JP3591641B2 - リサイクル型プライマー組成物、その再剥離方法 - Google Patents

リサイクル型プライマー組成物、その再剥離方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リサイクル型プライマー組成物およびその再剥離方法に関する。更に詳しくは、被覆材の裏面が難接着材料である面に対して、プライマー層を形成し、そのプライマー層が熱膨張による剥離可能性を付与することが可能なプライマー組成物、および、そのプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材の積層体において、プライマー層を形成した被覆材を短時間で簡単に再剥離する方法に関する。
【0002】
このプライマー組成物を用いた被覆材からなる積層体は、使用環境において耐久性を必要とし、不要となればリサイクルすることが可能な産業用の積層体で、リサイクルを好適に実施できる。
【0003】
【従来の技術】
従来からプラスチックシート、ゴムシート、樹脂板、金属板の表面に美粧性を与え、これを合板などの木質ボード、石膏ボードなどの無機質ボード、鋼板、アルミ板などの基材に積層してなる積層体は、プラスチックオーバーレイ化粧板、化粧パネル材料、プラスチックオーバーレイ鋼板(または金属板)として、オフィス、マンション、住宅などの建材、住宅機器、間仕切りパネル、エレベータの内装材、あるいは、車両、船舶、航空機などの内装材、仕切り材としてあらゆる産業界で広く用いられている。これらは、被覆材として美粧性を付与したプラスチックシート、樹脂板、金属板が用いられる。この被覆材の裏面は、プラスチックシートにおいては裏面もプラスチックであるため、表面張力が低い難接着材料であり、金属材料においては腐食防止のため塗装、ポリマーコーティング、酸化処理がしてあるため、これも難接着材料である。またゴムシートでは離形剤が付着しているため、これも難接着材料である。
【0004】
本発明者らは、特願2000−306867、特願2000−323253において、リサイクル可能な水性接着剤を提案した。これら水性接着剤を用いて製造したプラスチックオーバーレイ化粧板、金属パネルなどの積層板は、使用環境において優れた接着性、耐水性、耐熱性などの接着機能を与え、使用後は加熱により再剥離することでリサイクルを可能にするものであった。
【0005】
しかし、この接着剤は高価な熱膨張性微粒中空体を含有するため、接着剤の価格が高いとの難点があった。また接着剤が水性であるため、少なくとも一方が通気性・吸水性を備えた多孔質材料であるとの制約があった。さらに接着剤が生産ライン適性(ロールスプレッダ適性、ウエットタック)、環境・安全・衛生を考慮するため、水性タイプとなるため、無処理ポリプロピレンシート、裏面フッ素ポリマーコートなど表面張力が極めて低い被覆材は、接着が不可能であった。
【0006】
従って、リサイクル可能な水性接着剤は、リデゥース、リユース、リサイクルを可能にする循環型社会向けの有用な解決技術であるが、さらに広範に利用できる接着技術を開発すれば、産業上の有用性が増加し、循環型社会に向けての著しい社会的な発展と貢献につながる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、裏面が難接着材料である各種被覆材に優れた接着を与え、使用時においては安心して使用できる基本性能を備え、将来に再剥離などのリサイクル技術まで踏み込んで考慮したプライマー組成物を提供し、さらにこのプライマー組成物を用いた被覆材を基材に積層した積層体から、将来簡単に該被覆材を再剥離できる剥離方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、熱膨張性微粒中空体を配合したリサイクル型水性接着剤の再剥離機能のメカニズムに着目した。ポリマーコートしたカラー鋼板など裏面が難接着である被覆材と接着しやすい多孔質ボードをリサイクル型水性接着剤で接着した後、加熱工程を与えた場合、必ず、難接着材料と膨張した接着剤の形成皮膜の界面で剥離が発生する。ならば、これらリサイクル型水性接着剤を、難接着である被覆材裏面に薄くコートして乾かしてしまえば、どうであろうか。
【0009】
リサイクル型水性接着剤において、高価な熱膨張性微粒中空体の配合量を減らしたいが、減らせば、再剥離機能が低下する。しかし、必要量の熱膨張性微粒中空体を含有するポリマー水分散液を、被覆材裏面に薄くコートし、乾燥させれば、被覆材裏面にプライマー層が形成できる。この被覆材と各種基材とを、市販されている通常の接着剤(熱膨張性微粒中空体を含まない)を用いて接着した場合、被覆材−膨張機能を有するプライマー層−通常の接着剤層−各種基材の構成となる。この積層体を加熱すれば、被覆材裏面と、膨張したプライマー層で再剥離が発生する。形成プライマー層に接着性が乏しい接着剤を誤って使用した場合、プライマー層と接着剤層との間で再剥離が発生することがまれにあるが、再剥離現象は、原則的に難接着である被覆材裏面と膨張プライマー層の界面で発生する。そして膨張機能を有しない通常の接着剤と基材の界面では発生しない。いずれにしても被覆材とプライマー層間、またはまれにプライマー層と接着剤層間で剥離が発生することはあっても、被覆材と基材の分離は容易に行える。これは再剥離可能な接着剤と同様であるが、決定的な違いは、塗布量の節約にある。すなわち、プライマー層として、薄くコートすれば、必要な熱膨張性微粒中空体の含有量を維持しながら、加熱による再剥離性を与えることができる。これは一定の塗布量が必要な接着剤に比べて、はるかに塗布量が節約できるため、この解決手段は経済性が極めて優れる。
【0010】
さらに被覆材において、表面張力が低い無処理のポリプロピレンシートの場合、現状技術水準にある水性接着剤で常温接着することは不可能である。永久粘着を示す水性粘着剤は見かけ上密着しているが、直射日光の照射(70℃程度)等、積層体の使用環境において、簡単に剥離が起こる。このような難接着材料であっても、溶剤系接着剤ならば、単なる粘着による密着でなく、使用環境に耐えうる接着は可能となる。例えばボンドGP100(コニシ(株)製)のようなポリプロピレンに適用可能で、ある程度の耐熱性を備えた溶剤系接着剤は存在している。すなわち、このような溶剤系接着剤に熱膨張性微粒中空体を配合し、これをプライマー組成物として裏面に薄く塗布して乾燥させた場合、密着性に優れた熱膨張機能を有するプライマー層を備えたポリプロピレンシートが出来上がる。これと多孔質材料を、通常の水性接着剤で貼り合せて接着品質のよい積層板を得ることが可能となる。つまり、表面張力が330μN/cm以下の難接着材料であって、水性接着剤では接着が難しい被覆材であっても、これに接着できる溶剤系プライマー組成物、液状ポリマーを探し、これらに熱膨張性微粒中空体を配合してプライマー層を形成しておけばよい。これらプライマー層は、その形成皮膜自身が他の接着剤に対して接着性が良好なため、通常の接着剤で接着できる。例えば、このような熱膨張性プライマー層を持つポリプロピレンシートは、生産ライン適性に優れた水性接着剤で接着作業ができる。ならば、この解決手段は、難接着性を備えた被覆材の選択の範囲、自由度を極めて広げ、リサイクル機能を与えることができる。
【0011】
では、被覆材がPETシート、アルミ箔のような非多孔質であって、基材が鋼板、樹脂板のような非多孔質材料の場合であった場合はどうであろうか。一般に広い面積の非多孔質同志の接着は、水分、有機溶剤など揮発分を大量に含む接着剤では、揮発分の逃げ場がないため、非多孔質同志の接着はエポキシ樹脂系接着剤のような2液反応型接着剤で接着するか、または、特殊な接着方法(すなわちヒートシール接着、コンタクト接着)を適用しない限り接着できない。では、プラスチックシート、金属板など非多孔質材料裏面に、熱膨張性プライマー組成物を塗布してプライマー層を形成させておけば、基材が揮発分の逃げ場がない鋼板のような非多孔質基材であっても、エポキシ系接着剤等の無溶剤反応型接着剤で積層体を得ることができる。このように、プライマー層を形成することにより、基材が非多孔質材料相互の接着においても、再剥離性を備えた積層板を与えることができる。
【0012】
