JP2909327B2 - 内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材およびその製造方法 - Google Patents
内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材およびその製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種内燃機関に用いら
れる鋼製2ピース型オイルリング用断面異形鋼線材のう
ち、高さ寸法が2.3mm以下、幅寸法が3.0mm以下と小断面
のものおよびその製造方法に関するものである。
れる鋼製2ピース型オイルリング用断面異形鋼線材のう
ち、高さ寸法が2.3mm以下、幅寸法が3.0mm以下と小断面
のものおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】内燃機関用鋼製オイルリングの型式とし
ては、従来2本の長方形断面のリングおよび1本のスプ
リングの計3本からなる3ピース型と、新型式である1
本の異形溝付リングおよび1本のスプリングの計2本か
らなる2ピース型の2種類がある。近年、部品点数減少
によるコスト低減等を目的として、3ピース型から2ピ
ース型への転換の要求が強まってきた。この2ピース型
用の異形溝付リングは、その断面形状が長方形の二対辺
に凹部が形成されて概略HまたはX字形状となった複雑
形状で、かつその左右部を繋ぐウェブ部の厚み寸法の左
右フランジ部の全厚み寸法に対する比が0.3以下等と小
さく異形度が大きいものである。また近年、耐摩耗性、
耐硫酸腐食性等の向上を目的として高合金化する要求も
強まっている。ピストンリングのうち、圧力リングは断
面形状も単純な長方形に近いので製造上の問題は少な
く、すでに17Cr系またはさらに20%を越えるCrを含有
するマルテンサイト系ステンレス鋼へと高合金化してい
る。3ピース型の組合せオイルリングのレール(一般に
サイドレールと呼ばれている)は、SUS420J2(0.35C−13
Cr系)、または0.65C−13Cr系のマルテンサイト系ス
テンレス鋼が使用されているが、やはり断面形状は単純
な長方形に近く、従来の冷間圧延や冷間伸線による方法
でも製造可能である。3ピース型用のサイドレールとし
ては、特公昭61−54862号(0.65C−13Cr系)、
特開昭61−59066号(0.55C−7Cr系)などの提
案がある。
ては、従来2本の長方形断面のリングおよび1本のスプ
リングの計3本からなる3ピース型と、新型式である1
本の異形溝付リングおよび1本のスプリングの計2本か
らなる2ピース型の2種類がある。近年、部品点数減少
によるコスト低減等を目的として、3ピース型から2ピ
ース型への転換の要求が強まってきた。この2ピース型
用の異形溝付リングは、その断面形状が長方形の二対辺
に凹部が形成されて概略HまたはX字形状となった複雑
形状で、かつその左右部を繋ぐウェブ部の厚み寸法の左
右フランジ部の全厚み寸法に対する比が0.3以下等と小
さく異形度が大きいものである。また近年、耐摩耗性、
耐硫酸腐食性等の向上を目的として高合金化する要求も
強まっている。ピストンリングのうち、圧力リングは断
面形状も単純な長方形に近いので製造上の問題は少な
く、すでに17Cr系またはさらに20%を越えるCrを含有
するマルテンサイト系ステンレス鋼へと高合金化してい
る。3ピース型の組合せオイルリングのレール(一般に
サイドレールと呼ばれている)は、SUS420J2(0.35C−13
Cr系)、または0.65C−13Cr系のマルテンサイト系ス
テンレス鋼が使用されているが、やはり断面形状は単純
な長方形に近く、従来の冷間圧延や冷間伸線による方法
でも製造可能である。3ピース型用のサイドレールとし
ては、特公昭61−54862号(0.65C−13Cr系)、
特開昭61−59066号(0.55C−7Cr系)などの提
案がある。
【0003】オイルリングの材質も高合金化の要求が強
い。2ピース型オイルリングについても、高合金ほど耐
摩耗性や耐食性の向上が期待できる。しかし、この2ピ
ース型オイルリング用異形溝付きリングを、従来よりさ
らに高C化して、例えば0.8重量%を越えるC、15重量%
以上のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼か
ら製造することは非常に困難である。すなわち、該リン
グは断面形状が複雑、かつ異形度が大、つまり丸または
長方形からの形状的隔たりが大きく、したがって異形成
形に際して、大きな塑性加工量が必要で、実生産が困難
である。特に上下方向から強い圧縮加工を受けるウェブ
部と上下から圧縮作用を受けないフランジ部が隣合って
おり、本発明者が実験の結果見出したことであるが、こ
の境界部から非常に割れが発生し易いことおよびオイル
リングの用途上表面粗さが3S以下とされるほか、割れは
もちろん打疵、すり傷等の表面性状が厳しく規制されて
いるからである。すなわち、従来の冷間引抜き方法によ
ると、高合金化のため被加工性が低下し、かつ、異形度
が大きい上に前記のように加工割れが、ウェブ部とフラ
ンジ部との境界部に発生し易く、これらを防止するため
には1パス当りおよび焼鈍1回当りの加工率が低く制限
され、その結果、最終製品に至るまでの加工パス回数や
焼鈍回数がさらに増加し、これらの処理またはハンドリ
ング中に表面性状を損ない易く、また、コスト的にも困
難となる。このため、従来0.8重量%を越えるC、15重量
%以上のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼に
よる2ピース型オイルリングの製造はなされていなかっ
た。
い。2ピース型オイルリングについても、高合金ほど耐
摩耗性や耐食性の向上が期待できる。しかし、この2ピ
ース型オイルリング用異形溝付きリングを、従来よりさ
らに高C化して、例えば0.8重量%を越えるC、15重量%
以上のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼か
ら製造することは非常に困難である。すなわち、該リン
グは断面形状が複雑、かつ異形度が大、つまり丸または
長方形からの形状的隔たりが大きく、したがって異形成
形に際して、大きな塑性加工量が必要で、実生産が困難
である。特に上下方向から強い圧縮加工を受けるウェブ
部と上下から圧縮作用を受けないフランジ部が隣合って
おり、本発明者が実験の結果見出したことであるが、こ
の境界部から非常に割れが発生し易いことおよびオイル
リングの用途上表面粗さが3S以下とされるほか、割れは
もちろん打疵、すり傷等の表面性状が厳しく規制されて
いるからである。すなわち、従来の冷間引抜き方法によ
ると、高合金化のため被加工性が低下し、かつ、異形度
が大きい上に前記のように加工割れが、ウェブ部とフラ
ンジ部との境界部に発生し易く、これらを防止するため
には1パス当りおよび焼鈍1回当りの加工率が低く制限
され、その結果、最終製品に至るまでの加工パス回数や
焼鈍回数がさらに増加し、これらの処理またはハンドリ
ング中に表面性状を損ない易く、また、コスト的にも困
難となる。このため、従来0.8重量%を越えるC、15重量
