方の刈取刃5と、穀稈搬送装置6とからなる。
【0013】
本実施形態の超音波式距離検出装置における超音波センサ7は、前記穀稈引き起こし装置3の裏面側に設けたブラケット(図示せず)に配置し、図2等に示すように、超音波センサ7における発信器7aの発信部(ホーン部)と受信器7bの受信部とを地面8に向けるように配置する。
【0014】
図2は、本発明の超音波式検出装置とその制御部との実施例を示し、符号10は超音波式距離検出装置における制御部としての中央処理装置(CPU)で、制御プログラムを記憶させた読み出し専用メモリ(ROM)17や、各種の検出値、データ等を一時的に記憶させる随時読み書き可能メモリ(RAM)18やインターフェイス、バスなどを備え、超音波センサ7における発信器7aにはCPU10からの指令により発信駆動回路11を介して適宜時間間隔T1にて超音波を発信し、被検出物等にて反射された反射波は受信器7bで受信し、その検出信号は受信増幅回路12を介してCPU10に入力する。
【0015】
また、前記CPU10に対して別の上位中央処理装置(CPU)13を接続し、CPU10では、前記検出信号から対地高さの距離を演算する。上位CPUでは後述の平均値演算を実行し、該上位CPU13から所定の昇降指令信号を駆動回路14に出力し、該駆動回路14からの出力に応じて油圧切換弁15の電磁ソレノイドを作動させて、刈取前処理装置2の昇降のための油圧シリンダ9を作動させるのである。
【0016】
図4は前記油圧切換弁15を含む油圧回路16を示す。
【0017】
なお、この上位CPU13は、図示しないが制御プログラムを記憶させた読み出し専用メモリ(ROM)や、各種の検出値、データ等を一時的に記憶させる随時読み書き可能メモリ(RAM)やインターフェイス、バスなどを備え、コンバインにおける他のセンサや制御用スイッチからの信号も受け、車速や脱穀負荷等に応じて刈取前処理装置2の駆動制御も司る。
【0018】
次に、CPU10,13での刈高さの操作指令量決定制御について、図6のメインフローチャートを参照しながら説明すると、CPU10から出る駆動パルスP1(図3参照)にて駆動回路11を作動させて発信器7aから所定の時間間隔T1ごと(実施例では25msec. ごと) に、デューティ区間T2の発信波P2を出力する。受信器7bでは、前記発信器7aからの発信波P2が地面8に反射して、発信波P2の発射開始時点からの適宜時間T3後に受信波P3を受信する。
【0019】
この検出信号P3が一定レベル(しきい値)H以上となる区間がT4とすると、超音波センサ7から地面までの距離を測定するための時間値(検出値)K=(T4/2)+T3の演算をCPU10にて実行するのである(ステップS1)。
【0020】
なお、この演算した検出値Kと距離との関係を予め実験により関係式等のルックアップテーブルとしてROMに記憶させておき、前記CPU10では、前記検出値Kとルックアップテーブルとから距離Lを演算する。実施例では、刈取前処理装置2の下端面と地面8との間の上下距離、または刈取刃5から地面8までの上下距離が制御に必要な距離である。
【0021】
そして、ステップS2にて前記各回ごとの検出値Kを、前記RAM18におけるバッファメモリ領域にて一旦記憶させる。
【0022】
次いで、前記CPU13内の演算部では、後述するように、刈高さの検出値Kの複数個から平均値Kmを演算し(ステップS3)、次いで、刈高さ設定値Gに対する前記刈高さの検出値Kの平均値Kmの偏差量Dを演算する一方(ステップS4)、別の演算部ではこの偏差量Dの1階差分量ΔD(=Dn+1 −Dn ) を演算し(ステップS5)、これらの値を再度記憶し(ステップS6)、さらに、CPU10のROM17に予め記憶させたファジィ推論規則テーブルを使って、前記偏差量と1階差分量とを変数入力とし、操作指示量を出力するように演算し(ステップS7)、CPU13では前記操作指示量の大小に応じて前記刈取前処理装置を昇降操作するように制御するものである(ステップS8)。
【0023】
以下に刈取前処理装置の昇降制御について、サブルーチンフローチャート(図7)を参照しながら、詳述すると、一定時間ごとに得られた前記検出値を、その一定時間より短い時間間隔で細分した時系列細分データに分割し、得られた時系列細分データを一旦バッファメモリに記憶させ、この時系列細分データの3つ以上の複数個を演算単位とする平均値演算処理し、この平均値の大小に応じて作業機の昇降制御指令信号を得る。実施例では、CPU10で前記検出値Kは25msec. ごとに得られ、上位CPU13では10msec. ごとにCPU10からその検出値を検索しに行き、CPU13のメモリに取り込む(ステップP1)。
