JP3595401B2 - レーザ測量装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビームによる基準線を所定の面に対して水平方向又は垂直方向に投射するレーザ測量装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、土木,建築等の分野では、水平線や垂直線の墨出しを行うために、レーザ光による基準平面を形成したり、垂直方向又は水平方向の基準線(軌跡)を被投射面に投射するレーザ測量装置(いわゆるレーザプレーナ)が使用されている。
【0003】
このようなレーザ測量装置の方式としては、シリンドリカルレンズを介してレーザ光を扇型に拡散させてラインを投射する方式(以下、「ライン投射式」という)や、レーザ光を射出する投光部を回転させこのレーザ光を走査する方式(以下、「回転走査式」という)が用いられている。このようなレーザ測量機によって投射された基準線は、投射された壁面までの距離が短く周囲が比較的暗ければ、目視によって位置確認される。
【0004】
また、回転走査式のレーザ測量装置の場合、壁面までが遠距離であったり周囲が比較的明るくても、光検出器を使用すればこの基準線の位置を検知することができる。この光検出器とは、受光センサによって特定の波長(レーザ光の波長)の光を光電変換し、変換された電気信号に生じているパルス(レーザ光に相当)を検知することにより、レーザ光軌跡の通過位置を検出する装置だからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この回転走査式の場合、基準線を投射する壁面が平面であると、全周にわたって走査されるレーザ光のうちの壁面上に投射される部分の時間比が小さいために、レーザ光のエネルギーの大部分が無駄になってしまう欠点がある。そのため、回転走査式の場合、目視可能に基準線を投射できる距離が短く、殆ど常に光検出器が必要になるという煩わしさがある。
【0006】
一方、ライン投射式のレーザ測量装置の場合、レーザ光を投射する角度範囲が制限されているので、レーザ光のエネルギーを無駄にすることがない。従って、同じレーザ出力であれば、回転走査式の場合よりも、基準線を目視可能に投射できる距離は長く、周囲が多少明るくても目視可能に基準線を投射できる。しかしながら、ライン投射式のレーザ測量装置は、基準線を全周方向に投射することは不可能なので、例えば部屋の内周壁の墨出しのような作業には使用できなかった。なお、ライン投射式でも、被投射面までの距離が長くなるに従い、基準線の輝度が急速に低下して目視による識別が困難となる。このとき、ライン投射式の場合のレーザ光は直流的な光なので、光検出器で基準線を検出することも不可能である。従って、ライン投射式のレーザ測量装置は、遠距離では全く使用することができなかった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、全周方向への基準線投射が可能でありながら、単なる回転走査式の場合より、長距離の壁面に基準線を目視可能に投射でき、且つ周囲が明るくても基準線を目視可能に投射できるレーザ測量装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によるレーザ測量装置の第1の態様は、上記課題を解決するため、レーザ光源と、このレーザ光源から発振されたレーザ光を外部に出射する出射部と、前記レーザ光源から前記出射部までの前記レーザ光の光路においてこの光路の断面の一部に配置され、前記レーザ光を回折により一方向にのみ拡散する回折格子と、前記出射部によるレーザ光の出射方向を一定平面内で回転させる回転手段と、この回転手段の動作及び停止を切り換える切換手段とを備えたことを特徴とする(請求項1に対応)。
【0009】
本発明によるレーザ測量装置の第2の態様は、上記課題を解決するため、レーーザ光源と、このレーザ光源から発振されたレーザ光を外部に出射する出射部と、前記レーザ光源から前記出射部までの前記レーザ光の光路を複数の光路に分離する光路分離手段と、この光路分離手段によって分離された光路の一方に配置され、前記レーザ光を回折により一方向にのみ拡散する回折格子と、前記光路分離手段によって分離された光路を合成する光路合成手段と、前記出射部によるレーザ光の出射方向を一定平面内で回転させる回転手段と、この回転手段の動作及び停止を切り換える切換手段とを備えたことを特徴とする(請求項9に対応)。
【0010】
本発明によるレーザ測量装置の第3の態様は、上記課題を解決するため、第1のレーザ光源と、第2のレーザ光源と、これら各レーザ光源から発振されたレーザ光を合成して外部に出射する出射部と、前記第1のレーザ光源から前記出射部までの前記レーザ光の光路に配置され、前記レーザ光を回折により一方向にのみ拡散する回折格子と、前記出射部によるレーザ光の出射方向を一定平面内で回転させる回転手段と、この回転手段の動作及び停止を切り換える切換手段とを備えたことを特徴とする(請求項10に対応)。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
各実施例の詳細な説明を行う前に、本発明の各構成要件の概念を説明する。
(出射部)
出射部とは、レーザ光をレーザ測量装置外部に出射する部分のことである。従って、単なるケーシングの開口であっても良いし、レンズであっても良いし、透明な平行平面板が填められた窓であっても良い。また、この出射部自体が拡散レンズであっても良い。また、出射部は、レーザ光の出射方向が回転される方向に沿って筒状に形成されていても良い。
(回折格子)
回折格子による前記レーザ光の拡散方向は、回転手段によるレーザ光の出射方向の回転方向と一致していても良いし(請求項5に対応)、回転手段によるレーザ光の出射方向の回転方向と直交していても良い(請求項6に対応)。方向が一致していれば、回転手段によって出射部が回転している時と停止している時とで形成される基準線・基準面の方向が同じになるので、距離や周囲の明るさに応じて基準線・基準面の形成方法を使い分けることができる。一方、方向が交差していると、回転手段によって出射部が回転している時と停止している時とで、形成される基準線・基準面の方向が変わるので、異なった方向の基準線・基準面を使い分けることができる。
【0012】
この回折格子は、レーザ光の光路断面の一部に、一個だけ配置しても良いし複数個配置しても良い。複数個とする場合には、その拡散の方向を同じとしても良いし(請求項3に対応)、一部の回折格子によるレーザ光の拡散方向を回転手段によるレーザ光の出射方向の回転方向と一致させるとともに、残りの回折格子によるレーザ光の拡散方向を回転手段によるレーザ光の出射方向の回転方向と直交するように構成しても良い(請求項4に対応)。このように構成すれば、上述した拡散の方向を回転方向と一致させた場合の利点と直交させた場合の利点とを、両方享受することができる。
【0013】
この回折格子は、透明な平行平面光学素子上に形成されるが、この平面光学素子は、レーザ光が全て入射する面積を持ったものであっても良いし(請求項7に対応)、一部のレーザ光しか入射しない面積を持ったものであっても良い。前者のようにすれば、回折格子の設置が容易になる。また、回折格子は、平行平面光学素子の全面に形成されていても良いし(請求項8に対応)、平行平面光学素子表面の一部にのみ形成されていても良い。後者の場合、例えば、拡散方向が異なる複数の回折格子を設置した場合にも、回折格子の設置が容易になる。前者の場合、回折格子が複数個設置される場合には、各回折格子を夫々別の平行平面光学素子上に形成しても良い。
