JP3596873B2 - 交通流調査用ツール、コンピュータソフト、及び信号変換ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば道路の渋滞原因究明等のために行う交通流調査方法に係り、特に、計測専用でない一般車両をプローブカーに使用しつつも、走行制御用電子制御ユニットから抽出した車速パルスを利用することで高精度の調査を低コストに実現可能とした交通流調査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路渋滞は、交通事故や道路工事等の外的要因のみならず、道路自体の設計仕様(例えば、合流点の路幅、信号機の設置個所)等の内的要因によっても発生する。交通流調査は、そのような道路渋滞原因を究明する上で重要な手掛かりを提供する。本出願人会社は、永年、道路所有者や管理者である国や公団等から受注して交通流調査を実施することを業とするコンサルティング会社の1つである。斯かるコンサルティング会社は全国に多数存在する。
【0003】
一般に、交通流調査には、カメラや車両感知器等の観測機器を道路上に設置して行う定点観測方式と、実際に観測車両(以下、プローブカーと称する)を道路に走行させつつ、各通過地点の走行速度を記録する移動観測方式とが存在する。
【0004】
定点観測方式は、機器設置箇所に関しては交通流情報を連続的かつ正確に取得できる反面、機器設置個所の数には限りがあるため、例えば渋滞発生箇所の正確な特定等には不向きとされている。
【0005】
移動観測方式は、観測点そのものを車の流れに載せて移動させるため、任意の通過地点における交通流情報を取得できることに加え、プローブカーの台数を増加させて、同一の路線を僅かの時間差を隔てて通過させれば、渋滞発生箇所の正確な特定も可能とされている。コンサルティング会社が請け負うのは、主として、この移動観測方式の交通流調査である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在、移動観測方式による交通流調査の実施のためには、必要台数の一般車両をレンタカーサービスを利用して借り受け、同時に、運転要員並びに計測要員をアルバイト雇用して、プローブカーの機能を実現すると言う手法が多く採用されている。すなわち、車両に搭乗した運転要員は所定開始時刻を起点として決められた路線に車両を投入する一方、同乗した記録要員は路側の距離ポストや特定目標物を頼りに通過地点を目視確認しては、その時点の速度をスピードメータから読み取り、通過時刻、距離、速度の各データを手作業にて所定の用紙に記録すると言った操作を繰り返すのである。
【0007】
斯かる現状のプローブカー実現手法にあっては、(1)人手を介して読み取り並びに記録を行うことから、運転要員の他に記録要員が必要となり、その分だけ人件費が嵩むこと、(2)距離目標物の位置並びに数には限りがあることから、任意の距離或いは任意の距離刻み幅におけるデータが得難いこと、(3)目視確認を介してデータを読み取ることから、高速走行時の距離見落としや読み取り誤差が避けがたいこと、等の問題点が指摘されている。
【0008】
なお、プローブカーとしては、自動車メーカの研究所等が所有する高精度自動記録機能を備えた計測専用車両も存在するほか、カーナビゲーション装置と連動して自動記録をおこなう走行記録ソフト等も提案されいる。
【0009】
しかし、前者にあっては、各自動車メーカでさえその保有台数は精々1〜2台程度と限られており、出願人の意図する交通流計測には台数が不足することに加えて、借用も叶わないのが実状である。増して、国や公団からの業務受注予算の範囲内でそのような高価な車両を常備すること等は不可能である。
【0010】
一方、後者にあっても、ビルの狭間の高速道路や山間地の複雑な地形等を考慮するとGPS電波の到達に不安が残され、実際に製品仕様を調査したところでは、距離測定精度等において実用に供し得ないとの結論に達した。
【0011】
この発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、計測専用でない市販の一般車両をプローブカーとして使用しつつも、走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから抽出した車速パルスをパソコン等のコンピュータで処理することにより、高精度かつ低コストに交通流速調査を実現できるようにした交通流調査方法を提供することにある。
【0012】
この発明の他の目的とするところは、上述の交通流調査方法の実施に好適な交通流調査用ツールを提供することにある。
【0013】
この発明の他の目的とするところは、上述の交通流調査用ツールを構成するパソコンに組み込むのに好適なコンピュータソフトを提供することにある。
【0014】
この発明のさらに他の目的とするところは、抽出された車速パルスをパソコンで処理するための前処理装置として好適な信号変換ユニットを提供することにある。
【0015】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の説明を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の交通流調査方法は、第1のステップと第2のステップとからなる2段階の構成を有している。第1のステップは、計測専用でない一般車両を既知の距離を有する道路区間に投入して試験走行させつつ、当該車両に備え付けの走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルスを抽出すると共に、該抽出された車速パルスの対距離特性を学習する。第2のステップは、対距離特性学習済みの一般車両を調査対象となる道路区間に投入して実走行させつつ、当該車両に備え付けの走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルスを抽出すると共に、該抽出された車速パルスと第1のステップで学習された対距離特性とに基づいて交通流調査用データを生成する。
【0017】
このような構成によれば、レンタカーサービス等を利用して借用が可能な一般車両(例えば、サニー、カローラ等)には、通常、例えばダッシュボードの背後等に電子制御ユニット(ECU)が内蔵され、その外部端子の1つにはカーナビゲーション装置等のために車速パルスを端子を介して取り出すことが可能とされているため、この車速パルスを利用することで、計測員の人手に頼ることなく、交通流調査用データを生成することが可能となる。その際、ランダムに借用された一般車両の車速パルスには、対距離特性においてバラツキが予想されるが、本発明では第1のステップにおいて車速パルスの対距離特性を各車両毎に学習しておき、第2のステップにおいては学習結果を利用して交通流調査用データを生成するため、多数のプローブカーを調査対象となる道路区間に投入して交通流調査用データをそれぞれ生成する場合、個々の車両毎の生成データのバラツキが修正されて、交通流調査の精度乃至信頼性が向上する。その結果、本発明方法によれば、従前通りレンタカーサービス等を利用して借用した一般車両であっても、距離計測の基準としては、当該車両から発生する車速パルスを利用しているため、この種の交通流調査用データの生成を高精度かつ低コストに実現することができ、しかも運転員にパソコン操作を任せることにより計測員も不要となるため、人件費の低減も可能となる。