%以上のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼に
よる2ピース型オイルリングの製造はなされていなかっ
た。
【0004】このような状況のなか、本発明者らは、温
間ロールダイスを使用することを中心とする新規なオイ
ルリング用異形鋼線材の製造方法により、ひとまず異形
鋼線材の断面形状の成形を可能とし、特願平3−193
02号で提案した。そして、該提案によるオイルリング
は、化学成分をCが0.8重量%を越え0.95重量%未満、Cr
15重量%ないし25重量%を含有するマルテンサイト系ステ
ンレス鋼、より具体的には上記C,Cr,Fe以外の組成
は、脱酸、脱硫元素であるSi,Mnをそれぞれ1.0%以
下、またはさらにMoとWの1種または2種をMo+1/2
Wで0.5〜3.0重量%、VとNbの1種または2種をV+1/
2Nbで0.05〜2.0重量%、ならびにCoの12重量%以下、N
iの5重量%以下を適宜含む鋼とするものである。これら
鋼製2ピース型オイルリングが使用される内燃機関は、
トラック、バス等のディーゼルエンジンが主流であり、
前記のオイルリングの寸法も高さ2.5〜3.0mm、幅3.5〜
5.0mmと太い寸法のものであった。最近、小型内燃機関
用についても2ピース型オイルリングの適用が検討され
始め、高さ寸法2.3mm以下、幅寸法3.0mm以下といった小
さいオイルリングの製品化が要求されている。
間ロールダイスを使用することを中心とする新規なオイ
ルリング用異形鋼線材の製造方法により、ひとまず異形
鋼線材の断面形状の成形を可能とし、特願平3−193
02号で提案した。そして、該提案によるオイルリング
は、化学成分をCが0.8重量%を越え0.95重量%未満、Cr
15重量%ないし25重量%を含有するマルテンサイト系ステ
ンレス鋼、より具体的には上記C,Cr,Fe以外の組成
は、脱酸、脱硫元素であるSi,Mnをそれぞれ1.0%以
下、またはさらにMoとWの1種または2種をMo+1/2
Wで0.5〜3.0重量%、VとNbの1種または2種をV+1/
2Nbで0.05〜2.0重量%、ならびにCoの12重量%以下、N
iの5重量%以下を適宜含む鋼とするものである。これら
鋼製2ピース型オイルリングが使用される内燃機関は、
トラック、バス等のディーゼルエンジンが主流であり、
前記のオイルリングの寸法も高さ2.5〜3.0mm、幅3.5〜
5.0mmと太い寸法のものであった。最近、小型内燃機関
用についても2ピース型オイルリングの適用が検討され
始め、高さ寸法2.3mm以下、幅寸法3.0mm以下といった小
さいオイルリングの製品化が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】2ピース型オイルリン
グ用異形鋼線材は、HまたはX字形の異形断面に成形
後、そのいずれかの段階でそのウェブ部に直列状に多数
の貫通油孔を穿孔する必要がある。そして、この穿孔は
加工費、作業能率から実質的に打抜き法に限定される。
しかし、該打抜きはその被加工材の断面寸法が2.3mm×
3.0mm程度以下の小断面材では、打抜きに伴って断面形
状が乱れることがわかった。すなわち、該打抜きに伴っ
て、その貫通油孔を含む横断面内で、図1Aに破線でや
や誇張して示すように、打抜きダイ側(図上下側、この
側は、溝の底面の広い側であり、オイルリング成形後は
外周側となる)で、ウェブ部1aを挾むフランジ部1
b,1bの寸法が打抜き前の素材(実線で示す)に比し、
幅寸法BがB′のごとく拡大することがわかった。つま
り、長さ方向にわたる幅の最大寸法(以下、幅寸法と記
す)のバラツキが生ずることになる。該鋼線材はピスト
ンリングメーカーで、通常、1図Bに傍線で示す部分
(外周部および両幅部分)を研削加工される(幅寸法の
場合、左右合計の研削代は0.03〜0.04mm程度)。この
際、断面形状が変形したままだと、研削代を増加する必
要があり、生産性が大幅に低下する。本発明は、上記生
産性の低下を防止した小断面寸法の内燃機関の2ピース
型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材およびその製
造方法を提供することを目的とする。
グ用異形鋼線材は、HまたはX字形の異形断面に成形
後、そのいずれかの段階でそのウェブ部に直列状に多数
の貫通油孔を穿孔する必要がある。そして、この穿孔は
加工費、作業能率から実質的に打抜き法に限定される。
しかし、該打抜きはその被加工材の断面寸法が2.3mm×
3.0mm程度以下の小断面材では、打抜きに伴って断面形
状が乱れることがわかった。すなわち、該打抜きに伴っ
て、その貫通油孔を含む横断面内で、図1Aに破線でや
や誇張して示すように、打抜きダイ側(図上下側、この
側は、溝の底面の広い側であり、オイルリング成形後は
外周側となる)で、ウェブ部1aを挾むフランジ部1
b,1bの寸法が打抜き前の素材(実線で示す)に比し、
幅寸法BがB′のごとく拡大することがわかった。つま
り、長さ方向にわたる幅の最大寸法(以下、幅寸法と記
す)のバラツキが生ずることになる。該鋼線材はピスト
ンリングメーカーで、通常、1図Bに傍線で示す部分
(外周部および両幅部分)を研削加工される(幅寸法の
場合、左右合計の研削代は0.03〜0.04mm程度)。この
際、断面形状が変形したままだと、研削代を増加する必
要があり、生産性が大幅に低下する。本発明は、上記生
産性の低下を防止した小断面寸法の内燃機関の2ピース
型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材およびその製
造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、小断面寸法の
内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形
鋼線材が油孔の打抜き穿孔に際し、前述のごとく断面形
状が変化することを見出したことに基づくものであり、
したがって該打抜き穿孔工程以降に、所定断面形状、つ
まり少なくとも幅方向から挟圧する一対のロールによる
ロール孔型を通過させて、変形を修正することにより、
その断面形状の幅寸法のバラツキを抑制した異形鋼線材
および上記作用による修正工程を含む異形鋼線材の製造
方法である。
内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形
鋼線材が油孔の打抜き穿孔に際し、前述のごとく断面形
状が変化することを見出したことに基づくものであり、
したがって該打抜き穿孔工程以降に、所定断面形状、つ
まり少なくとも幅方向から挟圧する一対のロールによる
ロール孔型を通過させて、変形を修正することにより、
その断面形状の幅寸法のバラツキを抑制した異形鋼線材
および上記作用による修正工程を含む異形鋼線材の製造
方法である。
【0007】すなわち、本発明は、概略断面形状が長方
形(正方形を含む)の二対辺部に凹部を形成されてHまた
はX字形とされ、ウェブ部に打抜貫通油孔を有する内燃
機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線
材において、該異形鋼線材はその断面形状が高さ寸法2.
