JP3591598B2 - 内燃機関の2ピース型オイルリング用異形鋼線材の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、各種内燃機関に用いられる鋼製2ピース型オイルリング用断面異形鋼線材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関用鋼製オイルリングの型式としては、長方形断面のエッジワイズに曲げ成形された2本のリングおよび1本のスプリングの計3本からなる3ピース型と、1本の異形断面の溝付きリングおよび1本のスプリングの計2本からなる2ピース型の2種類がある。
両者とも内蔵するスプリングによってシリンダ内壁面に一定の接触圧力で接触して、余剰の潤滑油を掻き落す役割をなすものである。
2ピース型オイルリングは主にディーゼルエンジンに使用されているが、近年、エンジンの高性能化(高回転,高出力,低燃費,潤滑油消費量の低減)および、軽量・コンパクト化を達成するために、ピストンリング材の高機能化(耐摩耗性・耐腐食性の向上等)が進行中である。
【0003】
すなわち、このため、材質面においては低合金鋼から高合金鋼へと急速に移行しつつあり。また、断面形状においては、高性能・高強度のスチール製オイルリングとして全体の寸法を小さくし、さらにシリンダ内壁面と接する部分である2条の外周レール部間の溝幅が狭くかつその溝深さが深くなるなど、オイルリングの断面がより異形の度合いを強め複雑形状化している。
【0004】
断面異形鋼線材は、リング状に曲げ成形するカーリング工程において、ピストンのリング溝壁面に接する二面は、リングの外周側となる側は幅寸法が縮少する方向に、リングの内周側となる側は、幅寸法が拡大する方向に変形するため、カーリング後この二面を研削加工により平行化される。また、シリンダ内壁面と摺動する外周レール部の頂面は、シリンダ内で全周に亘って所定の面圧を生じて設計通りの潤滑油掻き落し能力を発揮させるために、塑性加工ままの異形鋼線材が有する断面の不完全性、つまり外周レールの両角部の大きな丸みないし面とり状の形状や頂面の中高を研削加工を施すことで改善し、シリンダ内壁面との接触幅、接触面の平坦度およびエッジの先鋭度を所定の範囲とされる。
【0005】
断面が異形の鋼線は異形孔型を有するロールやダイス等の工具を使用して圧延や引抜きによって成形されるので、これらの製品と工具の関係は、一般に雄雌の関係となる。したがって、製品に先鋭な角を形成するには、工具には鋭い隅部を形成することが必要である。しかし、このことは、工具に応力集中を招くこと、工具の製造工数を格段に増加することにつながり、さらに、製品の角部の先鋭度はある限度までは、工具の隅部の鋭さに関係するが、それ以下では飽和する。この飽和を遅らせるには、軟質の被加工材を強圧下等を加えることに通ずるが、前者は低級材料を、後者は工具の負担を強化をすることに通ずる。
したがって、従来、工具の製造コスト、割れ発生等の点から、外周レール部の両角部は、図4の41または42に示すようにコーナはR(半径)または面取り状コーナとして0.1mm以下程度と大きく許容されていた。
しかし、コーナR等 0.1mm以下程度の角部先鋭度では、十分なオイル掻き落し能力が発揮できないので、ピストンリングメーカでは上記のように研削加工によって、外周レール部頂面を例えば、0.05mm程度削り落し、外周レール部の当り幅、平坦度およびエッジの先鋭度についての必要精度を付与していた。
なお、オイルリング用異形鋼線材の成形方法においては、異形鋼線の表面粗さ規格が3μmRmax.以下と非常に厳しいものである。一般にコーナ半径の大きい長方形断面の線材等の異形の度合いの低い異形鋼線材では、このように表面粗さの厳しいものでも通常の孔型引抜きダイスによる引抜き成形が辛うじて可能であるが、オイルリング用溝付き断面異形鋼線材のように小サイズかつ異形の度合いが高い複雑形状のものについては、焼付きやダイスの破損、潤滑皮膜処理時の不均一な潤滑剤による線材表面の肌荒れなどの品質不良が頻発し、ほぼ製造不可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在2ピース型オイルリングに求められている性能は、潤滑油の掻き落し能力の向上とオイルリング個々における該能力のバラツキの低減であり、これらの性能はオイルリングの材質に無関係に要求されている。
