JP3595552B2 - ヘレグリンの構造、生産および用途 - Google Patents

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Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、細胞の増殖に関連するレセプターに結合するポリペプチドリガンドに関するものである。特に本発明は、p185HER2レセプターに結合するポリペプチドリガンドに関するものである。
背景および関連文献の説明
細胞のプロトオンコジーンは、正常な細胞の増殖および分化を調節すると考えられている蛋白をコードしている。それらの構造におけるまたはそれらの発現の増幅における変化は、異常な細胞増殖を導き、発がんに関連している[JM・ビショップ、サイエンス(Science)235巻305−311ページ(1987)];[JS・リムス、キャンサー・ディテクション・アンド・プリベンション(Cancer Detection and Prevention)11巻139−149頁(1988)];[PC・ナウウェル、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)46巻2203−2207頁(1986)];[GL・ニコルソン、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)47巻1473−1487頁(1987)]。プロトオンコジーンは二つの試みによって最初に同定された。第一に、形質転換するレトロウイルスのゲノムの分子的性格決定により、ウイルスの形質転換能の原因となる遺伝子は、多くの場合、正常細胞のゲノム中に見いだされる遺伝子の変形であることが示された。正常型がプロトオンコジーンであり、これは突然変異によって腫瘍遺伝子を生ずる。このような遺伝子対の一例は、EGFレセプターおよびv−erb−B遺伝子産物によって示される。ウイルスによってコードされたv−erb−B遺伝子産物は、先端の切除およびこれを構造的に活性とし且つこれに細胞の形質転換誘発能力を与えるその他の変化を受ける[ヤーデン等、アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)57巻443−478頁、1988]。
優勢に働く細胞の形質転換遺伝子を検出する第二の方法は、様々な種の腫瘍細胞由来の細胞DNAをヘテロローガスな種の非形質転換標的細胞中にトランスフェクトさせることを含む。これは、ヒト、トリ、またはラットのDNAをマウスNIH3T3セルラインにトランスフェクトさせることによってなされることが最も多い[JM・ビショップ、サイエンス(Science)235巻305−311頁(1987)];[JS・リムス、キャンサー・ディテクション・アンド・プリベンション(Cancer Detection and Prevention)11巻139−149頁(1988)];[PC・ナウウェル、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)46巻2203−2207頁(1986)];[GL・ニコルソン、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)47巻1473−1487頁(1987)];[ヤーデン等、アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)57巻43−478頁、1988]。数サイクルのゲノムDNAの分離および再トランスフェクションの後、このヒトまたは他の種のDNAは、マウスのバックグラウンドから分子クローニングされ、続いて性格決定された。幾つかの場合、形質転換ウイルスの直接的性格決定によって同定されたものと同じ遺伝子が、トランスフェクションおよびクローニング後に分離された。別の場合には新規な腫瘍遺伝子が同定された。このトランスフェクション検定によって同定された新規な腫瘍遺伝子の一例は、neu腫瘍遺伝子である。これはウェインバーグとその仲間によって、出発DNAが、発癌物質により誘発されたラットの神経芽腫から誘導されている、トランスフェクション実験中に発見された[パディー等、セル(Cell)28巻865−871頁(1982)];[シェヒター等、ネイチャー(Nature)312巻513−516頁(1984)]。このラットneu腫瘍遺伝子の性格決定により、これが成長因子レセプターチロシンキナーゼの構造を有すること、EGFレセプターとの相同性を有すること、そして、これはその貫膜ドメインにおける突然変異を活性化するという点で正常遺伝子neuプロトオンコジーンと異なっていることが明らかとなった[バーグマン等、セル(Cell)45巻649−657頁(1986)]。neuに対するヒトの相当物がHER2プロトオンコジーンであり、c−erb−B2とも呼称される[クッセンズ等、サイエンス(Sciece)230巻1137−1139頁(1985)]、WO89/06692]。
HER2プロトオンコジーンと癌とのつながりは、さらに第三の試み、即ちヒト乳癌とのつながりによって確立された。HER2プロトオンコジーンは、EGFレセプターとの相同性によってcDNAライブラリー中で最初に発見され、これは全体的に構造上の類似性をEGFレセプターと共有している[ヤーデン等、アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)57巻443−478頁(1988)]。p185HER2をコードしているcDNA配列から誘導される放射性プローブを、乳癌患者由来のDNA試料のスクリーニング使用した場合、この患者の試料の約30%にHER2プロトオンコジーンの増幅が観察された[スラモン等、サイエンス(Science)235巻177−182頁(1987)]。さらなる研究により、この最初の観察が確認され、そしてこれが、HER2プロトオンコジーンの増幅および/または過剰発現と、卵巣腫瘍および非小細胞肺癌における予後不良との間の重要な相関を示唆するまでに拡大された[スラモン等、サイエンス(Science)244巻707−712頁(1989)];[ライト等、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)49巻2087−2090頁(1989)];パイク等、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J.Clin.Oncology)8巻103−112頁(1990)];バーチャック等、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)50巻4087−4091頁(1990)];ケム等、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)50巻5184−5191頁(1990)]。
上記のように、HER2の増幅/過剰発現と攻勢な悪性腫瘍との関連は、それがヒトの癌の進行において重要な役割を有しているかも知れないことを意味している。しかしながら、多くの腫瘍関連細胞表面抗原が過去に述べられているが、疾病の発生または進行において直接的役割を有すると思われるものは殆ど無い[シュローム等、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)50巻820−827頁(1990)];[スザーラ等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)98巻3542−3546頁]。
このプロトオンコジーンのなかに、細胞質蛋白の内質のキナーゼ燐酸化を介して働く細胞成長因子をコードしているものがある。HER1遺伝子(またはerb−B1)は表皮成長因子(EGF)レセプターをコードしている。血小板由来成長因子のβ鎖はc−sis遺伝子によってコードされている。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子はc−fms遺伝子によりコードされている。neuプロトオンコジーンはエチルニトロソウレアにより誘導されるラットの神経芽腫中に同定された。HER2遺伝子は、ヒト表皮成長因子レセプターに対する相同性を有する、1255個のアミノ酸の、チロシンキナーゼレセプター様糖蛋白p185HER2をコードしている。
既知のレセプターチロシンキナーゼは全て同じ一般的構造モチーフ:リガンドを結合する細胞外ドメイン、およびシグナルの形質導入および形質転換に必要な細胞内チロシンキナーゼドメイン、とを持っている。これら二つのドメインは、貫膜連結配列と呼ばれる、殆どは疎水性のアミノ酸からなるおよそ20個のアミノ酸のひと続きによって連結している。この間膜連結配列は、リガンドの結合によって生成するシグナルを細胞の外部から内部へ移動させる役割を果たしていると考えられている。この一般的構造と一致して、細胞表面に位置するヒトp185HER2糖蛋白は、三つの主要な部分:細胞外ドメイン、またはECD(XCDとしても知られる);貫膜連結配列;および細胞質の細胞内チロシンキナーゼドメインに分けられる。この細胞外ドメインはリガンドレセプターであると推定されるが、p185HER2リガンドはまだ明確に同定されていない。
ルプ等[サイエンス(Science)249巻1552−1555頁(1989)]が、p185HER2に対する推定的リガンドであると言われている、ヒト乳癌細胞から分泌される30kDaの阻害性糖蛋白を記載してはいるが、p185HER2に結合する特異的リガンドは同定されていない。ルプ等[サイエンス(Science)249巻1552−1555頁(1990);プロシーディングズ・オブ・ジ・アメリカン・アソシエーション・フォア・キャンサー・リサーチ(Proceedings of the American Assoc.for cancer Research)32巻、抄録297頁、1991年3月]は、MDA−MB−231細胞から30kDの因子を、そしてSK−BR−3細胞からp185HER2を刺激する75kDの因子を精製したと報告した。報告によると、この75kDの因子はp185HER2の燐酸化を誘導し、p185HER2レセプターを過剰発現するSK−BR−3細胞のコロニー形成および細胞増殖を調節する。30kDの因子はp185HER2との結合に関してmuMab 4D5と競合し、SK−BR−3細胞に及ぼすその成長効果は30kDの濃度に依存する(低濃度では刺激的であり高濃度では阻害的)。さらに、これはMDA−MB−468細胞の増殖を刺激し(EGF−R陽性、p185HER2陰性)、これはEGFレセプターの燐酸化を刺激し、そしてこれはSK−BR−3細胞から得ることができる。ラットのneu系において、ヤーデン等[バイオケミストリー(Biochemistry)30巻3543−3550頁、1991]は、neuに対する候補リガンドである35kDaの糖蛋白が、ラス形質転換繊維芽細胞により分泌されるレセプターをコードしていることを記載している。ドバシ等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)88巻8582−8586頁(1991);バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)179巻1536−1542頁(1991)は、ヒトT細胞セルラインATL−2により分泌され、8−24kDの範囲の分子量を有するneu蛋白特異的活性化因子(NAF)を記載した。活性化されたマクロファージ由来の25kDのリガンドもまた記載された[タラコフスキー等、ジャーナル・オブ・キャンサー・リサーチ(J.Cancer Res.)2188−2196頁(1991)]。
HER2特異的モノクローナル抗体を用いる腫瘍のインビボ検定の方法およびHER2特異的モノクローナル抗体を用いる腫瘍細胞の処置方法が、WO89/06692号に記載されている。
p185HER2を活性化する実際のリガンドを同定することに対する、そして細胞増殖および分化、細胞の形質転換ならびに悪性新生物の創生におけるそれらの役割を包含するそれらの生物学的役割を同定することに対する、当分野における現存するそして持続する必要性が存在する。
したがって、p185HER2を結合しこれを刺激する1またはそれ以上の新規なp185HER2リガンドポリペプチドを同定し精製することが本発明の一つの目的である。
さらなる目的は、新規なp185HER2結合リガンドポリペプチドをコードしている核酸を提供すること、そしてこの核酸を使用して、治療的または診断的用途のために、そして、腫瘍および腫瘍発生性細胞の死滅、阻害および/または診断的イメージングを包含する(しかし、必ずしもこれらに限定されるわけではない)ある種の代謝異常に使用するための治療的アンタゴニストを製造するために、p185HER2結合リガンドポリペプチドを組替え細胞培養中で産生することである。
さらなる目的は、アミノ酸配列変異体、p185HER2結合リガンドとヘテロローガスな蛋白とが結合した融合ポリペプチド、およびp185HER2結合リガンドの共有結合誘導体を包含する、新規な糖蛋白リガンドの修飾型および誘導体を提供することである。
さらに別の目的は、p185HER2結合リガンドに対する抗体を作製させるための免疫源を製造すること、ならびに、係るリガンドに結合することのできる抗体、および、p185HER2結合リガンドに結合し該リガンドがp185HER2を活性化するのを妨げる抗体を取得することである。さらなる目的は、免疫原性のヘテロローガスなポリペプチドと融合したp185HER2結合リガンドを含む免疫原を製造することである。
これらのおよび他の本発明の目的は、本明細書を全体として考慮する場合、当業者には明らかとなろう。
発明の要約
本発明の目的に従い、本発明者等は、p185HER2に結合する新規なリガンドファミリーを同定し分離した。これらのリガンドはヘレグリン(HRG)ポリペプチドと命名され、HRG−α、HRG−β1、HRG−β2、HRG−β3、および、これらのファミリーの成員に対する抗体と交叉反応し、そして/または下に定義されるように実質上ホモローガスである、他のHRGポリペプチドを包含する。好ましいHRGは、HRG−αと呼称される図4に開示されるリガンドおよびそのフラグメントである。その他の好ましいHRGは、図8に開示されHRG−β1と呼ばれるリガンドおよびそのフラグメント、図12に開示されるHRG−β2、および図13に開示されるHRG−β3である。
別の態様において、本発明は、その供給される環境から分離されるHRGを含む組成物、特にヒトポリペプチドに汚染されていないHRGを提供する。HRGは、ヘパリンセファロースへの吸収、陽イオン(例えばポリアスパラギン酸)交換樹脂、および逆相HPLCによって精製される。
HRGまたはHRGフラグメント(これはインビトロ法によっても合成され得る)を免疫原性ポリペプチドと融合(組み替え発現またはインビトロペプチド結合によって)し、次いでこの融合ポリペプチドを、HRGエピトープに対する抗体の作製に使用する。抗HRG抗体は、免疫された動物の血清から回収する。別法として、インビトロの細胞から、またはインビボの免疫した動物から、常法によってモノクローナル抗体が製造される。常套的スクリーニングにより同定された好ましい抗体は、HRGに結合するが、EGFのような他の既知のリガンドのいずれとも実質上交叉反応せず、HRGがp185HER2を活性化するのを防止するであろう。さらに、HRGファミリーの個々のファミリー成員、例えばHRG−α、HRG−β1、HRG−β2、HRG−β3と特異的に結合することができ、それにより、それらの特異的アンタゴニストとして働くことのできる、抗HRG抗体が選択される。
HRGはまたインビトロで誘導体化されて、特にHRGまたはその抗体の診断目的のため、またはHRG抗体の親和精製のために、固定化HRGおよび標識されたHRGが製造される。固定化抗HRG抗体は、HRGの診断(インビトロまたはインビボ)または精製に有用である。或る好ましい態様において、HRGおよび他のペプチドの混合物をカラムに通し、これに抗HRG抗体を結合させる。
HRGの置換、欠失または挿入変異体をインビトロまたは組み替え法によって製造し、例えば天然型HRGとの免疫交叉反応性について、そしてHRGアンタゴニストまたはアゴニスト活性について、スクリーニングする。
別の好ましい態様において、正常細胞中のp185HER2の活性を刺激するためにHRGを使用する。また別の好ましい態様においては、HRGの変異体をp185HER2の刺激を阻害するアンタゴニストとして使用する。
HRG、その誘導体、またはその抗体は、特に治療用途のために、生理学的に許容し得る媒質中に配合される。係る媒質は、HRGまたはHRG変異体の持続放出製剤を包含する。HRGおよび薬学上許容し得る担体からなる組成物、ならびにヘテロローガスなポリペプチドに融合したHRGを含む単離されたポリペプチドもまた提供される。
さらに別の態様において、本発明は、HRGをコードしている単離された核酸(ここでこの核酸は検出可能な基によって標識されてもされていなくてもよい)、および、HRGをコードしている核酸配列に対し相補的、またはこれと緊縮条件下でハイブリダイズする核酸配列を提供する。
この核酸配列は、さらに、HRGをコードしている(またはそれに相補的な)DNA(またはRNA)を被験試料の核酸にハイブリダイズさせ、HRGの存在を決定することからなる、HRGの存在を決定する方法において、そしてHRG核酸のためのハイブリダイゼーション検定において、有用である。さらに本発明は、核酸ポリメラーゼ(連鎖)反応をHRGをコードしている(またはそれに相補的な)核酸(DNAまたはRNA)で開始することからなる、核酸被験試料の増幅方法を提供する。
さらに別の態様において、この核酸はDNAであり、さらに、ベクターにより形質転換される宿主によって認識される調節配列と操作可能に連結したHRGをコードしている核酸を含む複製可能なベクター;該ベクターにより形質転換された宿主細胞;ならびに、形質転換された宿主細胞の培養中でHRG核酸を発現させ、その宿主細胞培養からHRGを回収することからなる、HRGをコードしている核酸を用いてHRGの産生をさせる方法を含む。
さらなる態様において、本発明は、HRGを産生させる方法であって、転写調節要素を、HRG核酸に対してその転写に影響を及ぼす(抑制または刺激)に充分な近さおよび方向で、HRGをコードしている核酸を含む細胞のDNA中に挿入し、所望により、さらに、この転写調節要素およびHRG核酸を含む細胞を培養する工程を含む、HRGの産生方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、HRGをコードしている核酸と、HRG核酸に対して、その転写に影響を及ぼす充分な近さおよび方向にある外因性転写調節要素とをコードしている核酸を含む細胞;ならびに、宿主細胞により認識される外因性調節配列と操作可能に連結したHRGをコードしている核酸を含む宿主細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1 ポリアスパラギン酸カラム上でのヘレグリンの精製。
ヘレグリン−αのポリアスパラギン酸カラムクロモグラフィーを実施し、蛋白の溶出プロフィルをA214において測定した。ヘパリンセファロース精製工程からの0.6M NaClプールを水で0.2M NaClに希釈し、30%エタノールを含む17mM燐酸Na、pH6.8に平衡化したポリアスパラギン酸カラムにロードした。0.3から0.6Mに至るNaClの直線勾配を時刻0で開始し、時刻30分で終了した。画分をHRGチロシン自己燐酸化検定で試験した。ピークCに対応する画分を、C4逆相HPLCでさらに精製するためにプールした。
図2 ヘレグリン−2のC4逆相精製。
A図:ポリアスパラギン酸カラムからのプールCを、0.1%TFAで平衡化したC4HPLCカラム(シンクロパックRP−4)に適用し、蛋白を0.25%/分のアセトニトリル直線勾配で溶出した。C4−17と番号を付した実施の吸収の軌跡を示す。1mlの画分を検定のために集めた。
B図:画分の10μl等分試料をHRGチロシン自己燐酸化検定で試験した。p185HER2蛋白中のホスホチロシンのレベルを特異的抗ホスホチロシン抗体によって定量し、横座標上に自由裁量による単位で示した。
C図:10μlの画分を取り、レムリ[ネイチャー(Nature)227巻680−685頁、1970]の方法に従って、4−20%アクリルアミド勾配のゲル上でSDSゲル電気泳動に付した。標準蛋白の分子量を、標準を含む列の左に示す。画分17に見いだされるチロシン燐酸化活性の最大ピークは、顕著な45000Daのバンドを伴った(HRG−α)。
図3 ヘレグリン−αの精製を示すSDSポリアクリルアミドゲル。
分子量マーカーを第1列に示す。MDA−MB−231条件培地からの等分試料(第2列)、ヘパリンセファロースカラムからの0.6M NaClプール(第3列)、ポリアスパラギン酸カラムからのプールC(第4列)およびHPLCカラムからの画分17(C4−17)(第5列)を4−20%勾配のゲル上で電気泳動し、銀染色した。第6列および第7列は緩衝液のみを含み、50−65KDa分子量領域にゲルアーティファクトの存在を示す。
図4a−4dは、λgt10her16に含まれるcDNAの推定アミノ酸配列を示す(配列番号12および配列番号13)。ヌクレオチドは各行の上部左に番号を付し、三文字コードで書かれたアミノ酸は各行の下部左に番号を付した。プローブに対応するヌクレオチド配列はヌクレオチド681−720である。予想される貫膜ドメインはアミノ酸287−309である。EGFモチーフの6個のシステインは226、234、240、254、256および265である。3個のアミノ酸からなるN−連結グリコシル化サイトであると思われる5つの箇所は、164−166、170−172、208−210、437−439および609−611である。可能性あるセリン−スレオニンO−グリコシル化サイトは209−221である。セリン−グリシンジペプチドの可能性あるグリコサミノグリカン付加サイトはアミノ酸42−43、64−65および151−152である。開始メチオニン(MET)は図4の#45位にあるが、処理を受けるN末端残基はS46である。
図5 MDA−MB−231およびSKBR3 RNAのノーザンプロット分析。
左から右に名称を付したのは以下の通りである:1)MDA−MB−231ポリAマイナス−RNA(ポリA含有RNAを除去した後に残るRNA);2)MDA−MB−231ポリAプラス−mRNA(ポリAを含むRNA);3)SKBR3ポリAマイナス−RNA;および、4)SKBR3ポリAプラス−mRNA。この分析に使用したプローブは、λgt10her16のcDNA部分からの放射標識された(32P)内部xho1DNA制限エンドヌクレアーゼフラグメントであった。
図6 蛋白のEGFファミリーにおける配列比較。
システインドメインのまわりの幾つかのEGF様蛋白の配列(配列番号14、15、16、17、18、および19)をHRG−αの配列と共に並べる。図6におけるシステインの配列ならびに238位および264位の非変異グリシンおよびアルギニンは、HRG−αがEGFファミリーの一員であることを明確に示している。図6中、HRG−αに対してこのファミリー成員のアミノ酸一致が最も高い(30−40%)領域は、Cys234およびCys265の間に見いだされる。最大の一致(40%)は、ヘパリン結合EGF(HB−EGF)種にある。HRG−αはCys240およびCys254の間に特異な3個のアミノ酸挿入を有する。可能性ある貫膜ドメインは四角で囲んである(287−309)。縦線はEGFおよびTGF−αについてのカルボキシ末端サイトを示し、ここで蛋白分解的開裂により、成熟した成長因子がその貫膜付随プロ型から分離される。HB−EGFはヘパリン結合表皮成長因子であり;EGFは表皮成長因子であり;TGF−αはトランスフォーミング成長因子αであり;そして神経鞘腫は神経鞘腫由来の成長因子である。図6中の残基番号は図4の規定を反映している。
図7 HRG−αによる細胞増殖の刺激。
三つの異なったセルラインを1nMのHRG−αに対する増殖応答について試験した。細胞蛋白はクリスタルバイオレット染色により定量し、応答は、対照、非処置細胞に対して正規化した。
図8a−8d(配列番号7)は、ヘレグリン−β1の予想されるコード化DNAヌクレオチド配列の全体、および、λher11.1dbl中に含まれるcDNAの推定アミノ酸配列(配列番号9)を示している。ヌクレオチドは各行の上部左に番号を付し、三文字コードで書かれたアミノ酸は各行の下部左に番号を付した。予想される貫膜アミノ酸ドメインはアミノ酸278−300である。EGFモチーフの6個のシステインは212、220、226、240、242および251である。3個のアミノ酸からなるN−連結グリコシル化サイトであると思われる5つの箇所は、150−152、156−158、196−198、428−430および600−612である。可能性あるセリン−スレオニンO−グリコシル化サイトは195−207である。セリン−グリシンジペプチドの可能性あるグリコサミノグリカン付加サイトはアミノ酸28−29、50−51および137−138である。開始メチオニン(MET)は#31位にある。HRG−β1はN末端残基32に対して処理を受ける。
図9は、ヘレグリン−αおよび−β1のアミノ酸配列の比較を示す。横線(−)は、その位置にアミノ酸が無いことを示す。(配列番号8および配列番号9)。この図は図4および6の番号付けの規定を使用している。
図10は、HER2チロシン燐酸化により測定される、組み替えHRG−αを用いたHER2自己燐酸化の刺激を示している。
図11は、λ15'her13のヌクレオチドおよび入力されたアミノ酸配列(配列番号22)を示す。アミノ酸残基の番号付けの規定はこの図面に独特のものである。
図12a−12eは、ヘレグリン−β2(配列番号23)をコードしているλher76のヌクレオチド配列を示している。この図はアミノ酸残基の番号付けが、発現されるN末端METで始まっている。N末端はS2である。
図13a−13cは、ヘレグリン−β3(配列番号24)をコードしているλher78のヌクレオチド配列を示している。この図は、図12のアミノ酸番号付けの規定を用いている。S2は処理を受けるN末端である。
図14a−14dは、ヘレグリン−β2様ポリペプチド(配列番号25)をコードしているλher84のヌクレオチド配列を示している。この図は、図12のアミノ酸番号付けの規定を用いている。S2は処理を受けるN末端である。
図15a−15cは、既知のヘレグリン類(上から順にα、β1、β2、β2様およびβ3)間のアミノ酸相同性を示し、異なった型を識別するアミノ酸の挿入、欠失または置換を例示している(配列番号26−30)。この図は図12−14のアミノ酸番号付けの規定を用いている。
好ましい態様の詳細な説明
I. 定義
一般に、以下の語または句は、本明細書中の記載、実施例および請求の範囲に使用される時、示される定義を有する。
ヘレグリン(「HRG」)は、本明細書中、図4、8、12、13、または15に開示されるポリペプチド、およびフラグメント、対立遺伝子またはその動物の類似体の生物活性を有する任意の単離されたポリペプチド配列、またはそれらの動物の類似体であると定義される。HRGは、35U.S.C.102の下で予想される既知の任意のポリペプチドを包含する、これまでに同定されている任意のポリペプチド、および、特にEFG、TFG−α、アムフィレグリン[プラウマン等、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell.Biol.)10巻1969頁(1990)]、HB−EGF[ヒガシマヤ等、サイエンス(Science)251巻936頁(1991)]、神経鞘腫因子またはそれらにより自明のポリペプチドを包含する、35U.S.C.103の下で係る既知のポリペプチドにより自明のポリペプチド、を除外するものである。
本明細書中の目的のための「生物活性」とは、HRGポリペプチド(天然であるか変性した配座であるかに拘らず)により、またはその結果により、直接または間接的に遂行されるインビボエフェクターまたは抗原機能を意味する。エフェクター機能は、現在知られているか固有のものであるかに拘らず、レセプターの結合または活性化、分化の誘導、分裂促進もしくは増殖促進活性、免疫モジュレーション、DNA調節機能等を包含する。抗原機能は、天然に存在する、または変性したHRGポリペプチドまたはそのフラグメントに対して産生された抗体と交叉反応することのできる抗原サイトまたはエピトープの所有を包含する。
生物活性なHRGは、エフェクターおよび抗原機能の両者、または係る機能のうち一つだけを有するポリペプチドを包含する。そのアンタゴニストが天然HRGのエピトープを含むならば、HRGはHRGに対するアンタゴニストポリペプチドを包含する。HRGの主たる既知のエフェクター機能は、p185HER2に結合し、レセプターチロシンキナーゼを活性化する能力である。
HRGは、それらが生物活性を有するならば、本明細書中の図面に開示されるヒトHRGの全長(プロHRG)の翻訳されたアミノ酸配列;脱グリコシル化または非グリコシル化誘導体;アミノ酸配列変異体;およびHRGの共有結合誘導体を包含する。HRGの天然のプロ型は恐らくは膜に結合したポリペプチドであると思われるが、機能的貫膜ドメインを欠く型(プロHRGまたはそのフラグメント)のような可溶性の型もまたこの定義内に包含される。
無傷のHRGのフラグメントはHRGの定義内に包含される。二つの主要なドメインがこのフラグメントの中に含まれる。これらは、EGFファミリーにホモローガスな成長因子ドメイン(「GFD」)であって、大体残基S216−A227ないしN268−R286に位置する(図9、HRG−α;他のHRGについてのGFDドメイン(図15)はホモローガスな配列である)。好ましくは、HRG−α、β、β、β様およびβについてのGFDは、それぞれG175−K241、G175−K246、G175−K238、G175−K238およびG175−E241(図15)である。
興味のもたれるもう一つのフラグメントはN末端ドメイン(「NTD」)である。NTDは、処理を受けるHRG(S2)のN末端から、GFDのN末端残基に隣接する残基、即ち、ほぼT172−C182(図15)および好ましくはT174まで伸長している。さらなるフラグメントの群は、HRG−αおよびβ−βの細胞外ドメインと等価なNTD−GFDドメインである。もう一つのフラグメントは、約20残基の、N末端ないし貫膜ドメインの第一残基に、単独で、またはHRGのC末端残部と組み合わさって位置する、C末端ペプチド(「CTP」)である。
