JP3594283B2 - エレベータの停電時救出運転装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータの運転中に停電となった場合に、かご内の乗客を救出するためのエレベータの停電時救出運転装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エレベータには非常用のバッテリ電源を備えており、エレベータの運転中に停電となった場合には、そのバッテリ電源にて最寄りの階床までエレベータを運転し、かご内の乗客を救出するようにしている。
【0003】
図14は、従来のエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。停電になったときには、エレベータ制御装置1はインバータ回路2を起動し、バッテリ電源3からヒューズ4および平滑コンデンサ5を介して、誘導電動機6に電源を供給する。すなわち、救出運転中はバッテリ電源3をインバータ回路2により、交流電源に変換して誘導電動機6に供給しエレベータを駆動する。また、バッテリ電源3はエレベータ制御装置1の制御電源ともなっている。
【0004】
このように構成された従来の停電時救出運転装置では、停電時、エレベータは最寄階まで低速運転を行い、着床後に戸開して乗客を降ろし戸閉して救出運転を終了する。バッテリ電源3としては、その救出運転が確実に行えるだけの電力を充電しておく必要がある。
【0005】
バッテリ電源3の電源容量CA[AH]はエレベータ定格により計算される電動機電流IM[A]とエレベータ制御装置1の消費電流IS[A]により、例えば下記(1)式により選定される。
【0006】
CA=(K/L)*(IM+IS) …(1)
ここで、Kは、放電時間、電池の最低使用温度、許容最低電圧によって決められる容量換算時間である。また、Lは、保守率、使用年度の経過や使用条件の変動によって変化する容量を補償する補正値であり、一般にはLの値は0.8が用いられる。また、CAは、25℃における定格放電率換算容量であり、RE電池は20時間率の容量である。
【0007】
上記(1)式からわかるように、バッテリ電源3の電源容量CAは実際の消費電流、つまり電動機電流IM[A]とエレベータ制御装置1の消費電流IS[A]との和IM+IS[A]に、放電時間や保守率、使用年数、使用条件等による係数KおよびLを乗じて得られる。この後、係数KおよびLを与えることにより実際の消費電力容量に対し、ディレーティング(余裕度)をもったバッテリ電源容量が選定される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のエレベータの停電時救出運転装置では、バッテリ電源3の電源容量を選定するときには、使用温度、使用年数、放電時間等の条件を考慮し、大きなディレーティングを持ってバッテリ電源容量を選定するので、バッテリ電源3が大きくなる。従って、通常の制御装置の外形に収納できる大きさのバッテリ電源3とした場合には、その電源容量はエレベータを最寄階に着床する救出運転しかできない制約があった。
【0009】
また、バッテリの寿命により交換をする場合も、実際の使用条件より厳しい条件を仮定し、ディレーティングを持って早期にバッテリ交換を行うという制約があった。さらに、インバータ回路2の異常や故障、制御異常等によりバッテリ電源3より過電流が生じた場合には、ヒューズ4により遮断して、バッテリ電源3を保護することしかできないため、この場合には保守員がヒューズ4を交換するまではエレベータを起動できないという問題点があった。
【0010】
本発明の目的は、バッテリ電源の充電量を監視し円滑に停電時救出運転が行えるエレベータの停電時救出運転装置を得ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係わるエレベータの停電時救出運転装置は、通常電源の停電時にバッテリ電源によってエレベータ乗客の救出運転を行うエレベータの停電時救出運転装置において、前記バッテリ電源の出力電圧を検出する電圧検出器と、前記バッテリ電源の温度を検出する温度検出器と、前記電圧検出器の出力信号に基づいて前記バッテリ電源の放電電気量を求め前記バッテリ電源の温度変化に対する補正を行いバッテリの放電状態をバッテリ状況信号として出力するバッテリ監視装置と、前記バッテリ監視装置からのバッテリ状況信号に応じて停電時救出運転を行うエレベータ制御装置と、バッテリ交換時期を保守員に知らせるための表示装置とを備え、前記エレベータ制御装置は、前記バッテリ電源の放電電気量の大きさと放電回数による寿命特性、使用年数による寿命特性、温度による寿命特性に基づき前記バッテリ電源の寿命を推定し前記表示装置にバッテリ交換時期を出力することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明に係わるエレベータの停電時救出運転装置は、通常電