該性能はピストンリングメーカでオイルリング用異形鋼線材の外周レール部の研削加工をした後の、当たり幅と称される部分の寸法とコーナ(断面で角部)の先鋭度のバラツキに大きく影響を受ける。特に角の先鋭度は素材である異形鋼線材の先鋭度と研削代に関係するから、素材の先鋭度が高ければ、研削代を低減できる。特に、曲げ成形後のリングは、半径方向の可撓性が本来的に大きく、かつそれが部分・部分で異なるから、真円に研磨するには、軽研削・長時間を要し、研削代を低下することは加工時間の大幅な短縮につながる。
【0007】
最近、2ピース型オイルリング用異形鋼線材に対しても、高性能化の要求が強く、高合金鋼化による低塑性変形能化に追い込まれており、割れの発生や治工具の摩耗、微小割れの発生が顕著になっている。
本発明は、高合金で、かつ断面の異形度の大きい異形鋼線材でも対応が可能で、潤滑油の掻き落し能力の向上とオイルリング個々の該能力のバラツキの低減のため、ピストンリングメーカで行なわれている外周レール部の加工工数と加工時間の低減の一方または両者を達成できる2ピース型オイルリング用異形鋼線材の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
従来の製造方法における製品の角部の形成方法は、被成形材の一部を加圧して、その内部に高圧力を発生させ、この圧力で被成形材を工具の凹部へ盛り上げるに際し、圧下方向と盛り上りの方向が対向するものであり、このため、被成形材と工具との間の摩擦力が盛り上りを抑制するように作用するものであった。
本願の製造方法は、上記摩擦力による盛り上り抑制作用を軽減し、または盛り上り作用を促進させるものである。すなわち、従来の加工法では、ロール(工具)の被成形材への近寄り速度に真向から対向するごとく、被成形材を盛り上げるものであった。これに対し、本発明ではロールの近寄り速度の方向を大きく変更することで、盛り上がり抑制作用を軽減し、または促進させるものである。
【0009】
すなわち、本発明の方法発明は、稜部を円弧状または面とり状に結ぶ長方形状断面の線材の一平面にロール成形により、長手方向の溝状凹部を形成した後、またはこの成形と同時に、前記溝状凹部に前記一平面側から嵌入されたロールの凸部の存在下で、前記一面と、該一面と直角方向の二平面とがなす両角部を、それぞれ該二平面側から圧下するロールで圧下して該両角部に切欠き形状を形成し、または上記形成した後の該切欠き形状部をさらに圧下することを特徴とする内燃機関の2ピース型オイルリング用異形鋼線材の製造方法である。
なお、上記の製造方法発明による異形線材の外周レール部の頂面を平坦なロールにより軽く圧下すると、先鋭度をさらに向上することができ望ましい。
【0010】
本発明の製造方法による異形線材は、外周レールの両角部の先鋭度を高く規定した本用途用異形鋼線であり、先鋭度として0.06mm以下としたものである。
すなわち、仕上加工後に、その頂面がシリンダ内壁面と摺動することになる外周レール部の断面における両角部の塑性加工状態での立ち下り面の延長側の先鋭度が0.06mm以下であることを特徴とする内燃機関の2ピース型オイルリング用異形鋼線材である。
なお、本発明で外周レール部の頂面または立ち下り面の延長側の先鋭度とは図4による。
【0011】
角部の先鋭度は、頂面および立ち下り面それぞれの延長側で定義でき、いずれも先鋭であることが望ましい。頂面は、前述のように研削仕上げされ、この際、頂面の延長側の先鋭度は多少低くても研削により効果的に改善されるから、重要性はどちらかと言えば低い。したがって、立ち下り面の延長側の先鋭度の重要性が高い。
【0012】
【作用】
前述の2ピース型オイルリング用異形鋼線材は、本願の方法発明によって初めてもたらされた製品であり、その外周レール部は、先鋭な角部を有するから、微小な頂面研削代によっても、シリンダ内壁面との正確な接触関係が得られ、またそのリング毎のバラツキも少なく、確実に予期の油掻き能力を発揮し得る。角部の先鋭度を0.06mm以下とした理由は、従来製品の0.10〜0.08mm程度の製品との差を明瞭とするためである。そして、この値は、望ましくは0.04mm以下、さらに望ましくは0.025mm以下であり、本発明方法によれば容易に達成される。
