JP3596932B2 - 駆動モータ付き偏心差動減速機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、駆動モータの回転を偏心差動減速機により減速するようにした駆動モータ付き偏心差動減速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の駆動モータ付き偏心差動減速機としては、例えば図4、5に示すようなものが知られている。このものは、内部に配管、配線用の通路11が形成された固定部材12と、固定部材12に遊嵌され内周に多数のピン歯13が設けられた回転ケース14と、回転ケース14と固定部材12との間に設けられ、外周に回転ケース14のピン歯13より歯数が若干少なくかつ回転ケース14のピン歯13に噛み合う外歯15が設けられた複数のピニオン16と、固定部材12に取り付けられたキャリア17と、キャリア17に両端部が回転可能に支持されるとともにクランク部18が前記ピニオン16に挿入された2本のクランクシャフト19と、ピニオン16より他側において固定部材12の外側に嵌合された回転可能な回転体20と、回転体20の外周に取り付けられた外歯車21、22と、各クランクシャフト19の他端に固定され前記外歯車21に噛み合う2個の外歯車23と、固定部材12の外側に配置されるとともに、出力軸24の一端に前記外歯車22に噛み合う外歯車25が固定された駆動モータ26と、駆動モータ26の他端に取り付けられ、該駆動モータ26の回転量を検出するエンコーダ27と、を備え、前記ピニオン16の偏心回転により駆動モータ26の出力軸24の回転を減速して回転ケース14から取り出すようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の駆動モータ付き偏心差動減速機にあっては、駆動モータ26の回転を5個の外歯車25、22、21、23を介してクランクシャフト19に伝達するようにしているため、これら外歯車25、22、21、23間に発生するバックラッシが累積して回転ケース14の回転位置に誤差が生じるとともに、これら外歯車25、22、21、23同士の噛み合いによって大きな騒音が生じるという問題点がある。しかも、駆動モータ26とエンコーダ27とを軸方向に並べて密着配置しているため、装置全体が軸方向に長くなるとともに、エンコーダ27の検出精度が駆動モータ26の発熱の影響を受けて低下することがあるという問題点もある。
【0004】
この発明は、低騒音でありながら回転ケースを高精度で減速回転させることができ、しかも、装置全体を小型化することができるとともに、検出器の検出精度の低下を阻止することができる駆動モータ付き偏心差動減速機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、中央近傍に貫通した孔から構成された通路を有する固定部材と、固定部材に遊嵌され内周に多数の歯が設けられた回転ケースと、回転ケースと固定部材との間に設けられ、外周に回転ケースの歯より歯数が若干少なくかつ回転ケースの歯に噛み合う外歯が設けられたピニオンと、回転ケースと固定部材との間に設けられ、固定部材に取り付けられたキャリアと、キャリアに回転可能に支持されるとともにクランク部が前記ピニオンに挿入され、周方向に離れて配置された2本以上のクランクシャフトと、固定部材の外側に配置されるとともに、いずれか1本のクランクシャフトに出力軸が直結され、該クランクシャフトに駆動力を直接付与することでピニオンを偏心回転させる駆動モータと、固定部材の外側に前記駆動モータと重なり合うよう配置されるとともに、残りのクランクシャフトの1本に連結され、該クランクシャフトの回転量を検出する検出器と、を備え、前記ピニオンの偏心回転により駆動モータの出力軸の回転を減速して回転ケースから取り出すことにより達成することができる。
【0006】
【作用】