このように熱膨張性プライマー組成物を用いて、プライマー層を形成した被覆材を、各種基材に対して市販の接着剤を用いて接着した積層体を、150℃程度に調温した加熱炉に20分程度挿入したところ、被覆材は自然剥離を発生しないが、直ちに手で剥離することで容易に再剥離することを見出した。さらに加熱炉の挿入時間を60分程度に延長したところ、被覆材は放冷後も手で容易に剥離できた。その剥離状態を観察したところ、両方とも被覆材とプライマー層の界面において剥離が発生していた。
【0013】
このレベルの再剥離を具備すれば、実用性はある。しかし、加熱時間の短縮、熱い内に行う再剥離作業への障害(作業者が火傷等の危険があることなど)、安全のため手で触れる程度まで放置すれば、熱膨張性微粒中空体が萎んで再び接着してしまう傾向があること、あるいは高温に長時間放置するため、積層体が変形、変質してしまう場合があることに気づき、本発明をさらに有用にするための技術手段を、次の目標として研究した。
【0014】
その結果、エネルギー照射装置を備えた加熱炉を用いて再剥離する接着剥離方法を用いることに想到した。最初に、加熱炉における紫外線照射を行ったところ、かなり短時間に再剥離できるところまで来た。しかし、紫外線は人体に有害につき、大掛かりな装置的な工夫が必要であった。次いで赤外線に着目し、実験を行ったところ、単なる赤外線よりも遠赤外線照射がさらに有効であることを発見した。特にある波長領域が極めて有効なことにも気がついた。それでも短時間で自然剥離するまでには至らなかったため、多数のプライマー組成物を試作し、被覆材裏面をプライマー層を形成し、これと各種基材とを、市販の接着剤で貼り合わせ、再剥離試験を実施したところ、なんと数分程度の遠赤外照射で見事に自然剥離する剥離技術を発見し、本発明を完成させた。
【0015】
以上、熱膨張性機能を有するプライマー組成物の開発は、単に熱膨張性機能を有する接着剤に比べて、経済性に優れ、被覆材の範囲と自由度、非多孔質同志の接着まで可能とすることを発見し、併せて短時間で再剥離できる方法まで見出して、本発明を完成させたものである。
【0016】
以下に上記の課題を解決するための本発明の手段について説明する。
請求項1の発明は、(A)硬化後または乾燥後の形成フィルムの抗張力が1〜28MPa、伸び率100〜2000%の特性を有するポリマーを含有する水分散液または有機溶剤溶液、および、(B)熱膨張性微粒中空体からなり、塗布乾燥して使用することを特徴とする再剥離可能なプライマー組成物である。
【0017】
抗張力がこの範囲のポリマーを用いた場合、プライマー組成物として基本的な接着性を備え、熱膨張性微粒中空体への追従性に優れるため、熱膨張性微粒中空体の膨張を最大限に発揮できる。
【0018】
請求項2の発明は、(A)成分のポリマーは、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、変成シリコーン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、可撓性エポキシ樹脂、クロロプレンエラストマー、スチレンブタジエンエラストマー、アクリル系ゴム、ニトリルゴム、天然ゴムから選択した1種以上のポリマーからなることを特徴とする請求項1の手段における再剥離可能なプライマー組成物である。
【0019】
これらポリマーの選択は、プライマー組成物としてさらに良好な接着性を備える範囲である。特にクロロプレンエラストマー、ウレタン系ポリマー、スチレンブタジエンエラストマーから選択した1種以上のポリマーの有機溶剤希釈液は、表面張力が330μN/cm以下の難接着被覆材のプライマー組成物に好適である。
【0020】
請求項3の発明は、(A)成分のポリマーを含有する水分散液は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンからなることを特徴とする請求項1の手段における再剥離可能なプライマー組成物である。
【0021】
このポリマー水分散液をプライマー組成物として用いた場合、水性のため、環境・安全・衛生に優れ、塗布作業性が良好で、一般に被覆材として使用される表面張力が330μN/cm以上の難接着プラスチック材料、金属材料に良好な接着性を与え、耐水性、耐熱性が比較的良好である。
【0022】
特に、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンにおいて、トルエン不溶分が70質量%以上である特性を有する場合、熱膨張性微粒中空体の配合による接着性、耐水性の低下の抑制効果が顕著となる。
【0023】
請求項4の発明は、(A)成分のポリマーを含有する水分散液は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとアニオン性ポリウレタンエマルジョンからなることを特徴とする請求項1の手段における再剥離可能なプライマー組成物である。
【0024】
このポリマー水分散液をプライマー組成物として用いた場合、表面張力が330μN/cm以上の難接着プラスチック材料、金属材料にさらに良好な接着性、耐水性、耐熱性、耐熱クリープ性を与える。
【0025】
特に、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとアニオン性ポリウレタンエマルジョン、特にスルホン酸変性したアニオン性ポリウレタンエマルジョンを配合した場合、熱膨張性微粒中空体の配合による接着性、耐水性の低下を抑制できる。
【0026】
さらに、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンにおいて、トルエン不溶分が70質量%以上である特性を有する場合、熱膨張性微粒中空体の配合による接着性、耐水性の低下の抑制効果が顕著となる。
【0027】
請求項5の発明は、(B)成分の熱膨張性微粒中空体は、発泡倍率が20〜100倍であり、発泡開始温度が90〜150℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項の手段における再剥離可能なプライマー組成物である。
【0028】
この特性を備えた熱膨張性微粒中空体を使用した場合、接着製品として使用しているときには十分な接着状態、接着性能を持続することができ、リサイクルするときの加熱時間を比較的短時間で行うことができる。
【0029】
請求項6の発明は、(B)成分の熱膨張性微粒中空体は、(A)成分におけるポリマー固形分100質量部に対して、2〜100質量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項の手段における再剥離可能なプライマー組成物である。
【0030】
この配合領域を選択すれば、熱膨張性微粒中空体による接着性、耐水性の低下が比較的少なく、熱膨張性微粒中空体の膨張力を最大限に利用できる領域である。この中でも5〜75質量部を選択した場合、接着性、耐水性の低下がもっとも少なく、かつ、熱膨張性微粒中空体の膨張力を最大限に発現することができる。
【0031】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項の手段における再剥離可能なプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材とを接着剤を用いて貼り合わせることにより得られた積層体に対し、加熱炉内で遠赤外線照射を行うことによりプライマー層を形成した被覆材の再剥離方法である。
【0032】
この遠赤外線照射装置を備えた加熱炉を用いる方法では、プライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材の積層体において、被覆材側を上にして、上部から遠赤外線照射して再剥離を行う。これにより再剥離できるまでの時間を大幅に短縮することができる。この中でも遠赤外線照射は、紫外線照射より効率がよく、かつ、安全な手段である。遠赤外線照射を行えば、加熱炉のみを用いた場合に比較して、再剥離可能な状態に至る時間を大幅に短縮できる。
【0033】
請求項8の発明は、遠赤外線照射は、波長が5〜30μの遠赤外線の照射であることを特徴とする請求項7の手段における被覆材の再剥離方法である。
【0034】
加熱炉内において、この遠赤外線の波長領域を上記に設定して照射すれば、再剥離可能な状態に至る時間を大幅に短縮できる。
【0035】
請求項9の発明は、加熱炉内は、雰囲気を150℃以上に調整し、遠赤外線照射を2分間以上継続することにより、プライマー層を形成した被覆材を基材から自然剥離させることを特徴とする請求項7または8の手段における被覆材の再剥離方法である。
