JP3597133B2 - 力伝達部材に張力を与えるためのテンショナ - Google Patents

力伝達部材に張力を与えるためのテンショナ Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、無端ベルトや無端チェン等の力伝達部材を用いた動力伝達機構において、力伝達部材の張力を適正に保つためのテンショナ(tensioner)に関する。
背景技術
例えば自動車のエンジンの回転運動をカムシャフトに伝達する動力伝達機構に、無端状のベルトやチェン等の力伝達部材が使われている。この力伝達部材の張力を適正に保つために、テンショナが採用されることがある。図21と図22はそれぞれ従来のテンショナの断面を示している。このテンショナはケース1を備えている。ケース1に、第1のシャフト部材2と、筒状の第2のシャフト部材3が挿入されている。ケース1は、エンジンなどの機器に固定するための取付孔1aを有するフランジ部1bを備えている。第1のシャフト部材2の外面に雄ねじ部が形成されている。第2のシャフト部材3の内面に雌ねじ部が形成されている。これら雄ねじと雌ねじ部が互いに螺合している。第1のシャフト部材2の後端部2aは、ケース1の内部に形成された嵌合孔9に挿入される。この後端部2aの端面が、ケース1の内面に接触している。第1のシャフト部材2の外周側に、ねじりばね4が設けられている。ねじりばね4の一端4aは第1のシャフト部材2に係止され、他端4bはケース1に係止される。このばね4がねじられると、ばね4の反発力によって第1のシャフト部材2を回転させるトルクが発生する。第1のシャフト部材2は、ケース1に対して回転自在である。
円筒状の第2のシャフト部材3は、軸受5に形成された摺動孔5aを挿通している。図22に示すように、第2のシャフト部材3の外周面と、摺動孔5aの内周面は、いずれも非円形状である。これにより第2のシャフト部材3は、軸受5に対して軸方向に移動することが許容され、しかも回転が阻止される。このため、ねじりばね4の反発力によって第1のシャフト部材2が回転すると、第2のシャフト部材3は回転せず、軸方向に推力を生じる。例えばこのばね4の反発力は、第2のシャフト部材3をケース1から突出させる方向に作用する。この推力を前記ベルトあるいはチェン等の力伝達部材に与えることにより、力伝達部材に適度な張力が付与される。第2のシャフト部材3が力伝達部材を押すと、このシャフト部材3には力伝達部材からの反力が作用する。この反力(入力荷重)と、ねじりばね4によるシャフト部材3の推力とが釣合う位置までシャフト部材3が軸方向に移動する。このため従来のテンショナは、入力荷重と第2のシャフト部材3の移動量とが比例するリニヤ(liner)な特性であった。
チェンやベルト等の力伝達部材の張り具合は、例えばエンジンの運転条件によって時々刻々に変化する。しかし従来のテンショナは、直線的(liner)な特性をもつため、広い範囲の入力荷重の変化に対応させることが難しいという問題があった。
ここで、テンショナが力伝達部材を押す力(推力)と、テンショナの変位振幅σとの関係について述べる。テンショナの剛性は、力伝達部材から受ける荷重に対する第2のシャフト部材の移動量(すなわち変位振幅σ)で表わすことができる。推力が大きく、剛性の高いテンショナは、大きな入力荷重に耐えることができる反面、変位振幅σは小さくなる。逆に、テンショナの推力を小さくすれば、変位振幅σを大きくとることができるが、大きな入力荷重に対応することができない。例えば大排気量のエンジンに対して、テンショナの剛性を高くすると変位振幅σが小さくなる。つまり剛性の高いテンショナは、狭い変位振幅σの範囲で機能するように設計せざるをえないなど、テンショナの設計上の自由度が狭いという問題があった。
本発明の目的は、剛性が高いにもかかわらず変位振幅を大きくとることができるなど、広い範囲の入力荷重の変化に対応することができるテンショナを提供することにある。
発明の開示
本発明のテンショナは、
ケースの内部に軸方向の移動が拘束された状態で回転可能に挿入されかつ第1のねじ部を有する第1のシャフト部材と、
前記第1のねじ部に螺合する第2のねじ部を有しかつ前記ケースに対して軸線方向に移動可能で回転が拘束される第2のシャフト部材と、
前記第1のシャフト部材を回転させるトルクを発生するねじりばねと、
前記第1のシャフト部材の回転角に応じて該シャフト部材の回転トルクを変化させるトルク切換手段とを具備している。
前記トルク切換手段は、前記第1のシャフト部材の回転角が小さいときに小さな摩擦トルクが生じ、回転角が大きいときに大きな摩擦トルクを生じるトルク切換部材を用いることができる。
この発明のテンショナにおいて、ベルトやチェン等の力伝達部材から前記第2のシャフトに入力する荷重は、前記第1のねじ部と第2のねじ部を介して、第1のシャフト部材を回転させる。第1のシャフト部材が回転しはじめてから回転角が小さいうちは、前記トルク切換部材が小さな回転トルクを発生する。第1のシャフト部材の回転角が大きくなると、このトルク切換部材は大きな回転トルクを発生する。このことにより、大きな受け荷重に対応することができ、しかも小さな変位振幅に対する追従性も良好である。例えば大排気量のエンジン等に使われる力伝達部材に対しても、大きな受け荷重の変化に対応することができ、力伝達部材に適性な張力を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の第1の実施形態を示すテンショナの断面図、
図2は図1に示されたテンショナの使用例を示すエンジンの一部の断面図、
