JP3595882B2 - 燃焼炉の排煙処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、燃焼炉の排煙中のダイオキシンなどを効果的に除去できる燃焼炉の排煙処理装置及び排煙処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃焼炉の排煙中の有害成分の除去のためには、従来から種々の手段が提案されている。これらについて幾つか指摘すると、都市ごみ焼却炉などの排ガス中の窒素酸化物を乾式触媒法で除去するのに先立って前処理装置により排ガス中の低融点化合物のミスト及びダストを捕獲する方法(特開昭57-71625号公報参照)、吸着層の上流側にダミー層を設けて排ガス中のダストを効果的に除去する排ガス処理装置(特開昭57-102217号公報参照)、ごみ焼却炉排ガスを冷却後、電気集塵器またはサイクロンで防塵する方法(特開平1-155937号公報参照)、第1段除去装置と第2段除去装置とを設け、排ガス中の硫黄酸化物を第1段除去装置で消石灰スラリ等に大部分吸収させた後、第2段除去装置で残りを活性炭等により除去する排ガス処理方法(特開昭56-31426号公報参照)などがある。
【0003】
廃棄物などを焼却する燃焼炉においては、廃棄物などの組成、形状が不安定で変動するものを燃料としているために、燃焼が不安定になることがある。燃焼炉の改善により燃焼安定期間、すなわち完全焼却期間を長くすることは可能であるが、燃料たる廃棄物などの組成を選別して焼却しない限り、一時的にではあっても一酸化炭素、有機成分などの未燃分が排出される。
【0004】
塩化ビニルを含有する一般家庭ゴミなどを燃焼炉で燃焼すると塩化水素が排出される排煙中の塩化水素は未燃の有機成分と反応して非常に微量ではあるが有害なPCBに転化し、さらに、その極一部はPCBより有害なダイオキシンに転化する。
【0005】
これら有害な有機成分を吸着除去するのには活性炭が有効である。活性炭を用いれば、PCB、ダイオキシンを含む排煙中有機成分の大部分を除去することができる。
【0006】
一方、排煙中の塩化水素を除去するためにバグフィルタを用いる手段が普及している。この方法では煙道中がダイオキシン生成温度域となるのを避けるため、排煙を250℃以下に冷却した後に消石灰の粉末を添加し、バグフィルタ表面上に消石灰層を形成し、排煙を通過させて塩化水素を吸収除去している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来は活性炭を一定温度で用いており、活性炭の使用量を増やしてもダイオキシン除去率が飽和してしまい、この除去率を100%に近づけることはできても100%にすることはできなかった。
【0008】
ダイオキシン、PCBは危険性が高いうえに、生物の体内に蓄積されて濃縮されるので完全に除去すべきである。また、ダイオキシンの実質的な排出規制は検出限界近くの値に設定され、検出技術の進歩により低濃度でも検出できるようになるにつれて規制も厳しくなる傾向にある。よって、この点で、特にダイオキシンの完全除去技術を確立することは急務である。
【0009】
しかし、凝縮温度、つまりは活性炭への最適吸着温度域の異なる各種の排煙中の有機成分、PCBまたはダイオキシンで総称される各種化合物などを従来のように1つの温度域で活性炭に吸着させる装置では、ダイオキシンで総称される各種化合物などを十分に除去することができない。
【0010】
また、燃焼炉から排出される未燃分は有害物質を生成するだけではなく、消石灰を用いた排煙中の塩化水素の吸収除去を妨害する。すなわち、排煙中に未燃分が存在すると、この未燃分中の有機成分の一部は消石灰表面に凝縮して油膜を形成し、消石灰と排煙中の塩化水素との反応吸収を妨害することがある。
【0011】