【0013】
次に、本願の製造方法発明について述べる。
先ず、本願の製造方法発明で用いる素材形状について述べる。
図3はこの素材の形状例を示すものであり、稜部を円弧または面とり状(図では面とり状)に結ぶ長方形状の断面を呈している。ここで長方形とは、正方形も含むものとする。
図5に従来の製造方法の例を示す。この方法で被成形材10の外周レール部11の頂面12と外側および内側立下り面13および14とがなす角部の先鋭度を向上するためには、上ロール20の該角部に対する隅部の接続半径を小さくし、かつ強圧下する必要があった。しかし、接続半径を小さくすることは応力集中を招き、また強圧下することは当然に楔状にロールを引き裂くように作用する被成形反力pを増加するのでともに割れ21の原因となっていた。
【0014】
また、上ロールの圧下つまり近寄り速度は矢印のように下向きであり、被成形材とロールとの摩擦力は、ほぼこの圧下方向の働き、これは外周レール部11が上方へ盛り上がるのを阻害するものであった。この阻害作用は、外周レール部が薄く高さが高いほど大きくなる。
本発明の方法は、図1に示すように上ロール20′の凸部20′aの存在下で、左右の二横平面16側から矢印のように圧下することにより、切欠き形状部30,30を形成し、または一旦形成された切欠き形状部をさらに圧下するものである。
【0015】
この成形方法で、上ロール20′の隅部を形成する一方の面は幅狭の頂面と接触する部分であるから、この隅部に作用する成形反力によるモーメントは小さいので、応力集中による割れの発生はなく、硬質の高合金の成形にもよく耐え、またロールの仕上げのための研削砥石の形状も大きく加工費の増加程度は少ない。また、外側立下り面側の圧下は、矢印のように上方への盛り上がりの方向と直角の方向のため、盛り上がりを阻害することが少なく、高い先鋭度となり易く、この影響は内側立下り面側にも及ぶことがわかった。しかし、内側に比し、外側立下り面の方が先鋭化作用が強いから、双方とも高先鋭度とするには、外側の角部を押圧して先鋭化を抑制するパスを挿入しつつ、本発明を数回に亘って実施することが望ましい。
さらに、本発明方法において、上ロールの凸部20′aの存在下で横ロール22,22により切欠き形状部を形成しつつ圧下して、外周レール部の特に頂部のみを強圧下するもので、該頂部に長手方向の引張応力が発生して横割れの発生が防止され、低靭性の高合金の成形に有利となる。
【0016】
本発明は説明してきたように形状に大きな特徴のあるオイルリング用異形鋼線材の製造方法であり、鋼の化学組成については特に限定はしない。しかし、一般に高合金化するほど従来の成形方法では、角の先鋭化が困難となる。また、この形状の効果を生かし、オイルリングの特性や製造法をも有利にする化学組成があるので、以下にこれを説明する。
鋼製ピストンリングは、極く特殊なものを除いてマルテンサイト系ステンレス鋼でなる。該鋼は、CとCrの含有量で性格が決まる。
本発明は、塑性変形能が低い、例えば、重量%でC 0.60%以上、かつCr 10.0%以上、特にC 0.80%以上、かつCr 15.0%以上を含むマルテンサイト系ステンレス鋼、またはさらにこれらの材料に靭性、耐摩耗性、耐硫酸腐食性等の特性向上のため、W,Mo,V,Nb,Ni,Co,Cu等の元素を適宜添加した鋼に対して特に有効である。
【0017】
CはCrおよびMo,W,V,Nb等の添加元素と結合して炭化物を形成し、耐摩耗、耐焼付性の向上に寄与すると共に、一部は基地中に固溶して基地を強化する。一方、Crは前述のようにCと結び付いて、炭化物(M23C6型およびM7C3型)を形成し、耐摩耗性および耐焼付性を向上させるので、本発明のオイルリングには必須の成分である。また、さらに一部は、基地中に固溶して耐酸化性、耐熱性を向上させ、また、窒化処理により硬質の窒化層を生成し、耐摩耗性、耐焼付性を大きく向上させる。