【0018】
また、本発明では、上述の交通流調査方法に好適な交通流調査用ツールを提供する。この交通流調査用ツールは、それぞれ特定の構成を有するプローブと、信号変換ユニットと、パソコンとを具備している。
【0019】
上述のプローブは、車両の走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルス信号を抽出する。また、信号変換ユニットは、プローブを介して抽出された車速パルス信号中に車速パルスが現れる毎に、その車速パルス出現時刻に相当する車速パルス出現時刻データを生成してこれを外部へと送出する。さらに、パソコンは、信号変換ユニットから送出される車速パルス出現時刻データを通信用ポートを介して受信して処理する。
【0020】
上述のパソコンには、第1の手段と第2の手段とを実現するためのコンピュータソフトが組み込まれている。第1の手段は、第1のモード(例えば、車速初期測定モード)に設定されていることを条件として、所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値と予め設定された校正用距離基準値とに基づいて当該車両の車速パルスの対距離特性を学習する。第2の手段は、第2のモード(例えば、車速測定モード)に設定されていることを条件として、相前後して受信される車速パルス出現時刻データから求めたパルス出現時間差と前記学習された車速パルスの対距離特性とに基づいて車速パルス出現毎の累積走行距離と平均速度とを求め、それらを対として時系列的に記憶させることにより交通流調査用データを生成する。
【0021】
このような構成によれば、プローブとパソコンとの間には、プローブを介して抽出された車速パルス信号中に車速パルスが現れる毎に、その車速パルス出現時刻に相当する車速パルス出現時刻データを生成してこれを外部へと送出する信号変換ユニットが介在されているため、パソコン側の処理においては、高速処理を必要とするパルス出現時間差演算処理が不要となり、その分だけパソコン側の処理負担が軽減され、市販の普通のパソコンでも十分に実現可能となる。加えて、パソコンには、対距離特性を学習するための第1の手段と、交通流調査用データを生成するための第2の手段とが組み込まれているため、パソコンの動作モードを第1のモードと第2のモードとに切り替えるだけで、上述の本発明方法を容易に実現することができる。
【0022】
本発明交通流調査ツールの好ましい実施の形態としては、信号変換ユニットが、車速パルス出現時刻データに加えて、車速パルスカウント値データを生成して外部に出力する機能をさらに有するものであっても良い。
【0023】
このような構成によれば、信号変換ユニットからパソコンに送られてくる車速パルス出現時刻データには何番目の車速パルスに対応するものかを示す車速パルスカウント値データが付随するため、高速走行をしたことにより、信号変換ユニットとパソコンとの間の通信速度が間に合わない事態が生じても、車速パルス出現時刻データと対となる車速パルスカウント値データを見誤るおそれがないという利点がある。すなわち、車両が高速走行をしたことにより、車速パルスも高速化して、1個の車速パルス出現時刻データを複数回の車速パルス出現タイミングを掛けて送信するような事態が信号変換ユニット側で生じても、少なくとも送り出される車速パルス出現時刻データにはどの車速パルスに対応するかを示すカウント値データが付随するため、いずれかの車速パルスの送信が途切れたとしても、それを挟んで前後する車速パルスに関しては出現時刻データ並びにカウント値データが正常に送受信され、パソコン側の演算処理において、計算ミスを生ずることがない。
【0024】
本発明交通流調査用ツールの好ましい実施の形態においては、コンピュータソフトを構成する第2の手段が、所定操作が検出されるのに応答して、交通流調査用データの中の該当する累積距離にフラグを立てる機能を含むものであっても良い。
【0025】
このような構成によれば、計測のための走行中に、特別な事象または予期せぬ事態などが発生した場合、その発生時刻並びに終了時刻において所定のキー操作等をパソコンで行うことにより、当該累積距離に関し特定のフラグを立て、後に交通流調査用データ中のフラグとその時点の他のデータとを照らし合わせることを容易とすることができる。すなわち、車両走行中の累積距離と速度並びに時間の関係については、自動的に記録が進むが、それとは別に目視確認により交通流に関する何らかの発見があった場合、そのことをパソコンのキー操作等を通じて交通流調査用データ中の該当する累積距離にフラグを残すことにより、後のデータ再現時における分析に利用できるのである。
【0026】
このとき、好ましい実施の形態においては、フラグは操作の種別に応じて異なるものであっても良い。このような構成によれば、例えばパソコンの各キーをそれぞれ別の種別のフラグに対応させることによって、累積距離に付加されるフラグの種類を増加させ、データ再現時の照らし合わせを一層容易とすることができる。
【0027】
本発明交通流調査用ツールの好ましい実施の形態においては、コンピュータソフトには、交通流調査用データを構成する一連の累積距離と平均速度との対を時系列的に並べてあるいは二次元座標に展開して表示またはプリントアウトさせる出力手段を実現させる機能がさらに含まれているものであっても良い。
【0028】
このような構成によれば、生成された交通流調査用データに基づき、適当な編集を加えることにより、プリント用紙あるいは表示画面上に、交通流調査用データを提示させることができる。
【0029】
本発明交通流調査用ツールのさらに好ましい実施の形態にあっては、電子制御ユニットのカーナビゲーション装置接続用の車速パルス端子からプローブを介して車速パルス信号を抽出するようにしても良い。
【0030】
このような構成によれば、最近のレンタカーの中には、ユーザの持ち込んだカーナビゲーション装置を装着できるように、カーナビゲーション装置接続用の車速パルス端子が備えられているものもあるため、これを利用することによって、プローブの装着を迅速に行わせることができる。また、レンタカーステーションによっては、顧客の依頼を受けて、そのようなカーナビゲーション装置接続用のタップコードの取り付けを厭わないものもあるため、この方法がもっとも手軽な信号抽出方法と言えるであろう。
【0031】
上述の交通流調査用ツールを構成するパソコンに組み込まれるコンピュータソフトそれ自体としても、本発明は新規なる特徴を有するものである。
【0032】