今、駆動モータが作動して出力軸の回転が1本のクランクシャフトに伝達され、これにより、ピニオンがクランクシャフトと同一回転数で偏心回転(公転)しているとする。このとき、ピニオンの外歯は歯数が回転ケースの歯の数より若干少なく、かつ、該回転ケースの歯に噛み合っており、しかも、キャリアが回転できないよう固定部材に固定されているため、前記駆動モータの回転は減速され回転ケースから取り出される。ここで、前述のように駆動モータの出力軸を1本のクランクシャフトに直結し、該クランクシャフトに駆動モータからの駆動力を歯車を介することなく直接付与するようにしているため、歯車の噛み合いに基づくバックラッシや騒音が生じることはなく、これにより、低騒音としながら回転ケースを高精度で減速回転させることができる。しかも、前述のように歯車を省略して駆動モータの出力軸とクランクシャフトを直結することにより、駆動モータをクランクシャフトに接近させるとともに、検出器を駆動モータから分離して駆動モータから離れた他のクランクシャフトに連結するようにしているため、これら駆動モータと検出器とを互いに重なり合わせた状態(軸方向位置を一致させた並設状態)で配置することができ、これにより、装置全体の軸方向長さを飛躍的に短縮することができ、さらに、検出器が発熱する駆動モータから離隔して配置され、これにより、検出器に対する駆動モータからの熱影響が低減して検出器の検出精度の低下が防止される。さらに、前述のように歯車を省略したので、製作費を安価とすることもできる。
【0007】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、29は図示していない産業ロボット機体やインデックス装置等の装置本体に固定されたフランジ部材であり、このフランジ部材29の中央近傍に設けられた孔(通路)には筒体32、33が挿入されて固定されている。これら筒体32、33は中央近傍に孔32a、33aを有し、これらの孔32a、33aは配管、配線を通す通路30として使用される。前述したフランジ部材29、筒体32、33は全体として中央近傍に通路を有する固定部材31を構成する。
【0008】
この固定部材31の外側には該固定部材31と同軸で円筒状をした回転ケース36が遊嵌され、この回転ケース36の内周でその軸方向中央部には円柱状をした多数のピン歯37がほぼ半分だけ埋設された状態で設けられている。そして、これらのピン歯37は軸方向に延びるとともに周方向に等距離離れて配置されている。39は円板状をした2個のピニオンであり、これらのピニオン39の中央部には前記筒体32より大径の貫通孔40が形成されている。そして、これらピニオン39は貫通孔40内に筒体32が遊嵌された状態で固定部材31と回転ケース36との間に設けられている。また、これらピニオン39の外周には回転ケース36のピン歯37より若干歯数が少ない外歯41が形成され、これらの外歯41はサイクロイド歯から構成されるとともに、前記ピン歯37に全歯で噛み合っている。44は固定部材31と回転ケース36との間に設けられ、固定部材31に取り付けられたキャリアであり、このキャリア44はピニオン39の軸方向一側に配置された一側フランジ45と、ピニオン39の軸方向他側に配置された他側フランジ46と、これら一側、他側フランジ45、46同士を連結するとともにピニオン39内に遊嵌された軸方向に延びる複数本の連結ロッド47と、から構成されている。そして、このキャリア44の一側フランジ45には筒体32の一端部が取り付けられ、他側フランジ46にはフランジ部材29が取り付けられている。49は一側、他側フランジ45、46と回転ケース36との間に介装された一対の軸受であり、これらの軸受49によってキャリア44と回転ケース36とは相対回転可能となる。50は周方向に等距離離れて配置された軸方向に延びる2本以上、ここでは2本のクランクシャフトであり、各クランクシャフト50はその一端が軸受51を介して一側フランジ45に、他端部が軸受52を介して他側フランジ46に回転可能に支持されている。また、各クランクシャフト50は中央部に偏心した2個のクランク部53を有し、各クランク部53はそれぞれピニオン39に形成された貫通孔54にニードル軸受55を介装した状態で挿入されている。前述した回転ケース36、ピニオン39、キャリア44、クランクシャフト50は全体として、入力回転を高比で減速することができる偏心差動減速機56を構成する。
【0009】
58は他側フランジ46より他側で固定部材31の外側に配置、詳しくは筒体33の外周に固定された1台の駆動モータ(サーボモータ)であり、この駆動モータ58の出力軸59の一端は継手60を介していずれか1本のクランクシャフト50aの他端に直結されている。この結果、前記駆動モータ58が作動して出力軸59からクランクシャフト50aに駆動力が直接付与されると、該クランクシャフト50aが回転してピニオン39が偏心回転(公転)する。61は他側フランジ46より他側で固定部材31の外側に配置、詳しくは筒体33の外周に固定され、前記駆動モータ58に重なり合う(軸方向位置が一致し、並設している)検出器としてのエンコーダであり、このエンコーダ61は前記駆動モータ58から 180度離れて配置されるとともに、その検出軸62が残りのクランクシャフト50の1本、即ちクランクシャフト50bの他端に継手63を介して連結されている。そして、このエンコーダ61は同期して回転するクランクシャフト50の回転量を検出し、その検出結果を基に駆動モータ58を制御する。65は前記フランジ部材29と筒体33の他端とに連結され、駆動モータ58およびエンコーダ61を覆う有底円筒状のカバーであり、66は回転ケース36と一側フランジ45との間および回転ケース36とフランジ部材29との間にそれぞれ介装されたオイルシールである。