(回転手段)
回転手段は、出射部自体を回転させるものであっても良いし、出射部が上述したように回転方向に沿った筒状に構成されている場合にあってはその内部において光路を回転させるものであっても良い。また、レーザダイオードを含めてレーザ測量装置全体を回転させるものであっても良い。
【0014】
【実施例1】
以下、本発明の第1実施例を説明する。
<実施例の構成>
図1は、本実施例によるレーザ測量装置の構成を示す断面図である。この図1は、水平方向へのレーザ光走査を行うためにレーザ測量装置を鉛直方向に立てた状態を示している。
【0015】
図1に示すように、レーザ測量装置11は、略円筒状の本体ハウジング12と、この本体ハウジング12の上端面12bからその回転投光部15を突出させた状態でこの本体ハウジング12内に格納された投光装置13と、この投光装置13の回転投光部15を囲繞する上部ハウジング16と、投光装置13の駆動用バッテリを収容するために本体ハウジング2の底部に設けられたバッテリーケース17とから構成されている。
〔本体ハウジング〕
略円筒形状である本体ハウジング12の上端面12bには、その中心軸と同軸に、すり鉢状の摺動案内部19が形成されている。この摺動案内部19の底面には、円形の摺動穴19aが、その中心軸と同軸に形成されている。
【0016】
この摺動案内部19の側方にあたる本体ハウジング12の内面には、その中心軸に向けて突出形成されたブラケット42が形成されている。このブラケット42は、本体ハウジング12の中心軸を中心として相互に90度ずれた位置に、2個形成されている。また、これら2個のブラケット42と中心軸とでなす角を二等分する方向における摺動案内部19外面(本体ハウジング12内部の面)には、支持突起51が形成されている。
【0017】
また、本体ハウジング12の下端面には、その中心軸と同軸に、円孔12aが形成されている。
〔バッテリーケース〕
バッテリーケース17は、本体ハウジング12の外径と同径の円筒形状を有している。このバッテリーケース17の上端面及び下端面の中心には、本体ハウジング12の下端面に形成された円孔12aと重なる円孔17a,17aが形成されている。
〔上部ハウジング〕
上部ハウジング16は、本体ハウジング12の中心軸と同軸の円筒状の透明部材からなる窓(出射部)16bと、この窓16bの端面を閉じる不透明部材からなる蓋16cとから構成されている。この蓋16cの中心には、透明部材36が填め込まれている円孔16aが形成されている。
〔投光装置〕
投光装置13は、回転投光部15と、ベアリング10を介してこの回転投光部15を回転自在且つ同軸に保持する本体部20とから、構成されている。この本体部20には、その中心軸に沿ってその全体を貫通する中空のレーザ光光路20bと、このレーザ光光路から直角に分岐したレーザ光光路20aとが、形成されている。また、回転投光部15には、このレーザ光光路20bと同軸に連通するとともにその回転軸と同軸に形成された中空のレーザ光光路15a,及びこのレーザ光光路15aに連通するとともに端面方向及び側方に開口を有するペンタプリズム収納部15bが、形成されている。
(レーザ出射光学系)
これら各レーザ光光路20a,20b,15a内に内蔵されているレーザ出射光学系の光学構成を、図1及び図2を参照して説明する。
【0018】
本体部20内のレーザ光光路20a及び20bの交点には、偏光ビームスプリッタ27が固定されている。また、このレーザ光光路20aの端面には、レーザダイオード23が固定されており、その中間部には、コリメータレンズ24及びアナモフィックレンズ18が固定されている。また、レーザ光光路20b内のバッテリケース側には、ウェッジプリズム29a,29bが固定されている。また、レーザ光光路20b内の回転投光部側には、λ/4板28,半透膜28a,前群レンズ31,及び後群レンズ32が固定されている。また、回転投光部15のペンタプリズム収容部15b内には、ペンタプリズム35及び楔型プリズム34が固定されている。また、ペンタプリズム収容部15bの側方に開口した投光用窓33には、平行平面光学素子1が填め込まれている。
【0019】
レーザ光源としてのレーザダイオード23は、偏光ビームスプリッタ27の偏光分離面27aに対するS偏光面(紙面に垂直な面)内で直線偏光するレーザ光を発振する。コリメータレンズ24は、レーザダイオード23から出射されたレーザ光を平行光にするレンズである。また、アナモフィックレンズ18は、コリメータレンズ24を透過したレーザ光の断面形状を真円形に修正するためのレンズである。
【0020】
偏光ビームスプリッタ27内には、レーザダイオード23からのレーザ光Lの光軸に対してλ/4板28側に45度傾いた偏光分離面27aが形成されている。この偏光分離面27aは、S偏光を100パーセント反射するとともにP偏光を100パーセント透過する特性を有している。従って、アナモフィックレンズ18を透過したレーザ光は、100パーセントλ/4板28側へ反射される。
【0021】
λ/4板28は、光軸を中心にその光学軸の方向を偏光分離面27aに対するP偏光面(紙面と平行な面)に対して45度傾けた状態で、偏光ビームスプリッタ27に貼付けられている。従って、λ/4板28は、入射した直線偏光を円偏光に変換する。このλ/4板28のペンタプリズム側面には、レーザ光の一部を偏光ビームスプリッタ27に向けて反射する半透膜28aが貼り付けられている。この半透膜28aにおいて反射された円偏光のレーザ光は、λ/4板28に再入射し、P偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ27を透過する。
【0022】
この偏光ビームスプリッタ27を透過したレーザ光Lは、ウェッジプリズム29a,29bを透過し、透光装置3の下端からその軸の延長線方向に出射される。
【0023】
一方、半透膜28aを透過したレーザ光が入射する前群レンズ31は負レンズであり、レーザ光光路20b内に進退自在に挿入された摺動円筒部材30内に保持されている。また、この前群レンズ31によって発散されたレーザ光が入射する後群レンズ32は正レンズであり、レーザ光光路20b内に固定されている。従って、これら前群レンズ31及び後群レンズ32は、入射されたレーザ光のビーム径を拡大するビームエキスパンダを構成する。そして、前群レンズ31を移動させることにより、ビームウェストの形成位置を可変することができる。
【0024】
後群レンズ32を透過したレーザ光が入射するペンタプリズム35は、回転投光部15のペンタプリズム収納部15b内に、この回転投光部15と一体に回転するように固定されている。このペンタプリズム35は、レーザ光が入射する光入射面35cと、この光入射面35cに対して22.5度傾いているとともにこの光入射面35cから入射したレーザ光が入射する第1の反射面35aと、この第1の反射面35aに対して45度傾いているとともにこの第1の反射面で反射されたレーザ光を再度反射する第2の反射面35bと、光入射面35cに対して直角をなしているとともに第2の反射面35bで反射されたレーザ光Lを出射する光出射面35dとを有している。従って、ペンタプリズム33が図1及び図2の面内で傾いたとしても、レーザ光Lの光軸と出射レーザ光Lの光軸との間の角度は、常に90度に保持される。なお、第2の反射面35bには増反射膜がアルミニューム蒸着によって形成されているので、この第2の反射面35bにおいてレーザ光は100パーセント内面反射する。一方、第1の反射面35aには反射率70〜80パーセントの半透膜14が形成されている。従って、20〜30パーセントのレーザ光Lが、この第1の反射面35aを透過し、楔型プリズム34を通って、投光装置13の上端からその軸の延長方向に出射される。
