JP3593590B2 - ペプチド置換クマリン誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質分解酵素活性測定用の蛍光性基質等として有用な、新規なペプチド置換クマリン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの歯周病は歯周局所の常在微生物によって惹起される一種の感染症と考えられている。その中でも特に、グラム陰性嫌気性桿菌のポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)が成人性歯周炎や急速進行性歯周炎において最も重要な病因菌であることが明らかにされている(J. Clin. Periodontol., 15, 85−93, 1988;J. Clin. Periodontol., 15, 316−323, 1988;J. Dent. Res., 63, 441−451, 1984)。近年、そのP. gingivalisが産生するプロテアーゼ群がその機能、即ちコラーゲンをはじめとする歯周組織成分や生体防御系に関与する血清蛋白質を分解することが知られ、病原性と深く関係していることが明らかにされている(Greiner D., Mayrand D.:Biology of the Species Porphyromonas gingivalis, Edited by Shah H. N., Mayrand D. and Genco R. J., pp227−243, CRC Press, Boca Raton, Ann Arbor, London, Tokyo, 1993)。このP. gingivalisが産生する蛋白質分解酵素であるリジル−ジンジパイン(Lys−gingipain)(KGP)も高分子キニノーゲンやフィブリノーゲンに高い分解能を示すことが知られ、歯周炎の発現や歯周組織の破壊に関与するものと考えられている(J. Biol. Chem., 269, 406−411, 1994)。
【0003】
従来より種々の酵素阻害活性測定用の蛍光性の基質が知られており、特開昭55−24147号公報には、7−(Nα−置換又は未置換リジル)−アミノ−4−メチルクマリンがトリプシン等の合成基質として記載されている。しかし、該公報には、本発明化合物は具体的には開示されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、歯周病がPorphyromonas gingivalisによって引き起こされること、P. gingivalisの歯周病に関与する成分には蛋白質分解酵素であるリジル−ジンジパイン(Lys−gingipain)が寄与していることに着目してなされたもので、本発明の目的は、この蛋白質分解酵素の活性を特異的かつ高感度に測定できる蛍光性の合成基質等として有用な新規化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるペプチド置換クマリン誘導体が簡便で高感度に特定酵素の活性を測定できる蛍光性の合成基質であることを見出し、これに基づき本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、一般式
【0007】
【化3】
【0008】
(式中、Rはカルボベンゾキシ基又はNα−カルボベンゾキシ−ヒスチジル基を示す。)で表されるペプチド置換クマリン誘導体又はその塩に係る。
【0009】
また、本発明は、上記一般式(1)のペプチド置換クマリン誘導体又はその塩を含有するリジル−ジンジパイン(Lys−gingipain)の活性を測定する試薬にも係る。
【0010】
一般式(1)においてRがカルボベンゾキシ基である化合物は、特開昭55−24147号公報の特許請求の範囲に形式的には包含されるが、実施例等には具体的に記載されておらず、しかも口腔内に常在するPorphyromonas gingivalisが産生し、歯周病に関与する蛋白質分解酵素であるリジル−ジンジパイン(Lys−gingipain)の活性を特異的かつ高感度に測定できることについては全く知られていない。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一般式(1)で表される化合物の塩は、特に限定されず、薬学的に許容される酸又は塩基性化合物を作用させた酸付加塩及び/又は塩基塩が挙げられる。この酸付加塩としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、シュウ酸、マレイン酸、フマール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸との塩が例示できる。塩基塩としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属との塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ピペリジン、シクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等のアミン類との塩が例示できる。