すなわち、このコンピュータソフトには、先に説明したように、第1のモードに設定されていることを条件として、所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値と予め設定された校正用距離基準値とに基づいて当該車両の車速パルスの対距離特性を学習する第1の手段と、第2のモードに設定されていることを条件として、相前後して受信される車速パルス出現時刻データから求めたパルス出現時間差と前記学習された車速パルスの対距離特性とに基づいて車速パルス出現毎の累積走行距離と平均速度とを求め、それらを対として時系列的に記憶させることにより交通流調査用データを生成する第2の手段とが含まれる。
【0033】
そして、このようなコンピュータソフトをパソコンに組み込むだけで、本発明にあっては、第1のモードに設定することによって、車速パルスの対距離特性を学習すると共に、第2のモードに設定することによって、交通流調査用データを生成することができる。
【0034】
殊に、本発明で生成される交通流計測用データは、車速パルスの1パルス毎に得られるパルス出現時刻データに基づくため、市販のカーナビゲーション装置等を流用するものに比べ、計測分解能が極めて高く、その結果高速道路の合流点における微細な分析や、渋滞開始地点の特定分析、さらには駅前タクシー乗り場周辺の混雑防止のための斜線敷設適正箇所の選定等のメートル単位の分析に効果を発揮する。
【0035】
尚、コンピュータソフトを構成する第1の手段において、『所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値』については、必ずしも車速パルスカウント値データから演算により求めるものでなくとも良い。例えば、パルス出現時刻データそのものの受信回数をカウントし、これを車速パルスのカウント値として使用しても良い。尤も、この場合、車両が高速走行したことによって、パソコンに到来するパルス出現時刻データが一部途切れたような場合、若干の計算ミスを犯すおそれが懸念される。
【0036】
そこで、好ましい実施の形態においては、第1の手段が、信号変換ユニットから受信される車速パルスカウント値データに基づいて、所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値を生成するように構成される。先に述べたように、このような構成を採用すれば、車速パルス出現時刻データにはそれに対応する車速パルスカウント値データが必ず付随するため、それらを照合することによって、高速走行中信号が一部途絶えたとしても、車速パルス出現時刻データを取り違えるおそれが防止される。
【0037】
先に述べたように、コンピュータソフトを構成する第2の手段には、所定操作が検出されるのに応答して、交通流調査用データの中で該当する累積距離にフラグを立てる機能を含めても良い。このとき、フラグは操作の種別に応じて異なるものであっても良い。
【0038】
このような構成によれば、先にも述べたように、計測走行中に、車両運転者が目視により何らかの異常や現象に気が付いたような場合、このフラグ機能を利用することで、そのような走行区間を交通流調査用データに残すことができ、後のデータ分析のときに照合が容易となる。
【0039】
さらに、本発明のコンピュータソフトには、交通流調査用データを構成する一連の累積距離と平均速度との対を時系列的に並べてあるいは二次元座標上に展開して表示またはプリントアウトさせる出力手段がさらに含まれていても良い。
【0040】
このような構成によれば、交通流調査用データ収集後の分析を、表示画面またはプリント結果を頼りに、能率良く進めることができる。
【0041】
次に、先に説明した本発明の交通流調査用ツールを構成する信号変換ユニットには、特有の構成が含まれている。
【0042】
すなわち、この信号変換ユニットには、電源投入などの基準タイミングに応答して、車速パルスよりも十分に高速なクロックをカウント開始することにより精細な時刻データを生成する電子時計手段と、プローブを介して電子制御ユニットから取り出された信号中に車速パルスが現れる毎に、前記電子時計手段から時刻データを取得し、これをパソコン側へと送信するデータ送信手段とが含まれている。
【0043】
このような構成によれば、車速パルスが到来するたびに、その正確な出現時刻データをパソコン側へと送信し、パソコン側ではそれら時間差に基づき、累積距離並びに平均速度を1車速パルス単位で正確に算出することができる。
【0044】
さらに好ましい実施の形態においては、信号変換ユニットには、基準タイミングに応答して車速パルスをカウント開始する車速パルスカウント手段をさらに有し、データ送信手段は車速パルス出現時刻データに加えて、その車速パルスのカウント値データを送信するようにしても良い。
【0045】
このような構成によれば、先に説明したように、パソコン側においては、車速パルス出現時刻データに加えて、その車速パルスのカウント値データをも取得できるため、車両が極めて高速に走行したことにより、信号変換ユニット内におけるデータ生成速度がデータ送受信速度を超えてしまい、一部の送信用データが欠落したような場合にも、パソコン側において車速パルス出現時刻データをどの車速パルスタイミングのものかで見誤るおそれがないという利点がある。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る、交通流調査方法、交通流調査用ツール、コンピュータソフト、信号変換ユニットの好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0047】
先に説明したように、本発明のコンピュータを使用した交通流調査方法にあっては、計測専用でない一般車両を既知の距離を有する登録間に投入して試験走行させつつ、当該車両に備え付けの走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルスを抽出すると共に、該抽出された車速パルスの対距離特性を学習する第1のステップと、対距離特性学習済みの一般車両を調査対象となる道路区間に投入して実走行させつつ、当該車両に備え付けの走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルスを抽出すると共に、該抽出された車速パルスと第1のステップで学習された対距離測定とに基づいて交通流調査用データを生成する第2のステップとを具備するものである。
【0048】
かかる交通流調査方法は、より具体的には、以下の構成を有する交通流調査用ツールを用いて実施することができる。すなわち、この交通流調査用ツールにあっては、車両の走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルス信号を抽出するためのプローブと、プローブを介して抽出された車速パルス信号中に車速パルスが現れる毎に、その車速パルス出現時刻に相当する車速パルス出現時刻データ並びに車速パルスカウント値データを生成してこれを外部へと送出する信号変換ユニットと、信号変換ユニットから送出される車速パルス出現時刻データ並びに車速パルスカウント値データを通信用ポートを介して受信して処理するパソコンとを備えている。
