JP3596123B2 - 刺繍データ処理装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺繍を形成するための刺繍データを作成する刺繍データ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば工業用ミシンの分野においては、マイクロコンピュータを利用して精度の高い刺繍データを短時間で作成する刺繍データ処理装置が提供されている。その刺繍データ処理装置は、例えば汎用のパーソナルコンピュータシステムに、イメージスキャナ、キーボード、マウス、ハードディスクドライブ、CRTディスプレイ等を接続して構成されており、任意の刺繍図柄の原画から、多色縫いの刺繍データを作成することができるようになっている。
【0003】
ところで近年では、需要者の嗜好の多様化、高級化、刺繍ミシンの性能の向上などの事情を背景にして、家庭用の刺繍ミシンであっても、あらかじめ記憶されている刺繍データに基づく図柄の刺繍だけでなく、使用者の所望の図柄の刺繍を可能とする、比較的安価で操作の容易な刺繍データ処理装置が要望されている。特に、複数色の刺繍糸を用いる多色図柄の刺繍データの作成を可能とすることが望まれている。
【0004】
従来の刺繍データ処理装置では、刺繍の作成を希望する刺繍図柄の原画をスキャナ等により読み取り、あるいはマウス等によりトレースしてその図柄の形状を示す画像データを生成する。そして、その画像データに含まれる閉領域に対して、作業者が糸色、縫い目方向等の縫製属性を設定することにより、多色図柄の刺繍データを作成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この種の刺繍データ処理装置として、本発明の発明者は特願平6−287664号に記載のものを提案している。この刺繍データ処理装置は、刺繍図柄の原画の画像データから自動的に刺繍の対象となる閉領域を抽出し、作業者を誘導して各閉領域に縫製属性を設定させることにより、刺繍データ作成の迅速化、簡素化を可能とするものである。しかしながら、この刺繍データ処理装置は、抽出された全ての閉領域に対して作業者が個別に縫製属性の設定を行なうことを必要とする点でさらなる改善の余地を残している。通常の刺繍作業においては、常に刺繍図柄に含まれる全ての閉領域に対して異なる縫製属性により刺繍を施すとは限らない。即ち、複数の閉領域のうちには、同様の縫製属性により刺繍が施されるべき領域が含まれることがある。例えば、チューリップの図柄を刺繍する場合を考える。この場合、花びらの部分、茎の部分、葉の部分はそれぞれ異なる縫製属性(例えば、糸色)で刺繍を施す必要があるが、葉が複数ある場合には全ての葉の部分に対して同じ縫製属性で刺繍を施すのが普通である。しかし、上記の刺繍データ処理装置によれば、このような場合においても葉の部分を構成する複数の閉領域それぞれに対して個別に縫製属性の設定を行なわなければならない。即ち、同一の縫製属性に設定すべき複数の刺繍領域に対して重複して設定作業を要することになり、特に閉領域が多い刺繍図柄の場合には刺繍データの作成作業は煩雑、かつ、余計な時間を要するものとなる。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、複雑な刺繍図柄の場合でも容易かつ短時間で刺繍データの作成が可能な刺繍データ処理装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み、請求項1記載の発明は、刺繍データ処理装置において、刺繍図柄を表す図柄画像データを入力する画像入力手段と、前記図柄画像データに基づいて、前記刺繍図柄の輪郭線で規定される、図柄領域及び中抜け領域を含む閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、前記閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する内包関係解析手段と、前記閉領域に対する縫製属性を入力する縫製属性入力手段と、ある閉領域に対して縫製属性が入力された場合に、その閉領域と同一の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を自動的に設定する縫製属性設定手段と、設定された縫製属性に基づいて、当該閉領域の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、を有するように構成する。
【0008】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、作業者は画像入力手段により希望の刺繍図柄を入力する。閉領域抽出手段は、入力された図柄画像データの輪郭線により規定される閉領域を抽出し、内包関係解析手段は閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する。その後、作業者が閉領域のいずれかに対して縫製属性を入力すると、縫製属性設定手段はその閉領域の内包レベルと同一の内包レベルにある閉領域全てに対して、入力されたのと同一の縫製属性を自動的に設定する。そして、刺繍データ作成手段は縫製属性が設定された閉領域について刺繍データを作成する。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、刺繍データ処理装置において、刺繍図柄を表す図柄画像データを入力する画像入力手段と、前記図柄画像データに基づいて、前記刺繍図柄の輪郭線で規定される、図柄領域及び中抜き領域を含む閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、前記閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する内包関係解析手段と、前記閉領域に対する縫製属性を入力する縫製属性入力手段と、ある閉領域に対して縫製属性が入力された場合に、その閉領域と同一の内包レベル及びその閉領域より下位の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を自動的に設定する縫製属性設定手段と、設定された縫製属性に基づいて、当該閉領域の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、を有するように構成する。