【0012】
本発明化合物又はその塩は水和物に代表される溶媒和物の形であってもよい。
【0013】
本発明化合物を構成するアミノ酸はL−体、D−体のいずれであっても良いが、リジン残基はL−体が好ましい。
【0014】
本発明の好ましい化合物は、一般式(1)においてRがNα−カルボベンゾキシ−ヒスチジル基である化合物である。
【0015】
また、リジル−ジンジパイン(Lys−gingipain)の活性測定用試薬としては一般式(1)においてRがNα−カルボベンゾキシ−ヒスチジル基である化合物を含有する試薬が好ましい。
【0016】
本発明のペプチド置換クマリン誘導体(1)は、例えば次の反応工程式の方法で製造することができる。
【0017】
【化4】
【0018】
(式中、P1はアミノ基の保護基を、P2はカルボキシル基の保護基を示し、P3はカルボベンゾキシ基あるいは一般式
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、P4は水素又はイミダゾール基の保護基を示す。)を示す。)。
【0021】
P1、P2、P4で示される保護基としては、カルボベンゾキシ基が安定であるような反応条件で除去されるものであれば特に制限はなく、例えば、P1で示されるアミノ基の保護基としては、t−ブトキシカルボニル基、p−メトキシカルボベンゾキシ基、トリチル基等が挙げられる。P2で示されるカルボキシル基の保護基としては、ペプチド合成の分野で通常用いられる保護基、例えばエステル誘導体等が挙げられ、好ましくは、t−ブチルエステル、ベンズヒドリルエステル等が挙げられる。P4で示されるイミダゾール基の保護基としては、t−ブトキシカルボニル基、p−メトキシカルボベンゾキシ基、トリチル基等が挙げられる。
【0022】
一般式(2)で表される保護合成基質を適当な方法により、P1、P2、P4を選択的に除去すると一般式(1)で表される本発明化合物が得られる。反応の条件はベンジルオキシカルボニル基が安定であるような反応条件であれば特に制限はなく、例えば、不活性溶媒中あるいは無溶媒で、希酸で処理することによって実施することができる。溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が例示できる。酸としては、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸が例示できる。又反応を促進するために、アニソール、チオアニソール等を添加してもよい。
【0023】
上記反応工程式で原料として用いられる一般式(2)で表わされる保護合成基質はペプチド合成の分野で通常用いられる方法等、例えば「(社)日本生化学会編、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、207−400ページ、1977年、(株)東京化学同人発行」に記載の方法により製造される。例えば7−アミノ−4−メチルクマリンとNα−ベンジルオキシカルボニルリジン誘導体をイソブチルクロロホルメート等の縮合剤の存在下で縮合させると、7−(Nα−カルボベンゾキシ−Nε−保護(P1)リジル)アミノ−4−メチルクマリンが得られる。得られた化合物のNα−保護基を例えば接触還元等で選択的に脱保護し、再び所望のNα−カルボベンゾキシアミノ酸誘導体と縮合、あるいは縮合反応で得られた化合物のNα−保護基を更に選択的に脱保護し、再び所望のNα−カルボベンゾキシアミノ酸誘導体と縮合することにより所望の一般式(2)で表せられる保護合成基質が製造される。
【0024】
上記方法により得られる本発明化合物(1)及び各化合物は、再結晶、蒸留、各種カラムクロマトグラフィー等の通常の分離手段により単離及び精製して用いることができる。
【0025】
このようにして得られた本発明のペプチド置換クマリン誘導体(1)又はその塩は口腔内中に存在するポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)が産生する蛋白質分解酵素Lys−gingipainにより加水分解されるのでこの酵素の活性を特異的かつ高感度に測定するための蛍光性の合成基質として有用である。
【0026】
【実施例】
以下に参考例、実施例及び試験例を挙げて本発明を一層詳細に説明する。
【0027】
参考例1
7−(Nα−カルボベンゾキシ−Nε−t−ブトキシカルボニル−L−リジル)アミノ−4−メチルクマリンの合成