【0024】
新たに追加すべき時系列細分データの値と、その直前に採用した古い時系列細分データの値とを比較するため、その偏差(SABUN)の演算を実行し(ステップP2)、その偏差(SABUN)が所定値α未満となる場合(ステップP3:no)には、新たに追加すべき今回の時系列細分データの値を参照し(ステップP7)、保留フラグをクリアした後(ステップP8)、演算単位に含まれるデータ数より少ない数だけ時系列的にずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算を実行する(ステップP9)。
【0025】
なお、本実施例では、実際に検出が行われ、検出値がCPU10にて更新されるタイミングと、CPU13にて検出値を取り込むタイミングとがずれているので、後述する平均値演算処理(ステップP9)では、安定した検出結果を複数個取り込む形となり、センシング結果が安定する。
【0026】
25msec. ごとに更新される検出値のデータを、1次元配列として、K(1),K(2),K(3),K(4),K(5),K(6) ‥‥K(n)と表現すると、それを10msec. ごとに読み取った時系列細分データは、K(1),K(1),K(2),K(2),K(2),K(3),K(3),K(4),K(4),K(4),K(5),K(5),K(6),K(6),K(6), ‥‥となり、その6個数平均(単純平均)とし、採用すべきデータを1個づつずらすようにした移動平均値Hを1次元配列として表現すると、
H(1)= K(1) +K(1)+K(2)+K(2)+K(2)+K(3) /6
H(2)= K(1) +K(2)+K(2)+K(2)+K(3)+K(3) /6
H(3)= K(2) +K(2)+K(2)+K(3)+K(3)+K(4) /6
H(4)= K(2) +K(2)+K(3)+K(3)+K(4)+K(4) /6
H(5)= K(2) +K(3)+K(3)+K(4)+K(4)+K(4) /6
H(6)= K(3) +K(3)+K(4)+K(4)+K(4)+K(5) /6
H(7)= K(3) +K(4)+K(4)+K(4)+K(5)+K(5) /6
H(8)= K(4) +K(4)+K(4)+K(5)+K(5)+K(6) /6
H(9)= K(4) +K(4)+K(5)+K(5)+K(6)+K(6) /6
‥‥
‥‥
となり、移動平均値演算の際には、時系列で細分化された同じ検出値が複数個取り込まれる結果、昇降制御そのものの安定性と応答性の向上を同時に満足することができる。
【0027】
これに対して、通常の移動平均値演算であれば、本発明と同じ検出の時間的スパンでは、平均値の演算単位は3個となり、
J(1)=〔K(1)+K(2)+K(3)〕/3
J(2)=〔K(2)+K(3)+K(4)〕/3
J(3)=〔K(3)+K(4)+K(5)〕/3
‥‥
‥‥
となり、隣接する検出値の偏差、例えばK(3)−K(2)が大きい場合には、その影響が平均値の結果に大きく及ぼす。そうかといって、演算単位の個数を多くすると、過去の古いデータが数多く移動平均演算の対象に加わることになり、最近の状況がうまく反映されないこととなる。
【0028】
これに比して本実施例では、平均値H(1)では、二個のK(1)と、三個のK(2)と、一個のK(3)とを採用すべきデータとするから、前記の偏差の影響は少なくできる。
【0029】
なお、前記実施例では、同じ値を取る時系列細分データの個数が2個と3個との繰り返しとなっているのは、記憶した検出値のデータの時間と時系列細分化のタイミングがずれることによって生じるものであり、これにより平均値演算の際のデータの重み付けが変化しても重大な不都合は生じない。
【0030】
さらに、本発明では、前記演算単位に含まれるデータ数より少ない数だけ時系列的にずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算に際して、新たに追加すべき時系列細分データの値と、その直前に採用した古い時系列細分データの値とを比較するため、その偏差(SABUN)の演算を実行し(ステップP2)、その偏差(SABUN)が所定値α以上となる場合(ステップP3:yes )には、ステップP4にて保留フラグがセットされているか否かを判別し、保留フラグがセットされていないとき(ステップP4:no)、保留フラグをセットすると共に新たに追加すべき時系列細分データの採用を一時的に保留し(ステップP6)、その代わりに代替データを採用して平均値演算を実行する(ステップP9)。