本発明者等は各種排煙条件及びバグフィルタ操作条件を変動させて、塩化水素除去試験を実施したところ、バグフィルタより回収した使用後の消石灰を含んだダストの中には水と混合しないものがあり、この場合、塩化水素除去性能が低下することを突き止めた。
【0012】
本発明は、ダイオキシンで総称される各種化合物などの除去が十分に行える燃焼炉の排煙処理装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明における燃焼炉の排煙処理装置は、燃焼炉から排出される排煙に消石灰を添加する消石灰添加手段と、消石灰が添加された排煙が通流するバグフィルタとを順次設けた燃焼炉の排煙処理装置において、消石灰添加手段の上流側およびバグフィルタの下流側に、使用温度の異なる活性炭充填層を設けることを特徴とする。この場合において、活性炭充填層の使用温度は、排煙の流れ方向に順次低い温度に設定するようにする。
【0014】
また、燃焼炉から排出される排煙に消石灰を添加する消石灰添加手段と、この消石灰が添加された排煙が通流するバグフィルタとを順次設けた燃焼炉の排煙処理装置において、バグフィルタの下流側に複数の活性炭充填層が順次設けられ、各活性炭充填層の使用温度は、排煙中の除去せんとする異なる成分の吸着温度に対応させて設定してなることを特徴とする。この場合において、活性炭充填層の使用温度は、排煙の流れ方向に順次低い温度に設定するようにする。
【0015】
【作用】
異なる化合物構造、異なる凝縮温度を有する化合物をすべてを十分に除去するには使用温度の異なる複数の活性炭充填層に次々と排煙を通過させることが必要である。そこで、各活性炭充填層の使用温度を、排煙中から除去せんとするダイオキシン、PCBなどの各成分の凝縮温度、したがって活性炭への最適吸着温度に、それぞれ対応させ、この複数の活性炭充填層に排煙を次々と通過させることで、ダイオキシン、PCBなどの各成分は使用温度がかかる各成分の最適吸着温度に設定された活性炭充填層内で十分に除去される。
【0016】
また、排煙への消石灰の添加は、活性炭充填層のうち少なくとも1つの活性炭充填層通過後に行なうから、消石灰は少なくとも1つの活性炭充填層を通過して未燃分中の有機成分は除去され、消石灰表面に凝縮して油膜を形成することがなく、消石灰と排煙中の塩化水素との反応吸収は妨害されない。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。図1は、本発明の一実施例たる第1の実施例にかかる燃焼炉の排煙処理装置を設けた、ごみ焼却装置の系統図である。同図を参照して、1は焼却炉であり、ごみ供給管21から供給される燃料としてのごみが供給される。11は流動層である。冷却水配管27からは冷却水が供給され、水噴射ノズル12は、この冷却水を噴射して、ごみの燃焼により生じた排煙を煙道の腐食防止に必要な450℃程度まで冷却する。焼却排煙煙道22は、かかる冷却後の排煙を排熱回収熱交換器2に送る。排熱回収熱交換器2は冷却管13を流通する冷却水によって排煙を冷却する。冷却塔3内には冷却水配管28から冷却水が供給され、水噴射ノズル14により噴射される。これにより排熱回収熱交換器2で冷却後の排煙を200℃程度に冷却する。冷却排煙煙道23は、かかる冷却後の排煙を吸着塔4に供給する。
【0018】
吸着塔4内には活性炭移動層15が設けられ、この活性炭移動層15には、活性炭供給管29から活性炭が供給され、使用済活性炭抜出管30から排出される。吸着塔4の温度は、後述のバグフィルタ5の使用温度と同じか、若干高温となるように設定される。この活性炭移動層15を通過することにより、200℃程度に冷却された排煙中のダイオキシン、PCBなど有機成分の相当部分を活性炭で吸収除去する。なお、吸着塔4は固定床とするより本実施例のように移動層とするのが望ましい。活性炭を固定床で使用すると排煙中の未処理のダストで閉塞することがあるからである。有機成分処理排煙煙道24は、活性炭移動層15を通過した排煙をバグフィルタ5に送る。消石灰供給管31は、この有機成分処理排煙煙道24を通過中の排煙に消石灰を添加する。バグフィルタ5内には濾布16が設けられ、排煙中の消石灰を捕捉する。この捕捉され、濾布16に堆積した消石灰は排煙中の塩化水素を吸収除去する。ダスト抜出管32は塩化水素を吸収した消石灰をバグフィルタ5から排出する。
