JP3591855B2 - 色処理装置およびその方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、デバイスに独立な色空間内の色に対応する基本色値を提供するカラープリンタ用のルックアップテーブルを作成する色処理装置およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラーモニタやカラープリンタの有用性が増して、コンピュータのユーザがフルカラーの画像をカラーモニタで見て、カラープリンタによるフルカラー印刷を指示することが日常化して来ている。
しかしながら、カラープリンタとカラーモニタの形成するカラー画像はそれぞれ異なるものである。特に、カラーモニタは発光型の装置であって、色の形成は一般に赤、緑、青の3基本色の光を加法混色することにより行なわれる。一方、印刷された画像は単純に周辺光を反射したものであり、周辺光を介して知覚された印刷画像の色は一般にシアン、マジェンタ、イエロー(時にはブラックも含まれる)の減色法の3基本色に影響される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの混色法は基本的に異なるものであり、結果として、モニタで表示可能な色の範囲はプリンタで印刷可能な色の範囲とは異なっている。1図は、CIE1931色度図であり、モニタに表示可能な色の範囲(即ち「色域」)(領域A)と、プリンタに印刷可能な色の範囲(即ち「色域」)(領域B)を示している。図示のように、モニタが表示出来る色の範囲は一般にプリンタが印刷出来る色の範囲より広い。これは、モニタが光を発する装置であって、より大きな範囲の彩度で色を表示するからである。しかしながら、領域10のように、減色法によるものであるのに印刷画像の方がモニタより広い色範囲を持つような低彩度領域も存在する。
【0004】
印刷可能範囲と表示可能範囲のこのような差異により、以前は表示されたカラー画像の忠実な色再現として認められるようなカラー画像を印刷することは不可能であった。特に、印刷可能な色の領域Bの外に位置する色域外領域11のような領域の色を印刷することは全く不可能であった。従って、こうした色はカラーモニタ上では見ることが出来ても、カラープリンタで印刷することは出来なかった。
【0005】
米国特許第4,941,038号では、色域外色をプリンタ色域内の印刷可能な色に修正するに際し、その色域外色から最短のベクトル距離にある印刷可能な色であって、その印刷不可能な色の色相角度を保持した色を選択するようにしている。しかしながら、人間の色覚に関する実験や観察から、純白色から大きな彩度の色へと引いた一定の色相あるいは色を表す線なるものは、直線ではなくむしろ曲線であるということが判明している。2図の色度図はこれらの曲線のカーブ(いわゆる「アブニー効果」)を示している。青みの緑色領域18のような、一定の色相を示す色線の曲率が比較的小さい領域では、色相角度を保持すると知覚された色相には微かな変化しか現われない。このために、青みの緑色域外の色18aについて、その色相角度をプリンタ色域の縁部10の点18bへ引き戻しても、青みの緑色を印刷することができる。しかし、青みの紫色領域19のように、一定の色を示す線からなる曲率が比較的大きい領域では、色相角度を保持するようにすると、知覚される色相に大きく影響する。かくして、青みの紫色域外色19aに対する色相角度を保持しながら、その色相をプリンタ色域の縁部10の点19bへ引き戻すことは、明らかに青色に見える色相を持つ色が印刷されてしまうという結果になる。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決するためのもので、デバイスに独立な色空間の色を基本色値に変換するとともに、カラープリンタの色域外の色を色域内に変換するルックアップテーブルを作成する際にアブニー効果を補償することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0008】
本発明は、デバイスに独立な色空間内の色に対応する基本色値を提供するカラープリンタ用のルックアップテーブルを作成する際に、カラープリンタによって印刷されたカラーパッチの測色結果からカラープリンタの色域を規定し、デバイスに独立な色空間の色を基本色値に変換するとともに、カラープリンタの色域外の色を色域内に変換するルックアップテーブルを測色結果から作成し、アブニー効果を補償するために、ルックアップテーブルの色相角を調整することを特徴とする。
【0009】
【実施例】
3図は本発明の実施例に係わる印刷装置を示すブロック図である。
