JP3591382B2 - 車両制御装置とそれに用いるエンジン制御用マイクロコンピュータ - Google Patents

車両制御装置とそれに用いるエンジン制御用マイクロコンピュータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランスミッションのギア変速時にクラッチを一時的に切断し、そのクラッチ操作に合わせてエンジン回転数を制御する車両制御装置と、それに用いるエンジン制御用マイクロコンピュータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
複数の変速段を持ち自動変速可能なトランスミッションを備え、エンジンの出力を摩擦クラッチとトランスミッションとを介して車軸に伝達するよう構成される車両において、マイクロコンピュータ等により摩擦クラッチを切断又は接続する自動変速システムが提案されている。この自動変速システムは、摩擦クラッチの断続を制御すると共にトランスミッションのギア変速を制御するためのトランスミッションECUと、エンジンの運転状態を制御するためのエンジンECUとを備え、双方のECUは互いに通信可能な状態で接続されている。
【0003】
トランスミッションECUは、車両走行状態やドライバの意志に従いギア変速が要求されると、摩擦クラッチを切断した後にギア変速を行い、更にその後、エンジンECUに対して回転数制御を指示する。そして、その回転数制御の指示に従いエンジン回転数が制御されると、摩擦クラッチを接続する。このとき、エンジンECUは、トランスミッションECUから回転数制御の指示を受信すると、クラッチ再接続が可能な程度にエンジン回転数を一時的に制御する。
【0004】
また従来より、上記自動変速システムを備えた車両において、アクセルペダルの操作に関係なく車速を一定に保つクルーズ制御(定速走行制御)を実施するものが具体化されており、例えばエンジンECUによる燃料噴射量制御によりクルーズ制御が実現される。
【0005】
かかる構成において、クルーズ制御中に変速操作を実施する場合には、エンジンECUは、トランスミッションECUからの変速要求信号を受信した後、クルーズ制御を一時解除する。そして、クルーズ制御の一時解除の状態で変速操作が行われる。その後、変速操作が完了し、トランスミッションECUからクルーズ復帰要求信号を受信すると、エンジンECUはクルーズ制御を再開する。
【0006】
変速操作時にクルーズ制御を一時解除する理由は以下の通りである。すなわち、クルーズ制御を一時解除しないと、変速操作によりクラッチを切った状態でクルーズ制御での燃料噴射量が演算され、しかもこの場合、当然車速が落ちるためにクルーズ制御用の噴射量が増加方向に演算されることになり、変速中はクラッチ切断のため問題ないが、変速完了後にクラッチを接続した時に、車両がドライバの意志に反した加速をしてしまうおそれがあるためである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来技術では、エンジンECUは、トランスミッションECUからのクルーズ復帰要求信号のみでクルーズ制御に復帰してしまうため、トランスミッションECU側の異常や通信異常等が原因で誤ってクルーズ制御を開始してしまうことが考えられる。つまり、変速操作前にクルーズ制御を実施していなかった場合でも、変速操作後、誤ってクルーズ復帰要求信号がトランスミッションECUからエンジンECUに送信されると不当なクルーズ制御を実施してしまう。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、クルーズ制御中にギア変速が行われる際に、クルーズ制御の中断及び復帰を適正に行うことができる車両制御装置とそれに用いるエンジン制御用マイクロコンピュータを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の車両制御装置では、エンジン制御用の第1のマイクロコンピュータと変速制御用の第2のマイクロコンピュータとが互いに通信可能に接続され、第1のマイクロコンピュータは、クルーズ制御の実施中に一時解除要求があった場合、クルーズ制御を中断し、一時解除要求がギア変速の要求である場合には、クルーズ制御の実施中である旨を示すクルーズ実施データを記憶手段に記憶してクルーズ制御を中断し、第2のマイクロコンピュータによるギア変速の終了後、前記記憶手段に記憶したクルーズ実施データに応じてクルーズ制御への復帰を許可する。