JP3593645B2 - プロジェクション溶接機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナットをワークに溶接するプロジェクション溶接機において、ナットの逆向きセット等セット異常を検出し誤溶接を防止するためのプロジェクション溶接機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ナットをワークに溶接するプロジェクション溶接機は、ガイドピンを有する下部電極と昇降可能な上部電極とを備える。このプロジェクション溶接機において、ナットをワークに溶接する際は、まずワークの挿通孔をガイドピンに嵌めることによってワークの位置決めを行い、次に、手操作又はナットフィーダーによってナットをワーク上に供給しナット孔をガイドピンに嵌めることによってナットをワーク上にセットし、その後、上部電極を下降させ上部電極の加圧力によりナットの被溶接部をワーク上面に加圧しながら上部電極、下部電極間に所定時間通電する一連の工程が行われ、通電によりナットの被溶接部が溶融しその後固化することによってワークにナットが溶接される。
【0003】
この種のプロジェクション溶接機においては、ナットが正向きでワーク上の正位置にセットされている、すなわち、被溶接部がワーク側に位置しかつナット孔がガイドピンに嵌った状態にナットがセットされている場合には、正常な溶接が行われる。しかし、なんらかの理由で、ナットがワーク上の正位置に逆向きでセットされたり、ナットが正向きではあるがワーク上の不正位置にセットされたような場合、溶接強度不足等の溶接不良を招くことになる。
【0004】
そこで、従来から、このような溶接不良を防止するための対策がいろいろ講じられており、関連する従来技術として、実公昭56−14945号公報、実開昭59−175490号公報、実公平3−24299号公報、実公昭60−39172号公報、実公平7−41582号公報、特開平7−299571号公報などが知られている。
【0005】
これらの従来技術は、おおむね二つのタイプに分類され、その一つのタイプは、上部電極の外周に絶縁カバーを環装し、その絶縁カバーの突出した下端面へのナット等の当接の有無により、ナットの正向き、逆向きなどを検出するよう構成されたものであり、他のタイプは、ナットの正規姿勢時と異常姿勢時の高さの違いを上部電極のストロークの差に置き換えてナットのセット状態を検出する構成されたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれのタイプの従来技術においても、絶縁カバーの下端面を上部電極の下端面よりも下方へ突出させた構造を採用しているため、この種の溶接で定期的あるいは不定期的に必要とされる電極面の修整作業の際、絶縁カバーを上部電極に装着したままの状態では電極面を研磨することができず、一旦絶縁カバーを取り外した後に電極面を研磨し、その後再び絶縁カバーを上部電極に取り付ける煩雑な作業が必要とされる。
【0007】
また、絶縁カバー自体も、異常姿勢にあるナットへの加圧の際に摩耗するため、絶縁カバーの交換が必要となる。
【0008】
また、上部電極のストロークの差によりナットのセット状態を検出する方式においては、ストローク差が微小になるに従い検出精度を確保するための機構が複雑になるとともに、電極交換時あるいは電極修整時に検出基準位置が変化するため検出基準位置を設定し直す必要が生じる。
【0009】
さらに、プロジェクション溶接機においては、通常、ジュール熱による電極の温度上昇を抑制するために電極内に冷却水を循環させており、上部電極内の冷却は、図20に示すように、上部電極15の上部中央の冷却孔15fに注水パイプ80を挿入し、この注水パイプ80から冷却孔15fに冷却水を注水し、冷却孔15fを経て冷却水を排出させることによって行われる。この冷却水の循環中に、上部電極ホルダー14と上部電極15との嵌合部に微小な歪みや形状の違いがあると、その微小隙間を通って冷却水が上部電極15の外周面に出るようになり、この漏水が上部電極15の外周面を伝わり、上部電極15の下面15dと絶縁部材16と導電カラー17の下面17aとに跨がる図示二点鎖線で示すような水滴40となる場合が発生する。このような水滴40が形成されると、絶縁部材16が存在しているにもかかわらず上部電極15と導電カラー17との間が導通状態となり、逆向きナット2の被溶接部2bが導電カラー17に溶着されてしまう不具合が生じる。
【0010】
このような不具合は、ワーク又はナットの表面に多くの場合付着している加工用等の軽質油などが、プロジェクション溶接の繰り返しにより上部電極の下端面に付着、堆積し、図20に二点鎖線で示すような付着物41となり、上部電極15と導電カラー17との間が導通状態となる場合にも発生する。