【0019】
脱塩化水素排煙煙道25は、バグフィルタ5を通過した排煙を吸着塔7に送る。脱塩化水素排煙煙道25中には冷却器6が設けられ、この冷却器6には水冷管17が形成され、該管17はその内部を流通する冷却水により排煙を150℃程度に冷却する。吸着塔7内には活性炭移動層18が設けられ、この活性炭移動層18には、活性炭供給管33から活性炭が供給され、使用済活性炭抜出管34から排出される。ダイオキシン処理排煙煙道26は、吸着塔7を通過した排煙をブロワー8を介して煙突9に送り、煙突9は排煙を外気に排出する。
【0020】
つづいて、第1の実施例の作用について説明する。ごみを焼却炉1で燃焼することにより発生する排煙は、水噴射ノズル12から噴射される冷却水、排熱回収熱交換器2、冷却塔3で、200℃程度にまで冷却される。冷却された排煙は吸着塔4でダイオキシン、PCBなど有機成分の相当部分を吸収除去される。この後、排煙中の塩化水素はバグフィルタ5で消石灰により吸収除去されるが、排煙に含まれる未燃分中のダイオキシン、PCBなど有機成分は、吸着塔4で相当程度除去されているので、消石灰表面に凝縮して油膜を形成することがなく、消石灰と排煙中の塩化水素との反応吸収は妨害されることがない。
【0021】
この後、排煙は冷却器6で150℃程度まで冷却され、吸着塔7に至る。かかる吸着塔7では吸着塔4より使用温度が低く設定され、もって吸着塔7では除去しえなかった沸点の低いダイオキシン化合物も十分に除去される。
【0022】
そもそも、排煙中に含まれている木材、石炭などの各種乾留成分及び分子構造の類似したPCB、ダイオキシンの吸着除去には活性炭が有効であることは知られているが、活性炭での有機成分吸着は分子の大きさ、構成する官能基の種類、数により異なる。また、活性炭での有機成分の吸着がラングミュア吸着等温線で関連づけられることからもわかるように、分圧、飽和蒸気圧及び凝縮温度が異なると吸着の程度も異なる。
【0023】
本発明者等はダイオキシンの一部と沸騰温度の類似した無水硫酸ガスの吸着除去試験を行ない、数百ppmの無水硫酸ガスでは温度190℃の付近で最適に吸着されることや、温度が高くなると吸着平衡量が減少して除去率が低下すること、温度が下がるとガス中の無水硫酸が細かな液滴となって活性炭層を通過し吸着されなくなること、温度190℃で99%以上の無水硫酸を除去できるものの、さらに除去率を高めるには、この後、より低い使用温度で活性炭に触れさせる必要があることを見出した。
【0024】
このように、無水硫酸の活性炭吸着で見出した現象及び解明した原因がダイオキシン、PCBの活性炭による吸着にもそのまま適用できること、しかも、使用温度の異なる複数の活性炭を用いる本発明の手段が、無水硫酸より、むしろ沸点の異なる複数の化合物の混合物として存在する排煙中ダイオキシンの除去において効果的であることを本発明者等は見出し、本発明に到達したものである。
【0025】
なお、ダイオキシンが活性炭で吸着しうること、活性炭の使用温度を200℃程度に設定した場合、ダイオキシンとして総称される化合物のうち沸点の低い化合物は160℃程度と低めにした方が200℃程度とした場合より除去率が高いこと、しかし、160℃程度にすると沸点の高い化合物については相当程度除去できること、ダイオキシンとして総称される化合物のうち沸点の高い化合物は逆に除去率が若干低下することも知られているが、原因は解明されていない。