そして、CとCrはバランスして添加量を決定される。一般に被研削性は炭化物量の増加とともに低下するから、本発明の外周レール部等の研削においても、CとCrの含有量に大きく影響される。C 0.60%未満かつCr 10.0%未満のマルテンサイト系ステンレス鋼は、炭化物が比較的少なく、被研削性が相対的によいから、本発明によらずとも外周レール部の頂面の研削により先鋭な角部を有するリングを得ることが比較的容易である。
【0018】
Cが0.80%以上かつCrが15.0%以上となると、炭化物の増加により、研削時間がより長時間となり本発明の利益がより鮮明となる。
本発明では、線材の化学成分としては、CとCrの条件が最も重要であるが、C,Cr以外の元素は適宜選択して添加できる。以下に、C,Cr以外の元素を添加する場合の条件と作用を説明する。
【0019】
本発明において、MoとWは、Moと1/2Wがほぼ等価で同じ作用を及ぼす。これらの元素はCと結びついてそれ自体の炭化物を形成するとともに、Cr炭化物中にも固溶することにより、これを強化し、さらに焼もどしにおける軟化抵抗を高めるので、ピストンリング成形時の矯正や窒化時の加熱でも硬さは低下しないという効果がある。また窒化処理を行なう場合には、窒化層形成に寄与し、耐摩耗性、耐焼付性を向上させる。さらにMoは、耐硫酸腐食性を向上させる効果を有する。しかし、Mo+1/2Wで3.0%を越えて添加すると、硬質の炭化物の量を増し、疲労強度低下の原因になると共に高価な元素であるため、含有させる場合には、1種または2種をMo+1/2Wで3.0%以下に限定するのがよい。望ましい範囲はMo+1/2Wで0.3〜2.0%である。
【0020】
VとNbは、効果の点でVと1/2Nbがほぼ当量であり、両元素とも結晶粒微細化に効果があり、ピストンリングの靭性向上に寄与するだけでなく、Mo,Wと同様、それ自体で炭化物を形成するとともに、Cr炭化物中にも固溶して、これを強化することにより耐摩耗性、および耐焼付性を向上させるので添加するとよい。また、両元素とも耐硫酸腐食性、耐カルボン酸腐食性を向上させる。これ等の効果を得るためには、添加する場合には、VとNbの1種または2種をV+1/2Nbを目安に添加するとよい。しかし、過度に添加するとMC型炭化物を過剰に生成し靭性を劣化させるのでV+1/2Nb量の上限を3.0%とするとよい。
【0021】
Co、NiおよびCuは、窒化層の耐硫酸腐食性を向上させる目的で添加することができる。三元素とも炭化物を形成せず、基地に固溶し、耐硫酸腐食性を高めるが、窒化物を形成しないため窒化層中においてもその作用が残存することが特徴であり、ピストンリングに窒化処理を行って使用する場合には特に有効である。Coは12%を越えると熱間加工性および冷間加工性を低下させ、Niは5.0%を越えると熱処理における所定の硬さが得られにくくなるので、添加する場合はそれぞれ、Coは12%以下、Niは5.0%以下とするとよい。
【0022】
Cuは、耐焼付性を向上させるだけでなく、カルボン酸に対する耐腐食性を高めるために添加できる。Cu含有鋼は、例えばアルコール燃料の燃焼ガスなどの腐食性雰囲気に対して従来の材料に増して、より耐食性の優れたピストンリングとすることができる。上記の効果を十分に得るために、Cuの添加が有効であるが、5.0%を越えると熱間加工性が悪くなるため、Cuは5.0%以下とする。
なお、Siは鋼の精錬時に脱酸の目的で添加されると共に、耐硫酸腐食性の向上、焼入性、強度の向上に効果的な元素である。しかし、1.5%を越えると温間加工性を害するのでSiは1.5%以下に限定するのがよい。
また、Mnは鋼の精錬時に脱硫の目的で添加されるが、1.5%を越えると素線を製造する時の熱間加工性を害するので1.5%以下に限定するのがよい。
P,S,O,Nは、通常不純物元素として微量含有されてもよい。
【0023】
上記の各元素を組み合わせた望ましい鋼の例としては、重量%でC 0.6〜1.5%、Si≦1.5%、Mn≦1.5%、Cr 20〜25%の鋼、さらに前記鋼にMo+1/2Wを3%以内、V+1/2Nbを3%以内で各元素を選択添加する鋼があげられる。
また、これらの鋼にCoを12%以内で添加した鋼は、耐食性を高めたピストンリング鋼線として有効である。
【0024】
より具体的の代表鋼は、
C 0.65%、Si 0.35%、Mn 0.35%、Cr 13.6%、Mo0.25%、V 0.04%や、