この場合、クルーズ実施データを確認することで、通信異常等が原因でクルーズ制御が誤って実施されるといった不都合が解消される。その結果、クルーズ制御中に一時解除要求であるギア変速が行われてクルーズ制御が中断される際に、ギア変速後のクルーズ制御への復帰を適正に行い、ひいては良好なる車両走行を実現することができる。またこのとき、ギア変速前にクルーズ制御を実施していないにも拘わらず、誤ってクルーズ制御を実施することはない。
【0010】
請求項2に記載の発明では、クルーズ制御の実施中にギア変速が実施された後、第2のマイクロコンピュータは、クルーズ制御への復帰を第1のマイクロコンピュータに指示し、第1のマイクロコンピュータは、第2のマイクロコンピュータからのクルーズ制御の復帰指示を入力し且つ、前記クルーズ実施データがクルーズ制御中を示すデータであるときに、クルーズ制御への復帰を許可する。この場合、第2のマイクロコンピュータからのクルーズ制御の復帰指示と、クルーズ実施データとのAND条件によりクルーズ制御への復帰を許可するので、本車両制御の信頼性がより一層向上する。
【0011】
また、請求項3に記載のエンジン制御用マイクロコンピュータでは、クルーズ制御の実施中に一時解除要求であるトランスミッションのギア変速の要求を受けると、クルーズ制御の実施中である旨を示すクルーズ実施データを記憶手段に記憶してクルーズ制御を中断し、ギア変速の終了後、前記記憶手段に記憶したクルーズ実施データに応じてクルーズ制御への復帰を許可する。その結果請求項1と同様に、クルーズ制御中に一時解除要求であるギア変速が行われてクルーズ制御が中断される際に、ギア変速後のクルーズ制御への復帰を適正に行い、ひいては良好なる車両走行を実現することができる。またこのとき、ギア変速前にクルーズ制御を実施していないにも拘わらず、誤ってクルーズ制御を実施することはない。
【0012】
請求項4に記載の発明では、クルーズ制御の実施中にギア変速が実施された後、変速制御用の別のマイクロコンピュータよりクルーズ制御への復帰の指示を受け且つ、クルーズ実施データがクルーズ制御中を示すデータであるときに、クルーズ制御への復帰を許可する。この場合、別のマイクロコンピュータからのクルーズ制御の復帰指示と、クルーズ実施データとのAND条件によりクルーズ制御への復帰を許可するので、本車両制御の信頼性がより一層向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態における車両制御システムでは、ディーゼルエンジンと自動変速可能なトランスミッションとを搭載した自動車を制御対象とし、エンジン出力はクラッチを介してトランスミッション側に伝達される。また、本車両制御システムでは、ディーゼルエンジンの運転状態を制御する第1のマイクロコンピュータとしてのエンジンECUと、車両走行状態等に応じてクラッチの切断及び接続を制御すると共にトランスミッションのギア変速を実施する第2のマイクロコンピュータとしてのトランスミッションECUとを備える。そして、これら2つのECUは、通信により互いに情報を交換しながら、車両走行中にギア変速やそれに付随するエンジン制御等を適宜実施する。また本車両制御システムにおいて、エンジンECUは、車両の走行速度を一定に保つためのクルーズ制御(定速走行制御)を実施する。以下にその構成及び作用を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本車両制御システムの概要を示す全体構成図である。図1において、エンジン10は多気筒ディーゼルエンジンからなり、燃料噴射装置11から供給される燃料が各気筒に噴射供給される。燃料噴射装置11は、例えばコモンレール式燃料噴射装置であり、図示しないコモンレール(蓄圧配管)に高圧状態で蓄えられた燃料が電磁式のインジェクタの駆動に伴い各気筒に噴射され、その噴射燃料が各気筒で燃焼に供される。エンジン10の回転数は、例えば図示しないクランク軸に配設されるエンジン回転数センサ12により検出される。