【0011】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決することを目的とし、主として、簡素な構成によってナットのセット状態を正確に検出し溶接不良を防止することができるプロジェクション溶接機を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明のプロジェクション溶接機は、ワーク上面に、ナット本体部の下端外周付近から斜め外方へ延在する複数の被溶接部を溶着させることにより、ナットをワークに溶接するプロジェクション溶接機であって、前記ナットの上面の外径よりも僅かに大きな外径を有する下面を備え、該下面に正向きナットの上面全体が当接される上部電極と、前記上部電極の下部外周に固定して環装される導電カラーであって、前記上部電極下面と面一の下面を有し、該下面に逆向きナットの前記複数の被溶接部が当接される導電カラーと、前記上部電極と前記導電カラーとの間を電気的に絶縁する絶縁材と、前記導電カラーに電圧を印加し、該導電カラーから前記ナット又は前記ワークへの導通の有無に基づいて前記ナットのセット状態を判定する異常検出コントローラと、を備えることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記導電カラーの外周に着脱可能に導電リングが環装され、該導電リングに前記異常検出コントローラのリード線が接続される。
【0014】
また、前記異常検出コントローラが異常を検出したとき、前記上部電極は加圧保持されることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係るプロジェクション溶接機の全体構成図を示す。このプロジェクション溶接機1は、図9に示すナット2を板状ワーク3(図2等)に溶接する溶接機である。なお、ナット2は、ナット本体部2aと、このナット本体部2aの下端外周付近から斜め外方へ延在する複数の被溶接部2bとから構成され、ナット本体部2aはナット孔2cを有する。
【0017】
図1において、溶接機本体10は、二点鎖線で示すように側面略C形状に構成されている。上部電極加圧電磁弁11は、溶接機本体10の上面に配設され、空気圧システムの構成要素である。上部電極加圧シリンダ12は、溶接機本体10の上側突出部10aに配設されており、上部電極加圧電磁弁11によって制御される。上部電極部13は、上部電極加圧シリンダ12によって昇降可能に支持されている。
【0018】
上部電極部13は上部電極ホルダー14を保持している。上部電極15は、図2等に示すように、上部電極ホルダー14の下部に離脱可能にテーパ嵌合されている。
【0019】
上部電極15は、図2等に示すように、上部に大径部15a、下部に小径部15bをそれぞれ有する。小径部15bの外径D1 は、図9に示すナット2の上面2dの外径D3 よりも僅かに大きな値に設定されている。小径部15bは、下部中央にガイドピン逃し孔15cを有する。小径部15bの外周面は、耐熱性絶縁薄膜16によって被覆されている。
【0020】
導電カラー17は耐熱性絶縁薄膜16の外周に圧入されている。導電カラー17は、上部電極15よりも硬度の高い金属材により形成されている。導電カラー17は、筒状体、すり割付き筒状体のいずれの形状を有するものであってもよい。導電カラー17は、小径部15bの下面15dと略面一の下面17aを有する。導電カラー17の厚さtは、ナット2の被溶接部2bの外径D2 からナット上面2dの外径D3 を減じた数値の1/2より大きな寸法に設定されている。
【0021】
絶縁リング18は、導電カラー17の上面17aと大径部15aの下面15eとの間に挿入されている。この絶縁リング18は、単体からなるもの、導電カラー17の上端面に被覆された耐熱性絶縁薄膜からなるもののいずれであってもよい。
【0022】
このように、導電カラー17は、耐熱性絶縁薄膜16及び絶縁リング18からなる絶縁材により上部電極15に対し電気的に絶縁され、上部電極15の下部外周に環装されている。
【0023】
導電リング19は導電カラー17の外周に嵌め合わされている。導電リング19は上部電極15の上下動の際の振動等によって導電カラー17から脱落しないよう、ばね弾性によって導電カラー17の外周面を締め付けている。
【0024】
下部電極部20は、溶接機本体10の下側突出部10bに配設されている。下部電極21は下部電極部20によって保持されている。下部電極21は、図2等に示すように、ワーク3及びナット2の位置決め用ピンとしてのガイドピン22を内装している。ガイドピン22は、下部電極21内部に設けられたスプリング(図示せず)又はエアー圧によって上下動可能である。