図示のように、印刷装置はホストCPU20と、カラーモニタ30と、カラープリンタ40から成っている。ホストCPU20は80286マイクロプロセッサ等の処理回路21と、処理回路21のワークエリアであるランダムアクセスメモリ(「RAM」)22と、処理回路21の静的格納エリアであるリードオンリーメモリ(「ROM」)24と、モニタドライバ25と、プリンタドライバ26とを有する。操作者はキーボード27を介しホストCPU20にアクセスする。キーボード27はインタフェース29により処理回路21に接続されている。キーボードを用いて、操作者は処理回路21に格納されたプログラム命令を実行させて、カラー画像をモニタ30に表示させ、相当するカラー画像をカラープリンタ40に印刷させる。
【0010】
ホストCPU20はディスクドライブ、テープドライブ、カラービデオインタフェース、カラースキャナインタフェース等、他の周辺装置とも接続しているが、こうした装置は説明の簡略化のためにここでは図示されない。こうした装置は、処理回路21に実行される格納プログラム命令と協同作用して、例えばカラー画像をスキャンしてRAM22に格納したり、モニタ30に表示させたり、その画像の色を加工したり、その結果処理された画像をプリンタ40に印刷させたりする。
【0011】
格納されたプログラム命令に従って、処理回路21はモニタ30上にカラー画像を形成する。処理回路21はカラー画像をモニタドライバ25に提供し、モニタドライバ25はモニタ30の各画素についてのRGB値を生成する。RGB値はインタフェース31を介しモニタ30へ提供され、それらの値はモニタ30で表示される。
【0012】
要請に応じて、処理回路21は、カラープリンタ40による印刷のために、カラー画像をプリンタドライバ26にも提供する。プリンタドライバ26は処理回路21からの色値に基づいて、カラー画像の各画素についてCMY値を生成する。CMY値はプリンタテーブル26aまたは境界テーブル26bに従って決定される。プリンタテーブル26aはプリンタ40に印刷可能な全ての色についてCMY値を提供するテーブルである。境界テーブル26bはプリンタ40で印刷不可能な色についてのCMY値を提供するテーブルである。尚、プリンタテーブルは、印刷可能な色から印刷不可能な色への遷移を滑らかにするために、幾つかの印刷不可能な色のCMY値をも含んでいてもよい。さらに、ブラック(以下「K」)値を含むようにしてもよい。CMYK値はインタフェース41を介してプリンタ40に提供され、プリンタ40内のビットマップメモリ42に格納される。ビットマップメモリ42は印刷される画像のフルビットマップ画像を格納してもよいし、あるいは、ある領域あるいは部分のビットマップ画像を格納するようにしてもよい。ビットマップメモリ42に十分なカラーデータが格納されると、カラープリンタヘッド44が記録紙と近接したプラテン上を往復する。本実施例では、プリントヘッド44は縦4列横8段の32個のインクジェットノズルを備えている。第1列のノズルは全てシアンのインク滴を吐出する。第2列のノズルは全てマジェンタのインク滴を吐出し、第3列のノズルは全てイエローのインク滴を吐出する。第4列のノズルは全てブラックのインク滴を吐出する。プリントヘッド44がプラテンを1往復すると8行の画素が印刷されるように、これらのノズルはビットマップメモリ42のカラーデータに従って独立に制御される。
【0013】
4図は、プリンタドライバ26が処理回路21に提供されたカラーデータからCMYK値を選択する動作を説明するためのフローチャートである。ステップS401では、プリンタドライバ26は、ビットマップ42内のある位置(x、y)についてのRGB値を得る。ステップS402では、プリンタドライバ26はRGB値から装置に依存しない(以下、「デバイス・インディペンデント」という)色座標値を形成する。好ましくは、このデバイス・インディペンデントな色座標はCIELAB色座標である。これは、CIELAB色空間は知覚的に均一で、CIELAB色空間内の等しい大きさの区間は、いずれにおいても、知覚される色の等しい大きさの変化に一致するためである。さらに、CIELAB色空間は色相や輝度に関して円柱状の座標にして見ることができるので、色域マップを定義しやすい直覚的な色座標である。
【0014】
ステップS403では、輝度座標がCIELAB空間のL*軸上で極端な輝度部分(複数)において圧縮される。尚、圧縮ステップS403は、ステップS402からのL*値を数学的に操作することにより直接的に実行してもよいし、あるいは、修正したCMY値をプリンタテーブルや境界テーブルに格納することにより間接的に実行するようにしてもよい。幾つかの場合には好ましいことであるが、間接的に行う場合には、プリンタテーブルも境界テーブルも予め圧縮された値を格納するようにする。即ち、プリンタテーブルと境界テーブルに於ては、例えば輝度L*=99での値が実際には輝度L*=94に相当するように調整されている。同様に、輝度L*=7の値は実際は輝度L*=26に相当する。輝度レンジの中央部分、例えばL*=38〜90における値は未修正のままである。これにより、データ操作による直接的な圧縮を必要とせずに輝度の圧縮が行なえる。
【0015】