【0010】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、作業者は画像入力手段により希望の刺繍図柄を入力する。閉領域抽出手段は、入力された図柄画像データの輪郭線により規定される閉領域を抽出し、内包関係解析手段は閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する。その後、作業者が閉領域のいずれかに対して縫製属性を入力すると、縫製属性設定手段はその閉領域の内包レベルと同一の内包レベル及びそれより下位の内包レベルにある閉領域全てに対して、入力されたのと同一の縫製属性を自動的に設定する。そして、刺繍データ作成手段は縫製属性が設定された閉領域について刺繍データを作成する。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の刺繍データ処理装置において、前記内包関係解析手段は、前記閉領域抽出手段により抽出された閉領域の内部において、さらに閉領域を検出することにより内包関係を解析するように構成する。
【0012】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、内包関係解析手段は、閉領域抽出手段により抽出された閉領域内部においてさらに閉領域を検出することにより閉領域間の内包関係を解析する。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の刺繍データ処理装置において、前記内包関係解析手段は、前記閉領域抽出手段により抽出された一の閉領域の内部にさらに閉領域を検出した場合に、前記検出された閉領域を前記一の閉領域より一レベル下位の内包レベルに決定するように構成する。
【0014】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、内包関係解析手段は、閉領域抽出手段により抽出された一の閉領域の内部にさらに閉領域を検出した場合に、その検出された閉領域を前記一の閉領域より一レベル下位の内包レベルに決定する。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の刺繍データ処理装置において、作業者の指示入力に応答して、前記縫製属性設定手段による自動設定を禁止する自動設定禁止手段を有するように構成する。
【0016】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、作業者により自動設定を禁止する旨の指示が入力された場合には、自動設定禁止手段は縫製属性設定手段による自動設定を禁止する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明は、本発明を家庭用刺繍ミシンのための刺繍データ処理装置に適用した場合について行なう。
【0018】
まず、刺繍を行なうためのシステム全体について説明する。実際の刺繍作業は、まず刺繍データ処理装置により刺繍データを作成し、次にその刺繍データを刺繍ミシンに供給して希望の図柄の刺繍を行うという手順で行なわれる。
【0019】
図2に、本発明にかかる刺繍データ処理装置の外観構成を示す。刺繍データ処理装置1は、刺繍図柄を入力するためのスキャナ12を有し、スキャナ12により読み込まれた刺繍図柄の画像データに基づいて刺繍データを作成する。作成された刺繍データは、フラッシュメモリ(カードメモリ)10に記憶される。作業者は、このフラッシュメモリ10を刺繍用ミシンにセットする。すると、記憶された刺繍データは、フラッシュメモリ10から読みだされ、該刺繍データに基づいて刺繍が行なわれる。
【0020】
図3に、家庭用刺繍ミシンの外形を示す。刺繍ミシン20は、ミシンベッド上に配置され、加工布22を保持する刺繍枠21を水平移動機構により装置固有のX−Y座標系で示される所定位置に移動させつつ、縫い針23による縫い動作を行なうことにより、加工布22上に所定の図柄の刺繍を施す。刺繍ミシン20にはフラッシュメモリ装置が内蔵されている。作業者が刺繍データを記憶したフラッシュメモリ10をフラッシュメモリ挿入口24に挿入すると、記憶された刺繍データが読みだされる。刺繍データは通常、上記X−Y座標系における針落ち点の位置を示す座標データを含んでおり、マイクロコンピュータ等から構成される制御装置は読みだされた刺繍データに基づいて刺繍枠21の水平移動機構等を制御し、加工布22上に刺繍を施す。
【0021】
次に、本発明にかかる刺繍データ処理装置1の構成について、図2及び図4を参照して説明する。
刺繍データ処理装置1は、刺繍データ作成における種々の処理を行なうためのCPU2、種々の処理プログラムやデータを記憶するROM3、及び、刺繍図柄の画像データ、後述する各閉領域の内包レベル等の種々のデータを記憶するRAM4を有している。後述する刺繍データ作成処理は、基本的にはROM3に記憶されたプログラムをCPU2が実行することにより行なわれる。
【0022】
さらに、刺繍データ処理装置1は、フラッシュメモリ装置5、インターフェイス6、入力部11、及び、スキャナ12、を有している。フラッシュメモリ10は、フラッシュメモリ装置5内に挿入され、作成された刺繍データがフラッシュメモリ10内に記憶される。入力部11は、刺繍データ処理装置1の本体に配設された入力ボタンK1−K3により構成され、後述する縫製属性、所定の指示などの入力に用いられる。また、イメージスキャナ12は、作業者が希望する刺繍図柄の原画を読み取るために使用され、読み取られた刺繍図柄に対応する画像データを作成する。入力部11から入力された指示情報やイメージスキャナ12により作成された画像データは、インターフェイス6を介してCPU2やRAM4に供給される。
【0023】
さらに、刺繍データ処理装置1は、読み取った刺繍図柄の画像データや刺繍領域等を画面7aに表示するための液晶ディスプレイ(LCD)7、及び、液晶ディスプレイ7を制御するための表示制御装置(LCDC)8、を備えている。また、表示制御装置8には、画像記憶装置(VRAM)9が接続され、モノクロのビットマップグラフィックス表示が可能なように構成されている。
【0024】
上記の構成において、イメージスキャナ12が画像入力手段に対応し、CPU2、ROM3及びRAM4が閉領域抽出手段、内包関係解析手段、縫製属性設定手段、刺繍データ作成手段及び自動設定禁止手段に対応し、入力部11が縫製属性入力手段に対応する。また、閉領域抽出手段は、図1におけるステップS2において、内包関係解析手段はステップS3において、縫製属性設定手段及び自動設定禁止手段はステップS4において、刺繍データ作成手段はステップS5においてそれぞれ機能する。
【0025】
次に、本発明による刺繍データ作成処理の一例について、図1、及び、図5乃至図7を参照して説明する。図1は本発明による刺繍データ作成処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、図5に示す刺繍図柄についての刺繍データを作成する場合を例にとって説明する。