【0025】
上記のような構成を有するプロジェクション溶接機1の電気系統は、図1及び図10に示すように構成される。
【0026】
図1及び図10において、リード線23の一端は、図2等に示すように、上部電極15側の導電リング19に接合されている。他のリード線24の一端は、図1に示すように下部電極21に接合されている。これらのリード線23、24の他端は、異常検出コントローラ25に接続されている。フットスイッチ26は、信号線27を介して異常検出コントローラ25に電気的に接続されている。異常検出コントローラ25は電源28に接続される。溶接機タイマー29は電源28に接続されるとともに、信号線30a、30bを介して異常検出コントローラ25に接続される。上部電極加圧電磁弁11は信号線31を介して異常検出コントローラ25に接続されている。異常検出コントローラ25は、リセットボタン32、異常ランプ33、異常ブザー34、上部電極加圧保持スイッチ35及び上部電極下降スイッチ36を備える。
【0027】
手操作でナット2をワーク3上に供給する場合、電気系統は上記のように構成される。一方、ナットフィーダー(図示せず)によりナット2をワーク3上に自動供給する場合、電気系統は、上記のような構成の他に、図10に二点鎖線で示すように、ナットフィーダーの制御盤37に電源28を接続し、さらに、信号線38を介して制御盤37を異常検出コントローラ25に電気的に接続するとともに、信号線39を介して制御盤37を溶接機タイマー29に電気的に接続して構成される。
【0028】
以下、ワーク3上にセットされるナット2のセット状態の種類について図2〜図8を参照して説明した上で、プロジェクション溶接機1の動作について説明する。
【0029】
セット状態は、セット正常状態とセット異常状態に大別される。
【0030】
▲1▼セット正常状態
セット正常状態とは、図2及び図3に示すように、ナット2が正向きでワーク3上の正位置(ナット孔2cがガイドピン22に嵌っているときのナット位置)にセットされた状態をいう。なお、図2は、上部電極15が上端位置にある状態に対応し、また、図3は、上部電極15が図2に示す状態から下降し、ナット2の被溶接部2bをワーク上面3aに加圧する位置まで達した状態に対応する。
【0031】
▲2▼セット異常状態
セット異常状態には、図4〜図8にそれぞれ示すような各種のセット異常状態がある。
【0032】
図4に示すセット異常状態は、ナット2が逆向きでガイドピン22に嵌められたナット2の姿勢状態であり、以下、このセット異常状態をナット逆向き正位置状態という。
【0033】
図5に示すセット異常状態は、ナット2が正向きではあるがガイドピン22に嵌っておらず上部電極15の下降時に上部電極15と当接するようになるナット2の姿勢状態であり、以下、ナット正向き不正位置状態という。
【0034】
図6に示すセット異常状態は、ナット2がワーク3上に供給されなかったか、あるいは、ナット2がガイドピン22から比較的遠く離れた位置にセットされたため、上部電極15の下降時に上部電極15とワーク3とが当接するようになる状態であり、以下、ナット不存在状態という。
【0035】
図7に示すセット異常状態は、ナット2が逆向きでしかもガイドピン22に嵌っていない状態で上部電極15と当接するようになるナット2の姿勢状態であり、以下、ナット逆向き不正位置状態という。
【0036】
図8に示すセット異常状態は、厳密な意味ではナット2のセット異常とはいえないが、上部電極15の下面15dに水滴40又は付着物41が付着した状態で上部電極15とナット2とが当接するようになる状態であり、以下、電極異常状態という。
【0037】
次に、プロジェクション溶接機1の動作を、図12に示すフローチャートを基本に順に説明する。なお、図12において、ステップS1〜S5は、手操作でナット2をワーク3上に供給するナット手供給時の動作内容を表し、また、ステップS6〜S10は、ナットフィーダーによりナット2をワーク3上に供給するナット自動供給時の動作内容を表し、また、ステップS11〜S25は、ナット手供給時、ナット自動供給時に共通の動作内容を表している。
【0038】
(1) 動作開始前
図12に示す動作の開始前においては、上部電極15は上端位置で待機しており、また、下部電極21のガイドピン22は、スプリング又はエアー圧により上方に突出した状態にある。
【0039】
(2)a ナット手供給時の動作
上記の状態において、まずワーク3を下部電極21のガイドピン22にセットする(S1)。
【0040】