源の停電時にバッテリ電源によってエレベータの乗客救出運転を行うエレベータの停電時救出運転装置において、前記バッテリ電源の出力電圧を検出する電圧検出器と、前記バッテリ電源の出力電流を検出する電流検出器と、前記バッテリ電源の温度を検出する温度検出器と、前記電圧検出器および前記電流検出器の出力信号に基づいて前記バッテリ電源から出力された積算電力を計算し前記バッテリ電源の温度変化に対する補正を行いバッテリの消費電力状況をバッテリ状況信号として出力するバッテリ監視装置と、前記バッテリ監視装置からのバッテリ状況信号に応じて停電時救出運転を行うエレベータ制御装置と、バッテリ交換時期を保守員に知らせるための表示装置とを備え、前記エレベータ制御装置は、前記バッテリ電源の放電電気量の大きさと放電回数による寿命特性、使用年数による寿命特性、温度による寿命特性に基づき前記バッテリ電源の寿命を推定し前記表示装置にバッテリ交換時期を出力することを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わるエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。この第1の実施の形態は、図14に示した従来例に対し、ヒューズ4の代わりに、バッテリ電源3の出力電圧を検出する電圧検出器7およびバッテリ電源3の放電電気量を監視するためのバッテリ監視装置8を設けたものである。
【0022】
図1において、電圧検出器7は平滑コンデンサ5の両端の電圧を検出することによって、バッテリ電源3の出力電圧を検出する。電圧検出器7で検出されたバッテリ電源3の出力電圧Vは、バッテリ監視装置8に入力される。バッテリ監視装置8は、電圧検出器7の出力信号に基づいてバッテリ電源3の放電電気量を推定し、その結果をバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。このバッテリ状況信号Kは、バッテリ電源3の電力供給能力を示す。
【0023】
いま、停電になったとすると、エレベータ制御装置1はインバータ回路2を起動し救出運転を開始する。その際に、エレベータ制御装置1はバッテリ監視装置8からのバッテリ状況信号Kに基づいて、バッテリ電源3の電力供給能力を把握し、その電力供給能力に応じた停電時救出運転を行う。すなわち、直流のバッテリ電源3から平滑コンデンサ5を介してインバータ回路2で交流電源に変換し、誘導電動機6に交流電源を供給し、エレベータを駆動し救出運転を行う。
【0024】
図2は、バッテリ監視装置8でバッテリ電源3の放電電気量を推定する際の放電特性を示す特性図である。図2中の各特性曲線の「C」は、バッテリ電源3の定格容量[AH]を示すものであり、例えば形式NP24−12のバッテリ電源3は24[AH]−12[V]定格であり、その場合の0.6Cとは24×0.6=14.4[A]で放電した時の出力電圧の変化を放電時間に従ってグラフ化した特性曲線である。
【0025】
図2に示されるように、定格電流の0.1〜6倍の負荷電流を出力した時のバッテリ電源3の出力電圧の変化は非常に大きい。このため、このバッテリ電源3の出力電圧を検出することにより、バッテリ電源3の放電状態を知ることができる。電圧設定値V1〜Vnは、バッテリ監視装置8でバッテリ電源3の特性がどの特性曲線であるかを特定するための使用される。
【0026】
図3に本発明の第1の実施の形態におけるバッテリ監視装置8の構成図を示す。電圧設定値発生部9は各々の電圧設定値V1〜Vnを作成し比較器10に出力する。比較器10は電圧検出信号Vと電圧設定値信号V1〜Vnとを放電時間に応じて比較し、その大小関係によりバッテリの放電状態を検出する。そして、その結果をバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。
【0027】
つまり、比較器10はタイマー機能を内蔵しており、過去に入力した電圧値Vも記憶している。そして、時系列的な電圧値Vと電圧設定値V1〜Vnとを比較し、図2のいずれの特性曲線のいずれの時期を示しているかを特定する。これにより、バッテリ電源3の現在の電力供給能力を判定でき、それをバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。
【0028】
エレベータ制御装置1は、このバッテリ状況信号Kに応じて、バッテリ電源3の放電電気量が少ない時は最寄階を越えた階床まで運転する。また、バッテリ出力電圧が大きく低下し、バッテリ電源3の放電量が限界値に到達した時は救出運転を停止して、バッテリ電源3の放電を中止する。そして、通常電源が復帰してから、バッテリ電源3の充電を開始し、充電完了後に救出運転を行うことができるようにする。
【0029】