【0026】
まず、作業者は図5に示すような希望の刺繍図柄の原画15を用意する。この原画15は、例えば白地の原紙に黒のペンで図5に示す各刺繍領域の輪郭線または境界線を描いたものである。さて、刺繍データ処理装置1のプログラムが起動された後、作業者は原画15の図形をイメージスキャナ12を用いて読み取る(ステップS1)。このイメージスキャナ12により読み取られた2値のビットマップ画像データは、RAM4の所定の領域に記憶される。
【0027】
次に、読み取られた原画15の画像データに基づいて境界線抽出処理を行なう(ステップS2)。即ち、原画15の画像データに対して、画像中の、その周囲が有効な連結図形(黒画素が相互に連接しているひとまとまりの図形)で取り囲まれている閉領域を個別に取り出すため、境界線抽出処理を行う。この境界線抽出処理は、例えば画像図形処理技法として周知の技法である境界線追跡アルゴリズムを適用することにより実現される。その際の連結性判定は4連結あるいは8連結のいずれでも良いが、そのアルゴリズムの詳細な説明については本発明の本質的部分ではないため割愛する。
【0028】
図5に示す原画15のビットマップ画像データについてこの境界線抽出処理を適用して抽出される境界線を図6に示す。この境界線抽出処理により抽出される境界線は、図6に示されるように原画15の図柄の輪郭線となる(よって、以下の説明で使用する「境界線」の語は、「輪郭線」と等価である)。この例では、L0−L9の合計10本の境界線が抽出される。即ち、リボンの最外周を規定する境界線L0、リボンの折り目により規定される境界線L1−L3、境界線L2内部の4つの文字(「M]、「A」、「K」、「O」)のそれぞれの外周を規定する境界線L4−L7、文字「A」の内部に含まれる境界線L8、及び、文字「O」の内部に含まれる境界線L9が抽出される。これらの境界線を示す境界線データ16がRAM4に記憶され、必要に応じて表示制御装置8を介して液晶ディスプレイ7の画面7a上に表示される。
【0029】
次に、RAM4に記憶された境界線データ16に対して内包関係解析処理を行ない、各境界線(輪郭線)で規定される閉領域相互の内包関係が解析される(ステップS3)。この内包関係解析処理は以下のように行なわれる。まず、図6に示す境界線データ、即ち、2値のビットマップ画像データを適当な順序でラスター走査を行なってその画素値が0から1、又は1から0というように反転する境界画素を探索する。そして、それを起点画素として境界線追跡アルゴリズムに従ってひとつの閉じた境界線の画素連鎖ループを抽出する。例えば、図7の図柄では、まず境界線L0が抽出される。次に、境界線L0の内部のみに同様のラスター走査を行ない、前述の様な境界画素が検出されたなら、さらにそれを起点として一つの閉じた境界線ループを抽出する。この時抽出される境界線は境界線L0の内側に存在することが分かる。これにより、境界線L1−L3が検出される。さらには、境界線L1−L3のそれぞれの内部に対して、上記のラスター走査による境界画素探索を行ない、さらに内包される境界線を検出する。このような手続きをラスター走査により発見される境界画素が存在しなくなるまで順次再帰的に繰り返し行なう。その結果、刺繍原画の図柄中の全ての境界線が抽出され、それら境界線間の内包関係が得られる。なお、ステップS2における境界線抽出処理は上記の内包関係解析処理と一部重複するので、実際の処理としてはステップS3の内包関係解析処理において境界線抽出処理を同時に行なうこととしてもよい。
【0030】
原画16の刺繍図柄に対して以上のような処理を適用して得られる境界線L0−L9の相互内包関係を模式的に木構造の図にして示したのが図7である。この木構造では、最も外側に位置する境界線を最上位に置き、ある境界線が内包する境界線を持つ場合には、内包される境界線をその下位に配置することとしている。また、境界線の内包関係の深さを表す値として内包レベルを定義し、最も外側の境界線の内包レベルを0とし、木構造においてレベルが一段下がる毎に内包レベルの値が1ずつ増加するように定める。このようにして得られた内包レベルは、各境界線により仕切られる各閉領域に対応してRAM4に記憶される。
【0031】
次に、各閉領域に対しての縫製属性の設定が行なわれる(ステップS4)。ここで縫製属性とは、実際に刺繍を施す際に必要となる属性であり、具体的には刺繍糸の色、縫い目形態、縫い目密度、縫い目ピッチ、縫い方向等が含まれる。縫製属性の設定時には、液晶ディスプレイ7の表示画面7aには、図8に示すように刺繍図柄が表示され、現在縫製属性の入力対象となっている閉領域が特定の表示態様(例えば、点滅、ハッチング等の特定のパターン、など)により識別可能とされる。また、画面7aの一部には設定すべき縫製属性の項目が表示され、作業者の入力待ちとなる。作業者は、画面7aに表示される図柄を参照し、これに含まれるいずれかの閉領域(例えば、L4)を指定してこれに対する縫製属性の設定(例えば、刺繍糸を赤とする)を行なう。すると、CPU2はRAM4内に記憶された上記の木構造を参照し、この指定が行なわれた閉領域と同一の内包レベルにある閉領域全て(ここでは、閉領域L5−L7)に対し、同一の縫製属性を自動的に設定する(これを「第1の手法」と呼ぶ)。従って、作業者は刺繍図柄15の文字「M」を指定して縫製属性を設定するだけで、同一内包レベルにある他の文字「A」、「K」、「O」の全てについての縫製属性の設定を完了することができる。このように、ある閉領域に対して縫製属性が設定された時に、それと同一の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を設定するので、同一内包レベルにある複数の閉領域に対して同一の縫製属性を個別に設定する手間を省くことができる。こうして設定がされた閉領域は設定された属性(例えば糸色)に対応する色で画面7a上の刺繍図柄を着色して表示する。作業者は、この表示を見ながら残りの閉領域についても縫製属性の設定を行う。このような手順で作業者は刺繍を施したい閉領域に対して縫製属性を設定する。なお、必要であれば設定された縫製属性の修正を受け付けるようにしてもよい。
【0032】
縫製属性の設定が完了すると、RAM4に記憶された各閉領域の境界線データ及び上記縫製属性設定処理において設定された縫い目ピッチ、縫い方向等のデータに基づいて、実際の針落ち点座標の集合である刺繍データが生成される(ステップS5)。そして、生成された刺繍データは、フラッシュメモリ10にその刺繍図柄を特定するファイルネームと共に記憶される(ステップS5)。以上で、刺繍データの作成は終了する。
【0033】