好ましい態様において、抗原性の点で活性なHRGは、天然に存在するHRG配列に対して産生された抗体に対して少なくとも約107l/moleの親和性で結合するポリペプチドである。普通、このポリペプチドは少なくとも約108l/moleの親和性で結合する。最も好ましくは、抗原性の点で活性なHRGは、その天然の配座にあるHRGのひとつに対して産生された抗体に結合するポリペプチドである。天然の配座にあるHRGは、一般に、例えば非還元、非変性サイジングゲル上での移動によって決定される、HRGの三次元構造を実質的に修飾する、カオトロピック剤、熱または他の処理によって変性されていない、天然に見いだされるようなHRGである。この測定に使用される抗体は、フロインド完全アジュバント中に、ウサギ以外の種から得た天然HRGを調合し、この調合物をウサギに皮下注射し、そしてこの調合物を、抗HRG抗体の力価がプラトーに達するまで腹腔内注射することにより免疫応答をブースティングすることによって産生される、ウサギポリクローナル抗体である。
通常、生物学的に活性なHRGは、HRG配列と、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列の一致を有する。本明細書中、HRG配列についての一致または相同性は、同一の残基とするための同類置換を考慮することなく、必要ならば、最大の相同性パーセントを達成するための間隙を導入して配列を並べた後の、候補配列中の、図15におけるHRG残基と同一のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。HRG配列へのいかなるN末端、C末端もしくは内部伸長、除去、または挿入も、相同性に影響を及ぼすとはみなされない。
したがって、本発明の主体である生物学的に活性なHRGポリペプチドは、発現されまたはプロセシングされたHRG配列の各々;少なくとも5、10、15、20、25、30または40個のアミノ酸残基の連続配列を有するそれらのフラグメント;1個のアミノ酸残基がHRG配列または上記定義によるそのフラグメントの、またはその内部のNもしくはC末端に挿入されている、HRGのアミノ酸配列変異体;1個の残基が別の残基に置換されている、HRG配列または上記定義によるそのフラグメントのアミノ酸配列変異体、を包含する。HRGポリペプチドは、例えば位置指定突然変異誘発またはPCR突然変異誘発による、予め定められた突然変異を含むものを包含する。HRGは、ウサギ、ラット、ブタ、ヒト以外の霊長類、ウマ、マウス、およびヒツジのような種由来のHRGならびに対立遺伝子または他の天然に存在する前記のものの変異体;HRGまたはそのフラグメントが、置換、化学的、酵素的、またはその他の適当な手段により、天然に存在するアミノ酸以外の基(例えば酵素または放射性同位体のような検出し得る基)で共有結合により修飾されている、HRGの誘導体または上記定義によるそのフラグメント;HRGのグリコシル化変異体(適当な残基の除去、挿入または置換によるグリコシル化部位の挿入またはグリコシル化部位の除去);および、HRGの可溶性型、例えばHRG−GFDまたは機能的貫膜ドメインを欠くもの、を包含する。
特に興味を持たれるのは、HRG−NTDを含むが、問題のHRG−NTDに通常付随するGFDを含まない融合蛋白である。NTDの最初の23個のアミノ酸は荷電した残基により支配されており、核が標的とするための一致配列モチーフに酷似した配列(GKKER;残基13−18、図15)を含んでいる[ロバーツ、ビオキミカ・エトゥ・ビオフィジカ・アクタ(Biochim.Biophys.Acta.)1008巻263頁(1989)]。したがって、HRGは、NTD、または少なくともその最初の約23残基を含むポリペプチドが、末端において非HRGポリペプチドまたは他のHRGファミリー成員のGFDと融合している融合を含む。この態様における非HRGポリペプチドは、調節蛋白、EGFもしくはTGF−αのような成長因子、または細胞レセプター、特にその調節が望まれる細胞、例えば癌細胞の表面に見いだされる細胞表面レセプターに結合するポリペプチドリガンドである。
別の態様において、残基13−18の1またはそれ以上が個別に異なって、核が標的にすることのできない配列を生成する。例えば、G13が、P、L、I、V、A、M、F、K、DまたはSを包含する他の天然に存在する残基のいずれかに突然変異し;K14−K16のいずれか1個またはそれ以上が、R、H、D、E、NまたはQを包含する他の天然に存在する残基のいずれかに突然変異し;E17が、D、R、K、H、NまたはQを包含する他の天然に存在する残基のいずれかに;そしてR18が、K、H、D、E、NまたはQを包含する天然に存在する残基のいずれかに突然変異する。残基13−18の全てまたはいずれか1個が同様に除去され、または外来の残基がこれらの残基と隣接して挿入される;例えば、残基13−18に隣接して挿入される残基は、残基それ自身としては上に示唆された置換と同一である。
別の態様においては、酵素または転写調節因子のような核調節蛋白を、HRG−NTD、HRG−NTD−GFD、またはHRG−GFDと融合する。この酵素または因子はNもしくはC末端に融合し、またはNTDおよびGFDドメインの間に挿入され、または最初の約23残基とGFDとの間のNTDの領域と置換される。
「単離された」HRGとは、同定され、その天然環境の構成成分を含まないHRGを意味する。その天然環境の汚染成分は、HRGの診断的または治療的使用を妨害する物質を包含し、蛋白、ホルモン、およびその他の物質を包含する。好ましい態様において、HRGは、(1)ローリー法または他の有効な蛋白測定法により測定される、95%(重量)以上の蛋白、最も好ましくは99%(重量)以上の蛋白にまで、(2)本出願の出願日において市場にある最も優れた市販のアミノ酸配列決定機の使用により、少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列が得られるに充分な程度まで、または、(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いるSDS−PAGEによる等質性が得られるまで、精製する。単離されたHRGは、少なくとも一つのHRG天然環境構成成分も存在しないのであるから、ヘテロローガスな組み替え細胞内のインサイトゥのHRGを包含する。単離されたHRGは、或る生物種の組み替え細胞培養中の、別な生物種由来のHRGを包含する。何故ならこのような状況のHRGには原ポリペプチドが無いからである。しかしながら、通常は、単離されたHRGは少なくとも一つの精製工程によって調製されるであろう。
本発明によれば、HRG核酸は、生物学的または抗原的に活性なHRGをコードしており、または係るHRGをコードしている核酸配列に対し相補的であり、または係るHRGをコードしている核酸配列とハイブリダイズして緊縮条件下でこれと安定に結合し続ける、10以上の塩基を含むRNAまたはDNAである。
好ましくは、HRG核酸は、HRG配列と、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは90%、そして最も好ましくは95%の配列の一致を示すポリペプチドをコードしている。好ましくは、ハイブリダイズするHRG核酸は、少なくとも20、より好ましくは少なくとも約40、そして最も好ましくは少なくとも約90個の塩基を含む。しかしながら、このようなハイブリダイズするまたは相補的な核酸は、35U.S.C.102の下で新規であり、且つ35U.S.C.103の下で、いかなる先行文献の核酸からも明白でないものとして定義され、そして、本出願の出願日現在明白である、EGF、TGF−α、アムフィレグリン、HB−EGF、神経鞘腫因子をコードしている核酸またはそのフラグメントもしくは変異体を除外するものである。
単離されたHRG核酸は、通常HRG核酸の天然の供給源に付随する少なくとも一つの汚染核酸をも含まない核酸を包含する。即ち単離されたHRG核酸は、それが天然に見いだされる型または設定以外で存在する。しかしながら、単離されたHRGをコードしている核酸は、通常HRGを発現する細胞中のHRG核酸を包含し、ここでこの核酸は、天然細胞の位置とは異なった染色体位置にあり、またはそうではなく天然に見いだされるDNAとは異なったDNA配列に隣接している。HRGをコードしている核酸、とりわけ他の知られているDNA配列とハイブリダイズしないHRGコード化配列の一部分、例えば図6のEGF様分子をコードしているものは、特異的ハイブリダイゼーション検定に使用することができる。
「緊縮条件」とは、(1)洗浄のために低イオン強度および高温、例えば50℃で0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0/1%NaDodSO4を使用し;(2)ハイブリダイゼーションの間にホルムアミドのような変性剤、例えば、0.1%牛血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、750mMNaCl、75mMクエン酸ナトリウムを含むpH6.5の50mM燐酸ナトリウム緩衝液を添加した50%(容量/容量)ホルムアミドを42℃で使用し;または、;(3)50%ホルムアミド、5xSSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mM燐酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロ燐酸ナトリウム、5xデンハート溶液、超音波処理した鮭精子DNA(50g/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2xSSCおよび0.1%SDS中42℃での洗浄を使用する条件である。
個々のHRG−α核酸は、図4a−4dから選択され17以上の塩基(ヒト小型多分散環状DNA(HUMPC125)、ニワトリc−mosプロトオンコジーン同族体(CHKMOS)、基底膜硫酸ヘパリンプロテオグリカン(HUMBMHSP)およびヒトリポコルチン2偽遺伝子(完全なcds様領域、HUMLIP2B)の核酸配列を除外する場合)、通常20以上の塩基、好ましくは25以上の塩基をその相補的配列と共に含む、またはこれらによって構成される、核酸またはイロゴヌクレオチドである。
個々のHRG−β、−βまたは−β核酸は、図8a−8d、12a−12eまたは13a−13cから選択され20以上の塩基を含むが図面に示される各遺伝子の3'末端に見いだされるポリA配列は含まないヌクレオチド配列を、係る配列の相補物と共に含む、またはこれらによって構成される、核酸またはオリグヌクレオチドである。好ましくは、この配列は25以上の塩基を含む。HRG−β配列はまた、ヒト小型多分散環状DNA配列(HUMP−C125)を除外し得る。
その他の態様において、HRGヌクレオチド配列は、15またはそれ以上の塩基のHRG配列を含み、GFDのN末端から貫膜配列のN末端まで伸長しているHRGドメインをコードしている配列(またはその核酸配列の相補物)の中から選択される。例えば、HRG−αに関しては、このヌクレオチド配列は配列678−869(図4b)の中から選択され、且つHRG核酸のこの部分由来の15またはそれ以上の塩基の配列を含む。
別の態様において、HRG核酸配列は、14塩基以上であり、且つ各サブタイプに特異なヌクレオチド配列、例えばHRGサブタイプの各々に特異なアミノ酸配列をコードしている核酸配列(またはその核酸配列の相補物)から選択される。これらの配列は、種々のサブタイプの発現、およびサブタイプDNAの特異的増幅のための診断的検定に有用である。例えば、目的とするHRG−α配列は、特異なN末端をコードしている配列またはGFD−貫膜結合配列、例えば大体bp771−860から選択されるであろう。同様に、特異なHRG−β配列は、最後の15個のC末端アミノ酸残基をコードしている配列であって、この配列はHRG−αには見いだされない。
一般に、上記の塩基数以上のもの以外のHRG−αまたはβ配列の長さは重要でなく、何故ならこのような核酸はすべてプローブとしてまたは増幅のプライマーとして有用であるからである。選択されたHRG配列は、正常なフランキング配列またはHRG核酸の他の領域のいずれかである、さらなるHRG配列、ならびに他の核酸配列を含むことができる。ハイブリダイゼーションの目的のためにはHRG配列のみが重要である。
「調節配列」という語は、特定の宿主生物において操作可能に連結したコード化配列の発現に必要なDNA配列を意味する。前核性物に好適な調節配列は、例えばプロモーター、所望によりオペレーター配列、リボゾーム結合部位、および恐らくはその他の未だよく理解されていない配列を包含する。真核生物細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、これが他の核酸配列と機能的関係にあるよう位置するとき、「操作可能に連結」している。例えば、前配列または分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に参加するプレ蛋白としてこれが発現されるならば、そのポリペプチドのためのDNAと操作可能に連結しており;プロモーターまたはエンハンサーは、その配列の転写にこれが影響を及ぼすならば、コード化配列と操作可能に連結しており;または、リボゾーム結合部位は、翻訳を促進するようこれが位置するならば、コード化配列と操作可能に連結している。一般に、「操作可能に連結した」とは、連結しているDNA配列が接触しており、そして分泌リーダーの場合は、接触しており且つ読み取り相内にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは接触している必要が無い。連結は、都合の良い制限部位においてライゲーションすることによって達成される。このような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、常法に従って使用する。
「外因性」要素とは、本明細書中、その細胞にとって外来の、またはその細胞に対しホモローガスではあるが通常その要素が見いだされない宿主核酸中の位置にある核酸配列を意味する。
本明細書中使用される「細胞」、「セルライン」、および「細胞培養」とは、互換性をもって使用され、係る表記は全て子孫を包含する。したがって、「形質転換体」および「形質転換された細胞」という語は、第一次当該細胞と、移動の回数に拘らずそれらから誘導された培養を包含する。さらに、全ての子孫は、故意または偶然の突然変異のために、DNA含量が正確に等しいという訳ではない。元の形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能または生物活性を有する突然変異体の子孫が包含される。これは、明確な表示が意図されている文脈から明らかである。
「プラスミド」は、大文字および/または数字が先行する、そして/または後続する、小文字「p」によって示される。本明細書中の出発プラスミドは市販されており、誰でも無制限に入手でき、またはこのような入手し得るプラスミドから、公表されている方法に従って組み立てることができる。これに加えて、他の同等なプラスミドが当分野において知られており、当業者には明らかであろう。
DNAの「制限酵素消化」は、DNAの或る一定の位置にのみ作用する酵素によるDNAの触媒的開裂を意味する。このような酵素は制限エンドヌクレアーゼと呼ばれ、各々が特異的な部位は制限サイトと呼ばれる。本明細書中用いられる種々の制限酵素は市販されており、酵素の供給者により確立されたそれらの反応条件、補助因子、およびその他の必要条件が使用される。一般に制限酵素は、各制限酵素が最初に取得された微生物を表わす大文字とこれに続く他の文字、次いで個々の酸素を指定する数字から構成される略語によって表示される。一般に、約1μgのプラスミドまたはDNAフラグメントを、約20μlの緩衝溶液中の酵素約1−2単位と共に使用する。個々の制限酵素のための適当な緩衝液および基質の量は製造者により特定されている。37℃で約1時間のインキュベーションが通常用いられるが、供給者の指示によって異なることもある。インキュベーションの後、蛋白またはポリペプチドをフェノールおよびクロロホルムによる抽出により除去し、消化された核酸を、エタノールによる沈澱により水性画分から回収する。DNAフラグメントの二つの制限開裂された末端が、制限サイトにおける別のDNAフラグメントの挿入を妨げる「環化」または閉鎖ループの形成を行なうことを防ぐため、制限酵素による消化後に、末端5'燐酸の細菌性アルカリホスファターゼ加水分解を行なうことができる。別途記載の無い限り、プラスミドの消化後に5'末端の脱燐酸化は行なわない。脱燐酸化のための方法および試薬は、サムブルック等[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、ニューヨーク:コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、1989]の1.56−1.61の節に記載されているような、常套的なものである。
「ライゲーション」とは、二つの核酸フラグメントの間にホスホジエステル結合を形成する工程を意味する。DNAフラグメントをライゲーションしてつなぐためには、そのDNAフラグメントの末端が互いに相容れるものでなければならない。幾つかの場合においては、その末端は、エンドヌクレアーゼ消化の後直ちに相容れるものとなる。しかしながら、ライゲーションのために相容れるものとなるようにするためには、通常エンドヌクレアーゼ消化後に生成される互い違いに切断された末端を、まず平滑末端に変換することが必要であるかも知れない。末端を平滑化するためには、そのDNAを適当な緩衝液中、4種のデオキシリボヌクレオチド三燐酸の存在下で、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントまたはT4DNAポリメラーゼ約10単位により15℃で15分間処理する。ついでこのDNAをフェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈澱により精製する。ライゲーションすべきDNAフラグメントは大体当モル量で溶液中に投入する。さらにこの溶液は、ATP、リガーゼ緩衝液、およびT4DNAリガーゼのようなリガーゼを、DNA0.5μg当り約10単位含むであろう。DNAをベクター中にライゲーションしたい場合は、そのベクターをまず適当な制限エンドヌクレアーゼによる消化によって線状とする。次いでこの線状化されたフラグメントを、ライゲーション工程中の自己ライゲーションを防ぐため、細菌性アルカリホスファターゼ、または子牛の腸のホスファターゼで処理する。
本明細書において用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」という技術は、一般に、核酸、RNAおよび/またはDNAの特定な微量の破片を、米国特許第4683195号(1987年7月28日登録)に記載されるように増幅することを意味する。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができるといった、そしてこれらのプライマーが、増幅されるべき鋳型の反対側の鎖と同一または類似の配列であろうといった、目的とする領域の末端からの情報またはそれ以上を得ることが必要である。二つのプライマーの5'末端ヌクレオチドは、増幅されたものの末端と合致し得る。PCRは、特定のRNA配列、総ゲノムDNA由来の特定のDNA配列、および総細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージまたはプラスミドの配列等の増幅に使用することができる。一般には、ミュリス等、コールド・スプリング・ハーバー・シンポジア・オン・クウォンティタティブ・バイオロジー(Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.)51巻263頁(1987);エーリッヒ編、PCRテクノロジー(PCR Technology)、(ストックトン・プレス、ニューヨーク、1989)を参照されたい。本明細書において使用されるPCRは、既知の核酸(DNAまたはRNA)をプライマーとして使用することからなる、被験核酸試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応法の一例であるが、これが唯一の例ではなく、また、核酸の特定の断片を生成させるまたは増幅するために、または特定の核酸に対し相補的な核酸の特定の断片を生成させるまたは増幅するために、核酸ポリメラーゼを利用する。
HRGリガンドの存在を検出するための「HRGチロシン自己燐酸化検定」を使用してp185HER2レセプターに対するリガンドの精製を監視した。この検定は、EGFおよびそのEGFレセプター自己燐酸化の刺激と同様に、p185HER2レセプターに対する特異的リガンドが、該レセプターの自己燐酸化を刺激するであろうという推定に基づいている。高レベルのp185HER2レセプターを含み無視し得るレベルのヒトEGFレセプターしか含まないMDF7細胞またはMDA−MB−453細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、Md.から入手し(ATCC No.HTB−131)、DMEM/HamsF12(1:1)培地中10%牛胎児血清を添加した組織培養中に維持した。検定のためにこの細胞をトリプシン処理し、約150000細胞/ウェルで24ウェルの皿(コスター)に蒔いた。血清含有培地と共に一夜インキュベーションした後、この細胞を検定前に無血清培地に2−18時間置いた。100uL等分被験試料を各ウェルに加えた。この細胞を37℃で5−30分間(典型的には30分間)インキュベートし、培地を除いた。各ウェル中の細胞を100uLのSDSゲル変性緩衝液(セプロゾール、エンポテク、Inc.)で処理し、平板を100℃で5分間加熱して細胞を溶解し蛋白を変性させた。各ウェルからの等分試料を、製造者の指示に従って5−20%勾配のSDSゲル(ノベックス、エンシニタズ、CA)上で電気泳動した。色素の先端がゲルの基部に到着した後に電気泳動を終了し、PVDF膜(プロブロット、ABI)1枚をゲルの上に乗せ、200mAmpのブロッティング室(バイオラド)中で30−60分間、蛋白をゲルから膜に移した。ブロッティングの後、非特異結合をブロックするために、5%BSAを添加した0.1%トゥイーン20デタージェント緩衝液を含有するトリス緩衝化食塩水と共に膜をインキュベートし、次にマウス抗ホスホチロシン抗体(アプステイト・バイオロジカル・Inc.、N.Y.)で処理した。続いて膜のブロットを、アルカリホスファターゼにコンジュゲートさせたヤギ抗マウス抗体で処理した。ゲルはプロメガのプロトブロットシステムを用いて発色させた。膜を乾燥させた後、各試料列のp185HER2に対応するバンドの密度を、マッキントッシュコンピューターに接続したヒューレット・パッカード・スキャンジェット・プラス・スキャナーにより定量した。MDA−MB−453またはMCF 7−細胞における細胞当りのレセプターの数は、これらの実験条件の下でp185HER2レセプター蛋白が、標識された主要な蛋白であるような数であった。
「蛋白微量配列決定」は、以下の方法に基づいて実施した。最終的HPLC工程からの蛋白は、120A PTHアミノ酸分析機を備えたモデル470Aアプライド・バイオシステムズ気相配列決定機を用いた自動エドマン分解によって直列配列決定するか、または種々の化学物質または酵素で消化した後に配列決定する。PTHアミノ酸はクロムパーフェクトデータシステム(ジャスティス・イノベーションズ・パロ・アルト、CA)を用いて統合した。配列の解釈は、VAX11/785ディジタル・イクイップメント・コーポレーションのコンピューターで、記載されるように[ヘンゼル等、ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(J.Chromatography)404巻41−52頁(1987)]実施した。幾つかの場合には、HPLC画分の等分試料を5−20%SDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、PVDF膜(プロブロット、ABI、フォスター・シティー、CA)に電気的に移し、クーマシー・ブリリアント・ブルーで染色した[P.マツダイラ、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)262巻:10035−10038頁、1987]。特異的な蛋白をN末端配列決定のためにブロットから切り取った。内部蛋白の配列決定のために、HPLC画分を減圧で乾燥し(スピードバク)、適当な緩衝液に再懸濁し、そして臭化シアン、リジン特異的酵素Lys−C(ワコー・ケミカルズ、リッチモンド、VA)またはAsp−N(ベーリンガー・マンハイム、インディアナポリス、Ind.)で消化した。消化後得られたペプチドを混合物として配列決定するか、または、0.1%TFA中のプロパノール勾配で展開するC4カラム上のHPLCにより分離した後、上記のように配列決定した。
II. HRGポリペプチドの使用および調製。
1.変異体を含むHRGポリペプチドの調製。
HRGポリペプチドの調製に用いられる系は、選択される個々のHRG配列による。その配列が充分小さい場合は、HRGはインビトロポリペプチド合成法によって調製される。しかしながら最も一般的には、HRGは、下記の宿主−ベクター系を用いる組み替え細胞培養で調製する。
一般に、哺乳動物の宿主細胞が使用され、このような宿主は、普通の方法においてHRGプロ配列をプロセシングするための翻訳後の系を含んでも含まなくてもよい。もし宿主細胞がこのような系を含むならば、HRG−GFDまたはHRG−NTD−GFDのような天然のサブドメインフラグメントを培養から回収することが可能であろう。もし含まないならば、必要とされる酵素で宿主を形質転換することにより、またはインビトロで前駆体を開裂させることにより、適正なプロセシングを達成することができる。しかしながら、HRG−GFDのようなHRG配列のフラグメントの産生のみを所望とする場合は、選択されたHRGのための完全なプロ配列をコードしているDNAで細胞を形質転換する必要はない。例えばHRG−GFDを調製するためには、出発コドンをHRG−GFDをコードしているDNAの5'末端にライゲーションし、このDNAを使用して宿主細胞を形質転換すると、生成物がMet N末端型として直接発現される(所望ならば余計なMetをインビトロでまたは内性N末端デメチオニラーゼにより除去することができる)。別法として、HRG−GFDは宿主細胞により認識されるシグナル配列との融合物として発現され、これは、下にさらに記載されるように、成熟HRG−GFDをプロセシングし分泌する。天然HRG−GFD配列のアミノ酸配列変異体は同じように産生される。
HRG−NTDは、S172−C182のうちの一つの後ろの停止コドンを有する、HRG−NTDのみをコードしているDNAの発現から生成される事以外は、全長の分子と同じやり方で生成される(図15)。
これに加えて、HRG変異体は、GFDおよびNTD両者のドメインがそれらの適正な方向を向いているが、NTD−GFD連結サイトにおける(例えば配列S172−C182の中に位置する)アミノ酸の挿入、欠室または置換を含む、蛋白をコードしているDNAから発現される。別の態様においては、停止コドンがNTD−GFDコード化配列の3'末端に位置する(図15の任意の残基T/Q222−T245の後)。その結果が、貫膜配列を欠くHRG−αまたは−βまたは−βの可溶性型である(この配列は内部シグナル配列でもあるが、貫膜配列と称される)。この態様のさらなる変形において、天然HRG貫膜ドメインを別のポリペプチドの内部シグナル配列で置換し、または、別の細胞膜ポリペプチド、例えばレセプターキナーゼでHRG−αまたはHRGβ−β細胞質ペプチドを置換する。
さらに別の態様において、HRGおよび他のEGFファミリー成員のNTD、GFDおよび貫膜ドメインを互いに置換、例えばEGFのNTD相当領域でHRGのNTDを置換し、または、HRGのGFDで、プロセシングされた可溶性プロ型であるEGFを置換する。別法として、HRGまたはEGFファミリー成員の貫膜ドメインを、HRG−βのC末端E236上に融合させる。
さらなる変異体において、K241からC末端にわたるHRG配列をそのN末端において非HRGポリペプチドのC末端に融合させる。
別の態様は、CTP、GFD−貫膜連結ドメイン中の蛋白分解的プロセシングサイトの機械的または構造的除去を含む。例えば、プロセシングされたHRG−αまたはβ−βの推定C末端リジン(K241)を除去し、別の残基、K241およびR242の間に挿入されるKまたはR以外の残基で置換し、またはその他の損傷性突然変異をプロ配列に施す。
別の態様において、(b)C221に対応する(a)そのシステインから該ファミリー成員のC末端残基にまで伸長している任意のEGFファミリー成員のドメインで、HRG−αまたは−βまたは−βの類似ドメインを置換する(またはHRG−βのC末端に融合させる)。このような変異体は、親HRGとではなくそのファミリー成員と同じやり方で宿主細胞を離れてプロセシングされるであろう。より洗練された態様においては、他の特異的開裂サイト(例えばプロテアーゼサイト)が、CTPまたはGFD−貫膜連結ドメイン(大体残基T/Q222−T245、図15)中に置換される。例えば、アムフィレグリン配列E84−K99またはTGFα配列E44−K58でHRG−α残基E223−K241を置換する。
さらなる態様において、変異体(HRG−NTDxGFDと称する)を製造するが、ここで(1)NTD−GFD結合配列VKC(残基180−182、図15)中に見いだされるリジン残基を除去し、または(好ましくは)R以外の別の残基、例えばH、A、TまたはSにより置換し、そして、(2)配列RCTまたはRCQ(残基220−222、図15)中、C、もしくはT(HRG−αに対して)またはQ(HRG−βに対して)の代わりに停止コドンを導入する。
p185HER2に対する結合親和性を有する好ましいHRG−αリガンドは、図4のアミノ酸226−265を含む。このHRG−αリガンドは、さらに、図4からのアミノ酸226に先行する追加の1−20のアミノ酸、および図4からのアミノ酸265に続く1−20のアミノ酸までを含み得る。p185HER2に対する結合親和性を有する好ましいHRG−βリガンドは、図8のアミノ酸226−265を含む。このHRG−βリガンドは、図8からのアミノ酸226に先行する追加の1−20のアミノ酸、および図8からのアミノ酸265に続く1−20のアミノ酸までを含み得る。