【0025】
一方、ペンタプリズム35の光出射面35dから出射されたレーザ光Lは、平行平面光学素子1に入射する。この平行平面光学素子1は、図3に示すような外形を有している正面正方形の平行平面ガラスである。この平行平面光学素子1の正面は、図1及び図2の紙面に直交する方向(水平方向)に三等分されている。このうち両側の領域1a,1cは、図1及び図2の上下方向に格子方向を向けた回折格子が形成された回折格子部であり、これら両回折格子部1a,1cに挟まれた部分は、平滑面のままの無処理部1bとなっている。
【0026】
図2のA方向から見た上面図である図4に示すように、ペンタプリズム35から出射されたレーザ光Lは、平行平面光学素子1の無処理部1bとともに各回折格子部1a,1cにも入射する。このうち、無処理部1bを透過したレーザ光は、従来の走査方式の場合と同様に、何ら回折を受けることなく壁面87上に比較的高輝度のスポットSPを形成する。また、各回折格子部1a,1cを透過したレーザ光は、その格子方向に直交する方向(水平方向)に回折されて、壁面87上に比較的低輝度のドット状基準線SLを静的に形成する。即ち、各回折格子部1a,1cは、一定角度範囲の空間に、波状の強度分布を持たせて均等に光を広げる。従って、回折格子部1a,1cから壁面87までの距離が長くなると、回折縞がドット状の線に見えるようになるのである。
(傾動機構)
次に、図1に戻り、投光装置13を本体ハウジング12内においてあらゆる方向に傾動可能とするための構成を説明する。
【0027】
この本体部20の上部には、摺動案内部19内に保持される膨出部21が形成されている。この膨出部21は、摺動孔19aの内径よりも大径の外径を有する円筒状部分とこの大径の円筒状部分と他の部分とを繋ぐ半球面部分とから構成されている。従って、この膨出部21は、その半球面部分が摺動孔19a内に当接した状態で、摺動孔19aから脱落することなく保持されている。投光装置13の本体ハウジング12への保持は、この部分の接触によってのみなされているので、摺動孔19a内で膨出部21の半球面部分を回転させることにより、投光装置13全体をその半球部分の球心を中心にあらゆる方向に傾動させることができる。
【0028】
この傾動を行うための機械構成を説明する。先ず、本体部20の突出部21よりも下方の部分と支持突起51との間には、引張りバネ52が張られている。そのため、膨出部21には、引張りバネ52による回転トルクが加えられている。
【0029】
また、摺動案内部19には、その中心軸から見て直交して設けられた各ブラケット42と同じ方向に、2本のスリット19bが形成されている。また、膨出部21の最上部には、その中心軸から見て各スリット19bと同じ方向に駆動アーム37が突出形成されている。各駆動アーム37は、下部方向に向かって傾斜しており、夫々対応するスリット19bを通って本体ハウジング内に入り込んでいる。これら各駆動アーム37の先端には、膨出部21の球心の方向を向いたピン40が形成されている。
【0030】
一方、各ブラケット42と本体ハウジング12の上端面12bとの間には、調整用スクリュー45が本体ハウジング12の中心軸と平行に回転自在に掛け渡されている。各調整用スクリュー45は、ピニオン49及び伝動ギヤ50を介して、各ブラケット42上に固定設置された各レベル調整用モータ44,76により回転される。また、各調整用スクリュー45には、調整用ナット46が螺合されている。調整用ナット46の外面には、ピン40と接触する作動ピン47が突出形成されており、膨出部21の回転を規制している。
【0031】
各調整用ナット46は、図示せぬ回転規制手段によって本体ハウジング12に対する回転が規制されているので、各レベル調整用モータ44,76により調整用スクリュー45が回転駆動されると、上下に昇降する。従って、各作動ピン47に弾設しているピン40がこの昇降に追従して昇降するので、膨出部21がこの昇降の方向に従って何れかの方向に回転するのである。
【0032】
マイコン82は、投光装置13のY方向(紙面に直交する方向)の傾きを検知するY方向のレベル検知センサ72,及び投光装置13のX方向(紙面方向)の傾きを検知するX方向のレベル検知センサ73からの傾き検知信号を受信して、投光装置13の軸が鉛直方向を向くように、X方向レベル調整用モータ44,及びY方向レベル調整用モータ76の回転制御を行う。
(回転機構)
次に、回転投光部15を本体部20に対して回転させるための回転手段としての機構につき説明する。
【0033】
ベアリング10を介して本体部20に対して回転自在に接続された回転投光部15の外周面には、ギア69が固定されている。一方、本体部20の膨出部21の上端面には、外方に向けて突出させたブラケット65が設けられている。このブラケット65には、投光部回転用モータ66が固定されており、この投光部回転用モータ66の回転軸に取り付けられたピニオン67が回転投光部15のギア69に噛み合っている。この投光部回転用モータ66は、マイコン82によって停止又は回転の制御がなされている。即ち、この投光部回転用モータ66を停止させると、平行平面光学素子1から出射されるレーザ光Lの光軸は、或る一定方向を向いたまま停止する。これに対して、投光部回転用モータ66を回転させると、平行平面光学素子1から出射されるレーザ光Lの出射方向が回転投光部15の回転軸を中心に回転するので、この回転軸に直交する基準平面が形成される。
(合焦機構)
次に、前群レンズ31を光軸方向に進退駆動するための構成について説明する。
【0034】
投光装置13の本体部20における摺動円筒部材30の移動範囲近傍には、その内外面を貫通するスリット63が形成されている。このスリット63を上下から挟むように、本体部20の外面には、ブラケット53及びブラケット55が突出形成されている。これらブラケット53,55の間には、合焦用スクリュー56が本体部20の中心軸と平行に回転自在に掛け渡されている。この合焦用スクリュー56には、合焦用ナット57が螺合している。この合焦用ナット57には、スリット63を通り抜けてその一端が摺動円筒部材30に固定された伝達リンク62の他端が固定されている。
【0035】
合焦用スクリュー56は、ピニオン60及び伝達ギヤ61を介して、ブラケット53上に固定された合焦用モータ59によって回転駆動される。この合焦用モータ59は、マイコン82によって回転制御される。即ち、壁面87までの距離に応じて適宜この合焦用モータ59を回転制御することにより、この壁面87にビームウェストを形成することができる位置に、前群レンズ31を進退移動させることができるのである。
〔回路構成〕
次に、マイコン82等の回路部品の接続関係を説明する。
【0036】