【0015】
エンジン10には、空圧制御式の摩擦クラッチ13を介して複数の変速段を持つトランスミッション14が接続されている。摩擦クラッチ13は、エンジン10の出力軸10aに接続されるフライホイール15と、それに対向するクラッチ板16とを有し、クラッチアクチュエータ17の駆動に伴いクラッチ板16がフライホイール15に対して圧接又は離間の位置に制御される。すなわち、クラッチアクチュエータ17が非動作状態から動作状態へ移行すると、クラッチ板16がフライホイール15に圧接されて摩擦クラッチ13が切断状態から接続状態に変わる。また、クラッチアクチュエータ17が動作状態から非動作状態へ移行すると、クラッチ板16がフライホイール15から離れて摩擦クラッチ13が接続状態から切断状態に変わる。
【0016】
クラッチアクチュエータ17の詳細な構成の図示は省略するが、概ねそれは以下の構成を有する。つまり、クラッチアクチュエータ17は主要な構成として、エアタンク18との間のエア通路19を断続する電磁開閉弁と、この電磁開閉弁を経て供給されるエア圧により動作するエアシリンダとを有し、例えばドライバによりクラッチペダルが操作された時に摩擦クラッチ13を切断する。また、同クラッチアクチュエータ17は、車両走行中のギア変速に際し、後述するトランスミッションECU40からの制御信号に従い摩擦クラッチ13を一時的に切断する。
【0017】
ここで、摩擦クラッチ13には、同クラッチ13の切断又は接続の状態を検出するためのクラッチタッチセンサ20と、トランスミッション14の入力軸14aに配設され、クラッチ板16側(入力軸14a)の回転数を検出するためのクラッチ回転数センサ21とが取り付けられている。
【0018】
トランスミッション14には、そのギア変速時にトランスミッションECU40からの制御信号に従い動作するギアシフトアクチュエータ22が取り付けられている。ギアシフトアクチュエータ22は、エアタンク18からの高圧の作動エアにより図示しないパワーシリンダを駆動させものであり、これにより目標とする変速段にギア位置が切り替えられる。トランスミッション14にはギア位置を検出するギア位置センサ23が取り付けられ、トランスミッション14の図示しない出力軸(車軸)には車速を検出するための車速センサ24が取り付けられている。
【0019】
エンジンECU30とトランスミッションECU40は各々、CPU、ROM、RAM、入出力回路等からなる周知の論理演算回路を備え、双方のECU30,40が互いに通信可能に接続されている。エンジンECU30には、前述したエンジン回転数センサ12、クラッチタッチセンサ20及び車速センサ24からそれぞれの検出信号が入力されると共に、その他に、アクセルペダルセンサ25によるアクセルペダルの踏み込み操作量の検出信号と、クルーズコントロールスイッチ28によるクルーズ制御の設定信号とが入力される。エンジンECU30は、これら入力した各センサの検出信号に基づいて、トランスミッション14のギア変速に際し、燃料噴射装置11による燃料噴射量を制御してエンジン10の出力トルクや回転数を調整する。また、エンジンECU30は、クルーズ制御時に、アクセルペダル操作に関係なく現在の車速を目標車速に一致させるよう燃料噴射量を調整し、一定速度で車両を走行させる。
【0020】
なお、上記クルーズコントロールスイッチ28は、定速クルーズを実行可能な定速モードに動作モードを設定、変更するためのメインスイッチと、自身が押下された時の車速を目標車速として設定してクルーズ制御を開始させるためのセットスイッチと、一時的に解除されたクルーズ制御をブレーキペダル等が操作されることにより再開させるためのリジュームスイッチと、実行中のクルーズ制御を中止させるためのキャンセルスイッチとを備えている。
【0021】