【0049】
加えて、このパソコンには、第1のモードに設定されていることを条件として、所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値と予め設定された校正用距離基準値とに基づいて当該車両の車速パルスの対距離特性を学習する第1の手段と、第2のモードに設定されていることを条件として、相前後して受信される車速パルス出現時刻データから求めたパルス出現時間差と前記学習された車速パルスの対距離特性とに基づいて車速パルス出現毎の累積走行距離と平均速度とを求め、それらを対として時系列的に記憶させることにより交通流調査用データを生成する第2の手段と、を実現するためのコンピュータソフトが組み込まれている。
【0050】
そこで、まず最初に、車両に交通流調査ツールを取り付けた状態を示す斜視図が図1に示されている。同図において、1は開放状態にある助手席ドア、2は助手席ウィンドウ、3は助手席シート、4は助手席前方足元の床、5は助手席と対面する位置に存在するグローブボックス、6は助手席の足元においてビスを外して開かれた状態にあるECU(電子制御ユニット)のカバー、7は本発明ツールを構成するノートパソコン、8は車両に内蔵されるECUから引き出されたプローブコードである。
【0051】
同図から明らかなように、例えば日産サニーの場合、助手席シート3の前方足元にあるプラスチック製のECUカバー6をビスを外して取り外すと、その内部には、図示しないECUの外部コネクタが剥き出しの状態となる。
【0052】
車両の電子制御ユニットからハーネス接続用コネクタを取り外した状態を示す斜視図が図2に示されている。同図において、6はECUカバー、9は第1ハーネス束12の先端に取り付けられたプラスチック製の第1プラグ、10は同様にして第2ハーネス束の先端に取り付けられた第2プラグ、11は同様にして第3ハーネス束の先端に取り付けられた第3プラグ、13〜16はECU22側の第1〜第4ソケットである。
【0053】
そして、左から順に並んだ第1〜第4ソケット13〜16の中で、最も左側に位置する第1ソケット13には車速パルス信号ラインが含まれており、この発明の後述するプローブは、この第1ソケット13内の車速パルス信号ラインから車速パルス信号を抽出する。
【0054】
車両の電子制御ユニットのコネクタの1つに車速パルス抽出用プローブを取り付けた状態を示す斜視図が図3に示されている。同図において、6は上方へ持ち上げられて開かれた状態にあるECUカバー、12は第1ハーネス束、17は発煙筒、18は信号抽出用プローブ、19はアース用プローブ、20はアース用プローブ線、21は信号抽出用プローブ線である。
【0055】
同図から明らかなように、後述するプローブコードを構成するアース用プローブ線20先端に取り付けられたプローブ19(この例では、ワニグチクリップにより構成される)は、確実にボディアースされていて、被膜されていない金属部分(例えば、ECUをボディに止めている金属部若しくはネジ)に接続する。なお、アース用のプローブ19は、ライター電源金具に接地するようにしてもよい。一方、信号抽出用プローブ線21の先端に取り付けられた信号抽出用プローブ18は、先ほど図2を参照して説明した第1ソケット13から取り出されたタップコード44の先端の圧着端子45に接続される。この種のタップコード44は、カーナビゲーション装置を取り付けるために通常カーショップ等で施工されるもので、最近のレンタカーの中には、既にこのようなタップコードが取り付けられ、ユーザが持ち込んだカーナビゲーション装置を簡単に接続可能としたものも存在する。もしも、借り入れたレンタカーにそのようなタップコードが取り付けられていない場合には、第1ソケット13に対しカーショップ等でタップコードを取り付ける必要がある。尚、信号抽出用のプローブ18についても、この例ではワニグチクリップが使用されている。
【0056】
以上、図1〜図3を参照して説明したように、本発明の交通流調査用ツールを車両に取り付けるためには、図1に示されるように、例えば運転席シート3の前方に位置するECUカバー6を開いて、図2に示されるようにECU22のソケット群13〜16を剥き出し状態とし、その中で車速パルス信号を扱っている第1ソケット13に対してタップコード施工を必要により行い、その後このタップコード44に図3に示されるように、信号抽出用プローブ18を電気的に接続し、さらにボディアースされている部分にアース用プローブ19を接続し、これにより車両に搭載されたECU22へ通ずる信号ラインから車速パルスを抽出することが可能となる。
【0057】
尚、車速パルス信号抽出箇所としては、何もECU22の外部コネクタに限られるものではないが、本発明者等の鋭意研究並びに試行錯誤によれば、図示されるECU22の外部ソケット(例えば第1ソケット13)にタップコード44を取り付け、それに信号抽出用プローブ18を電気的に接続するのが最も手軽であることが確認された。
【0058】
次に、交通流調査用ツールのシステム構成を示すブロック図が図4に示されている。同図において、7はノートパソコン、18は信号抽出用プローブ(この例では、ワニグチクリップで構成)、19はアース用プローブ(この例では、ワニグチクリップで構成)、20はプローブ19へ繋がるプローブ線、21はプローブ18へ通ずるプローブ線、23はプローブ線20と21とを含むプローブコード、24は信号変換ユニット、25はRS−232C延長ケーブル、26はRS−232Cポート(D−Sub 9pin)、27はライター電源28から得られたDC12Vをノートパソコン7作動用のAC100Vに変換するためのインバータ、44は電子制御ユニット22の外部端子に取り付けられたタップコード、45はタップコードの先端に取り付けられた圧着端子である。この圧着端子に、信号抽出用プローブ18であるワニグチクリップが固定される。プローブ19を構成するワニグチクリップはボディアース部分に固定される。
【0059】
このように、本発明の交通流調査用ツールは、車両の走行制御用の電子制御ユニット22に通ずる信号ラインから車速パルス信号を抽出するためのプローブ18と、プローブ18を介して抽出された車速パルス信号中に車速パルスが現れる毎に、その車速パルス出現時刻に相当する車速パルス出現時刻データを生成してこれを外部へと送出する信号変換ユニット24と、信号変換ユニット24から送出される車速パルス出現時刻データを通信用ポート26を介して受信して処理するパソコン7とを具備している。
【0060】
次に、信号変換ユニット24の内部構成を示す図が図5に示されている。同図において、23はプローブコード、24は信号変換ユニット、25はRS−232C延長ケーブル、26はノートパソコン7に取り付けられたRS−232Cポート(D−Sub 9pin)、29はパルス処理用IC、30は信号送受信用ICである。
【0061】