【0036】
この加熱炉の雰囲気を150℃以上に調整して遠赤外線照射を2分間以上保持することによりプライマー層を形成した被覆材を基材から自然剥離できるため、生産工程で発生する接着不良等による再剥離作業が極めて容易に実施でき、使用が終わった積層体のリサイクルが非常に容易となる。
【0037】
請求項10の発明は、請求項1〜6のいずれか1項の手段における再剥離可能なプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材とを接着剤を用いて貼り合わせることにより得られた積層体に対し、加熱炉内で紫外線照射を行うことによりプライマー層を形成した被覆材を剥離することを特徴とする再剥離方法である。
【0038】
この紫外線照射装置を備えた加熱炉を用いる方法では、プライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材の積層体において、被覆材側を上にして、上部から紫外線照射して再剥離を行う。これにより再剥離できるまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態においては、(A)硬化後または乾燥後の形成フィルム抗張力が1〜28MPa、伸び率100〜2000%の特性を有するポリマーであるかどうかの決定からはじまる。これらを測定する場合、これらの形成フィルムは、ポリマーを含有する水分散液、または、有機溶剤溶液を、離形性を備えた平滑面(通常離形紙を使用)に均一に広げて乾燥し、常温による自然乾燥により得ることができる。しかし、架橋性ポリマー、反応性ポリマー、湿気硬化性ポリマーなど反応性を備えたポリマーでは、硬化触媒、硬化剤、水分などの硬化成分を作用させて、硬化させることで形成フィルムを得ることができる。これらの形成フィルムを測定する。その測定結果が、この範囲の特性であれば、そのまま利用することができる。もし、この範囲にない場合、可塑剤のような軟化剤、無機充填材のような補強剤で、この領域の物性を持つように調整してもよい。
【0040】
(A)硬化後または乾燥後の形成フィルム抗張力が1MPa未満の場合、ポリマーとしての凝集力が不足するため、プライマー組成物としての使用時に接着性能を維持することができず、28MPaを超える場合、熱膨張性微粒中空体の膨張を抑制することで本発明の効果を得られない。乾燥後の形成フィルムの伸び率が100%未満の場合、熱膨張性微粒中空体の膨張を抑制することで本発明の効果を得られず、2000%を超える場合、凝集力が不足するため、プライマー組成物としての使用時に接着性能を維持することができない。
【0041】
接着性、使用時における接着性能の維持、および熱膨張性微粒中空体の膨張などを最大限にする最も有効な物性領域は、形成フィルム抗張力が3〜15MPa、伸び率200〜1500%の範囲である。
【0042】
形成フィルムの特性(抗張力、伸び)の確認は、JIS K 6251に基づく方法で決定できる。ここで、フィルム抗張力とは、常温23℃における最大破壊強度で、伸び率とはその時の最大伸びである。なお、(B)熱膨張性微粒中空体を配合した場合、均質分散の程度で、最大強度、伸び率が影響されるため、ベースポリマーの決定は、熱膨張性微粒中空体を未配合で行う必要がある。
【0043】
(A)成分のポリマー、そのポリマーを含有する水分散液、または、ポリマーを含有する有機溶剤溶液について説明する。本発明のポリマーとは数平均分子量が1000以上の高分子化合物で、常温23℃において高分子の力学的性質でいうガラス領域にある弾性体か、または、ゴム状領域にある弾性体である。このようなポリマーを本発明のプライマー組成物に用いる場合は、ポリマー水分散液、または、ポリマー有機溶剤液とし、これに熱膨張性微粒中空体を混合加工する。しかし、このポリマーが、液状である場合は、硬化を可能にするための硬化触媒、硬化剤、架橋剤、硬化促進剤を配合し、熱膨張性微粒中空体を混合加工するが、その配合順序は任意でよい。
【0044】
本発明のポリマーとは、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、変成シリコーン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、可撓性エポキシ樹脂、クロロプレンエラストマー、スチレンブタジエンエラストマー、アクリル系ゴム、ニトリルゴム、天然ゴムから、1種以上を選択すればよい。
【0045】
ポリ酢酸ビニル系ポリマーとは、ポリ酢酸ビニルホモポリマー、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル系共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル系共重合体である。アクリル系ポリマーとは、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体である。ウレタン系ポリマーにおいては、固体状ポリマーの場合、ウレタンポリマーの水分散液(ウレタンエマルジョン)または有機溶剤液として用いるが、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのように液状ポリマーもある。アクリル系ポリマーとは、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体であるが、これらにカルボキシル基、グリシジル基のような架橋性基を共重合により含有させてもよい。また、数平均分子量が1000以上であれば、重合性マクロマーを用いてもよい。ポリエステル樹脂とはポリオールとポリカルボン酸の重縮合ポリマーで、代表例はポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)およびそのスルホネート変性体を挙げることができる。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブチレンなどポリオレフィン類のホモポリマー、その共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンメチレンリンケージ(EPDM)、及び、それらポリオレフィン類のスルホネート変性体、塩素化ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のようなオレフィン−カルボン酸モノマーとの共重合体がある。ポリアミド樹脂とは、ポリアミンとポリカルボン酸の重縮合ポリマーで、有機溶剤可溶性のものがよい。変成シリコーン系ポリマーとは、末端がアルコキシシリル基で、主鎖構造がポリオキシプロピレンであるポリマーで、多くは液状ポリマーである。シリコーン系ポリマーとは骨格がオルガノシラン構造を有するポリマーで、本発明ではシリコーンポリマー水分散液が好ましい。可撓性エポキシ樹脂は、ポリアミン類などのエポキシ硬化剤を組み合わせて使用すればよい。スチレンブタジエンエラストマーとは、ランダム共重合体は通常市販されているSBRラテックス(水分散液)を用いることが好ましいが、ラバーチップの溶剤希釈液として用いることもできる。粘着性付与剤として有効なブロック共重合体は、液状ゴムまたはラバーチップの溶剤希釈液として用いる。クロロプレンエラストマーは、通常市販されているCRラテックス(水分散液)として用いるか、ラバーチップの溶剤希釈液として用い、このエラストマーを用いた場合、コンタクト性を備えた本発明のプライマー組成物として用いることができる。
【0046】
本発明において、難接着材料への接着性、熱膨張性微粒中空体の膨張追従性の観点から、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、変成シリコーン系ポリマー、クロロプレンエラストマー、スチレンブタジエンエラストマーが好ましく、難接着材料への接着性、熱膨張性微粒中空体の膨張追従性に加えて、塗布作業性、耐水性、耐熱性などの接着性能を加味すれば、これらのポリマー水分散液が好ましい。特にポリマーの種類においては、ポリ酢酸ビニル系ポリマーにおいて接着性、耐熱性、耐水性からエチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル系共重合体が好ましく、このポリマーエマルジョンにおいて、塗布作業性、熱膨張性微粒中空体の混合容易性が優れる点で、ポリビニルアルコールを含むこれらのポリマー水分散液がさらに好ましい。
