JP3594938B2 - ガスレーザ発振器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、発振器筐体が熱によって変形した場合にも、一対の光共振器の平行度や軸ずれなどの位置関係を一定に保つことによって、レーザビームの出力やビームモードなどの品質を安定に保つことが可能な構造を有するガスレーザ発振器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8〜図10は、ガスレーザ発振器として直交励起型レーザ発振器の従来例を示す図であり、図8は、直交励起型レーザ発振器の正面図を示し、図9はその平面図を示し、そして図10はその内部構造を示している。直交励起型レーザ発振器はCO2 ガス等のレーザ媒体ガスが封入された密閉構造の発振器筺体1を有しており、発振器筺体1の内部には、レーザビーム発生用の放電電極2a,2bとレーザ媒体ガスを冷却する熱交換器3と、レーザ媒体ガスを発振器筐体1内で循環させる送風器4とが設置されている。
【0003】
発振器筺体1内には放電電極2a,2b間を通過したレーザ媒体ガスを熱交換器3に戻すダクト5が設けられている。発振器筺体1の光軸方向の両側には、全反射鏡6を保持した後部光学基台7と、全反射鏡6と同一光軸上に部分反射鏡8を保持した前部光学基台9とが互いに平行に配置されており、全反射鏡6と部分反射鏡8とが光共振器を構成している。
【0004】
発振器筺体1と後部光学基台7との間および発振器筺体1と前部光学基台9との間のレーザビーム通過部分は、それぞれベローズ10,11によって接続されている。後部光学基台7と前部光学基台9とは、下部1本、上部2本の合計3本の支持棒12〜14によって互いに剛固に接続されている。支持棒12〜14は、発振器筐体1の両側の端板15,16を貫通してレーザビーム進行方向(光軸方向)に延在している。
【0005】
このような構成を有するガスレーザ発振器において、レーザ発振時における発振器筐体1の熱変形によって光共振器を構成する光学基台9,7の平行な位置関係の変化を抑えるために、支持棒12〜14と発振器筐体1との間の種々の連結機構が提案されている。
【0006】
例えば、特開昭60−81883号公報や特開平7−307506号公報には、上述したような構造の直交励起型レーザ発振器において、下部の支持棒12は、端板15,16を貫通するだけで、発振器筐体1と連結されていないが、ガス流上流側に位置する上部の支持棒13は、端板15,16の部分、すなわち発振器筐体1の両側端部分にて接続部材17によって軸線方向移動が拘束された状態で、中心軸線回りに回転可能に接続され、そして、ガス流下流側の上部の支持棒14は、端板15,16の部分、すなわち発振器筐体1の両側端部分にて球面継手式の接続部材18によって、全方向に傾斜可能に接続された構造のものが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図11は、上述した従来のガスレーザ発振器の後部光学基台7と発振器筐体1との接続部分における断面図である。後部光学基台7(前部光学基台9)の全反射鏡6(部分反射鏡8)の周辺部は、レーザ発振時においては高温のレーザガスに面する構成となっている。また、発振中のレーザの一部は全反射鏡6(部分反射鏡8)に吸収されるため、後部光学基台7(前部光学基台9)の全反射鏡6(部分反射鏡8)の周辺部は、大気に面しているその他部分と比較して温度が高くなる。この結果、全反射鏡6(部分反射鏡8)の周辺部とそれ以外の部分との間には熱膨張差が生じ、その境界で大きな反力が発生する。この反力によって、図13に示されるように、熱膨張の大きい全反射鏡6(部分反射鏡8)の周辺部が飛び出したような形状に変形し、後部光学基台7(前部光学基台9)の平面度が悪化してしまう。そして、後部光学基台7上の全反射鏡6の向きと、前部光学基台9上の部分反射鏡8の向きが変わり、軸対称性の悪いレーザビームが生成されてしまうという問題点があった。特に、光学基台7,9の形状が光軸に対して対称性が悪いほど、全反射鏡6や部分反射鏡8の角度変化も大きくなってしまう。しかし、光学基台7,9を完全に光軸に対して対称な構成として作成することは、直交励起型レーザ発振器の場合には、その構造上困難である。
【0008】
図12は、ガスレーザ発振器の別の従来例を示す図である。図11の光学基台7(9)から全反射鏡6(部分反射鏡8)を着脱自在にするために、全反射鏡6(部分反射鏡8)が取り付けられている光学基台7(9)の部分には、ベローズ10の径よりも小さい反射鏡挿入孔30が設けられている。また、全反射鏡6(部分反射鏡8)が固定され、光学基台7(9)の反射鏡挿入孔30をふさぐことができる大きさの光学基板19が別部品として用意されている。そして、この光学基板19は、光学基台7(9)にボルトなどの固定部材21によって固定されており、固定部材21を外すことによって光学基台7(9)から取り外せる構造となっている。この図12に示される構造を有するガスレーザ発振器の場合には、光学基板19と光学基台7(9)の接触面で熱抵抗が大きい分、図11の場合と比べて温度差が大きくなるため、熱膨張差や反力がさらに大きくなってしまう。このため、光学基台7(9)および光学基板19の変形が大きくなり、全反射鏡6と部分反射鏡8との間のミラーアライメントは図11の場合と比較してさらに一層悪化してしまうという問題点があった。また、光学基台7(9)と光学基板19とを固定部材21で締結している場合には、その接触面において、摩擦力よりも反力の方が大きくなるために滑りが発生し、レーザ発振を停止した後の温度差がなくなった状態になっても全反射鏡6と部分反射鏡8の向きが元に戻らないという問題点もあった。