この例では、パルス処理用IC29としては、ペリフェラル・インタフェース・コントローラであるPIC16F84Aが使用される。PIC(Peripheral Interface Controller)とは、コンピュータの周辺に接続される周辺機器の接続部分を制御するために開発された『マイクロコントローラ』と呼ばれるICである。PICはマイクロコンピュータの一種で、制御、演算、メモリ、タイマ、入出力装置を内蔵する。殊に、PIC16F84Aはフラッシュメモリ機能を有し、数回ROMを焼くことができ、最大動作周波数は20MHzである。
【0062】
より具体的には、パルス処理用IC29内には、時刻データ生成用のカウンタと、車速パルスカウント値を生成するためのカウンタとからなる2つのカウンタが少なくとも含まれている。時刻データ生成用のカウンタは、電源投入等の基準タイミングに応答して、車速パルスよりも十分に高速なクロックをカウント開始することにより精細な時刻データを生成する電子時計手段として機能する。一方、車速パルスカウント値データを生成するためのカウンタは、基準タイミングに応答して車速パルスをカウント開始するもので、このカウント値は車速パルス出現時刻データと共に通信を介してパソコン側へと送信される。なお、この例では、車速パルスは車輪の1回転に対して4個発生するように仕組まれている。
【0063】
より具体的には、パルス処理用IC29は、端子OSC1,2に供給される水晶クロックを受けて動作し、また端子MCLRに供給される電源+5Vの立ち上がりに応答して、内部メモリがクリアされる。
【0064】
一方、信号送受信用IC30は、この例では素子としてADM232AAが使用される。この信号送受信用IC30は、端子R1inから車速パルス信号を受け取り、これを端子R1outから外部へと送出する。こうして送出された車速パルス信号は、パルス処理用IC29の端子RB0/INTからパルス処理用ICに取り込まれる。これにより、パルス処理用IC29では、後述するフローチャートの処理に従って、車速パルス受取対応処理を実行する。
【0065】
パルス処理用IC29と信号送受信用IC30との間で行われるデータのやり取りは、パルス処理用IC29側の端子RA1,RA0と信号送受信用IC30の端子T2in,R2outとの間で行われる。さらに、信号送受信用IC30とパソコン7との間で行われるデータのやり取りは、信号送受信用IC30の端子T2out,R2inとパソコン側のRS232Cコネクタの端子2,3との間で行われる。尚、これら具体的なIC PIC16F84A,ADM232AAの内部回路あるいは動作の詳細については既に文献により公知であるから説明は省略する。
【0066】
さらに、図5から明らかなように、信号変換ユニット24に対する電源は、パソコン側コネクタ26の端子4から供給されている。そのため、パソコンの電源を投入すれば、同時に信号変換ユニット24に対しても電源の投入が行われ、これによりパルス処理用IC29内の各種カウンタやレジスタが初期設定される。
【0067】
次に、以上のハードウェア構成を前提として、図6及び図7の画面説明図、図8〜図10のフローチャート、図11の交通流調査用データテーブルを参照しながら、本発明に係る交通流調査用ツールの動作を系統的に説明する。
【0068】
交通流調査を行おうとする場合、まず、レンタカーサービス等を利用して計測専用でない一般車両(例えば、日産サニー、トヨタカローラ等)を必要台数借用し、それぞれの車両に本発明の交通流調査用ツールを先に説明した手順により取り付ける。なお、レンタカーサービス側で、そのような信号取り出し用の施工を車両に対して許さない場合には、アルバイト要員その者に対して自分の車の持ち込みを条件とすることも考えられる。その後、調査用ツールを構成するパソコンの電源を投入し、本発明のコンピュータソフトを第1のモードに設定する。いま仮に、校正用距離基準値として5000メートルを設定する。この設定は、別途図示しない公知のデータ設定処理により容易に行うことができる。
【0069】
このような第1のモードにおける予備手順が終了した状態における対距離特性学習開始時の画面例が図6(a)に示されている。同図に示されるように、この状態においては、画面左上隅には動作モードを説明するためのタイトル『車速初期測定』が表示され、画面中段にはパルス数を表示するためのウィンドウ31、測定開始距離を表示するためのウィンドウ32が現れる。さらに、画面下段には、測定開始を指示するための操作ボタン33、測定停止を指示するための操作ボタン34、閉じるを指示するための操作ボタン35がそれぞれ表示される。これらの操作ボタンは、公知の手法により、マウスのクリック操作あるいはファンクションキーの操作などにより能動化することができる。
【0070】
第1モード処理を示すフローチャートが図8に示されている。同図において処理が開始されると、信号変換ユニット側の処理においては、車速パルスが出現する毎に、割込処理を実行して、決められたいくつかの処理を高速に実行する。
【0071】
すなわち、ステップ801では、パルス処理用IC24に内蔵された時計カウンタから時間データを取得する。ここで、この時計カウンタは、図示されていないが、パルス処理用IC29に内蔵され、電源投入あるいはパソコン側からの開始操作等の基準タイミングに応答して、車速パルスよりも十分に高速なクロックをカウント開始することにより精細な時刻データを生成する電子時計手段として機能している。このような高速クロックは、IC内蔵のタイマ機能を利用して作り出すことができる。続くステップ802では、車速パルスカウント値データ生成用のカウンタを歩進させることによって車速パルスカウント値データを生成する。続くステップ803では、上述の2つのステップで生成された時間データ及びパルスカウントデータを通信を介してパソコン側へと送信する。以上3段階の処理(ステップ801〜803)が、車速パルスが出現するたびに、割込処理によって高速で実行される。
【0072】
一方、この状態において、図6(a)に示される画面上で、測定開始ボタン33を操作すると、図8のフローチャートにおいては、開始操作ありとの判定が行われ(ステップ811YES)、その後信号変換ユニット24からのデータを受信待機する状態となる(ステップ812NO)。
【0073】
この状態において、車速パルスの出現によってステップ801〜803が割込処理で実行され、信号変換ユニット24からパソコン7側へとデータ送信が行われると、パソコン側の処理においてもデータ受信ありとの判定が行われ(ステップ812YES)、信号変換ユニット24から時間データ及びパルスカウントデータを受信する処理が実行される(ステップ813)。
【0074】
その後、図6(a)の画面説明図において、測定停止ボタン34が操作するまでの間、車速パルスが出現するたびに、信号変換ユニットからパソコンへの時間データ及びパルスカウントデータの送信が繰り返され、図示しないパソコン上のメモリ領域には、車速パルスの出現時刻を示す時間データと対応するパルスカウントデータとが対となって時系列的に記憶されていく。
【0075】