その後、実際に刺繍を行なう場合には、作業者は該フラッシュメモリ10を家庭用ミシン20の挿入口24に挿入し、希望の図柄に対応するファイルネームを入力する。これにより、対応する刺繍データが読みだされ、制御部の制御の下で刺繍が行なわれる。
【0034】
上記の説明では、ステップS4における縫製属性の設定において、ある閉領域の縫製属性が設定されるとそれと同一の内包レベルにある閉領域を同一の属性に設定することとしている。この代わりに、ある閉領域の縫製属性が設定された場合に、その閉領域の内包レベルと同一の内包レベルの閉領域のみならず、それより下位の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を設定する(これを「第2の手法」と呼ぶ。)ように構成してもよい。即ち、例えば内包レベル1の閉領域の一つであるL1に対してある縫製属性が設定された場合には、これと同一内包レベルにある閉領域L2及びL3のみならず、これより下位の内包レベルにある全ての閉領域L4−L9に対しても同一の縫製属性を設定する。この第2の手法は、特に以下のような場合に有利である。いま、図5に示す刺繍図柄について、リボンの部分を赤糸とし、「MAKO」の文字の部分を白糸で白抜きにする場合を想定する。第1の手法によると、作業者はまず閉領域L1−L3のいずれかに対して赤糸の指定をし、次に、閉領域L4−L7のいずれかに対して白糸の指定をし、さらに閉領域L8又はL9のいずれかに対し再度赤糸の指定をする必要がある。一方、第2の手法によれば、閉領域L1−L3のいずれかに対して赤糸の指定をすると閉領域L1−L3のみならず、閉領域L4−L9に対しても赤糸の指定がなされる。よって、作業者はさらに閉領域L4−L7のうちのいずれかに対して白糸の指定をすれば、閉領域L8及びL9に対する設定を行なう必要が無い。このようにして、縫製属性の設定をさらに簡略化することができる。
【0035】
また、ステップS4の縫製属性の設定はさらに以下のように行なってもよい。まず、図7に示す木構造に基づいて、内包レベル1の閉領域に対しての縫製属性の設定を作業者に促す。この場合、液晶ディスプレイ7の表示画面7aには、図9に示すように刺繍図柄が表示され、現在縫製属性の入力対象となっている内包レベル1の全ての閉領域が特定の表示態様(例えば、点滅、ハッチング等の特定のパターン、など)により識別可能に表示される。作業者は、この内包レべル1に閉領域に対して、縫製属性の設定を行なう。作業者が、内包レベル1の閉領域(この場合、L1−L3)に対する設定を完了すると、次に内包レベル2の閉領域(この場合、L4−L7)が画面7a上で点滅等の表示状態となり、この内包レベルの閉領域に対する縫製特性の入力待ちとなる。同様の手順により最下位の内包レベルに対応する閉領域(この場合、L8及びL9)まで縫製属性の設定が行なわれる。このようにすれば、作業者は設定の際に、同一の設定が自動的に行なわれる全ての閉領域を視覚的に把握できるので、希望の刺繍イメージを容易に実現することが可能となる。
【0036】
なお、上記の説明では原画をスキャナ12で読み取り、境界線追跡アルゴリズムにより境界線を抽出することとしている。この代わりに、作業者が原画15の輪郭線に沿ってマウスを移動することにより原画15の輪郭線データを生成するように構成してもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の刺繍データ処理装置によれば、読み取られた原画の画像データからこれに含まれる閉領域の内包関係を解析し、ある閉領域に対して縫製属性の設定がされた場合に、それと同一内包レベルにある閉領域全てに自動的に同一の縫製属性を設定する。従って、作業者は重複した設定処理を省くことができ、刺繍データの迅速、かつ、簡易な作成が可能となる。
【0038】
また、請求項2記載の刺繍データ処理装置によれば、ある閉領域に対して縫製属性の設定がされた場合に、それと同一内包レベル及びそれ以下の内包レベルのすくなくとも一方にある閉領域全てに自動的に同一の縫製属性を設定するので、さらに刺繍データ作成の迅速化、簡易化が図れる。
【0039】
また、請求項3及び4のいずれかに記載の刺繍データ処理装置によれば、内包関係の複雑な刺繍図柄であっても正確に内包関係を解析することができる。
また、請求項5記載の刺繍データ処理装置によれば、自動設定の禁止により作業者の縫製属性の設定を可能とするので、より作業者の希望に適合した刺繍データ処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の刺繍データ処理装置による刺繍データ作成処理の一例を示すフローチャートである。
【図2】刺繍データ処理装置の外観構成を示す斜視図である。
【図3】家庭用刺繍ミシンの外観を示す斜視図である。
【図4】刺繍データ処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】刺繍データ作成の対象となる刺繍図柄の一例を示す図である。
【図6】図5に示す図柄から抽出される境界線(輪郭線)を示す図である。
【図7】境界線の内包関係を木構造により示した図である。
【図8】縫製特性の設定の際のディスプレイの表示例を示す図である。
【符号の説明】
1…刺繍データ処理装置
2…CPU
3…ROM
4…RAM
5…フラッシュメモリ装置
7…液晶ディスプレイ
10…フラッシュメモリ
12…イメージスキャナ
20…家庭用ミシン
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺繍を形成するための刺繍データを作成する刺繍データ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば工業用ミシンの分野においては、マイクロコンピュータを利用して精度の高い刺繍データを短時間で作成する刺繍データ処理装置が提供されている。その刺繍データ処理装置は、例えば汎用のパーソナルコンピュータシステムに、イメージスキャナ、キーボード、マウス、ハードディスクドライブ、CRTディスプレイ等を接続して構成されており、任意の刺繍図柄の原画から、多色縫いの刺繍データを作成することができるようになっている。
【0003】
ところで近年では、需要者の嗜好の多様化、高級化、刺繍ミシンの性能の向上などの事情を背景にして、家庭用の刺繍ミシンであっても、あらかじめ記憶されている刺繍データに基づく図柄の刺繍だけでなく、使用者の所望の図柄の刺繍を可能とする、比較的安価で操作の容易な刺繍データ処理装置が要望されている。特に、複数色の刺繍糸を用いる多色図柄の刺繍データの作成を可能とすることが望まれている。
【0004】