図3は図1に示されたテンショナのトルク切換部材の分解斜視図、
図4は図1に示されたテンショナの軸方向長さとトルクとの関係を示す図、
図5Aは図1に示されたテンショナの一部の断面図、
図5Bは本発明の第2の実施形態を示すテンショナの一部の断面図、
図5Cは本発明の第3の実施形態を示すテンショナの一部の断面図、
図6Aは本発明の第4の実施形態を示すテンショナの断面図、
図6Bは図6A中のF6−F6線に沿うテンショナの断面図、
図7は、図6Aに示されたテンショナの一部の拡大図、
図8Aは本発明の第5の実施形態を示すテンショナの断面図、
図8Bは図8A中のF8−F8線に沿うテンショナの断面図、
図9は本発明の第6の実施形態を示すテンショナの一部の分解斜視図、
図10Aは図9に示されたテンショナの一部の断面図、
図10Bは本発明の第7の実施形態を示すテンショナの一部の断面図、
図11は本発明の第8の実施形態を示すテンショナの一部の断面図、
図12は本発明の第9の実施形態を示すテンショナの一部の断面図、
図13は図12中のF13−F13線に沿う断面図、
図14は本発明の第10の実施形態を示すテンショナの断面図、
図15は図14に示されたテンショナの軸方向長さとトルクとの関係を示す図、
図16は本発明の第11の実施形態を示すテンショナの断面図、
図17は図16に示されたテンショナの軸方向長さとトルクとの関係を示す図、
図18は本発明の第12の実施形態を示すテンショナの断面図、
図19は図18に示されたテンショナの軸方向長さとトルクとの関係を示す図、
図20は本発明の第13の実施形態を示すテンショナの断面図、
図21は従来のテンショナの断面図、
図22は図21に示されたテンショナの径方向に沿う断面図である。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明の第1の実施形態について、図1から図5Aを参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、互いに共通の構成要素については同一の符号を付してある。
図1に示されるテンショナ10は、例えば図2に示される自動車用エンジン100の動力伝達機構101に採用される。この動力伝達機構101は、エンジン100の回転運動を、タイミングベルトあるいはチェーン等の無端の力伝達部材102を介して、カムシャフト103に伝える。テンショナ10はエンジン100の所定位置に装着され、後述する推力を発生することにより、力伝達部材102を矢印Vで示す方向に押す。
テンショナ10は、中空のケース11と、第1のシャフト部材12と、第2のシャフト部材13とを備えている。これらシャフト部材12,13が互いにねじ部16,17において螺合することにより、シャフトアセンブリSが構成される。シャフトアセンブリSはケース11に挿入されている。ケース11には、シャフトアセンブリSを挿入するための空洞部14が、ケース11の軸方向に形成されている。ケース11の前端部は開口し、この開口を通じて第2のシャフト部材13が進退する。ケース11の後端部にねじ孔15が形成されている。このねじ孔15に、ケース11の内部をシールするためのボルト15aがねじ込まれる。
第1のシャフト部材12に雄ねじ部16が形成されている。第1のシャフト部材12は、その軸線方向に関して、雄ねじ部16が形成されている領域12aと、トルク調整部12bとを有している。第2のシャフト部材13は円筒状をなし、その内周面に雌ねじ部17が形成されている。この雌ねじ部17に雄ねじ部16が螺合することにより、シャフトアセンブリSが構成される。これらのねじ部16,17は、一般的なねじ山よりもリード角(lead angle)を大きくすることが通例であり、例えば三条ねじ(triple thread)などの多条ねじ(multiple thread)が採用されている。
シャフトアセンブリSの外周側に、ねじりばね18が設けられている。ねじりばね18はシャフト部材12,13の軸方向に延びている。ねじりばね18の一端部18aが第1のシャフト部材12に係止され、他端部18bがケース11に係止される。第1のシャフト部材12の後端部に、このシャフト部材12の軸線方向に沿うスリット19が形成されている。このスリット19に、ねじりばね18の一端部18aが挿入されている。ケース11の前部には軸受部材20が固定されている。この軸受部材20によって、ねじりばね18の他端部18bが固定される。ボルト15aをねじ孔15から取外し、ドライバー(screw driver)等の操作部材Wを、ケース11の外側から孔15に挿入し、操作部材Wの先端をスリット19に差し込めば、操作部材Wによって第1のシャフト部材12を回転させることができる。第1のシャフト部材12を第1の方向(例えば時計回り)に回転させ、ばね18をねじると、このばね18はシャフト部材12を第2の方向(例えば反時計回り)に回転させる弾性エネルギー(初期トルク)を蓄える。
軸受部材20は、ケース11の前端部に止め輪21によって固定されている。この軸受部材20には、第2のシャフト部材13が挿通する非円形の摺動孔20aが形成されている。第2のシャフト部材13の径方向の断面は、摺動孔20aに対応して非円形状である。このため第2のシャフト部材13は、ケース11に対して軸方向に移動できるが、回転は阻止される。キャップ22が、第2のシャフト部材13の前端に設けられている。図2に示すように、キャップ22を介して、第2のシャフト部材13が力伝達部材102に直接あるいは間接的に当接する。