次に、ワーク3がセットされたガイドピン22に、ナット2を正向きで嵌めるための、手操作によるナットセットを行う(S2)。このナット手供給により、ナット2のセット状態は、セット正常状態又はセット異常状態のいずれかの状態となる。なお、このナット手供給によりナット2がセット正常状態でセットされたとき、ナット被溶接部2bはワーク上面3aから僅かに浮いた状態となる(図2参照)。
【0041】
その後、フットスイッチ26(起動スイッチ)をONする(S3)。
【0042】
このフットスイッチ26のON信号は、信号線27、異常検出コントローラ25及び信号線30aを経て溶接機タイマー29に送信され、溶接機タイマー29はONする(S4)。この溶接機タイマー29は、信号線30b、異常検出コントローラ25及び信号線31を経て上部電極加圧電磁弁11に上部電極加圧信号を送信し、この上部電極加圧信号により上部電極加圧電磁弁11のポジションが切り換わり、上部電極加圧シリンダ12は上部電極部13を下降させ、上部電極15は下降を開始する(S5)。なお、下降を開始した上部電極15は、初期加圧期間T1 (図13参照)内にフットスイッチ26がOFFした場合には、上昇可能となるが、初期加圧期間T1 経過後は、フットスイッチ26がOFFしても直ちには上昇しないよう制御される。
【0043】
(2)b ナット自動供給時の動作
一方、ナット自動供給時には、ワークセット(S6)の後、フットスイッチ26をONする(S7)。
【0044】
このフットスイッチ26のON信号は、信号線27、異常検出コントローラ25及び信号線38を経てナットフィーダーの制御盤37に送信され、制御盤37はナットフィーダーにナット供給開始信号を送信し、ナットフィーダーはナット2を一個正向き状態でガイドピン22に嵌めるようワーク上面3aに向けて供給する(S8)。このナット自動供給により、ナット2のセット状態は、ナット手供給時と同様、セット正常状態又はセット異常状態のいずれかの状態となる。
【0045】
その後、制御盤37から信号線39を経て溶接機タイマー29にナット供給完了信号が送信されると、溶接機タイマー29はONする(S9)。この溶接機タイマー29は、ナット手供給時と同様、上部電極加圧電磁弁11に上部電極加圧信号を送信し、上部電極15を下降開始させる(S10)。
【0046】
(3) 初期加圧期間T1 における導通検知(異常検知)
上記のような上部電極15の下降開始後、異常検出コントローラ25は、リード線23、24間に電圧を継続して印加するとともに、図11に示すような異常検出コントローラ25の入力部に設けられた導通検知回路25aにより、リード線23、24間の導通の有無を検出するようにし、導通検知回路25aによりリード線23、24間の導通が検知されたとき、導通検知回路25aから導通検知信号を出力するようにする(S11)。換言すると、上部電極15の下降開始後、導通検知回路25aは、ナット2のセット状態がセット正常状態であるかセット異常状態であるかの判定を行う。なお、この判定結果により、後述するように、上部電極15、下部電極21間に溶接電流を流したり、あるいは溶接電流を流さないで異常ブザー34を鳴らすなどの、後の動作が決定される。
【0047】
導通検知回路25aは、ナット2のセット状態がセット正常状態(図2)のときは、図3に示すように上部電極15の下降により、上部電極15が導電カラー17とは当接せずナット上面2dのみと当接するようになり、リード線23、24間が遮断状態に保たれるため、導通検知回路25aは開状態を保ち、異常検知信号を出力しない。このように、ナット2のセット状態がセット正常状態のとき、導通検知回路25aはセット正常状態であると判定する。
【0048】
また、ナット2のセット状態がナット逆向き正位置状態(図4)のときには、上部電極15の下降により導電カラー17がナット被溶接部2bと当接するようになり、上部電極15側のリード線23から導電リング19、導電カラー17、ナット被溶接部2b、ナット上面2d、ワーク3、下部電極21を経て下部電極21側のリード線24に至る閉回路が生成され、導通検知回路25aは閉状態となり、導通検知回路25aは異常検知信号を出力するようになる。このように、ナット2のセット状態がナット逆向き正位置状態のとき、導通検知回路25aはセット異常状態であると判定する。
【0049】
また、ナット2のセット状態がナット正向き不正位置状態(図5)のときには、上部電極15の下降により導電カラー17がナット上面2dと当接するようになり、上部電極15側のリード線23から導電リング19、導電カラー17、ナット上面2d、ナット被溶接部2b、ワーク3、下部電極21を経て下部電極21側のリード線24に至る閉回路が生成される。このため、上記と同様、導通検知回路25aは異常検知信号を出力するようになり、セット異常状態であると判定する。
【0050】
