JP3593868B2 - スライム剥離方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スライム剥離方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、冷却水系などの工業用の水系に付着したスライムを、従来よりスライム剥離剤として慣用されてきた過酸化水素より少ない添加量の薬剤を用いて、効率的に剥離して除去することができるスライム剥離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷却水系などの水系には、スライムと呼ばれる微生物に由来する付着物が熱交換器、冷却塔、配管などに付着・蓄積する。スライムとは、バクテリアなど微生物の菌体を主とし、これに腐食生成物、土砂など、補給水や空気から混入する濁質が、微生物が菌体外に分泌した多糖類の粘性によって抱き込まれたものである。スライムが熱交換器に付着すると、付着面における伝熱阻害やスライム下の金属の腐食を促進するなど、種々の障害を引き起こす。このため、これらの水系においては、スライムの付着を防止するために、通常スライムコントロール剤と呼ばれる薬品で処理されている。
しかし、補給水質の変動、栄養物質の混入、処理の不調などの原因によって、スライムが水系に限度以上に付着する場合がある。このように多量のスライムが付着した場合には、応急措置として、特定の薬品を水系に添加して付着したスライムを剥離して水中に懸濁させ、スライムをブロー水(排出水)と共に系外に排出することにより除去する方法が行われている。この目的で使用されるスライム剥離剤としては、従来より過酸化水素がよく知られている。
しかし、過酸化水素はスライム剥離効果は優れているが、投入量が多く、効果を発現させるためには保有水に対し約0.5〜1重量%もの濃度が必要である。しかも、安全面の問題があった。これらの問題から、薬剤の添加量が少なく、装置が運転中であっても洗浄が可能で、取り扱いが容易なスライム剥離方法が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、冷却水系などの工業用の水系に付着したスライムを、従来よりスライム剥離剤として慣用されてきた過酸化水素より少ない添加量の薬剤を用いて、効率的に剥離して除去することができるスライム剥離方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、セミカルバジド系化合物若しくはアミノグアニジン系化合物又はこれらの塩を水系に添加することにより、少量の薬剤の添加で効果的にスライムを剥離し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を水系に添加することを特徴とするスライム剥離方法、
【化3】
Figure 0003593868
(ただし、式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は炭素数4以下のアルキル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。)
【化4】
Figure 0003593868
(ただし、式中、R6、R7、R8、R9及びR10は、水素又は炭素数4以下のアルキル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。)、
(2)一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を間欠的に添加する第(1)項記載のスライム剥離方法、
(3)さらに、塩酸、炭酸、硫酸又は硝酸を添加する第(1)項記載のスライム剥離方法、及び、
(4)一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を含有することを特徴とするスライム剥離剤、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
)一般式[1]で表される化合物又はその塩と一般式[2]で表される化合物又はその塩を、1/10〜10/1(重量比)の割合で添加する第(1)項記載のスライム剥離方法、
)一般式[1]で表される化合物の塩が、セミカルバジド塩酸塩である第(1)項記載のスライム剥離方法、
)一般式[2]で表される化合物の塩が、アミノグアニジン重炭酸塩である第(1)項記載のスライム剥離方法、及び、
)一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を、濃度が10〜3,000mg/リットルとなるよう添加する第(1)項記載のスライム剥離方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のスライム剥離方法は、スライムの発生した水系に、剥離剤として、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を添加するものである。
【化5】
Figure 0003593868
ただし、一般式[1]において、R、R、R、R及びRは、水素又は炭素数4以下のアルキル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。また、一般式[2]において、R、R、R、R及びR10は、水素又は炭素数4以下のアルキル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。炭素数4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を挙げることができる。
【0006】