以上述べたように、第1の実施の形態によれば、バッテリ電源3の出力電圧に基づいてバッテリ電源3の放電電気量を推定し、バッテリ電源3の放電電気量に応じた救出運転を行うので、適正な救出運転が可能となる。例えば、最寄り階以外の階へも救出運転を行えるようになる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係わるエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、バッテリ電源3の出力電流を検出する電流検出器11を追加して設け、バッテリ監視装置8は、バッテリ電源3の出力電流および出力電圧に基づいてバッテリ電源3の消費した積算電力を計算しバッテリ状況信号を出力するようにしたものである。
【0031】
図4において、電流検出器11はバッテリ電源3からインバータ回路3へ流れる出力電流Iを検出し、その検出した出力電流Iをバッテリ監視装置8に入力する。また、電圧検出器7は平滑コンデンサ5の両端の電圧を検出することによって、バッテリ電源3の出力電圧Vを検出しバッテリ監視装置8に入力する。バッテリ監視装置8は、電流検出器11および電圧検出器7の出力信号に基づいてバッテリ電源3から出力された積算電力を算出し、その結果をバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。
【0032】
いま、停電になったとすると、エレベータ制御装置1はインバータ回路2を起動し救出運転を開始することになるが、その際に、エレベータ制御装置1はバッテリ監視装置8からのバッテリ状況信号Kに基づいて、バッテリ電源3の電力供給能力を把握し、その電力供給能力に応じた停電時救出運転を行う。
【0033】
図5は、本発明の第2の実施の形態におけるバッテリ監視装置8の構成図である。この第2の実施の形態におけるバッテリ監視装置8は、バッテリ電源3が消費する積算電力Wを、積算電力設定値発生部12に予め設定された複数の設定値W1〜Wnと比較することにより、バッテリ電源3の消費電力状況を検出し、これをバッテリ状況信号Kとして、エレベータ制御装置1に出力する。
【0034】
すなわち、バッテリ電源3の出力電流Iおよび出力電圧Vは、バッテリ監視装置8の乗算器13に入力され、この乗算器13によりバッテリ電源3の消費電力が計算される。この消費電力は積算器14にて積算され、積算電力Wが求められる。積算器14で求められた消費電力は比較器10に入力され、積算電力設定値発生部12からの積算電力設定値W1〜Wnと比較される。これにより、バッテリ電源3の消費電力状況を検出して、これをバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。
【0035】
エレベータ制御装置1は、バッテリ状況信号Kに応じてバッテリ消費電力が少ない時は最寄階を越えた階床まで運転する。また、消費電力が大きくなり限界値に到達した時は救出運転を停止して、バッテリ電源3の放電を中止する。そして、通常電源が復帰してバッテリ電源3の充電が完了してから救出運転を行うことができるようにする。
【0036】
以上述べたように、この第2の実施の形態によれば、バッテリ電源3の出力電圧および出力電流に基づいて、バッテリ電源3の消費積算電力を求め、その消費積算電力に応じた救出運転を行うので、適正な救出運転が可能となる。例えば、最寄り階以外の階へも救出運転を行えるようになる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態に係わるエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、バッテリ電源3の温度を救出する温度検出器15を追加して設け、バッテリ監視装置8は、バッテリ電源3の温度変化に対する補正を行ったバッテリ状況信号Kを出力するようにしたものである。
【0038】
図6において、温度検出器15はバッテリ電源3の温度を検出するものであり、この温度検出器15で検出された温度Tはバッテリ監視装置8に入力される。一方、電圧検出器7は平滑コンデンサ5の両端の電圧を検出することによってバッテリ電源3の出力電圧を検出し、その検出した出力電圧Vはバッテリ監視装置8に入力される。バッテリ監視装置8は、電圧検出器7の出力信号に基づいてバッテリ電源3の放電電気量を推定する。その際にバッテリ電源3の温度Tにより補正を加える。そして、温度補正を加えた放電電気量をバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。
【0039】
図7は、バッテリ監視装置8でバッテリ電源3の放電電気量の温度補正を行う場合の温度特性を示す特性図である。図7中の各特性曲線の「C」は、バッテリ電源3の定格容量を示すものである。例えば、形式NP24−12のバッテリ電源は、0.05C=0.05×24=1.2[A]である。図7に示すように、この1.2[A]で放電を行った場合、バッテリ温度が25℃では100%の放電時間が可能であるが、−10℃では75%の放電時間しか確保できない。
【0040】