図5に示すように、マイコン82には、Y方向のレベル検知センサ72,X方向のレベル検知センサ73,投光部回転用モータ66,合焦用モータ59,X方向のレベル調整用モータ44,Y方向レベル調整用モータ76が接続されている。また、マイコン82には、レーザダイオード駆動回路95を介してレーザダイオード23が接続されている。
【0037】
また、マイコン82には、メインスイッチ96,発光指示操作部97,回転指示操作部98,距離入力部99,及び回転位置調整釦100が接続されている。これらは、本体ハウジング12の外面に設けられたスイッチである。これらのうちメインスイッチ96は、マイコン82に電源を投入して起動させるためのスイッチである。このメインスイッチ96を投入することにより、Y方向のレベル検知センサ72及びX方向のレベル検知センサ73からの傾き検知信号がマイコン82に読み込まれ、それに応じてX方向レベル調整用モータ44及びY方向レベル調整用モータ76が駆動制御される。
【0038】
また、発光指示操作部97は、レーザダイオード駆動回路95によるレーザダイオード23の駆動を行うか否かの旨を入力するスイッチである。
また、切換手段としての回転指示操作部96は、回転投光部15を回転させるか否か,即ち投光部回転用モータ66を回転させるか否かの旨を入力するスイッチある。
【0039】
また、距離入力部99は、レーザ測量装置11から壁面87までの距離を入力するスイッチである。この距離入力部99により距離が入力されると、その距離に対応する位置に前群レンズ31を移動させる分だけ合焦用モータ59が駆動される。
【0040】
また、投光部回転用モータ66が停止している状態において回転位置調整釦100が押下されると、投光部回転用モータ66は、特定の微少量だけ回転駆動される。この回転位置調整釦100が一回押下される毎に投光部回転用モータ66が回転駆動される量は、それによって回転される回転投光部15の回転角が配光レンズ1によって拡散されるレーザ光の拡散角の角度よりも狭くなるように調整されている。
<実施例の作用>
上記構成を有する本実施例によるレーザ測量装置11の動作を説明する。まず、図6に示すように、ドット状基準線SLを投射すべき壁面87に向けて、三脚85によってレーザ測量装置11を立てる。そして、この三脚85の長さを適宜調整することにより、レーザ測量装置11の窓16bの高さを、ドット状基準線SLを形成すべき高さと同じ高さに合わせる。
【0041】
次に、メインスイッチ96を投入して、マイコン82に電源を与える。すると、マイコン82は、Y方向のレベル検知センサ72及びX方向のレベル検知センサ73からの傾き検知信号を読み込み、それに応じてX方向レベル調整用モータ44及びY方向レベル調整用モータ76適宜駆動し、投光装置15の軸(回転投光部15の回転軸)が鉛直方向を向くように傾きの調整を行う。
【0042】
次に、発光指示操作部97を投入して、レーザダイオード23を発振させる。すると、レーザダイオード23から発振されたレーザ光Lは、レーザ出射光学系内において、投光装置13の軸に沿って鉛直方向下向きに出射されるレーザ光L,投光装置13の軸(回転投光部15の回転軸)に沿って鉛直方向上向きに出射されるレーザ光L,及び投光装置13の軸(回転投光部15の回転軸)に直交する方向に出射されるレーザ光Lに分割される。
【0043】
レーザ光Lは、本体ハウジング12の円孔12a,及びバッテリーケース17の円孔17a,17aを通って、床(地面)にスポットを形成する。また、レーザ光Lは、上部ハウジング16の透明部材36を透過して、天井等にスポットを形成する。従って、これらスポットを手がかりにして、レーザ測量装置11を所定の測量基準点上(又は、測量基準点下)に移動させることができる。また、レーザ光Lは、平行平面光学素子1を透過することによってその一部が拡散され、窓16bを通って壁面87に向けて照射される。しかし、この時点では、前群レンズ31の合焦調整は行われていないので、このレーザ光Lによって形成されるドット状基準線SLは、ぼんやりとした状態となっている。
【0044】
次に、レーザ測量装置11から壁面87までの距離を目測して、距離入力部99に入力する。すると、合焦用モータ59が適宜回転駆動され、前群31が対応する位置に移動する。その結果、図6に示すように、壁面87上に、中間部分に高輝度のスポットSPを有するとともに水平方向に伸びた細いドット状基準線SLが、明確に形成される。
【0045】
そして、室内での墨出し作業のように全周方向に基準線を形成する必要がある場合には、作業者は、回転指示操作部98によって回転投光部15の回転を指示する。すると、投光部回転用モータ66が回転駆動され、全周方向に存在する壁面上に、スポットSPの走査軌跡による線が形成される。なお、周囲が比較的暗く,且つ壁面までが極近距離であると、この線は目視によって識別できるが、周囲が比較的明るかったり壁面までが比較的長距離である場合には、目視による識別はできない。その場合には、光位置検出器を用いてスポットSPの走査軌跡を検出し、マーキング等を行う。つまり、直進するレーザ光の指向性故に、平行平面光学素子1の無処理部1bを透過した光は、拡散することなく直線に進行する。従って、遠距離になっても光位置検出器により検出可能なシュレッショルドレベル以上のエネルギー密度が維持される。その結果、スポットSPが目視できない場合でも、光位置検出器により瞬間的に通過するスポットSPを検知することによって、その走査軌跡を検出することができるのである。
【0046】
また、一方向にのみ存在している平面状の壁面上に基準線を形成する場合には、作業者は、回転指示操作部98によって回転投光部15の停止を指示する。すると、投光部回転用モータ66が停止され、壁面上にドット状基準線SLが形成される。この場合、基準線を形成すべき長さ範囲があまりにも広い場合には回転投光部15を回転させれば良いという理由から、ドット状基準線SLが形成される長さ,即ち、解析格子部1a,1cによる拡散角は、狭い範囲に制限されている。従って、解析格子部1a,1cによるレーザ光エネルギーの拡散率が低くレーザ光エネルギーを無駄にすることがないので、回転投光部15を回転させてスポットSPを走査させる場合に比較して、壁面がより遠距離にあったり周囲がより明るくても、目視可能にドット状基準線SLを形成することができる。作業者は、ドット状基準線SLが所望の壁面上に形成されるように、回転位置調整釦100を適当な回数だけ押下して、回転投光部15の回転位置を調整する。そして、所望の壁面上に形成されたドット状基準線SLを目視して、マーキング等を行うのである。
【0047】
なお、一方向のみに存在している平面状の壁面上に基準線を形成する場合であっても、壁面までが更に遠距離になったり明るくなったりすると、ドット状基準線SLの目視は不可能になる。その場合には、作業者は、回転指示操作部98によって回転投光部15の回転を指示する。すると、投光部回転用モータ66が回転駆動され、平面上の壁面上に、スポットSPの走査軌跡による線が形成される。この場合には、スポットSPの走査軌跡は目視し得ないので、作業者は、光検知器によってスポットSPの走査軌跡を識別して、マーキング等を行う。
【0048】
本実施例によるレーザ測量装置では、基準線投影時には、モータの加減速は行わないので、レーザ測量装置自体が振動して基準線がぶれたり投光部回転用モータ66の消費電力が大きくなることもない。
【0049】
【実施例2】