圧縮ステップS403はオプションのステップである。しかし、このステップは極端な輝度を有する色でも輝度の変化を知覚できるように印刷することを保証するものなので、そのためこのステップを実行することが好ましい。即ち、モニタ30は発光体によって色を表示するため、プリンタ40よりも高い輝度値を持つ色を表示できようになっているのに対し、プリンタ40の輝度の最高値はカラー画像が形成される紙の白さにより制限されるからである。さらに、モニタ30は発行体の光を完全に消すことができるため、プリンタ40が印刷したものよりも低い輝度値を持つ色を表示できる。これは、ブラックのインクですら周辺光をいくらかは反射するからである。従って、ある色の印刷を確実に行うためには、たとえ最高値と最低値の輝度で印刷する場合でも、ステップS402で決定した輝度値をプリンタ40で印刷可能な範囲に圧縮することが望ましい。
【0016】
ステップS404では、ステップS402、S403で生成されたL*、a*、b*座標がプリンタテーブル26aに網羅されている範囲内にあるかどうかが調べられる。そのL*、a*、b*座標がプリンタテーブル26aの範囲内であるなら、ステップS405へ進んで、プリンタテーブル26a内でL*、a*、b*座標位置(このL*、a*、b*座標位置は、離散値のみ格納されているので、実際にはそのL*、a*、b*に最も近い位置となる)に相当するCMY値を参照(ルックアップ)する。一方、L*、a*、b*座標がプリンタテーブル26aの範囲外であった場合、ステップS406へ進み、下記の式に従って、色相角度θをa*、b*値より得る。
【0017】
θ = arctan (b*/a*)
それから、境界テーブルをルックアップするステップS407へ進み、輝度L*とステップS306で求めた色相角度θに相当する境界テーブル内の最も近い位置のCMY値をルックアップする。
いずれの場合もステップS408へ進み、それらのCMY値はビットマップメモリ42の(x,y)位置に格納される。必要であれば、CMY値は格納の前に修正されてもよく、例えば、これらのテーブルに格納された実際のL*、a*、b*値と上記のように算出された所望の値との差を補間処理により調整するようにしてもよい。
【0018】
ステップS409では、プリンタドライバ26がビットマップメモリが完成したかどうかを判断する。ビットマップメモリが完成していない場合は、ステップS401へ戻って、ビットマップメモリの次の位置(x,y)のために次のRGB値を得る。一方、ビットマップメモリ全体が完成している場合、あるいは、ビットマップメモリ内において既に十分な領域(ヘッド44のインクジェットノズルの8行に相当する8行の長さのバンドなど)が完成している場合、ステップS410へ進み、ガンマ補正が行なわれる。ガンマ補正により、輝度を均一に配分するように、ビットマップメモリのCMY値が調整される。ステップS411では、下色除去が行なわれてビットマップメモリの位置(x、y)に対するブラック値を得る。本実施例の下色除去はCMY値の中の最小値を選択してその値をブラック値に割り当てるという単純な方法で行なわれる。その後、CMY値の夫々はブラック値を引き算されて調整される。
【0019】
ステップS410、S411の順序は決まったものではなく、例えば、連続トーンや、ディザ法や誤差拡散法など特定のカラー印刷技術を使用するために順序を入れ替えてもよい。
ステップS412では、上記処理の結果得られたCMY値を使用してカラー印刷が始められる。
【0020】
5図はプリンタテーブル26aと境界テーブル26bの形成方法を説明するフローチャートである。図示のフロー手順は各プリンタに付き1度だけ行なうか、あるいは再調整の必要が生じた時に行なえばよい。5図のフロー手順は同一の機種番号のプリンタなど1組のプリンタに1度だけ行なって、プリンタの工場調整の一部としてソフトの形で操作者に提供する方がより好ましい。
【0021】
ステップS501では、プリンタ40で印刷可能な色の色域または範囲を測定する。好ましくは、これはプリンタ40で印刷可能な全ての色の、非常に大きいサブセットか若しくは完全なセットを印刷することによって行なう。例えば、本実施例で使用するプリンタにおいては、CMY、K値の夫々が0〜64の数値の65階調で印刷される。このように、例えば、17個のC値、即ち数値0、4、8、12、...64が印刷され、そして17個のM値、17個のY値が同様に印刷される。これら夫々17個のCMY値のあらゆる可能な組み合わせが印刷され、結局17×17×17=4,913個のカラーパッチができる。
【0022】
上記有彩色(hued colors)に加えて、全ての可能な無彩色値(gray values)が、この場合は48個の無彩色値が既に印刷済みの17色の上に印刷される。
上記のようなプリンタ色域のサンプリングにより、有彩色と共に純粋な無彩色が印刷されるのが了解されるであろう。サンプリング方法に何を使用する場合でも、適当な無彩色の再現はカラー再現において望ましい特性なので、この純粋無彩色の印刷の特性は保持されるべきである。