一方、トランスミッションECU40には、前述したクラッチタッチセンサ20、クラッチ回転数センサ21及びギア位置センサ23からのそれぞれの検出信号が入力されると共に、その他に、シフトレバー26による変速段選択の信号(変速信号)と、クラッチペダルセンサ27によるクラッチペダルの操作状態の検出信号とが入力される。トランスミッションECU40は、これら入力した各センサの検出信号に基づいて、トランスミッション14のギア変速に際し、クラッチアクチュエータ17を操作して摩擦クラッチ13の切断及び接続を行うと共に、ギアシフトアクチュエータ22を操作してギア変速を行う。
【0022】
因みに本実施の形態では、シフトレバー26の変速装置として、ドライバが手動でシフト位置を切り替えることが可能なマニュアルレンジと、自動でシフト位置が切り替わるオートマチックレンジとが設けられており、マニュアルレンジでは変速段のアップ/ダウン(シフトアップ、シフトダウン)が手動で操作できる。また、オートマチックレンジでは、車両走行状態に応じてギア変速の要否が判断されてギア変速が行われる。
【0023】
次に、エンジンECU30とトランスミッションECU40により実施されるギア変速時の動作を図2〜図5のフローチャートと、図6のタイムチャートを参照して説明する。なお、図6では、両ECU30,40間の信号の授受の様子と、エンジン回転数の推移と、エンジン出力トルクの推移と、摩擦クラッチ13の断続状態と、ギア変速動作とを示す。
【0024】
図2は、トランスミッションECU40によるメインルーチンを示すフローチャートであり、同図において車両走行状態に応じてギア変速要求が発生すると(ステップ100がYES)、トランスミッションECU40は、トルク減少、回転数指示、トルク復帰の3つの処理モードを順次実施する(ステップ110,130,150)。例えば、シフトレバーがマニュアルレンジにあり、ドライバにより手動でシフトアップ又はシフトダウン操作が行われる時、或いはシフトレバーがオートマチックレンジにあり、ギア位置、アクセルペダルの踏み込み操作量、車速等によりギア変速が必要であると判断される時、ステップ100が肯定判別される。
【0025】
ギア変速時に上記3つの処理モードが順次実施される場合、トランスミッションECU40は、後述する図3(a)、図4(a)、図5(a)の処理を実施する。また、これに対し、エンジンECU30は、トランスミッションECU40から送信される指示に従い、後述する図3(b)、図4(b)、図5(b)の処理を実施する。以下、上記3つのモードの処理内容を詳細に説明する。
【0026】
先ず始めに、トルク減少モードにおいて、トランスミッションECU40は図3(a)の処理を実行する。つまり、ステップ111では、エンジン出力トルクを減少させる旨を表すトルク減少コマンドをエンジンECU30に対して送信する。ステップ112,113では、エンジンECU30から受信した信号に基づき、エンジンECU30のモード状態とエンジン出力トルクとを読み込み、続くステップ114では、前記読み込んだモード状態とエンジン出力トルクとからトルク減少モードが完了したか否かを判別する。トルク減少モードの完了でなければ、ステップ111〜114を繰り返し実行し、トルク減少モードの完了であれば、ステップ115に進む。
【0027】
ステップ115では、クラッチアクチュエータ17を操作して摩擦クラッチ13をそれまでの接続状態から切断状態へと変化させる。続くステップ116では、ギアシフトアクチュエータ22を操作してギア変速の制御を実施し、その後本ルーチンを終了する。
【0028】
これに対し、エンジンECU30は、図3(b)の処理を例えば10msec毎に実行する。つまり、図3(b)において、ステップ211では、トルク減少コマンドをトランスミッションECU40から受信したか否かを判別する。そして、トルク減少コマンドを受信すると、トルク減少モードに突入すると共に、トルク減少の処理を実施する(ステップ212,213)。実際には、燃料噴射装置11による燃料噴射量を減少させてエンジン出力トルクを所定値(例えば0)まで減少させる。このとき、出力トルク情報は、トランスミッションECU40に逐次送信される。