【0009】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、発振器筐体が熱変形しても、平行に配置された二つの光学基台からなる光共振器が変形力を受けないようにすることができるガスレーザ発振器を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかるガスレーザ発振器は、発振器筐体と、この発振器筐体の両端に設置され、光共振器を構成する光学部品を支持する一対の光学基台と、前記光学基台によって支持される前記光学部品がベローズ内に位置するように前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、を備えるガスレーザ発振器において、前記各光学基台のベローズ取り付け位置近傍に、光軸方向に伸びる薄肉部を形成することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、各光学基台のベローズ取り付け位置近傍に、光軸方向に伸びる薄肉部を形成するようにしている。
【0012】
つぎの発明にかかるガスレーザ発振器は、発振器筐体と、この発振器筐体の両端に設置され、光共振器を構成する光学部品を支持する一対の光学基台と、前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、を備えるガスレーザ発振器において、前記各光学基台は、前記光学部品が取り付けられる一方の面に該光学部品の取付け部を囲むように形成される第1の溝と、この第1の溝との間に薄肉部が形成されるように他方の面に形成される第2の溝とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、各光学基台は、光学部品が取り付けられる一方の面に該光学部品の取付け部を囲むように形成される第1の溝と、この第1の溝との間に薄肉部が形成されるように他方の面に形成される第2の溝とを備えるようにしている。
【0014】
つぎの発明にかかるガスレーザ発振器は、上記の発明において、前記ベローズは前記薄肉部が形成される位置に接続されることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、ベローズは薄肉部が形成される位置に接続されるようにしている。
【0016】
つぎの発明にかかるガスレーザ発振器は、発振器筐体と、前記発振器筐体の両端に設置される、孔を有する一対の光学基台と、光共振器を構成する光学部品を支持するとともに、前記孔を覆うように前記一対の光学基台に取り付けられる一対の光学基板と、前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、を備えるガスレーザ発振器において、前記光学基板は、前記孔とほぼ同じ径を有し光学部品を支持する本体部と、この本体部よりも厚さが薄いフランジ部を備え、前記本体部の一方の面に前記光学基台の孔とほぼ同じ径を有し本体部の外周壁との間に薄肉部を形成する溝を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、光学基板は、光学基台上の孔とほぼ同じ径を有し光学部品を支持する本体部と、この本体部よりも厚さが薄いフランジ部を備え、本体部の一方の面に光学基台の孔とほぼ同じ径を有し本体部の外周壁との間に薄肉部を形成する溝を備えるようにして、薄肉部が光学基台の孔の周縁部に位置するように光学基板を光学基台に取り付けている。
【0018】
つぎの発明にかかるガスレーザ発振器は、発振器筐体と、前記発振器筐体の両端に設置される、孔を有する一対の光学基台と、光共振器を構成する光学部品を支持するとともに、前記孔を覆うように前記一対の光学基台に取り付けられる一対の光学基板と、前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、を備えるガスレーザ発振器において、全体にわたってほぼ一様な厚さを有する光学基板の前記光学部品が取り付けられる一方の面に前記光学基台の孔とほぼ同じ径を有する第1の溝を形成し、他方の面に前記第1の溝との間に薄肉部が形成されるように第2の溝を形成するとともに、前記薄肉部が前記光学基台の孔の周縁部に位置するように前記光学基板を前記光学基台に取り付けることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、全体にわたってほぼ一様な厚さを有する光学基板の光学部品が取り付けられる一方の面に光学基台の孔とほぼ同じ径を有する第1の溝を形成し、他方の面に前記第1の溝との間に薄肉部が形成されるように第2の溝を形成するとともに、薄肉部が光学基台の孔の周縁部に位置するように光学基板を光学基台に取り付けるようにしている。
【0020】
つぎの発明にかかるガスレーザ発振器は、上記の発明において、前記一対の光学基台は、光軸方向に延在する少なくとも3本の支持棒によって互いに平行に接続されていることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、一対の光学基台は、光軸方向に延在する少なくとも3本の支持棒によって互いに平行に接続されるようにしている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるガスレーザ発振器の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に説明するこの発明の実施の形態において上述した従来技術と同一の構成要素については、上述した従来技術に付した符号と同一の符号を付している。
【0023】
実施の形態1.