【0023】
4,913個のカラーパッチと付加された48個のグレーパッチの各々について色が前述のCIELAB色空間のようなデバイス・インディペンデントな色空間で測定される。こうして、ステップS501の最後においては、4,913+48=4,961個のユニークなCMY色の組み合わせの各々について、L*、a*、b*座標が測定され、これによりプリンタ色域を規定する。
【0024】
ステップS502では、CIELAB座標をCMY座標へ転換するための数学的な平滑化関数を得る。本実施例では、CIELAB空間からCMY空間への3次元の最少二乗法によるフィットを選んだ。つまり、C0からC19の係数、m0からm19、y0からy19の係数が、公知の最少二乗法によるフィッテイングの技術を用いて、ステップS501で測定された色域に対して最少二乗の意味で最良のフィットを与えるように得られた。
【0025】
C = c0 + c1L* + c2a* + c3b* + c4L*2 + c5a*2 + c6b*2 + c7L*a* + c8L*b* + c9a*b* + c10L*3 +c11a*3 + c12b*3 + c13L*2a* + c14L*a*2 + c15L*2b* + c16L*b*2 + c17a*2b* + c18a*b*2 + c19L* a*b* …(1)
M = m0 + m1L* + m2a* + m3b* + m4L*2 + m5a*2 + m6b*2 + m7L*a* + m8L*b* + m9a*b* + m10L*3 +m11a*3 + m12b*3 + m13L*2a* + m14L*a*2 + m15L*2b* + m16L*b*2 + m17a*2b* + m18a*b*2 + m19L* a*b* …(2)
Y = y0 + y1L* + y2a* + y3b* + y4L*2 + y5a*2 + y6b*2 + y7L*a* + y8L*b* + y9a*b* + y10L*3 +y11a*3 + y12b*3 + y13L*2a* + y14L*a*2 + y15L*2b* + y16L*b*2 +y17a*2b* + y18a*b*2 + y19L* a*b* …(3)
ステップS502では、ステップS401の測定値をデバイス・インディペンデントな色座標空間からCMY座標空間へ変換(fit)する何らかの数学関数を使用するようにしてもよい。しかしながら、その変換(mapping)関数は、ステップS501で発生したかも知れない測定誤差を除去するために平滑化処理を含んでいることが望ましい。
【0026】
さらに、ステップS502で変換を行なう前に、ステップS501で測定された幾つかのポイントに重み付け処理することが望ましい。例えば、適切な肌色階調の再現はカラー印刷の重要な特性である。従って、場合によっては、肌色の領域に当たる色を他の色より重みを増して処理を行なうことが望ましいからである。
【0027】
ステップS503では、デバイス・インディペンデントな色空間、つまりCIELAB色空間が等しいサイズの区間に分割される。そうした区間の1つは、L*軸を中心にするなどしてL*軸を含んでいる。このような分割が空白のプリンタテーブルを提供する。プリンタテーブルのサイズは、典型的なカラーモニタの色域に加えてプリンタ色域も含むようにすることが好ましい。例えば、図1によると、プリンタテーブルは一般には12で示されるカラー領域を含んでいる方が望ましい。プリンタテーブルの区間のサイズは、プリンタテーブルの格納限度に十分な考慮を払って、できるだけ小さいものでなければならない。例えば、微細な色相や彩度の階調変化よりも微細な輝度の階調変化の方がより重要であるということが明らかになっている。輝度軸をΔL* = 1(輝度L*の範囲は0〜100)の区間に分割すると、十分な輝度の階調変化が得られることも決まっている。一方、そうした微細な階調変化は通常は色相については必要とされず、Δa* = Δb* = 3の区間が適切な色相の階調変化を与えることが分かっている(a*、b*の範囲は輝度軸の中心、即ち、L* = 50の近傍でおよそ−100から+100)。
【0028】
上述の考慮に加えて、プリンタ色域は各輝度値に対し同一ではないということにも注目しなければならない。特に、色域は、極端な輝度域では比較的に小さく、輝度軸の中心では比較的大きい。6図はCIELAB空間のプリンタテーブルへの典型的な分割を示している。しかし、ここでは、全ての輝度および色相についての階調変化は説明の簡略化のために図示されない。L* = 10のような比較的低い輝度値では、a*、b*軸の比較的小さい矩形グリッドがプリンタ色域を展開するのに適当である。同様に、L* = 90のような比較的高い輝度値では、a*、b*軸の比較的小さい矩形グリッドがプリンタ色域を格納するのに適当である。しかし、L* = 50のような中間の輝度値では、プリンタ色域を展開するにはa*、b*軸の比較的大きい矩形グリッドが必要である。