また、ナット2のセット状態がナット不存在状態(図6)のときには、上部電極15の下降により上部電極15がワーク上面3aと当接するようになり、上部電極15側のリード線23から導電リング19、導電カラー17、ワーク3、下部電極21を経て下部電極21側のリード線24に至る閉回路が生成される。このため、上記と同様、導通検知回路25aは異常検知信号を出力するようになり、セット異常状態であると判定する。
【0051】
また、ナット2のセット状態がナット逆向き不正位置状態(図7)のときには、上部電極15の下降により上部電極15が導電カラー17とは当接せずナット被溶接部2bのみと当接するようになり、リード線23、24間が遮断状態に保たれるため、導通検知回路25aは開状態を保ち、異常検知信号を出力しない。したがって、このようなナット逆向き不正位置状態は本来ならばセット異常状態であるが、導通検知回路25aは、セット正常状態であると誤判定するようになる。なお、この誤判定による溶接後の不良品の流出を防止するために、後述するように、溶接後、異常ブザー34の鳴動等により作業者にセット異常が知らされる。
【0052】
また、厳密な意味ではナット2のセット状態とはいえないが電極異常状態(図8)のときには、上部電極15の下降により上部電極15がナット上面2dと当接するようになると上部電極15側のリード線23から導電リング19、導電カラー17、水滴40又は付着物41、ナット2、ワーク3、下部電極21を経て下部電極21側のリード線24に至る閉回路が生成される。このため、上記と同様、導通検知回路25aは異常検知信号を出力するようになり、セット異常状態であると判定する。しかし、水滴40又は付着物41が溶接品質に支障をきたさない程度の少量である場合(以下、擬似異常状態という。)には、上記のようなセット異常状態との判定はしないでセット正常状態との判定をし、後続の溶接を行う方が好ましい。そこで、図11に二点鎖線で示すように、導通検知回路25aに並列に抵抗Rfを接続し、当該擬似異常状態の時に導通検知回路25aにかかる電圧を、異常検知信号の出力の基準となる閾値よりも小さくなるよう構成する。このような構成をとることにより、擬似異常状態の時には、導通検知回路25aは異常検知信号を出力せず、セット正常状態と判定することができるようになる。
【0053】
以上のように、導通検知回路25aは、初期加圧期間T1 において、リード線23、24間の導通の有無を検出し、ナット2のセット状態がセット正常状態(異常検知信号が出力されない場合に対応する。)であるか又はセット異常状態(異常検知信号が出力される場合に対応する。)であるかを判定する。以下、セット正常状態と判定された場合と、セット異常状態と判定された場合に大別して以後の動作を説明する。
【0054】
(4)a 初期加圧期間T1 内に異常検知信号が出力されずセット正常状態と判定された場合の動作
異常検出コントローラ25は、上部電極15、下部電極21間に溶接電流を流して予め定めた溶接時間、ナット2の溶接を行わせる(S12)。
【0055】
その後、溶接機タイマー29がタイマーアップするまでの間、リード線23、24間の導通の有無を検知する(S14)。
【0056】
図2及び図3に示すようなセット正常状態のため導通検知回路25aから異常検知信号が出力されない場合、溶接機タイマー29は予め定めた上部電極加圧時間T2 (図13参照)が経過した時点、すなわち、溶接機タイマー29がタイマーアップした時点で、上部電極加圧電磁弁11への上部電極加圧信号の送信を停止し、これにより、上部電極15は上昇を開始する(S15)。なお、図12においては、溶接機タイマーアップ(S13)後に、導通検知(S14)を行うように図示したが、これは、便宜上、フローチャートが煩雑になるのを回避するためである。その後、フットスイッチ26をOFFし、ナット2が溶接されたワーク3をアン・ローディングする(S25)。
【0057】
一方、導通検知(S14)において、図7に示すようなナット逆向き不正位置状態の場合、溶接電流によりナット被溶接部2bが溶融し、このため、上部電極15側のリード線23から、導電リング19、導電カラー17、ナット2、ワーク3、下部電極21を経て下部電極21側のリード線24に至る閉回路が生成され、導通検知回路25aから異常検知信号が出力されるようになる。このような場合、後述する動作(S16)へと移行し、異常ブザー34が鳴動するなどしてセット異常状態が作業者に知らされる。
【0058】
(4)b 初期加圧期間T1 内に異常検知信号が出力されセット異常状態と判定された場合の動作
導通検知回路25aから異常検知信号が出力されると、上部電極加圧保持スイッチ35がONされているかOFFされているかによって(S14)、次のような異なる動作を行う。
【0059】
▲1▼上部電極加圧保持スイッチ35がOFFされている場合