一般式[1]で表される化合物としては、例えば、セミカルバジドなどを挙げることができる。また、一般式[1]で表される化合物の塩としては、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、硝酸塩、酸性硫酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、ギ酸塩、酸性シュウ酸塩、酸性マレイン酸塩、マレイン酸塩などを挙げることができる。これらの中で、セミカルバジド塩酸塩を特に好適に使用することができる。
一般式[2]で表される化合物としては、例えば、アミノグアニジンなどを挙げることができる。また、一般式[2]で表される化合物の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、重炭酸塩、硝酸塩などを挙げることができる。これらの中で、アミノグアニジン重炭酸塩を特に好適に使用することができる。
本発明方法において、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明方法によれば、従来よりスライムの剥離に慣用されてきた過酸化水素に比べて、少ない薬剤の添加量でスライムを剥離することができる。さらに、一般式[1]で表される化合物又はその塩と一般式[2]で表される化合物又はその塩を組み合わせて用いることにより、それぞれを単独で用いる場合に比べて、より少ない添加量で優れたスライム剥離効果を発現することができる。一般式[1]で表される化合物又はその塩と一般式[2]で表される化合物又はその塩の添加量の比には特に制限はないが、1/10〜10/1(重量比)で添加することにより、少ない薬剤添加量で特に優れたスライム剥離効果を発揮することができる。
【0007】
本発明方法において、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩の添加量には特に制限はなく、水系に発生したスライムの性質及び量に応じて適宜選定することができるが、通常は水中の濃度が10〜3,000mg/リットルになるように添加することが好ましく、100〜1,000mg/リットルになるように添加することがより好ましい。一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩の濃度が10mg/リットル未満であると、スライム剥離効果が不足して、スライムが付着表面に残留するおそれがある。一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩の濃度は、通常は3,000mg/リットル以下で十分であり、3,000mg/リットル以下の濃度の添加量で、スライムは容易に短時間で剥離する。
本発明方法において、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩の添加方法には特に制限はなく、間欠的又は連続的に添加することができる。これらの添加方法の中で、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を所定の濃度になるよう一度にまとめて水系に添加してスライムを剥離し、さらにスライムの付着状態に応じて剥離が必要なときに、あるいは、水中における濃度の減少に応じて必要なときに、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を所定の濃度になるようふたたび一度にまとめて添加する間欠的な添加方法が好ましい。一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を一度にまとめて間欠的に添加することにより、連続的に添加する場合に比べて、効率的にスライムを剥離することができる。
【0008】
本発明方法において、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩の添加の形態には特に制限はなく、例えば、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を粉体のまま、あるいは水溶液として添加することができる。これらの添加の形態の中で、水溶液は、計量などの取り扱いが容易なために特に好適に使用することができる。一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩の添加場所には特に制限はなく、例えば、水系の循環水に直接添加することができ、あるいは、補給水ラインに注入して添加することもできる。
本発明方法においては、高分子電解質などの水中の懸濁固形物を分散させる薬剤を併用して、スライム剥離効果を高めることができる。また、スケール防止剤を併用することもできる。併用するスケール防止剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するモノマーの低分子量ポリマー、これらのモノマーとビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマーとの低分子量コポリマー、ニトリロトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸などのホスホン酸、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのポリリン酸塩などを挙げることができる。
【0009】
本発明方法においては、さらに必要に応じて、塩酸、炭酸、硫酸、硝酸などの酸を添加することができる。酸を添加することにより、スライムの剥離速度を向上することができる。