【0029】
さらに6図に示すように、各輝度レベルの矩形グリッドはL*軸を含んでいる(5図ではL*軸上に集中している)。つまり、矩形グリッド内には正確にa* =b* = 0と一致するセルが存在する。その中心点、即ちa* = b* = 0は純粋な無彩色に相当し、上述のように、適切なカラー再現のための純粋な無彩色として適当に再現される。
【0030】
実際は、プリンタテーブルにはプリンタ色域よりも多くの色が含まれていることが好ましく、典型的なモニタの色域に見られる色が含まれていることが最も望ましい。これにより、プリンタテーブルは、プリンタ色域の縁部分の色を境界テーブルの色に滑らかに遷移させ、プリンタ色域の外の領域における色差分を保存する遷移値を含むことになる。
【0031】
ステップS504では、ステップS502で求められた変換関数を用いて、C、M、Y値をプリンタテーブルのL*軸周囲に挿入する。連続階調印刷とは対照的なディジタルカラー印刷に対応して、端数値であるC、M、Y値は切り捨てあるいは四捨五入によって整数値にされる。各輝度レベルの矩形グリッド全体は完全に数値で満たされることはなく、プリンタ色域内として知られている部分にのみ数値が入っている。さらに、ちょうどL*軸上のセル、つまりa* = b* = 0の点もまた、変換関数によっては変換されない。むしろ、これらの点に対するCMY値は、ステップS501で測定されたプリンタの無彩色を相当するL*値を用いて決定することにより、ステップS505で挿入される。これにより、前記変換関数で導入された平滑処理によっては色相値を純粋無彩値に持ち込まないことが保証される。
【0032】
ステップS506、S507では、プリンタテーブルのCMY値を印刷不可能な色に対して修正する。印刷不可能な色はステップS502で選択された変換関数による欠陥(artifacts)のために生じるものである。例えば、使用された変換関数では、7図の領域45のような、プリンタ色域にはない不適切な領域がプリンタテーブル内に生じる。こうした欠陥は、L*軸周囲の領域に接続していない全ての領域を除去することにより、ステップS506で除去する。
【0033】
印刷不可能な色は8図に示すような状況からも生じる。8図において、符号47は任意の輝度値L*に対するプリンタ色域の縁部を表している。L*軸からの凡ゆる放射状の線が縁部47と唯一の点で交わらないため、図示のプリンタ色域は放射状の凸形をしていない。特に、放射状線48は縁部47と49a、49b、49cの3点で交わっている。49a、49bの間の領域は放射状の凹部を成し、プリンタテーブルの不適切なCMY値を生成する要因になっている。従って、ステップS507で、プリンタテーブルの値を放射状に凸形となるように修正する。
【0034】
9図はこのプロセスを示している。9図は任意の輝度値L*に対するa*、b*軸内の矩形グリッドを示している。セル51〜55は全てプリンタ色域内の印刷可能な値を含んでいる。しかしながら、セル59は、角度θの放射状線がプリンタ色域の2つのセル(53、56)を通るために放射状に凹形である。従って、あるCMY値をセル59に割り当てることによりテーブルを放射状に凸形にする。その値はその色(図中角度θ)の色相をできるだけ保持し、所望する値に最も近い彩度値を選択することによって選択される。こうして、9図では、セル59の値には、セル51から55のうちの、色相値と彩度値においてより近い値を有するセル(複数)に依存して、そのセル51から55のうちの1つのセルの値を割り当てることができる。9図では、C = 1、M = 18、 Y = 14の値が選択されている。
【0035】
ステップS508で各プリンタテーブルの遷移色を求める。10図は遷移色に対するCMY値を選択する様子を示している。図中、符号60はプリンタ色域の縁部であり、61は、上述のように、典型的なカラーモニタの縁部にほぼ一致するプリンタテーブル色域の縁部である。縁部60、61間の領域の遷移色の各々について、遷移色から一定の角度αの位置にあるプリンタ色域の縁部60上の色を遷移色に対して選択する。尚、輝度のいずれの変化も許容され得るが、それは、輝度変化の範囲が任意のしきい値にリミットされないことを意味する。例えば、遷移色62に対しては、プリンタ色域の縁部60上の点64が選択されるが、これは、点64が点62から角度αの位置にあるからである。同様に、点65のように、遷移領域の各点に対して、点66のような、一定の角度αの位置にあるプリンタ色域の縁部60上の該当する点が選択される。プリンタ色域の最大彩度点67を越える遷移色に対しては、角度αは下向きに取る。逆に、色69のように、最大彩度点67未満の遷移色に対しては、角度αは上向きに取る。最大彩度点67から2αを成すウェッジ(wedge)領域70内の色に対しては、最大彩度点67が選択される。こうして、ウェッジ70内の全色が色67に変換される。縁部60、61間の遷移色が最も滑らかな色の変化をもたらすことが確実になるためにも、プリンタ色域の縁部60上における彩度については、一定の角度αの展開を行う前に、最小彩度から単調に増加して最大彩度点へ至り、最小彩度へ単調に減少するか否かを確かめることが望ましい。もし彩度の変化が単調ではない場合、一定の角度の展開の前に、プリンタ色域の縁部の色彩度をその変化を排除するように修正する。