Nα−カルボベンゾキシ−Nε−t−ブトキシカルボニル−L−リジン3.26g(8.6mmol)とトリエチルアミン1.2ml(8.6mmol)のDMF20ml溶液に、−20℃〜−30℃でイソブチルクロロホルメート1.12ml(8.6mmol)を加え、10分間撹拌した後、7−アミノ−4−メチルクマリン1.0g(5.7mmol)のDMF10ml溶液を加え、氷冷下1.5時間撹拌した。精製水2mlを加え反応を停止させた後、反応液に飽和食塩水を加え酢酸エチル抽出した。酢酸エチル層を1N塩酸水、飽和食塩水、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム:アセトン=10:1(v/v)で溶出後、クロロホルム:エタノール=20:1(v/v)で溶出)により精製した。エーテル−n−ヘキサンより結晶化し、標記化合物を1.06g(収率34.4%)得た。物性を下記に示す。
【0028】
融点:127−129℃。
【0029】
1H−NMR(CDCl3)δ:9.08 (1H, s), 7.66 (1H, s), 7.48−7.35 (7H, m), 6.17 (1H, s), 5.73 (1H, brs), 5.13 (2H, s), 4.69 (1H, brt), 4.33 (1H, brs), 3.16−3.07 (2H, m), 2.40 (3H, s), 2.03−1.94 (1H, m), 1.80−1.68 (1H, m), 1.55−1.42 (13H, m)。
【0030】
IR(KBr)cm−1:3327, 2977, 2936, 1695, 1619, 1584, 1526, 1455, 1415, 1393, 1368, 1330, 1308, 1270, 1252, 1224, 1173, 1069。
【0031】
参考例2
7−(Nα−カルボベンゾキシ−γ−t−ブチル−L−グルタミル−Nε−t−ブトキシカルボニル−L−リジル)アミノ−4−メチルクマリンの合成
参考例1で得た縮合体900mg(1.67mmol)、10%パラジウムカーボン200mg、酢酸3滴、メタノール50mlの混合物を3.5kg/cm2、3時間接触水素還元した。反応後、不溶物を濾去し、溶媒を留去した。得られた残渣とN−メチルモルホリン187μl(1.7mmol)のDMF2ml溶液をNα−カルボベンゾキシ−γ−t−ブチル−L−グルタミン酸540mg(1.6mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物230mg(1.7mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩326mg(1.7mmol)のDMF8ml溶液に氷冷下、滴下し、室温で12時間撹拌した。反応後、反応液に飽和食塩水を加え酢酸エチル抽出した。酢酸エチル層を5%クエン酸水、飽和食塩水、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で順次洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム:エタノール=48:1(v/v)で溶出)により精製した。標記化合物のアモルファスを914mg(収率75.5%)得た。物性を下記に示す。
【0032】
融点:79−83℃。
【0033】
1H−NMR(CDCl3)δ:9.16 (1H, s), 7.73 (1H, s), 7.54−7.52 (1H, m), 7.46 (1H, d, J=8.5Hz), 7.31−7.30 (5H, m), 6.98 (1H, brs), 6.23 (1H, brs), 6.16 (1H, s), 5.13 (2H, s), 4.72 (1H, brs), 4.57−4.52 (1H, m), 4.25−4.21 (1H, m), 3.10 (2H, brs), 2.50−2.42 (2H, m), 2.39 (3H, s), 2.19−2.11 (1H, m), 2.03−1.99 (2H, m), 1.70−1.67 (1H, m), 1.50−1.38 (22H,m)。
【0034】
IR(KBr)cm−1:3322, 2978, 1703, 1620, 1584, 1527, 1455, 1416, 1393, 1368, 1328, 1306, 1253, 1226, 1159。
【0035】
参考例3
7−(Nα−カルボベンゾキシ−Nim−トリチル−L−ヒスチジル−γ−t−ブチル−L−グルタミル−Nε−t−ブトキシカルボニル−L−リジル)アミノ−4−メチルクマリンの合成