【0047】
特にエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンにおいて、トルエン不溶分が70質量%以上である特性を有する場合、熱膨張性微粒中空体の配合による接着性、耐水性の低下の抑制効果が顕著となるため本発明の実施に有効である。これらの系共重合体エマルジョンは、特開平9−194811号公報に示される製造方法を用いて製造することができる
【0048】
ウレタン系ポリマーにおいては、アニオン電荷を有するいわゆるアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましく、そのアニオン性ポリウレタンエマルジョンの中でも、スルホン酸変性したアニオン性ポリウレタンポリマーエマルジョンが、特に接着性と耐水性、耐熱性が優れるため、好ましい。このスルホン酸変性したアニオン性ポリウレタンポリマーエマルジョンとは、ウレタンポリマー分子内にスルホネート基を有し、通常はスルホネート塩となって乳化安定しているウレタンポリマーである。
【0049】
難接着材料への接着性、熱膨張性微粒中空体の膨張追従性、塗布作業性、耐熱性、熱膨張性微粒中空体の配合による接着性、耐水性の低下を抑制による高度な耐水性に加え、加熱時の再剥離容易性まで加えれば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとアニオン性ポリウレタンエマルジョン、特にスルホン酸変性したアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましい。さらに、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンから、トルエン不溶分が70質量%以上である特性を有するポリマーエマルジョンを選択し、アニオン性ポリウレタンエマルジョンからスルホン酸変性ポリウレタンエマルジョンを選択して配合した場合がさらに好ましく、スルホネート変性ウレタン系エマルジョンの中でも、スルホン酸基を有しポリエステル骨格を持つ芳香族系アニオン性ウレタンエマルジョンが本発明の効果を最大限に発揮するため、もっとも好ましい。このエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとアニオン性ポリウレタンエマルジョンの配合割合は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン100質量部(固形分)に対して、アニオン性ポリウレタンエマルジョン2〜50質量部(固形分)の範囲が、難接着材料への接着性、熱膨張性微粒中空体の膨張追従性、混合容易性、塗布作業性、耐水性、耐熱性、耐温水性、耐熱クリープ性などの接着性能、加熱時の再剥離容易性がもっとも好ましい配合割合である。
【0050】
なお、本発明の難接着材料とは、プラスチックシート、ゴムシート、裏面がポリマーコートした金属板において表面張力が330〜600μN/cm程度を示す材料であるが、金属面においては、素材別の接着難易度が存在する。すなわち、難接着の金属(接着部分)において、鋼板のリン酸処理面、亜鉛引き鋼板の亜鉛露出面、古い鉛シートのような酸化膜面、アルミニウム露出面、アルマイト処理面、ジュラルミン面、ジンクアルミニウム合金などが相当する。またすべての被覆材裏面において、油分の付着、シリコーン系オイル、脂肪酸アルミのような離形剤の付着材料は難接着材料に相当する。特に難接着の330μN/cm以下を示す未処理のポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン、シリコーンゴムなどは、クロロプレンエラストマー系溶剤溶液、変成シリコーン液状ポリマーに熱膨張性微粒中空体を配合してプライマー組成物とすれば、これら材料も被覆材として活用することが可能となる。
【0051】
本発明における熱膨張性微粒中空体とは、加熱することにより化粧金属板のみを再剥離するために配合する成分で、発泡倍率が20〜100倍であり、発泡開始温度は90〜150℃のものである。このような熱膨張性微粒中空体は液体ガスを内包したポリマー殻で生成した平均粒子径が3〜30μのプラスチック球体からなる微粒中空体で、加熱されることにより、殻の内部のガス圧が増し、熱可塑性プラスチックの殻が軟化することで、体積が劇的に増加し、中空球状粒子になるものである。発泡倍率が20倍未満である熱膨張性微粒中空体においては、再剥離性能が低下傾向を示し、発泡倍率が100倍を超える熱膨張性微粒中空体においては、発泡開始温度が150℃を超える傾向があるため、加熱温度を高く、かつ、時間を長く設定する必要がある。熱膨張性微粒中空体の平均粒子径は非常に重要で、3μ未満の場合、再剥離性の低下傾向および混合時の分散性の低下傾向を招くことがある。30μを超える場合、混合時の粗粒子を生じる傾向が高まる。特に平均粒子径が9〜17μの範囲の熱膨張性微粒中空体を選択すれば、本発明を最も効果的に実施できる。プラスチック球体は塩素化合物を含まないアクリル系ポリマーがダイオキシンを発生せず、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとの相溶性、膨張力を最大に発揮できることから好ましい。これら熱膨張性微粒中空体は市販品を使用でき、その市販品としては、例えば、EXPANCEL053DU(Expancel社製、発泡倍率35倍、発泡開始温度101℃)がある。
【0052】
本発明のプライマー組成物を形成する、(A)成分のポリマー、そのポリマーを含有する水分散液、または、有機溶剤溶液、および、(B)熱膨張性微粒中空体との混合割合は、(A)成分におけるポリマーの総量と、(B)成分である熱膨張性微粒中空体の関係で決定できる。すなわち、2種以上のポリマー、2種以上のポリマーを含有する水分散液、または、有機溶剤溶液においては、含有されるポリマーの総量が配合の基準値となる。その配合割合は、(A)成分のポリマー固形分100質量部に対し、(B)成分である熱膨張性微粒中空体2〜100質量部を配合する。特に(B)成分である熱膨張性微粒中空体が5〜75質量部の範囲は、再剥離効果が優れる。(B)成分が2質量部未満であれば再剥離し難くなり、100質量部を超えるとプライマーベースへの混合性、プライマー組成物の使用時の作業性不良、接着性と耐水性の低下、コスト高となる傾向が生じる。
【0053】
本発明のプライマー組成物においては、ポリイソシアネートのような架橋剤、反応性ポリマーと作用する硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、アミノシランなどの接着性付与剤、ポリビニルアルコール、無水シリカ、アマイドワックスなどの増粘剤または粘性改良剤、コハク酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性改良剤、ビニルシラン、モノイソシアネート、生石灰などの脱水剤、pH調整剤、有機または無機充填材、有機溶剤、可塑剤、消泡剤、防黴剤、着色剤、老化防止剤、着色剤、離形剤、レベリング剤、静電気防止剤をプライマー組成物の種類、性質、目的に応じて適宜配合することができる。
【0054】
本発明のプライマー組成物を製造するには、(A)成分のポリマーにおいて、そのポリマーが液状であればそのまま用い、そのポリマーを含有する水分散液、または、有機溶剤ポリマー溶液であれば、その水分散液または有機溶剤ポリマー溶液を、攪拌機を備えた加工釜、反応釜に、仕込み、熱膨張性微粒中空体を配合する。そのポリマーを含有する水分散液を得る方法は、重合釜にてポリマー乳化重合を終了させ、その釜に熱膨張性微粒中空体を直接混合加工してもよく、市販のポリマーエマルジョン、または、ポリマー重合液を取り出して用いる場合は、加工釜に移送し、攪拌下で熱膨張性微粒中空体を混合加工すればよい。有機溶剤希釈液においては、溶液重合の後に熱膨張性微粒中空体を混合加工してもよく、溶解釜でポリマー、エラストマーを溶解の後、熱膨張性微粒中空体を混合加工してもよい。液状ポリマーにおいて、アルコキシシリル基末端の変成シリコーン液状ポリマー、または、イソシアネート末端液状ウレタンプレポリマーにおいては、熱膨張性微粒中空体の水分を除去した後、密閉構造の製造装置で混合加工することが望ましい。