導通検知回路25aからの異常検知信号により、溶接機タイマー29はOFFし、異常ランプ33及び異常ブザー34はONする(S17)。この溶接機タイマー29のOFFへのスイッチングにより、溶接機タイマー29は上部電極加圧信号の送信を停止し、上部電極15は上昇を開始する(S18)。そして、この異常ランプ33の点灯、異常ブザー34の鳴動により、作業者はセット異常を知ることができる。
【0060】
その後、作業者はフットスイッチ26をOFFするとともに、リセットボタン32をONする。このリセットボタン32のONにより、異常ランプ33及び異常ブザー34はOFFする(S19)。そして、作業者は、セット異常のナット2をアンロードする(S25)。
【0061】
▲2▼上部電極加圧保持スイッチ35がONされている場合
異常検出コントローラ25は、上部電極加圧保持信号をONし、上部電極加圧保持信号を上部電極加圧電磁弁11に送信する(S20)。また、溶接機タイマー29をOFFするとともに、異常ランプ33及び異常ブザー34をONする(S21)。したがって、溶接機タイマー29のOFFへのスイッチングにより、上部電極加圧信号の送信が停止するが、その代わりに、上部電極加圧保持信号が送信されることから、上部電極15は加圧保持を継続するようになる。その後、作業者はフットスイッチ26をOFFするとともに、リセットボタン32をONする。このリセットボタン32のONにより、異常ブザー34はOFFする(S22)。そして、作業者は再びリセットボタン32をONする。このリセットボタン32のONにより、異常ランプ33はOFFするとともに上部電極加圧保持信号の送信が停止される(S23)。この上部電極加圧保持信号の送信停止により、上部電極15は上昇を開始する(S24)。そして、作業者は、セット異常のナット2をアンロードする(S25)。
図13〜図17は、上述したようなプロジェクション溶接機1の動作を、より具体的に説明するためのタイミングチャートを示す。
【0062】
図13は、ナット2のセット状態がセット正常状態にあるとき(図2、図3)のタイミングチャートを示す。このセット正常状態の場合、初期加圧期間T1 が経過した時点で溶接電流が流れ、ナット2がワーク3に溶接される。そして、上部電極加圧期間T2 が経過した時点で上部電極15は上昇開始する。なお、図13に示すタイミングチャートは、上部電極加圧保持スイッチ35がOFFしている場合に対応するが、上部電極加圧保持スイッチ35がONしている場合にも同様な内容となる。
【0063】
図14は、ナット2のセット状態が、図4、図5及び図6に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチ35がOFF状態にあるときのタイミングチャートを示す。この場合、初期加圧期間T1 内にリード線23、24間の導通が検知されると、上部電極15は上昇を開始し、また、異常ランプ33及び異常ブザー34がONされて作業者はセット異常を知ることができる。
【0064】
図15は、ナット2のセット状態が、図4、図5及び図6に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチ35がON状態にあるときのタイミングチャートを示す。この場合、初期加圧期間T1 内にリード線23、24間の導通が検知されると、異常ランプ33及び異常ブザー34によりセット異常が作業者に知らされる。また、リード線23、24間の導通が検知されたとき、上部電極15は上昇を開始せず加圧保持され、二度目の異常リセットにより上昇を開始するため、作業者は、セット異常状態を実際に目で確認することができる。したがって、上部電極15を上記のように加圧保持することは、品質管理上有効な手段となる。
【0065】
図16は、ナット2のセット状態が、図7に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチ35がOFF状態にあるときのタイミングチャートを示す。この場合、溶接中にリード線23、24間の導通が検知されても、上部電極15は上昇せず加圧保持され、保持加圧期間T2 が経過した時点から上昇を開始する。そして、異常ランプ33及び異常ブザー34によって作業者はセット異常を知ることができ、溶接不良品の流出を防止することができる。
【0066】
図17は、ナット2のセット状態が、図7に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチ35がON状態にあるときのタイミングチャートを示す。この場合、上部電極15は、初期加圧期間T1 が経過した後も上部電極加圧保持信号により加圧保持され、二度目の異常リセットにより上昇を開始する。このため、上述した図15に示したセット異常の場合と同様、作業者は、セット異常状態を実際に目で確認することができる。