前記操作部材Wによって、第1のシャフト部材12を第1の方向に回転させると、ばね18がねじられる。そしてこのばね18は、第1のシャフト部材12を第2の方向に回転させる弾性エネルギーを蓄える。一方、第2のシャフト部材13は軸受部材20によって回転が阻止されているから、操作部材Wによって第1のシャフト部材12が第1の方向に回転させられると、第2のシャフト部材13はケース11に引き込まれる方向に移動する。
ばね18が蓄えた弾性エネルギーによって、第1のシャフト部材12が第2の方向に回転すると、そのトルクは第2のシャフト部材13に作用する。しかし第2のシャフト部材13は、軸受部材20によって回転が阻止されているから、このシャフト部材13に、ケース11から突き出る方向の推力が生じる。一方、力伝達部材102から第2のシャフト部材13に入力する荷重Zは、第2のシャフト部材13をケース11内に押し戻す方向に作用する。このため第1のシャフト部材12を第1の方向に回転させるトルクが発生する。このトルクに対抗する力は、第1のシャフト部材12とケース11との間に生じる摩擦トルクと、ばね18の反発力などである。そしてこれらの対抗する力が、前記入力荷重と釣り合う位置まで第2シャフト部材13が移動することにより、力伝達部材102に適度な張力を与えることができる。
この実施形態のテンショナ10は、ケース11と第1のシャフト部材12との間に、トルク切換部材30を備えている。図3に示すように、トルク切換部材30は、第1のシャフト受け部材31と、第2のシャフト受け部材32とを有している。この明細書では、シャフト受け部材を単に“受け部材”と称することもある。第1のシャフト部材12の前記トルク調整部12bに、端末部材33が設けられている。トルク調整部12bの端部が端末部材33に挿入されている。ピン34によって、シャフト部材12と端末部材33とが互いに固定されている。シャフト部材12と一体に回転する端末部材33は、第1のシャフト部材12の一部を構成している。この端末部材33には、第1の受け部材31に向かって突出する凸部35が形成されている。なお、端末部材33は、第1のシャフト部材12の端部に、シャフト部材12と一体に成形されていてもよい。
第1の受け部材31は、所定の内径と外径とを有した円筒状をなし、底部31bを有している。図5Aに示すように、第1のシャフト部材12の端部が、第1の受け部材31に回転可能に挿入されている。第1のシャフト部材12の端面12fは、第1の受け部材31の底部31bに対し、接触径D1で接触した状態で回転する。第1の受け部材31には、端末部材33の凸部35が入り込む凹部36が形成されている。凹部36は、受け部材31の周方向に関して所定の長さを有している。前記凸部35は、凹部36の周方向の長さ範囲内で、受け部材31の周方向に移動(回転)することができる。凸部35が凹部36内で移動するとき、第1のシャフト部材12と受け部材31とは一体に回転しない。言い換えると、図3中にEで示す角度範囲において、第1のシャフト部材12が第1の受け部材31に対して空回りすることができる。
凸部35が凹部36内を周方向に前記Eの範囲を移動すると、凸部35は凹部36の周方向の内側面36aまたは36bに当接する。凸部35が内側面36aまたは36bに当接すると、第1のシャフト部材12は受け部材31と一体に回転するようになる。
第2の受け部材32は、ケース11に形成された円形の窪み37に圧入されることにより、ケース11に固定されている。この受け部材32は、所定の内径と外径とを有した円筒状をなし、底部32bを有している。第2の受け部材32に、第1の受け部材31が回転可能に挿入される。図5Aに示すように、第1の受け部材31の底部31bと第2の受け部材32の底部32bとは、互いにほぼ全面で接触する。これらの受け部材31,32は、接触径D2で接触した状態で相対的に回転することができる。
第1のシャフト部材12は、互いに嵌合する第1および第2の受け部材31,32を介して、ケース11の窪み37に支持される。このため第1のシャフト部材12は、ぶれることなく円滑に回転することができる。受け部材31,32には、それぞれ、スリット19と対応した位置に連通孔31a,32aが形成されている。ねじりばね18に前記初期トルクを与える際に、操作部材W(図1に示す)の先端をこれらの連通孔31a,32aを通してスリット19に嵌合させることができる。なお、ケース11の材質によっては、第2の受け部材32を用いずに、ケース11に形成した円形の窪み37に第1のシャフト部材12の端部を直接挿入してもよい。この点については、以下に説明する全ての実施形態に適用することができる。
第1のシャフト部材12は、第1の受け部材31に対して、第1の方向と第2の方向のいずれにも回転することができる。すなわちこのシャフト部材12が第1の受け部材31に対して前記Eの範囲で回転するうちは、凸部35が凹部36の内側面36a,36b間を移動する。その場合には、第2の受け部材32と第1の受け部材31が停止したまま、シャフト部材12のみが回転する。つまり第1のシャフト部材12の端面12fが、第1の受け部材31の底部31bに対して接触径D1で回転する。このため接触径D1に応じた比較的小さな摩擦トルクが発生する。
第1のシャフト部材12がさらに回転すると、凸部35が凹部36の内側面36aまたは36bに当接する。この当接により、第1の受け部材31がシャフト部材12と一体に回転するようになる。つまり第1の受け部材31の底部31bが、第2の受け部材32の底部32bに対して接触径D2で回転する。このため接触径D2に応じた比較的大きな摩擦トルクが発生する。