従来の刺繍データ処理装置では、刺繍の作成を希望する刺繍図柄の原画をスキャナ等により読み取り、あるいはマウス等によりトレースしてその図柄の形状を示す画像データを生成する。そして、その画像データに含まれる閉領域に対して、作業者が糸色、縫い目方向等の縫製属性を設定することにより、多色図柄の刺繍データを作成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この種の刺繍データ処理装置として、本発明の発明者は特願平6−287664号に記載のものを提案している。この刺繍データ処理装置は、刺繍図柄の原画の画像データから自動的に刺繍の対象となる閉領域を抽出し、作業者を誘導して各閉領域に縫製属性を設定させることにより、刺繍データ作成の迅速化、簡素化を可能とするものである。しかしながら、この刺繍データ処理装置は、抽出された全ての閉領域に対して作業者が個別に縫製属性の設定を行なうことを必要とする点でさらなる改善の余地を残している。通常の刺繍作業においては、常に刺繍図柄に含まれる全ての閉領域に対して異なる縫製属性により刺繍を施すとは限らない。即ち、複数の閉領域のうちには、同様の縫製属性により刺繍が施されるべき領域が含まれることがある。例えば、チューリップの図柄を刺繍する場合を考える。この場合、花びらの部分、茎の部分、葉の部分はそれぞれ異なる縫製属性(例えば、糸色)で刺繍を施す必要があるが、葉が複数ある場合には全ての葉の部分に対して同じ縫製属性で刺繍を施すのが普通である。しかし、上記の刺繍データ処理装置によれば、このような場合においても葉の部分を構成する複数の閉領域それぞれに対して個別に縫製属性の設定を行なわなければならない。即ち、同一の縫製属性に設定すべき複数の刺繍領域に対して重複して設定作業を要することになり、特に閉領域が多い刺繍図柄の場合には刺繍データの作成作業は煩雑、かつ、余計な時間を要するものとなる。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、複雑な刺繍図柄の場合でも容易かつ短時間で刺繍データの作成が可能な刺繍データ処理装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み、請求項1記載の発明は、刺繍データ処理装置において、刺繍図柄を表す図柄画像データを入力する画像入力手段と、前記図柄画像データに基づいて、前記刺繍図柄の輪郭線で規定される、図柄領域及び中抜け領域を含む閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、前記閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する内包関係解析手段と、前記閉領域に対する縫製属性を入力する縫製属性入力手段と、ある閉領域に対して縫製属性が入力された場合に、その閉領域と同一の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を自動的に設定する縫製属性設定手段と、設定された縫製属性に基づいて、当該閉領域の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、を有するように構成する。
【0008】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、作業者は画像入力手段により希望の刺繍図柄を入力する。閉領域抽出手段は、入力された図柄画像データの輪郭線により規定される閉領域を抽出し、内包関係解析手段は閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する。その後、作業者が閉領域のいずれかに対して縫製属性を入力すると、縫製属性設定手段はその閉領域の内包レベルと同一の内包レベルにある閉領域全てに対して、入力されたのと同一の縫製属性を自動的に設定する。そして、刺繍データ作成手段は縫製属性が設定された閉領域について刺繍データを作成する。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、刺繍データ処理装置において、刺繍図柄を表す図柄画像データを入力する画像入力手段と、前記図柄画像データに基づいて、前記刺繍図柄の輪郭線で規定される、図柄領域及び中抜き領域を含む閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、前記閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する内包関係解析手段と、前記閉領域に対する縫製属性を入力する縫製属性入力手段と、ある閉領域に対して縫製属性が入力された場合に、その閉領域と同一の内包レベル及びその閉領域より下位の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を自動的に設定する縫製属性設定手段と、設定された縫製属性に基づいて、当該閉領域の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、を有するように構成する。
【0010】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、作業者は画像入力手段により希望の刺繍図柄を入力する。閉領域抽出手段は、入力された図柄画像データの輪郭線により規定される閉領域を抽出し、内包関係解析手段は閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する。その後、作業者が閉領域のいずれかに対して縫製属性を入力すると、縫製属性設定手段はその閉領域の内包レベルと同一の内包レベル及びそれより下位の内包レベルにある閉領域全てに対して、入力されたのと同一の縫製属性を自動的に設定する。そして、刺繍データ作成手段は縫製属性が設定された閉領域について刺繍データを作成する。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の刺繍データ処理装置において、前記内包関係解析手段は、前記閉領域抽出手段により抽出された閉領域の内部において、さらに閉領域を検出することにより内包関係を解析するように構成する。
【0012】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、内包関係解析手段は、閉領域抽出手段により抽出された閉領域内部においてさらに閉領域を検出することにより閉領域間の内包関係を解析する。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の刺繍データ処理装置において、前記内包関係解析手段は、前記閉領域抽出手段により抽出された一の閉領域の内部にさらに閉領域を検出した場合に、前記検出された閉領域を前記一の閉領域より一レベル下位の内包レベルに決定するように構成する。