GFD配列は、EGFファミリーの他の成員に対応する1またはそれ以上の残基が除去されもしくは置換されまたはそれに隣接して挿入された残基を有する配列を包含する。例えば、HRGのF216がYにより置換され、L202がEで、F189がYで置換され、またはS203−P205が除去される。
HRGはさらに、最初の約1ないし3細胞外ドメイン残基(QKR、残基240−243、HRE−α、図15)または最初の約1−2貫膜領域残基のうちの一つの位置に、そのC末端を有しているNTD−GFDを包含する。これに加えて、幾つかのHRG−GFD変異体においては、コドンがGFD−トランスメンバープロ蛋白分解サイトにおいて、置換、挿入または欠失により修飾されている。GFD蛋白分解サイトは、GFDのC末端残基と、この残基から約5個のN末端残基および5個のC末端残基を含むドメインである。この時点において、Met−227末端およびVal−229末端HRG−α−GFDが生物学的に活性であることは知られているが、HRG−αまたはHRG−βに対する天然のC末端残基はいずれも同定されていない。HRG−αGFDに対する本来のC末端は、恐らくMet−227、Lys−228、Val−229、Gln−230、Asn−231またはGln−232であり、HRGβ−β−GFDに対しては恐らくMet−226、Ala−227、Ser−228、Phe−229、Trp−230、Lys231または(HRG−βに対して)K240または(HRG−βに対して)K246である。GFD配列が所望の活性を有している限り、HRG−GFDが本来の末端を持っているという事は決定的な事ではないが、本来のC末端はC末端配列決定により容易に決定される。HRG−GFD変異体の幾つかの態様においては、CTP中のアミノ酸の変化を、インビトロ蛋白分解に抵抗する、そしてHRG−GFDの生成を司るプロテアーゼを阻害する能力についてスクリーニングする。
全長のHRGポリペプチドの製造が望まれ、且つ所定のHRGの5'または3'末端がここに記載されていない場合、欠けているドメインが、より完全なHRG核酸からのホモローガス領域により供給される核酸を製造する必要があるかも知れない。別法として、欠けているドメインを、図面に開示されているDNAまたはそのフラグメントを用いてライブラリーをプロービングすることにより、得ることができる。
A. ヘレグリンをコードしているDNAの単離。
HRGをコードしているDNAは、HRGのmRNAを有し且つこれを検出可能レベルで発現すると信ぜられる組織から調製される任意のcDNAライブラリーから取得することができる。
目的とする遺伝子またはそれによりコードされている蛋白を同定するよう設計された分析手段またはプローブを用いて、ライブラリーをスクリーニングする。cDNA発現ライブラリーのためには、好適なプローブは、HRGを認識しこれに特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体;同じまたは異なった種由来のHRGcDNAの既知または推測される部分をコードしている約20−80塩基の長さのオリゴヌクレオチド;および/または相補的もしくはホモローガスなcDNAまたは同遺伝子もしくはハイブリダイズする遺伝子をコードしているそのフラグメント、を包含する。ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングする適当なプローブは、オリゴヌクレオチド;cDNAまたは同DNAもしくはハイブリダイズするDNAをコードしているそのフラグメント;および/またはホモローガスなゲノムDNAまたはそのフラグメントを包含するが、これらに限定される訳ではない。選択されたプローブによるcDNAまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、サムブルック等、上記、の10−12章に記載されるような標準的手法を用いて実施できる。
HRGをコードしている遺伝子を単離する別の手段は、サムブルック等、上記、の14節に記載されるようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使用することである。この方法は、HRGとハイブリダイズするであろうオリゴヌクレオチドプローブの使用を必要とする。オリゴヌクレオチドの選択方法は下に記載する。
目的とする遺伝子を取得するためのこれに代わるもう一つの方法は、エンジェルズ等[Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.、28巻716−734頁、1989年]の記載する方法の一つを用いてこれを化学的に合成することである。これらの方法は、トリエステル、ホスファイト、ホスホルアミダイトおよびH−ホスホナート法、PCRおよびその他の自己プライマー法、ならびに固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成を含む。これらの方法は、当該遺伝子の核酸配列の全体が知られているならば、またはコード化鎖に対し相補的な核酸の配列が入手できるならば、使用することができ、これとは別にもし標的アミノ酸配列が既知であるならば、各アミノ酸残基に対する既知の且つ好ましいコード化残基を用いて、可能性ある核酸配列を推論することができる。
本発明を実施する好ましい方法は、注意深く選択されたオリゴヌクレオチド配列を使用して、種々の組織、好ましくはヒトの乳房、結腸、唾液腺、胎盤、胎児、脳、および癌腫セルラインからのcDNAライブラリーをスクリーニングすることである。ヘレグリン様リガンドをコードしているDNAのその他の生物学的供給源は、他の哺乳動物および鳥類を包含する。哺乳動物の中では以下の順に好ましい:ウシ、ヒツジ、ウマ、マウス、および齧歯動物。
プローブとして選択されるオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さを持ち、且つ偽陽性を最小限とするに充分明確なものであるべきである。実際のヌクレオチド配列は通常、HRG−αの保存されたまたは高度にホモローガスなヌクレオチド配列または領域に基づいている。このオリゴヌクレオチドは1またはそれ以上の位置において縮重していてよい。一つのライブラリーをその種における好ましいコドンの使用法がわかっていない種からスクリーニングする場合、縮重オリゴヌクレオチドの使用は特に重要となり得る。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリー中のDNAとハイブリダイズする際に検出できるよう、標識されなくてはならない。好ましい標識方法は、当分野で良く知られているように、32P−標識ATPをポリヌクレオチドキナーゼと共に使用して該オリゴヌクレオチドを放射標識することである。しかしながら、ビオチニル化または酵素標識を包含する他の方法を用いてオリゴヌクレオチドを標識することもできるが、これらに限定される訳ではない。
最も興味深いのは、全長のプロポリペプチドをコードしているHRG核酸である。幾つかの好ましい態様において、この核酸配列は、本来のHRGシグナル貫膜配列を含む。選択されたcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングし、そして必要ならばサムブルック等、上記、の7.79節に記載されるような常套的プライマー伸長法を用いて前駆体を検出し、そして、cDNAに逆転写されなかったmRNAの中間体をプロセシングすることにより、全蛋白コード化配列を有する核酸が得られる。
HRGコード化DNAを使用して、上記方法を用いたハイブリダイゼーションによる他の動物種由来の類似リガンドをコードしているDNAの単離が行なわれる。好ましい動物は、哺乳動物、特にウシ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌおよび齧歯類、より詳細にはラット、マウスおよびウサギである。
B. ヘレグリンのアミノ酸配列変異体。
HRGのアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチドの変更をHRGDNA中に導入、または所望HRGポリペプチドのインビトロ合成によって製造する。このような変異体は、例えば、ヒトHRG配列に対して示されるアミノ酸配列内の残基の除去、または挿入もしくは置換を含む。最終組み立て物が所望の性質を有する限り、除去、挿入および置換の任意の組合せを施して最終組み立て物に到達することができる。アミノ酸の変化はさらに、グリコシルサイトの数または位置の変更、膜に付随する性質の変更、挿入、除去またはその他の方法で本来のHRGの貫膜配列に影響を及ぼすことによりHRGの細胞内位置を変更すること、または蛋白分解的開裂の受け易さを修飾すること、のような、HRG−αの翻訳後プロセシングを変えることができる。
HRGのアミノ酸配列変異体を設計する際、突然変異サイトの位置および突然変異の性質は、修飾されるべきHRGの性格に依存するであろう。突然変異の部位は、例えば、(1)最初に同類のアミノ酸の選択により、そして次に、達成される結果に応じてより過激な選択による置換を行なうことにより、(2)標的残基を除去することにより、または(3)存在する部位に隣接する他のリガンドの残基を挿入することにより、個別に、または連続して修飾することができる。
HRG残基または突然変異誘発領域の同定のための有用な方法は、カニングハムおよびウェルズ[サイエンス(Science)244巻1081−1085頁(1989)]によって記載されたように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、一つの標的残基または標的残基の群を同定し(例えばarg、asp、his、lys、およびgluといった荷電した残基)、アミノ酸と、細胞内外を取り巻く水性環境との相互作用に影響を及ぼすために、中性のまたは負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)に置き替える。次いで、さらなるまたは他の変異体を置換部位にまたは置換部位のために導入することにより、置換に対する機能的感受性を示すドメインを精密とする。したがって、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されているが、突然変異自体の性質は予め決定する必要が無い。例えば、与えられた部位における突然変異の挙動を最適なものとするために、alaスキャニングまたは無作為突然変異誘発を標的コドンまたは領域で実施し、発現されたHRG変異体を所望活性の最適な組合せについてスクリーニングする。
アミノ酸配列変異体を組み立てる際、二つの主要な変異要素、即ち突然変異部位の位置および突然変異の性格がある。これらはHRG配列由来の変異体であって、天然に存在する対立遺伝子(これはHRGDNAの操作を必要としない)、または、対立遺伝子もしくは天然に見いだされない変異体のいずれかに到達する、DNAの突然変異により作られる前もって決定された突然変異型を表わすことができる。一般に、選ばれる突然変異の位置および性格は、修飾されるHRGの性質に依存するであろう。明らかに、例えばHRGを既知のレセプターリガンドに変換する、このような変異は、本発明の範囲内には含まれず、また、新規でなく且つ先行技術から明らかである他のいかなるHRG変異体またはポリペプチド配列もまた本発明の範囲内には含まれない。
アミノ酸配列の除去は一般に約1ないし30残基、より好ましくは約1ないし10残基、典型的には約1ないし5の隣接する残基の範囲である。HRGの活性を修飾するために、他のEGFファミリー前駆体との相同性の低い領域に除去を導入することができる。他のEGFファミリーの配列と実質上ホモローガスな領域におけるHRGからの除去は、HRGの生物活性をより著明に修飾する傾向があるであろう。連続した除去の数は、影響を受けたドメインにおけるHRGの三次構造、例えばシステイン架橋、βプリーツシートまたはαヘリックスを保存するように選択されるであろう。
アミノ酸配列の挿入は、1個の残基から100またはそれ以上の残基を含むポリペプチドまでの範囲の長さのアミノ−および/またはカルボキシ−末端融合、ならびに単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入を包含する。配列内挿入(即ちHRG配列内での挿入)は一般に約1ないし10残基、より好ましくは1ないし5残基、最も好ましくは1ないし3残基の範囲とすることができる。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基(細菌の組み替え細胞培養中でのHRGの直接発現の所産)、および、組み替え宿主細胞からの成熟HRGの分泌を促進するための、ヘテロローガスN末端シグナル配列の、HRGのN末端への融合を包含する。このようなシグナル配列は、一般に、意図される宿主細胞種から得られ、したがってそれに対しホモローガスとなるであろう。好適な配列は、大腸菌(E.coli)のためにはST IIまたはpp、酵母のためにはα因子、そして哺乳動物細胞のためにはヘルペスgDのようなウイルスのシグナルを包含する。
その他のHRGの挿入変異体は、HRGのN−またはC−末端の、免疫原性ポリペプチド、例えばβ−ラクタマーゼまたはE.coli trp遺伝子座によりコードされる酵素のような細菌性ポリペプチド、または酵母蛋白、牛血清アルブミン、および走化性ポリペプチドへの融合を包含する。WO89/02922号(1989年4月6日公開)に記載されるような、HRG−NTD−GFDの、長い半減期を有する蛋白、例えば免疫グルブリン不変領域(またはその他の免疫グロブリン領域)、アルブミン、またはフェリチンとのC末端融合が包含される。
変異体のもう一つの群はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、HRG分子内の少なくとも1個のアミノ酸残基が除去され、その場所に異なった残基が挿入されている。置換突然変異のための最も興味の持たれる部位は、HRGの活性部位として同定されている部位、および、様々な種由来のHRGリガンドに見いだされるアミノ酸が、側鎖のかさ、荷電、および/または疎水性の点で実質上異なっている部位を包含する。
HRGの細胞質領域のアミノ末端を、ヘテロローガスな貫膜ドメインおよびレセプターのカルボキシ末端に融合させて、ヘテロローガスなレセプターに結合するリガンドの細胞内シグナル生成に有用な融合ポリペプチドを形成させることができる。
興味の持たれるまた別の部位は、様々な種から得られるHRG様リガンドの特定の残基が等しい部位である。これらの位置は、HRGの生物活性にとって重要であり得る。これらの部位、特に少なくとも3個の等しく保存されている相異なる部分を有する配列中にある部位は、相対的に保存性のあるやり方で置換される。このような同類置換を「好ましい置換」という表題の下に第1表に示す。このような置換が生物活性の変化をもたらす場合は、第1表中、例示置換と呼称される、またはアミノ酸のクラスに関して下にさらに記載されるような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングする。
Figure 0003595552
(a)置換領域におけるポリペプチドバックボーンの構造、例えばシートまたはらせんコンホメーション、(b)標的部位における分子の疎水性もしくは電荷、または(c)側鎖のかさ、の維持に及ぼすそれらの影響が著しく相違する置換を選択することにより、HRGの免疫学的同一性または機能の実質的な修飾を達成する。天然に存在する残基は、共通する側鎖の性質に基づき、群に分けられる:
1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
2)中性親水性:cys、ser、thr;
3)酸性:asp、glu;
4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
5)鎖の方向に影響する残基:gly、pro;および、
6)芳香性:trp、tyr、phe。
非同類置換は、これらのクラスのうち一つの成員を別のものに交換することを伴う。このような置換された残基は、他のレセプターリガンドとホモローガスなHRGの領域、またはより好ましくは該分子の非ホモローガス領域中に導入することができる。
本発明の一つの態様において、分子中に存在する1またはそれ以上のプロテアーゼ開裂部位を不活性化することが望ましい。これらの部位は、コード化されたアミノ酸配列を調査することによって同定される。プロテアーゼ開裂部位であると思われる部位、例えばK241R242が同定されたならば、標的残基を別の残基、好ましくはグルタミンのような塩基性残基またはセリンのような親水性残基で置換することにより;その残基を除去することにより;またはその残基の直後にプロリル残基を挿入することにより、これらを蛋白分解的開裂に対し不活性とする。
別の態様において、出発メチオニル残基以外の任意のメチオニル残基、または各々の係るメチオニル残基のN−またはC−末端の約3残基以内に位置する任意の残部を、別の残基で置換(好ましくは第1表に従って)、または除去する。本発明者等は、大腸菌(E.coli)発現の過程における2個のGFD M残基の酸化がGFD活性を甚だしく低下させると思われることを見いだした。即ち、これらのM残基を第1表に従って突然変異させる。別法として、大体1−3残基を、係る部位に隣接して挿入する。
HRGの適正なコンホメーションの維持に関わっていない任意のシステイン残基もまた、一般にセリンで置換して、該分子の酸化的安定性を改善し、異常型の架橋を防ぐごとができる。
置換、除去または挿入のために、またはフラグメントとしての使用のために特に好適な部位は、図4のHRG−αのN末端から数えて、
1)42−43、64−65、151−152位のセリン−グリシンジペプチドの、可能性あるグリコサミノグリカン付加部位;
2)164、170、208および437位、部位(NDS)164−166、(NIT)170−172、(NTS)208−210、およびNTS(609−611)にある、可能性あるアスパラギン連結グリコシル化部位;
3)209−218位のセリンおよびスレオニンの集まりにある、可能性あるO−グリコシル化部位;
4)226、234、240、254、256および265位のシステイン;
5)287−309位の貫膜ドメイン;
6)システイン226および240により輪郭の描かれるループ1;
7)システイン234および254により輪郭の描かれるループ2;
8)システイン256および265により輪郭の描かれるループ3;
9)2−3、8−9、23−24、33−34、36−37、45−46、48−49、62−63、66−67、86−87、110−111、123−124、134−135、142−143、272−273、278−279および285−286位にある、可能性あるプロテアーゼプロセシング部位;
を包含する。
HRG−αおよびHRG−β1中の類似アミノ酸を並べた図9を参照することにより、HRG−β1中の類似の領域を決定することができる。類似のHRG−β1アミノ酸は、HRG−αについて上に論じたように突然変異させまたは修飾することができる。HRG−β2中の類似の領域は、HRG−α、HRG−β1およびHRG−β2中の類似アミノ酸を並べた図15を参照することにより、決定することができる。類似のHRG−β2アミノ酸は、HRG−αまたはHRG−β1について上に論じたように突然変異させまたは修飾することができる。HRG−β3中の類似の領域は、HRG−α、HRG−β1およびHRG−β2中の類似アミノ酸を並べた図15を参照することにより、決定することができる。類似のHRG−β3アミノ酸は、HRG−α、HRG−β1、またはHRG−β2について上に論じたように突然変異させまたは修飾することができる。
HRGのアミノ酸配列変異体をコードしているDNAは、当分野で知られる種々の方法によって製造する。これらの方法は、天然供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)またはオリゴヌクレオチド仲介(または位置指定)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、およびHRGの初期調製変異体もしくは非変異型のカセット突然変異誘発による製造を包含するが、これらに限定される訳ではない。これらの技術は、HRG核酸(DNAまたはRNA)、またはHRG核酸に対し相補的な核酸を利用することができる。
オリゴヌクレオチド仲介突然変異誘発は、HRG DNAの置換、除去、および挿入変異体を製造するための好ましい方法である。この技術は、アーデルマン等、DNA、2巻183頁(1983)に記載されるように当分野では良く知られている。
一般に、少なくとも25ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは、突然変異をコードしているヌクレオチドの両側において鋳型に対し完全に相補的である、12ないし15のヌクレオチドを有するであろう。この事は、そのオリゴヌクレオチドが一本鎖DNA鋳型分子と適正にハイブリダイズすることを保証するものである。該オリゴヌクレオチドは、クレア等[プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)75巻5765頁、1978]に記載されるように、当分野において知られる技術を用いて容易に合成される。
一本鎖DNA鋳型もまた、標準技術を用いて二本鎖プラスミド(または他の)DNAを変性させることによって生成させることができる。
本来のDNA配列の改変のために(例えばアミノ酸配列変異体の生成のため)、該オリゴヌクレオチドを適当なハイブリダイゼーション条件の下で一本鎖鋳型にハイブリダイズする。次にDNA重合酵素、通常DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを加え、合成用プライマーとして該オリゴヌクレオチドを用いて鋳型の相補的鎖を合成する。こうして、DNAの一方の鎖がHRGの突然変異した型をコードし、他方の鎖(元の鋳型)が本来の、変化していないHRG配列をコードしている、ヘテロ二本鎖分子が形成される。次にこのヘテロ二本鎖分子を適当な宿主細胞、通常E.coli JM101のような前核生物中に導入する。細胞が増殖した後、これらをアガロース平板上に蒔き、32P−ホスファートで放射標識したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてスクリーニングし、突然変異したDNAを含む細菌コロニーを同定するする。次いで、突然変異した領域を除去し、蛋白産生のための適当なベクター、一般に適当な宿主の形質転換のために典型的に使用される型の発現ベクターに入れる。
直前に記載した方法は、プラスミドの両方の鎖が突然変異を含む、ホモ二本鎖分子が作られるよう、修飾することができる。この修飾は以下の通りである:一本鎖オリゴヌクレオチドを上記のように一本鎖鋳型にアニーリングする。3種のデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボアデノシン(dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)およびデオキシリボチミジン(dTTP)の混合物を、dCTP−(aS)と呼ばれる修飾されたチオ−デオキシリボシトシン(アマーシャム・コーポレーション)と合する。この混合物を鋳型−オリゴヌクレオチド複合体に添加する。この混合物にDNAポリメラーゼを添加すると、突然変異した塩基を除いては鋳型と同一のDNA鎖が生成する。さらに、この新たなDNA鎖はdCTPの代わりにdCTP−(aS)を含み、これが制限エンドヌクレアーゼ消化からこれを保護する役割を果たす。適当な制限酵素でヘテロ二本鎖の鋳型鎖に切れ目を入れた後、鋳型鎖を、Exo IIIヌクレアーゼまたは他の適当なヌクレアーゼによって、突然変異が誘発されるべき部位を含む領域を越えて消化することができる。次いで反応を停止させ、一部分のみが一本鎖である分子を残す。次に、4種の全デオキシリボヌクレオチド三燐酸、ATP、およびDNAリガーゼの存在下でDNAポリメラーゼを用いて、完全な二本鎖DNAホモ二本鎖を形成させる。次いでこのホモ二本鎖分子を、上記のように適当な宿主細胞、例えばE.coli JM101に導入することができる。
任意のHRGに共通する説明的置換は、S2TまたはD;E3DまたはK;R4KまたはE;K5RまたはE;E6DまたはK;G7PまたはY;R8KまたはD;G9PまたはY;K10RまたはE;G11PまたはY;K12RまたはE;G19PまたはY;S20TまたはF;G21PまたはY;K22またはE;K23RまたはE;Q38D;S107N;G108P;N120K;D121K;S122T;N126S;I126L;T127S;A163V;N164K;T165−T174;任意の残基をI、L、V、M、F、D、E、RまたはKに;G175VまたはP;T176SまたはV;S177KまたはT;H178KまたはS;L179FまたはI;V180LまたはS;K181RまたはE;A183NまたはV;E184KまたはD;K185RまたはE;E186DまたはY;K187RまたはD;T188SまたはQ;F189YまたはS;V191LまたはD;N192QまたはH;G193PまたはA;G194PまたはA;E195DまたはK;F197YまたはI;M198VまたはY;V199LまたはT;K200VまたはR;D201EまたはK;L202EまたはK;S203AまたはT;N204△;N204Q;P205△;P205G;S206TまたはR;R207KまたはA;Y208PまたはF;L209IまたはD;K211IまたはD;F216YまたはI;T217HまたはS;G218AまたはP;A/D219KまたはR;R220KまたはA;A235/240/232VまたはF;E236/241/233DまたはK;E237/242/234DまたはK;L238/243/235IまたはT;Y239/244/236FまたはT;Q240/245/237NまたはK;K241/246/238HまたはR;R242/247/238HまたはK;V243/248/239LまたはT;L244/249/240IまたはS;T245/250/241SまたはI;I246/251/242VまたはTおよびT247/252/273SまたはIを包含する。特にHRG−αに関しては、T222S、KまたはV;E223D、RまたはQ;N224Q、KまたはF;V225A、RまたはD;P226G、I、KまたはF;M227V、T、RまたはY;K228R、HまたはD;V220L、KまたはD;Q230N、RまたはY;N231Q、KまたはY;Q232N、RまたはY;E233D、KまたはTおよびK234R、HまたはD(これに代わる態様において、隣接するK/R突然変異は対になって新たな蛋白分解部位を作り出している)である。特にHRG−β(任意の番号)に関しては、Q222N、RまたはY;N223Q、KまたはY;Y224F、TまたはR;V225A、KまたはD;M226V、TまたはR;A227V、K、YまたはD;S228T、YまたはR;F229Y、IまたはKおよびY230F、TまたはRが好適な変異体である。特にHRG−β1に関しては、K231RまたはD、H232RまたはD;L233I、K、FまたはY;G234P、R、AまたはS;I235I、K、FまたはY;E236D、RまたはA;F237I、Y、KまたはA;M238V、T、RまたはAおよびE239D、RまたはAが好適な変異体である。特にHRG−βおよびHRG−βに関しては、K231RまたはDが好適な変異体である。別法として、これらの残基の各々は除去することができ、または示された置換基をそれと隣接して挿入することができる。さらに、約1−10の変異体を合して組合せが作られる。これらの変更は、プロHRG、NTD、GFD、NTD−GFDまたはその他のフラグメントもしくは融合に施される。Q213−G215、A219およびC末端からC221に至る約11−21の残基は、種々のHRGクラスの中で異なっている。これらの位置の残基はHRGクラスまたはEGFファミリー成員の間で交換され、除去され、またはこれらと隣接して残基が挿入される。
1以上のアミノ酸が置換されているHRG−α突然変異体をコードしているDNAは、幾つかの方法のうちの一つによって生成させることができる。もしアミノ酸がポリペプチド鎖の中に接近して位置しているならば、これらは、所望のアミノ酸置換の全てをコードしている1個のオリゴヌクレオチドを用いて同時に突然変異させることができる。しかしながら、そのアミノ酸が互いに幾らかの距離をおいて位置している(約10個以上のアミノ酸により隔てられている)場合、所望の変化全てをコードしている単一のオリゴヌクレオチドを生成させることは、より困難である。その代わりに二つの択一的方法のうち一つを使用することができる。
PCR突然変異誘発もまたHRG−αのアミノ酸変異体の製造に好適である。以下の議論はDNAについてのものであるが、この技術はRNAにも適用を見いだせると理解できる。一般にPCR技術は以下の手法をさす(エーリッヒ、上記、R.ヒグチによる章、61−70頁を参照されたい)。少量の鋳型DNAがPCRの出発材料として用いられる場合、鋳型DNA中の対応領域と僅かに異なる配列のプライマーを使用して、プライマーが鋳型と相違している位置においてのみ鋳型配列と異なっている、特異的DNAフラグメントを比較的大量に生成させることができる。突然変異をプラスミドDNAに導入するためには、プライマーの一方を、突然変異の位置と部分的に一致し且つその突然変異を含むように設計し;他方のプライマーの配列は、プラスミドの反対側の鎖の一続きの配列と同一でなければならないが、この配列はプラスミドDNAのどこに位置してもよい。しかしながら、第二のプライマーの配列は、最終的にプライマーが境界となっているDNAの増幅された領域全体が容易に配列決定されるよう、第一のプライマーから200ヌクレオチド以内に位置することが好ましい。ここに記載されたようなプライマー対を使用するPCR増幅は、鋳型の複製が幾分誤りがちであるため、プライマーにより特定される突然変異の位置において、そして恐らくは他の位置において、異なっているDNAフラグメントの集団を生成させる。
