JP3597055B2 - 質量分析計のダイレクト・プローブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量分析計で用いられるダイレクト・プローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイレクト・プローブは、試料を質量分析計の真空室内に直接導入し、室温から500℃程度まで昇温して気化させる装置であり、気化した試料は、電子衝撃法(EI)や化学イオン化法(CI)などのイオン化法によってイオン化され、質量分析に供される。
【0003】
ダイレクト・プローブの従来の回路のブロック・ダイヤグラムを図1に示す。試料を昇温させるためのプローブ5は、ヒータ回路6と熱電対7とから構成されており、熱電対7でプローブ5の温度を読み取り、結果を熱電対−温度変換回路8を介して誤差アンプ2にフィードバックし、基準信号源1の設定電圧との比較を行なう。ここで得られる誤差信号に基づいて、コントロール回路3とパワーアンプ4を介してヒータ回路6の制御電流を作り、ヒータ回路6に電流を供給し、プローブ5を加熱する構成となっている。
【0004】
また、このとき、基準信号源1は、図3に示すように、室温からA℃(例えば、50℃)まで温度を上げて一定時間静置した後、A℃からB℃(例えば、500℃)まで一定のスピード(例えば、256℃/Min)で昇温させるような直流電圧を発生させるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ダイレクト・プローブは、室温(30℃程度)から500℃程度まで、幅広い温度をコントロールする必要がある。しかし、従来の回路では、低い温度(100℃以下)の時も高い温度(400℃以上)の時も、コントロール回路3とパワーアンプ4に、同じ時定数の回路を用いていた。
【0006】
このため、ダイレクト・プローブを低い温度に設定すると、図4(b)のように、一時的に2アンペア以上の電流がヒータ回路6を流れ、パワーが大きすぎて、図4(a)に示すように、プローブ5の温度がオーバーシュートを起こしてしまうという問題があった。一度温度のオーバーシュートを起こしてしまうと、測定開始温度に設定した準備段階で、試料の一部が気化してなくなってしまう可能性があるため、このような現象は避ける必要がある。
【0007】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、幅広い温度範囲に渡ってプローブの温度をコントロールする際に、プローブの温度がオーバーシュートしないようなダイレクト・プローブを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明にかかる質量分析計のダイレクト・プローブは、ヒータ回路及び温度測定手段を備えたプローブと、プローブの温度を設定する基準信号源と、該設定温度とプローブの実際の温度とを比較する誤差アンプと、該誤差アンプからの出力に基づいてヒータ回路への電力供給を制御するコントロール回路と、該コントロール回路からの制御信号に従ってヒータ回路に電力を供給するパワーアンプとから成る質量分析計のダイレクト・プローブにおいて、前記ヒータ回路を流れる電流の量を前記基準信号源の温度設定信号に基づいて制限することを特徴としている。
【0009】
また、ヒータ回路及び温度測定手段を備えたプローブと、プローブの温度を設定する基準信号源と、該設定温度とプローブの実際の温度とを比較する誤差アンプと、該誤差アンプからの出力に基づいてヒータ回路への電力供給を制御するコントロール回路と、該コントロール回路からの制御信号に従ってヒータ回路に電力を供給するパワーアンプとから成る質量分析計のダイレクト・プローブにおいて、前記パワーアンプの前段に前記コントロール回路からの制御信号を抑制する手段を設け、前記ヒータ回路に供給される電流を制限することを特徴としている。
【0010】
また、ヒータ回路及び温度測定手段を備えたプローブと、プローブの温度を設定する基準信号源と、該設定温度とプローブの実際の温度とを比較する誤差アンプと、該誤差アンプからの出力に基づいてヒータ回路への電力供給を制御するコントロール回路と、該コントロール回路からの制御信号に従ってヒータ回路に電力を供給するパワーアンプとから成る質量分析計のダイレクト・プローブにおいて、前記コントロール回路の時定数を変化させる手段を設け、前記ヒータ回路に供給される電流を制限することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図2は、本発明にかかる、ダイレクト・プローブの回路のブロック・ダイヤグラムを示したものである。図中、図1と同じ構成要素については、図1と同じ番号を付して説明する。
【0012】
試料を昇温させるためのプローブ5は、ヒータ回路6と熱電対7から構成されており、熱電対でプローブの温度を読み取り、結果を熱電対−温度変換回路8を介して誤差アンプ2にフィードバックし、基準信号源1の設定電圧との比較を行なう。ここで得られる誤差信号に基づいて、コントロール回路3とパワーアンプ4を介してヒータ回路6の制御電流を作り、ヒータ回路6に電流を供給し、プローブ5を加熱する構成となっている。さらに、プローブ5の設定温度が低いときにヒータ回路6に流れる電流の上限を制限するための電流リミッター9を設けている。この電流リミッター9は、プローブ5の温度設定基準である基準信号源1の設定電圧に連動して動作する構成となっている。
【0013】
図5は、電流リミッター9とその周辺回路の一実施例を示したものである。プローブを昇温させるヒータ回路6の近くには、熱電対7が設けられていて、プローブ温度の測定がなされるようになっている。熱電対7の温度は、熱電対−温度変換回路8によって電圧に変換され、第一の誤差アンプ2に導かれる。第一の誤差アンプ2では、基準信号源1の電圧と熱電対7からの電圧とが比較され、基準信号源1からの電圧が高い場合には、第一の誤差アンプ2からプラスの電圧が出力され、第一のトランジスター10のベースBに印加される。第一のトランジスター10は、ベースBにプラスの電圧が印加されるとONになり、コレクターC側からエミッターE側に向けて流れる電流が増加し、結果的にヒータ電流が増えて、プローブの昇温が促進される。