【0031】
例えば、K(3)−K(4)>αと判断するとき(ステップP3:yes )には、H(3)=K(2)+K(2)+K(2)+K(3)+K(3)+K(4) /6 の平均値演算をするに際して、K(4)のデータを採用することを一旦保留し、その代わりに、移動平均演算に際して除去すべきK(1)を再度採用するとか、直前のデータK(3)を採用するとか、別のダミー値を採用するとか、内挿法によりK(3)+K(3)−K(4) /2 なる値を採用するというように、代替データを採用して、移動平均値演算を実行するのである。なお前記保留されたデータはメモリから消去されるのではなく、メモリ保持しておく。
【0032】
このように、時系列細分データに大きな変動があった場合、その影響を平均化処理によって薄めるのではなく、とりあえず、ノイズとみなして処理する。しかしながら、前記の時系列細分データの変動の大きいものが続く場合、例えば、演算単位ごとの時系列細分データの平均値算出演算を3回以上実行するとき、新たに追加されるべき時系列細分データの値が前回の平均値算出演算時に保留したのと同程度の値であると判断した場合には、真に対地高さに大きな変動があると判断し、前記一旦保留した時系列細分データ及び新たに追加されるべき時系列細分データを採用して平均値算出演算を実行するというアルゴリズムを採用するのである。
【0033】
メインフローチャートのステップS4にて演算された偏差量D(=H(n)−G)も前述の一回の平均値の演算が実行されるごとに演算され、この偏差量D1 ,D2 ,D3 ,D4 ‥‥Dn ,Dn+1 ‥‥もRAMに一旦記憶される(ステップS6)。この隣接する偏差量の一階差分量ΔD1 ( =D2 −D1)、ΔD2 (=D3 −D2)、‥‥ΔDn ( =Dn+1 −Dn ) を演算により求め、記憶する(ステップS5,S6)。
【0034】
他方、実験結果から、前記偏差量D‥‥と1階差分量ΔDとを変数入力とし、操作指示量Xを出力とするファジィ推論規則テーブル(図8参照)を作成しておき、このファジィ推論規則テーブルを参照して、操作指示量Xを求める。
【0035】
この場合、ファジィ推論規則テーブルの前記2つの変数入力(偏差量D及び1階差分量ΔD)を、それぞれ15の段階(要素)に割り振りするため、図9のサブルーチンフローチャートに示すような準備操作を実行する。
【0036】
即ち、先ず偏差量Dを規格化した台集合U〔0,1,2,‥‥14〕の15個の要素へ割り当てる。そのとき、15個の要素のうちの中央の要素「U7」を基準として大小関係を決定すべく、まず偏差量Dの正負を判別する(ステップS10)。偏差量Dが正の場合は(ステップS10:yes )、次いで、偏差量Dの値を10分の1に圧縮して値D′を求め(ステップS11)、要素U←U7+D′の演算を実行する(ステップS12)。
【0037】
偏差量Dが負の場合(ステップS10:no)、偏差量Dの値を10分の1に圧縮して値−D′を求め(ステップS13)、さらに、要素U←U7−D′の演算を実行し(ステップS14)、これにより、偏差量Dは規格化した台集合Uの各要素に割当られる。
【0038】
従って、要素U7に近い部分では、刈取前処理装置の高さ位置と設定刈高さとの差異が少ないことを示し、要素U0に近い側では、刈取前処理装置が設定刈高さより地面に大きく接近している。また、要素U14に近づくと、設定刈高さに対して刈取前処理装置が地面から大きく離れていることを示すことになる。
【0039】
次に、1階差分量ΔDについても、規格化した台集合V〔0,1,2,‥‥14〕の15個の要素へ割り当てる。そのとき、15個の要素のうちの中央の要素「V7」を基準として大小関係を決定すべく、まず1階差分量ΔDの正負を判別する(ステップS15)。
1階差分量ΔDが正の場合は(ステップS15:yes)、次いで、1階差分量ΔDの値を10分の1に圧縮して値ΔD′を求め(ステップS16)、要素V←V7+ΔD′の演算を実行する(ステップS17)。
【0040】
1階差分量ΔDが負の場合(ステップS15:no)、1階差分量ΔDの値を10分の1に圧縮して値−ΔD′を求め(ステップS18)、さらに、要素V←V7−ΔD′の演算を実行する(ステップS19)。これにより、1階差分量ΔDは規格化した台集合Vの各要素に割当られる。
【0041】
この台集合Vの要素のうち、V7の近辺では、刈取前処理装置の昇降変動(変化率)が小さいということを示し、V0に近づくと、刈取前処理装置が地面に接近する度合いが速いということであり、逆にV14に近づくと、刈取前処理装置が地面から離れる度合いが速いということである。