【0036】
角度αを15°とすると、彩度を十分に増加させ、且つ、明度に不合理に大きな変化を起こさずに満足な結果を生むということが判明している。αの他の値、例えば10°、20°も適用できる。
ステップS509では境界テーブル26bを作成する。プリンタテーブル26aが各輝度値に対してa*、b*軸の矩形グリッドとして形成されるのに対し、境界テーブルはプリンタテーブルの各輝度値に対して1つのホイールとして形成される。こうして、11図に示すように、プリンタテーブルが存在する輝度値の夫々に対して1つのホイール状の境界テーブルが提供され、1つの境界テーブルは夫々のプリンタテーブルに対応している。境界テーブルは複数のセルを有し、それらセルはa*,b*座標の関数として次のように計算された色相角度θでアクセスされる。
【0037】
θ = arctan (b*/a*)
12図は境界テーブルとプリンタテーブルの対応を示している。プリンタテーブル26aが任意の輝度値L*に対する矩形グリッド状のテーブルであるのに対し、境界テーブル26bはa* = b* = 0を中心とするホイール状のテーブルである。境界テーブルの個々のセルは、色相に対応するa*、b*軸内の角度θでアクセスされる。実験的には、各境界テーブルにおける360個のセルに相当する1度の増加が、色相の階調変化を適切に与えることが判明している。しかし、これは下記に13図を参照して説明するように修正することができる。
【0038】
ステップS510では、境界テーブルの各セルに対するCMY値が、プリンタテーブルの遷移色に対するCMY値を選択するのと同様な方法で選択される。このようにして、境界テーブル色なるものが、境界テーブルから一定の角度α(プリンタテーブルで使用したものと同一のα)の位置にあるプリンタ色域の縁部色から選択される。前述したように、角度αは、境界テーブル色が最大プリンタ彩度点よりも上にあるか下にあるかによって、上向き又は下向きに取るようにし、境界色テーブルがウェッジ70内にある時は最大プリンタ彩度点にリミットされる。
【0039】
ステップS510では、境界テーブルの色の彩度が滑らかに変化していることを確認するために境界テーブル値を調べる。この様子は、a*軸とb*軸の任意の輝度値L*におけるプリンタ色域70を示す13図で説明される。上述のように、色71のような、プリンタ色域の外に位置する色は、色相角度を保持しながらプリンタ色域の境界色72へ変換される。特に、領域74のように印刷可能な彩度が急速に変化するような領域では、色相のわずかな変化が境界テーブルの彩度に急速な変化をもたらす。例えば、色相角度がθ1からθ2へ変化すると、色相の小さな変化だけでも彩度が比較的大きく変化する。彩度にそうした大きな変化があると、印刷した時に不自然に見える。
【0040】
このように不自然な印刷結果を避けるために、境界テーブルのサイズを、確実に彩度が滑らかに変化するべく色相に十分微細な増加が現われるようになるまで、大きくする。境界テーブルが増加されると、ステップS509の計算は新しい境界テーブルのCMY値を満たすように繰り返される。
ステップS511では、プリンタテーブルのCMY値を調べて修正し、CMYが滑らかに無彩色(L*軸)に混色するのを確実にする。詳しくは、離散的な輝度レベルでは、L*軸に近いプリンタテーブル色が無彩色に滑らかに混色するように、プリンタテーブル色を再決定する。
【0041】
ステップS512では、プリンタテーブルを矩形に完成する。より詳しくは、このステップまででは、CMY値は、プリンタテーブルの、プリンタ色域60内の領域(ステップS504、S505)とプリンタ色域と境界テーブルとの間の遷移領域61にしか挿入されていなかった(ステップS509)。ステップS502では、12図の69のようなプリンタテーブルの残りのセルについて色相角度を算出し、12図の68で表すような色相角度の境界テーブルの色を挿入する。
【0042】
ステップS513では、アブニー効果を補償するために、プリンタテーブルと境界テーブルの色相角度がワープされる。具体的には、色域外の色に対するCMY値(この値は、この時点ではプリンタテーブルと境界テーブルに記憶されている)は、ステップS508に関連して前述したように、全て一定の角度の展開に基づいている。しかし、2図に示すように、彩度の高い色に関しては、一定の角度を保持しながらプリンタ色域の縁部へ戻すという展開を行うと、アブニー効果によって知覚される色相に変化をもたらす。例えば前述のように、一定の角度の展開によって、高い彩度の(しかし印刷不可能な)紫みの青色19aは、プリンタ色域の縁部のより低い彩度の紫色(19bで示される)に変えられてしまう。