【0055】
得られたプライマー組成物の粘度は、塗布作業できるものであればよいが、ロールスプレッダ、ナイフコーター、グラビアコーター、キスコーター、コンマコーター、フローコーター、エアースプレー、エアレススプレー、刷毛、ブラシ、スポンジ、不織布などの含浸布などの塗布具、塗布機械の適性を考慮し、通常23℃において10〜1000000mPa・sの範囲で選択することが望ましい。もし、塗布作業性を改善する必要があれば、水性プライマー組成物であれば水、溶剤系であれば希釈可能な有機溶剤を適宜用いればよい。そして、プライマー組成物を塗布後は、自然乾燥もしくは熱膨張性微粒中空体が膨張しない程度の加熱温度での強制乾燥で、プライマー層を形成せしめればよい。塗布回数は通常1度でよいが、目的に応じて2度以上塗り重ねてもよい。
【0056】
本発明のプライマー組成物の塗布量は、熱膨張性微粒中空体を配合した接着剤に比べて節約できる。プライマー組成物が水分散液の場合、20〜120g/m程度である。プライマー組成物が溶剤系の場合、薄膜塗布しやすいので、10〜50g/m程度でよい。プライマー組成物が液状ポリマーの場合、薄膜塗布がしにくいので、50〜200g/mとなる。しかし、同一ビヒクル(プライマーベース)を用いて、熱膨張性微粒中空体の含有量が異なるプライマー組成物を、濃いものから順に塗装工程のように重ね塗りしたり、被覆材である難接着材料に本発明のプライマー組成物が接着性がよくても、市販の接着剤との接着性に乏しい場合もあるので、別種の本発明のプライマー組成物を塗り重ねすることもある。また、被覆材の厚みがある場合、塗布量を増加させることもあるため、プライマー層は5〜1000μの範囲が好ましい。5μ未満では再剥離効果が乏しく、1000μを超えれば不経済となる。特に経済性を考慮した場合、5〜50μ程度で有効である。このプライマー層の厚みは、マイクロメータ、ノギス、厚みゲージのついた測定器で測定すればよい。
【0057】
本発明の被覆材とは、美粧性を付与したプラスチックシート、ゴムシート、樹脂板、金属板が用いられる。これら被覆材は、通常フィルム、シート、プレート状のものであるが、プラスチックまたは発泡プラスチック成型材料のような複雑な形状であってもかまわない。この被覆材の裏面は、プラスチックシートにおいては裏面もプラスチックであるため、表面張力が600μN/cm以下の難接着材料となっており、特に400μN/cm以下であってもよい。具体的にはPETシートなどのポリエステルシート、ポリオレフィンシート、ポリ塩化ビニルシート、アクリルフィルム、メラミン樹脂、DAP樹脂、ポリオレフィン発泡シート、ナイロンシート、ポリウレタンフィルムなどを例示できる。金属材料においては腐食防止のため塗装、エポキシ樹脂コート、PVCコートなどのポリマーコーティング、防食処理のため酸化処理(アルマイトなど)、これも難接着材料である。またゴムシートでは離形剤が付着しているため、これも難接着材料である。このような被覆材裏面に本発明のプライマー組成物を塗布し、プライマー層を形成させればよい。
【0058】
基材は通常多孔質ボードを選択する。多孔質ボードは、MDFを代表とする繊維ボード類、パーチクルボード、合板などの木質ボード類、石膏ボード、フレキシブルボード、ALC版、ケイ酸カルシウム板などの無機質ボードがある。その他、発泡ウレタンボード、FRPなどのプラスチックボードがある。これら多孔質ボードは、通気性、吸水性を備えるため、その貼り合わせにおいて、水性エマルジョン型接着剤を用いるが、本発明のプライマー組成物の塗布によりプライマー層を形成した被覆材のコート面は接着性が良好なため、市販のポリ酢酸ビニル系エマルジョン型接着剤を用いて接着することが可能である。従って、使用する水性接着剤は、被覆材のコート面に接着でき、品質、要求性能に適うものであれば、安価なものを選択して使用できる。
【0059】
本発明の特徴は、本発明のプライマー組成物の塗布によりプライマー層を形成した被覆材がプラスチックシートのように非多孔質材料で、基材が鋼板のように非多孔質であっても、エポキシ系接着剤、変成シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような反応型接着剤、ゴム系接着剤(溶剤系)、水性コンタクト型接着剤によるコンタクト接着、ホットメルト、ヒートシール型接着剤のような加熱用溶融型接着剤で熱膨張性微粒中空体が膨張しない程度の加熱接着を用いれば、接着できることである。従って、本発明のプライマー組成物の利用範囲は極めて広い。
【0060】
本発明のプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材との積層体は、プラスチックオーバーレイ化粧板、化粧パネル材料、プラスチックオーバーレイ鋼板(または金属板)、芯材の入ったプラスチック成型品、メンブレンプレス加工による様々なデザインのプラスチック化粧板として、プロファイルマシンによる様々なデザインのプラスチック化粧板などの積層体を得ることができ、オフィス、マンション、住宅、ホテルなどの建材、造作材、住宅機器、浴室、台所、ドア、天井材、間仕切りパネル、エレベータの内装材、床材あるいは、車両、船舶、航空機などの輸送分野の内装材、仕切り材としてあらゆる産業界で広く用いられる。そして、これら積層体は使途、役割を終え、将来産業廃棄物となる。
【0061】
役目を終えた本発明のプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材による積層体の再剥離方法として、リサイクルを目的として再剥離する際には、積層体を150℃以上の雰囲気下に20分程度放置し、直ちに手などで強制剥離することにより被覆材と、基材を分別して再剥離することができる。なお、120℃に長時間(約1時間以上)放置した場合も同様の効果が認められる。しかし、このような加熱炉を用いただけでは、加熱に長時間がかかること。熱い内に行う再剥離作業は、作業者が火傷する等の危険があること、手で触れる程度まで放置すれば、熱膨張性微粒中空体が萎んで再接着してしまうこと、積層体の種類によっては変形、変質するなどの恐れがある。
【0062】
本発明のプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材の積層体を短時間で再剥離を可能とする方法が、加熱炉を用いて遠赤外線照射を行う方法である。ここでは、遠赤外線ミニジェットMJS−200((株)ジャード製)内を通過させる方法で説明する。先ず加熱炉を150℃で通過時間を2分に設定して昇温確認後、被覆材側を上部にしてコンベアの上に載せ、通過させる。遠赤外線照射(波長5〜30μ)は、被覆材上部に照射され、加熱炉から出てきた積層体は、被覆材とプライマー層の界面で見事に自然剥離することで、分離回収できる。
【0063】
同様に、紫外線を用いた場合を説明する。紫外線硬化装置パナキュアーNUX7328F−467(松下電工(株)製)を用いて加熱炉を150℃に設定し、遠赤外線照射と同様に被覆材上部から紫外線を照射したところ、通過時間を10分程度で、被覆材とプライマー層の界面で自然剥離した。
【0064】
以下に実施例を記載し、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
【実施例】
EVA(1)の製造
トルエン不溶分が70質量%以上のポリビニルアルコール含有エチレン−酢酸ビニル−多官能性モノマー系共重合エマルジョンは、エチレン/酢酸ビニルの質量比が17/83、多官能性モノマーとしてトリアリルイソシアヌレートを用いて、その多官能性モノマー/酢酸ビニルの質量比が0.1/100となるように選択して共重合したものであって、ポリビニルアルコールの含有量が全ポリマーの5質量%となるようにして、加圧重合装置にポリビニルアルコール水溶液を仕込み、設計値に見合うエチレンガスを封入した後に酢酸ビニルと多官能性モノマーの混合溶液を滴下し、加圧下で50〜70℃にて乳化重合することにより得られた。このポリマーのトルエン不溶分は92.5質量%で、その性状は、粘度2000mPa・s/25℃、固形分55.3質量%、pH4.6、フィルム抗張力9.8MPa、伸び率700%であった。この樹脂エマルジョンをEVA(1)とする。
【0066】
(実施例1におけるプライマー組成物)