図1〜図3はこの発明にかかるガスレーザ発振器の実施の形態1を示す図であり、図1は発振器筐体1と光学基台7との接続部分を部分的に示す正面断面図を、図2は図1の左側面図を、そして、図3は図1の光学基台7の部分の熱による変形を受けた状態を示す図である。なお、これらの図では、後部光学基台7を例に挙げているが、前部光学基台9についても、これらの図と同様に構成することができる。
【0024】
後部光学基台7は、その保持する全反射鏡6と同一の光軸を有する図示しない部分反射鏡8を保持した図示しない前部光学基台9と互いに平行に、支持棒12〜14を介して配置されている。光学基台7と発振器筐体1とは、ベローズ10によって接続されるとともに、発振器筐体1の上部に設けられた接続部材17によって、支持棒13(14)が接続される。
【0025】
光学基台7には、反射鏡6の周囲を囲むように、光軸と垂直な方向の断面の厚さが薄い薄肉部22が設けられている。例えば、図2では、径の異なる2本の円形状の溝23a(図2では実線で示されている),23b(図2では点線で示されている)を光学基台7の両面から同心円状に加工することによって、光軸方向に長く光軸と垂直方向に薄い断面を有する薄肉部22が形成されている。このようにして形成された薄肉部22は、長手方向、すなわち光軸方向に剛性が高く、厚み方向、すなわち光軸に垂直な方向には小さいという性質を有する。
【0026】
レーザ発振による温度上昇が生じると、図3に示す矢印の向きに反射鏡6の取付部周辺が膨張する。しかし、このような反射鏡6の取付部付近の膨張による変形は、図3に示すように薄肉部22が柔らかく変形することによって吸収され、膨張に伴う反力を小さくすることができる。その結果、光学基台7全体の変形が小さくなるので、もう一方の図示しない光学基台9との平行な位置関係を保つことが可能となる。また、膨張による反力が薄肉部22によって吸収されることで、反射鏡6の向きの変化も小さく抑えられ、もう一方の図示しない反射鏡8との間の光軸のずれを抑えることができる。
【0027】
また、上述したように薄肉部22は長手方向に高い剛性を有するので、外部振動等の外力に対しても、反射鏡6の角度支持剛性が高く、安定したミラーアライメントが得られるという効果も有する。
【0028】
さらに、上述したように膨張による変形を吸収する薄肉部22を光学基台7に設けたことによって、隙間が発生するわけではないので、発振器筐体1とベローズ10と光学基台7との間におけるレーザガスの気密性が損なわれることもない。
【0029】
なお、図1では、光軸方向から見てベローズ10の径よりも内側に、すなわちベローズ10の径よりも小さい径を有する薄肉部22を設けているが、図4に示されるように薄肉部22をベローズ10の径よりも外側に設けてもよく、上述した場合と同様の効果が得られる。
【0030】
また、高温のレーザ媒体ガスと常温の大気とはベローズ10を境界として接しているので、光学基台7上での温度差もこのベローズ10の接続部付近が境界になる。そこで、図5に示されるように、光学基台7上に設ける薄肉部22をこの境界付近、すなわちベローズ10の径とほぼ同じ位置に設けるようにしてもよい。このように構成することによって、レーザ媒体ガスと大気との温度差による熱膨張の差が効果的に吸収され、光学基台7の変形を抑制することが可能となる。
【0031】
さらに、図1〜図5では、光軸方向から見た光学基台7に設けた薄肉部22は、反射鏡6の取付部の周囲を円形状に囲む場合を例に挙げて説明したが、円形の形状に限られるものではなく、四角形状や六角形状などの多角形状としてもよい。ただし、薄肉部22を多角形の形状とした場合には、円形の場合に比して角の部分で剛性が上昇するため、熱変形による反力と変形が円形の場合と比較して幾分大きくなることを考慮する必要がある。
【0032】
実施の形態2.