鋳型が生成物を産生する比率が極端に低いならば、DNAフラグメント生成物の大多数は所望の突然変異を含む。この生成物は、標準的DNA技術を用いて、PCR鋳型として働くプラスミド中の対応領域と置き換えるために使用する。突然変異体第2プライマーの使用、または異なる突然変異体プライマーによる第二のPCRを実施し、得られた二つのPCRフラグメントをベクターフラグメントに三(またはそれ以上)部ライゲーションで同時にライゲーションすることにより、別個の位置における突然変異を同時に導入することができる。
変異体を製造するもう一つの方法、カセット突然変異誘発は、ウェルズ等[ジーン(Gene)34巻315頁、1985]により記載された技術に基づいている。出発材料は、突然変異すべきHRG DNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。突然変異すべきHRG DNA中のコドンを同定する。同定された突然変異部位の両側には特異な制限エンドヌクレアーゼサイトがなければならない。係る制限サイトが存在しない場合は、これらをHRGDNA中の適当な位置に導入するための上記のオリゴヌクレオチド仲介突然変異誘発法を使用してそれらを生成することができる。プラスミド中に制限サイトが導入されたなら、そのプラスミドをこれらの部位で切断して線状化する。制限サイトの間のDNAの配列をコードしているが所望の突然変異を含む二本鎖オリゴヌクレオチドを、標準法を用いて合成する。2本の鎖を別個に合成し、次いで標準技術を用いてハイブリダイズする。この二本鎖オリゴヌクレオチドをカセットと称する。このカセットは、プラスミドに直接ライゲーションできるよう、線状化したプラスミドの末端と相容れる3'および5'末端を持つよう設計する。今やこのプラスミドは、突然変異したHRG DNA配列を含む。
C. クローニングまたは発現伝達体へのDNAの挿入。
本来のまたは変異体HRGをコードしているゲノムDNAまたはcDNAを、さらなるクローニングのため(当該DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクター中に挿入する。多くのベクターが入手可能であって、適当なベクターの選択は、1)それがDNA増幅のために使用されるのかまたはDNA発現のために使用されるのか、2)ベクター中に挿入されるべきDNAの大きさ、および、3)ベクターをもって形質転換される宿主細胞、に依存するであろう。各々のベクターは、その機能(DNAの増幅またはDNAの発現)およびそれが共存し得る宿主細胞に応じて種々の構成因子を含む。一般に、ベクターの構成因子は1またはそれ以上の以下のもの:シグナル配列、複製起点、1またはそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終了配列、を包含するが、これらに限定される訳ではない。
(i)シグナル配列構成因子。
一般に、シグナル配列は、ベクターの構成因子であるか、またはベクター中に挿入されているHRG DNAの一部であってよい。本来のHRG DNAは、ポリペプチドのアミノ末端(HRGをコードしているDNAの5'末端)にシグナル配列をコードしており、これがポリペプチドの翻訳後プロセシング中に開裂してp185HER2レセプターに結合する成熟HRGポリペプチドリガンドを形成すると信じられているが、在来のシグナル構造は明らかでない。本来のプロHRGは細胞から分泌されるが膜に留まっているかも知れない。何故ならこれは貫膜ドメインおよび細胞質領域を該ポリペプチドのカルボキシ末端領域に含むからである。したがって、分泌された可溶性型のHRGにおいて、貫膜ドメインを含む、分子のカルボキシ末端ドメインは、通常、除去される。先端の切られた変異体をコードしているDNAが、宿主に認識されるシグナル配列をコードしている限り、この、先端の切られた変異体HRGポリペプチドは細胞から分泌され得る。
本発明のHRGは、直接発現されるのみならず、ヘテロローガスなポリペプチド、好ましくはシグナル配列との、または、成熟蛋白またはポリペプチドのN−および/またはC−末端に特異的開裂サイトを有する他のポリペプチドとの融合体として発現され得る。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成因子であるか、またはベクター中に挿入されているHRG DNAの一部であってよい。本来のシグナル配列が除去されヘテロローガスなシグナル配列に置き換えられているHRGは、本発明の範囲内に包含される。選択されるヘテロローガスなシグナル配列は、宿主細胞によって認識されプロセシングされる、即ちシグナルペプチダーゼによって開裂される配列であるべきである。本来のHRGシグナル配列を認識およびプロセシングしない前核生物宿主細胞のためには、このシグナル配列を、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される前核性物のシグナル配列に置換する。酵母の分泌のためには、本来のHRGシグナル配列は、酵母のインベルターゼ、α因子、または酸ホスファターゼリーダーに置換することができる。哺乳動物細胞の発現においては、本来のシグナル配列でよいが、他の哺乳動物のシグナル配列も適当であるかも知れない。
(ii)複製起点構成因子。
一般に、発現およびクローニングベクターはいずれも、1またはそれ以上の選択された宿主細胞中でのベクターの複製を可能にする核酸配列を含んでいる。一般にクローニングベクターにおいては、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立して複製できるようにする配列であって、複製起点または自律的複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌、酵母、およびウイルスについて良く知られている。プラスミドpBR322由来の複製起点は殆どのグラム陰性菌に好適であり、2μプラスミド起点は酵母に好適であり、そして様々なウイルスの起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は哺乳動物細胞中でのベクターのクローニングに有用である。一般に、複製起点構成因子は哺乳動物の発現ベクターには必要ない(SV40起点が、初期プロモーターを含むという理由のみから典型的に使用され得る)。
殆どの発現ベクターは「シャトル」ベクター、即ち、少なくとも一つのクラスの生物中で複製することができるが、発現のための別の生物にトランスフェクトすることができる。例えば、一つのベクターが大腸菌(E.coli)中でクローニングされ、次いで、これが宿主細胞染色体とは独立して複製することができなくとも、同じベクターが発現のために酵母または哺乳動物細胞にトランスフェクトされる。
DNAは宿主ゲノム中に挿入することにより増幅することもできる。これは、例えば、バチルスのゲノムDNAに見いだされる配列に対し相補的なDNA配列をベクター中に含むことによって、バチルス種を宿主として使用して容易に達成される。このベクターによるバチルスのトランスフェクトは、該ゲノムとのホモローガスな組み替えおよびHRG DNAの挿入をもたらす。しかしながら、HRG DNAを切る取るための制限酵素消化が必要であるため、HRGをコードしているゲノムDNAの回収は、外因的に複製されたベクターの回収より複雑である。DNAはPCRによって増幅でき、いかなる複製要素をも用いずに宿主細胞中に直接トランスフェクトされ得る。
(iii)選択遺伝子構成因子。
発現およびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含んでいなければならない。この遺伝子は、選択的培地中で増殖する形質転換された宿主細胞の生存または増殖に必要な蛋白をコードしている。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、この培地中で生存しないであろう。典型的な選択遺伝子は、(a)構成物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メソトレキサート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与し、(b)栄養要求性の欠如を補い、または、(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給する蛋白をコードしている遺伝子、例えばバチルスのためのD−アラニンラセマーゼをコードしている遺伝子である。
選択計画の一例は、宿主細胞の増殖を阻止する薬物を利用する。ヘテロローガス遺伝子によりうまく形質転換された細胞は、薬物耐性を付与する蛋白を発現し、したがって選択処方中で生き残る。このような主たる選択の例は、ネオマイシン薬物[サザン等、ジャーナル・オブ・モレキュラー・アンド・アプライド・ジェネティクス(J.Molec.Appl.Genet.)1巻327頁、1982]、ミコフェノール酸[ミュリガン等、サイエンス(Science)209巻1422頁、1980]またはハイグロマイシン[サグデン等、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell.Biol.)5巻、410−413頁、1985]を使用する。上に挙げた三つの例は、それぞれ適当な薬物G418またはネオマイシン(ジェネティシン)、xgpt(ミコフェノール酸)、またはハイグロマイシンに対する耐性を運ぶために、真核性物の制御の下で細菌遺伝子を使用する。
哺乳動物細胞のための好適な選択マーカーのもう一つの例は、HRG核酸を取り上げる能力のある細胞を同定することのできるマーカー、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはチミジンキナーゼである。哺乳動物細胞形質転換体を、その形質転換体のみが該マーカーを取り上げたが故に特異な生存への適合をする、選択圧の下におく。選択圧は、培地中の選択薬物の濃度を連続的に変え、それにより選択遺伝子およびHRGをコードしているDNAの両者の増幅が導かれる条件の下で形質転換体を培養することによって負荷する。増幅とは、増殖のために決定的な蛋白の産生にとって、より要求性の高い遺伝子を、組み替え細胞の連続する世代の染色体内で縦列に反復する工程である。増加したDNAからは増幅した量のHRGが合成される。
例えば、DHFR選択遺伝子により形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニスト、メソトレキサート(Mtx)を含有する培地中で全形質転換体を培養することにより、まず同定される。野生型DHFRを使用する場合の適当な宿主細胞は、ウアラウブおよびチェイシン、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)77巻4216頁、1980による記載のように製造され増殖される、DHFR活性の欠如したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞セルラインである。次に、形質転換細胞を増加したレベルのメソトレキサートに暴露する。これにより、DHFR遺伝子の多数のコピーが合成され、同時に発現ベクターを含む他のDNA、例えばHRGをコードしているDNAの多数のコピーが合成される。この増幅技術は、例えばMtxに対し耐性の高い突然変異体DHFR遺伝子が使用されるならば、内性DHFRの存在にも拘らず、他の点で適当な任意の宿主、例えばATCC No.CCL61 CHO−K1を用いて使用することができる(EP117060号)。別法として、HRG、野生型DHFR蛋白、およびアミノグリコシド3'ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択マーカーをコードしているDNA配列で形質転換または同時形質転換した宿主細胞(特に、内性DHFRを含む野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシン、またはG418のような選択マーカーのための選択薬物を含有する培地中で細胞を増殖させることによって選択することができる(米国特許第4965199号を参照されたい)。
酵母における使用に好適な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[スティンチコウム等、ネイチャー(Nature)282巻39頁、1979;キングズマン等、ジーン(Gene)7巻141ページ、1979;またはチェンパー等、ジーン(Gene)10巻175頁、1980]。trp1遺伝子は、トリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母の突然変異株、例えばATCC No.44076またはPEP4−1のための選択マーカーを提供する[ジョーンズ、ジェネティクス(Genetics)85巻12頁、1977]。次いで、酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1損傷の存在が、トリプトファンの不在下で増殖させることによる形質転換の検出のための有効な環境を提供する。同様に、Leu2−欠損酵母菌株(ATCC20622または38626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって完全なものとなる。
(iv)プロモーター構成因子
発現およびクローニングベクターは、通常、宿主生物により確認され且つHRG核酸と操作可能に連結したプロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の出発コドンの上流(5')に位置する非翻訳配列であって(一般に約100ないし1000bp以内)、特定の核酸配列、例えばそれらが操作可能に連結しているHRGの転写および翻訳を制御する。このようなプロモーターは典型的に二つのクラス、誘導体および構成的クラスに分けられる。誘導的プロモーターは、培養条件における幾らかの変化、例えば或る栄養素の存在もしくは不在または温度の変化に応答して、それらの制御の下に、DNAからの増加したレベルの転写を開始させるプロモーターである。現時点において、種々の可能性ある宿主細胞により認識される数多くのプロモーターが良く知られている。これらのプロモーターは、制限酵素消化により供給源のDNAからプロモーターをはずし、分離したプロモーター配列をベクター中に挿入することによって、HRGをコードしているDNAと操作可能に連結する。本来のHRGプロモーター配列および多くのヘテロローガスプロモーターのいずれも、HRG DNAの増幅および/または発現の指令に用いることができる。しかしながら、ヘテロローガスなプロモーターは一般に、本来のHRGプロモーターに比べ、より多くの転写および高収量の発現HRGをもたらすため、ヘテロローガスなプロモーターが好ましい。
前核生物の宿主との使用に好適なプロモーターは、β−ラクタマーゼおよび乳糖プロモーター系[チャング等、ネイチャー(Nature)275巻615頁、1978;およびゲッデル等、ネイチャー(Nature)281巻544頁、1979]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[ゲッテル、ヌクレイック・アシズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)8巻4057頁、1980およびEP36776号]およびtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーター[デボーア等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)80巻21−25頁、1983]を包含する。しかしながら他の知られる細菌のプロモーターも適当である。それらのヌクレオチド配列は公表されており、それにより当業者は、必要な任意の制限サイトを供給するためのリンカーまたはアダプターを用いてHRGをコードしているDNAにそれらを操作可能に連結することができる[シーベンリスト等、セル(Cell)20巻269頁、1980]。細菌系での使用のためのプロモーターもまた一般に、HRGをコードしているDNAに操作可能に連結したシャイン−ダルガーノ(S.D.)配列を含むであろう。
酵母宿主との使用のために好適なプロモーター配列は、3−ホスホグリセラートキナーゼのためのプロモーター[ヒュツェマン等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)255巻2073頁、1980]または他の解糖酵素[ヘス等、J.Adv.Enzyme Reg.、7巻149頁、1968;およびホランド、バイオケミストリー(Biochemistry)17巻4900頁、1978]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−燐酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−燐酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセラートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオース燐酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼを包含する。
増殖条件により制御される転写のさらなる利点を有する誘導プロモーターである、その他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素の代謝に関係する分解的酵素、メタロチオネン、グリセルアルデヒド−3−燐酸デヒドロゲナーゼ、および、マルトースおよびガラクトースの利用を司る酵素類のプロモーター領域である。酵母の発現における使用に好適なベクターおよびプロモーターは、ヒッツェマン等、EP73657A号にさらに記載されている酵母エンハンサーもまた酵母プロモーターと共に有利に使用される。
真核生物のためのプロモーターは既知である。事実、全ての真核生物の遺伝子は、転写の開始位置からおよそ25ないし30塩基上流に位置するATに富む領域を有する。多くの遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見いだされるもう一つの配列はCXCAAT(配列番号1)[ここでXは任意のヌクレオチドである]領域である。殆どの真核生物遺伝子の3'末端には、コード化配列の3'末端にポリA尾を付加するシグナルとなり得るAATAAA配列(配列番号2)がある。これらの配列は全て哺乳動物の発現ベクター中に適切に挿入される。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのHRG遺伝子の転写は、プロモーターが宿主細胞系と共存し得るならば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(英国2211504号、1989年7月5日公開)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、そして最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから取得されるプロモーター、ヘテロローガスな哺乳動物のプロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから取得されるプロモーター、熱衝撃プロモーターから取得されるプロモーター、そしてHRG配列に通常付随するプロモーターから取得されるプロモーターによって制御される。
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40制限フラグメントとして簡便に得られ、これはSV40ウイルスの複製起点をも含んでいる[フィアズ等、ネイチャー(Nature)273巻113頁(1978);ミュリガンおよびバーグ、サイエンス(Science)209巻1422−1427頁(1980);パブラキス等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)78巻7398−7402頁(1981)]。ヒトサイトメガロウイルスの即時型プロモーターはHind III E制限フラグメントとして簡便に得られる[グリーナウェイ等、ジーン(Gene)18巻355−360頁(1982)]。ベクターとしてウシ乳頭腫ウイルスを用いる哺乳動物中でDNAを発現するための系は、米国特許第4419446号に開示されている。この系の修飾は米国特許第4601978号に記載されている。サルの細胞における免疫インターフェロンをコードしているcDNAの発現に関する、グレイ等、ネイチャー(Nature)295巻503−508頁(1982);ヘルペス・シンプレックスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御の下での、マウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現に関する、レイエス等、ネイチャー(Nature)297巻598−601頁(1982);培養されたマウスおよびウサギの細胞におけるヒトインターフェロンβ1遺伝子の発現に関する、キャナーニおよびバーグ、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)79巻5166−5170頁(1982);および、プロモーターとしてラウス肉腫ウイルスの長末端反復を用いる、CV−1サル腎臓細胞、ニワトリの胚繊維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ヒーラ細胞、およびマウスNIH−3T3細胞における細菌性CAT配列の発現に関する、ゴーマン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)79巻6777−6781頁(1982)をさらに参照されたい。
(v)エンハンサー要素構成因子。
高等真核生物による本発明のHRGをコードしているDNAの転写は、エンハンサー配列をベクター中に挿入することにより、しばしば増強する。エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写を増強する、通常約10−300bpの、DNAのシス作用要素である。エンハンサーは、方向および位置に比較的独立しており、イントロン内[バネルジ等、セル(Cell)33巻729頁、1983]およびコード化配列自身の中[オスボーン等、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell Bio.)4巻1293頁、1984]の、転写ユニットに対し3'[ラスキー等、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell Bio.)3巻1108頁、1983]および5'[ライミン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)78巻993頁(1981)に見いだされている。現在、哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインシュリン)。しかしながら、典型的には真核生物細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用される。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100−270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、および真核生物プロモーターの活性化のための促進要素上のアデノウイルスエンハンサー類[ヤニブ、ネイチャー(Nature)297巻、17−18頁(1982)をも参照されたい)が包含される。エンハンサーは、HRG DNAに対して5'または3'位においてベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置させる。
(vi)転写終了構成因子。
真核生物の宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、またはその他の多細胞生物由来の、真核細胞)に使用される発現ベクターは、さらに、転写の終了およびmRNAの安定化のために必要な配列を含む。このような配列は一般に、真核生物のまたはウイルスのDNAまたはcDNAの5'および時に3'非翻訳領域から得られる。これらの領域は、HRGをコードしているmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチド部分を含む。この3'非翻訳領域は、さらに、転写終了サイトを含む。
1またはそれ以上の上に列挙される構成因子、ならびに所望のコード化および調節配列を含む適当なベクターの組み立てには、標準的ライベーション技術を用いる。単離したプラスミドまたはDNAフラグメントを開裂し、調製し、そして必要なプラスミドの生成に望ましい型に再ライゲーションする。
組み立てられたプラスミド中の配列が正しいことを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いてE.coliK12菌株294(ATCC31446)を形質転換し、成功した形質転換体を、アンピシリンまたはテトラサイクリン耐性により、適宜選択する。この形質転換体からのプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、そして/または、メシング等、ヌクレイック・アシズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)9巻309頁(1981)の方法またはマクサム等、メッソズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)65巻499頁(1980)の方法によって配列決定する。
本発明の実施において特に有用なのは、HRGをコードしているDNAを哺乳動物細胞において一時的に発現させる発現ベクターである。一般に、一時的な発現とは、宿主細胞が発現ベクターのコピーを多数蓄積し、次いで該発現ベクターよりコードされている所望ポリペプチドを高レベルで合成するような、宿主細胞中で効率的に複製可能な発現ベクターの使用を含む。適当な発現ベクターと宿主細胞からなる一時的発現系は、クローニングされたDNAによりコードされているポリペプチドの簡便な正の同定、および、所望の生物学的または生理学的性質についての該ポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一時的発現系は、HRG様活性を有するHRGの類似体および変異体を同定する目的のために、本発明において特に有用である。このような一時的発現系はEP309237号(1989号3月29日公開)に記載されている。組み替え脊椎動物細胞培養におけるHRGの合成への適合に好適な、その他の方法、ベクター、および宿主細胞は、ギーシング等、ネイチャー(Nature)293巻、620−625頁、1981;マンテイ等、ネイチャー(Nature)281巻、40−46頁、1979;レビンソン等、EP117060号およびEP117058号に記載されている。HRGの哺乳動物細胞培養での発現に特に有用な発現プラスミドはpRK5である(EP公開No.307247号)。
D. 宿主細胞の選択および形質転換。
本明細書中のベクターをクローニングまたは発現するために好適な宿主細胞は、上に記載した前核生物、酵母、または高等真核生物細胞である。好適な前核生物は、グラム陰性またはグラム陽性菌のような真性細胞、例えば大腸菌(E.coli)、B.サブティリスのようなバチルス、P.アエルギノーサのようなシュードモナス種、サルモネラ・ティフィムリウム、またはセラティア・マルセサンスを包含する。一つの好ましい大腸菌のクローニング宿主はE.coli294(ATCC31446)であるが、E.coli B、E.coli x1776(ATCC31537)、およびE.coli W3110(ATCC27325)のようなその他の菌株もまた適当である。これらの例は限定的ではなく例示的なものである。好ましくは、宿主細胞は、最少量の蛋白分解酵素を分泌する。別法としてインビトロのクローニング法、例えばPCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応が適当である。
前核生物に加えて、糸状菌または酵母のような真核微生物がHRGコード化ベクターに好適な宿主である。下等な真核宿主微生物の中ではサッカロミセス・セレビシアエ、または通常のパン酵母が最も普通に用いられる。しかしながら、その他の数多くの属、種、および菌株、例えば、シゾサッカロミセス・ポンペ[ビーチおよびナース、ネイチャー(Nature)290巻140頁(1981);EP139383号(1985年5月2日公開)]、クルイベロミセス宿主[U.S.S.N.4943529号]、例えばK.ラクティス[ローベンコート等、ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bacteriol.)737巻(1983)];K.フラギリス、K.ブルガリクス、K.サーモトレランス、およびK.マルキシアヌス、ヤロウィア[EP402226号];ピチア・パストリス[EP183070号]、スリークリシュナ等、ジャーナル・オブ・ベイシック・マイクロバイオロジー(J.Basic Microbiol.)28巻265−278頁(1988);カンジダ、トリコデルマ・リーシア[EP244234号];ニューロスポラ・クラシア[ケイス等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)76巻5259−5263頁(1979)、および糸状菌、例えばニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム[WO91/00357号、1991年1月10日公開]、およびアスペルギルス宿主、例えばA.ニドゥランス[バランス等、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)112巻284−289頁(1983);ディルバム等、ジーン(Gene)26巻205−221頁(1983);イェルトン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)81巻1470−1474頁(1984)およびA.ニガー[ケリーおよびハイネス、イーエムビーオー・ジャーナル(EMBO J)4巻475−479頁(1985)]が、一般に入手でき、本明細書中で使用される。