(A)エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとして、スミカフレックス400(住友化学工業(株)製、固形分濃度55質量%、pH5、フィルム抗張力7.4MPa、伸び率520%、以下、「SF400」と記載)を用い、(A)成分100質量部(固形分)に対して本発明の(B)熱膨張性微粒中空体としてEXPANCEL053DU(Expancel社製、発泡倍率35倍、発泡開始温度101℃)を30質量部加えて混合し、水性プライマー組成物を得た。
【0067】
(実施例2〜6、比較例1〜2におけるプライマー組成物)
上記のスミカフレックスSF400に加えて表1に示す配合量のパンフレックスOM−4000((株)クラレ製、固形分濃度56質量%、pH5、フィルム抗張力4.0MPa、伸び率1000%、以下、「OM−4000」と記載)、EVA(1)、パンフレックスOM−3100((株)クラレ製、固形分濃度56質量%、pH5、フィルム抗張力1.5MPa、伸び率3000%以上、以下、「OM−3100」と記載)スミカフレックス480(住友化学工業(株)製、固形分濃度55質量%、pH5、フィルム抗張力29MPa、伸び率0%、以下、「SF480」と記載)スルホン酸変性した、すなわちスルホン酸基を有しポリエステル骨格を持つ芳香族アニオン性ポリウレタンエマルジョン(固形分濃度45質量%、pH8、フィルム抗張力30MPa、伸び率665%、以下、「S基含有PU」と記載)[以上、成分(A)]、と、熱膨張性微粒中空体[以上、成分(B)]とを使用した以外は、実施例1と同様に水性プライマー組成物を得た。なお、表1において、A成分とB成分の数値は質量部を示す。
【0068】
(実施例1〜6、比較例1〜2における積層体(接着パネルサンプル)の作製)
得られた水性プライマー組成物を、1.0mm厚の化粧金属板(裏面はエポキシ樹脂コートされた鋼板)の裏面に、バーコーターにて50g/m塗布後、22℃雰囲気下にて2日間自然乾燥した。
【0069】
12mm厚のコンクリートパネル用合板(コンパネ合板)にハンドゴムロールを用いてボンドCVC20(コニシ(株)製、固形分濃度49質量%、pH7、粘度25Pa・s/23℃)を90g/mの塗布量となるよう均一に塗布し、上記化粧金属板の当該プライマー組成物塗布面とを貼り合わせた後、22℃雰囲気下で0.5MPaの圧力で3時間圧締した。解圧後、同温度にて5日間放置養生して、プライマー層を形成した被覆材と基材の積層体(この積層体を接着パネルサンプルという)を作製した。
【0070】
【表1】
Figure 0003591641
【0071】
このように実施例1〜4において、実用性のある接着強さを有し、150℃以上の雰囲気下で遠赤外線照射装置に2分間照射することで化粧金属板裏面にプライマー層および接着剤が付着していない、すなわち、界面剥離の状態で自然剥離することが確認でき、さらに、紫外線照射装置でも同様の効果が認められた。実施例5〜6において、スルホン酸変性したアニオン性ポリウレタンエマルジョンを配合することにより常態および耐水接着強さが向上し、トルエン不溶分が70質量%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとの組み合わせにおいて特にその効果が顕著に現れ、さらに、150℃以上の雰囲気下で遠赤外線照射装置に2分間照射することで化粧金属板裏面の界面剥離状態で自然剥離することが確認でき、さらに、紫外線照射装置でも同様の効果が認められた。比較例1〜2においては、(A)成分のフィルムの抗張力が1〜28MPaおよびフィルムの伸び率が100〜2000%の範囲を逸脱する場合においては、再剥離できないことが確認できた。
【0072】
(常態接着強さ試験)
得られた接着パネルサンプルをテストピースとし、これをJAS特殊合板規格に準じてJAS平面引張り試験を用いて接着試験を行った。1辺が50mmの正方形状のものを作成し、試験片の表面中央に1辺が20mmの正方形が得られるように、合板表面に至る切込みを入れ、その上に20mmの正方形状の接着面を有する金属盤を接着し、22℃雰囲気下にて、オートグラフAG−5000A((株)島津製作所製)を使用して、5mm/分の速度で平面引張りしたときの接着強さを測定した。
【0073】
(耐水接着強さ試験)
得られた接着パネルサンプルを常態接着強さ試験と同様にテストピースをつくり、23℃の室温水中に3時間浸漬後、濡れたまま、直ちに、オートグラフAG−5000Aを使用して、5mm/分の速度で平面引張りしたときの接着強さを測定した。
【0074】
(遠赤外線照射装置による再剥離試験)
得られた接着パネルサンプルを150mm角に切断し、表1に示す各温度に設定した遠赤外線ミニジェットMJS−200((株)ジャード製)内を2分間通過させ、各温度で再剥離状態を評価した。加熱温度150℃、180℃ともに本発明の実施例はその評価はいずれも◎で遠赤外線照射により極めて再剥離性を有することがわかる。加熱温度が120℃では、本発明の実施例は△であるが、これは2分間の遠赤外線の照射におけるもので、さらに長時間の照射、例えば10分間の照射では、容易に自然剥離する。
【0075】
再剥離状態の評価は、次の基準に基づく。
◎:化粧金属板の自然剥離が発生し、放冷後も容易に化粧金属板のみを剥離できる
○:化粧金属板の自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易に化粧金属板のみを剥離でき、放冷後も容易に化粧金属板のみを剥離できる
△:化粧金属板の自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易に化粧金属板のみを剥離できるが、放冷後に剥離すればコンパネ合板の材破が発生する
×:化粧金属板の自然剥離が発生せず、直ちに剥離すると化粧金属板裏面にプライマー組成物または接着剤が付着した、すなわち、凝集破壊状態で剥離する
××:化粧金属板の自然剥離が発生せず、直ちに剥離するとコンパネ合板
が材破する、
の5段階で評価を行い、このうち本発明の実用的な範囲は○以上である。
【0076】
(紫外線照射装置による再剥離試験)
得られた接着パネルサンプルを150mm角に切断し、150℃に調温した紫外線照射硬化装置パナキュアーNUX7328F−467(松下電工(株)製)中を10分間通過させることで、再剥離状態を評価した。実施例1〜6ともに評価は◎であった。
【0077】
再剥離状態の評価は、次の基準に基づく。
◎:化粧金属板の自然剥離が発生し、放冷後も容易に化粧金属板のみを剥離できる
○:化粧金属板の自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易に化粧金属板のみを剥離でき、放冷後も容易に化粧金属板のみを剥離できる
△:化粧金属板の自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易に化粧金属板のみを剥離できるが、放冷後に剥離すればコンパネ合板の材破が発生する
×:化粧金属板の自然剥離が発生せず、直ちに剥離すると化粧金属板裏面にプライマー組成物または接着剤が付着した、すなわち、凝集破壊状態で剥離する
××:化粧金属板の自然剥離が発生せず、直ちに剥離するとコンパネ合板
が材破する、
の5段階で評価を行い、このうち本発明の実用的な範囲は○以上である。
【0078】
(熱風循環器による再剥離試験)
得られた接着パネルサンプルを150mm角に切断し、楠本化成(株)製熱風循環器HISPEC HT210を150℃に調温して、20分間放置後と、60分放置後、再剥離状態を評価した。本発明の実施例は、20分間放置後はいずれも評価は△であったが、60分放置後は、○であった。
【0079】
再剥離状態の評価は、次の基準に基づく。
◎:化粧金属板の自然剥離が発生し、放冷後も容易に化粧金属板のみを剥離できる
○:化粧金属板の自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易に化粧金属板のみを剥離でき、放冷後も容易に化粧金属板のみを剥離できる
△:化粧金属板の自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易に化粧金属板のみを剥離できるが、放冷後に剥離すればコンパネ合板の材破が発生する
×:化粧金属板の自然剥離が発生せず、直ちに剥離すると化粧金属板裏面にプライマー組成物または接着剤が付着した、すなわち、凝集破壊状態で剥離する