このため、より正確にバッテリ電源3の放電電気量を推定するには、バッテリ電源3の温度Tにより放電状態の判別する基準を変更する必要がある。そこで、バッテリ電源3の温度Tにより変化する放電電気量に対して温度補正を加える。
【0041】
図8は、本発明の第3の実施の形態におけるバッテリ監視装置8の構成図である。電圧設定値発生部9は、温度検出器15からのバッテリ電源3の温度Tを加味した各々の電圧設定値V1(T)〜Vn(T)を作成し比較器10に出力する。比較器10は電圧検出器7からの電圧検出信号Vと温度補正された電圧設定値信号V1(T)〜Vn(T)とを放電時間に応じて比較し、その大小関係によりバッテリの放電状態を検出する。そして、その結果をバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。
【0042】
このように、第3の実施の形態では、バッテリ電源3の温度Tにより最適な電圧設定値V1(T)〜Vn(T)を出力する。つまり、バッテリ電源3の温度Tにより電圧設定値V1(T)〜Vn(T)を変更する。例えば、図7に示すように、バッテリ電源3の温度Tが−10℃の時は放電時間は常温の25℃の時の75%に減ってしまうため、常温で設定した電圧設定値V1〜Vnでは設定値が高すぎてしまう。そこで、温度Tにより電圧設定値V1(T)〜Vn(T)とし、バッテリ電源3の温度Tが−10℃の時は電圧設定値V1(−10)〜Vn(−10)とし設定値を下げる。これにより、−10℃の時でも正しく放電電気量を判別し、限界値までの余裕をもった運転が可能となる。
【0043】
以上の説明では、第1の実施の形態における電圧設定値V1〜Vnに対して温度補正を行うようにしたが、第2の実施の形態の積算電力設定値W1〜Wnに対して温度補正を行い、積算電力設定値W1(T)〜Wn(T)を用いるようにしても良いことは言うまでもない。
【0044】
以上のように、この第3の実施の形態によれば、バッテリ電源3の温度Tに応じて放電電気量の判別をするので、温度変化に対しても正しい放電電気量を検出でき、最適な救出運転をすることができる。すなわち、放電電気量が限界に達しても、まだ放電能力があると判別するようなことがなくなるので、適正に救出運転を行うことができる。
【0045】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図9は、本発明の第4の実施の形態に係わるエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。この第4の実施の形態は、図6に示した第3の実施の形態に対し、バッテリ交換時期を保守員に知らせるための表示装置16を設け、エレベータ制御装置1は、バッテリ監視装置8からのバッテリ状況信号に基づいてバッテリ電源3の交換時期を判別し、その結果を表示装置16に出力するようにしたものである。
【0046】
図9において、温度検出器15はバッテリ電源3の温度を検出するものであり、この温度検出器15で検出された温度Tはバッテリ監視装置8に入力される。一方、電圧検出器7は平滑コンデンサ5の両端の電圧を検出することによってバッテリ電源3の出力電圧を検出し、その検出した出力電圧Vはバッテリ監視装置8に入力される。バッテリ監視装置8は、電圧検出器7の出力信号に基づいてバッテリ電源3の放電電気量を推定する。その際にバッテリ電源3の温度Tにより補正を加える。そして、温度補正を加えた放電電気量をバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。
【0047】
エレベータ制御装置1には、温度検出器15からのバッテリ電源3の温度Tも入力されており、エレベータ制御装置1はバッテリ状況信号Kおよびバッテリ電源3の温度Tに基づいて、バッテリ電源3の寿命を判定し、その判定結果を表示装置16に出力する。一方、エレベータ制御装置1は、通常電源が停止したときは、インバータ回路2を起動し救出運転を開始する。その際には、バッテリ監視装置8からのバッテリ状況信号Kに基づいて、バッテリ電源3の電力供給能力を把握し、その電力供給能力に応じた停電時救出運転を行う。
【0048】
図10は、本発明の第4の実施の形態におけるエレベータ制御装置1でバッテリ電源3の寿命を判定する際に使用するバッテリ電源3の寿命特性図である。バッテリ電源3の寿命は、放電電気量の大きさと放電回数による寿命と、バッテリ電源3の使用年数による寿命との2種類がある。図10(a)は、放電電気量の大きさと放電回数による寿命の特性図であり、図10(b)はバッテリ電源3の使用年数による寿命の特性図である。
【0049】
エレベータ制御装置1は、予め図10(a)の寿命特性および図10(b)の寿命特性を記憶しておく。そして、救出運転時のバッテリ状況信号Kより、バッテリ電源3の放電電気量を判別し記憶し、また、救出運転回数、バッテリ使用年数も記憶する。そして、これらによりバッテリ電源3の寿命を推定する。