グリコシル化HRGポリペプチドの発現に好適な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。このような宿主細胞は、複雑なプロセシングおよびグリコシル化作用を行なうことができる。原則として、脊椎動物の培養由来であるか無脊椎動物の培養由来であるかに拘らず、任意の高等真核生物の細胞培養が使用可能である。無脊椎動物細胞の例は、植物および昆虫細胞を包含する。多数のバキュロウイルス株および変異体ならびに、スポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエギプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)およびボンビクス・モリ宿主細胞のような宿主由来の、対応する許容し得る昆虫宿主細胞が同定されている[例えば、ラッコウ等、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)6巻47−55頁(1988);ミラー等、ジェネティック・エンジニアリング(Genetic Engineering)、J.K.セットロウ等編、8巻(プレナム出版、1986)、277−279頁;およびマエダ等、ネイチャー(Nature)315巻592−594頁(1985)]。例えばオートグラファ・カリフォルニカNPVのL−1変異体およびボンビクス・モリNPVのBm−5株のような、様々なこれらウイルス株が一般に入手可能であり、また、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞のトランスフェクトのために、本発明に係るようなウイルスを使用することができる。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養が、宿主として利用できる。典型的には、植物細胞は、前もってHRG DNAを含むよう操作しておいた細菌アグロバクテリウム・トゥメファシエンスの或る株と共にインキュベーションすることにより、トランスフェクトする。A.トゥメファシエンスと共に植物細胞培養をインキュベーションする間にHRGをコードしているDNAはこの植物細胞に移され、その結果それはトランスフェクトされ、そして適当な条件の下でHRG DNAを発現する。さらに、ノパリンシンターゼプロモーターおよびポリアデニル化シグナル配列といったような、植物細胞と両立し得る調節およびシグナル配列が入手できる[デピッカー等、ジャーナル・オブ・モレキュラー・アンド・アプライド・ジェネティクス(J.Mol.Appl.Gen.)1巻561頁(1982)]。さらに、T−DNA780遺伝子の上流領域から単離されるDNAセグメントは、組み替えDNA含有植物組織において、植物中で発現可能な遺伝子の転写レベルを増強またはこれを活性化することができる[EP321196号(1989年6月21日公開)を参照されたい]。
しかしながら、脊椎動物細胞における関心が最も大きく、培養中(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖は、近年常套的方法となっている[ティシュー・カルチャー、アカデミック・プレス、クルーズおよびパターソン編(1973)]。有用な哺乳動物宿主セルラインの例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1ライン(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓ライン(懸濁液培養における増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、グラハム等、ジャーナル・オブ・ジェネラル・バイロロジー(J.Gen.Virol.)36巻59頁、1977);新生児ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、ウアラウブおよびチェイシン、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)77巻4216頁(1980));マウスのセルトリ細胞(TM4、マザー、バイオロジー・オブ・レプロダクション(Biol.Reprod.)23巻243−251頁(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞[マザー等、アナルス・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Annals N.Y.Acad.Sci.)383巻44−68頁(1982)];MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌セルライン(Hep G2)である。好ましい宿主細胞は、ヒト胚腎臓293およびチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
宿主細胞を、本発明に係る上記の発現またはクローニングベクターによりトランスフェクトし、そして好ましくは形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望配列をコードしている遺伝子の増幅のために、適宜修飾された常套的栄養培地中で培養する。
トランスフェクトとは、任意のコード化配列が実際に実現されるか否かに拘らず、宿主細胞によって発現ベクターが取り込まれることを意味する。数多くのトランスフェクション法、例えばCaPO4および電気穿孔が当業者に知られている。このベクターの作用の任意の指令が宿主細胞中で行なわれる時に、一般にトランスフェクトの成功が認められる。
形質転換とは、DNAが或る生物中に導入され、その結果このDNAが、染色体外要素として、または染色体統合によって複製可能となることを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、係る細胞に適した標準技術を用いて行なわれる。サムブルック等、上記、の1.82節に記載される、塩化カルシウムを使用するカルシウム処理は、一般に、前核生物または実質的細胞壁障壁を含んでいるその他の細胞に使用される。シャウ等、ジーン(Gene)23巻315頁(1983)およびWO89/05859(1989年6月29日公開)に記載されるように、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染は、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁の無い哺乳動物細胞に対しては、サムブルック等、上記、の16.30−16.37節に記載の燐酸カルシウム沈澱法が好ましい。哺乳動物細胞宿主系形質転換の一般的局面は、アキセルによる米国特許第4399216号(1983年8月16日登録)に記載されている。酵母の形質転換は、典型的には、バン・ゾーリンゲン等、ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bact.)130巻946頁(1977)およびシャオ等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(USA)(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA))76巻3829頁(1979)の方法に従って実施する。しかしながら、核注入、電気穿孔、またはプロトプラスト融合のような、細胞中にDNAを導入するその方法もまた使用することができる。
E.宿主細胞の培養。
本発明に係るHRGポリペプチドの産生に用いられる前核生物細胞は、サムブルック等、上記、に概説される適当な培地中で培養する。
本発明に係るHRGの産生に用いられる哺乳動物宿主細胞は、様々な培地中で培養することができる。ハムF10(シグマ)、最少必須培地([MEM]、シグマ)、RPMI−1640(シグマ)、およびダルベッコの改良イーグル培地([DMEM]、シグマ)のような市販の培地が、この宿主細胞の培養に適当である。これに加えて、ハムおよびワラス、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth.Enz.)58巻44頁(1979)、ベイムスおよびサトー、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)102巻255頁(1980)、米国特許第4767704号;4657866号;4927762号;または4560655号;WO90/03430号;WO87/00195号および米国特許Re30985に記載される任意の培地を、宿主細胞のための培地として使用することができる。これらの培地はいずれも、必要に応じて、ホルモン類および/または他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、または表皮成長因子)、塩類(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、および燐酸塩)、緩衝剤(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えばゲンタミシン(商標)薬物)、微量元素(通常、最終濃度においてマイクロモル範囲で存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を添加することができる。その他の必要な添加剤があればそれも、当業者に知られる適当な濃度で含有させることができる。温度、pHなどのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞についてかつて採用された条件であり、当業者には明らかであろう。
本開示中言及される宿主細胞とは、インビトロの培養における細胞および宿主動物内にある細胞を包含する。
本発明のHRGは、ホモローガスな組み替えによって、または、当分野で現在使用されている、HRGをコードしているDNAを既に含む細胞中に導入された調節要素を利用する組み替え産生法によって、産生されるということが、さらに認識される。例えば、強力なプロモーター/エンハンサー要素、サプレッサー、または外因性転写調節要素が、意図される宿主細胞のゲノム中に、所望HRGをコードしているDNAの転写に影響を及ぼすに充分な近さおよび方向で挿入される。調節要素は本発明に係るHRGをコードしていないが、このDNAは宿主細胞ゲノム中に存在する。次に、所望に応じて、本発明のHRGを作る細胞、または増強したもしくは低下したレベルの発現をスクリーニングする。
F. 遺伝子の増幅/発現の検出
試料中の遺伝子の増幅および/または発現は、例えば本明細書に記載される配列に基づく適当に標識されたプローブを使用して、常套的サザンブロッティング、mRNAの転写を定量するノーザンブロッティング[トマス、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)77巻5201−5205頁(1980)]、ドットブロッティング(DNA分析)またはインサイトゥハイブリダイゼーションによって、直接試料を測定することができる。様々な標識が使用でき、最も普通には放射性同位元素、特に32Pを使用することができる。しかしながら、ポリヌクレオチド中に導入するためのビオチン修飾ヌクレオチドを使用するといったような、他の技術を使用することもできる。その場合ビオチンは、放射性核種、蛍光剤、酵素等のような極めて様々な標識で標識することのできる、抗生物質またはアビジンと結合する部位としての役割を有する。これとは別に、DNA二重らせん、RNA二重らせん、およびDNA−RNAハイブリッド二重らせんまたはDAN−蛋白二重らせんを包含する特異的な二重らせんを認識することのできる抗体を使用することができる。次いで抗体を標識し、二重らせんが表面に結合している場合は検定が実施でき、その結果、表面に二重らせんが形成されると、二重らせんに結合した抗体の存在が検出できる。
別法として、遺伝子の発現は、免疫学的方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色、および、遺伝子産物の発現を直接定量するための細胞培養または体液の検定によって測定することができる。免疫組織化学的染色技術については、典型的には脱水および固定によって細胞試料を調製し、その後、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識された抗体と反応させる(この場合、標識は通常目視検出できる、例えば酵素的標識、蛍光標識、ルミネセンス標識等である)。本発明における目的のために好適な特に感受性の高い染色技術は、シュー等、アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・パソロジー(Am.J.Clin.Path.)75巻734−738頁(1980)により記載されている。
試料流体の免疫組織化学的染色および/または検定に有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれであってもよく、任意の哺乳動物において作製することができる。簡便には、この抗体は、本来のHRGポリペプチドに対して、または下記の4項にさらに記載されるような本明細書中に供されるDNA配列に基づく合成ペプチドに対して作製することができる。
G. ヘレグリンポリペプチドの精製。
HRGは、細胞の膜画分から回収する。別法として、蛋白分解的開裂をしたまたは先端の切られた発現された可溶性HRGフラグメントまたはサブドメインを、可溶性ポリペプチドとして培地から回収する。
HRGがヒト起源ではない組み替え細胞中で発現される場合、HRGはヒト起源の蛋白またはポリペプチドを全く含まない。しかしながら、HRGに関して実質上等質な調製物を得るために、組み替え細胞蛋白またはポリペプチドからHRGを精製することが望ましい。第一段階として、培地または溶菌液を遠心して粒状の細胞断片を除去する。次いで膜および可溶性蛋白の画分を分離する。次にHRGが膜に結合しているか否かに応じて、HRGを、培養溶菌液の可溶性蛋白画分(プロテアーゼの存在を必要とする)および膜画分の両者から精製する。以下の手法が、好適な精製法の例である:免疫親和またはイオン交換カラム上での分画;エタノール沈澱;逆相HPLC;シリカ、ヘパリン、セファロース上、またはDEAEのような陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈澱;および、例えばセファデックスG−75を用いるゲル濾過。
残基が除去され、挿入され、または置換されているHRG変異体は、その変異によって引き起こされた性質の上での実質的な変化を考慮に入れて、本来のHRGと同じやり方で回収する。例えば、別の蛋白またはポリペプチド、例えば細菌のまたはウイルスの抗原とのHRG融合の調製物は、精製を促進し、該抗原に対する抗体を含む免疫親和カラムを使用して、この融合を吸着することができる。ウサギポリクローナル抗HRGカラムのような免疫親和カラムを使用して、これを少なくとも一つの残っている免疫エピトープに結合させることにより、HRG変異体を吸収させることができる。フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)のようなプロテアーゼ阻害剤もまた、精製中の蛋白分解的減成の阻害に有用であり、また、偶発的汚染物質の増殖を防止するため抗生物質を含有させることができる。本来のHRGに対し好適な精製法は、組み替え細胞培養中で発現される時のHRG変異体の性質の変化を考慮に入れた修飾を必要とすることがあるということが、当業者には理解できるであろう。
H. HRGの共有結合的修飾。
本発明の範囲にはHRGポリペプチドの共有結合的修飾が含まれる。本来のHRGおよびHRGのアミノ酸配列変異体はいずれも所望により共有結合的に修飾される。本発明の範囲内に包含される共有結合的修飾の一つの型は、HRGポリペプチドフラグメントである。約40までのアミノ酸残基を有するHRG−GDFのようなHRGフラグメントは、化学合成によって、または全長HRGポリペプチドもしくはHRG変異体ポリペプチドの酵素的もしくは化学的開裂によって簡便に製造される。他の型のHRGまたはそのフラグメントの共有結合的修飾は、HRGまたはそのフラグメントの標的アミノ酸残基を、選ばれた側鎖またはN−もしくはC−末端残基と反応することのできる有機合成試薬と反応させることによって、該分子中に導入する。
システイン残基は一般的にはクロロ酢酸またはクロロアセトアミドのようなα−ハロアセタート(および対応するアミン類)と反応させてカルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を得る。システイン残基はさらにブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスファート、N−アルキルマレイミド類、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル 2−ピリジル ジスルフィド、p−クロロ水銀安息香酸、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキソ−1,3−ジアゾールと反応させることにより、誘導体化される。
ジエチルピロカルボナートはヒスチジン側鎖に対して比較的特異的であるため、ヒスチジン残基はpH5.5−7.0においてこの試薬と反応させることにより誘導体化される。p−ブロモフェナシルブロミドもまた有用であって、この反応は好ましくはpH6.0において0.1Mカコジナル酸ナトリウム中で実施する。
リジン残基およびアミノ末端残基は、無水コハク酸またはその他の無水カルボン酸と反応する。これらの試薬による誘導体形成は、リジン残基の電荷を逆転させる効果を有する。α−アミノを含む残基を誘導体化するその他の適当な試薬は、メチル ピコリンイミダートのようなイミドエステル類;リン酸ピリドキサル;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソ尿素;2,4−ペンタンジオン;およびトランスアミナーゼ触媒によるグリオキシラートとの反応を包含する。
アルギニン残基は1または幾つかの常套的試薬との反応により修飾されるが、その中には、フェニルグリオキサル、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンがある。アルギニン残基の誘導体は、グアニジン官能基の高いpKaの故に、反応がアルカリ条件下で行なわれることが必要である。さらに、これらの試薬は、アルギニンのε−アミノ基と共にリジン基とも反応し得る。
芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応により、チロシン残基中にスペクトル標識を導入する、特に興味深い、チロシン残基の特異的修飾を行なうことができる。最も一般的には、N−アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンを使用して、各々O−アセチルチロシル化合物および3−ニトロ誘導体を形成させる。チロシン残基は125Iまたは131Iを用いてヨウ素化して、ラジオイムノアッセイに使用するための標識された蛋白を製造するが、上記のクロラミンT法が好適である。
側鎖カルボキシ基(アスパラギン酸またはグルタミン酸)は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドのようなカルボジイミド類(R'−N=C=N−R'[式中RおよびR'は異なったアルキル基である])との反応によって選択的に修飾される。さらに、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基は、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギンおよびグルタミン残基に変換される。
二価の試薬による誘導体化は、抗HRG抗体の精製法に使用するための、水不溶性支持体マトリックスまたはその表面へのHRGの架橋およびその逆を行なうのに有用である。一般に用いられる架橋試薬は、例えば1,1−ビス(シアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、例えば4−アジドサリチル酸、3,3'−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)のようなジスクシンイミジルエステル類を包含するホモ二価イミドエステル類、および、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンのような二価マレイミド類を包含する。メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミダートのような誘導体化試薬は、光の存在下で架橋を形成することのできる光活性化可能な中間体を生成する。別法として、米国特許第3969287号、3691016号;4195128号;4247642号;4229537号;および4330440号に記載される臭化シアン活性化炭水化物のような反応性水不溶性マトリックスおよび反応性基質を、蛋白の固定化に使用する。
グルタミンおよびアスパラギン残基はしばしば各々対応するグルタミン酸およびアスパラギン酸残基に脱アミド化される。別法として、これらの残基は緩和な酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの型も本発明の範囲内にある。
その他の修飾には、プロリンおよびリジンのヒドロキシ化、セリンまたはスレオニン残基のヒドロキシ基の燐酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化[T.E.クレイトン、プロテインズ:ストラクチャー・アンド・モレキュラー・プロパティーズ(Proteins:Structure and Molecular Properties)、W.H.フリーマン・アンド・Co.サンフランシスコ、79−86頁(1983)]、N末端アミンのアセチル化、および、任意のC末端カルボキシ基のアミド化が包含される。
HRGは所望によりHRGに対しヘテロローガスなポリペプチドと融合させる。このヘテロローガスなポリペプチドは、所望により、腐敗加速系(DAF)に見いだされるような固定配列、即ちリシンのような毒素、シュードモナスエキソトキシン、ゲロニン、または標的細胞に死をもたらすその他のポリペプチドである。これらのヘテロローガスなポリペプチドは、側鎖を介してまたは末端残基を介してHRGと共有結合している。同様に、HRGは、哺乳動物の標的細胞に対して毒性のまたは阻害的な他の分子、例えばトリコテセン類、または標的遺伝子の発現をブロックするアンチセンスDNAと複合体を形成する。
さらにHRGは、その本来のグリコシル化様式を変えることにより共有結合的に修飾される。所定の部位で単糖構成要素を付加、除去または変更することにより、またはグリコシル化サイトが付加もしくは除去されるようにHRG中の残基を修飾することにより、1またはそれ以上の炭水化物置換基が修飾される。
ポリペプチドのグリコシル化は典型的にはN−連結またはO−連結のいずれかである。N−連結とは、その炭水化物部分がアスパラギン残基の側鎖に結合していることを意味する。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン[ここでXは、プロリン以外の任意のアミノ酸である]が、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、これらトリペプチド配列のいずれかがポリペプチドペプチド中に存在すると、可能性あるグリコシル化サイトが作り出される。O−連結グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニン(5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた使用できる)に、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの一つが結合することを意味する。
HRGのアミノ酸配列を変えて1またはそれ以上の上記トリペプチド配列を含むようにすることによって、HRGにグリコシル化サイトが付加される(N−連結グリコシル化サイトのため)。この変更は、1またはそれ以上のセリンまたはスレオニン残基をHRGに付加、または該残基で置換することによっても達成される(O−連結グリコシル化サイトのため)。簡単にするため、HRGは、特にHRGをコードしているDNAを予め選択された塩基の位置で、所望アミノ酸に翻訳されるようなコドンが作られるように、突然変異させることにより、好ましくはDNAレベルの変化を介して変更させる。
HRGへのグリコシドの化学的または酵素的結合は、炭水化物置換基の数を増加させる。これらの方法は、N−およびO−連結グリコシル化の可能なポリペプチドの、宿主細胞中での産生を必要としないという点で有利である。用いられる結合様式に応じて、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシ基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えばシステインのもの、(d)遊離ヒドロキシ基、例えばセリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンのもの、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのもの、または、(f)グルタミンのアミド基、に結合させることができる。これらの方法は、WO87/05330(1987年9月11日公開)、およびアプリンおよびリストン(CRC・クリティカル・レビューズ・イン・バイオケミストリー(CRC Crit.Rev.Biochem.)、259−306頁(1981))に記載されている。
HRG上に存在する炭水化物部分もまた、化学的または酵素的に除去される。化学的脱グリコシル化は、そのポリペプチドをトリフルオロメタンスルホン酸化合物、または同等の化合物に暴露することを必要とする。この処理は、該ポリペプチドを無傷のままとしつつ、連結している糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除く殆どまたは全ての糖を開裂させる。化学的脱グリコシルは、ハキムディン等[アーカイブズ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジクス(Arch.Biochem.Biophys.)259巻52頁(1987)]およびエッジ等、[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)118巻131頁(1981)]により記載されている。炭水化物部分は、ソタクラ等[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth.Enzymol.)138巻350頁(1987)]により記載されているように、種々のエンド−およびエキソ−グリコシダーゼによってHRGから除去される。
細胞での発現中に加えられるグリコシル化は、ダスキン等[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)257巻3105頁(1982)]により記載されるように、ツニカマイシンによって抑制される。ツニカマイシンは蛋白−N−グリコシド結合の形成をブロックする。
HRGはさらに、米国特許第4640835号;4496689号;4301144号;4670417号;4791192号または4179337号に開示される方法において、HRGを種々の非蛋白ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン類と結合させることによって修飾される。
膜に結合していないHRGのインビボ循環半減期を延長させる一つの好ましい方法は、これを、半減期の延長を与えるポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)と複合体形成させることである。[マキシフィールド等、ポリマー(Polymer)16巻505−509頁(1975);F.E.ベイリー等、ノニオニック・サーファクタンツ(Nonionic Surfactants)(M.J.シック編)、794−821頁(1967);A.アブチョフスキー等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)252巻3582−3586頁(1977);A.アブチョフスキー等、キャンサー・バイオケミストリー・バイオフィジクス(Cancer Biochem.Biophys.)7巻175−186頁(1984);N.V.カーター等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)84巻1487−1491頁(1987);R.グッドソン等、バイオ・テクノロジー(Bio Technology)8巻343−346頁(1990)]。さらに、PEGに対する複合体形成は免疫原性および毒性を低下させると報告されている[A.アブチョフスキー等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)252巻3578−3581頁(1977)]。
さらにHRGは、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合によって製造されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−[メチルメタシラート]マイクロカプセル)中に、コロイド薬物デリバリー系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に捕らえられる。このような技術は、レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington's Phatmaceutical Sciences)16版、A.オソール編(1980)に開示されている。