【0043】
この効果を補償するために、プリンタテーブルと境界テーブルの色相角度をワープさせる(歪ませる)。より詳しくは、プリンタテーブルと境界テーブルの両方に対して、1つの色相角度に対するCMY値を他の異なる1つの色相角度へ転移させ、印刷色に知覚される色相を保持するようにする。14、15図は、θ=255°からθ=333°間にある色相角度θにある青/紫の色空間領域について、このワープを示している。
【0044】
14図はワープ前のプリンタテーブル80と、ワープ後におけるそのプリンタテーブル81を示している。14図のこれらのプリンタテーブルはa*、b*面における任意のプリンタテーブルに対するものであり、任意の輝度値L*に対するものである。14図に示すワープは、ステップS503で選択されたL*値に対するプリンタテーブルの各々について実行されるということは明らかである。14図に示すように、青色領域82aは相当するワープ青色領域82bへ拡張されている。これにより、色域外の高い彩度の青色を印刷するという命令に対して印刷されるCMY値が、紫みの青よりもむしろ青い色相の色となることが確実にされる。例えば、高い彩度の色域外の青色84は、ワープされないテーブル80に従って印刷すると、紫みの青色になるが、ワープされたテーブル81に従って印刷すると青色となる。
【0045】
さらなる色相角度ワープにより、領域85aのCMY値が領域85bに変換(写像)され、また、領域86aから86bへと変換される。変換の詳細は下記の通りである。
色相角度255°〜305°:
ワープ角度[255+ang]=255+0.5*ang
但し、0<ang<50°である。
色相角度305°〜309°:
ワープ角度[305+ang]=280+1.25*ang
但し、0<ang<4°である。
色相角度309°〜333°:
ワープ角度[309+ang]=285+2*ang
但し、0<ang<24°である。
こうして、未ワープ領域255°〜280°は領域255°〜305°へ拡張されることによってワープされ、未ワープ領域280°〜285°は領域305°〜309°へ圧縮することによってワープされる。また、未ワープ領域285°〜333°は領域309°〜333°へ圧縮することによってワープされる。これらのワープされた領域は連続性を保っているが、未ワープ領域と同一の端部点(ここでは255°及び333°)を持っている。
【0046】
レッド、シアンにおいても同様のワープを行なう。レッドに対するワープ処理は次の通りである。
色相角度10°〜40°:
ワープ角度[10+ang]=10+0.5*ang
但し、0<ang<30°である。
色相角度40°〜53°:
ワープ角度[40+ang]=25+1.25*ang
但し、0<ang<12°である。
色相角度52°〜76°:
ワープ角度[52+ang]=40+1.5*ang
但し、0<ang<24°である。
このように、未ワープ領域10°〜25°は領域10°〜40°へ拡張されることによってワープされ、未ワープ領域25°〜40°は領域40°〜52°へ圧縮することによってワープされる。また、未ワープ領域40°〜76°は領域52°〜76°へ圧縮することによってワープされる。
【0047】
シアンに対するワープ処理は次の通りである。
色相角度170°〜195°:
ワープ角度[170+ang]=170+2.0*ang
但し、0<ang<25°である。
色相角度195°〜245°:
ワープ角度[195+ang]=220+0.5*ang
但し、0<ang<50°である。
このように、未ワープ領域170°〜220°は領域170°〜195°へ圧縮することによってワープされ、未ワープ領域220°〜245°は領域195°〜245°へ拡張することによってワープされる。
【0048】
プリンタテーブルに対して行なわれたのと同じワープ処理が、15図に示すように、境界テーブルについても行なわれる。前述と同様、この処理によって、色87のような色域外の青色の印刷命令に対しては、未ワープ境界テーブルに従って印刷すると紫みの青の色相として印刷されてしまうが、ワープ処理された境界テーブルに従って印刷すると確実に青い色相の色となる。
【0049】
上記のワープにより、色域内の色も色域外の色もワープさせるため、プリンタテーブル及び境界テーブル内の色に滑らかさを保持することができる。色域外色のみについてワープさせることも可能であるが、こうするとプリンタ色域の縁部の色の連続性が悪くなる。さらに、たとえ色域内の色をワープさせたために色がずれたとしても、その色相角度の線は色域内の色については互いに近くなり、高彩度の色域外の色については互いに離れるようになるため、ずれの量はあまり問題にならないということが、実験的に判明している。
【0050】