本発明方法において、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を添加することにより剥離したスライムは、ブロー水と共に系外に排出することが好ましい。このとき排出を速めるために、ブロー率を通常のブロー率より上げて循環水系を運転することができる。スライム剥離の効果は、循環水の濁度の上昇として判定することができるが、より正確には熱交換器の総括伝熱係数の回復により判定することが好ましい。本発明方法によれば、従来スライム剥離剤として慣用されていた過酸化水素よりも薬剤の添加量が少なく、装置の運転を停止することなく、水系のスライム剥離及び洗浄が可能となる。
本発明方法において、一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を添加することにより、迅速にスライムを剥離することができる作用機構については必ずしも明らかではないが、スライム構成成分である多糖質からなる微生物粘質物の粘性を、セミカルバジド塩酸塩やアミノグアニジン重炭酸塩が低下させ、これによって微生物間の結合が弱められ、水力学的剪断力に抗しきれなくなって、微生物の集合体であるスライムが剥離され、スライムの一部が水中に分散されるものと考えられる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
図1に示す試験装置を用いて、試験を実施した。外径19mm、長さ900mmのミルスケール付き炭素鋼管1の外表面をトルエンで脱脂洗浄したのち、試験水の入口2及び出口3を有する内径25mm、長さ700mmのアクリル樹脂製パイプ4にシリコーンゴム栓5を用いて取り付けた。ダイライト・タンク6から試験水を循環ポンプ7により送り出し、流量計8を経由して、内管が炭素鋼製、外管がアクリル樹脂製の2重管内を流通させたのちタンクに還流する経路を組み立てた。先ず、クリロイヤルP−320[栗田工業(株)、防食剤]400mg/リットルとクリロイヤルP−652[栗田工業(株)、防食剤]200mg/リットルを添加した厚木市水を、水温30℃、流速0.5m/secで24時間循環することにより、炭素鋼管の防食基礎処理を行った。
次に、厚木市水にクリロイヤルS−351[栗田工業(株)、防食・スケール防止剤]100mg/リットルと、スライム源として工業用水ろ過器の懸濁固形物を含んだ逆洗水を固形物濃度が50mg/リットル(濁度として125度)になるよう添加した試験水50リットルを調製し、タンクに入れた。同時に、寸法2cm×5cmのNBRゴムシート製のテストピース10枚を、タンク内の試験水に浸漬した。
試験水は、室温(24〜27℃)で、2重管内の流速が0.2m/secになるよう循環した。試験水の循環を継続すると、懸濁固形物が炭素鋼管表面などにスライムとして付着するにつれ、試験水の濁度が低下した。試験開始4日後、7日後、10日後の計3回、工業用水ろ過器の懸濁固形物を含んだ逆洗水を、固形物濃度が50mg/リットルになるよう試験水に追加して添加した。試験水の濁度は、逆洗水添加の都度急増したが、循環継続によって懸濁固形物が炭素鋼管表面など系内にスライムとして付着するにつれて低下した。試験水の循環を14日間継続し、炭素鋼管の表面の約80%がスライムで覆われていることを目視により認めた。NBRゴムシート製のテストピース5枚を引き上げて、付着したスライムを掻き落とし、乾燥後のスライムの重量を測定したところ、スライムの付着量(算術平均値)は71mg/dmであった。
次いで、炭素鋼管表面とNBRゴムシート製のテストピースに付着したスライムを剥離する試験を行った。試験水にセミカルバジド塩酸塩を濃度が500mg/リットルになるよう添加して循環を継続し、試験水の濁度と炭素鋼管表面のスライムの外観から、スライム除去効果を観察した。セミカルバジド塩酸塩添加前の試験水の濁度は9度であったが、1時間後には25度、3時間後には31度、6時間後には34度、24時間後には33度となり、スライムが剥離し、その一部が微細粒子となって試験水中に分散することにより試験水の濁度が上昇した。しかし、剥離したスライムの大部分はフロック状になり、タンク底に沈積したため、試験水の濁度は、スライムを付着させるために添加した値(125度×4回)までは上昇しなかった。
また、炭素鋼管表面のスライム剥離率は、セミカルバジド塩酸塩添加1時間後には約30%、3時間後には約70%、6時間後には約80%、24時間後には約90%となり、現実にスライムが剥離していく状態が観察された。
24時間後にNBRゴムシート製のテストピースの残り5枚を引き上げて、付着したスライムを掻き落とし、乾燥後のスライムの重量を測定したところ、スライムの付着量(算術平均値)は41mg/dmであり、スライムの剥離率は42%であった。
比較例1
実施例1と並行して、同時に比較試験を行った。実施例1と同じ条件で試験水の循環を14日間継続し、炭素鋼管の表面がスライムで覆われた状態とした。
実施例1における測定及び観察と同時刻に、試験水の濁度の測定と炭素鋼管表面のスライムの観察を行った。測定開始時の試験水の濁度は10度であったが、1時間後には11度、3時間後には11度、6時間後には9度、24時間後には10度であり、ほとんど変化しなかった。また、炭素鋼管表面のスライムの状態には大きな変化はなく、スライム剥離率はすべて0%であった。
実施例1及び比較例1の試験水の濁度と炭素鋼管表面のスライム剥離率の結果を、第1表に示す。
【0011】
【表1】
Figure 0003593868
【0012】
第1表の結果から、セミカルバジド塩酸塩500mg/リットルを添加した実施例1においては、スライムの剥離が進行し、24時間後にほぼその90%が除去されたことが分かる。これに対して、薬剤をなんら添加しなかった比較例1においては、当然のことながら、スライムの付着状態には変化は生じなかった。
実施例2
セミカルバジド塩酸塩500mg/リットルの代わりに、アミノグアニジン重炭酸塩500mg/リットルを添加した以外は、実施例1と同様にしてスライム剥離試験を行った。
比較例2
比較例1と同様に、実施例2と並行して同時に比較試験を行った。
実施例2及び比較例2の試験水の濁度と炭素鋼管表面のスライム剥離率の結果を、第2表に示す。