HRGは、HRGのための検定における標準としての抗体の作製(例えばラジオイムノアッセイ、酵素結合イムノアッセイ、または放射性レセプター検定の標準として使用するため、HRGを標識することにより)、親和精製技術、および放射性ヨウ素、酵素、発蛍光団、スピン標識等で標識される場合は競合型レセプター結合検定に有用である。
当業者は、意図される目的のための最適な変異体を選択するために変異体をスクリーニングすることができるであろう。例えば、HRGの免疫学的性質の変化、例えば所定の抗原に対するまたはHER2レセプターに対する親和性の変化は、天然HRG(特に天然HRG−GFD)のような標準または対照を使用する競合型イムノアッセイによって測定される。その他の蛋白またはポリペプチドの性質の可能性ある修飾、例えば酸化還元もしくは熱安定性、疎水性、蛋白分解的減成の受け易さ、組み替え細胞培養または血漿中での安定性、または担体とのもしくは多量体への凝集傾向、は、当業者に良く知られる方法によって検定される。
1. ヘレグリンリガンドの治療的用途。
正常な細胞の増殖および分化におけるp185HER2およびそのリガンドの役割は知られていないが、正常な増殖および発達を促進し、且つ異常な増殖、特に悪性または新生物組織の増殖を阻害する、本発明のp185HER2リガンドの治療的用途を開発することが、本発明の目的である。
2. HRGの治療用組成物および投与。
所望の純度を有するHRG蛋白を、所望による生理学的に許容し得る担体、賦形剤、または安定剤と混合して[レミントンズ・ファーマシティカル・サイエンシズ(Remington's Pharmaceutical Sciences)、上記]凍結乾燥固体または水溶液の型とすることにより、保存のためのHRGまたはHRG抗体の治療用製剤を製造する。許容し得る担体、賦形剤または安定剤は、用いられる用量および濃度において被投与者にとって毒性でなく、燐酸、クエン酸、およびその他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸を包含する抗酸化剤;低分子量(約10残基より小さい)ポリペプチド(メトキシドの形成を防止するため);血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン類のような蛋白;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、および、グルコース、マンノース、またはデキストリン類を包含するその他の炭水化物;EDTAのようなキレート試薬;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール類;塩を形成するナトリウムのような対イオン;および/またはトゥイーン、プルロニクスまたはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤を包含する。
インビボでの投与に用いられるHRGまたはHRG抗体は無菌でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後に無菌濾過膜で濾過することによって容易に達成することができる。HRGまたはHRGに対する抗体は、通常凍結乾燥型または溶液で保存されるであろう。
治療用HRGまたはHRG特異抗体組成物は、一般に、無菌的進入孔を有する容器、例えば静脈内溶液袋または皮下注射針が貫通し得る栓を有するバイアル中に入れる。
アンタゴニストとして使用する場合のHRG、その抗体またはHRG変異体は、所望により、悪性腫瘍の処置に使用されることが知られている他の薬物と合し、またはこれと共に投与することができる。HRGが、例えば組織培養中で、HER2レセプターを刺激するアゴニストとして使用される場合、これは、増殖を刺激する他の組成物、例えばPDGF、FGF、EGF、成長ホルモンまたはその他の蛋白成長因子と合し、またはそれらと共に投与することができる。
HRGまたはHRG抗体の投与経路は既知の方法、例えば静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、もしくは外傷内経路により、または下記のように持続放出系による注射または注入、に従う。HRGは注入により連続的に、またはボーラス注射により投与する。HRG抗体は同じやり方で、または血流もしくはリンパ中に投与する。
持続放出製剤の好適な例は、該蛋白を含有する疎水性固体ポリマーの半透過性マトリックスを含み、このマトリックスは成型物、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル類、ヒドロゲル類[例えば、ランガー等、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J.Biomed.Mater.Res.)15巻167−277頁(1981)およびランガー、Chem.Tech.12巻98−105頁(1982)に記載のポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)]、ポリアクチド類[米国特許第3773919号、EP58481号]、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー[シドマン等、バイオポリマーズ(Biopolymers)22巻547−556頁(1983)]、非減成エチレン−ビニルアセタート[ランガー等、上記]、ルプロン・デポ(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロフェア)のような、減成可能な乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸[EP133988号]が包含される。エチレン−ビニルアセタートおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは100日間にわたり分子を放出することができるが、ある種のヒドロゲル類は、より短時間蛋白を放出する。カプセルに入った蛋白が体内に長時間留まると、これらは37℃で水分にさらされた結果として変性または凝集し、生物活性の損失およびことによると免疫原性の変化をもたらすかも知れない。関与している機構に応じて、蛋白の安定化のための合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィドの交換による分子間S−S結合の形成であると判明したならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾することにより、酸性溶液から凍結乾燥することにより、水分含量を管理することにより、適当な添加物を使用することにより、そして特異なポリマーマトリックス組成物を開発することにより、達成することができる。
持続放出HRGまたは抗体組成物は、さらに、リポソームに入ったHRGまたは抗体を包含する。HRGまたは抗体を含むリポソームは、自体既知の方法:DE3218121号;エプスタイン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)82巻3688−3692頁(1985);ファング等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)77巻4030−4034頁(1980);EP52322号;EP36676号;EP88046号;EP143949号;EP142641号;日本国特許出願83−118008号;米国特許第4485045号および4544545号;ならびにEP102324号によって製造する。通常、リポソームは、脂質含量が約30mol%のコレステロールであって、選択される割合は最適なHRG療法のために調整される、小さな(約200−800オングストローム)の単層型を有する。循環時間の向上されたリポソームが米国特許第5013556号に開示されている。
本発明のもう一つの用途は、HRGポリペプチドまたは抗体を、成型物中に取り込ませることからなる。このようなものは細胞増殖および発育の調節に使用することができる。これに加えて、細胞増殖および分割ならびに腫瘍の侵襲をこれらのもので調節することができる。
治療的に使用されるHRGまたは抗体の有効量は、例えば治療対象、投与経路、および患者の状態に依存するであろう。したがって、治療者は、用量を滴定し必要に応じて投与経路を修飾して最適の治療効果を得るようにする必要があるであろう。典型的な日用量は、上記の因子にもよるが、約1μg/kgないし100mg/kgまたはそれ以上の範囲であってよい。典型的には、臨床医はHRGまたは抗体を、所望の効果が達成される用量に到達するまで投与するであろう。この療法の経過は常套的検定により容易に監視される。
3. ヘレグリン抗体の製造および治療用途。
本発明に係る抗体は常套的スクリーニングによって得る。HRGに対するポリクローナル抗体は、一般に、HRGおよびアジュバントを複数回皮下(sc)または腹腔内(ip)注射することにより、動物において作製される。二価または誘導体形成試薬、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する複合体形成)N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR[式中、RおよびR1は相異なるアルキル基である]を用いて、標的アミノ酸配列を含むHRGまたはHRGフラグメントを、免疫されるべき種において免疫原性である蛋白、例えばスカシガイヘモシアニン、血清アルブミン、牛チログロブリンまたは大豆トリプシン阻害剤と複合体形成させることが有用であり得る。
動物を免疫する、または抗体産生細胞を取り出し培養する経路および手順は、一般に、確立されたそして常套的な抗体刺激および産生のための技術と調和している。しばしばマウスが免疫されるが、ヒト対象を包含する任意の哺乳動物対象またはそれらから得られる抗体産生細胞を免疫して抗体産生細胞を生成することができるということが理解できる。
典型的には、HRG免疫原1mgまたは1μg(それぞれウサギまたはマウスについて)をフロインド完全アジュバント3容量と合し、この溶液を複数の部位に皮内注射することにより、対象をHRGまたはその免疫原性複合体もしくは誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、フロインド完全アジュバント(または適当な他のアジュバント)に入れた免疫原の当初の量の1/5ないし1/10を複数の部位に皮下注射することにより、対象を追加免疫する。7ないし14日後、動物から採血し、血清を抗HRG抗体力価について検定する。力価がプラトーに達するまで対象を追加免疫する。異なった架橋試薬を介して、そして/または異なった蛋白と複合体形成させる以外は、対象は好ましくは同じHRGの複合体で追加免疫する。さらに複合体は蛋白融合物として組み替え細胞培養中で生成させることができる。また、免疫応答を促進させるため、ミョウバンのような凝集試薬を使用する。
免疫の後、免疫リンパ系細胞(典型的には脾臓細胞またはリンパ腺組織由来のリンパ球)を免疫した動物から回収し、常套的やり方で、例えば骨髄腫細胞との融合によって、またはエプスタイン−バー(EB)ウイルス形質転換によって、この細胞を不死化し、そして所望の抗体を発現しているクローンをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体を調製する。コーラーおよびミルシュタイン、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー(Eur.J.Immunol.)6巻511頁(1976)に最初に記載されたハイブリドーマ技術は、多くの特異的抗原に対するモノクローナル抗体を高レベルで分泌させるハイブリッドセルラインを産生させるために、広く適用されている。
或る生物種の細胞を他のものと融合させることは可能である。しかしながら、免疫された抗体産生細胞の供給源と骨髄腫とは、同じ生物種であることが好ましい。
抗HRGを産生するハイブリドーマセルラインは、培養上清を、HRGに結合する抗体についてスクリーニングすることにより同定する。これは、可溶性HRG調製物を用いる常套的イムノアッセイによって、または細胞結合HRGおよび標識された候補抗体を用いるFACSによって、日常的に達成される。
このハイブリッドセルラインは、細胞培養基中でインビトロで培養中に維持することができる。本発明に係るセルラインは、ヒポキサンチン−アミノプテリン チミジン(HAT)培地中、連続的セルラインを含む組成物中で選択しそして/または維持することができる。事実、いったんハイブリドーマセルラインが確立されると、これは様々な栄養学的に適合する培地上で維持することができる。そのうえ、ハイブリッドセルラインは、凍結および液体窒素の下での保管を含むかなり多数の常套的方法で保管し保存することができる。凍結されたセルラインは、回復させ、モノクローナル抗体の合成および分泌を再開させながら無期限に培養することができる。分泌された抗体は、沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー等のような常套的方法によって、組織培養上清から回収する。本明細書に記載される抗体は、IgGまたはIgMの精製のための常套的方法によってもハイブリドーマ細胞培養から回収される。何故ならこの事例は、これまで、プールされた血漿からこれらの免疫グロブリン類を精製するのに用いられてきた事例、例えばエタノールまたはポリエチレングリコール沈澱法であるからである。精製された抗体は無菌濾過し、所望により、被験試料中のHRGの診断的検定に使用するために、酵素またはスピン標識のような検出可能なマーカーと複合体形成させる。
マウスのモノクローナル抗体が日常的に使用されるが、本発明はこれに限定される訳ではなく、実際にはヒトの抗体を使用することができ、これは好ましいものであることが証明できる。このような抗体はヒトハイブリドーマを使用することにより取得できる[コテ等、モノクローナル・アンティボディーズ・アンド・キャンサー・セラピー(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)、アラン・R.リス、77頁(1985)]。マウス抗HRG可変領域および適当な生物活性(例えばヒトの補体を活性化しADCCを仲介する能力)を有するヒトの不変領域を含むキメラ抗体、キャビリー等[モリソン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)81巻6851頁(1984);ノイバーガー等、ネイチャー(Nature)312巻604頁(1984);タケダ等、ネイチャー(Nature)314巻452頁(1985)]は、本発明の範囲内にあり、常套的CRD−移植法によって産生された、人間に適合させた抗HRG抗体もまた同様である。
モノクローナル抗体の生成に副行路を付ける、抗体分子の抗原結合領域の組み替えDNA版(Fabまたは可変領域フラグメントとして知られる)を作り出す技術は、本発明の実施内に包含される。免疫された対象から採取された免疫系細胞由来の抗体特異的なメッセンジャーRNA分子を抽出し、これらを相補的DNA(cDNA)に転写し、このcDNAを細菌の発現系にクローニングし、そして所望の結合特性を選択する。スクリプス/ストラタジーン法は、発現されたFab蛋白を周辺腔(細菌の細胞膜と細胞壁の間)に移動させ、または分泌させる、リーダー配列を含むバクテリオファージラムダベクター系を使用する。所望の性質を有するHRGを結合するものを同定するための極めて多数の機能的Fabフラグメントを迅速に生成且つスクリーニングすることができる。
HRG−α、HRG−β1、HRG−β2およびHRG−β3に対し特異的な抗体を、上記のやり方で生成し使用することができる。本発明に係るHRG−α、HRG−β1、HRG−β2およびHRG−β3特異抗体は、好ましくはEGFファミリーの他の成員(図6)と、または互いに交叉反応しない。
HRG−NTD、HRG−GFDまたはHRG−CTPと特異的に結合することのできる抗体が、とりわけ興味深い。GFDおよび貫膜ドメインの間の蛋白分解的プロセシングサイトに特異的に結合することのできる抗体もまた興味深い。これらの抗体は、自体常套的な方法によって同定される。例えば、HRG−ECDまたはプロHRGに結合することのできる一連の候補抗体を、完全なプロHRGでの免疫を用いる上の方法によって取得する。次いでこれらは、常套的マッピング技術を用いて、種々のHRGドメインに結合する能力により、さらに分割できる。より好ましさは小さいが、予め決められたドメインに対し特異的な抗体を、対象を、実質上問題のドメインのみからなるポリペプチド、例えばNTDまたはCTPポリペプチドを含まないHRG−GFDで免疫することによって、まず作製する。これらの抗体は、特定のエピトープへの結合が所望でない限り、マッピングの必要はないであろう。
蛋白分解的プロセシングサイトに結合することのできる抗体は特に興味深い。これらは、CTPプロセシングサイトを含むHRGフラグメント、無傷のHRG、またはHRG−NTD−GFDのいずれかで免疫し、次いで、HRGをNTD−GFDフラグメントにプロセシングすることのできる分離されたセルラインまたは組み替え宿主細胞によって、HRGからNTD−GFDへの蛋白分解的プロセシングをブロックまたは阻害する能力についてスクリーニングすることによって生成される。これらの抗体はNTD−GFDの放出の抑制に有用であり、故にNTD−GFDの放出およびHER−2レセプターの刺激を防止する用途について有望である。これらはまた、細胞増殖および複製の制御にも有用である。抗GFD抗体は、同じ理由で有用であるが、プロセシングサイトに対する抗体ほど生物学的に有効ではないかも知れない。
HRGファミリーの成員のうち、ただ一つ、例えばHRG−αまたはHRG−βイソ型のうちいずれか一つにのみ結合することのできる抗体を選択する。HRGファミリー成員の各々は明確なGFD−貫膜ドメイン開裂サイトを持っていることから、これらの特異な配列に対して特異的に作製された抗体は、GFDの各々またはプロセシングサイトの高度に特異的な阻害を可能とし、それにより所望の生物学的応答を正確にする。例えば、HER−2依存性の乳癌腫細胞は、実際は一つのGFDイソ型によってのみ活性化され、そうでないとしても、GFDの活性化は、HER−2を有する細胞自身またはGFD生成細胞のいずれかにある特定のプロセシング配列からのみ始まり得る。GFDまたはプロセシングサイトを活性化する標的の同定は、HER−2依存性癌腫を分析する簡単な仕事であって、例えば、組織を、該レセプターを伴う特定のGFDファミリー成員の存在について分析、または、組織を或るHRGファミリー成員(これはしかる後治療的標的として働く)の発現について分析することによる。これらの選択的抗体は、上に記載されたのと同じやり方で生成され、標的配列またはドメインによる免疫によって、またはより広い特異性を有する一連の抗体から選択することによって、生成される。
上記のように、該抗体は、標的配列に対して高い特異性および親和性を持っていなくてはならない。例えば、GFD配列に対して作製された抗体は、GFDに対して、GFDがHER−2レセプターに対して有する親和性より高い親和性を持っていなくてはならない。このような抗体は日常的なスクリーニング法によって選択される。
4. ヘレグリンおよびその抗体の非治療的用途。
HRGをコードしている核酸は、組織特異的な分類のための診断薬として使用できる。例えば、インサイトゥハイブリダイゼーション、ならびにノーザンおよびサザンブロッティング、ならびにPCR分析を使用して、HRGをコードしているDNAおよび/またはRNAが、評価される型の細胞に存在するか否かを決定することができる。特にこの核酸は、或る型の腫瘍細胞、例えば乳腺、胃および結腸の腺癌、唾液腺およびp185HER2を含むその他の組織のための特異的プローブとして有用であり得る。
分離されたHRGは、未知の量のHRGを含有する試料と比較することのできる標準または対照として、定量的診断検定に使用することができる。
分離されたHRGは、インビトロ細胞培養のための成長因子として、そしてp185HER2または他の類似のレセプターを含む細胞の増殖をインビボで促進する成長因子として使用することができる。
HRG抗体は、特異的細胞または組織におけるHRGの発現のための診断的検定に有用である。この抗体は、上記のHRGと同じやり方で標識し、そして/または不溶性マトリックス上に固定化する。
HRG抗体はさらに、組み替え細胞培養または天然からのHRGの親和精製に有用である。他のHRGと検出し得るほどに交叉反応しないHRG抗体は、他の既知のリガンドまたは汚染蛋白を含まないHRGの精製に使用することができる。
HRGおよびその抗体のための適当な診断的検定は自体既知である。係る検定は、競合的およびサンドイッチ検定、ならびに立体阻害検定を包含する。競合的およびサンドイッチ法は、その方法の重要な部分として相分離工程を使用し、一方、立体阻害検定は、単一の反応混合物中で実施する。検定される物質の分子量に応じて或る方法が好ましいということはあるが、基本的には、HRGとHRGを結合する物質の検定には同じ方法が用いられる。故に、試験される物質は、抗原または抗体としてのその資格に関わりなく、本明細書においては被検体と呼ばれ、被検体に結合する蛋白は、それらが抗体であれ、細胞表面レセプターであれ、または抗原であれ、結合相手と称される。
HRGまたはその抗体の分析法は全て1またはそれ以上の以下の試薬を使用する:標識された被検体類似体、固定化された被検体類似体、標識された結合相手、固定化された結合相手および立体的複合体。標識された試薬は「トレーサー」としても知られる。
使用される標識(これはHRGをコードしている核酸をプローブとしての使用のために標識するのにも有用である)は、被検体およびその結合相手の結合を妨害しない任意の検出可能な官能性である。イムノアッセイのための数多くの標識が知られており、その例には、蛍光色素、化学ルミネセンス、および放射性標識のような直接検出され得る部分、ならびに、検出されるためには反応し、または誘導体化されねばならない、酵素のような部分が包含される。このような標識の例には、放射性同位元素32P、14C、125I、3H、および131I、発蛍光団、例えば希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルのルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェロン、2,3−ジヒドロフタルアジンジオン類、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−燐酸デヒドロゲナーゼ、ヘテロ環オキシダーゼ、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼのような色素前駆体を酸化するために過酸化水素を使用する酵素と結合させた、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル等が包含される。
これらの標識を蛋白またはポリペプチドに共有結合で結合させるために、常法が利用できる。例えば、ジアルデヒド類、カルボジイミド類、ジマレイミド類、ビス−イミダート類、ビス−ジアゾ化ベンジジン等のような結合試薬を用いて、抗体を、上記の蛍光、化学ルミネセンス、および酵素標識と結合させることができる。例えば、米国特許第3940475号(蛍光定量法)および3645090号(酵素);ハンター等、ネイチャー(Nature)144巻945頁(1962);デイビット等、バイオケミストリー(Biochemistry)13巻1014−1021頁(1974);ペイン等、ジャーナル・オブ・イミュノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods)40巻219−230頁(1981)およびニグレン、ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(J.Histochem.and Cytochem.)30巻407−412頁(1982)を参照されたい。ここで好ましい標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼのような酵素である。酵素を包含するこのような標識の、抗体との複合体形成は、イムノアッセイ技術における通常の知識を有するものにとって標準的な操作法である。例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、J.J.ランゴーンおよびH.バン・バナキス編、73巻(アカデミック・プレス、ニューヨーク、ニューヨーク、1981)、147−166頁の、オサリバン等、「メソッズ・フォア・ザ・プリパレーション・オブ・エンザイム−アンティボディ・コンジュゲイツ・フォア・ユース・イン・エンザイム・イミュノアッセイ」を参照されたい。このような結合法は、すべて蛋白である、HRGまたはその抗体との使用に好適である。
或る種の検定法には、試薬の固定化が必要である。固定化は、溶液中に遊離で存続するいかなる被検体からも結合相手を分離する必要がある。通常これは、結合相手または被検体類似体を、検定操作の前に、水不溶性マトリックスまたは表面に吸着させることによって[ベニッヒ等、米国特許第3720760号]、共有結合によって(例えばグルタルアルデヒド架橋を用いて)、または、例えば免疫沈降により、結合相手もしくは類似体を後で可溶化することによって、達成される。
競合的またはサンドイッチ検定として知られる他の検定法は、商業的診断薬産業において充分確立され広く使用されている。
競合的検定は、トレーサー類似体が、共通の結合相手上の限られた数の結合サイトを、被験試料の被検体と競合することに拠るものである。結合相手は一般に、競合の前または後において不溶化されており、次いでこの結合相手に結合したトレーサーおよび被検体を、非結合トレーサーおよび被検体から分離する。分離は、デカンテーションによって(結合相手が前もって不溶化されている場合)または遠心によって(結合相手を競合反応後に沈澱させる場合)達成する。被験試料被検体の量は、マーカー物質の量によって測定される結合したトレーサーの量に逆比例する。既知量の被験体による用量−反応曲線を作成し、試験結果と比較して、被験試料中に存在する被検体の量を定量的に決定する。これらの検定は、検出可能マーカーとして酵素が用いられる場合、ELISA系と呼ばれる。
「等質」検定と呼ばれるもう一種類の競合検定は、相の分離を必要としない。ここでは、酵素と被検体の複合体を作成し、抗−被検体が被検体に結合する時に、抗−被検体の存在が酵素活性を修飾するように使用する。この場合、HRGまたはその免疫学的に活性なフラグメントを、二価有機橋によって、ペルオキシダーゼのような酵素と複合体形成させる。複合体は、抗HRGと共に使用して抗HRG抗体の結合が標識の酵素活性を阻害または増強するように選択する。この方法自体はEMITという名称の下に広く実施されている。
立体的複合体は、等質検定のための立体障害法に使用される。これらの複合体は、低分子量のハプテンを小型の被検体に共有結合させることによって合成され、その結果ハプテンに対する抗体は、抗−被検体として同時に該複合体と結合することが実質上できない。この検定法の下では、被検試料中に存在する被検体は抗−被検体に結合し、それにより抗−ハプテンを該複合体に結合させ、その結果複合体ハプテンの性格上の変化、例えばハプテンが発蛍光団である場合には蛍光の変化をもたらす。
サンドイッチ検定は、HRGまたはHRG抗体の測定にとって特に有用である。連続的サンドイッチ検定においては、固定化された結合相手を用いて被検試料の被検体を吸着し、被検試料を例えば洗浄によって除去し、結合した被検体を用いて標識された結合相手を吸着し、そして次に、結合した物質を、残留しているトレーサーから分離する。結合したトレーサーの量は、被検試料の被検体に直接比例する。「同時」サンドイッチ検定においては、被検試料は標識された結合相手を添加する前に分離しない。一方の抗体として抗HRGモノクローナル抗体、そして他方の抗体としてポリクローナル抗HRG抗体を使用する連続的サンドイッチ検定は、被験試料をHRG活性について試験する際に有用である。
上に述べたのは、HRGおよび抗体に対する診断的検定の例に過ぎない。前記の生物検定を包含する、これらの被検体の測定のために現在または今後開発される他の方法も本発明の範囲内に包含される。
HRGポリペプチドは、p185HER2およびHRG、より詳細にはHRG−α、HRG−β1、HRG−β2およびHRG−β3に対する結合親和性を有する他の類似のレセプター、の親和精製に使用することができる。HRG−α、HRG−β1、HRG−β2およびHRG−β3を使用して、HRG部分が核酸およびハプテンへの親和結合に有用である、融合ポリペプチドを形成させることができる。
HRGポリペプチドは、p185HER2への結合についての可能性あるアゴニストまたはアンタゴニストの競合的スクリーニングのためのリガンドとして使用することができる。HRG変異体は、それらが、用いられる分析系によって認識される、例えば抗HRG抗体であるならば、HRGのための検定の標準または対照として有用である。変性したHRGまたはそのフラグメントに結合できる抗体は、HRGが検定前に変性されている検定に使用され、この検定において、変性したHRGまたはフラグメントは標準または対照として使用される。好ましくは、HRG−α、HRG−β1、HRG−β2およびHRG−β3は検出し得るよう標識され、結合したp185HER2に対する競合検定は、標準的検定法を用いて実施する。
本明細書中HRG−αに関して記載した方法および操作は、HRG−β1、HRG−β2およびHRG−β3ならびに他の新規なHRGリガンドならびにそれらの変異体にも同様に適用することができる。限定のためにではなく例示のために以下の実施例を供する。
実施例
実施例1 乳癌細胞の上清の調製。
ヒト乳癌腫MDA−MB−231の上清からヘレグリン−αを分離した。HRGが放出され細胞培養基から分離された。
a.細胞培養。