この状態において、図6(a)の画面説明図において、測定停止ボタン34が操作されると、図8のフローチャートにおいては、終了操作ありとの判定が行われ(ステップ814YES)、続いて、操作開始時及び操作終了時のカウントデータから車速パルス特性を示す固有データを取得する処理が実行される。ここで、固有データ(coef)は、
固有データ(coef)=パルスカウント値/基準距離
として表される。その後、こうして得られた固有データは、パソコン7のメモリ内に保存される(ステップ816)。
【0076】
以上の処理が実行される結果、例えば、図6(a)に示される対距離特性学習開始時の画面例によれば、車両を既知の距離(5000m)を有する道路区間に投入して試験走行させつつ、当該道路区間の起点において測定開始ボタン33を操作し、その後規定速度での走行を継続しつつ、当該道路区間の終点において測定停止ボタン34を操作すれば、パソコンのメモリ内には当該車両の車速パルスの対距離特性を表す固有データ(coef)が取得保存されることとなる。その後、図6(a)の画面において、閉じるボタン35を操作すれば、対距離特性学習のための動作モードは終了する。
【0077】
次に、交通流調査用データ生成のための操作について説明する。図6(b)には、交通流調査用データ生成中の画面例が示されている。同図に示されるように、所定操作により第2モードに設定すると、パソコンの画面上には、交通流調整用データ生成中の画面が表示される。この画面においては、左上隅にタイトルを示す『車速測定』が表示され、画面中段には現在走行速度を示すウィンドウ36、現在の累積距離を示すウィンドウ37が表示され、さらに画面下段には、測定開始の指示を与えるための操作ボタン38、測定停止のための指示を与えるための操作ボタン39、閉じるための指示を与えるための操作ボタン40がそれぞれ表示され、これらの操作ボタン38〜40はマウス操作またはファンクションキーの操作によって適宜能動化可能とされる。
【0078】
交通流調査用データの生成を行う場合には、対距離特性学習済みの車両を調査対象となる道路区間に投入して実走行させつつ、当該車両に備え付けの走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルスを抽出すると共に、該抽出された車速パルスと第1のステップで学習された対距離特性とに基づいて交通流調査用データを生成する。
【0079】
すなわち、図6(b)の画面説明図において、測定開始ボタン38が操作されると、図9のフローチャートにおいては、開始操作ありとの判定が行われ(ステップ911YES)、その後さきほどの場合と同様にして、信号変換ユニット24からのデータ受信を待機する状態となる(ステップ912NO)。
【0080】
一方、信号変換ユニット24の側においては、第1のモードの場合と同様にして、車速パルスが出現するたびに、時計カウンタから時間データを取得する処理(ステップ901)、パルスカウンタを歩進させる処理(ステップ902)、時間データ及びパルスカウントデータをパソコン側へと送信する処理(ステップ903)を高速で実行する。尚、交通流調査用データ生成のための第2のモードの開始時には、時計カウンタ並びにパルスカウンタは所定のトリガー信号でクリアされたものと想定する。
【0081】
受信待機状態において(ステップ912)、車速パルスが出現して、信号変換ユニット24の側から時間データ及びパルスカウントデータが送信されてくると、受信ありとの判定が行われて(ステップ912YES)、信号変換ユニットから送られた時間データ及びパルスカウントデータがパソコン側で受信され(ステップ913)、その後、後述する演算処理(ステップ914)及び演算結果保存処理(ステップ915)を経由して、以上の動作が繰り返され、パソコンのメモリ上には、受信されたデータが時系列的に記憶されていく。
【0082】
このようにして、パソコンのメモリ内に生成された交通流調査用データを表にして示す図が図11に示されている。同図に示されるように、パソコンのメモリ上には、時間データ(Tn)、車速パルスカウント値データ(Cn)、走行速度データ(Vn)、累積距離データ(Ln)並びにフラグが一対として、順次時系列的に記憶されていく。尚、走行速度(Vn)並びに累積距離(Ln)については、後述する演算処理において生成されるデータであり、信号変換ユニットから到来するのは、時間データ(Tn)並びに車速パルスカウント値データ(Cn)のみである。
【0083】
次に、演算処理の詳細を示すフローチャートが図10に示されている。同図に示されるように、演算処理が開始されると、まずステップ1001において、時間差演算処理が実行される。この時間差演算処理では、ΔT=Tn−Tn−1として、車速パルス出現時間差が求められる。ここで、時間の単位は0.1msecとされている。
【0084】
続いて、ステップ1002においては、累積距離演算処理が実行される。ここで、累積距離はLn=Cn×coefとして求められる。
【0085】
続いて、ステップ1003においては、平均速度演算処理が実行される。ここで、平均速度は、Vn=(パルス数×36000)/(ΔT×coef)として求められる。尚、ここでパルス数とはCn−Cn−1のことであり、通常は常に1であるが、車両が高速走行して、信号変換ユニットとパソコンとの間の送信が間に合わないような場合、パルスカウント数が飛び飛びとなることによって、1以外の数字が現れる場合もある。つまり、そのような送受信異常が生じても、車速パルス出現時間データには必ず対応するパルスカウント値データが付随するから、そのような送受信が間に合わない場合でも、常に正確な速度を演算することが可能となるのである。
【0086】
図6(b)の画面説明図に戻って、調査対象となる道路区間の終点に到達したならば、オペレータは測定停止ボタン39を操作する。すると、図9のフローチャートにおいて終了操作ありとの判定が行われ(ステップ916YES)、処理が終了する。
【0087】
上述のように、交通流調査用データを生成するためには、調査対象となる道路区間の始点において、測定開始ボタン38を操作し、その後終点において測定停止ボタン39を操作すれば、パソコンのメモリ内には図11の表に示されるように、パルス出現時刻データ、車速パルスカウント値データ、走行速度データ、累積距離データが対となって、時系列的に記憶され、これにより交通流調査用データが自動的に生成されるのである。
【0088】
その後、図7の画面説明図において、自動生成された交通流調査用データに対し、ウィンドウ43内にファイル名を付与し、その後開くためのボタン42を操作すれば、修正された交通流調査用データはウィンドウのファイルとしてメモリに格納され、その後これを利用して、様々な分析に供することができるのである。
【0089】