3mm以下、幅寸法3.0mm以下であり、該異形鋼線材の長さ
方向にわたる前記幅寸法のバラツキが0.015mm以下であ
ることを特徴とする内燃機関の2ピース型オイルリング
用貫通油孔付き異形鋼線材、ならびに概略断面形状が長
方形(正方形を含む)の二対辺部に凹部を形成されてHま
たはX字形とされ、ウェブ部に打抜貫通油孔を有する内
燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼
線材の製造方法において、素鋼線材を前記HまたはX字
形の断面形状に異形成形する工程、異形成形された鋼線
材のウェブ部に貫通油孔を打抜きにより穿孔する工程お
よび穿孔された鋼線材をその幅方向から挟圧するロール
孔型を通過させる工程をこの順に包含することを特徴と
する内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き
異形鋼線材の製造方法である。
形(正方形を含む)の二対辺部に凹部を形成されてHまた
はX字形とされ、ウェブ部に打抜貫通油孔を有する内燃
機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線
材において、該異形鋼線材はその断面形状が高さ寸法2.
3mm以下、幅寸法3.0mm以下であり、該異形鋼線材の長さ
方向にわたる前記幅寸法のバラツキが0.015mm以下であ
ることを特徴とする内燃機関の2ピース型オイルリング
用貫通油孔付き異形鋼線材、ならびに概略断面形状が長
方形(正方形を含む)の二対辺部に凹部を形成されてHま
たはX字形とされ、ウェブ部に打抜貫通油孔を有する内
燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼
線材の製造方法において、素鋼線材を前記HまたはX字
形の断面形状に異形成形する工程、異形成形された鋼線
材のウェブ部に貫通油孔を打抜きにより穿孔する工程お
よび穿孔された鋼線材をその幅方向から挟圧するロール
孔型を通過させる工程をこの順に包含することを特徴と
する内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き
異形鋼線材の製造方法である。
【0008】本発明において、母材の望ましい化学成分
は、重量%で、C 0.8%を越え0.95%未満、Si 1.0%以
下、Mn 1.0%以下、Cr 15.0〜25.0%を含み、さらに必
要に応じてMoとWの1種または2種をMo+1/2Wで0.5
〜3.0%のグループ、VとNbの1種または2種をV+1/2
Nbで0.05〜2.0%のグループおよび12%以下のCoと5%以
下のNiおよび5%以下のCuの1種または2種以上からな
るグループのうち1種または2種以上のグループを含
み、残部Feと不可避不純物からなるものである。
は、重量%で、C 0.8%を越え0.95%未満、Si 1.0%以
下、Mn 1.0%以下、Cr 15.0〜25.0%を含み、さらに必
要に応じてMoとWの1種または2種をMo+1/2Wで0.5
〜3.0%のグループ、VとNbの1種または2種をV+1/2
Nbで0.05〜2.0%のグループおよび12%以下のCoと5%以
下のNiおよび5%以下のCuの1種または2種以上からな
るグループのうち1種または2種以上のグループを含
み、残部Feと不可避不純物からなるものである。
【0009】
【作用】先ず、本願の第1発明の数値限定理由を述べ
る。本願の鋼線は、その断面寸法を2.3mm(高さ)以下×
3.0mm(幅)以下として、長さ方向にわたる幅寸法のバラ
ツキを0.015mm以下とした。前記のように、小断面寸法
の該用途の異形鋼線材は、打抜き穿孔で断面形状が変形
し易く、断面寸法がこの寸法以下であるとこの変形のた
め、このままでは前記生産性の低下が顕著となるので、
この範囲を本発明の対象とした。また、幅寸法のバラツ
キは0.015mm以下とした。このバラツキとは、貫通油孔
付き異形鋼線材の貫通油孔がある長さ部分の最大幅寸法
と、該貫通油孔がある部分に隣合う貫通油孔がない長さ
部分の幅寸法の差を言う。このバラツキ0.015mmを越え
ると、上記生産性の低下が著しく、かつ、従来上記断面
寸法範囲で、この規準を満足する製品は、本願の方法発
明によるもの以外に見出せず、さらに0.015mm以下は該
発明により容易に達成できるからである。
る。本願の鋼線は、その断面寸法を2.3mm(高さ)以下×
3.0mm(幅)以下として、長さ方向にわたる幅寸法のバラ
ツキを0.015mm以下とした。前記のように、小断面寸法
の該用途の異形鋼線材は、打抜き穿孔で断面形状が変形
し易く、断面寸法がこの寸法以下であるとこの変形のた
め、このままでは前記生産性の低下が顕著となるので、
この範囲を本発明の対象とした。また、幅寸法のバラツ
キは0.015mm以下とした。このバラツキとは、貫通油孔
付き異形鋼線材の貫通油孔がある長さ部分の最大幅寸法
と、該貫通油孔がある部分に隣合う貫通油孔がない長さ
部分の幅寸法の差を言う。このバラツキ0.015mmを越え
ると、上記生産性の低下が著しく、かつ、従来上記断面
寸法範囲で、この規準を満足する製品は、本願の方法発
明によるもの以外に見出せず、さらに0.015mm以下は該
発明により容易に達成できるからである。
【0010】次に、本発明の材料の合金成分の望ましい