【0014】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、内包関係解析手段は、閉領域抽出手段により抽出された一の閉領域の内部にさらに閉領域を検出した場合に、その検出された閉領域を前記一の閉領域より一レベル下位の内包レベルに決定する。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の刺繍データ処理装置において、作業者の指示入力に応答して、前記縫製属性設定手段による自動設定を禁止する自動設定禁止手段を有するように構成する。
【0016】
上記のように構成された刺繍データ処理装置によれば、作業者により自動設定を禁止する旨の指示が入力された場合には、自動設定禁止手段は縫製属性設定手段による自動設定を禁止する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明は、本発明を家庭用刺繍ミシンのための刺繍データ処理装置に適用した場合について行なう。
【0018】
まず、刺繍を行なうためのシステム全体について説明する。実際の刺繍作業は、まず刺繍データ処理装置により刺繍データを作成し、次にその刺繍データを刺繍ミシンに供給して希望の図柄の刺繍を行うという手順で行なわれる。
【0019】
図2に、本発明にかかる刺繍データ処理装置の外観構成を示す。刺繍データ処理装置1は、刺繍図柄を入力するためのスキャナ12を有し、スキャナ12により読み込まれた刺繍図柄の画像データに基づいて刺繍データを作成する。作成された刺繍データは、フラッシュメモリ(カードメモリ)10に記憶される。作業者は、このフラッシュメモリ10を刺繍用ミシンにセットする。すると、記憶された刺繍データは、フラッシュメモリ10から読みだされ、該刺繍データに基づいて刺繍が行なわれる。
【0020】
図3に、家庭用刺繍ミシンの外形を示す。刺繍ミシン20は、ミシンベッド上に配置され、加工布22を保持する刺繍枠21を水平移動機構により装置固有のX−Y座標系で示される所定位置に移動させつつ、縫い針23による縫い動作を行なうことにより、加工布22上に所定の図柄の刺繍を施す。刺繍ミシン20にはフラッシュメモリ装置が内蔵されている。作業者が刺繍データを記憶したフラッシュメモリ10をフラッシュメモリ挿入口24に挿入すると、記憶された刺繍データが読みだされる。刺繍データは通常、上記X−Y座標系における針落ち点の位置を示す座標データを含んでおり、マイクロコンピュータ等から構成される制御装置は読みだされた刺繍データに基づいて刺繍枠21の水平移動機構等を制御し、加工布22上に刺繍を施す。
【0021】
次に、本発明にかかる刺繍データ処理装置1の構成について、図2及び図4を参照して説明する。
刺繍データ処理装置1は、刺繍データ作成における種々の処理を行なうためのCPU2、種々の処理プログラムやデータを記憶するROM3、及び、刺繍図柄の画像データ、後述する各閉領域の内包レベル等の種々のデータを記憶するRAM4を有している。後述する刺繍データ作成処理は、基本的にはROM3に記憶されたプログラムをCPU2が実行することにより行なわれる。
【0022】
さらに、刺繍データ処理装置1は、フラッシュメモリ装置5、インターフェイス6、入力部11、及び、スキャナ12、を有している。フラッシュメモリ10は、フラッシュメモリ装置5内に挿入され、作成された刺繍データがフラッシュメモリ10内に記憶される。入力部11は、刺繍データ処理装置1の本体に配設された入力ボタンK1−K3により構成され、後述する縫製属性、所定の指示などの入力に用いられる。また、イメージスキャナ12は、作業者が希望する刺繍図柄の原画を読み取るために使用され、読み取られた刺繍図柄に対応する画像データを作成する。入力部11から入力された指示情報やイメージスキャナ12により作成された画像データは、インターフェイス6を介してCPU2やRAM4に供給される。
【0023】
さらに、刺繍データ処理装置1は、読み取った刺繍図柄の画像データや刺繍領域等を画面7aに表示するための液晶ディスプレイ(LCD)7、及び、液晶ディスプレイ7を制御するための表示制御装置(LCDC)8、を備えている。また、表示制御装置8には、画像記憶装置(VRAM)9が接続され、モノクロのビットマップグラフィックス表示が可能なように構成されている。
【0024】
上記の構成において、イメージスキャナ12が画像入力手段に対応し、CPU2、ROM3及びRAM4が閉領域抽出手段、内包関係解析手段、縫製属性設定手段、刺繍データ作成手段及び自動設定禁止手段に対応し、入力部11が縫製属性入力手段に対応する。また、閉領域抽出手段は、図1におけるステップS2において、内包関係解析手段はステップS3において、縫製属性設定手段及び自動設定禁止手段はステップS4において、刺繍データ作成手段はステップS5においてそれぞれ機能する。
【0025】
次に、本発明による刺繍データ作成処理の一例について、図1、及び、図5乃至図7を参照して説明する。図1は本発明による刺繍データ作成処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、図5に示す刺繍図柄についての刺繍データを作成する場合を例にとって説明する。
【0026】
まず、作業者は図5に示すような希望の刺繍図柄の原画15を用意する。この原画15は、例えば白地の原紙に黒のペンで図5に示す各刺繍領域の輪郭線または境界線を描いたものである。さて、刺繍データ処理装置1のプログラムが起動された後、作業者は原画15の図形をイメージスキャナ12を用いて読み取る(ステップS1)。このイメージスキャナ12により読み取られた2値のビットマップ画像データは、RAM4の所定の領域に記憶される。
【0027】
次に、読み取られた原画15の画像データに基づいて境界線抽出処理を行なう(ステップS2)。即ち、原画15の画像データに対して、画像中の、その周囲が有効な連結図形(黒画素が相互に連接しているひとまとまりの図形)で取り囲まれている閉領域を個別に取り出すため、境界線抽出処理を行う。この境界線抽出処理は、例えば画像図形処理技法として周知の技法である境界線追跡アルゴリズムを適用することにより実現される。その際の連結性判定は4連結あるいは8連結のいずれでも良いが、そのアルゴリズムの詳細な説明については本発明の本質的部分ではないため割愛する。
【0028】