加えて、本発明のコンピュータソフトにおいては、図示しないが、パソコンのキーボードにおいて、走行中所定のアルファベットキー(例えば、AまたはB)等を操作することによって、図11の表に示されるように、その操作時点に該当する累積距離に対してフラグ『A』または『B』を付与することが可能となる。このフラグは、キーボード上のキーの種類によって異なる内容を有するものである。そのため、例えば実走行中に、運転者が目視確認によって、何らかの異常事態あるいは特徴情報を発見したような場合、その時点で必要なアルファベットキーを操作することによって、パソコンのメモリ内に生成される交通流調査用データに対し、該当する累積距離に付随してフラグ『A』または『B』を付すことができ、最終的なデータ分析の際に、自分が目で見た状況と、交通流調査用データの値とを正確に照らし合わせることが可能となる。
【0090】
次に、交通流調査用データに基づく作図例を示す図が図12に示されている。この図は、外環道外回り・草加ICから常磐道下り・三郷TBまでの区間において、交通流調査を秘密裏に行った結果である。
【0091】
上下方向4段に配置されたそれぞれのグラフは、横軸に距離(km)を縦軸に速度(km/時)をとって、交通流調査用データを二次元座標上に展開したものである。上下方向各段のグラフは、走行調査実施時間が異なる。すなわち、第1段目のグラフは09:20〜09:28、第2段目のグラフは09:29〜09:38、第3段目のグラフは09:42〜09:55、第4段目のグラフは09:49〜10:04にそれぞれ対応する。一方、距離を示す横軸については、いずれのグラフも同一で、上下方向にぴったりと整合されている。
【0092】
そのため、これらグラフ(a)〜(d)を比較して見れば、どの時間帯で且つどの場所で渋滞が発生したか又は信号待ちが発生したかといった状況を明確に把握することができる。
【0093】
次に、交通流調査用データに基づく他の作図例を示す図が図13に示されている。この例にあっては、横軸を距離、縦軸を時間とする二次元座標上に、各プローブカーの速度を数値表示させると共に、渋滞に相当する低速区間については、その表示を色や濃度等で顕著化することにより、どの時間帯でまたどの範囲で渋滞が生じたかを明確に理解できるようにしたものである。
【0094】
このように、本発明の交通流調査方法並びに交通流調査用ツールによれば、道路上の走行速度を、一定距離毎に確実に記録することができるため、こうして得られた交通流調査用データを使用すれば、描画ソフトにとって使い勝手が良好であり、分析する側にとって明瞭な図形を容易に描かせることができる。
【0095】
最後に、交通流調査の代表例を示す2つの例が図14に示されている。同図(a)は時間帯別交通流調査方法の概念図であり、調査対象となる道路区間を共通のものとし、これに複数台のプローブカー(a1〜a5)を僅かの時間差をもって順次投入させることにより、各走行地点における時間帯別交通流を把握しようとするものである。
【0096】
これに対して、同図(b)は系統別交通流調査方法の概念図であり、この場合には、互いに相関のある(例えば、分流、合流の伴う)2系統の道路区間に、各系統別に複数台のプローブカー(a1〜a4)及び(b1〜b4)を走行させることによって、道路の交差点を介して双方の系統の道路区間にどのような交通流の変化が生ずるかを調査するものである。
【0097】
このように、多数の車両をほぼ同時に道路区間に投入して調査を行う場合であっても、本発明の交通流調査方法並びに交通流調査用ツールにあっては、車両に搭載され且つ助手席等に置かれたパソコンを片手でキー操作するだけであるから、各車両には運転要員以外に搭乗する必要がなく、従前の交通流調査方法に比べ人件費を大幅に節減することができる。しかも、従前の計測要員によるものとは異なり、距離ポストの見落としや、読み取り誤差なども生ずることはなく、加えて距離ポストの存在しない道路区間にあっても、正確な刻み幅で累積距離と走行速度との対を取得することができ、以上により高精度の交通流調査を低コストに実現することが可能となるのである。
【0098】
尚、以上の実施形態においては、信号変換ユニットにおいて、パルス出現時刻データのみならず車速パルスカウント値も同時に生成し、これを一括してパソコン側へと送信するようにしたが、もしも高速走行時等におけるデータ欠落が問題とならない用途であれば、パルスカウント値データの生成は行わず、パソコン側において車速パルス出現時刻データをカウントすることによっても、車速パルスカウント値を生成することができる。
【0099】
また、以上の実施形態においては、車速パルス信号抽出箇所として、電子制御ユニットの外部端子を利用したが、要は車両が利用する車速パルスを抽出することであって、車速パルス発生源から直接あるいは途中から間接的に抽出できるものであれば、抽出箇所に制約を与えるものではないことはもちろんである。
【0100】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、計測専用でない市販の一般車両をプローブカーとして使用しつつも、走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから抽出した車速パルスをパソコン等のコンピュータで処理することにより、高精度かつ低コストに交通流速調査を実現できるようにした交通流調査方法を提供することができる。
【0101】
また、本発明によれば、上述の交通流調査方法の実施に好適な交通流調査用ツールを提供することができる。
【0102】
また、本発明によれば、上述の交通流調査用ツールを構成するパソコンに組み込むのに好適なコンピュータソフトを提供することができる。
【0103】
さらに、本発明によれば、抽出された車速パルスをパソコンで処理するための前処理装置として好適な信号変換ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両に交通流調査ツールを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】車両の電子制御ユニットからハーネス接続用コネクタを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】車両の電子制御ユニットのコネクタの1つに車速パルス抽出用プローブを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】交通流調査用ツールのシステム構成を示す図である。
【図5】信号変換ユニットの内部構成を示す図である。
【図6】パソコンの画面における表示例を示す図である。
【図7】ファイル保存時の画面表示例を示す図である。
【図8】第1モードの処理を示すフローチャートである。
【図9】第2モードの処理を示すフローチャートである。
【図10】演算処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】パソコンのメモリ内に生成された交通流調査用データを表にして示す図である。
【図12】交通流調査用データに基づく作図例を示す図である。
【図13】交通流調査用データに基づく作図例を示す図である。
【図14】交通流調査の代表例を示す図である。
【符号の説明】
1 助手席ドア
2 助手席ウィンドウ
3 助手席シート
4 床
5 グローブボックス
6 ECUカバー