【0067】
なお、上述した図13〜図17は、手操作でナット2の供給を行うナット手供給時の場合の動作を示したが、ナット自動供給時の場合には、起動スイッチ26がONするとナットフィーダーが起動し、ナットフィーダーがナット1個を供給終了した時点で溶接機タイマー29がONする。そして、その後の動作はナット手供給時の場合と同様である。
【0068】
ところで、溶接の繰り返しにより電極面が損耗して平坦度が失われた場合、電極面の修整を行う必要が生じる。
【0069】
以下、このような電極面の修整を行う際の作業を説明する。
【0070】
まず、導電カラー17の外周に嵌められたばね状の導電リング19を外し、上部電極15を上部電極ホルダー14から外す。そして、上部電極15を旋盤等のチャックに締め付け、上部電極15の下面15d及び導通カラー17の下面17aを同時に削り平坦度を回復させる。
【0071】
なお、このような電極面の研削は、導電リング19のセット位置近傍まで繰り返し行うことが可能である。
【0072】
そして、このような電極面の修整の後、上部電極15を上部電極ホルダー14に取り付け、さらに、導通カラー17に導電リング19を取り付けて、作業を終了する。
【0073】
その後、異常検出コントローラ25の動作確認を行う。この動作確認方法は、次のように行われる。
【0074】
まず、ワーク3をセットした後、ナット2をガイドピン22に正向きでセットする。そして、上部電極下降スイッチ36を手動でONする。異常検出コントローラ25は、上部電極下降スイッチ36がONすると、上部電極下降信号を上部電極加圧電磁弁11に送信し、上部電極15は下降を開始する。そして、この上部電極15の下降により異常ランプ33がONしないことを作業者が確認することにより、異常検出コントローラ25がセット正常状態を正しく判定したと確認する。なお、この確認動作の間、溶接機タイマー29は切り離されており、溶接電流の供給は行わない。図18は、このようにナット2をセット正常状態でセットした場合の確認動作の内容を示している。
【0075】
次に、今度はナット2をガイドピン22に逆向きでセットする。そして、上述したセット正常状態の判定の確認の場合と同様、上部電極下降スイッチ36を手動でONし、上部電極15を下降させる。そして、この上部電極15の下降により異常ランプ33がONしたことを作業者が確認することにより、異常検出コントローラ25がセット異常状態を正しく判定したと確認する。図19は、このようにナット2をセット異常状態でセットした場合の確認動作の内容を示している。
【0076】
【発明の効果】
本発明のプロジェクション溶接機は、ナットの上面の外径よりも僅かに大きな外径を有する下面を備え、該下面に正向きナットの上面全体が当接される上部電極と、上部電極の下部外周に環装される導電カラーであって、上部電極下面と略面一の下面を有し、該下面に逆向きナットの複数のナット被溶接部が当接される導電カラーと、上部電極と導電カラーとの間を電気的に絶縁する絶縁材と、導電カラーに通電し、該導電カラーからナットへの通電の有無に基づいてナットのセット状態を判定する異常検出コントローラとを備えることを特徴とする。
【0077】
本発明によると、ナットがセット正常状態でセットされている場合には、導電カラーがナットと接触することがないため、導電カラーからナットへの通電が無いことを確認することで、ナットのセット正常状態を正しく判定することができる。一方、ナットがセット異常状態でセットされている場合には、導電カラーがナットと接触するため、導電カラーからナットへの通電が有ることを確認することで、ナットのセット異常状態を正しく判定することができるようになる。したがって、本発明によると、きわめて簡素な構成によってナットのセット状態を正確に検出し溶接不良を防止することが可能になる。
【0078】
また、導電カラーの外周に着脱可能に導電リングが環装され、該導電リングに異常検出コントローラのリード線が接続されるよう構成する。これにより、損耗した電極面の修整作業を行う際、導電リングを取り外すことにより、上部電極及び導電カラーのみを旋盤等にセットして、上部電極の下面と導電カラーの下面とを同時に研削することができるようになる。
【0079】
また、異常検出コントローラが異常を検出したとき、上部電極は加圧保持されるよう構成する。これにより、作業者はセット異常状態を実際に目で確認することができるようになり、品質管理を行う上で有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクション溶接機の全体構成図である。