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手できるヒト乳癌腫細胞MDA−MB−231(ATCC HTB26)を、まず、連続的継代によって、25cm2組織培養フラスコから890cm2のプラスチックローラー瓶(カミング、カミング、NY)の規模に拡大し、種菌をローラー瓶の規模に維持した。細胞を継代し種菌を維持するために、フラスコおよびローラー瓶をまず燐酸緩衝化塩水(PBS)ですすぎ、次いでトリプシン/EDTA(シグマ、セントルイス、Mo)と共に37℃で1−3分間インキュベートした。次に、分離した細胞を、牛胎児血清(FBS)(ジブコ、グランド・アイランド、NY)を含有する新たな培地中で数回ピペット操作して、細胞凝集塊を破壊し、トリプシンを不活性化した。最後にこの細胞を1:10の比率で新たな培地に分け、新しいフラスコまたは瓶に移し、37℃でインキュベートし、ほぼ密集成長するまで増殖させた。細胞が維持される成長培地は、幾つかのアミノ酸、ビタミン、糖、および塩の濃度に関して修飾し、5%FBSを添加した、混合DME/ハム−F−12培地処方であった。同じ基本培地を無血清リガンド産生のために使用し、0.5%プリマトーンRL(シェフィールド、ノーウィック、NY)を添加する。
b.大規模生産。
大規模MDA−MB−231細胞増殖を、加重した架橋ゼラチン製のパーセル・バイオリティカマイクロキャリアー(ハイクローン・ラボラトリーズ・ローガン、UT)を使用することにより達成した。マイクロキャリアーは、まず水和させ、オートクレーブにかけ、そして製造者の指示に従ってすすいだ。10本のローラー瓶からの細胞をトリプシン処理し、成長培地3リットルおよび水和したマイクロキャリアー10−20gを入れた接種回転容器に加えた。細胞を約1時間穏やかに攪拌し、成長培地7リットルを入れた、機器を備えた10リットル発酵槽に移した。マイクロキャリアーの懸濁を維持するために培養を65−75rpmで攪拌した。発酵槽は37℃に調節し、炭酸ナトリウムおよびCO2の添加によりpHを7.0−7.2に維持した。空気および気体酸素を散布して、培養を約40%の空気飽和に維持した。細胞数を蛍光生体染色(二酢酸フルオレセイン)により顕微鏡的に監視し、トリパンブルー染色と比較して、細胞の相対的生存および細胞によるマイクロキャリアー進入の程度を評価した。細胞−マイクロキャリアー凝集体の大きさの変化を、顕微鏡写真により監視した。
マイクロキャリアーが90−100%密集性となったと思われた時に、培養を無血清培地で洗浄して血清を除去した。これは、攪拌および他の制御を停止し、担体を容器の底に沈ませることによって達成した。およそ9リットルの培養上清をポンプで容器から抜き、同容量の無血清培地で置き換えた(プリマトーンRLを添加したまたは添加していない上記と同じ基本培地)。マイクロキャリアーを簡単に再懸濁させ、FBSの1000倍の除去が達成されるまで、同じ工程を反復した。次に、細胞を無血清培地中で3−5日間インキュベートした。培養のグルコース濃度を毎日監視し、必要に応じてグルコースを添加し、発酵槽中の濃度を1g/Lまたはそれ以上に維持した。収穫の時点でマイクロキャリアーを前記のように沈ませ、上清を無菌的に取り、精製用に2−8℃で保存した。新たな無血清培地を発酵槽に入れ、マイクロキャリアーを再懸濁し、培養をインキュベートし前記のように収穫した。この操作は4回反復することができた。
実施例2 成長因子活性の精製。
MDA−MB−231細胞からの条件培地(10−20リットル)をソーバル遠心機中10000rpmでの遠心によって透明とし、0.22ミクロンのフィルターで濾過し、次に10kDaカットオフのポリスルホン膜を付けたミニタン・タンジェンシャル・フロー・ユニット(ミリポア・Corp.)により、室温で10−50(およそ25)倍に濃縮した。別法として、YM3膜を付けた2.5Lのアミコン・スタード・セルにより、培地を4℃で濃縮することもできる。濃縮後、培地を10000rpmで再度遠心し、上清を35−50ml等分試料として−80℃で凍結した。
ヘパリンセファロースをファルマシア(ピスカタウェイ、NJ)から購入し、製造者の指示に従って調製した。5mlの樹脂をカラムに詰め、よく洗浄し(100カラム容量)、燐酸緩衝化塩水(PBS)で平衡化した。濃縮した条件培地を融解し、0.22ミクロンのフィルターで濾過して粒子物質を除き、ヘパリン−セファロースカラムに流速1ml/分でロードした。通常のロードは、40倍濃縮の培地30−50mlとした。ローディング後、280nmの吸収が、蛋白の溶出が開始する前の基線に戻るまで、カラムをPBSで洗浄した。カラムを、PBS中で作成した0.3M、0.6M、0.9Mおよび(所望により)2.0MNaClの連続的段階的塩により、1ml/分で溶離した。各段階は、吸収が基線に戻るまで、通常6−10カラム容量継続させた。1ml容量の画分を集めた。各洗浄または塩の段階に対応する全ての画分をプールし、次のMDA−MB−453細胞検定のために保存した。
チロシン燐酸化刺激活性の大半が0.6MNaClのプールに見いだされ、これを次の精製工程に使用した。ヘパリン−セファロースクロマトグラフィーからの活性画分を融解し、脱イオン(ミリQ)水で3倍に希釈して塩濃度を低下させ、そして、17mM燐酸Na、pH6.8で平衡化したポリアスパラギン酸カラム(ポリCAT A、4.6x100mm、ポリLC、コロンビア、MD)にロードした。この精製工程のための緩衝液は全て、このカラム上の蛋白の溶解を改善するため、30%エタノールを含有させた。ローディングの後、カラムを平衡緩衝液で洗浄し、17mM燐酸Na、pH6.8緩衝液中のNaCl 0.3Mから0.6Mに至る塩の直線勾配で溶出した。カラムを1ml/分でローディングおよび展開し、1mlの画分を、勾配溶離の間集めた。画分は4℃で保存した。次の精製工程のための充分な材料を得るため、複数のヘパリン−セファロースおよびポリCatカラムを処理した。ポリCatAカラムからの典型的な溶出プロフィルを図1に示す。10−25μLの等分試料を、検定およびSDSゲル分析のために、それぞれの画分から採取した。
チロシン燐酸化刺激活性は、ポリCAT Aカラムの溶出画分全体に見いだされ、その活性の大半は、クロマトグラムのピークCに対応する画分(およそ0.45M NaClの塩濃度)に見いだされた。これらの画分をプールし、0.1容量の1%TFAの添加により0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)に調節した。2容量の脱イオン水を添加して前工程からの塩およびエタノールを希釈し、そして、この試料を、15%アセトニトリルを加えた水に入れた0.1%TFAからなる緩衝液中で平衡化したC4逆相カラム(シンクロパックRP−4、4.6x100mm)を利用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるさらなる精製に付した。このHPLC操作は室温下に、1ml/分の流速で実施した。試料をローディングした後、カラムを0.1%TFA/15%アセトニトリルで再平衡化した。10分間でアセトニトリル濃度が15%から25%に増加する(1%/分)アセトニトリルの勾配を確立させた。次に、60分間で25から40%アセトニトリルに至る勾配(0.25%/分)でカラムを展開した。1mlの画分を集め、蒸発を防ぐためにキャップをし、4℃で保存した。10ないし50μLの等分試料を取り、減圧下に蒸発乾固し(スピードバク)、チロシン燐酸化検定用に検定緩衝液(0.1%牛血清アルブミンを加えたPBS)で再構成した。さらに10ないし50μLの等分試料を取り、SDSゲル電気泳動による分析のために、上記のように乾燥した。典型的なHPLCプロフィルを図2に示す。
活性の主たるピークは画分17に見いだされた(図2B)。SDSゲル分析により、画分17は、45000ダルトン分子量標準と共に移動する単一の主たる蛋白種を含むことが判明した(図2C、3)。別の調製物において、45000ダルトンの蛋白の存在は、MDA−MB−453細胞検定におけるチロシン燐酸化活性の刺激と共に移動した。この45000ダルトンの蛋白のクロマトグラフィー特性は非定型的であって、調製物中の他の多くの蛋白とは対照的に、45000ダルトンの蛋白は2または3画分以内に逆相カラムから溶出されなかった。その代わり、これは5−10画分にわたって溶出した。これは恐らく、広範囲にわたる翻訳後修飾によるものであろう。
a.蛋白配列の決定。
45000ダルトン蛋白を含有する画分を、アミノ酸配列決定のために減圧乾燥した。試料を70%蟻酸に再溶解し、N末端配列決定のために、アプライド・バイオシステムズ、Inc.のモデル470A気相配列決定機にロードした。識別し得るN末端配列は得られず、これはN末端がブロックされていることを示唆するものである。この蛋白をまずSDSゲルに付し、プロブロット膜にブロッティングし、クーマシーブリリアントブルーによる迅速染色により位置を決定した後に45000ダルトンのバンドを切り取った場合にも同様の結果が得られた。
45000ダルトンの蛋白を含有する画分を、メチオニン残基の位置で開裂する臭化シアン、リジン残基のC末端側で開裂するリジン−C、またはアスパラギン酸残基のN末端側で開裂するAsp−Nのいずれかを用いる部分消化に付すことにより、内部アミノ酸配列を得た。消化後の試料な直ちに配列決定するか、または、このペプチドを、0.1%TFAで平衡化し、0.1%TFA中1−プロパノールの勾配で溶離する、シンクロームC4カラム(4000A、2x100mm)上のHPLCクロマトグラフィーによってまず分離した。クロマトグラフィーの実施から得られるピークを、配列決定前に減圧乾燥した。
15番(リジンC−15)と名付けられたピーク中のペプチドの配列決定の際、幾つかのアミノ酸が各実施サイクル上に見いだされた。注意深く分析したところ、この画分は、幾つかの異なったN末端を有する同じ塩基性アミノ酸を含み、これが各サイクルに複数のアミノ酸を生じさせていることが明らかとなった。デコンボルーション後に以下の配列が決定された(配列番号3):
Figure 0003595552
最初の収量は8.5pmolであった。24のアミノ酸を含むこの配列は、既知のいかなる蛋白にも対応しなかった。残基1は、後に、cDNA配列からCysであることが判明し、残基9は正しいことがわかった。15および22位の未知のアミノ酸は、各々Cys及びCysであることがわかった。
HPLCによる分離をせずに臭化シアンおよびAsp−N消化の後に試料の配列決定を行なって、cDNA配列を確認した。得られた配列は第I表に示すが、これはcDNA配列から推理された45000蛋白についての配列を確認するものである。この蛋白のN末端は未知の保護基でブロックされているようである。或る時、PVDFブロットからの45000ダルトンバンドの直接配列決定によって、極めて微量の初期収量(0.2pmol)のこの配列(配列番号4):
Figure 0003595552
が明らかとなった。これは、HRGcDNA配列の現存するN末端付近の46位のセリンで始まる配列に対応し、この事は、45000蛋白のN末端が該配列中のこの点またはこれより前にあることを示唆するものである。
実施例3 ヒトヘレグリンのクローニングおよび配列決定。
p185HER2リガンドのcDNAクローニングを以下のように達成した。リジンC−15ペプチドのアミノ酸配列の一部を、45kD HRG−αリガンドをコードしているcDNA用のプローブを設計するために、解読した。アミノ酸配列(配列番号5)NH2−……AEKEKTFXVNGGEに対応する、以下のような39残基長の8倍縮重デオキシオリゴヌクレオチドを化学合成した(配列番号6):
Figure 0003595552
このアミノ酸配列中、Xで示される未知のアミノ酸残基には、プローブの設計のためにシステインを割り当てた。このプローブは放射性燐酸化し、低緊縮ハイブリダイゼーションによって、λgt10中でヒトMDA−MB−231細胞mRNAから組み立てられたオリゴdTでプライミングされたcDNAライブラリーのスクリーニングに使用した[ヒュングら、1984、DNAクローニング、1巻、ア・プラクティカル・アプローチ(D.グローバー編)、49−78頁、IRLプレス、オクスフォード]。λgt10her16およびλgt10her13と命名された二つの陽性クローンが同定された。DNA配列分析により、これら二つのクローンが同一であることが明らかとなった。
λgt10her16の2010塩基対のcDNAヌクレオチド配列(図4)は、ヌクレオチド位3−5のアラニンで始まりヌクレオチド位2007−2009のグルタミンで終わる669アミノ酸の単一の長い開放読み取り枠を含んでいる。翻訳された配列には停止コドンは見いだされない。しかしながら、後のヘレグリンβ型クローンの分析は、ヌクレオチド位135−137にコードされているメチオニンが開始メチオニンであることを示している。プローブとのヌクレオチド配列相同性は、塩基681−719の間(この数を含む)に見いだされている。プローブによりコードされているアミノ酸配列と、リジンC−15フラグメントに対して決定されたアミノ酸配列で該プローブの両端に隣接しているアミノ酸配列との相同性は、分離されたクローンが少なくとも45kD蛋白のリジンC−15フラグメントをコードしている事を立証するものである。
ハイドロパシー分析は、残基287−309を含む極めて疎水性の強いアミノ酸領域(図4)の存在を示し、この蛋白が貫膜または内部シグナル配列ドメインを含み、故に、細胞の膜に結合していることを示す。
2010bp cDNA配列によりコードされている669アミノ酸配列は、アスパラギン164、170、208、437および609位にアスパラギン結合グリコシル化のための可能性ある部位を含んでいる[R.ウィンツラー、ホーモナル・プロテインズ・アンド・ペプタイズ、(C.H.リー編)1−15頁、アカデミック・プレス、ニューヨーク(1973)]。可能性あるO−グリコシル化サイト[R.D.マーシャル、(1974)、バイオケミカル・ソサイアティー・シンポウジアム(Biochem.Soc.Symp.)40巻17−26頁]は、アミノ酸209−218位のセリンおよびスレオニン残基の群を含む領域に示される。3個の可能性あるグリコサミノグリカン付加サイト[L.A.ゴールドシュタイン等、(1989)、セル(Cell)56巻1063−1072頁]は、アミノ酸42−43、64−65および151−152に存在するセリン−グリシンジペプチドに位置している。グリコシル化は、恐らく、HRGのNTD−GFD(細胞外)領域について算出された約26KDというNWと、精製されたHRGについて観察される約45KDというNWの間の矛盾を説明するものであろう。
このアミノ酸配列は、1)成熟型が蛋白分解的に放出される、各成長因子のプロ型の存在[A.グレイ、T.J.ダル、およびA.ウルリッヒ、(1983)、ネイチャー(Nature)303巻722−725頁;G.I.ベル等、(1986)、ヌクレイック・アシド・リサーチ(Nuc.Acid Res.)14巻8427−8446頁;R.デリンク等、(1984)、セル(Cell)287−297頁];2)およそ40のアミノ酸(EGF様構造モチーフ)[R.C.サベッジ等(1973)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)248巻7669−7672頁]にわたって特徴的に位置している6個のシステイン残基、即ちHRG−αシステイン226、234、240、254、256および265の保存;ならびに、3)EGFホモローガス領域のカルボキシ末端側の近位に存在する貫膜ドメインの存在(図4および6)、を包含する、幾つかの特徴を、貫膜結合成長因子の表皮成長因子(EGF)ファミリーと共有している[G.カーペンターおよびS.コーエン(1979)、アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)48巻193−216頁;J.マセンク(1990)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)265巻21393−21396頁]。
幾つかのヒトEGF関連蛋白のEGFモチーフおよび隣接貫膜ドメインの領域のアミノ酸配列を並べると(図6)、EGFモチーフHRGの第一および第六システインの間が、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)に最も類似(50%)していることが示される[S.ヒガシヤマ等(1991)、サイエンス(Science)251巻936−939頁]。この同じ領域において、HRGはアムフィレグリン(AR)と〜35%ホモローガスであり[G.D.プラウマン等、(1990)、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell.Biol.)10巻1969−1981頁]、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)(8)と〜32%ホモローガスであり、EGFと27%ホモローガスであり[G.I.ベル等、(1986)、ヌクレイック・アシド・リサーチ(Nuc.Acid Res.)、14巻8427−8446頁];そして神経鞘腫由来成長因子と39%ホモローガスである[H.キムラ等、ネイチャー(Nature)348巻257−260頁、1990]。EGFのシステイン残基間のジスルフィド結合が、EGFについて決定された[R.C.サベッジ等、1973)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)248巻7669−7672頁]。これらのジスルフィドは、この領域の二次構造を規定し、三つのループの境界を形成している。アミノ末端上の1から始まってシステインに番号を付けることにより、ループ1はシステイン1および3で表わされ;ループ2はシステイン2および4;そしてループ3はシステイン5および6で表わされる。このファミリーの他の成員について、該領域におけるジスルフィドの正確な立体配置は決定されていないが、6個のシステイン、ならびに他の幾つかの残基、即ちグリシン238および262ならびに264位のアルギニンの厳密な保存は、これらもまた同じ配置を有するであろう事を示している。HRG−αおよびEGFは共にループ1に13のアミノ酸を持っている。HB−EGF、アムフィレグリン(AR)およびTGFαはループ1に12のアミノ酸を持っている。各成員は、HRG−αが13個である以外はループ2に10個の残基を有している。5つの成員は全て第三ループに8個の残基を有している。
EGF、AR、HB−EGFおよびTGF−αは全て、それらの貫膜ドメインの効により、膜結合蛋白として新たに合成される。プロ蛋白はその後プロセシングされて成熟した活性分子を生成する。TGF−αの場合、膜に付随する該分子のプロ型もまた生物学的に活性であり[R.ブラハマン等、(1989)、セル(Cell)56巻691−700頁]、この特色はHRG−αの場合にもまた真であり得るという証拠がある。EGFは1168アミノ酸の貫膜結合プロEGFとして合成され、これは、アルギニン970およびアスパラギン971の間のアミノ末端ならびにアルギニン1023およびヒスチジン1024の間のカルボキシ末端で開裂して[G.カーペンターおよびS.コーエン(1979)、アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)48巻193−216頁]、三つのループ、3個のジスルフィド結合の特徴的構造を含む53個のアミノ酸の成熟EGF分子を生成する。252アミノ酸プロARは、アスパラギン酸100およびセリン101の間、ならびにリジン184およびセリン185の間で開裂して、成熟ARの84アミノ酸型を生成し、そして、グルタミン106およびバリン107の間のNH2−末端開裂により、78アミノ酸型が生成する[G.D.プラウマン等(1990)、モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell.Biol.)10巻1969−1981頁]。HB−EGFはその208アミノ酸の第一次翻訳産物から、アルギニン73およびバリン74の間、ならびにカルボキシ末端方向におよそ84アミノ酸だけ離れた第二の部位で開裂することにより、提唱されているその84アミノ酸型へとプロセシングされる[S.ヒガシヤマ等、およびM.クラグスバーン(1991)、サイエンス(Science)251巻936−939頁]。TGFαの160アミノ酸プロ型は、一方ではアラニン39およびバリン40の間の開裂、そして下流のアラニン89およびバリン90の間の開裂によって、成熟した50アミノ酸蛋白にプロセシングされる[デリンク等、(1984)、セル(Cell)38巻287−297頁]。上記分子の各々について、EGFモチーフの第六システインおよび巻膜ドメインの開始位を境界とする領域において、COOH−末端のプロセシングが起こる。
HRGの第一および第六システインの間の残基が、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)に最も類似(45%)している。この同じ領域において、これらはアムフィレグリン(AR)と35%一致し、TGF−αと32%一致し、そしてEGFと27%一致している。EGFモチーフの外では、HRGと他のEGFファミリー成員の間には殆ど類似性が無い。EGF、AR、HB−EGFおよびTGF−αは全て膜に結合したプロ蛋白から誘導され、これがEGF構造単位の両側でプロセシングされて50−84アミノ酸の成熟蛋白(16−19)を生成する。他のEGFファミリー成員と同様に、HRGは膜結合プロ型から誘導されるようであるが、成熟蛋白の生成には、システイン群に対するC末端のただ一つの開裂を必要とするだけである。
HRGは、そのレセプターに結合し成長調節シグナルの形質導入の引金となることによってその生物学的機能を発揮し得る。これは可溶性分子として、または、時にTGFαの場合にそうであるように、恐らくはその膜結合型として達成され得る[R.ブラハマン等、(1989)、セル(Cell)56巻691−700頁]。シグナル形質導入の刺激とは逆に、またはそれに加えて、HRGは標的細胞によって内在化し、その場合、次いで他の調節遺伝子の制御領域と相互作用し、その結果、細胞の核にそのメッセージを直接伝達することができる。HRGがこのような機構によってその作用を仲介するという可能性は、核の位置シグナルと思われるもの[ロバーツ、バイオケム−バイオフィズ・アクタ(Biochem−Biophys Acta)(1989)1008巻263−280頁]が、58−60位の3個のリジン残基付近の領域に存在するという事実によって示唆される(図4)。
図4のDNA配列を用いてヒトMDA−MB−231から組み立てられたcDNAライブラリーからさらなるcDNA配列を選択することにより、HRG−αの全長cDNAの分離を達成する。HRG−αをコードしている全長cDNAクローンは、3'および5'の両方向においてより長くHRG−αをコードしているcDNAを同定し、次いで異なったcDNAの混成物をスプライスすることによって得る。さらなるcDNAライブラリーは、この目的に沿って組み立てられる。以下のものは、組み立てられ得る三つの型のcDNAライブラリーである:1)オリゴ−dTでプライミングされるcDNAライブラリー。この場合、ポリアデノシン残基のつながりが専らプライミングされる、2)mRNAのいかなる特定の領域に対しても非特異的である、短い合成デオキシオリゴヌクレオチドを用いて無作為にプライミングされるcDNAライブラリー、および、3)mRNAの所望領域に対し特異的な短い合成デオキシオリゴヌクレオチドを用いて特異的にプライミングされるcDNAライブラリー。このようなcDNAライブラリーの分離方法は前に記載した。
実施例4 ノーザン分析によるHRG−αmRNA発現の検出。
高緊縮条件下でのMDA−MB−231およびSK−BR−3細胞mRNAのノーザンブロット分析は、MDA−MB−231のmRNAに、少なくとも5個のハイブリダイズするバンドを示し、その場合6.4Kbのバンドが優勢であり、他の、より弱いバンドは9.4、6.9、2.8および1.8Kbの位置である(図5)。SK−BR−3のmRNAにはハイブリダイズするバンドは見られない(このセルラインはp185HER2を過剰発現する)。MDA−MB−231細胞中のこれらの複数のメッセージの存在は、該遺伝子の交互のスプライシング、遺伝子の一次転写物の様々なプロセシング、または、別のホモローガスなメッセージの転写物の存在、のいずれかを示すものである。これらのメッセージのうちの一つは、HRG−αの可溶性非貫膜結合型をコードすることができる。係るメッセージ(図5)は、HRG−αの可溶性非貫膜結合型をコードしているcDNAの産生に使用することができる。
実施例5 ヘレグリン−αによる細胞増殖の刺激。
EGFレセプターまたはp185HER2レセプターを発現する幾つかの異なった乳癌セルラインを、リガンド調製により、それらの増殖阻害または刺激に対する感受性について試験した。試験されたセルラインは、p185HER2を過剰発現するセルラインSK−BR−3(ATCC HTB30);EGFレセプターを過剰発現するラインMDA−MB−468(ATCC HTB132);および、中等度レベルのp185HER2の発現を行なうMCF−7細胞(ATCC HTB22)であった。これらの細胞は、確立された培養技術に従って培養中に維持され継代された。細胞は、10%牛胎児血清を含むDMEMおよびF−12の1:1混合物中で増殖させた。検定のために、保存培養をトリプシンで処理して細胞を培養皿から分離し、約20000細胞/ウェルのレベルで96ウェルの微量滴定板に分配した。この増殖検定の実施中、これらは1%牛胎児血清を添加した培地中に維持した。この被験試料を0.22ミクロンフィルターで濾過することにより滅菌し、4個ずつのウェルに加え、細胞を37℃で3−5日間インキュベートした。増殖期間の終わりに培地を各ウェルから吸引し、細胞をクリスタルバイオレットで処理した[G.ルイス等、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)347巻5382−5385頁(1987)]。各ウェル中の細胞数に比例するクリスタルバイオレット吸収の量を、フロー・プレイト・リーダー上で測定した。各被験試料について重複しているウェルの値を平均した。各皿において、処置されていないウェルは対照の役割を有する。結果を、対照細胞と比較した増殖のパーセントとして表現した。
精製されたHRG−αリガンドを細胞増殖検定において活性を試験し、その結果を図7に表わす。およそ1nMのリガンド濃度において、p185HER2レセプターを発現するセルラインはいずれも(SK−BR−3およびMCF−7)、対照と比較して増殖の刺激を示したが、EGFレセプターのみを発現する細胞型(MDA−MB−468)は認め得る応答を示さなかった。これらの結果は、種々のセルラインを用いた自己燐酸化実験から得られる結果と一致した。これらの結果は、HRG−αリガンドがp185HER2レセプターに対し特異的であって、これらの濃度においてはEGFレセプターとの認め得る相互作用を示さないということを立証した。
HRGはp185HER2の細胞外ドメインに対して作成された抗体と競合しないが、抗p185HER2Mab 2C4および7F3(これらは自身抗増殖的である)はHRGに拮抗する。
実施例6 ヘレグリン−β1のクローニングおよび配列決定。
HRG−β1cDNAの分離は、HRG−αをコードしているDNA配列のハイブリダイズするフラグメントを用いて、ヒトMDA−MB−231細胞から組み立てられるcDNAライブラリーからさらなるcDNA配列を選択することによって達成した。クローンλher11.1dbl(ヘレグリン−β1)を、MDA MB231ポリA+mRNAから誘導されるλgt10オリゴdT開始cDNAライブラリー中で同定した。λher16(HRG−α)の5'および3'末端に対応する放射標識された合成DNAプローブを、高緊縮条件下でのハイブリダイゼーション反応に使用して、λher11.1dblクローンを分離した。λher11.1dblクローンのDNAヌクレオチド配列を図8に示す(配列番号9)。HRG−β1アミノ酸配列は、下記の位置を除いて、HRG−αのAsp15位のアミノ末端からHRG−αの3'末端まで、HRG−αとホモローガスである。さらに、HRG−β1をコードしているDNAは、3'方向にλher16より189塩基対長く伸長しており、Val1675の後に停止コドンを供給している。λher11.1dblのヌクレオチド位247にはAの代わりにGがあり、その結果、図9の第2行に示されるように、HRG−β1においてArg(R)の代わりにGln(Q)が置換されている(配列番号8および配列番号9)。
EGFモチーフの領域には、HRG−αおよびHRG−β1との間にさらなる相違がある。これらの相違を、EGFモチーフまたはGFD(成長因子ドメイン)の領域におけるHRG−αおよびHRG−β1の間の相同性を拡大視して、下に例示する。ここに示される配列は、図9に示されるHRG−αアミノ酸221−286に対応する。星印は、下の比較において同一の残基を示す(配列番号10および配列番号11)。
Figure 0003595552
実施例7 大腸菌(E.coli)中でのヘレグリンの発現。
ヘレグリンをコードしている図4および図8のDNA配列を用い、アルカリホスファターゼプロモーターおよびST IIリーダー配列の制御の下で、HRG−αおよびHRG−β1を大腸菌(E.coli)中で発現させた。最初のヘレグリン活性の性格決定においては、ヘレグリン分子の天然のアミノおよびカルボキシ末端は正確に規定されなかった。しかしながら、ヘレグリンをEGFおよびTGF−α配列と比較した後に、本発明者等は、Ser221付近で始まりGlu277付近で終わる図4の短縮型ヘレグリンが生物学的活性を有するのではないかと予想した。全てのヘレグリンの類似の領域を同定し発現させることができる。N末端Asp残基の後にHRG−αの残基221ないし277が続く、一つの短縮型を組み立てた。Glu277の後の偶発的フレームシフト突然変異のために、HRG−α配列はカルボキシ末端上で13アミノ酸だけ伸長した。したがって、カルボキシ末端は、その後に13アミノ酸配列RPNARLPPGVFYCが続くHRG−αのGlu277となった(配列番号20)。