【0013】
【表2】
Figure 0003593868
【0014】
第2表の結果から、アミノグアニジン重炭酸塩500mg/リットルを添加した実施例2においては、セミカルバジド塩酸塩500mg/リットルを添加した実施例1よりもややスライムの剥離の進行が遅いが、24時間後にほぼその50%が剥離して除去されたことが分かる。これに対して、薬剤をなんら添加しなかった比較例2においては、試験水の濁度が徐々に低下していることから、なおスライムの付着が進行しているものと推定される。
実施例3
セミカルバジド塩酸塩500mg/リットルの代わりに、セミカルバジド塩酸塩150mg/リットルとアミノグアニジン重炭酸塩50mg/リットルを添加した以外は、実施例1と同様にしてスライム剥離試験を行った。
比較例3
比較例1と同様に、実施例3と並行して同時に比較試験を行った。
実施例3及び比較例3の試験水の濁度と炭素鋼管表面のスライム剥離率の結果を、第3表に示す。
【0015】
【表3】
Figure 0003593868
【0016】
第3表の結果から、セミカルバジド塩酸塩150mg/リットルとアミノグアニジン重炭酸塩50mg/リットルを添加した実施例3においては、セミカルバジド塩酸塩500mg/リットルを添加した実施例1とほぼ同様にスライムの剥離が進行し、24時間後にほぼその90%が剥離して除去されている。すなわち、実施例3の薬剤の添加量は実施例1の薬剤の添加量の40%であるにもかかわらず、同程度のスライム剥離効果が得られていることから、セミカルバジド塩酸塩とアミノグアニジン重炭酸塩を併用することにより、相乗的なスライム剥離促進効果が発揮されることが分かる。これに対して、薬剤をなんら添加しなかった比較例3においては、試験水の濁度が徐々に低下する傾向にあることから、なおスライムの付着が進行しているものと推定される。
比較例4
セミカルバジド塩酸塩500mg/リットルの代わりに、過酸化水素0.5重量%を添加した以外は、実施例1と同様にしてスライム剥離試験を行った。
比較例5
比較例1と同様に、比較例4と並行して同時に比較試験を行った。
比較例4及び比較例5の試験水の濁度と炭素鋼管表面のスライム剥離率の結果を、第4表に示す。
【0017】
【表4】
Figure 0003593868
【0018】
第4表の結果から、過酸化水素0.5重量%を添加した比較例4においては、セミカルバジド塩酸塩500mg/リットルを添加した実施例1よりやや速やかにスライムの剥離が進行し、6時間後にほぼその90%が除去されているが、24時間後にもスライムの除去率は約90%にとどまっている。実施例1のセミカルバジド塩酸塩の添加量が、比較例4の過酸化水素の添加量の10分の1であり、実施例3のセミカルバジド塩酸塩とアミノグアニジン重炭酸塩の添加量の合計が、比較例4の過酸化水素の添加量の25分の1であることを考えると、本発明のスライム剥離方法によれば、少ない薬剤の添加量で、いかに効率的にスライムを剥離し得るかが分かる。これに対して、薬剤をなんら添加しなかった比較例5においては、試験水の濁度がわずかに低下する傾向にあることから、なおスライムの付着が徐々に進行しているものと推定される。
実施例1〜3及び比較例4のNBRゴムシート製のテストピースのスライム剥離率の結果を、第5表に示す。
【0019】
【表5】
Figure 0003593868
【0020】
第5表の結果から、セミカルバジド塩酸塩150mg/リットルとアミノグアニジン重炭酸塩50mg/リットルを添加した実施例3においては、薬剤の添加量が比較例4の過酸化水素の25分の1に過ぎないにもかかわらず、スライム剥離率はほぼ同水準に達していて、セミカルバジド塩酸塩とアミノグアニジン重炭酸塩を併用することにより、相乗的なスライム剥離促進効果が発揮されることが分かる。
【0021】
【発明の効果】
本発明方法によれば、従来スライム剥離剤として慣用されていた過酸化水素よりも薬剤の添加量が少なく、装置の運転を停止することなく、水系のスライム剥離及び洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例及び比較例に用いた試験装置の系統図である。
【符号の説明】
1 炭素鋼管
2 入口
3 出口
4 アクリル樹脂製パイプ
5 シリコーンゴム栓
6 タンク
7 循環ポンプ
8 流量計

Claims (4)

  1. 一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を水系に添加することを特徴とするスライム剥離方法。
    Figure 0003593868
    (ただし、式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は炭素数4以下のアルキル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。)
    Figure 0003593868
    (ただし、式中、R6、R7、R8、R9及びR10は、水素又は炭素数4以下のアルキル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。)
  2. 一般式[1]で表される化合物若しくは一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を間欠的に添加する請求項1記載のスライム剥離方法。
  3. さらに、塩酸、炭酸、硫酸又は硝酸を添加する請求項1記載のスライム剥離方法。
  4. 請求項1記載の一般式[1]で表される化合物若しくは請求項1記載の一般式[2]で表される化合物又はこれらの塩を含有することを特徴とするスライム剥離剤。
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