【0026】
次に、本発明の一実施例たる第2の実施例について説明する。図2は、この第2の実施例にかかる燃焼炉の排煙処理装置を設けた、ごみ焼却装置の系統図である。同図において、図1と同符号の部材は図1を参照して説明した第1の実施例の当該部材と同様の部材であるため説明を省略する。本実施例が第1の実施例と異なるところは、第1の実施例においてバグフィルタ5を通過させる以前に吸着塔のひとつに排煙を通過させていたのを、バグフィルタ5の通過後に通過させる構成とした点などである。すなわち、冷却塔3を通過した排煙は、冷却排煙煙道23で消石灰供給管31により消石灰が添加された後、吸着塔を通過することなくバグフィルタ5に導く。バグフィルタ5を通過後の排煙は、吸着塔35、冷却器6、吸着塔36の順に通過する。また、吸着塔35、吸着塔36は、何れも活性炭固定層37、38を備えている。
【0027】
本実施例の作用について説明すると、焼却炉1で生じた排煙は、排熱回収熱交換器2、冷却塔3で200℃程度まで冷却された後、消石灰が添加されてバグフィルタ5で塩化水素が除去される。200℃では、バグフィルタ5による排煙中のダイオキシンの除去率は小さいが、本実施例の吸着塔35内においてダイオキシンの大部分が除去される。残りの低融点のダイオキシン成分は、排煙が冷却機6で150℃程度まで冷却された後に吸着塔36で吸着除去されて煙突9より大気中に放出される。
【0028】
なお、本実施例1、2では活性炭充填層を2つの吸着塔に分けているが、1つの吸着塔、1つの充填層にして、充填層内に冷却用の熱交換用チューブを入れるか冷却用空気を流入させて、実質上使用温度の異なる複数の活性炭充填層としてもよい。また、本実施例1、2では活性炭充填層を2つ設けたが、使用温度の異なる複数の活性炭充填層をより多く設けてもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、上述のとおり、ダイオキシン、PCBなどの各成分を十分に除去できる燃焼炉の排煙処理装置を提供することができる。また、消石灰添加手段を備えた前記の構成とすれば、消石灰と排煙中の塩化水素との反応吸収は妨害されず、塩化水素を十分に除去できる燃焼炉の排煙処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例たる第1の実施例にかかる燃焼炉の排煙処理装置を設けた、ごみ焼却装置の系統図である。
【図2】本発明の一実施例たる第2の実施例にかかる燃焼炉の排煙処理装置を設けた、ごみ焼却装置の系統図である。
【符号の説明】
1 燃焼炉
3 冷却塔
4 吸着塔
5 バグフィルタ
6 冷却器
7 吸着塔
15 活性炭移動層
18 活性炭移動層

Claims (3)

  1. 燃焼炉から排出される排煙に消石灰を添加する消石灰添加手段と、該消石灰が添加された排煙が通流するバグフィルタとを順次設けた燃焼炉の排煙処理装置において、前記消石灰添加手段の上流側および前記バグフィルタの下流側に、使用温度の異なる活性炭充填層を設けてなる燃焼炉の排煙処理装置。
  2. 燃焼炉から排出される排煙に消石灰を添加する消石灰添加手段と、該消石灰が添加された排煙が通流するバグフィルタとを順次設けた燃焼炉の排煙処理装置において、前記バグフィルタの下流側に複数の活性炭充填層が順次設けられ、各活性炭充填層の使用温度は、排煙中の除去せんとする異なる成分の吸着温度に対応させて設定してなることを特徴とする燃焼炉の排煙処理装置。
  3. 前記活性炭充填層の使用温度を前記排煙の流れ方向に順次低い温度に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の燃焼炉の排煙処理装置。
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