図4は、この第1の実施形態のテンショナ10において、第2のシャフト部材13が入力荷重を受けたときに発生する回転トルクと、テンショナ10の軸方向長さとの関係を示している。第1のシャフト部材12が入力荷重によって回転し始めたとき、回転の初期においては、凸部35が凹部36内を移動する。このときシャフト部材12は、第1の受け部材31に対して、接触径D1で回転するため、比較的小さな摩擦抵抗が発生する。シャフト部材12が第1の方向に回転すると、ばね18の反発力が増加するが、ばね18のねじり量が小さいうちは反発力も小さい。このためシャフト部材12は比較的小さなトルクT1で回転することにより、力伝達部材102に小さな押し力Vを与える。
力伝達部材102からの入力荷重が増大し、第2のシャフト部材13がさらにケース11内に押し戻されると、凸部35が凹部36の内側面36aに当接する。これにより、第1のシャフト部材12と第1の受け部材31が一体に回転しはじめる。この場合には、摩擦径がD2に切換わり、摩擦トルクが増大するとともに、ばね18の反発力も大きくなる。このため、図4に示すようにP1点を境に、シャフト部材12が大きな回転トルクT2で回転することにより、力伝達部材102に比較的大きな押し力Vを与える。
受け荷重が減少する際も、受け荷重が増大するときと同様に、シャフト部材12の回転角が小さいうちは、シャフト部材12が摩擦径D1で回転することによって小さな回転トルクが発生する。そしてシャフト部材12の回転角が大きくなると、凸部35が凹部36の内側面36bに当接することにより、シャフト部材12と受け部材31が摩擦径D2で一体に回転する。こうして大きな回転トルクが発生する。
この第1の実施形態によれば、第1のシャフト部材12が回転する際の接触径を、その回転角に応じてD1とD2とに切換えることにより、比較的大きな振幅変位を確保しながらも、受け荷重が大きいときのテンショナの剛性を高めることができる。このためこのテンショナは、小さな入力荷重から大きな入力荷重に対応することができる。従って、例えばエンジン等において、力伝達部材102からテンショナ10に入力する荷重が小さい場合であっても、小さい振幅変位のもとで第2のシャフト部材13が良好に追従することができ、その結果、力伝達部材102の張力を適正に保つことができる。
図5Bはこの発明の第2の実施形態を示している。この実施形態においては、第1の受け部材31に、その中央に向かって厚みが増すテーパ面38が形成されている。これにより、第1のシャフト部材12と第1の受け部材31との接触径D1を、第1の実施形態における前記接触径D1よりもさらに小さくしている。
図5Cはこの発明の第3の実施形態を示している。この実施形態の場合、第1の受け部材31の下面中央部に凹部49が形成されている。このため第1の受け部材31は、凹部49の周りの環状の端面において、第2の受け部材32に対して接触径D2で接触する。こうすれば、受け部材31がある程度摩耗しても、接触径D2を一定に保つことができる。なお、図5Bと図5Cは、いずれも接触径D1,D2を説明するのに必要な部分のみ示されているが、それ以外の部分は第1の実施形態と同様に構成されている。
図6Aから図7までは、この発明の第4の実施形態を示している。この実施形態のねじりばね18の一端部18aは、第1の受け部材31の径方向に延出し、第1の受け部材31の凹部36に入り込んでいる。この場合、第1の受け部材31の周方向に関して、ばね18の一端部18aが凹部36内である程度動き得る。この動き得る範囲では、第1のシャフト部材12が回転しても第1の受け部材31は止まっている。シャフト部材12の回転角が大きくなると、ばね18の一端部18aが凹部36の内側面36aまたは36bに当接することにより、第1の受け部材31がシャフト部材12と一体に回転する。この実施形態のばね18の一端部18aは、第1の実施形態の端末部材33と同様の機能を果たすため、テンショナ10の部品数を減らすことができる。
図8Aと図8Bは、この発明の第5の実施形態を示している。この実施形態では、スリット19に、ばね18の一端部18aと係止片39とが挿入されている。係止片39は第1の受け部材31の径方向に延び、係止片39の両端部39aが第1の受け部材31の凹部36の内側に位置している。第1のシャフト部材12が回転する際に、係止片39の端部39aが凹部36内で動き得る範囲では、第1の受け部材31は回転しない。シャフト部材12の回転角が大きくなると、係止片39の端部39aが凹部36の内側面36aまたは36bに当接することにより、第1の受け部材31がシャフト部材12と一体に回転する。従ってこの係止片39は、第1の実施形態の端末部材33と同様の機能を果たす。これら第4および第5の実施形態においても、第1のシャフト部材12の端面12fの回転接触径がD1とD2とに切換わることにより、回転トルクを切換えることができる。
図9と図10Aは、この発明の第6の実施形態を示している。この実施形態の場合には、第2の受け部材32に一対の凹部40が形成されている。第1の受け部材31に凸部41が形成されている。凸部41は凹部40の内側に位置し、受け部材32の周方向に関して、凹部40の長さ範囲内で移動することができる。図10Aに示すように、第1の受け部材31の底面に、中央に向かって厚みが増大するテーパ面42が形成されている。こうすることにより、第1の受け部材31と第2の受け部材32との間の接触径D2を、第1の受け部材31と第1のシャフト部材12との間の接触径D1よりも小さくしている。