C 0.63%、Si 0.40%、Mn 0.35%、Cr 15.0%、Mo0.30%、W 0.30%、V 0.10%や、
C 0.75%、Si 0.50%、Mn 0.50%、Cr 17.5%、V 0.15%、Co 1.0%や、
C 0.80%、Si 0.40%、Mn 0.40%、Cr 21.5%、Mo0.20%、V 0.10%や、
C 0.80%、Si 0.35%、Mn 0.50%、Cr 19.5%、W 0.60%、V 0.20%、Co 0.80%などが挙げられる。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
幅(曲げ成形したときのリングの高さ) 3.5mm、厚さ 2.5mm(完成品寸法)の内燃機関の2ピース型オイルリング用異形鋼線材を多数回のロール孔型を通過させることにより製作した。このうち、本願の方法発明は、最終のスキンパス仕上を含め、6回適用された。その間に外側立下り面と頂面とがなす角部を押圧してバリの発生を防止した。
図1に最終パスのロール組を示す。
用いた素材は、化学成分を表1に示す3種であり、焼鈍状態のコイル材である。ロール成形後、ウェブ部へ油孔を打抜きし、焼入れ焼もどしにより、ビッカース硬さHV385〜402に熱処理した後の精度等は、外周レール部の各先鋭度は、0.019〜0.031mm以内であり、幅寸法、厚み寸法、ねじれ、外傷はすべて公差内で異常はなかった。
【0026】
【表1】
【0027】
(実施例2)
実施例1で成形したままの線材を図2に示すロール組により、外周レール部の頂面を平坦なロール溝底で軽圧下したところ、外周レール部の先鋭度はいずれも0.02mm以下とすることができた。そして、実施例1と同様に打抜き、熱処理したが不都合は発生しなかった。なお、頂面軽圧下用ロールは、孔型を有しない平滑なものでもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上に述べたように、従来、オイルリング用異形線材は、ロールの割れ発生等の関係から外周レール部の角先鋭度を0.10mm以下程度と緩い規格とせざるを得ず、潤滑油の掻き落し能力の向上と個々のオイルリングにおける該能力のバラツキの低減要求を満たすため、リングメーカでは多工数を費やして頂面研磨してきたが、本願の方法発明により、高い角先鋭度を有する異形線材の製造が可能となった。これにより、頂面研磨時間を短縮し、かつ所期の潤滑油の掻き落し能力の向上と個々のオイルリングにおける該能力のバラツキの低減要求を満足する2ピース型用高合金断面異形オイルリング線材の供給が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作用および実施例のロール組を説明する図である。
【図2】頂面を軽圧下する実施例のロール組を説明する図である。
【図3】本発明で素材形状を説明する図である。
【図4】角部の先鋭度を説明する図である。
【図5】従来のロール組を説明する図である。
【符号の説明】
10 被成形材、11 外周レール部、12 頂面、13 外側立下り面、14 内側立下り面、20,20′ 上ロール、20′a 上ロール凸部、16 横平面、30 切欠き形状部、41 立下り面の延長側の先鋭度、42 頂面の延長側の先鋭度
Claims (2)
- 稜部を略円弧状または略面とり状に結ぶ長方形状断面の線材の一平面にロール成形により、長手方向の溝状凹部を形成した後、またはこの成形と同時に、前記溝状凹部に前記一平面側から嵌入されたロールの凸部の存在下で、前記一面と、該一面と直角方向の二平面とがなす両角部を、それぞれ該二平面側から圧下するロールで圧下して該両角部に切欠き形状を形成すること、または上記形成した後の該切欠き形状部をさらに圧下することを特徴とする内燃機関の2ピース型オイルリング用異形鋼線材の製造方法。
- 切欠き形状を成形した後の線材の頂面をロールにより圧下加工することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の2ピース型オイルリング用異形鋼線材の製造方法。
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