参考例2で得た縮合体450mg(0.623mmol)、10%パラジウムカーボン160mg、酢酸3滴、メタノール40mlの混合物を3.5kg/cm2、3.5時間接触水素還元した。反応後、不溶物を濾去し、溶媒を留去した。得られた残渣のDMF2ml溶液をNα−カルボベンゾキシ−Nim−トリチル−L−ヒスチジン397mg(0.75mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物101mg(0.75mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩143mg(0.75mmol)のDMF4ml溶液に氷冷下、滴下し、室温で12時間撹拌した。反応後、反応液に飽和食塩水を加え酢酸エチル抽出した。酢酸エチル層を5%クエン酸水、飽和食塩水、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム:エタノール=55:1(v/v)で溶出)により精製した。標記化合物のアモルファスを460mg(収率67.1%)を得た。物性を下記に示す。
【0036】
融点:105−108℃。
【0037】
1H−NMR(CDCl3)δ:9.04 (1H, brd), 8.84 (1H, s), 8.41 (1H, s), 7.86 (1H, s), 7.62 (1H, d, J=8.3Hz), 7.35−7.19 (16H, m), 6.91−6.89 (6H, m), 6.58 (1H, s), 6.15 (1H, s), 6.00 (1H, brs), 5.11 (1H, d, J=12.4Hz), 5.04 (1H, d, J=12.4Hz), 4.71−4.59 (2H, m), 4.40 (1H, m), 4.29−4.26 (1H, m), 3.12−3.04 (4H, m), 2.53−2.46 (2H, m), 2.28 (3H, s), 2.28−2.12 (3H, m), 1.64−1.37 (23H, m)。
【0038】
IR(KBr)cm−1:3327, 1711, 1619, 1579, 1522, 1448, 1413, 1392, 1368, 1328, 1251, 1156, 751, 702。
【0039】
実施例1
7−(Nα−カルボベンゾキシ−L−グルタミル−L−リジル)アミノ−4−メチルクマリン塩酸塩の合成
参考例2で得た縮合体314mg(0.43mmol)、アニソール0.3ml、トリフルオロ酢酸5mlの混合物を氷冷下15分、室温1.5時間撹拌した。反応後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣にジエチルエーテルを加え、析出した結晶を瀘取した。得られた結晶を0.5N塩酸に溶解し、MCIゲル(三菱化学社製、CHP−20(75〜150μ))を担体としたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;40%アセトニトリルで溶出)により精製した。得られた画分を減圧下濃縮し、更に0.5N塩酸を加え凍結乾燥し、標記化合物220mg(収率84.0%)を得た。物性を下記に示す。
【0040】
融点:152−156℃(分解)。
【0041】
比旋光度:[α]25 D=−44.36°(c=0.523, MeOH)。
【0042】
1H−NMR(CD3OD)δ:7.85 (1H, s), 7.65 (1H, d, J=8Hz),7.56 (1H, d, J=8Hz), 7.35−7.24 (5H, m), 6.21 (1H, s), 5.13 (1H, d, J=12.4Hz), 5.08 (1H, d, J=12.4Hz), 4.55−4.51 (1H, m), 4.16−4.12 (1H, m), 2.95−2.91 (2H, m), 2.43 (3H, s), 2.35−2.29 (2H, m), 2.11−1.98 (3H, m), 1.86−1.79 (1H, m), 1.76−1.62 (2H, m), 1.59−1.45 (2H, m)。
【0043】
IR(KBr)cm−1:3427, 3306, 3069, 2948, 1701, 1665, 1619, 1581, 1529, 1454, 1394, 1371, 1329, 1309, 1266, 1233。
【0044】
実施例2
7−(Nα−カルボベンゾキシ−L−ヒスチジル−L−グルタミル−L−リジル)アミノ−4−メチルクマリン塩酸塩の合成
参考例3で得た縮合体310mg(0.28mmol)、アニソール0.32ml、トリフルオロ酢酸6mlの混合物を氷冷下15分、室温2時間撹拌した。反応後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣にジエチルエーテルを加え、析出した結晶を瀘取した。得られた結晶を0.5N塩酸に溶解し、MCIゲル(三菱化学社製、CHP−20(75〜150μ))を担体としたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;25%アセトニトリルで溶出)により精製した。得られた画分を減圧下濃縮し、更に0.5N塩酸を加え凍結乾燥し、標記化合物177mg(収率81.0%)を得た。物性を下記に示す。
【0045】
融点:166−169℃(分解)。
【0046】