この実施形態(図9と図10A)の場合には、第1のシャフト部材12が回転する際に、凸部41が凹部40内で動き得る範囲では、第1の受け部材31がシャフト部材12と一体に回転する。このときの接触径はD2であり、発生する摩擦トルクは比較的小さい。シャフト部材12の回転角が大きくなると、凸部41が凹部40の内側面40aまたは40bに当接し、第1の受け部材31の回転が止まることにより、シャフト部材12のみが大きな接触径D1で回転する。このとき発生する摩擦トルクは、接触径D2で回転するときよりも大きい。したがってこの実施形態においても、第1のシャフト部材12の回転トルクを2段階に切換えることができる。
図10Bは、この発明の第7の実施形態を示している。この実施形態の基本的な構成は第6の実施形態と同様であるが、第7の実施形態では、第2の受け部材32の底部32bの中央に、周囲よりも厚みが大きい部分43が形成されている。こうすることにより、第1の受け部材31と第2の受け部材32との接触径D2を、第1の受け部材31と第1のシャフト部材12との接触径D1よりも小さくしている。したがってこの第7の実施形態も、第6の実施形態と同様に、回転トルクを2段階に切換えることができる。
図11はこの発明の第8の実施形態を示している。この実施形態の基本的な構成は第6の実施形態(図10A)と同様であるが、第8の実施形態の場合には、第1の接触径D1と第2の接触径D2がほぼ同じとなるように、第1の受け部材31の底部にテーパ面42が形成されている。
この実施形態のようにD1とD2とが等しい場合には、シャフト部材12と受け部材31との接触部における表面の性状と、受け部材31,32どうしの接触部における表面の性状を、互いに異ならせることにより、両者の摩擦トルクに差をつける。例えば上記2箇所の接触部に施すメッキの種類や、表面硬度あるいは材質等を互いに異ならせることにより、回転トルクT1,T2に差をつけることができる。このように、接触部に適宜の表面処理を施したり、表面を改質するなどして、回転トルクの大きさを調整できる。この技術思想は、前述の第1の実施形態から第7の実施形態においても適用することができる。
図12と図13は、この発明の第9の実施形態のテンショナを示している。この実施形態のテンショナは、端末部材33が回転可能に挿入される第1の受け部材31と、この受け部材31が回転可能に挿入される第2の受け部材32と、第2の受け部材32が回転可能に挿入される第3の受け部材45とを備えている。第3の受け部材45はケース11の底面に固定されている。
図13に示されるように、端末部材33に形成された凸部35が、第1の受け部材31に形成された凹部36に入り込んでいる。凸部35は、第1の受け部材31の周方向に関して、凹部36の内側面36a,36b間を移動することができる。第1の受け部材31には、端末部材33の凸部35と同じように凸部46が形成されている。第2の受け部材32には、凸部46が入り込む凹部47が形成されている。凸部46は、第2の受け部材32の周方向に関して、凹部47の内側面47a,47b間を移動することができる。シャフト部材12が回転するとき、その回転角が小さいうちは、凸部35が凹部36内を移動するため、第1の受け部材31と第2の受け部材32は止まっている。このときのシャフト部材12の接触径はD1であるため、回転トルクは最小である。シャフト部材12の回転角がある程度大きくなると、まず、第1の凸部35が凹部36の内側面36aまたは36bに当接する。このことにより、第1の受け部材31がシャフト部材12と一体に回転する。第1の受け部材31の回転角が小さいうちは、第2の凸部46が凹部47内を移動するため、第2の受け部材32は回転しない。このときの接触径はD2であるため、回転トルクは中程度である。シャフト部材12がさらに回転すると、凸部46が凹部47の内側面47aまたは47bに当接する。このことにより、第2の受け部材32もシャフト部材12と一体に回転するようになる。このときの接触径はD3であるため、回転トルクは最大となる。このように第9の実施形態のテンショナは、シャフト部材12の回転トルクを、より細かく、三段階に変化させることが可能となる。この実施形態においても、前記3箇所の接触部の摩擦トルクを互いに異ならせるために、各部材に施すメッキの種類や、表面硬度あるいは材質等を互いに異ならせてもよい。
図14はこの発明の第10の実施形態を示している。この実施形態のテンショナ10は、クラッチ機構を構成する連結ばね50を備えている。また、ねじりばね18は、第1のシャフト部材12の外周側に設けられている。これに対し、前記各実施形態のテンショナ10のねじりばね18は、第1のシャフト部材12と第2のシャフト部材13とにわたって設けられている。しかし、いずれの実施形態のねじりばね18も、第1のシャフト部材12にトルクを与えるという基本的な機能は共通である。これら実施形態に記載されているねじりばね18は、その反発力が、シャフト部材13をケース11から押し出す方向に作用している。ただし入力荷重の方向によっては、このねじりばね18の反発力を、シャフト部材13をケース11内に押し返す方向に作用させてもよい。
この第10の実施形態のテンショナ10も、ケース11の内部に固定された筒状の第2の受け部材32を備えている。この受け部材32は底部32bを有している。この受け部材32に、底部31bを有する筒状の第1の受け部材31が回転可能に挿入されている。第1の受け部材31に、第1のシャフト部材12の端部が回転可能に挿入されている。第2の受け部材32の底部32bの中央に、孔32dが形成されている。第1の受け部材31の底部31bの中央に、孔32dに挿入される突起部31dが形成されている。突起部31dは、孔32dを通ってねじ孔15の内部に突出している。突起部31dの先端にスリット31cが形成されている。