本第2実施例は、第1実施例と比して、第1実施例のものと全く同じ構成の平行平面光学素子を光軸中心に90度回転して投光用窓33にはめ込んだことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0050】
図7に、本第2実施例の平行平面光学素子101を示す。この平行平面光学素子101は、正面正方形の平行平面ガラスであり、その正面は図1及び図2の上下方向(垂直方向)に三等分されている。このうち、上側の領域101a及び下側の領域101cは、図1及び図2の紙面に直交する方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている回折格子部であり、これら両回折格子部101a,101cに挟まれた領域101bは、平滑面のままの無処理部となっている。
【0051】
従って、投光部回転用モータ66を停止した状態では、図8に示したように、壁面87上に、両回折格子部101a,101cでの回折により拡散されたレーザ光によって垂直方向を向いたドット状基準線SLが形成されるとともに、無処理部101bを透過したレーザ光によって高輝度のスポットSPがドット状基準線SLの中間部分に形成される。
【0052】
そして、ある程度近距離且つ周囲が比較的暗いという条件下ではこのドット状基準線SLを目視し得るので、垂直方向を向いた基準線SLによる墨出し作業を行いたい場合には、回転位置調整釦100によってドット状基準線SLの投射方向の調整を行い、このドット状基準線SLを目視して、マーキング等を行う。
【0053】
一方、水平方向の基準線を投射したい場合には、ある程度近距離且つ周囲が比較的明るいときでも、回転指示操作部98を投入することにより、投光回転用モータ66を回転させる。すると、高輝度のスポットSPが水平方向に走査されるので、スポットSPの残像による水平線が形成される。このスポットSPの残像による線が識別できる場合には、目視によってマーキング等を行えば良いが、識別しにくい場合には、光位置検出器を用いてスポットSPの走査軌跡を検出してマーキング等を行う。
【0054】
このように、本実施例によると、投射方式を切り換えることによって、基準線を形成したい方向を垂直方向又は水平方向に切り換える事ができる。
【0055】
【実施例3】
本第3実施例は、第1実施例に比して、平行平面光学素子1の無処理部1bのみを削除したのと等価な平行平面光学素子102を、図1及び図2の上下方向にその格子方向が向くように投光用窓33にはめ込んだことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0056】
即ち、この平行平面光学素子102は、図9に示すように、投光用窓33の幅の1/3の幅を有するとともにその長手方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている2枚の回折格子板102a,102bからなる。これら2枚の回折格子板102a,102bは、図1及び図2の上下方向にその格子方向を向けて、互いに離間された状態で投光用窓33の両側部分にはめ込まれている。
【0057】
本第3実施例では、各回折格子板102a,102bを透過したレーザ光は、回折によって格子方向に直交する方向(水平方向)に拡散されて、壁面87上に比較的低輝度のドット状基準線SLを静的に形成する。また、各回折格子板102a,102bの間を通過したレーザ光は、何ら回折を受けることなく、ドット状基準線SLの中央に比較的高輝度のスポットSPを形成する。
【0058】
本第3実施例によると第1実施例と全く同じ作用を生じる。また、本第3実施例において、平行平面光学素子102を、第2実施例の場合のように、光軸を中心に90度回転させて投光用窓33にはめ込んでも良い。
【0059】
【実施例4】
本第4実施例は、第1実施例に比して、平行平面光学素子103の正面上に回折格子部103aを1箇所のみ形成したことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0060】
図10に、本第4実施例の平行平面光学素子103を示す。この平行平面光学素子103は、正面正方形の平行平面ガラスであり、その正面は図1及び図2の紙面の直交する方向に二等分されている。このうち、片方の領域103aは、図1及び図2の上下方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている回折格子部であり、他方の領域103bは、平滑面のままの無処理部となっている。
【0061】
本第4実施例では、平行平面光学素子103の回折格子部103aを透過したレーザ光は、回折によって格子方向に直交する方向(水平方向)に拡散されて、壁面87上に比較的低輝度のドット状基準線SLを静的に形成する。また、平行平面光学素子103の無処理部103bを通過したレーザ光は、何ら回折を受けることなく、ドット状基準線SLの中央に比較的高輝度のスポットSPを形成する。
【0062】
本第4実施例によると第1実施例と全く同じ作用を生じる。
【0063】
【実施例5】
本第5実施例は、第4実施例に比して、平行平面光学素子103の無処理部103bのみを削除したのと等価な平行平面光学素子104を、図1及び図2の上下方向にその格子方向が向くように投光用窓33にはめ込んだことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0064】
即ち、この平行平面光学素子104は、図11に示すように、投光用窓33の横幅の1/2の幅を有するとともにその長手方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている回折格子板である。そして、この平行平面光学素子104は、図1及び図2の上下方向にその格子方向を向けて、投光用窓33の片側のみを覆うようにはめ込まれている。
【0065】
本第5実施例では、平行平面光学素子104を透過したレーザ光は、回折によって格子方向に直交する方向(水平方向)に拡散されて、壁面87上に比較的低輝度のドット状基準線SLを静的に形成する。また、平行平面光学素子104の脇を通過したレーザ光は、何ら回折を受けることなく、ドット状基準線SLの中央に比較的高輝度のスポットSPを形成する。
本第5実施例によると第1実施例と全く同じ作用を生じる。
【0066】
【実施例6】
本第6実施例は、第4実施例と比して、第4実施例のものと全く同じ構成の平行平面光学素子を光軸中心に90度回転して横に配置したことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0067】
図12に、本第6実施例の平行平面光学素子105を示す。この平行平面光学素子105は、正面正方形の平行平面ガラスであり、その正面は図1及び図2の紙面の上下方向(垂直方向)に二等分されている。このうち、上半分の領域105aは、図1及び図2の紙面に直交する方向に格子方向を向けた回折格子が形成された回折格子部であり、下半分の領域105bは、平滑面のままの無処理部となっている。
【0068】
従って、投光部回転用モータ66を停止した状態では、壁面87上に、回折格子部105aでの回折により拡散されたレーザ光によって垂直方向を向いたドット状基準線SLが形成されるとともに、無処理部105bを透過したレーザ光によって高輝度のスポットSPがドット状基準線SLの中間部分に形成される。
【0069】
本第6実施例によると第2実施例と全く同じ作用を生じる。