範囲の限定理由について述べる。CはCrおよびMo,W,
V等の添加元素と結合して炭化物を形成し、耐摩耗、耐
焼付性の向上に寄与すると共に、一部は基地中に固溶し
て基地を強化する。これらの効果を得るためにCは0.8%
を越えて添加することが必要であるが、本発明のオイル
リングは異形状断面を有するので0.95%以上では温間加
工といえどもリング素材の製造性およびリングの成形性
が悪くなる。また、0.95%を越えると過度の炭化物を形
成することにより、耐硫酸腐食性が低下する。したがっ
て、Cは0.8%を越え0.95%未満に限定するのがよい。Si
は鋼の精錬時に脱酸の目的で添加されると共に、耐硫酸
腐食性の向上に効果的な元素である。しかし、1%を越え
ると温間加工性を害するのでSiは1%以下に限定するの
がよい。
範囲の限定理由について述べる。CはCrおよびMo,W,
V等の添加元素と結合して炭化物を形成し、耐摩耗、耐
焼付性の向上に寄与すると共に、一部は基地中に固溶し
て基地を強化する。これらの効果を得るためにCは0.8%
を越えて添加することが必要であるが、本発明のオイル
リングは異形状断面を有するので0.95%以上では温間加
工といえどもリング素材の製造性およびリングの成形性
が悪くなる。また、0.95%を越えると過度の炭化物を形
成することにより、耐硫酸腐食性が低下する。したがっ
て、Cは0.8%を越え0.95%未満に限定するのがよい。Si
は鋼の精錬時に脱酸の目的で添加されると共に、耐硫酸
腐食性の向上に効果的な元素である。しかし、1%を越え
ると温間加工性を害するのでSiは1%以下に限定するの
がよい。
【0011】Mnは鋼の精錬時に脱硫の目的で添加され
るが、1.0%を越えると素線を製造する時の熱間加工性を
害するので1.0%以下に限定するのがよい。Crは前述の
ようにCと結び付いて、炭化物(M23C6型およびM
7C3型)を形成し、耐摩耗性および耐焼付性を向上さ
せるので、本発明のオイルリングには必須の成分であ
る。さらに一部は、基地中に固溶して耐酸化性、耐熱性
を向上させる。また、窒化処理により硬質の窒化層を生
成し、耐摩耗性、耐焼付性を大きく向上させる。これら
の効果を得、また靭性を低下させないために通常の環境
下(硫酸雰囲気中でない場合)では、例えば特開平1-2084
35号に記載のようにCr量は、7〜25%の範囲で十分対応
可能である。しかし、硫酸雰囲気中ではより過酷な条件
下となるためCr量は25%以下程度に限定される。本発明
者の実験の結果によれば、Cr量が15.0%未満の場合、お
そらく炭化物量が不足するために硫酸中での腐食摩耗量
が多くなる。またCr量が25.0%を越えるとおそらく炭化
物量および窒化を行った場合にCrの窒化物量が過度に
なるため耐硫酸腐食性が低下する。従ってCr量は15.0
〜25.0%の範囲に限定するのがよい。
るが、1.0%を越えると素線を製造する時の熱間加工性を
害するので1.0%以下に限定するのがよい。Crは前述の
ようにCと結び付いて、炭化物(M23C6型およびM
7C3型)を形成し、耐摩耗性および耐焼付性を向上さ
せるので、本発明のオイルリングには必須の成分であ
る。さらに一部は、基地中に固溶して耐酸化性、耐熱性
を向上させる。また、窒化処理により硬質の窒化層を生
成し、耐摩耗性、耐焼付性を大きく向上させる。これら
の効果を得、また靭性を低下させないために通常の環境
下(硫酸雰囲気中でない場合)では、例えば特開平1-2084
35号に記載のようにCr量は、7〜25%の範囲で十分対応
可能である。しかし、硫酸雰囲気中ではより過酷な条件
下となるためCr量は25%以下程度に限定される。本発明
者の実験の結果によれば、Cr量が15.0%未満の場合、お
そらく炭化物量が不足するために硫酸中での腐食摩耗量
が多くなる。またCr量が25.0%を越えるとおそらく炭化
物量および窒化を行った場合にCrの窒化物量が過度に
なるため耐硫酸腐食性が低下する。従ってCr量は15.0
〜25.0%の範囲に限定するのがよい。
【0012】MoとWは、Cと結びついてそれ自体の炭
化物を形成すると共に、Cr炭化物中にも固溶すること
により、これを強化し、さらに焼もどし軟化抵抗を高
め、また窒化処理において窒化層形成にも寄与し、耐摩
耗性、耐焼付性を向上させるので必要に応じて添加され
る。なお、Moは、耐硫酸腐食性を向上させる作用をも
つ。上記の効果を得るためには、Mo、Wの1種または
2種を(Mo+1/2W)で少なくとも0.5%とすることが望ま
しい。しかし、過度に添加すると靭性を低下させるので
(Mo+1/2W)の上限を3.0%とするのがよい。
化物を形成すると共に、Cr炭化物中にも固溶すること
により、これを強化し、さらに焼もどし軟化抵抗を高
め、また窒化処理において窒化層形成にも寄与し、耐摩
耗性、耐焼付性を向上させるので必要に応じて添加され
る。なお、Moは、耐硫酸腐食性を向上させる作用をも
つ。上記の効果を得るためには、Mo、Wの1種または
2種を(Mo+1/2W)で少なくとも0.5%とすることが望ま
しい。しかし、過度に添加すると靭性を低下させるので
(Mo+1/2W)の上限を3.0%とするのがよい。
【0013】VとNbは両元素とも結晶粒を微細化し、
靭性向上に寄与するだけでなく、Mo,Wと同様それ自体
で炭化物を形成すると共に、Cr炭化物中にも固溶し