ねじりばね18の一端部18aは、第1の受け部材31に係止されている。ねじりばね18の他端部18bは、ケース11に係止されている。ねじりばね18の内周面とシャフト部材12のトルク調整部12bの外周面との間に、連結ばね50が設けられている。連結ばね50の一端50aは、第1の受け部材31に係止されている。連結ばね50の他端50bは、第1のシャフト部材12に係止されている。ねじりばね18と連結ばね50がねじられることによって発生するトルクの方向は、互いに同じである。
この第10の実施形態(図14)のテンショナ10において、孔15からドライバー等の操作部材Wを挿入し、操作部材Wを先端をスリット31cに嵌合させる。そして操作部材Wを回転させることにより、ばね18,50の一端18a,50aを、それぞれ第1の方向に所定数回転させる。第1のシャフト部材12は、連結ばね50を介して、第1の受け部材31に接続されている。このため、受け部材31を第1の方向に回転させると、連結ばね50を介して第1のシャフト部材12が第1の方向に回転する。この回転により、第2のシャフト部材13がケース11に引き込まれる方向に移動する。この回転と同時に、ねじりばね18が反発力を蓄える方向にねじられることになり、初期トルクが付与される。
初期トルクが付与された第10の実施形態のテンショナ10に、外部から、第2のシャフト部材13を押す方向の荷重が入力すると、その荷重がねじ部16,17を介して第1のシャフト部材12に伝達され、第1のシャフト部材12が回転する。上記受け荷重が小さく、連結ばね50のねじれが少ないうちは、シャフト部材12が回転しても第1の受け部材31は回転しない。この場合、シャフト部材12の端面12fが、第1の受け部材31の底部31bに対して、接触径D1で回転するため、小さな摩擦トルクが生じる。
前記受け荷重が増大し、シャフト部材12の回転角が増加すると、連結ばね50のねじれの増加に伴って、第1の受け部材31がシャフト部材12に結合される。このことにより、受け部材31とシャフト部材12とが一体に回転する。この場合には、第1の受け部材31が第2の受け部材32に対して接触径D2で回転するため、回転トルクが増大する。
図15は、第10の実施形態のテンショナ10の回転トルクの変化を示している。第1のシャフト部材12が回転し、その回転角が小さい間(受け荷重が小さいとき)は、接触径D1に基く回転トルクT1が発生する。受け荷重が増大することにより、第2のシャフト部材13がさらに軸方向に移動すると、図15中のP2点において、シャフト部材12と受け部材31とが連結ばね50を介して結合される。その場合、接触径D2に基いて、比較的大きい回転トルクT2が発生する。
増大した受け荷重が減少し、シャフト部材12が逆方向に回転するときにも、回転角に応じて接触径が変化することにになり、回転トルクを変化させることができる。
図15から明らかなように、第1段階の回転トルクT1と第2段階の回転トルクT2とは互いに連続し、図4に示されるような段差部Qが存在しない。すなわちこの第10の実施形態では、回転トルクが切換わる際に、連結ばね50の弾性作用が介在するため、T1とT2とが連続した特性が得られる。このような第10の実施形態によれば、前述した各角実施形態と比較して、回転トルクの変動をなめらかにすることができる。
図16はこの発明の第11の実施形態のテンショナ10を示している。このテンショナ10は、第1のシャフト部材12に形成された突起部12cと、この突起部12cに設けたゴム部材51を備えている。突起部12cとゴム部材51は、第1の受け部材31に形成された凹部36の内側に位置している。突起部12cと凹部36は、第1のシャフト部材12と受け部材31とをつなぐクラッチ機構を構成する。底部32bを有する円筒状の第2の受け部材32が、ケース11に固定されている。この受け部材32に、底部31bを有する円筒状の第1の受け部材31が、回転可能に挿入されている。第1の受け部材31に、第1のシャフト部材12の端部が回転可能に挿入されている。前記突起部12cは第1の受け部材31の周面に形成されている。この突起部12cの両側面に、それぞれ、弾性部材として機能するゴム部材51が取付けられている。ゴム部材51は、凹部36の内側面36a,36bと対向している。また、ねじりばね18が、第1のシャフト部材12と第1の受け部材31の外周側に設けられている。ねじりばね18の一端部18aは、第1の受け部材31に係止されている。ねじりばね18の他端部18bは、ケース11に係止されている。この第11の実施形態のテンショナ10は、第10の実施形態と同様に、初期トルクを与えるためのスリット31cを有する突起部31dと、孔32dなどを備えている。
この第11の実施形態のテンショナ10に、第2のシャフト部材13を押す方向の荷重が入力すると、その荷重がねじ部16,17を介して第1のシャフト部材12に伝達されることにより、第1のシャフト部材12が回転する。シャフト部材12の回転角の小さいうちは、突起部12cが凹部36内を移動するため、第1の受け部材31は回転しない。この場合、シャフト部材12が接触径D1で回転するため、回転トルクは比較的小さい。
前記受け荷重が増大し、シャフト部材12の回転角が大きくなると、ゴム部材51が凹部36の内側面36aまたは36bに当接する。この当接により、ゴム部材51が圧縮されつつ、受け部材31とシャフト部材12が互いに結合される。このことにより、受け部材31とシャフト部材12とが一体に回転する。すなわち、第2の受け部材32に対して、第1の受け部材31が接触径D2で回転する。このため回転トルクが増大する。