図6は、この発明にかかるレーザ発振器の実施の形態2の構成を示す図であり、発振器筐体1と光学基台7との接続部分を部分的に示す正面断面図を示している。なお、この図6の例では、後部光学基台7を例に挙げているが、前部光学基台9についても、この図6と同様に構成することができる。
【0033】
この実施の形態2では、光学基台7にはベローズ10の光軸とは垂直な方向の径よりもわずかに小さい径を有する反射鏡挿入孔30が設けられている。この反射鏡挿入孔30の形状は、特に限定されるものではなく、円形状でも多角形状でもその他の形状でも良い。この光学基台7には、反射鏡6を備えた光学基板19が、反射鏡挿入孔30に反射鏡6を挿入するようにして、ネジやボルトなどの固定部材21によって取り付けられる。光学基板19は、反射鏡挿入孔30の大きさに比してわずかに大きい寸法を有し、発振器筐体1側の面に反射鏡6を支持する本体部19aと、本体部19aの厚さに比して薄い厚さを有し、光学基台7に取り付けるためのネジやボルトなどの固定部材21が配置されるフランジ部19bとから成る。また、本体部19aには、その発振器筐体1側の面に光学基台7に設けられた反射鏡挿入孔30とほぼ同じ径を有し、本体部19aの外周壁との間に薄肉部22を形成するように光軸方向に深さを有する溝23bが形成される。そして、この薄肉部22が光学基台7の反射鏡挿入孔30の周縁部に位置するように、光学基板19は光学基台7に取り付けられる。
【0034】
なお、発振器筐体1とベローズ10の中はレーザ媒体ガスを保持できるように密閉構造としているために、光学基台7と光学基板19との間で、リークが生じないようにしっかりと接続される。また、上述した光学基板19の形状は、円形の板状であっても、多角形の板状であってもよい。さらに、上述した説明において、光学基台7に光学基板19を固定するためのネジやボルトなどの固定部材21は、フランジ部19b上に配置される。
【0035】
上述した実施の形態1と同様に、薄肉部22は、長手方向、すなわち光軸方向に剛性が高く、厚み方向、すなわち光軸に垂直な断面方向には小さいという性質を有する。そのため、反射鏡6の取付部付近の熱膨張による変形は、薄肉部22が柔らかく変形することによって吸収され、膨張に伴う反力を小さくすることができる。また、光学基台7全体の変形が小さくなるので、もう一方の図示しない光学基台9との平行な位置関係を保つことができる。さらに、膨張による反力が薄肉部22によって吸収されることによって、反射鏡6の向きの変化も小さく抑えられ、もう一方の図示しない反射鏡8との間の光軸のずれを抑えることができる。
【0036】
また、上述したように薄肉部22は長手方向に高い剛性を有するので、外部振動等の外力に対しても、反射鏡6の角度支持剛性が高く、安定したミラーアライメントが得られるという効果も有する。
【0037】
さらに、光学基板19と光学基台7との接触面には接触熱抵抗が存在するので、この接触面が高温部と低温部の境界となるが、この実施の形態2では、この接触面の近くに薄肉部22を設けるように構成したので、光学基台7と光学基板19との間の熱膨張の差による変形が薄肉部22によって効果的に吸収される。その結果、良好なミラーアライメントを得ることができる。
【0038】
実施の形態3.