【0014】
一方、基準信号源1からの電圧が熱電対7からの電圧よりも低い場合は、誤差アンプ2からの出力電圧が抑制され、第一のトランジスター10のベースBには、ゼロまたは負の電圧が印加される。その結果、第一のトランジスター10のコレクターC側からエミッターE側に流れる電流はゼロとなり、ヒータ電流もゼロとなって、プローブの昇温が抑制される。
【0015】
電流リミッター9は、ヒータ電流を測るための電流検出抵抗11、電流検出抵抗11の電流をモニターする電流検出器12、第二の誤差アンプ13、及び第二のトランジスター14から構成され、ヒータ電流の上限値は、電流検出抵抗11を流れる電流を電流検出器12でモニターすることによって制限される。
【0016】
即ち、電流検出器12からの出力は、第二の誤差アンプ13によって基準信号源1の電圧と比較され、ヒータ電流の上限値が適正な値よりも大きい場合には、第二の誤差アンプ13から第二のトランジスター14のベースBにプラスの電圧が出力される。その結果、第二のトランジスター14はONになり、コントロール回路3から出力される電流が、第二のトランジスター14のコレクターC側からエミッターE側に向けて流れ、第一のトランジスター10のベースBに印加される電圧は低下し、第一のトランジスター10のコレクターC側からエミッターE側に向けて流れるヒータ電流は抑制され、電流リミッター9はヒータ電流のリミッターとしての働きを果たすことになる。
【0017】
図6(a)は、電流リミッター9を設けたときのプローブ温度、(b)はそのときのヒータ電流を示したものである。図6から明らかなように、プローブの設定温度が50℃以下のときは、ヒータ電流の上限が常に0.5〜0.6アンペアに制限されており、その結果、プローブの実際の温度は、図6(a)に示すように、プローブの設定温度をオーバーシュートすることなく制御される。
【0018】
尚、上記の例では、基準信号源1の設定電圧に連動させてヒータ回路6に電流リミッター9を設けたが、基準信号源1の設定電圧に連動させてパワーアンプ4への供給電圧を抑制することによって、ヒータ回路6に供給される電流を制限する構成とすることも可能である。また、基準信号源1の温度設定電圧に連動させてコントロール回路3の時定数を変化させることによって、どの温度領域でもプローブ温度のオーバーシュートが起こらないようにさせることも可能である。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明の質量分析計のダイレクト・プローブを用いれば、プローブの設定温度に対して、昇温時に温度のオーバーシュートを起こすことがないので、質量分析の測定以前に、意に反して試料の気化等を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のダイレクト・プローブを示す図である。
【図2】本発明のダイレクト・プローブの一実施例を示す図である。
【図3】基準信号源が発生する温度基準信号を示す図である。
【図4】従来のダイレクト・プローブにおけるプローブ温度とヒータ電流との関係を示す図である。
【図5】本発明の電流リミッターとその周辺回路の一実施例を示す図である。
【図6】本発明のダイレクト・プローブにおけるプローブ温度とヒータ電流との関係を示す図である。
【符号の説明】
1・・・基準信号源、2・・・誤差アンプ(第一の誤差アンプ)、3・・・コントロール回路、4・・・パワーアンプ、5・・・プローブ、6・・・ヒータ回路、7・・・熱電対、8・・・熱電対−温度変換回路、9・・・電流リミッター、10・・・第一のトランジスター、11・・・電流検出抵抗、12・・・電流検出器、13・・・第二の誤差アンプ、14・・・第二のトランジスター。

Claims (3)

  1. ヒータ回路及び温度測定手段を備えたプローブと、プローブの温度を設定する基準信号源と、該設定温度とプローブの実際の温度とを比較する誤差アンプと、該誤差アンプからの出力に基づいてヒータ回路への電力供給を制御するコントロール回路と、該コントロール回路からの制御信号に従ってヒータ回路に電力を供給するパワーアンプとから成る質量分析計のダイレクト・プローブにおいて、前記ヒータ回路を流れる電流の量を前記基準信号源の温度設定信号に基づいて制限することを特徴とする質量分析計のダイレクト・プローブ。
  2. ヒータ回路及び温度測定手段を備えたプローブと、プローブの温度を設定する基準信号源と、該設定温度とプローブの実際の温度とを比較する誤差アンプと、該誤差アンプからの出力に基づいてヒータ回路への電力供給を制御するコントロール回路と、該コントロール回路からの制御信号に従ってヒータ回路に電力を供給するパワーアンプとから成る質量分析計のダイレクト・プローブにおいて、前記パワーアンプの前段に前記コントロール回路からの制御信号を抑制する手段を設け、前記ヒータ回路に供給される電流を制限することを特徴とする質量分析計のダイレクト・プローブ。
  3. ヒータ回路及び温度測定手段を備えたプローブと、プローブの温度を設定する基準信号源と、該設定温度とプローブの実際の温度とを比較する誤差アンプと、該誤差アンプからの出力に基づいてヒータ回路への電力供給を制御するコントロール回路と、該コントロール回路からの制御信号に従ってヒータ回路に電力を供給するパワーアンプとから成る質量分析計のダイレクト・プローブにおいて、前記コントロール回路の時定数を変化させる手段を設け、前記ヒータ回路に供給される電流を制限することを特徴とする質量分析計のダイレクト・プローブ。
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