増大した受け荷重が減少するときには、ばね18の反発力によって、第1の受け部材31が第2の方向に回転するとともに、第1のシャフト部材12も第2の方向に回転する。このため、第2のシャフト部材13がケース11から突き出る方向に移動する。この場合も、シャフト部材12の回転角に応じて、接触径D1のときの小さな回転トルクT1と、接触径D2のときの大きな回転トルクT2とに切換えることができる。
図17は、第11の実施形態のテンショナ10の回転トルクの変化を示している。図17から明らかなように、第1段階の回転トルクT1と第2段階の回転トルクT2とはP3を境に互いに連続しており、しかも第1段階のトルクT1が下に凸の曲線となっている。このトルクT1の特性は、ゴム部材51が、突起部12cと内側面36aまたは36b間で圧縮されることによって得られる。
図18はこの発明の第12の実施形態のテンショナ10を示している。この実施形態のテンショナ10は、前述した第10の実施形態(図14)に加えて、突起部12dと、この突起部12dが入り込む凹部36とを有している。第1のシャフト部材12の回転角が小さいとき、突起部12dは、凹部36の内側面36a,36b間を移動することができる。突起部12dと凹部36の内側面36a,36bは、クラッチ機構を構成している。このクラッチ機構は、シャフト部材12と受け部材31とが互いに回転できる角度範囲を規制する。
ねじりばね18の一端部18aが第1の受け部材31に係止され、他端部18bがケース11に係止されている。連結ばね50の一端50aが第1の受け部材31に係止され、他端50bが第1のシャフト部材12に係止されている。
突起部12dは、第1のシャフト部材12の周面に形成されている。凹部36は、第1の受け部材31の端部に、その周方向に関して、所定の長さにわたって形成されている。この凹部36内に突起部12dが位置している。このため、凹部36の周方向の長さに応じて、シャフト部材12と受け部材31とが相対回転しうる角度が規制される。
第12の実施形態のテンショナ10(図18)に、外部から、第2のシャフト部材13を押す方向の荷重が入力すると、その荷重がねじ部16,17を介して第1のシャフト部材12に伝達され、第1のシャフト部材12が回転する。上記受け荷重が小さいとき、すなわちシャフト部材12の回転角が小さいとき、突起部12dが凹部36内を移動する。このため第1の受け部材31は回転せず、シャフト部材12のみが回転する。この場合、第1の受け部材31の底部31bに対して、シャフト部材12の端面12fが接触径D1で回転するため、小さな摩擦トルクが生じる。
前記受け荷重が増大し、シャフト部材12の回転角が大きくなると、連結ばね50のねじれが増加するとともに、突起部12dが凹部36の内側面36aに当接することにより、受け部材31がシャフト部材12と一体に回転する。この場合には、第1の受け部材31が第2の受け部材32に対して接触径D2で回転するため、大きな摩擦トルクが発生する。図19は、第12の実施形態のテンショナ10の回転トルクの変化を示している。図19中のP4点を境に、接触径がD1からD2に変化する。連結ばね50を用いたことにより、T1とT2との間の段差部Qを少なくすることができる。
図20はこの発明の第13の実施形態のテンショナを示している。このテンショナは、前述の第10の実施形態(図14)に加えて、さらに第3の受け部材60と、第2の連結ばね61とを備えている。第1および第2の受け部材31,32と、ねじりばね18および第1の連結ばね50の構成と作用は、それぞれ第10の実施形態と同様である。
この第13の実施形態においては、第1のシャフト部材12が、第3の受け部材60に回転可能に挿入されている。そして第3の受け部材60が、第1の受け部材31に回転可能に挿入されている。第2の連結ばね61は、第1の連結ばね50の内周面とシャフト部材12の外周面との間に設けられている。第2の連結ばね61の一端61aは、第3の受け部材60に係止されている。第2の連結ばね61の他端61bは、第1のシャフト部材12に係止されている。ねじりばね18がねじられることによって生じる反発力の方向と、連結ばね50,61がねじられることによって生じる反発力の方向は同じである。
この第13の実施形態(図20)のテンショナ10において、孔15からドライバー等の操作部材を挿入し、その先端をスリット31cに嵌合させる。そして操作部材を回転させることにより、ねじりばね18と連結ばね50,61をそれぞれ第1の方向に所定数回転させる。第1の受け部材31が第1の方向に回転すると、連結ばね50,61のねじれが増加することに伴い、第1のシャフト部材12が第1の方向に回転する。この回転により、第2のシャフト部材13がケース11に引き込まれる方向に移動する。この回転と同時に、ねじりばね18が反発力を蓄える方向にねじられることになり、初期トルクが付与される。
このテンショナ10に、外部から、第2のシャフト部材13を押す方向の荷重が入力すると、その荷重は、ねじ部16,17を介して第1のシャフト部材12に伝達され、第1のシャフト部材12が回転する。上記受け荷重が小さく、シャフト部材12の回転角が小さいうちは、連結ばね61のねじれが少ないため第3の受け部材60は回転しない。この場合、シャフト部材12の端面12fが、第3の受け部材60の底部60bに対して接触径D1で回転するため、比較的小さな摩擦トルクが生じる。