て、これを強化することにより、耐摩耗性および耐焼付
性を向上させ、また焼戻し軟化抵抗を向上させる。した
がって、この目的で添加することができる。また、両元
素共、耐硫酸腐食性を向上させる作用をもつ。これらの
効果を得るためには、VとNbの1種または2種を(V+
1/2Nb)で少なくとも0.05%以上とすることが望ましい。
しかし過度に添加するとMC型炭化物を過剰に生成して
靭性を劣化させるので、(V+1/2Nb)量の上限を2.0%と
するのがよい。NiとCoは、本発明において窒化層の耐
硫酸腐食性を向上させる重要な元素である。両元素とも
炭化物を形成せず、基地に固溶し、耐硫酸腐食性を高め
るが、窒化物を形成しないため窒化層中においてもその
作用が残存することが特徴であり、窒化処理を行って使
用する本発明のピストンリング材には特に有効である。
Niが5.0%を越えると熱処理における所定の硬さが得ら
れにくくなり、またCoは12%を越えると熱間加工性およ
び冷間加工性を低下させるので、添加する場合、Niは
5.0%以下、Coは12%以下とするがよい。
靭性向上に寄与するだけでなく、Mo,Wと同様それ自体
で炭化物を形成すると共に、Cr炭化物中にも固溶し
て、これを強化することにより、耐摩耗性および耐焼付
性を向上させ、また焼戻し軟化抵抗を向上させる。した
がって、この目的で添加することができる。また、両元
素共、耐硫酸腐食性を向上させる作用をもつ。これらの
効果を得るためには、VとNbの1種または2種を(V+
1/2Nb)で少なくとも0.05%以上とすることが望ましい。
しかし過度に添加するとMC型炭化物を過剰に生成して
靭性を劣化させるので、(V+1/2Nb)量の上限を2.0%と
するのがよい。NiとCoは、本発明において窒化層の耐
硫酸腐食性を向上させる重要な元素である。両元素とも
炭化物を形成せず、基地に固溶し、耐硫酸腐食性を高め
るが、窒化物を形成しないため窒化層中においてもその
作用が残存することが特徴であり、窒化処理を行って使
用する本発明のピストンリング材には特に有効である。
Niが5.0%を越えると熱処理における所定の硬さが得ら
れにくくなり、またCoは12%を越えると熱間加工性およ
び冷間加工性を低下させるので、添加する場合、Niは
5.0%以下、Coは12%以下とするがよい。
【0014】Cuは、本発明において、カルボン酸に対
する耐腐食性を高める重要な元素である。このため、例
えばアルコール燃料の燃焼ガスなどの腐食性雰囲気に対
して従来の材料に増して、より耐食性の優れたピストン
リングとすることができる。5.0%を越えると熱間加工性
が悪くなるため、Cuの範囲は5.0%に限定するのがよ
い。なお、P,S,O,Nは、通常不純物元素として微
量含有される。
する耐腐食性を高める重要な元素である。このため、例
えばアルコール燃料の燃焼ガスなどの腐食性雰囲気に対
して従来の材料に増して、より耐食性の優れたピストン
リングとすることができる。5.0%を越えると熱間加工性
が悪くなるため、Cuの範囲は5.0%に限定するのがよ
い。なお、P,S,O,Nは、通常不純物元素として微
量含有される。
【0015】なお、本願の製造方法において、所定断面
形状に成形された異形鋼線材は連続熱処理炉により焼鈍
された後、打抜きを施される。この焼鈍は、断面成形加
工時の応力を適当に除去してその硬さをHV200〜380程度
に調整して、パンチやダイスの過度の負荷を防止し、ま
た過度のバリの発生を防止する作用をなす。しかし、さ
らに重要なことは、テンションアニーリング作用によ
り、高度に真直化された被加工異形鋼線材を得ることで
ある。これにより、非常に微細なパンチやダイスでなる
打抜き装置への被処理材の円滑な導入が可能となる。特
に、本発明の製造方法の望ましい打抜き態様は、直列に
配列された複数の貫通油孔を同時に打抜くものであり、
この際ダイスやガイド等はパスライン方向に長尺化する
から、特に真直精度を向上することが必要である。
形状に成形された異形鋼線材は連続熱処理炉により焼鈍
された後、打抜きを施される。この焼鈍は、断面成形加
工時の応力を適当に除去してその硬さをHV200〜380程度
に調整して、パンチやダイスの過度の負荷を防止し、ま
た過度のバリの発生を防止する作用をなす。しかし、さ
らに重要なことは、テンションアニーリング作用によ
り、高度に真直化された被加工異形鋼線材を得ることで
ある。これにより、非常に微細なパンチやダイスでなる
打抜き装置への被処理材の円滑な導入が可能となる。特
に、本発明の製造方法の望ましい打抜き態様は、直列に
配列された複数の貫通油孔を同時に打抜くものであり、
この際ダイスやガイド等はパスライン方向に長尺化する
から、特に真直精度を向上することが必要である。
【0016】次に、円滑な打抜きを達成するためには、
断面形状、寸法等の条件を満足することが必要である。
図2は本発明の望ましい打抜き装置の断面図例、図3は
打抜き完了材の平面図例である。すなわち、被打抜き材
である断面異形鋼線材1は、ダイス5、横ガイド11,
11および上ガイド兼パンチガイド10でリジットに案
内、保持される。それぞれの図面に示したごとく各寸法
に符号を付したとき、パンチ4は図3からわかるよう
に、通常、扁平比%a/b=5〜3程度と大きい扁平比
を有するから、W−bは打抜き力を受け止めるべき部分