【0042】
次いで、ステップS20にて、前記の2組の台集合の要素を確定して、図6のファジィ推論規則テーブルにおいて、前記要素の交点である操作指示量X(メンバーシップ値)を求める。この操作指示量Xは、−10から10までの整数値で17段階であり、値0では昇降なし、正値では刈取前処理装置の上昇指令、負値は刈取前処理装置の下降指令である。
【0043】
ステップS21,23における操作指示量Xの判別に従って、ステップS22の静止、ステップS25の上昇駆動制御又はステップS24の下降駆動制御を実行するのである。
【0044】
CPU12では、前記演算された結果に応じて、所定の昇降指令信号を駆動回路14に出力し、該駆動回路14からの出力に応じて油圧切換弁15の電磁ソレノイド及び減圧調節弁16の電磁ソレノイドを作動させて、刈取前処理装置2の昇降のための油圧シリンダ9を作動させるのである。
【0045】
このとき、操作指示量Xの整数値が+10の場合、油圧切替弁15の昇降側電磁ソレノイドを連続ON、−10の場合、下降側電磁ソレノイドを連続ONとし、操作指示量Xが9,8,6,5,4,3,2,1(正)では、その値の大きさに応じて、減圧調節弁16の電磁ソレノイドのON・OFFのデューティ比を変えて油圧タンクへの油戻り量を、「9」の場合少なく、「1」の場合多くなるように調節する。下降(操作指示量Xが9,8,6,5,4,3,2,1(負)の場合は、逆の調節となる。
【0046】
このように制御すると、例えば、圃場面に亀裂や小さな凹凸の部分があってもこれに敏感に反応することなく、刈取前処理装置の昇降量およびその速度を抑えることができる。また、刈取前処理装置が圃場の土の盛り上がり部分を通過し始めるとき、刈取前処理装置と地面との間隔(偏差量)は小さくなり、その接近程度(1階差分量)も中位(小)であるから、これに応じて刈取前処理装置を中(小)程度の速度で昇降させれば良い。逆に、盛り上がりの頂点で間隔が最小になり、次いで土の盛り上がり部分を越し始めると、刈取前処理装置と地面との間隔が広がるが、その後方のコンバインの走行装置が平坦面を通過中であれば、前記1階差分量はそれほど大きくはない。従って、刈取前処理装置を大きく且つ速く下降させないようにする。
【0047】
これに対して、刈取前処理装置の下面側の圃場面が平坦であるにも拘らず、その後方の圃場面の土の盛り上がり部分をコンバインの走行装置が通過し始めるときには、刈取前処理装置と地面との間隔は大きくなるように、且つ急激に変動する。その場合、前記偏差量も大きく変動し、各1階差分量も大きいので、刈取前処理装置を大きく且つ速く下降させる。
【0048】
次いで、走行装置が土の盛り上がり部分を乗り越えると、その前位置の刈取前処理装置と地面との間隔は急激に減少するように且つ急激な速度で変動する。
従って、この場合には、刈取前処理装置の上昇量も大きく且つ上昇速度も大きくすることにより、刈取前処理装置の対地高さを設定高さに円滑に追従できることになる。
【0049】
このようにして、刈取前処理装置と地面との対地高さの検出だけでは、判断することができない、刈取前処理装置の地面に対する昇降の態様をも考慮にいれて、当該刈取前処理装置の昇降速度を調節することが出来るから、圃場面の状態やコンバイン走行状態のいかんに拘らず、刈取前処理装置の対地高さを所定の状態に保持できるように、刈取前処理装置の昇降制御を円滑かつ正確に実行できるという効果を奏するのである。
【0050】
【発明の作用・効果】
以上に説明したように、請求項1に記載の作業機の昇降制御方法は、走行機体に昇降動可能に連結した作業機に装着した超音波センサにおける発信器から地面に向かって発信される超音波の発信時からその反射波を受信器に受信するまでの時間長の検出値に基づいて対地高さを検出し、その対地高さの検出値を処理した結果に基づいて制御部にて作業機を昇降制御するように構成してなる作業機の昇降制御方法において、
一定時間毎に得られた前記検出値を、その一定時間より短い時間間隔で細分した時系列細分データに分割し、得られた時系列細分データを一旦バッファメモリに記憶させ、この時系列細分データの3つ以上の複数個を演算単位とし、演算単位に含まれるデータ数より少ない数だけ時系列的にずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための 演算を実行し、前記平均値の大小に応じて作業機の昇降制御指令信号を得るものであって、ずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算にあたって、新たに追加すべき時系列細分データと、その直前の時系列細分データとの偏差を演算し、該偏差が所定以上の偏差となるとき、当該新たに追加すべき時系列細分データの採用を一時的に保留し、その代わりに代替データを採用して平均値を得るものである。