【0070】
【実施例7】
本第7実施例は、第6実施例に比して、平行平面光学素子105の無処理部105bのみを削除したのと等価な平行平面光学素子106を、図1及び図2の紙面に直交する方向にその格子方向が向くように投光用窓33にはめ込んだことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0071】
即ち、この平行平面光学素子106は、図13に示すように、投光用窓33の縦幅の1/2の幅を有するとともにその長手方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている回折格子板である。そして、この平行平面光学素子106は、図1及び図2の紙面に直交する方向にその格子方向を向けて、投光用窓33の上半分のみを覆うようにはめ込まれている。
【0072】
本第7実施例では、平行平面光学素子106を透過したレーザ光は、回折によって格子方向に直交する方向(垂直方向)に拡散されて、壁面87上に比較的低輝度のドット状基準線SLを静的に形成する。また、平行平面光学素子106の脇を通過したレーザ光は、何ら回折を受けることなく、ドット状基準線SLの中央に比較的高輝度のスポットSPを形成する。
【0073】
本第7実施例によると第2実施例と全く同じ作用を生じる。
【0074】
【実施例8】
本第8実施例は、第2実施例と比して、平行平面光学素子101の両回折格子部101a,101cに形成された回折格子の格子方向を図1及び図2の上下方向に向けたのと等価な平行平面光学素子を用いたことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0075】
図14に、本第8実施例の平行平面光学素子107を示す。この平行平面光学素子107は、正面正方形の平行平面ガラスであり、その正面は図1及び図2の上下方向(垂直方向)に三等分されている。このうち、上側の領域107a及び下側の領域107cは、図1及び図2の上下方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている回折格子部であり、これら両回折格子部107a,107cに挟まれた領域107bは、平滑面のままの無処理部となっている。
【0076】
本第8実施例では、各回折格子部107a,107cを透過したレーザ光は、回折によって格子方向に直交する方向(水平方向)に拡散されて、壁面87上に比較的低輝度のドット状基準線SLを静的に形成する。また、平行平面光学素子103の無処理部107bを通過したレーザ光は、何ら回折を受けることなく、ドット状基準線SLの中央に比較的高輝度のスポットSPを形成する。
【0077】
本第8実施例によると第1実施例と全く同じ作用を生じる。
【0078】
【実施例9】
本第9実施例は、第8実施例に比して、平行平面光学素子107の無処理部107bのみを削除したのと等価な平行平面光学素子108を、図1及び図2の上下方向にその格子方向が向くように投光用窓33にはめ込んだことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0079】
即ち、この平行平面光学素子108は、図15に示すように、投光用窓33の縦幅の1/3の幅を有するとともにその短手方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている2枚の回折格子板108a,108bからなる。これら2枚の回折格子板108a,108bは、図1及び図2の上下方向にその格子方向を向けて、互いに離間された状態で投光用窓33の上下部分にはめ込まれている。
【0080】
本第9実施例では、各回折格子板108a,108bを透過したレーザ光は、回折によって格子方向に直交する方向(水平方向)に拡散されて、壁面87上に比較的低輝度のドット状基準線SLを静的に形成する。また、各回折格子板108a,108bの間を通過したレーザ光は、何ら回折を受けることなく、ドット状基準線SLの中央に比較的高輝度のスポットSPを形成する。
【0081】
本第9実施例によると第1実施例と全く同じ作用を生じる。
【0082】
【実施例10】
本第10実施例は、第14実施例と比して、第14実施例のものと全く同じ構成の平行平面光学素子を光軸中心に90度回転して横に配置したことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0083】
図16に、本第10実施例の平行平面光学素子109を示す。この平行平面光学素子109は、正面正方形の平行平面ガラスであり、その正面は図1及び図2の紙面に直交する方向(水平方向)に三等分されている。このうち両側の領域109a,109cは、図1及び図2の紙面に直交する方向に格子方向を向けた回折格子が形成された回折格子部であり、これら両回折格子部109a,109cに挟まれた部分は、平滑面のままの無処理部109bとなっている。
【0084】
従って、投光部回転用モータ66を停止した状態では、壁面87上に、回折格子部109a,109cでの回折により拡散されたレーザ光によって垂直方向を向いたドット状基準線SLが形成されるとともに、無処理部109bを透過したレーザ光によって高輝度のスポットSPがドット状基準線SLの中間部分に形成される。
【0085】
本第10実施例によると第2実施例と全く同じ作用を生じる。
【0086】
【実施例11】
本第11実施例は、第10実施例に比して、平行平面光学素子109の無処理部109bのみを削除したのと等価な平行平面光学素子110を、図1及び図2の紙面に直交する方向にその格子方向が向くように投光用窓33にはめ込んだことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0087】
即ち、この平行平面光学素子110は、図17に示すように、投光用窓33の横幅の1/3の幅を有するとともにその短手方向に格子方向を向けた回折格子が形成されている2枚の回折格子板110a,110bからなる。これら2枚の回折格子板110a,110bは、図1及び図2の紙面に直交する方向にその格子方向を向けて、互いに離間された状態で投光用窓33の両側部分にはめ込まれている。
【0088】
従って、投光部回転用モータ66を停止した状態では、壁面87上に、各回折格子板110a,110bでの回折により拡散されたレーザ光によって垂直方向を向いたドット状基準線SLが形成されるとともに、各回折格子板110a,110bの間を透過したレーザ光によって高輝度のスポットSPがドット状基準線SLの中間部分に形成される。
【0089】
本第11実施例によると第2実施例と全く同じ作用を生じる。
【0090】
【実施例12】
本第12実施例は、第1実施例に比して、図1及び図2の紙面に直交する方向(水平方向)にその格子方向を向けた第1回折格子部111a,図1及び図2の上下方向(垂直方向)にその格子方向を向けた第2回折格子部111b,及び平滑面のままの無処理部111cとを組み合わせた平行平面光学素子111を投光用窓33にはめ込んだことを特徴とし、その他の部分を同一とする。
【0091】
図18に、本第12実施例の平行平面光学素子111を示す。この平行平面光学素子111は、正面正方形の平行平面ガラスであり、その正面は図1及び図2の上下方向(垂直方向)に二等分され、その上半分の領域が無処理部111cとされている。また、その下半分の領域は、更に、図1及び図2の紙面に直交する方向に二等分され、一方の領域が第1回折格子部111aとされ、他方の領域が第2回折格子部111bとされている。