××:化粧金属板の自然剥離が発生せず、直ちに剥離するとコンパネ合板の材破が発生する
の5段階で評価を行い、このうち本発明の実用的な範囲は○以上である。
【0080】
(実施例7〜8、比較例3〜4におけるプライマー組成物)
表2に示す実施例7〜8、比較例3〜4のプライマー組成物の配合は、表1に示す実施例5〜6と比較例1〜2と同様である。
【0081】
【表2】
Figure 0003591641
【0082】
このように実施例7〜8においては、実用性のある耐熱クリープ性能と温水浸漬性能に優れ、150℃以上の雰囲気下で遠赤外線照射装置に2分間照射することでプラスチックシートにプライマー組成物および接着剤が付着していない、すなわち、界面剥離の状態で自然剥離することが確認でき、さらに、紫外線照射装置でも同様の効果が認められた。比較例3〜4においては、(A)成分のフィルムの抗張力が1〜28MPaおよびフィルムの伸び率が100〜2000%の範囲を逸脱する場合においては、再剥離できないことが確認できた。
【0083】
(実施例7〜8、比較例3〜4における積層体(化粧板サンプル)の作製)
得られた水性プライマー組成物を、0.08mm厚のポリエチレンテレフタレート製化粧シートの裏面にバーコーターにて30g/m塗布後、22℃雰囲気下にて2日間自然乾燥した。3mm厚のタイプ1合板にハンドゴムロールを用いてボンドCVC22(コニシ(株)製、固形分濃度54質量%、pH7、粘度20.0Pa・s/23℃)100質量部あたり硬化剤NZ(コニシ(株)製、固形分濃度50質量%、粘度100mPa・s/23℃)5質量%配合したものを90g/mの塗布量となるよう均一に塗布し、上記化粧化粧シートの当該プライマー組成物塗布面とを貼り合わせた後、22℃雰囲気下で0.1MPaの圧力で1時間圧締した。解圧後、同温度にて5日間放置養生して、プライマー層を形成した被覆材と基材の積層体(この積層体を化粧板サンプルという)を作製した。
【0084】
(JAS2類浸漬剥離試験)
得られた化粧板サンプルを75mm角に切断し、70℃温水中に2時間浸漬後、60℃恒温器にて3時間乾燥したときのプラスチックシートの剥離長さを測定した。
【0085】
なお、評価は、
○:剥離なし
△:1辺あたり25mm以内の剥離あり
×:1辺あたり25mmを越える剥離あり、で示す。
このとき、△以上がJAS基準に適合する。
【0086】
(耐熱クリープ試験)
得られた化粧板サンプルを25mm(幅)×200mm(長さ)に切断し、ポリエチレンテレフタレート製化粧シート側を端から縦方向に50mm剥離した後、水平に置き、剥離したポリエチレンテレフタレート製化粧シートを垂れ下がったままの状態で70℃恒温器中に1時間放置した後、剥離しているポリエチレンテレフタレート製化粧シートの先端に500gの荷重をかけて24時間後の剥離長さを測定した。この場合、剥離長さが短いほど耐熱クリープ特性が優れていることを示す。
【0087】
(遠赤外線照射装置による再剥離試験)
得られた接着パネルサンプルを150mm角に切断し、表1に示す各温度に設定した遠赤外線ミニジェットMJS−200((株)ジャード製)内を2分間通過させ、各温度で再剥離状態を評価した。加熱温度150℃、180℃ともに本発明の実施例はその評価はいずれも◎で遠赤外線照射により極めて再剥離性を有することがわかる。加熱温度が120℃では、本発明の実施例は△であるが、これは2分間の遠赤外線の照射におけるもので、さらに長時間の照射、例えば10分間の照射では、容易に自然剥離する。
【0088】
再剥離状態の評価は、次の基準に基づく。
◎:プラスチックシートの自然剥離が発生し、放冷後も容易にプラスチックシートのみを剥離できる
○:プラスチックシートの自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易にプラスチックシートのみを剥離でき、放冷後も容易にプラスチックシートのみを剥離できる
△:プラスチックシートの自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易にプラスチックシートのみを剥離できるが、放冷後に剥離すれば合板の材破が発生する
×:プラスチックシートの自然剥離が発生せず、直ちに剥離するとプラスチックシート裏面にプライマー組成物または接着剤が付着した、すなわち、凝集破壊状態で剥離する
××:プラスチックシートの自然剥離が発生せず、直ちに剥離すると合板の材破が発生する
の5段階で評価を行い、このうち本発明の実用的な範囲は○以上である。
【0089】
(紫外線照射装置による再剥離試験)
得られた接着パネルサンプルを150mm角に切断し、150℃に調温した紫外線照射硬化装置パナキュアーNUX7328F−467(松下電工(株)製)中を10分間通過させることで、再剥離状態を評価した。実施例7〜8ともに評価は◎であった。
【0090】
再剥離状態の評価は、次の基準に基づく。
◎:プラスチックシートの自然剥離が発生し、放冷後も容易にプラスチックシートのみを剥離できる
○:プラスチックシートの自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易にプラスチックシートのみを剥離でき、放冷後も容易にプラスチックシートのみを剥離できる
△:プラスチックシートの自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易にプラスチックシートのみを剥離できるが、放冷後に剥離すれば合板の材破が発生する
×:プラスチックシートの自然剥離が発生せず、直ちに剥離するとプラスチックシート裏面にプライマー組成物または接着剤が付着した、すなわち、凝集破壊状態で剥離する
××:プラスチックシートの自然剥離が発生せず、直ちに剥離すると合板の材破が発生する
の5段階で評価を行い、このうち本発明の実用的な範囲は○以上である。
【0091】
(熱風循環器による再剥離試験)
得られた接着パネルサンプルを150mm角に切断し、楠本化成(株)製熱風循環器HISPEC HT210を150℃に調温して、20分間放置後と、60分放置後、再剥離状態を評価した。いずれも20分間放置後の評価は△で、60分放置後は、○であった。
【0092】
再剥離状態の評価は、次の基準に基づく。
◎:プラスチックシートの自然剥離が発生し、放冷後も容易にプラスチックシートのみを剥離できる
○:プラスチックシートの自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易にプラスチックシートのみを剥離でき、放冷後も容易にプラスチックシートのみを剥離できる
△:プラスチックシートの自然剥離が発生しないが、直ちに剥離することで容易にプラスチックシートのみを剥離できるが、放冷後に剥離すれば合板の材破が発生する
×:プラスチックシートの自然剥離が発生せず、直ちに剥離するとプラスチックシート裏面にプライマー組成物または接着剤が付着した、すなわち、凝集破壊状態で剥離する
××:プラスチックシートの自然剥離が発生せず、直ちに剥離すると合板の材破が発生する。
の5段階で評価を行い、このうち本発明の実用的な範囲は○以上である。
【0093】
実施例9
本発明のプライマー組成物として、クロロプレンエラストマーを主成分とする溶剤系接着剤(商品名ボンドGP100、コニシ(株)製)を用意し、シリコーン離形紙上でフィルムを形成後、JIS K 6251に準拠して、フィルム強度を測定したところ、抗張力3.5MPa、伸び率500%であった。この溶剤系接着剤のポリマー成分100質量部に対し、熱膨張性微粒中空体としてEXPANCEL053DU(Expancel社製、発泡倍率35倍、発泡開始温度101℃)を40質量部加えて混合し、溶剤系プライマー組成物を得た。これを溶剤系プライマーAとする。
【0094】
被覆材として、未処理のポリプロピレンプレート(厚さ3.0mm、30.3cm角)の表面張力を測定したところ、片面が330μN/cm、他面が350μN/cmであった。この片面が330μN/cm側に、溶剤系プライマーAをバーコーターを用いて、塗布(塗布量50g/m)し、3日間自然乾燥後、本発明のプライマー層を形成したポリプロピレンプレートを得た。このプライマー層をマイクロメータで測定したところ、20μであった。
【0095】