比旋光度:[α]25 D=−49.60°(c=1.004, MeOH)。
【0047】
1H−NMR(CD3OD)δ:7.93 (1H, s), 7.65−7.58(3H, m), 7.30−7.25 (5H, m), 6.91 (1H, s), 6.21 (1H, d, J=1.2Hz), 5.08 (1H, d, J=12.4Hz), 5.04 (1H, d, J=12.4Hz), 4.52−4.48 (1H, m), 4.35−4.26 (2H, m), 3.15−3.01 (1H, m), 2.94−2.90 (2H, m), 2.43 (3H, s), 2.38−2.26 (2H, m), 2.14−2.02 (3H, m), 1.89−1.81 (1H, m), 1.74−1.46 (4H, m)。
【0048】
IR(KBr)cm−1:3401, 3285, 3089, 2958, 1700, 1659, 1619, 1577, 1558, 1530, 1454, 1440, 1394, 1371, 1328, 1309, 1268, 1233。
【0049】
試験例
次に本発明化合物が蛋白質分解酵素リジル−ジンジパインの特異的かつ高感度の蛍光性の合成基質となることを示す。
【0050】
試験例1 リジル−ジンジパインに対する本発明化合物の活性の測定
リジル−ジンジパインは岡本、山本らの方法[K.Okamoto,K.Yamamoto, et al. J.Biochem.120,398−406(1996)]によりPorphyromonas gingivalis 381の培養瀘液の上清より調製されたものを使用した。所定の酵素溶液をpH7.5に調整された5mMシステインを含んだ20mMリン酸ナトリウムバッファーの各所定の濃度の合成基質溶液に添加し、40℃で反応させた。反応は経時的に10mMのヨード酢酸を含んだ酢酸ナトリウム緩衝液でpH5に調整し、反応を停止させ、遊離した7−アミノ−4−メチルクマリンを蛍光分光光度計を用い、波長380nmで励起した460nmの蛍光波長の蛍光強度を測定した。得られた蛍光強度から予め作成した検量線を用いて反応速度vを算出した。各基質濃度[S]0とvから[S]0/20〜[S]0プロットを行い、Km値を算出した。
【0051】
Kmは最大速度Vの半分の速度が得られる基質濃度であり、それによりVを算出した。
【0052】
Kcatはターンオーバー数であり、酵素の活性部位1個について単位時間に転化される基質分子の最大数を示しており、KcatはV/[E]0で表される。ここで[E]0は酵素濃度を示す。また、Kcat/Kmは遊離の酵素と遊離の基質との反応に関連した速度定数であり、その値の極限は酵素−基質複合体の生成初期速度定数と考えられ、特異性定数とも呼ばれている。算出した各化合物の反応速度定数を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1における記号は、次のものを示す。Boc:t−ブトキシカルボニル基、Val:バリン、Leu:ロイシン、Lys:リジン、Glu:グルタミン酸、His:ヒスチジン、MCA:7−アミノ−4−メチルクマリン、Z:カルボベンゾキシ基。
【0055】
上記表1より、本発明合成基質である化合物1及び化合物2は、公知化合物であるBoc−Val−Leu−Lys−MCAに比べ、リジル−ジンジパインに対し10〜100倍大きい反応速度定数を有しており、従ってリジル−ジンジパインの活性を特異的かつ高感度で測定できることが明らかである。
【0056】
また、門脇、山本等の方法(The Journal of Biological Chemistry, 269, 21371−21378(1994))に従って測定した本発明化合物である合成基質のポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)の産生する他の主要なトリプシン様システインプロテアーゼ(アルグージンジパイン(Arg−gingipain))による分解活性は認められなかった。
【0057】
また、A.J.Barrettらの方法(Biochemical Journal、201、189−198(1982))に従って測定した本発明化合物である合成基質のカテプシンB及びLに対する酵素分解活性は弱いものであり、本発明化合物である合成基質はリジル−ジンジパインに対する酵素分解活性を特異的に測定できることが示唆された。
【0058】
【発明の効果】
本発明化合物である合成基質によれば、口腔内中に存在しているポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)が産生し、歯周病に関与する蛋白質分解酵素であるリジル−ジンジパインの活性を特異的かつ高感度で測定することができる。
Claims (4)
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