【0092】
従って、投光部回転用モータ66を停止した状態では、図19に示したように、壁面87上に、第1回折格子部111aでの回折により拡散されたレーザ光によって垂直方向を向いたドット状基準線SL2が形成され、第2回折格子部111bでの回折により拡散されたレーザ光によって水平方向を向いたドット状基準線SL1が形成されるとともに、無処理部111cを透過したレーザによって高輝度のスポットSPが投射される。この水平方向ドット状基準線SL1と垂直方向ドット状基準線SL2とは互いの中間部分で互いに直交しているとともに、その交点に高輝度のスポットSPが形成される。
【0093】
そして、室内での墨出し作業のように全周方向に基準線を形成する必要がある場合には、作業者は、回転指示操作部98によって回転投光部15の回転を指示する。すると、投光部回転用モータ66が回転駆動され、全周方向に存在する壁面上に、スポットSPの走査軌跡による線が形成される。作業者は、この線を目視又は光検出器によって識別して、マーキング等を行う。
【0094】
また、一方向にのみ存在している平面状の壁面上に基準線を形成する場合には、作業者は、回転指示操作部98によって回転投光部15の停止を指示する。すると、投光部回転用モータ66が停止され、ある程度壁面までが近距離であって周囲が比較的暗い限り、壁面上に水平方向ドット状基準線SL1及び垂直方向ドット状基準線SL2が目視可能に形成される。作業者は、ドット状基準線SLが所望の壁面上に形成されるように、回転位置調整釦100を適当な回数だけ押下して、回転投光部15の回転位置を調整する。そして、所望の壁面上に形成された水平方向ドット状基準線SL1及び垂直方向ドット状基準線SL2を目視して、マーキング等を行うのである。
【0095】
なお、一方向のみに存在している平面状の壁面上に基準線を形成する場合であっても、壁面までが更に遠距離になったり明るくなったりすると、水平方向ドット状基準線SL1及び垂直方向ドット状基準線SL2の目視は不可能になる。その場合には、作業者は、回転指示操作部98によって回転投光部15の回転を指示する。すると、投光部回転用モータ66が回転駆動され、平面上の壁面上に、スポットSPの走査軌跡による線が形成される。この場合には、スポットSPの走査軌跡は目視し得ないので、作業者は、光検知器によってスポットSPの走査軌跡を識別して、マーキング等を行う。
【0096】
このように、本第12実施例によると、回転投射部15による走査を行わなくても、水平方向及び垂直方向にドット状基準線SL1,SL2が形成される。また、遠距離の場合や周囲が暗い場合でも、回転投射部15による走査を行うことにより、水平方向の基準線をスポットSPの軌跡として形成することができる。さらに、室内での墨出し作業のように全周方向に基準線を投射する必要がある場合でも、回転投射部15による走査を行うことにより、全周方向に伸びた基準線をスポットSPの軌跡として形成することができる。
【0097】
【実施例13】
本第13実施例は、第1乃至第12実施例が一つの光源(レーザダイオード34)から発振されたレーザ光を一本の光路を通して出射するのと異なり、2つの光源から発振されたレーザ光を二本の光路を通して出射するとともに、片方の光路にのみ回折格子を配置したことを特徴とする。
<実施例の構成>
本第13実施例の構成を、図20に示す。図20において、回転投光部115は、切換手段としてON/OFF切換が自在な回転手段としての回転モータ116によって、鉛直軸方向に向いた回転軸122を中心に回転する。
【0098】
この回転投光部115内には、二つのレーザダイオード117,118,回折格子板119,反射ミラー120,及びビームスプリッタ121が配置されている。
【0099】
第1及び第2のレーザ光源としての各レーザダイオード117,118は、回転軸122と平行にレーザ光を発振する。このレーザダイオード117,118は、図1に示すようなコリメートレンズ24及びアナモフィックレンズ18を一体に組み込んでいる。
【0100】
回折格子板119の表面には、図20の左右方向にその格子方向を向けた回折格子が形成されており、第1のレーザ光源としてのレーザダイオード118から発振されたレーザ光を回折によって図33の紙面に直交する方向に拡散する。
【0101】
反射ミラー120は、回折格子板119を透過したレーザ光を、回転軸122に直交する方向に反射する。
出射部としてのビームスプリッタ121は、反射ミラー120によって反射されたレーザ光とレーザダイオード117から発振されたレーザ光とを、図20の紙面内において軸合わせして、回転投光部115の側方に出射する。
<実施例の作用>
本第13実施例によると、ビームスプリッタ121において、レーザダイオード117から発振されたレーザ光は、回折格子板119によって拡散されたレーザ光の中央部分に合わせられる。従って、図6に示したのと同じように、回折格子板119において拡散されたレーザ光は、壁面87上に、水平方向に伸びたドット状基準線SLを形成する。一方、レーザダイオード117から発振されたレーザ光は、ドット状基準線SLの中央に高輝度のスポットSPを形成する。
【0102】
そして、室内での墨出し作業のように全周方向に基準線を形成する必要がある場合には、回転モータ116によって回転投光部115を回転させる。すると、全周方向に存在する壁面上に、スポットSPの走査軌跡による線が形成される。作業者は、この線を目視又は光検出器によって識別して、マーキング等を行う。
【0103】
また、一方向にのみ存在している平面状の壁面上に基準線を形成する場合には、回転モータ116を停止させる。すると、ある程度壁面までが近距離であって周囲が比較的暗い限り、壁面上にドット状基準線SLが目視可能に形成される。そこで、作業者は、所望の壁面上に形成されたドット状基準線SLを目視して、マーキング等を行うのである。
【0104】
なお、一方向のみに存在している平面状の壁面上に基準線を形成する場合であっても、壁面までが更に遠距離になったり明るくなったりすると、ドット状基準線SLの目視は不可能になる。その場合には、回転モータ116によって回転投光部115を回転させる。その結果、高輝度のスポットSPが走査されるので、スポットSPの残像による線が形成される。作業者は、このスポットSPの残像を光位置検出器を用いて検出して、マーキング等を行う。なお、回転投光部115の回転を行う場合には、ドット状基準線SLは形成できないので、発光ダイオード118の発振を停止しても良い。
【0105】
【実施例14】
本第14実施例は、第13実施例に比して、一個のレーザダイオード126のみを配置し、このレーザダイオード126から発振されたレーザ光を第2のビームスプリッタ124によって分割したことを特徴とする。
【0106】
本第14実施例の構成を、図21に示す。図21において、レーザ光源としてのレーザダイオード126は、回転投光部115の回転軸122に直交する方向にレーザ光を発振する。レーザダイオード126から発振されたレーザ光は、光路分離手段としての第1のビームスプリッタ124において、そのまま直進するレーザ光と回転軸122に平行な方向に反射されるレーザ光とに分離される。
【0107】