上述のワープ技術では、同一色相角度にある全色を彩度とは無関係に等しくワープさせるが、彩度に基づくファクタをワープに導入することも可能である。その場合、さらに高い彩度の色が比較的低い彩度の色へとワープされる。
ステップS514では、プリンタテーブル及び境界テーブルの黄色領域にある色を、その黄色領域が広がるように修正する。詳しく説明すると、2図に示すように、プリンタの純黄色が大変狭いプリンタ色域に陥ってしまい、ユーザに見つけ難い(モニタの黄色範囲はより広いので)ものとなっていた。純黄色に関して印刷可能な範囲は大変狭いため、大抵ユーザは所望の純黄色よりも緑みの黄色を選んでしまう。そこで、ステップS514では黄領域を拡大する。この黄領域の拡大は下記の色相角度のワープで行うことができる。
色相角度87°〜91°:
ワープ角度[87+ang]=87+1.25*ang
但し、0<ang<4°である。
色相角度91°〜97°:
ワープ角度[91+ang]=92
但し、0<ang<6°である。
色相角度97°〜112°:
ワープ角度[97+ang]=92+0.5*ang
但し、0<ang<15°である。
色相角度112°〜132°:
ワープ角度[112+ang]=99.5+1.25*ang
但し、0<ang<20°である。
色相角度132°〜147°:
ワープ角度[112+ang]=124.5+1.5*ang
但し、0<ang<15°である。
前述のステップS501からS514を自動的に実行するコンピュータプログラムが開発されており、付録のマイクロフィッシュの形で提出されるであろう。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、デバイスに独立な色空間の色を基本色値に変換するとともに、カラープリンタの色域外の色を色域内に変換するルックアップテーブルを作成する際にアブニー効果を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリンタで印刷可能な色域とモニタ上に表示可能な色域の関係を示す色度図である。
【図2】アブニー効果を特徴付ける一定の色曲線を示す色度図である。
【図3】本実施例に関わる印刷装置を示すブロック図である。
【図4】3図の装置のプリンタドライバによる、カラープリンタのCMYK値の選択を説明するフローチャートである。
【図5a】プリンタテーブルと境界テーブルの形成方法を説明するフローチャートである。
【図5b】プリンタテーブルと境界テーブルの形成方法を説明するフローチャートである。
【図6】CIELAB色空間からプリンタテーブルへの典型的な分割を示す図である。
【図7】未接続領域がプリンタテーブルから除去される様子を示す図である。
【図8】プリンタ色域における放射状に凹形の領域を示す図である。
【図9】プリンタテーブルを放射状に凸形に形成することにより凹型領域を除去する様子を示す図である。
【図10】プリンタテーブルの遷移領域において、各セルに対してCMY値を選択する様子を示す図である。
【図11】境界テーブルの配置を示す図である。
【図12】任意の輝度値L*に対するCIELAB色空間におけるプリンタテーブルと境界テーブルの関係を示す図である。
【図13】a*及びb*軸における任意の輝度値L*のプリンタ色域を示す図である。
【図14】プリンタテーブルに対して色相角度をワープさせる様子を示す図である。
【図15】境界テーブルに対して色相角度をワープさせる様子を示す図である。
Claims (4)
- デバイスに独立な色空間内の色に対応する基本色値を提供するカラープリンタ用のルックアップテーブルを作成する色処理方法であって、
前記カラープリンタによって印刷されたカラーパッチの測色結果から前記カラープリンタの色域を規定し、
前記デバイスに独立な色空間の色を前記基本色値に変換するとともに、前記カラープリンタの色域外の色を前記色域内に変換するルックアップテーブルを前記測色結果から作成し、
アブニー効果を補償するために、前記ルックアップテーブルの色相角を調整することを特徴とする色処理方法。 - 前記調整には、彩度に応じたファクタも用いることを特徴とする請求項1に記載された色処理方法。
- 前記調整は、青色領域の色相角を伸張し、青紫色および紫色領域の色相角を圧縮することを特徴とする請求項1に記載された色処理方法。
- デバイスに独立な色空間内の色に対応する基本色値を提供するカラープリンタ用のルックアップテーブルを作成する色処理装置であって、
前記カラープリンタによって印刷されたカラーパッチの測色結果から前記カラープリンタの色域を規定する規定手段と、
前記デバイスに独立な色空間の色を前記基本色値に変換するとともに、前記カラープリンタの色域外の色を前記色域内に変換するルックアップテーブルを前記測色結果から作成する作成手段と、
アブニー効果を補償するために、前記ルックアップテーブルの色相角を調整する調整手段とを有することを特徴とする色処理装置。
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