【0010】
次に、この発明の一実施例の作用について説明する。
今、駆動モータ58が作動して出力軸59の回転がクランクシャフト50aに伝達され、これにより、ピニオン39が該クランクシャフト50aと同一回転数で偏心回転(公転)し、また、クランクシャフト50bも同一回転数で回転しているとする。このとき、ピニオン39の外歯41は歯数が回転ケース36のピン歯37より若干少なく、かつ、該回転ケース36のピン歯37に全歯で噛み合っており、しかも、キャリア44が回転できないよう固定部材31に固定されているため、前記駆動モータ58の回転は高比に減速されて回転ケース36から取り出される。
【0011】
ここで、前述のように駆動モータ58の出力軸59をクランクシャフト50aに直結し、該クランクシャフト50aに駆動モータ58からの駆動力を、従来技術のような歯車を介することなく直接付与するようにしているため、歯車の噛み合いに基づくバックラッシや騒音が生じることはなく、これにより、低騒音としながら回転ケース36を高精度で減速回転させることができる。しかも、前述のように歯車を省略して駆動モータ58の出力軸59とクランクシャフト50aを直結することにより、駆動モータ58をクランクシャフト50aに接近させるとともに、エンコーダ61を駆動モータ58から分離して駆動モータ58から離れた他のクランクシャフト50bに連結するようにしているため、これら駆動モータ58とエンコーダ61とを互いに重なり合わせた状態(軸方向位置を一致させた並設状態)で配置することができ、これにより、装置全体の軸方向長さを飛躍的に短縮することができる。さらに、前述のことからエンコーダ61は発熱する駆動モータ58から離隔して配置され、これにより、エンコーダ61に対する駆動モータ58からの熱影響が低減してエンコーダ61の検出精度の低下が防止される。さらに、前述のように歯車を省略したので、製作費を安価とすることもできる。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、低騒音でありながら回転ケースを高精度で減速回転させることができ、しかも、装置全体を小型化することができるとともに、検出器の検出精度の低下を阻止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す正面断面図である。
【図2】図1のIーI矢視断面図である。
【図3】その概要を説明する正面断面図である。
【図4】従来の駆動モータ付き偏心差動減速機の概要を示す正面断面図である。
【図5】その図2と同様の断面図である。
【符号の説明】
31…固定部材 36…回転ケース
37…歯 39…ピニオン
41…外歯 44…キャリア
50…クランクシャフト 53…クランク部
58…駆動モータ 59…出力軸
61…検出器
Claims (1)
- 中央近傍に貫通した孔から構成された通路を有する固定部材と、固定部材に遊嵌され内周に多数の歯が設けられた回転ケースと、回転ケースと固定部材との間に設けられ、外周に回転ケースの歯より歯数が若干少なくかつ回転ケースの歯に噛み合う外歯が設けられたピニオンと、回転ケースと固定部材との間に設けられ、固定部材に取り付けられたキャリアと、キャリアに回転可能に支持されるとともにクランク部が前記ピニオンに挿入され、周方向に等距離離れて配置された2本以上のクランクシャフトと、固定部材の外側に配置されるとともに、いずれか1本のクランクシャフトに出力軸が直結され、該クランクシャフトに駆動力を直接付与することでピニオンを偏心回転させる駆動モータと、固定部材の外側に前記駆動モータと重なり合うよう配置されるとともに、残りのクランクシャフトの1本に連結され、該クランクシャフトの回転量を検出する検出器と、を備え、前記ピニオンの偏心回転により駆動モータの出力軸の回転を減速して回転ケースから取り出すようにしたことを特徴とする駆動モータ付き偏心差動減速機。
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