図7は、この発明にかかるレーザ発振器の実施の形態3の構成を示す図であり、発振器筐体1と光学基台7との接続部分を部分的に示す正面断面図を示している。なお、この図7の例では、後部光学基台7を例に挙げているが、前部光学基台9についても、この図7と同様に構成することができる。
【0039】
この実施の形態3では、上述した実施の形態2の図6における光学基板19の構造のみが異なり、その他の構成は同じである。したがって、以下では、実施の形態2と同一の部分についての説明は省略し、異なる部分のみを説明する。光学基板19の発振器筐体1側には、反射鏡6の周囲を囲むように、そして光学基台7の反射鏡挿入孔30とほぼ同じ径を有する溝23bが形成され、発振器筐体1と反対側の面には溝23bよりも径の小さい溝23aが形成される。そして、二つの異なる径の溝23a,23bによって挟まれた部分に、光軸方向に長く光軸方向と垂直な断面方向に厚さの薄い薄肉部22が形成される。このようにして形成された薄肉部22は、長手方向、すなわち光軸方向に剛性が高く、厚み方向、すなわち光軸に垂直な方向には小さいという性質を有する。また、実施の形態2の場合と違って、光学基板19は全体にわたってほぼ一様な厚さを有している。
【0040】
この実施の形態3では、薄肉部22で囲まれる部分よりも外側の領域(溝23b)がレーザ媒体ガス側と連結し、薄肉部22の内側の領域(溝23a)が大気側と連結するように構成したものである。発振器筐体1内部のレーザ媒質のガス圧は大気圧よりも小さく設定されているので、光学基板19の断面の薄肉部22の内側の領域には、レーザ媒体ガス側、すなわち発振器筐体1の方向に圧力が作用する。この圧力によって薄肉部22には、長手方向に伸びる力が作用する。したがって、発振器筐体1の内外の圧力差による薄肉部22の挫屈を防止することができる。
【0041】
また、薄肉部22をさらに薄くすることによって、光学基板19の熱膨張時の反力をさらに小さくすることができ、光学基台7および光学基板19の変形の度合を小さくすることができる。その結果、反射鏡6と、もう一方の図示しない反射鏡8との間の光軸のずれを抑えることができる。
【0042】
また、光学基板19と光学基台7との接触面には接触熱抵抗が存在するため、この接触面が高温部と低温部の境界となるが、この実施の形態3では、この接触面の近くに薄肉部22を設けるように構成したので、光学基台7と光学基板19との間の熱膨張の差による変形を効果的に吸収することができる。その結果、良好なミラーアライメントを得ることができる。
【0043】
なお、薄肉部22と溝23a,23bは、円形状であってもよいし、四角形や六角形の多角形状であってもよい。
【0044】
上述した実施の形態1〜3では、主に熱膨張の場合を例に挙げて説明したが、冷却水配管等による熱収縮の場合も、薄肉部22が逆方向に柔らかく変形することで、反力の発生を抑え、光学基台7および光学基板19の変形を抑えることができる。また、上述した実施の形態1〜3では、光共振器を構成する一対の光学基台7,9を平行に支持する支持棒12〜14が3本の場合を説明したが、3本に限られるものではなく、4本以上でもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、各光学基台のベローズ取り付け位置近傍に、光軸方向に伸びる薄肉部を形成するようにしたので、光学部品が取り付けられた部分とその周囲との熱膨張差を薄肉部が変形して吸収することで、熱膨張差によって生じる反力の発生を抑えることができる。その結果、光学基台の変形を抑えることができ、安定したミラーアライメントが得られるという効果を有する。
【0046】
つぎの発明によれば、光学基台の反射鏡の周囲に薄肉部を設けるように構成したので、薄肉部で囲まれた領域とその外側で生じる熱膨張差を、薄肉部が柔らかく変形して吸収することで反力の発生を抑え、基台の変形を防止し、その結果、安定したミラーアライメントが得られるという効果を有する。
【0047】
つぎの発明によれば、ベローズを光学基台の薄肉部が形成されている位置に接続するように構成したので、発振器筐体の内部ガスの温度上昇によって生じる熱膨張による基台の変形を効果的に低減することができるという効果を有する。
【0048】
つぎの発明によれば、光学基板は、光学基台の反射鏡挿入孔とほぼ同じ径を有し光学部品を支持する本体部と、この本体部よりも厚さが薄いフランジ部を備え、本体部の一方の面に光学基台の孔とほぼ同じ径を有し本体部の外周壁との間に薄肉部を形成する溝を備え、薄肉部が前記光学基台の孔の周縁部に位置するように光学基板を光学基台に取り付けるように構成したので、高温部の光学基板と低温部の光学基台との境目が薄肉部となり、光学基板の熱による変形が薄肉部によって吸収され、安定したミラーアライメントが得られるという効果を有する。
【0049】
つぎの発明によれば、全体にわたってほぼ一様な厚さを有する光学基板の光学部品が取り付けられる一方の面に光学基台の孔とほぼ同じ径を有する第1の溝を形成し、他方の面に第1の溝との間に薄肉部が形成されるように第2の溝を形成するとともに、薄肉部が光学基台の孔の周縁部に位置するように光学基板を光学基台に取り付けるように構成したので、大気圧とレーザガス圧の差による力が薄肉部に引っ張り方向に作用し、薄肉部の挫屈を防止することができるという効果を有する。また、薄肉部をさらに薄くすることができ、反力をさらに小さくできるという効果も有する。