図5に示す原画15のビットマップ画像データについてこの境界線抽出処理を適用して抽出される境界線を図6に示す。この境界線抽出処理により抽出される境界線は、図6に示されるように原画15の図柄の輪郭線となる(よって、以下の説明で使用する「境界線」の語は、「輪郭線」と等価である)。この例では、L0−L9の合計10本の境界線が抽出される。即ち、リボンの最外周を規定する境界線L0、リボンの折り目により規定される境界線L1−L3、境界線L2内部の4つの文字(「M]、「A」、「K」、「O」)のそれぞれの外周を規定する境界線L4−L7、文字「A」の内部に含まれる境界線L8、及び、文字「O」の内部に含まれる境界線L9が抽出される。これらの境界線を示す境界線データ16がRAM4に記憶され、必要に応じて表示制御装置8を介して液晶ディスプレイ7の画面7a上に表示される。
【0029】
次に、RAM4に記憶された境界線データ16に対して内包関係解析処理を行ない、各境界線(輪郭線)で規定される閉領域相互の内包関係が解析される(ステップS3)。この内包関係解析処理は以下のように行なわれる。まず、図6に示す境界線データ、即ち、2値のビットマップ画像データを適当な順序でラスター走査を行なってその画素値が0から1、又は1から0というように反転する境界画素を探索する。そして、それを起点画素として境界線追跡アルゴリズムに従ってひとつの閉じた境界線の画素連鎖ループを抽出する。例えば、図7の図柄では、まず境界線L0が抽出される。次に、境界線L0の内部のみに同様のラスター走査を行ない、前述の様な境界画素が検出されたなら、さらにそれを起点として一つの閉じた境界線ループを抽出する。この時抽出される境界線は境界線L0の内側に存在することが分かる。これにより、境界線L1−L3が検出される。さらには、境界線L1−L3のそれぞれの内部に対して、上記のラスター走査による境界画素探索を行ない、さらに内包される境界線を検出する。このような手続きをラスター走査により発見される境界画素が存在しなくなるまで順次再帰的に繰り返し行なう。その結果、刺繍原画の図柄中の全ての境界線が抽出され、それら境界線間の内包関係が得られる。なお、ステップS2における境界線抽出処理は上記の内包関係解析処理と一部重複するので、実際の処理としてはステップS3の内包関係解析処理において境界線抽出処理を同時に行なうこととしてもよい。
【0030】
原画16の刺繍図柄に対して以上のような処理を適用して得られる境界線L0−L9の相互内包関係を模式的に木構造の図にして示したのが図7である。この木構造では、最も外側に位置する境界線を最上位に置き、ある境界線が内包する境界線を持つ場合には、内包される境界線をその下位に配置することとしている。また、境界線の内包関係の深さを表す値として内包レベルを定義し、最も外側の境界線の内包レベルを0とし、木構造においてレベルが一段下がる毎に内包レベルの値が1ずつ増加するように定める。このようにして得られた内包レベルは、各境界線により仕切られる各閉領域に対応してRAM4に記憶される。
【0031】
次に、各閉領域に対しての縫製属性の設定が行なわれる(ステップS4)。ここで縫製属性とは、実際に刺繍を施す際に必要となる属性であり、具体的には刺繍糸の色、縫い目形態、縫い目密度、縫い目ピッチ、縫い方向等が含まれる。縫製属性の設定時には、液晶ディスプレイ7の表示画面7aには、図8に示すように刺繍図柄が表示され、現在縫製属性の入力対象となっている閉領域が特定の表示態様(例えば、点滅、ハッチング等の特定のパターン、など)により識別可能とされる。また、画面7aの一部には設定すべき縫製属性の項目が表示され、作業者の入力待ちとなる。作業者は、画面7aに表示される図柄を参照し、これに含まれるいずれかの閉領域(例えば、L4)を指定してこれに対する縫製属性の設定(例えば、刺繍糸を赤とする)を行なう。すると、CPU2はRAM4内に記憶された上記の木構造を参照し、この指定が行なわれた閉領域と同一の内包レベルにある閉領域全て(ここでは、閉領域L5−L7)に対し、同一の縫製属性を自動的に設定する(これを「第1の手法」と呼ぶ)。従って、作業者は刺繍図柄15の文字「M」を指定して縫製属性を設定するだけで、同一内包レベルにある他の文字「A」、「K」、「O」の全てについての縫製属性の設定を完了することができる。このように、ある閉領域に対して縫製属性が設定された時に、それと同一の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を設定するので、同一内包レベルにある複数の閉領域に対して同一の縫製属性を個別に設定する手間を省くことができる。こうして設定がされた閉領域は設定された属性(例えば糸色)に対応する色で画面7a上の刺繍図柄を着色して表示する。作業者は、この表示を見ながら残りの閉領域についても縫製属性の設定を行う。このような手順で作業者は刺繍を施したい閉領域に対して縫製属性を設定する。なお、必要であれば設定された縫製属性の修正を受け付けるようにしてもよい。
【0032】
縫製属性の設定が完了すると、RAM4に記憶された各閉領域の境界線データ及び上記縫製属性設定処理において設定された縫い目ピッチ、縫い方向等のデータに基づいて、実際の針落ち点座標の集合である刺繍データが生成される(ステップS5)。そして、生成された刺繍データは、フラッシュメモリ10にその刺繍図柄を特定するファイルネームと共に記憶される(ステップS5)。以上で、刺繍データの作成は終了する。
【0033】
その後、実際に刺繍を行なう場合には、作業者は該フラッシュメモリ10を家庭用ミシン20の挿入口24に挿入し、希望の図柄に対応するファイルネームを入力する。これにより、対応する刺繍データが読みだされ、制御部の制御の下で刺繍が行なわれる。
【0034】
上記の説明では、ステップS4における縫製属性の設定において、ある閉領域の縫製属性が設定されるとそれと同一の内包レベルにある閉領域を同一の属性に設定することとしている。この代わりに、ある閉領域の縫製属性が設定された場合に、その閉領域の内包レベルと同一の内包レベルの閉領域のみならず、それより下位の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を設定する(これを「第2の手法」と呼ぶ。)ように構成してもよい。即ち、例えば内包レベル1の閉領域の一つであるL1に対してある縫製属性が設定された場合には、これと同一内包レベルにある閉領域L2及びL3のみならず、これより下位の内包レベルにある全ての閉領域L4−L9に対しても同一の縫製属性を設定する。この第2の手法は、特に以下のような場合に有利である。いま、図5に示す刺繍図柄について、リボンの部分を赤糸とし、「MAKO」の文字の部分を白糸で白抜きにする場合を想定する。第1の手法によると、作業者はまず閉領域L1−L3のいずれかに対して赤糸の指定をし、次に、閉領域L4−L7のいずれかに対して白糸の指定をし、さらに閉領域L8又はL9のいずれかに対し再度赤糸の指定をする必要がある。一方、第2の手法によれば、閉領域L1−L3のいずれかに対して赤糸の指定をすると閉領域L1−L3のみならず、閉領域L4−L9に対しても赤糸の指定がなされる。よって、作業者はさらに閉領域L4−L7のうちのいずれかに対して白糸の指定をすれば、閉領域L8及びL9に対する設定を行なう必要が無い。このようにして、縫製属性の設定をさらに簡略化することができる。