回転軸22に平行な方向に反射されたレーザ光は、回折格子板119を透過することによって図21の紙面に直交する方向に拡散され、第1の反射ミラー120により回転軸122に直交する方向に反射される。
【0108】
一方、第1のビームスプリッタ124を透過したレーザ光は、第2の反射ミラー125により回転軸122と平行な方向に反射される。
光路合成手段としての第2のビームスプリッタ121は、第1の反射ミラー120によって反射されたレーザ光と第2の反射ミラー125によって反射されたレーザ光とを、図21の紙面内において軸合わせして、回転投光部115の側方に出射する。
【0109】
本第14実施例によると、第13実施例と全く同じ作用を生じる。
【0110】
【発明の効果】
以上のように構成した本発明のレーザ測量装置によると、回折格子によってレーザ光を一定方向に拡散して基準面又は基準線を形成する方式とレーザ光を走査することによって基準面又は基準線を形成する方式とを組み合わせた。従って、全周方向への基準線投射が可能であり、また、単なる回転走査式の場合より、長距離の壁面に基準線を目視可能に投射でき、且つ周囲が明るくても基準線を目視可能に投射できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例によるレーザ測量装置の断面図
【図2】図1のレーザ出射光学系の光学構成図
【図3】図2の平行平面光学素子の斜視図
【図4】図2の平行平面光学素子の機能説明図
【図5】図1のレーザ測量装置の内部回路を示すブロック図
【図6】本発明の第1実施例の作用説明図
【図7】本発明の第2実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図8】本発明の第2実施例の作用説明図
【図9】本発明の第3実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図10】本発明の第4実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の上面図
【図11】本発明の第5実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の上面図
【図12】本発明の第6実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図13】本発明の第7実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図14】本発明の第8実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図15】本発明の第9実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図16】本発明の第10実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図17】本発明の第11実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図18】本発明の第12実施例によるレーザ測量装置に用いられる平行平面光学素子の斜視図
【図19】本発明の第12実施例の作用説明図
【図20】本発明の第13実施例によるレーザ測量装置の概略構成図
【図21】本発明の第14実施例によるレーザ測量装置の概略構成図
【符号の説明】
1 平行平面光学素子
11 レーザ測量装置
13 投光装置
15 回転投光部
20 本体部
23 レーザダイオード
27 偏光ビームスプリッタ
35 ペンタプリズム
66 投光部回転用モータ
SL 基準線
SP スポット
101 平行平面光学素子
102 平行平面光学素子
103 平行平面光学素子
104 平行平面光学素子
105 平行平面光学素子
106 平行平面光学素子
107 平行平面光学素子
108 平行平面光学素子
109 平行平面光学素子
110 平行平面光学素子
111 平行平面光学素子

Claims (10)

  1. レーザ光源と、
    このレーザ光源から発振されたレーザ光を外部に出射する出射部と、
    前記レーザ光源から前記出射部までの前記レーザ光の光路においてこの光路の断面の一部に配置され、前記レーザ光を回折により一方向にのみ拡散する回折格子と、
    前記出射部によるレーザ光の出射方向を一定平面内で回転させる回転手段と、
    この回転手段の動作及び停止を切り換える切換手段と
    を備えたことを特徴とするレーザ測量装置。
  2. 前記レーザ光の光路断面の一部に前記回折格子を複数個配置したことを特徴とする
    請求項1記載のレーザ装置。
  3. 前記複数個の回折格子による前記レーザ光の拡散方向が全て同じであることを特徴とする請求項2記載のレーザ測量装置。
  4. 一部の回折格子による前記レーザ光の拡散方向が前記回転手段による前記レーザ光の出射方向の回転方向と一致しているとともに、残りの回折格子による前記レーザ光の拡散方向が前記回転手段による前記レーザ光の出射方向の回転方向と直交している
    ことを特徴とする請求項2記載のレーザ測量装置。
  5. 前記回折格子による前記レーザ光の拡散方向は、前記回転手段による前記レーザ光の出射方向の回転方向と一致している
    ことを特徴とする請求項1又は3記載のレーザ測量装置。
  6. 前記回折格子による前記レーザ光の拡散方向は、前記回転手段による前記レーザ光の出射方向の回転方向と直交している
    ことを特徴とする請求項1又は3記載のレーザ測量装置。
  7. 前記回折格子は、前記レーザ光が全て入射する平行平面光学素子上に形成されている
    ことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ測量装置。
  8. 前記回折格子は、この回折格子と同じ面積の平行光学素子上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ測量装置。
  9. レーザ光源と、
    このレーザ光源から発振されたレーザ光を外部に出射する出射部と、
    前記レーザ光源から前記出射部までの前記レーザ光の光路を複数の光路に分離する光路分離手段と、
    この光路分離手段によって分離された光路の一方に配置され、前記レーザ光を回折により一方向にのみ拡散する回折格子と、
    前記光路分離手段によって分離された光路を前記出射部の手前で合成する光路合成手段と、
    前記出射部によるレーザ光の出射方向を一定平面内で回転させる回転手段と、
    この回転手段の動作及び停止を切り換える切換手段と
    を備えたことを特徴とするレーザ測量装置。
  10. 第1のレーザ光源と、
    第2のレーザ光源と、
    これら各レーザ光源から発振されたレーザ光を合成して外部に出射する出射部と、
    前記第1のレーザ光源から前記出射部までの前記レーザ光の光路に配置され、前記レーザ光を回折により一方向にのみ拡散する回折格子と、
    前記出射部によるレーザ光の出射方向を一定平面内で回転させる回転手段と、
    この回転手段の動作及び停止を切り換える切換手段と
    を備えたことを特徴とするレーザ測量装置。
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