【0051】
従って、本発明では、時系列細分データの採用により、平均値算出の演算単位となる時系列細分データを多く採用できると共に、同じ値のデータを複数採用できて、平均値の安定性が向上する一方、最新のデータをも採用できるから、昇降制御指示量に最新の状況を反映させることができて、作業機の昇降制御の応答性も向上するという効果を奏する。
【0052】
しかも、本発明によれば、演算単位に含まれるデータ数より少ない数だけ時系列的にずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算に際して、新たに追加すべき時系列細分データの値と、その直前に採用した古い時系列細分データの値とが所定以上の偏差となるとき、当該新たに追加すべき時系列細分データの採用を一時的に保留し、その代わりに代替データを採用するから、短時間の突発的なノイズ成分は除去でき、作業機の昇降制御の安定性が向上することになるという効果を奏する。
【0053】
そして、請求項2に記載の発明によれば、演算単位ごとの時系列細分データの平均値算出演算を複数回実行するとき、新たに追加されるべき時系列細分データの値が前回の平均値算出演算時に保留したのと同程度の値であると判断した場合には、前記保留した時系列細分データ及び新たに追加されるべき時系列細分データを採用して平均値算出演算を実行するのであるから、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記偏差の大きい状態が続いた場合には、その状況変化を作業機の昇降制御の際に考慮にいれることができ、制御の応答性が一層向上するという効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの側面視である。
【図2】制御手段の機能ブロック図である。
【図3】超音波センサの発信波及び受信波のタイムチャートである。
【図4】油圧回路の図である。
【図5】検出値Kの移動平均処理を示す図である。
【図6】制御のメインフローチャートである。
【図7】平均値算出処理のサブルーチンフローチャートである。
【図8】ファジィ推論規則テーブルの説明図である。
【図9】昇降制御のサブルーチンフローチャートである。
【符号の説明】
1 走行機体
2 刈取前処理装置
4 分草体
5 刈取刃
7 超音波センサ
7a 発信器
7b 受信器
9 油圧シリンダ
10 CPU
13 上位CPU
14 駆動回路
15 油圧切換弁
Claims (2)
- 走行機体に昇降動可能に連結した作業機に装着した超音波センサにおける発信器から地面に向かって発信される超音波の発信時からその反射波を受信器に受信するまでの時間長の検出値に基づいて対地高さを検出し、その対地高さの検出値を処理した結果に基づいて制御部にて作業機を昇降制御するように構成してなる作業機の昇降制御方法において、
一定時間毎に得られた前記検出値を、その一定時間より短い時間間隔で細分した時系列細分データに分割し、得られた時系列細分データを一旦バッファメモリに記憶させ、
この時系列細分データの3つ以上の複数個を演算単位とし、演算単位に含まれるデータ数より少ない数だけ時系列的にずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算を実行し、前記平均値の大小に応じて作業機の昇降制御指令信号を得るものであって、
ずらした演算単位ごとの時系列細分データの平均値を得るための演算にあたって、新たに追加すべき時系列細分データと、その直前の時系列細分データとの偏差を演算し、
該偏差が所定以上の偏差となるとき、当該新たに追加すべき時系列細分データの採用を一時的に保留し、その代わりに代替データを採用して平均値を得ることを特徴とする作業機の昇降制御方法。 - 演算単位ごとの時系列細分データの平均値算出演算を複数回実行するとき、新たに追加されるべき時系列細分データの値が前回の平均値算出演算時に保留したのと同程度の値であると判断した場合には、前記保留した時系列細分データ及び新たに追加されるべき時系列細分データを採用して平均値算出演算を実行することを特徴とする請求項1に記載の作業機の昇降制御方法。
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