の幅寸法を示している。これに対し打抜き力は、貫通孔
の内壁の面積を代表する孔の側面高さtに比例すると考
えられ、本発明者らの実験によるとダイスの強度を確保
して打抜きを円滑に保持するためには、W−b≧0.8tを
満足することが必要である。また、c≧tを満足すべき
である。この条件は打抜きに際してよりむしろその後の
リングへの曲げ成形時に割れの伝播性と関係して重要で
ある。すなわち、c<tではリング成形時にc寸法部分
に割れが貫通し易い。
断面形状、寸法等の条件を満足することが必要である。
図2は本発明の望ましい打抜き装置の断面図例、図3は
打抜き完了材の平面図例である。すなわち、被打抜き材
である断面異形鋼線材1は、ダイス5、横ガイド11,
11および上ガイド兼パンチガイド10でリジットに案
内、保持される。それぞれの図面に示したごとく各寸法
に符号を付したとき、パンチ4は図3からわかるよう
に、通常、扁平比%a/b=5〜3程度と大きい扁平比
を有するから、W−bは打抜き力を受け止めるべき部分
の幅寸法を示している。これに対し打抜き力は、貫通孔
の内壁の面積を代表する孔の側面高さtに比例すると考
えられ、本発明者らの実験によるとダイスの強度を確保
して打抜きを円滑に保持するためには、W−b≧0.8tを
満足することが必要である。また、c≧tを満足すべき
である。この条件は打抜きに際してよりむしろその後の
リングへの曲げ成形時に割れの伝播性と関係して重要で
ある。すなわち、c<tではリング成形時にc寸法部分
に割れが貫通し易い。
【0017】前述のように、被打抜き材は高い真直性が
必要であるが、その断面寸法変動、特に被打抜き材の断
面形状成形時に変動し易いウェブの厚み方向の寸法変動
は可能の限り抑制すべきであり、望ましくは50μm以
下、さらに望ましくは30μm以下とする。幅寸法も理論
的に厚み寸法と同等である。しかし、幅寸法は厚み寸法
に比し寸法変動の抑制が容易である。これら断面寸法の
変動は、被打抜き材の案内精度、したがって打抜き工具
の寿命に影響を与える。また、打抜き作業中はバリの高
さの監視を要する。ばりは望ましくは40μm以下、さら
に望ましくは30μm以下とする。過度のばりは使用中に
脱落してエンジントラブルの原因となると考えられるほ
か、特にリングへの曲げ成形時に油孔からの割れの発生
を誘発し易くなる。バリの抑制は、素材の硬さを適正に
すること(HV≧200)、パンチとダイスのクリアランスを
適正に保持すること、パンチおよびダイスエッジの摩耗
量を制限する(0.05mm以下)等による。
必要であるが、その断面寸法変動、特に被打抜き材の断
面形状成形時に変動し易いウェブの厚み方向の寸法変動
は可能の限り抑制すべきであり、望ましくは50μm以
下、さらに望ましくは30μm以下とする。幅寸法も理論
的に厚み寸法と同等である。しかし、幅寸法は厚み寸法
に比し寸法変動の抑制が容易である。これら断面寸法の
変動は、被打抜き材の案内精度、したがって打抜き工具
の寿命に影響を与える。また、打抜き作業中はバリの高
さの監視を要する。ばりは望ましくは40μm以下、さら
に望ましくは30μm以下とする。過度のばりは使用中に
脱落してエンジントラブルの原因となると考えられるほ
か、特にリングへの曲げ成形時に油孔からの割れの発生
を誘発し易くなる。バリの抑制は、素材の硬さを適正に
すること(HV≧200)、パンチとダイスのクリアランスを
適正に保持すること、パンチおよびダイスエッジの摩耗
量を制限する(0.05mm以下)等による。
【0018】打抜き方法は、打抜き工具の耐久性の関係
から間欠送りしつつ、適当箇数の油孔を同時に打抜くこ
とにより、パンチとダイスの打抜き工具の1セット当り
の負担を軽減することが望ましい。また、パンチは前述
のように折損し易いから、この場合直ちに作業を中断し
て事故の波及を防止する必要がある。このため、常時、
貫通油孔が所定位置に存在することを機械的、電気的、
光学的等により監視する必要がある。この際、貫通油孔
が定ピッチかつ同一形状であればこれ等の監視装置の簡
略化上好都合である。
から間欠送りしつつ、適当箇数の油孔を同時に打抜くこ
とにより、パンチとダイスの打抜き工具の1セット当り
の負担を軽減することが望ましい。また、パンチは前述
のように折損し易いから、この場合直ちに作業を中断し
て事故の波及を防止する必要がある。このため、常時、
貫通油孔が所定位置に存在することを機械的、電気的、
光学的等により監視する必要がある。この際、貫通油孔
が定ピッチかつ同一形状であればこれ等の監視装置の簡
略化上好都合である。
【0019】打抜きにより、貫通油孔を穿孔した後は、
異形鋼線材は断面形状を変形しているから、精密ロール
により幅方向から押圧する形状修正パスを施す。この修
正は、幅方向から圧下するロールセット(2方向ロー
ル)および前後の案内装置からなるものでも、ある程度
目的を達成することができる。しかし、調整の不完全性
(過度の圧下、案内装置の不適当等)により、部分的に
幅寸法マイナスを生じ易いので細心の注意を要する。こ
のため、望ましくは上記ロールセットに加え、上下の溝
状凹部の望ましくは底を除く互いに対向する壁面と突状
のロール面で接触するさらなるロール対からなる四方ロ
ールによるロールセットを用いる。これによる修正で
は、被修正材の接触圧力が増加するため、過度の圧下が
避けられ、また案内装置の設定不良によっても幅寸法マ