【0050】
つぎの発明によれば、一対の光学基台は、光軸方向に延在する少なくとも3本以上の支持棒によって互いに平行に接続されているので、レーザ発振時に発振器筐体や光学基板が熱変形を受けても、一対の光学基台の精密な位置関係を一層精度良く保つことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1を示すガスレーザ発振器の正面断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示すガスレーザ発振器の左側面図である。
【図3】ガスレーザ発振器の光学基台の熱変形の状態を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1のガスレーザ発振器の他の例を示す正面断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1のガスレーザ発振器の他の例を示す正面断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2を示すガスレーザ発振器の正面断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3を示すガスレーザ発振器の正面断面図である。
【図8】ガスレーザ発振器の従来例を示す正面図である。
【図9】ガスレーザ発振器の従来例を示す平面図である。
【図10】ガスレーザ発振器の従来例を示す内部斜視図である。
【図11】ガスレーザ発振器の従来例を示す正面断面図である。
【図12】ガスレーザ発振器の従来例を示す正面断面図である。
【図13】ガスレーザ発振器の光学基台の熱変形の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 発振器筺体、2a,2b 放電電極、3 熱交換器、4 送風器、5 ダクト、6 全反射鏡、7 後部光学基台、8 部分反射鏡、9 前部光学基台、10,11 ベローズ、12,13,14 支持棒、17 接続部材、18 球面継手式の接続部材、19,20 光学基板、19a 本体部、19b フランジ部、21 固定部材、22 薄肉部、23a,23b 溝。
Claims (6)
- 発振器筐体と、
この発振器筐体の両端に設置され、光共振器を構成する光学部品を支持する一対の光学基台と、
前記光学基台によって支持される前記光学部品がベローズ内に位置するように前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、
を備えるガスレーザ発振器において、
前記各光学基台のベローズ取り付け位置近傍に、光軸方向に伸びる薄肉部を形成することを特徴とするガスレーザ発振器。 - 発振器筐体と、
この発振器筐体の両端に設置され、光共振器を構成する光学部品を支持する一対の光学基台と、
前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、
を備えるガスレーザ発振器において、
前記各光学基台は、前記光学部品が取り付けられる一方の面に該光学部品の取付け部を囲むように形成される第1の溝と、この第1の溝との間に薄肉部が形成されるように他方の面に形成される第2の溝とを備えることを特徴とするガスレーザ発振器。 - 前記ベローズは前記薄肉部が形成される位置に接続されることを特徴とする請求項2に記載のガスレーザ発振器。
- 発振器筐体と、
前記発振器筐体の両端に設置される、孔を有する一対の光学基台と、
光共振器を構成する光学部品を支持するとともに、前記孔を覆うように前記一対の光学基台に取り付けられる一対の光学基板と、
前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、
を備えるガスレーザ発振器において、
前記光学基板は、前記孔とほぼ同じ径を有し光学部品を支持する本体部と、この本体部よりも厚さが薄いフランジ部を備え、前記本体部の一方の面に前記光学基台の孔とほぼ同じ径を有し本体部の外周壁との間に薄肉部を形成する溝を備え、
前記薄肉部が前記光学基台の孔の周縁部に位置するように前記光学基板を前記光学基台に取り付けることを特徴とするガスレーザ発振器。 - 発振器筐体と、
前記発振器筐体の両端に設置される、孔を有する一対の光学基台と、
光共振器を構成する光学部品を支持するとともに、前記孔を覆うように前記一対の光学基台に取り付けられる一対の光学基板と、
前記一対の光学基台と前記発振器筐体との間を接続する一対のベローズと、
を備えるガスレーザ発振器において、
全体にわたってほぼ一様な厚さを有する光学基板の前記光学部品が取り付けられる一方の面に前記光学基台の孔とほぼ同じ径を有する第1の溝を形成し、他方の面に前記第1の溝との間に薄肉部が形成されるように第2の溝を形成するとともに、
前記薄肉部が前記光学基台の孔の周縁部に位置するように前記光学基板を前記光学基台に取り付けることを特徴とするガスレーザ発振器。 - 前記一対の光学基台は、光軸方向に延在する少なくとも3本の支持棒によって互いに平行に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載のガスレーザ発振器。
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