【0050】
また、図11は、エレベータ制御装置1でバッテリ電源の寿命を判定する際に使用するバッテリ寿命の温度特性図である。エレベータ制御装置1には、この図11の温度特性も予め記憶させておく。そして、温度検出器15からのバッテリ電源3の温度Tを入力し、バッテリ電源3の寿命について温度補正する。
【0051】
すなわち、図11に示すように、バッテリ電源3の寿命は温度にも依存するので、バッテリ電源3の温度検出信号Tをエレベータ制御装置1に入力することにより、温度による寿命の変化を補正する。これにより、より正確な寿命を推定することができる。
【0052】
この第4の実施の形態によれば、バッテリ電源3の寿命をエレベータ制御装置1により推定することにより、バッテリ電源3の交換時期を表示装置16に表示して保守員に知らせることができる。
【0053】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。図12は、本発明の第5の実施の形態に係わるエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。この第5の実施の形態は、図4に示した第2の実施の形態に対し、救出運転中にバッテリ電源3が異常となったことを検出する異常検出装置17を設け、異常検出装置17が異常を検出したときは、エレベータ制御装置1は保護運転を行うようにしたものである。その他の構成は図6に示した第1の実施の形態と同一であるので、同一要素には同一符号を付しその説明は省略する。
【0054】
図12において、異常検出装置17は電圧検出器7からの電圧検出信号Vおよび電流検出器11からの電流検出信号Iを入力し、救出運転中のバッテリ電源3が異常となったときは、異常信号Lをエレベータ制御装置1に出力する。エレベータ制御装置1が救出運転中であるか否かは、エレベータ制御装置1からの救出運転状況信号Mにより判断する。すなわち、異常検出装置17はエレベータ制御装置1からの救出運転状況信号Mに基づいて、エレベータ制御装置1が救出運転中であるか否かを判定し、救出運転中であるときは、電圧検出器7からの電圧検出信号Vおよび電流検出器11からの電流検出信号Iを監視する。
【0055】
ここで、異常検出装置17の構成を図13に示す。電圧検出レベル設定部18は、バッテリ電源3の出力電圧Vの異常を検出するための電圧設定値vを設定するものであり、エレベータ制御装置1の救出運転の状況に応じて、それぞれ異なる複数個の電圧設定値v1〜vmが設定される。同様に、電流検出レベル設定部19は、バッテリ電源3の出力電流Iの異常を検出するための電流設定値iを設定するものであり、エレベータ制御装置1の救出運転の状況に応じて、それぞれ異なる複数個の電流設定値i1〜imが設定される。
【0056】
電圧異常検出部20は、救出運転状況信号Mの状態に応じて電圧設定値v1〜vmのうちのいずれかの電圧設定値viを特定し、電圧検出器7で検出されたバッテリ電源3の出力電圧Vと電圧設定値viとを比較する。そして、出力電圧Vがその電圧設定値viを越えているときは異常と判定し、電圧異常信号Lvを出力する。同様に、電流異常検出部21は、救出運転状況信号Mの状態に応じて電流設定値i1〜imのうちのいずれかの電圧設定値ijを特定し、電流検出器11で検出されたバッテリ電源3の出力電流Iと電流設定値ijとを比較する。そして、出力電流Iがその電圧設定値ijを越えているときは異常と判定し、電流異常信号Liを出力する。
【0057】
電圧異常信号Lvおよび電流異常信号Liは論理和回路22に入力され、電圧異常信号Lvおよび電流異常信号Liのいずれかが成立したときは、論理和回路22は異常信号Lをエレベータ制御装置1に出力する。エレベータ制御装置1は、この異常信号Lを入力したときは、エレベータの保護運転を行う。
【0058】
以上の説明では、第2の実施の形態に対し異常検出装置17を設けたものを示したが、第1の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態に対し、異常検出装置17を設けるようにしても良い。この場合は、異常であるか否かの判定は、電圧検出器7からのバッテリ電源3の出力電圧Vに基づいて判定することになる。
【0059】