イナスが発生しにくい。また、この修正に用いるロール
として、該異形鋼線材の断面形状成形の仕上段に用いた
ロールをそのまま使用することができ好都合である。こ
の修正工程で、わずかの減面率を与えることにより一層
高い修正効果を得ることができることがわかった。
異形鋼線材は断面形状を変形しているから、精密ロール
により幅方向から押圧する形状修正パスを施す。この修
正は、幅方向から圧下するロールセット(2方向ロー
ル)および前後の案内装置からなるものでも、ある程度
目的を達成することができる。しかし、調整の不完全性
(過度の圧下、案内装置の不適当等)により、部分的に
幅寸法マイナスを生じ易いので細心の注意を要する。こ
のため、望ましくは上記ロールセットに加え、上下の溝
状凹部の望ましくは底を除く互いに対向する壁面と突状
のロール面で接触するさらなるロール対からなる四方ロ
ールによるロールセットを用いる。これによる修正で
は、被修正材の接触圧力が増加するため、過度の圧下が
避けられ、また案内装置の設定不良によっても幅寸法マ
イナスが発生しにくい。また、この修正に用いるロール
として、該異形鋼線材の断面形状成形の仕上段に用いた
ロールをそのまま使用することができ好都合である。こ
の修正工程で、わずかの減面率を与えることにより一層
高い修正効果を得ることができることがわかった。
【0020】最後に連続熱処理炉による焼入れ焼もどし
熱処理を行なう。ピストンリングの曲げ成形において、
被成形材の長手方向に亘ってスプリングバックおよび曲
り状態が均一であることが必要である。このため、本願
の製造方法の発明においても焼入れ焼もどし熱処理は連
続炉によるとよい。
熱処理を行なう。ピストンリングの曲げ成形において、
被成形材の長手方向に亘ってスプリングバックおよび曲
り状態が均一であることが必要である。このため、本願
の製造方法の発明においても焼入れ焼もどし熱処理は連
続炉によるとよい。
【0021】
【実施例】表1に示す成分の各素鋼線材から、温間ロー
ルダイスを主とする加工法により、それぞれ断面寸法で
幅2.0mm、図2のW寸法が1.05mm、高さ1.6mm、ウェブ厚
さ0.50mmの2ピースオイルリング用細物断面異形の鋼線
材をそれぞれ製作し、引き続き、連続焼鈍炉により焼鈍
した。この状態の硬さの1例はHV≒260であり、各材料
のデータは硬さバラツキHV25以下、平方向曲り、横曲り
とも1mm/1000mm以下、ねじれ0.5°/1000mm以下、ウェブ
部厚みバラツキ 0.020mm/50mm以下であった。
ルダイスを主とする加工法により、それぞれ断面寸法で
幅2.0mm、図2のW寸法が1.05mm、高さ1.6mm、ウェブ厚
さ0.50mmの2ピースオイルリング用細物断面異形の鋼線
材をそれぞれ製作し、引き続き、連続焼鈍炉により焼鈍
した。この状態の硬さの1例はHV≒260であり、各材料
のデータは硬さバラツキHV25以下、平方向曲り、横曲り
とも1mm/1000mm以下、ねじれ0.5°/1000mm以下、ウェブ
部厚みバラツキ 0.020mm/50mm以下であった。
【0022】
【表1】
【0023】上記各鋼線材を、貫通油孔幅b=0.50mm、
同長さa=2.8mm、同相互間隔c=4.2mmなる貫通油孔を
3箇ずつ同時に、打抜き回数5,000回(総計3×5,000=15,
000)打抜きした。その結果、各ロットともパンチ、ダイ
スの破損は全く発生せず、バンチ,ダイス角部に0.020mm
程度の摩耗が観察された。また、打抜き孔のピッチ・バ
ラツキは±0.050mm以内と良好であった。また、テスト
材の両端部のオイル孔の観察の結果、バリの高さは0.02
0mm以下であった。
同長さa=2.8mm、同相互間隔c=4.2mmなる貫通油孔を
3箇ずつ同時に、打抜き回数5,000回(総計3×5,000=15,
000)打抜きした。その結果、各ロットともパンチ、ダイ
スの破損は全く発生せず、バンチ,ダイス角部に0.020mm
程度の摩耗が観察された。また、打抜き孔のピッチ・バ
ラツキは±0.050mm以内と良好であった。また、テスト
材の両端部のオイル孔の観察の結果、バリの高さは0.02
0mm以下であった。
【0024】次に、異形孔型付きの非駆動式四方向ロー
ルによって、幅方向のみ約0.040mmの圧下を加えるスキ
ンパス修正パスと、寸法変化がほとんど生じない程度に
圧下を加えた修正のみのパスを行ない、幅方向の膨らみ
量(図1のB′−B)を測定したところ、打抜き後合計0.
040〜0.050mmあった膨らみがいずれの線材についても前
者で0.007mm、および後者で0.010mm以下に改善されてい
た。最後に、それらの貫通油孔付き断面異形線材を、HV
400程度に焼入れ焼もどししたのち、内径 60mmに連続曲
げ加工を施した。曲げ加工の際のバリを起点とする、ま
たは他の原因の折損は全く発生しなかった。次に、上記
実施例に用いた膨れ 0.040〜0.050mmを有する材料を用
いて、一対のロールを用い左右のみから軽く圧下する修
正ではいずれの線材についても膨らみを0.014mm以下と
することができた。
ルによって、幅方向のみ約0.040mmの圧下を加えるスキ
ンパス修正パスと、寸法変化がほとんど生じない程度に
圧下を加えた修正のみのパスを行ない、幅方向の膨らみ
量(図1のB′−B)を測定したところ、打抜き後合計0.