7 ノートパソコン
8 プローブコード
9 第1プラグ
10 第2プラグ
11 第3プラグ
12 第1ハーネス束
13 第1ソケット
14 第2ソケット
15 第3ソケット
16 第4ソケット
17 発煙筒
18 信号抽出用プローブ
19 アース用プローブ
20 アース用プローブ線
21 信号用プローブ線
22 ECU
23 プローブコード
24 信号変換ユニット
25 RS−232C延長ケーブル
26 RS−232Cポート(D−Sub 9pin)
27 インバータ
28 ライター電源
29 パルス処理用IC
30 信号送受信用IC
31 パルス数表示用ウィンドウ
32 測定距離表示用ウィンドウ
33 測定開始指示用操作ボタン
34 測定停止指示用操作ボタン
35 閉じる指示用操作ボタン
36 速度表示用ウィンドウ
37 距離表示用ウィンドウ
38 測定開始指示用操作ボタン
39 測定停止指示用操作ボタン
40 閉じる指示用操作ボタン
41 キャンセル指示用操作ボタン
42 開く指示用操作ボタン
43 ファイル名ウィンドウ
44 タップコード
45 圧着端子
Claims (11)
- 車両の走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルス信号を抽出するためのプローブと、
プローブを介して抽出された車速パルス信号中に車速パルスが現れる毎に、その車速パルス出現時刻に相当する車速パルス出現時刻データ及び車速パルスカウント値データを生成してこれを外部へと送出する信号変換ユニットと、
信号変換ユニットから送出される車速パルス出現時刻データ及び車速パルスカウント値データを通信用ポートを介して受信して処理するパソコンと、を具備し、
前記パソコンには、
第1のモードに設定されていることを条件として、所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値と予め設定された校正用距離基準値とに基づいて当該車両の車速パルスの対距離特性(coef)を学習する第1の手段と、
第2のモードに設定されていることを条件として、通信用ポートを介して相前後して受信される車速パルス出現時刻データ(Tn,Tn−1)及び車速パルスカウント値データ(Cn,Cn−1)と、前記学習された車速パルスの対距離特性(coef)とに基づいて、車速パルス出現時刻データ受信毎の累積走行距離(Ln)と平均速度(Vn)とを求め、それらを対として時系列的に記憶させることにより交通流調査用データを生成する第2の手段と、
を実現するためのコンピュータソフトが組み込まれている、ことを特徴とする交通流調査用ツール。 - コンピュータソフトを構成する第2の手段が、所定操作が検出されるのに応答して、交通流調査用データの中の該当する累積距離にフラグを立てる機能を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の交通流調査用ツール。
- フラグは操作の種別に応じて異なるものであることを特徴とする請求項2に記載の交通流調査用ツール。
- コンピュータソフトには、交通流調査用データを構成する一連の累積距離と平均速度との対を時系列的に並べて或いは二次元座標に展開して表示又はプリントアウトさせる出力手段を実現させる機能がさらに含まれている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の交通流調査用ツール。
- 電子制御ユニットのカーナビゲーション装置接続用の車速パルス端子からプローブを介して車速パルス信号を抽出する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の交通流調査用ツール。
- 車両の走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルス信号を抽出するためのプローブと、プローブを介して抽出された信号中に車速パルスが現れるのに応答して車速パルス出現時刻データ及び車速パルスカウント値データを生成してこれを外部へと送出する信号変換ユニットと、信号変換ユニットから送出される車速パルス出現時刻データを通信用ポートを介して受信して処理するパソコンと、を具備する交通流調査用ツールにおける前記パソコンに組み込まれるコンピュータソフトであって、
第1のモードに設定されていることを条件として、所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値と予め設定された校正用距離基準値とに基づいて当該車両の車速パルスの対距離特性(coef)を学習する第1の手段と、
第2のモードに設定されていることを条件として、通信用ポートを介して相前後して受信される車速パルス出現時刻データ(Tn,Tn−1)及び車速パルスカウント値データ(Cn,Cn−1)と、前記学習された車速パルスの対距離特性(coef)とに基づいて、車速パルス出現時刻データ受信毎の累積走行距離(Ln)と平均速度(Vn)とを求め、それらを対として時系列的に記憶させることにより交通流調査用データを生成する第2の手段と、
を含むことを特徴とするコンピュータソフト。 - 第1の手段が、信号変換ユニットから受信される車速パルスカウント値データに基づいて、所定の開始操作から終了操作までの間に出現した車速パルスのカウント値を生成する、ことを特徴とする請求項6に記載のコンピュータソフト。
- 第2の手段が、所定操作が検出されるのに応答して、交通流調査用データの中で該当する累積距離にフラグを立てる機能を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載のコンピュータソフト。
- フラグは操作の種別に応じて異なるものであることを特徴とする請求項8に記載のコンピュータソフト。
- 交通流調査用データを構成する一連の累積距離と平均速度との対を時系列的に並べて或いは二次元座標上に展開して表示又はプリントアウトさせる出力手段がさらに含まれていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のコンピュータソフト。
- 車両の走行制御用の電子制御ユニットに通ずる信号ラインから車速パルス信号を抽出するためのプローブと、
請求項7に記載のコンピュータソフトが組み込まれたパソコンとの間に介在されるものであって、
電源投入等の基準タイミングに応答して、車速パルスよりも十分に高速なクロックをカウント開始することにより精細な時刻データを生成する電子時計手段と、
前記基準タイミングに応答して車速パルスをカウント開始する車速パルスカウント手段と、
プローブを介して電子制御ユニットから取り出された信号中に車速パルスが現れる毎に、前記電子時計手段から時刻データを、又前記車速パルスカウント手段から車速パルスカウント値データを取得し、これをパソコン側へと送信するデータ送信手段と、
を具備することを特徴とする信号変換ユニット。
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