この細胞を燐酸塩を涸渇させた培地で約20時間増殖させることにより、この組み立て物の発言を導いた。細胞のペーストを収穫し、10mMトリス(pH8)に再懸濁し、ホモジナイズし、4℃で40分間インキュベートし、そしてその後15Krpmで遠心(ソーバル)することにより、組み替え蛋白を精製した。上清を30K限外濾過膜(アミコン)上で濃縮し、濾液を10mMトリス(pH8)で平衡化したモノQカラムに適用した。モノQカラムから流出した画分を0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)に調節し、C4逆相HPLCに付した。0.1%TFA/H2O中10−25%アセトニトリルの勾配で溶出した。溶媒を凍結乾燥により除去し、精製された蛋白を燐酸緩衝化塩水中の0.1%牛血清アルブミンに再懸濁した。図10は、精製された大腸菌誘導蛋白に応答したMCF−7細胞を用いたHER2レセプターの自己燐酸化のデータを示す。この材料は、EC50が0.8nMという完全な生物活性を示した。この精製された材料はさらに細胞増殖検定(実施例5)においても試験し、強力な細胞増殖の刺激剤であることが判明した。
HRG−β1の合成のための組み替え発現ベクターをHRG−αと類似の方法で組み立てた。この発現ベクターは、Ser207からLeu273までのHRG−β1アミノ酸をコードしているDNAを含んだ(図4)。このHRG−β1をコードしているDNAを、発現ベクター中のアルカリホスファターゼプロモーターおよびST IIリーダー配列より下流に、組み替えによってスプライスした。この組み替え組み立て工程の結果として、さらなるセリン残基がカルボキシ末端上にスプライスされた。HRG−β1をコードしている発現ベクターを用いて大腸菌(E.coli)を形質転換し、燐酸塩涸渇培地中で発現させた。誘導された大腸菌(E.coli)をペレット化し、10mMトリス(pH7.5)中に再懸濁し、超音波処理した。細胞断片を遠心によりペレット化し、上清を、検定に先立ち無菌フィルターで濾過した。MCF−7細胞中でHER2レセプターの自己燐酸化を刺激する能力を有する蛋白が検出されたことにより、HRG−β1の発現が確認された。
類似の発現ベクターを、セリン残基の代わりにC末端チロシンを用いて、HRG−β1(上記)について記載されたように組み立てた。このベクターを大腸菌(E.coli)中に導入し、前記のように発現させた。この組み替え蛋白の精製を、組み替えHRG−αについて記載したように実施した。質量分析により、精製された蛋白が、予想より短い型からなることが判明した。アミノ酸配列決定は、この蛋白が所望のN末端残基(Ser)を有することを示したが、質量分析により、これはC末端で先端が切除されていることが見いだされた。この蛋白の大半(>80%)は、C末端にメチオニンを有する51アミノ酸長の型から成っていた(MET271)(配列番号9)。VAL269において先端が切除された、より短い型(49残基)も少量検出された。しかしながら、いずれの短縮型も、HER2レセプター自己燐酸化検定において完全な生物活性を示した。
実施例8 ヘレグリンβ2およびβ3変異体の分離。
5'方向にさらに伸長しているcDNAクローンを取得するため、ヘレグリン−β2および−β3変異体を分離した。特別にプライミングさせたcDNAライブラリーを、化学合成されたアンチセンスプライマー:3'CCTTCCCGTTCTTCTTCCTCGCTCC(配列番号21)を用いることによりλgt10中で組み立てた。このプライマーは、λher16の配列中ヌクレオチド167−190の間に位置する(図4)。クローンλ5'her13(λher13と混同してはならない)の分離を、特別にプライムさせたcDNAライブラリーをもって、高緊縮条件下でλher16の5'末端に対応する合成DNAプローブをハイブリダイズさせることによって達成した。λ5'her13のヌクレオチド配列を図11(配列番号22)に示す。λ5'her13の496塩基対ヌクレオチド配列は、λ5'her13のヌクレオチド309−496およびλher16の3−190の間でλher16の配列とホモローガスである。λ5'her13はλher16の開放読み取り枠を102アミノ酸だけ伸長している。
変異体ヘレグリン−β型の分離を、新しく調製したオリゴdTプライミングλgt10MDA−MB−231mRNA−誘導cDNAライブラリーを、λ5'her13の5'末端に対応する合成プローブおよびλher16のシステインに富むEGF様領域を用いてプロービングすることによって達成した。ヘレグリン−βの三つの変異体が同定され、分離され、そして配列決定された。全ヘレグリンの間のアミノ酸相同性を図15に示す(配列番号26−30)。
推定されるアミノ酸配列はEGF様モチーフのシステイン1およびシステイン6の間で同一ではあるが、それらの配列は、恐らくλher11.1dbl中のアミノ酸248で始まる予想貫膜ドメインの前で異なっていることから、HRGポリペプチドλher76(ヘレグリン−β2)(配列番号23)、λher78(ヘレグリン−β3)(配列番号24)およびλher84(ヘレグリン−β2様)(配列番号25)はλher11.1dbl(ヘレグリン−β1)の変異体であると考えられる。λher76、λher78およびλher84のヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列を図12、13および14に示す。
変異体はそれぞれ、それらの配列中の最初のメチオニンコドンの148塩基5'側にTGA停止コドンを含む。故に、λher16のヌクレオチド位135−137のATGコドンおよび他のヘレグリンクローン中の対応するATGは、開始メチオニン(アミノ酸1)として定義することができる。λher11.1dbl、λher76、λher84およびλher78のクローンはすべてアミノ酸38位にグルタミンをコードしている(図15)が、一方クローンher16はアルギニンをコードしている(図4、82位)。
λher76(ヘレグリン−β1)の推定アミノ酸配列は、637アミノ酸をコードしている全長のクローンを明らかにしている。これは、λher11.1dblのアミノ酸232−239に対応する残基が欠失している以外はλher11.1dblと同一の推定アミノ酸配列を共有している。λher84の推定アミノ酸配列は、これが、開始メチオニン(アミノ酸1、図15)からEGF様領域および貫膜ドメインに至るまで、λher76と同じアミノ酸配列を持っていることを示している。しかしながら、λher84はアルギニン421(λher84の番号付け)における初期停止コドンがある。この後に3'非翻訳配列が異なる。λher78(ヘレグリン−β)の推定アミノ酸配列は、ヘレグリンβおよび−βと、アミノ酸230までホモローガスであり、ここで配列は11のアミノ酸について異なり、そして終止する。したがって、ヘレグリン−βは貫膜領域を持たない。この3'非翻訳配列は他のクローンとはホモローガスでない。
実施例9 ヘレグリンβ型の発現。
ヘレグリン−β型を哺乳動物細胞で発現させるために、λher76(ヘレグリン−β2)またはλher84からの全長cDNAヌクレオチド配列を、哺乳動物発現ベクターpRK5.1中にサブクローニングした。このベクターは、5'イントロンが後に続くサイトメガロウイルスプロモーター、クローニングポリリンカーおよびSV40初期ポリアデニル化シグナルを含むpRK5の誘導体である。COS7、サルまたはヒトの腎臓293細胞をトランスフェクトし、条件培地をMCF−7細胞p185/her2自己燐酸化検定で検定した。正の応答により、λher76(ヘレグリン−β2)およびλher84(ヘレグリン−β3)からのcDNAの発現を確認した。
大規模な一時的発現実験からの上清をYM10膜(アミコン)上で濃縮し、実施例1に記載のようにヘパリンセファロースカラムに適用した。0.6M NaCl溶出液のプールに活性(チロシン燐酸化検定)が検出され、これをさらに前記のようにポリアスパラギン酸カラム上で精製した。SDSゲル分析および活性の検定により、このカラムの活性画分は高度に精製され、見かけの分子量45000ダルトンを有する単一のバンドの蛋白が含まれていた。このように、発現された蛋白は、MDA231細胞から最初に分離されたヘレグリンの本来の型と極めて類似のクロマトグラフィーおよび構造特性を有している。λher84cDNAから作成された組み立て物の小規模一時的発現実験からは、さらに、この変異体型からの細胞上清に、同等レベルの活性のある事が判明した。貫膜の無い変異体、ヘレグリン−β3の発現は、現在研究中である。
実施例10
プロHRG−αおよびプロHRG−β1cDNAを、サイトメガロウイルスプロモーターを含むエプスタインバーウイルス由来の発現ベクター中にスプライスした。エプスタインバーウイルスEBNA−1トランスアクティベーターを発現している安定にトランスフェクトされたCEN4細胞[ヒト腎臓293細胞(ATCCNo.1573)の無血清条件培地から、rHRGを精製した(本質的には実施例2の記載の通り)。別の実験において、全長のプロHRG−α、−βおよび−βの一時的発現組み立て物が、トランスフェクトされたCOS7サル腎臓細胞の条件培地中にp185HER2燐酸化活性を提供した。しかしながら、全長のプロHRG−βの同様の組み立て物は活性を産生せず、この事は、プロHRG−βに欠けているが他のプロHRGには存在する疎水性ドメインが、成熟蛋白の分泌に必要であることを示唆している。各々GFD構造単位および直接隣接した領域をコードしている、プロHRG−α(63アミノ酸、セリン177ないしチロシン239)およびプロHRG−β(68アミノ酸、セリン177ないしチロシン241)の先端を切除された型もまた大腸菌(E.coli)中で発現され、HRG−βのホモローガスな先端を切除された型は、活性分子として発現されると予想される。これら先端を切除された蛋白は、組み替え蛋白を分泌するよう設計された発現ベクターにより形質転換された大腸菌(E.coli)の周辺腔および培養ブロスから精製された[C.N.チェインジ、M.レイ、B.ボチェン、H.ヘイネカー、G.グレイ、ジーン(Gene)55巻189頁(1987)]。これらの蛋白はさらに、p185HER2のチロシン燐酸化を刺激するがp107HER1のそれは刺激せず、この事は、HRGの生物活性は該蛋白のEGF様ドメインに存在し、炭水化物部分はこの検定における活性に必須でないことを示している。NTDはこの活性を阻害または抑制しない。
実施例11
様々なヒトの組織をHRGmRNAの存在について調べた。転写物は、乳房、卵巣、精巣、前立腺、心臓、骨格筋、肺、肝臓、腎臓、唾液腺、小腸、および脾臓(胃にはない)、膵臓、子宮または胎盤に見いだされた。これらの組織の殆どはMDA−MB−231細胞と同じ三つのクラスの転写物(6.6kb、2.5kbおよび1.8kg)を示すが、6.6kbのメッセージのみが心臓および骨格筋に観察された。脳内には2.2kbの単一の転写物が観察され、精巣には6.6kb転写物が2.2kb、1.9kbおよび1.5kb転写物と共に現われている。HRGについて観察される組織特異的発現パターンはp185HER2についてのそれとは異なっており、例えば、成人の肝臓、脾臓、および脳はHRGを含むがp185HER2転写物を含まず、一方胃、膵臓、子宮および胎盤は、p185HER2転写物を含むがHRGmRNAを欠く。
配列表
(1) 一般的情報
(i) 特許出願人:ジェネンテク,インコーポレイテッド
(ii) 発明の名称:ヘレグリンの構造、生産および用途
(iii) 配列の数:30
(iv) 連絡先:
(A) 名宛人:ジェネンテク,インコーポレイテッド
(B) 通り:ポイント・サン・ブルーノ・ブールバード460番
(C) 市:サウス・サン・フランシスコ
(D) 州:カリフォルニア
(E) 国:アメリカ合衆国
(F)ZIP:94080
(v) コンピューター解読書式
(A) 媒体型:5.25インチ,360Kbフロッピーディスク
(B) コンピューター:IBM PC適合
(C) オペレーティング・システム:PC−DOS/MS−DOS
(D) ソフトウエア:Patin(ジェネンテク)
(vi) 本出願のデータ:
(A) 出願番号:PCT/US92/04295
(B) 出願日:1992年5月21日
(C) 分類:
(vii) 優先権主張出願のデータ:
(A) 出願番号:07/705256
(B) 出願日:1991年5月24日
(vii) 優先権主張出願のデータ:
(A) 出願番号:07/765212
(B) 出願日:1991年9月25日
(vii) 優先権主張出願のデータ:
(A) 出願番号:07/790801
(B) 出願日:1991年11月8日
(vii) 優先権主張出願のデータ:
(A) 出願番号:07/847743
(B) 出願日:1992年3月6日
(viii) 弁理士/代理人情報
(A) 氏名:ヘンスレイ、マックス・ディ
(B) 登録番号:27,043
(C) 参照/整理番号:712P4
(ix) 電話連絡先情報:
(A) 電話番号:415/225−1994
(B) ファックス番号:415/952−9881
(C) テレックス:910/371−7168
(2) 配列番号1の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:6塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号1:
Figure 0003595552
(2) 配列番号2の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:6塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号2:
Figure 0003595552
(2) 配列番号3の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:24アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号3:
Figure 0003595552
(2) 配列番号4の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:21アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号4:
Figure 0003595552
(2) 配列番号5の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:13アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号5:
Figure 0003595552
(2) 配列番号6の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:42塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号6:
Figure 0003595552
(2) 配列番号7の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:2199塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号7:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号8の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:669アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号8:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号9の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:732アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号9:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号10の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:66アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号10:
Figure 0003595552
(2) 配列番号11の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:71アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号11:
Figure 0003595552
(2) 配列番号12の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:210塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号12:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号13の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:669アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号13:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号14の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:95アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号14:
Figure 0003595552
(2) 配列番号15の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:91アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(C) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号15:
Figure 0003595552
(2) 配列番号16の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:82アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号16:
Figure 0003595552
(2) 配列番号17の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:87アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号17:
Figure 0003595552
(2) 配列番号18の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:87アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号18:
Figure 0003595552
(2) 配列番号19の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:86アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号19:
Figure 0003595552
(2) 配列番号20の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:13アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号20:
Figure 0003595552
(2) 配列番号21の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:25塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号21:
Figure 0003595552
(2) 配列番号22の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:496塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号22:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号23の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:2490塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号23:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号24の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:1715塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号24:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号25の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:2431塩基
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号25:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号26の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:625アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号26:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号27の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:645アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号27:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号28の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:637アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号28:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号29の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:420アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号29:
Figure 0003595552
Figure 0003595552
Figure 0003595552
(2) 配列番号30の情報:
(i) 配列の特徴
(A) 長さ:241アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列:配列番号30:
Figure 0003595552
Figure 0003595552

Claims (32)

  1. 下記(a)又は(b)の単離されたポリペプチド:
    (a)配列番号26のアミノ酸配列からなるヘレグリン−α、配列番号27のアミノ酸配列からなるヘレグリン−β1、配列番号28のアミノ酸配列からなるヘレグリン−β2、配列番号29のアミノ酸配列からなるヘレグリン−β2様及び配列番号30のアミノ酸配列からなるヘレグリン−β3からなる群より選択されるポリペプチド、又は
    (b)配列番号12、配列番号7、配列番号23、配列番号25、配列番号24の塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする核酸によってコードされ、かつp185HER2に結合する能力を有するか又は天然に存在するヘレグリンポリペプチド若しくはそのフラグメントに対して産生された抗体と交差反応することのできる抗原サイトもしくはエピトープを有するポリペプチド。
  2. ヘレグリンが、配列番号26のアミノ酸G175〜K241からなるヘレグリン−α2成長因子ドメイン(GFD)、配列番号27のアミノ酸G175〜K246からなるヘレグリン−β1 GFD、配列番号28のアミノ酸G175〜K238からなるヘレグリン−β2 GFD、配列番号29のアミノ酸G175〜K238からなるヘレグリン−β2様 GFD、配列番号30のアミノ酸G175〜K241からなるヘレグリン−β3 GFDからなる群より選択されたポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. ヘレグリンが、ヘレグリン−α、−β1、−β2または−β3である、請求項1のポリペプチド。
  4. ヘレグリンが、ヒトヘレグリン−α−GFDである、請求項2のポリペプチド。
  5. ヘレグリンが、ヒトヘレグリン−β1−GDF、ヘレグリン−β2−GFDまたはヘレグリン−β3−GFDである、請求項2のポリペプチド。
  6. ヘレグリンが、配列番号26のアミノ酸S2〜K241からなるヘレグリン−α NTD−GFD、配列番号27のアミノ酸S2〜K246からなるヘレグリン−β1 NTD−GFD、配列番号28のアミノ酸S2〜K238からなるヘレグリン−β2 NTD−GFD、配列番号29のアミノ酸S2〜K238からなるヘレグリン−β2様 NTD−GFD、配列番号30のアミノ酸S2〜K241からなるヘレグリン−β3 NTD−GFDからなる群より選択されるポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
  7. ヘレグリンが、配列番号26のアミノ酸S2〜C265からなるヘレグリン−α NTD−GFD−貫膜ポリペプチド、配列番号27のアミノ酸S2〜C270からなるヘレグリン−β1 NTD−GFD−貫膜ポリペプチド、配列番号28のアミノ酸S2〜C262からなるヘレグリン−β2 NTD−GFD−貫膜ポリペプチド、及び配列番号29のアミノ酸S2〜C262からなるヘレグリン−β2様 NTD−GFD−貫膜ポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
  8. 配列番号26のアミノ酸K266〜Q625を含むヘレグリン−α細胞質ドメイン、配列番号27のアミノ酸K271〜V645を含むヘレグリン−β1細胞質ドメイン、配列番号28のアミノ酸K263〜V637を含むヘレグリン−β2細胞質ドメイン、及び配列番号29のアミノ酸K263〜R420を含むヘレグリン−β2様細胞質ドメインからなる群より選択されるポリペプチド。
  9. ポリペプチドが、酵素に融合された、請求項6〜8いずれか1項に記載のポリペプチド。
  10. ヘレグリンが、ヘレグリン−αである、請求項6のポリペプチド。
  11. ヘレグリン−αが、配列番号26の配列のアミノ酸残基1−23、107−108、121−123、128−130および163−247のうちいずれか一つのアミノ酸が置換、除去または挿入されている、請求項10記載のポリペプチド。
  12. ヘレグリンが、ヘレグリン−β1である、請求項6のポリペプチド
  13. ヘレグリン−β1が、配列番号27の配列のアミノ酸残基1−23、107−108、121−123、128−130および163−252のうちいずれか一つのアミノ酸が置換、除去または挿入されている、請求項12のポリペプチド。
  14. ヘレグリンが、ヘレグリン−β2である、請求項6のポリペプチド。
  15. ヘレグリン−β2が、配列番号28の配列のアミノ酸残基1−23、107−108、121−123、128−130および163−244のうちいずれか一つのアミノ酸が置換、除去または挿入されている、請求項14のポリペプチド。
  16. ヘレグリンが、ヘレグリン−β3である、請求項6のポリペプチド。
  17. ヘレグリン−β3が、配列番号30のアミノ酸配列のアミノ酸残基1−23、107−108、121−123、128−130および163−241のうちいずれか一つのアミノ酸が置換、除去または挿入されている、請求項16のポリペ プチド
  18. 請求項1、2、6〜8のいずれか1項に記載のヘレグリンポリペプチドを結合させることのできる、分離された抗体。
  19. ヘレグリン−α、ヘレグリン−β1、ヘレグリン−β2、またはヘレグリン−β3に特異的に結合することのできる、請求項18に記載の分離された抗体。
  20. 請求項1のポリペプチドをコードしている核酸。
  21. ヘレグリン−α、ヘレグリン−β1、ヘレグリン−β2、またはヘレグリン−β3ポリペプチドをコードしている、請求項20の核酸。
  22. ヘレグリン−GFDをコードしている、請求項20の核酸。
  23. 請求項20の核酸を含む発現ベクター。
  24. 核酸が、ヘレグリン−GFDをコードしている、請求項23の発現ベクター。
  25. 請求項23のベクターにより形質転換された宿主細胞。
  26. 請求項25の宿主細胞を培養し、ヘレグリンを発現させ、宿主細胞からそのヘレグリンを回収することを含む方法。
  27. ヘレグリンが、ヘレグリン−α、ヘレグリン−β1、ヘレグリン−β2、またはヘレグリン−β3である、請求項26の方法。
  28. ヘレグリンが、ヘレグリン−NTD−GFDである、請求項26の方法。
  29. ヘレグリンが、ヘレグリン−GFDである、請求項26の方法。
  30. 配列番号12、配列番号7、配列番号23、配列番号25、配列番号24の塩基配列からなる核酸を被験試料の核酸と接触させ、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションが起こったか否かを決定することからなる、ヘレグリン核酸の存在を決定する方法。
  31. 配列番号12、配列番号7、配列番号23、配列番号25、配列番号24の塩基配列からなる核酸のフラグメントで核酸のポリメラーゼ連鎖反応を開始させることからなる、核酸被験試料を増幅する方法、ここで、該フラグメントは、少なくとも1個の核塩基を含む。
  32. 請求項1のヘレグリンをヘパリンセファロースまたは陽イオン交換樹脂上に吸着させることからなる、ヘレグリンを精製する方法。
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