【図2】図1に示すプロジェクション溶接機において、ナットが正向きでワーク上の正位置にセットされた場合(セット正常時)に、上部電極が上端位置にあるときの要部の部分断面図である。
【図3】上部電極が図2に示す状態から下降し、ナットの被溶接部をワーク上面に加圧する位置まで達したときの要部の部分断面図である。
【図4】ナットが逆向きでワーク上の正位置にセットされた場合(セット異常時又はナット逆向き正位置時)に、上部電極が下降し、ナットの被溶接部と当接する位置まで達したときの要部の部分断面図である。
【図5】ナットが正向きでワーク上の不正位置にセットされた場合(セット異常時又はナット正向き不正位置時)に、上部電極が下降し、ナットの上面と当接する位置まで達したときの要部の部分断面図である。
【図6】ナットがワーク上に存在しない場合(セット異常時又はナット不存在時)に、上部電極が下降し、ワークと当接する位置まで達したときの要部の部分断面図である。
【図7】ナットが逆向きでワーク上の不正位置にセットされた場合(セット異常時又はナット逆向き不正位置時)に、上部電極が下降し、ナットの被溶接部と当接する位置まで達したときの要部の部分断面図である。
【図8】上部電極の下端面に水滴又は付着物が付着している場合(電極異常時)に、上部電極が上端位置にあるときの要部の部分断面図である。
【図9】ナットの平面、縦断面及び底面図である。
【図10】図1に示すプロジェクション溶接機の電気系統図である。
【図11】図10に示す異常検出コントローラの入力部の構成図である。
【図12】図1に示すプロジェクション溶接機による一連の動作を示すフローチャートである。
【図13】ナットのセット状態がセット正常状態にあるとき(図2、図3)のタイミングチャートである。
【図14】ナットのセット状態が、図4、図5及び図6に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチがOFF状態にあるときのタイミングチャートである。
【図15】ナットのセット状態が、図4、図5及び図6に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチがON状態にあるときのタイミングチャートである。
【図16】ナットのセット状態が、図7に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチがOFF状態にあるときのタイミングチャートである。
【図17】ナットのセット状態が、図7に示すようなセット異常状態であり、かつ、上部電極加圧保持スイッチがON状態にあるときのタイミングチャートである。
【図18】電極面修整後、ナットをセット正常状態でセットした場合の異常検出コントローラの動作確認のための動作内容を示すタイミングチャートである。
【図19】電極面修整後、ナットをセット異常状態でセットした場合の異常検出コントローラの動作確認のための動作内容を示すタイミングチャートである。
【図20】従来のプロジェクション溶接機の問題点を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 プロジェクション溶接機
2 ナット
2a ナット本体部
2b 被溶接部
2d 上面
3 ワーク
3a 上面
15 上部電極
15d 下面
16、18 絶縁材
17 導電カラー
19 導電リング
23 リード線
25 異常検出コントローラ
17 導電カラー
Claims (3)
- ワーク上面に、ナット本体部の下端外周付近から斜め外方へ延在する複数の被溶接部を溶着させることにより、ナットをワークに溶接するプロジェクション溶接機であって、
前記ナットの上面の外径よりも僅かに大きな外径を有する下面を備え、該下面に正向きナットの上面全体が当接される上部電極と、
前記上部電極の下部外周に固定して環装される導電カラーであって、前記上部電極下面と面一の下面を有し、該下面に逆向きナットの前記複数の被溶接部が当接される導電カラーと、
前記上部電極と前記導電カラーとの間を電気的に絶縁する絶縁材と、
前記導電カラーに電圧を印加し、該導電カラーから前記ナット又は前記ワークへの導通の有無に基づいて前記ナットのセット状態を判定する異常検出コントローラと、
を備えることを特徴とするプロジェクション溶接機。 - 請求項1において、前記導電カラーの外周に着脱可能に導電リングが環装され、該導電リングに前記異常検出コントローラのリード線が接続されることを特徴とするプロジェクション溶接機。
- 請求項1又は2において、前記異常検出コントローラが異常を検出したとき、前記上部電極は加圧保持されることを特徴とするプロジェクション溶接機。
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