前記受け荷重が増大し、シャフト部材12の回転角が大きくなると、第2の連結ばね61のねじれが増加することに伴い、連結ばね61を介してシャフト部材12と第3の受け部材60とが一体に回転する。この場合には、第3の受け部材60が、第1の受け部材31に対して、接触径D2で回転するため、中程度の摩擦トルクが発生する。
前記受け荷重がさらに増大し、シャフト部材12がさらに回転すると、第1の連結ばね50のねじれが増加することに伴い、連結ばね50を介して第1の受け部材31も回転する。この場合には、第1の受け部材31が、第2の受け部材32に対して、接触径D3で回転するため、摩擦トルクが最も大きくなる。
増大した受け荷重が減少することにより、テンショナ10が逆方向に作動する際には、ねじりばね18の反発力によって第1のシャフト部材12が第2の方向に回転する。こうして受け荷重が減少する際も、受け荷重が増大するときと同様に、シャフト部材12の回転角に応じて接触径が3段階に変化することにより、回転トルクを順次変化させることができる。
この第13の実施形態のテンショナは、シャフト部材12の回転トルクを、より細かく、三段階に変化させることが可能となる。この実施形態においても、前記3箇所の接触面の摩擦トルクを互いに異ならせるために、各部材に施すメッキの種類や、表面硬度あるいは材質等を互いに異ならせてもよい。前記第9の実施形態と第13の実施形態は、いずれも回転トルクを3段階に変化させる構成であるが、4段階以上に変化させるように構成することもできる。
産業上の利用の可能性
以上の説明から明らかなように、本発明のテンショナは、例えば自動車のエンジンをはじめとして、無端ベルトや無端チェーン等を用いる動力伝達機構に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. ケースの内部に軸方向の移動が拘束された状態で回転可能に挿入されかつ第1のねじ部を有する第1のシャフト部材と、
    前記第1のねじ部に螺合する第2のねじ部を有しかつ前記ケースに対して軸線方向に移動可能で回転が拘束される第2のシャフト部材と、
    前記第1のシャフト部材を回転させるトルクを発生するねじりばねと、
    前記第1のシャフト部材の回転角に応じて該シャフト部材の回転トルクを変化させるトルク切換手段と、
    を具備したことを特徴とするテンショナ。
  2. 請求項1に記載したテンショナにおいて、
    前記トルク切換手段は、前記第1のシャフト部材の回転角が小さいときと、回転角が大きいときとで、摩擦トルクを変化させるトルク切換部材を有することを特徴とするテンショナ。
  3. 請求項2に記載したテンショナにおいて、
    前記第1のシャフト部材の端面と前記ケースとの間に回転自在に設けた受け部材と、前記第1のシャフト部材の回転角が所定値を越えたときに前記第1のシャフト部材と前記受け部材とを結合する弾性部材と、
    を具備したことを特徴とするテンショナ。
  4. 請求項2に記載したテンショナにおいて、
    前記第1のシャフト部材の端面と前記ケースとの間に回転自在に設けた受け部材と、前記第1のシャフト部材または前記受け部材の一方に設けた凸部と、他方に形成されかつ前記第1のシャフト部材の回転角が所定値を越えたときに前記凸部が当接することによって前記第1のシャフト部材と前記受け部材とを結合する面を有する凹部と、
    を具備したことを特徴とするテンショナ。
  5. 請求項2に記載したテンショナにおいて、
    前記第1のシャフト部材の端部が回転自在に挿入されかつ前記第1のシャフト部材の回転角が小さいうちは小さな摩擦力を発生させながら前記第1のシャフト部材を回転させ、前記第1のシャフト部材の回転角が所定値を越えたときに前記第1のシャフト部材と一体に回転する第1の受け部材と、
    前記第1の受け部材と前記ケースとの間に設けられかつ前記第1の受け部材が回転するときに前記摩擦力よりも大きな摩擦力を発生させながら前記第1の受け部材を回転させる第2の受け部材と、
    を具備したことを特徴とするテンショナ。
  6. 請求項5に記載したテンショナにおいて、
    前記第1のシャフト部材の回転角が所定値を越えたときに前記第1のシャフト部材と前記第1の受け部材とを結合する弾性部材とを具備したことを特徴とするテンショナ。
  7. 請求項5に記載したテンショナにおいて、
    前記第1のシャフト部材と前記第1の受け部材との間に、前記第1のシャフト部材の回転角が小さいうちは小さな摩擦力を発生させながら前記第1のシャフト部材を回転させ、前記第1のシャフト部材の回転角が所定値を越えたときに前記第1のシャフト部材と一体に回転する第3の受け部材を具備したことを特徴とするテンショナ。
  8. 請求項7に記載したテンショナにおいて、
    前記第1の受け部材と前記第3の受け部材との間に設けられた第1の弾性部材であって、前記第3の受け部材の回転角が所定値を越えたときに前記第1の受け部材と前記第3の受け部材とを結合する第1の連結用弾性部材と、
    前記第1のシャフト部材と前記第3の受け部材との間に設けられた第2の弾性部材であって、前記第1のシャフト部材の回転角が所定値を越えたときに前記第1のシャフト部材と前記第3の受け部材とを結合する第2の連結用弾性部材と、
    を具備したことを特徴とするテンショナ。
  9. 請求項1に記載したテンショナにおいて、
    前記トルク切換え手段は、前記第1のシャフト部材の回転角に応じて摩擦トルクを3段階以上に変化させることを特徴とするテンショナ。
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