基材として非多孔質材料であるアルミ板(厚さ5.0mm、30.3cm角)を用意し、変成シリコーン系接着剤(商品名ボンドサイレックスクリア、コニシ(株)製)をアルミ板とポリプロピレンプレートのプライマー層側の両方にバーコーターを用いて、塗布(塗布量80g/m、両方で160g/m)し、オープンタイム15分後、コンタクト接着し、10日間室温放置で養生した。
【0096】
この積層板の常態引張りせん断接着強さは、1.8N/mm×mm、JAS2類浸漬剥離試験に適合した。
【0097】
この積層体を加熱温度150℃にて遠赤外線ミニジェットMJS−200((株)ジャード製)内を2分間通過させたところ、ポリプロピレンプレートとプライマー層との界面で自然剥離が発生し、放冷後も容易にポリプロピレンプレートのみを剥離できる結果となった。
【0098】
実施例10
実施例9と同じ本発明のプライマー層を形成したポリプロピレンプレートと、基材として多孔質材料である中比重繊維板(MDF、厚さ5.0mm、30.3cm角)を用意し、水性接着剤(商品名ボンドCEL10/硬化剤M(配合比100/3)を用いて、MDF側にハンドゴムロールを用いて100g/mの塗布量となるよう塗布し、ポリプロピレンプレートのプライマー層側をオーバーレイし、ゴムロールにて脱気後22℃雰囲気下で0.5MPaの圧力で3時間圧締した。解圧後、同温度にて5日間放置養生し、5日間室温放置で養生した。
【0099】
この積層板の常態引張りせん断接着強さは、1.5N/mm×mm(MDF層破壊)、JAS2類浸漬剥離試験に適合した。
【0100】
この積層体を加熱温度150℃にて遠赤外線ミニジェットMJS−200((株)ジャード製)内を2分間通過させたところ、ポリプロピレンプレートとプライマー層との界面で自然剥離が発生し、放冷後も容易にポリプロピレンプレートのみを剥離できる結果となった。
【0101】
実施例11
アクリルポリマーを含有する変成シリコーン液状ポリマー(商品名カネカサイリルMA440、鐘淵化学工業(株)製)100質量部に接着性付与剤としてアミノシラン(商品名KBM603、信越化学(株)製)5質量部、硬化触媒としてジブチル錫ラウリレート(DBTDL)3質量部を配合し、湿気硬化型無溶剤系接着剤を得た。これをポリエチレン離形紙上でフィルムを形成後、硬化のための室温養生を10日間おこない、JIS K 6251に準拠して、フィルム強度を測定したところ、抗張力3.0MPa、伸び率200%であった。
【0102】
この無溶剤型接着剤のポリマー成分100質量部に対し、40℃にて3日間乾燥して水分を除去した熱膨張性微粒中空体としてEXPANCEL053DU(Expancel社製、発泡倍率35倍、発泡開始温度101℃)を10質量部配合し、無溶剤系プライマー組成物を得た。これを無溶剤系プライマーBとする。
【0103】
被覆材として、表面に木目印刷を施し、裏面にコロナ放電処理したPETシート(厚さ0.2mm、30.3cm角)の表面張力を測定したところ、裏面が370μN/cmであった。この面に、無溶剤系プライマーBをバーコーターを用いて、塗布(塗布量50g/m)し、10日間自然乾燥後、本発明のプライマー層を形成したPETシートを得た。このプライマー層をマイクロメータで測定したところ、55μであった。
【0104】
基材として非多孔質材料であるステンレス板(厚さ5.0mm、30.3cm角)を用意し、変成シリコーン系接着剤(商品名ボンドサイレックスクリア、コニシ(株)製)をステンレスアルミ板とPETシートのプライマー層側の両方にバーコーターを用いて、塗布(塗布量60g/m、両方で120g/m)し、オープンタイム15分後、コンタクト接着し、10日間室温放置で養生した。
【0105】
この積層板の常態ピーリング接着強さは、58N/25mm巾、JAS2類浸漬剥離試験に適合した。
【0106】
この積層体を加熱温度150℃にて遠赤外線ミニジェットMJS−200((株)ジャード製)内を2分間通過させたところ、ポリ塩化ビニルシートとプライマー層との界面で自然剥離が発生し、放冷後も容易にPETシートのみを剥離できる結果となった。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は基材に被覆材を積層した積層体の形成において、ポリマーを含有する水分散液または有機溶剤溶液と再剥離可能な熱膨張性微粒中空体からプライマー組成物を形成し、このプライマー組成物を用いて被覆材に予めプライマー層を形成することで、基体との接着において高価な熱膨張性微粒中空体の使用量を減少させてコスト低下を図り、かつ、積層体の日常の使用時には再剥離することなく必要な接着強度を有し、再利用するためにリサイクルする際には、遠赤外線照射あるいは紫外線照射により容易にプライマー層の熱膨張性微粒中空体の膨張作用で被覆材のみが再剥離でき、さらに被覆材あるいは基体が広い面積の非多孔質同志である場合の接着においても、予めプライマー層を形成しておくことで、エポキシ系接着剤等の無溶剤反応型接着剤で接着して積層体を得ることができ、しかもリサイクル時には被覆材のみが再剥離できるなど、優れた効果を奏するものである。

Claims (10)

  1. (A)硬化後または乾燥後の形成フィルムの抗張力が1〜28MPa、伸び率100〜2000%の特性を有するポリマーを含有する水分散液または有機溶剤溶液、および、(B)熱膨張性微粒中空体からなり、塗布乾燥して使用することを特徴とする再剥離可能なプライマー組成物。
  2. (A)成分のポリマーは、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、変成シリコーン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、可撓性エポキシ樹脂、クロロプレンエラストマー、スチレンブタジエンエラストマー、アクリル系ゴム、ニトリルゴム、天然ゴムから選択した1種以上のポリマーからなることを特徴とする請求項1に記載の再剥離可能なプライマー組成物。
  3. (A)成分のポリマーを含有する水分散液は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンからなることを特徴とする請求項1に記載の再剥離可能なプライマー組成物。
  4. (A)成分のポリマーを含有する水分散液は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとアニオン性ポリウレタンエマルジョンからなることを特徴とする請求項1に記載の再剥離可能なプライマー組成物。
  5. (B)成分の熱膨張性微粒中空体は、発泡倍率が20〜100倍であり、発泡開始温度が90〜150℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の再剥離可能なプライマー組成物。
  6. (B)成分の熱膨張性微粒中空体は、(A)成分におけるポリマー固形分100質量部に対して、2〜100質量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の再剥離可能なプライマー組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の再剥離可能なプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材とを接着剤を用いて貼り合わせることにより得られた積層体に対し、加熱炉内で遠赤外線照射を行うことによりプライマー層を形成した被覆材の再剥離方法。
  8. 遠赤外線照射は、波長が5〜30μの遠赤外線の照射であることを特徴とする請求項7に記載の被覆材の再剥離方法。
  9. 加熱炉内は、雰囲気を150℃以上に調整し、遠赤外線照射を2分間以上継続することにより、プライマー層を形成した被覆材を剥離させることを特徴とする請求項7または8に記載の被覆材の再剥離方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の再剥離可能なプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した被覆材と基材とを接着剤を用いて貼り合わせることにより得られた積層体に対し、加熱炉内で紫外線照射を行うことによりプライマー層を形成した被覆材を剥離することを特徴とする再剥離方法。
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