【0035】
また、ステップS4の縫製属性の設定はさらに以下のように行なってもよい。まず、図7に示す木構造に基づいて、内包レベル1の閉領域に対しての縫製属性の設定を作業者に促す。この場合、液晶ディスプレイ7の表示画面7aには、図9に示すように刺繍図柄が表示され、現在縫製属性の入力対象となっている内包レベル1の全ての閉領域が特定の表示態様(例えば、点滅、ハッチング等の特定のパターン、など)により識別可能に表示される。作業者は、この内包レべル1に閉領域に対して、縫製属性の設定を行なう。作業者が、内包レベル1の閉領域(この場合、L1−L3)に対する設定を完了すると、次に内包レベル2の閉領域(この場合、L4−L7)が画面7a上で点滅等の表示状態となり、この内包レベルの閉領域に対する縫製特性の入力待ちとなる。同様の手順により最下位の内包レベルに対応する閉領域(この場合、L8及びL9)まで縫製属性の設定が行なわれる。このようにすれば、作業者は設定の際に、同一の設定が自動的に行なわれる全ての閉領域を視覚的に把握できるので、希望の刺繍イメージを容易に実現することが可能となる。
【0036】
なお、上記の説明では原画をスキャナ12で読み取り、境界線追跡アルゴリズムにより境界線を抽出することとしている。この代わりに、作業者が原画15の輪郭線に沿ってマウスを移動することにより原画15の輪郭線データを生成するように構成してもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の刺繍データ処理装置によれば、読み取られた原画の画像データからこれに含まれる閉領域の内包関係を解析し、ある閉領域に対して縫製属性の設定がされた場合に、それと同一内包レベルにある閉領域全てに自動的に同一の縫製属性を設定する。従って、作業者は重複した設定処理を省くことができ、刺繍データの迅速、かつ、簡易な作成が可能となる。
【0038】
また、請求項2記載の刺繍データ処理装置によれば、ある閉領域に対して縫製属性の設定がされた場合に、それと同一内包レベル及びそれ以下の内包レベルのすくなくとも一方にある閉領域全てに自動的に同一の縫製属性を設定するので、さらに刺繍データ作成の迅速化、簡易化が図れる。
【0039】
また、請求項3及び4のいずれかに記載の刺繍データ処理装置によれば、内包関係の複雑な刺繍図柄であっても正確に内包関係を解析することができる。
また、請求項5記載の刺繍データ処理装置によれば、自動設定の禁止により作業者の縫製属性の設定を可能とするので、より作業者の希望に適合した刺繍データ処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の刺繍データ処理装置による刺繍データ作成処理の一例を示すフローチャートである。
【図2】刺繍データ処理装置の外観構成を示す斜視図である。
【図3】家庭用刺繍ミシンの外観を示す斜視図である。
【図4】刺繍データ処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】刺繍データ作成の対象となる刺繍図柄の一例を示す図である。
【図6】図5に示す図柄から抽出される境界線(輪郭線)を示す図である。
【図7】境界線の内包関係を木構造により示した図である。
【図8】縫製特性の設定の際のディスプレイの表示例を示す図である。
【符号の説明】
1…刺繍データ処理装置
2…CPU
3…ROM
4…RAM
5…フラッシュメモリ装置
7…液晶ディスプレイ
10…フラッシュメモリ
12…イメージスキャナ
20…家庭用ミシン
Claims (5)
- 刺繍図柄を表す図柄画像データを入力する画像入力手段と、
前記図柄画像データに基づいて、前記刺繍図柄の輪郭線で規定される、図柄領域及び中抜き領域を含む閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
前記閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する内包関係解析手段と、
前記閉領域に対する縫製属性を入力する縫製属性入力手段と、
ある閉領域に対して縫製属性が入力された場合に、その閉領域と同一の内包レベルにある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を自動的に設定する縫製属性設定手段と、
設定された縫製属性に基づいて、当該閉領域の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、
を有することを特徴とする刺繍データ処理装置。 - 刺繍図柄を表す図柄画像データを入力する画像入力手段と、
前記図柄画像データに基づいて、前記刺繍図柄の輪郭線で規定される、図柄領域及び中抜け領域を含む閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
前記閉領域相互の内包関係を解析し、各閉領域の内包レベルを決定する内包関係解析手段と、
前記閉領域に対する縫製属性を入力する縫製属性入力手段と、
ある閉領域に対して縫製属性が入力された場合に、その閉領域と同一の内包レベル及びその閉領域より下位の内包レベルの少なくとも一方にある全ての閉領域に対して同一の縫製属性を自動的に設定する縫製属性設定手段と、
設定された縫製属性に基づいて、当該閉領域の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、
を有することを特徴とする刺繍データ処理装置。 - 前記内包関係解析手段は、前記閉領域抽出手段により抽出された閉領域の内部において、さらに閉領域を検出することにより内包関係を解析することを特徴とする請求項1又は2記載の刺繍データ処理装置。
- 前記内包関係解析手段は、前記閉領域抽出手段により抽出された一の閉領域の内部にさらに閉領域を検出した場合に、前記検出された閉領域を前記一の閉領域より一レベル下位の内包レベルに決定することを特徴とする請求項3記載の刺繍データ処理装置。
- 作業者の指示入力に応答して、前記縫製属性設定手段による自動設定を禁止する自動設定禁止手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の刺繍データ処理装置。
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