以上のように、第5の実施の形態によれば、バッテリ電源3の放電電気量による様々な運転を行う場合においても、救出運転状況信号Mにより、その運転状態に対応した設定値と検出信号とを比較するので正しく異常を検出することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明では、バッテリ電源の出力電圧、出力電流、温度を検出し、バッテリ電源の電力供給能力に応じた救出運転を行うので、最寄り階以外の階床へ救出運転することもできる。また、バッテリ電源の寿命を推定して交換時期を表示し保守員に知らせることができる。さらに救出運転時の制御異常を検出しその原因に応じた保護運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係わるエレベータの救出運転装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態におけるバッテリ監視装置でバッテリ電源の放電電気量を推定する際に使用するバッテリ電源の放電特性図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態におけるバッテリ監視装置の構成図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係わるエレベータの救出運転装置の構成図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態におけるバッテリ監視装置の構成図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係わるエレベータの救出運転装置の構成図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施の形態におけるバッテリ監視装置でバッテリ電源の放電電気量の温度補正を行う場合の温度特性を示す特性図である。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態におけるバッテリ監視装置の構成図である。
【図9】図9は、本発明の第4の実施の形態に係わるエレベータの救出運転装置の構成図である。
【図10】図10は、本発明の第4の実施の形態におけるエレベータ制御装置でバッテリ電源の寿命を判定する際に使用するバッテリ電源の寿命特性図である。
【図11】図11は、本発明の第4の実施の形態におけるエレベータ制御装置でバッテリ電源の寿命を判定する際に使用するバッテリ寿命の温度特性図である。
【図12】図12は、本発明の第5の実施の形態に係わるエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。
【図13】図13は、本発明の第5の実施の形態における異常検出装置の構成図である。
【図14】図14は、従来のエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。
【符号の説明】
1 エレベータ制御装置
2 インバータ回路
3 バッテリ電源
4 ヒューズ
5 平滑コンデンサ
6 誘導電動機
7 電圧検出器
8 バッテリ監視装置
9 電圧設定値発生部
10 比較器
11 電流検出器
12 積算電力設定値発生部
13 乗算器
14 積算器
15 温度検出器
16 表示装置
17 異常検出装置
18 電圧検出レベル設定部
19 電流異常検出レベル設定部
20 電圧異常検出部
21 電流異常検出部
22 論理和回路
Claims (2)
- 通常電源の停電時にバッテリ電源によってエレベータ乗客の救出運転を行うエレベータの停電時救出運転装置において、前記バッテリ電源の出力電圧を検出する電圧検出器と、前記バッテリ電源の温度を検出する温度検出器と、前記電圧検出器の出力信号に基づいて前記バッテリ電源の放電電気量を求め前記バッテリ電源の温度変化に対する補正を行いバッテリの放電状態をバッテリ状況信号として出力するバッテリ監視装置と、前記バッテリ監視装置からのバッテリ状況信号に応じて停電時救出運転を行うエレベータ制御装置と、バッテリ交換時期を保守員に知らせるための表示装置とを備え、前記エレベータ制御装置は、前記バッテリ電源の放電電気量の大きさと放電回数による寿命特性、使用年数による寿命特性、温度による寿命特性に基づき前記バッテリ電源の寿命を推定し前記表示装置にバッテリ交換時期を出力することを特徴とするエレベータの停電時救出運転装置。
- 通常電源の停電時にバッテリ電源によってエレベータの乗客救出運転を行うエレベータの停電時救出運転装置において、前記バッテリ電源の出力電圧を検出する電圧検出器と、前記バッテリ電源の出力電流を検出する電流検出器と、前記バッテリ電源の温度を検出する温度検出器と、前記電圧検出器および前記電流検出器の出力信号に基づいて前記バッテリ電源から出力された積算電力を計算し前記バッテリ電源の温度変化に対する補正を行いバッテリの消費電力状況をバッテリ状況信号として出力するバッテリ監視装置と、前記バッテリ監視装置からのバッテリ状況信号に応じて停電時救出運転を行うエレベータ制御装置と、バッテリ交換時期を保守員に知らせるための表示装置とを備え、前記エレベータ制御装置は、前記バッテリ電源の放電電気量の大きさと放電回数による寿命特性、使用年数による寿命特性、温度による寿命特性に基づき前記バッテリ電源の寿命を推定し前記表示装置にバッテリ交換時期を出力することを特徴とするエレベータの停電時救出運転装置。
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