040〜0.050mmあった膨らみがいずれの線材についても前
者で0.007mm、および後者で0.010mm以下に改善されてい
た。最後に、それらの貫通油孔付き断面異形線材を、HV
400程度に焼入れ焼もどししたのち、内径 60mmに連続曲
げ加工を施した。曲げ加工の際のバリを起点とする、ま
たは他の原因の折損は全く発生しなかった。次に、上記
実施例に用いた膨れ 0.040〜0.050mmを有する材料を用
いて、一対のロールを用い左右のみから軽く圧下する修
正ではいずれの線材についても膨らみを0.014mm以下と
することができた。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように、幅×高さ寸法が、3m
m×2.3mm以下の小断面寸法の内燃機関の2ピース型オイ
ルリング用貫通油孔付き異形鋼線材は、打抜きによる穿
孔により、断面形状の変形が起こり、このままではその
後の生産性を低下させる。本願の方法発明は、この変形
した穿孔材をロール孔型を通過させることにより修正す
るものであり、また本願の異形鋼線材はこの修正により
その後の研削工程等の生産性の低下を防止したものであ
る。これにより、生産性を低下させることのない小断面
の2ピース型オイルリング用貫通孔付き異形鋼線材の供
給が可能になり、小型内燃機関においても2ピース型オ
イルリングによる高性能化の利益を享受することが可能
となった。
m×2.3mm以下の小断面寸法の内燃機関の2ピース型オイ
ルリング用貫通油孔付き異形鋼線材は、打抜きによる穿
孔により、断面形状の変形が起こり、このままではその
後の生産性を低下させる。本願の方法発明は、この変形
した穿孔材をロール孔型を通過させることにより修正す
るものであり、また本願の異形鋼線材はこの修正により
その後の研削工程等の生産性の低下を防止したものであ
る。これにより、生産性を低下させることのない小断面
の2ピース型オイルリング用貫通孔付き異形鋼線材の供
給が可能になり、小型内燃機関においても2ピース型オ
イルリングによる高性能化の利益を享受することが可能
となった。
【図1】断面異形鋼線のウェブ部に貫通油孔を打抜き加
工する打抜装置の断面図例および寸法符号を説明する図
である。
工する打抜装置の断面図例および寸法符号を説明する図
である。
【図2】打抜き完了材の平面図例および寸法符号を説明
する図である。
する図である。
【図3】打抜完了材の平面図である。
1 断面異形線材、1a ウエブ部、1b フランジ
部、4 パンチ、5 ダイス、10 上ガイド兼パンチ
ガイド、11 横ガイド、B,B 幅寸法
部、4 パンチ、5 ダイス、10 上ガイド兼パンチ
ガイド、11 横ガイド、B,B 幅寸法
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16J 9/00 - 9/28 B23P 15/06 B21K 1/18
Claims (4)
- 【請求項1】 概略断面形状が長方形(正方形を含む)
の二対辺部に凹部を形成されてHまたはX字形とされ、
ウェブ部に打抜貫通油孔を有する内燃機関の2ピース型
オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材において、該異
形鋼線材はその断面形状が高さ寸法2.3mm以下かつ
幅寸法3.0mm以下であり、該異形鋼線材の長さ方向
にわたる前記幅寸法のバラツキが0.015mm以下で
あることを特徴とする内燃機関の2ピース型オイルリン
グ用貫通油孔付き異形鋼線材。 - 【請求項2】 異形鋼線材の化学成分は、重量%で、C
0.8%を越え0.95%未満、Si1.0%以下、Mn1.0%以
下、Cr15.0〜25.0%を含み、さらに必要に応じてMo
とWの1種または2種をMo+1/2Wで0.5〜3.0のグ
ループ、VとNbの1種または2種をV+1/2Nbで
0.05〜2.0%のグループならびに12%以下のCoと5%
以下のNiおよび5%以下のCuの1種または2種以上
からなるグループのうち1種または2種以上のグループ
を含み、残部Feと不可避不純物からなる請求項1の内
燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼
線材。 - 【請求項3】 概略断面形状が長方形(正方形を含む)
の二対辺部に凹部を形成されてHまたはX字形とされ、
ウェブ部に打抜貫通油孔を有する内燃機関の2ピース型
オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材の製造方法にお
いて、素鋼線材を前記をHまたはX字形の断面形状に異
形成形する工程、異形成形された鋼線材のウェブ部に貫
通油孔を打抜きにより穿孔する工程および穿孔された鋼
線材をその幅方向から挟圧するロール孔型を通過させる
工程をこの順に包含することを特徴とする内燃機関の2
ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材の製造
方法。 - 【請求項4】 請求項3の製造方法におけるロール孔型
は、HまたはX字形断面形状の二対辺部に形成された両
凹部それぞれの互いに対向する壁面に、凸状ロール面で
接するごとく配置された一対のロールの前記ロール面を
含むものである請求項3の内燃機関の2ピース型オイル
リング用貫通油孔付き異形鋼線材の製造方法。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28599792A JP2909327B2 (ja) | 1992-10-23 | 1992-10-23 | 内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材およびその製造方法 |
DE69307823T DE69307823T2 (de) | 1992-10-23 | 1993-10-12 | Stahldraht für einen Ölring und Verfahren zur seiner Herstellung |
EP93116516A EP0594042B1 (en) | 1992-10-23 | 1993-10-12 | A section steel wire for an oil ring and a method of producing the same |
US08/138,050 US5411609A (en) | 1992-10-23 | 1993-10-19 | Section steel wire of oil ring |
KR1019930022185A KR960008694B1 (ko) | 1992-10-23 | 1993-10-22 | 오일링의 섹션 강철 와이어 및 그 생산 방법 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28599792A JP2909327B2 (ja) | 1992-10-23 | 1992-10-23 | 内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06137429A JPH06137429A (ja) | 1994-05-17 |
JP2909327B2 true JP2909327B2 (ja) | 1999-06-23 |
Family
ID=17698676
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP28599792A Expired - Fee Related JP2909327B2 (ja) | 1992-10-23 | 1992-10-23 | 内燃機関の2ピース型オイルリング用貫通油孔付き異形鋼線材およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2909327B2 (ja) |
-
1992
- 1992-10-23 JP JP28599792A patent/JP2909327B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06137429A (ja) | 1994-05-17 |
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