【0029】
図6のタイムチャートでは、時刻t1以降、トランスミッションECU40からエンジンECU30へトルク減少コマンドが送信され(図のA1)、その逆にエンジンECU30からトランスミッションECU40へはトルク減少モード突入を示す信号と、エンジン出力トルクを示す信号とが送信される(図のB1)。その後、エンジンECU30によりトルク減少の処理が実施され、時刻t2でエンジン出力トルクが例えば0まで減少すると、トランスミッションECU40によりトルク減少モード完了が判断され、摩擦クラッチ13が切断される。その微少時間後に、ギア変速が行われる。但し、図6にはギア変速段が上げられる事例を示す。
【0030】
また、回転数指示モードでは、トランスミッションECU40は図4(a)の処理を実行する。図4(a)において、先ずステップ131では、回転数指示コマンドをエンジンECU30に対して送信する。ステップ132では、エンジンECU30から受信した信号に基づき、エンジンECU30のモード状態を読み込み、続くステップ133では、前記読み込んだモード状態からエンジンECU30が回転数指示モードに突入したか否かを判別する。回転数指示モードに突入していなければ、ステップ131〜133を繰り返し実行し、回転数指示モードに突入していれば、ステップ134に進む。
【0031】
ステップ134では、再び回転数指示コマンドをエンジンECU30に対して送信し、ステップ135では、エンジンECU30から受信した信号に基づき、エンジン回転数を読み込む。また、ステップ136では、クラッチ回転数センサ21の検出結果に基づいてクラッチ回転数を読み込む。その後、ステップ137では、エンジン回転数とクラッチ回転数とが一致し、摩擦クラッチ13の再接続が可能な状態になったか否かを判別する。クラッチ接続が可能でなければ、ステップ134〜137を繰り返し実行し、クラッチ接続が可能であれば、ステップ138に進む。
【0032】
ステップ138では、クラッチアクチュエータ17を操作して徐々に摩擦クラッチ13を接続する。ステップ139〜141では再び、回転数指示コマンドの送信、エンジン回転数の読み込み、クラッチ回転数の読み込みを行う。その後、ステップ142では、摩擦クラッチ13の接続が完了したか否かを判別する。クラッチ接続が完了していなければ、ステップ138〜142を繰り返し実行し、クラッチ接続が完了していれば、そのまま本ルーチンを終了する。
【0033】
これに対し、エンジンECU30は図4(b)の処理を実行する。つまり、図4(b)において、ステップ231では、回転数指示コマンドをトランスミッションECU40から受信したか否かを判別し、ステップ232では、クラッチタッチセンサ20の検出信号を基に、摩擦クラッチ13が実際に切断されているか否かを判別する。そして、ステップ231,232が共にYESの場合のみ、ステップ233でトルク減少モードを解除すると共に、ステップ234で回転数指示コマンドに従い回転数指示モードに突入する。
【0034】
更に、ステップ235では、燃料噴射装置11による燃料噴射量を調整して回転数制御を実施する。このとき、エンジン回転数情報は、トランスミッションECU40に逐次送信される。その後、ステップ236では、トランスミッションECU40でのクラッチ接続が完了したか否かを判別し、完了でなければ回転数制御を継続し、完了であればそのまま本ルーチンを終了する。
【0035】
図6のタイムチャートでは、時刻t3以降、トランスミッションECU40からエンジンECU30へ回転数指示コマンドが送信され(図のA2)、その逆にエンジンECU30からトランスミッションECU40へは回転数指示モード突入を示す信号と、エンジン回転数を示す信号とが送信される(図のB2)。そして、時刻t4では、エンジン回転数がクラッチ回転数に一致してクラッチの再接続が可能であると判断され、トランスミッションECU40によりクラッチ接続が開始される。時刻t4以降、クラッチ接続に伴い出力トルク、エンジン回転数が共に上昇する。そして、時刻t5では、クラッチ接続が完了したと判断される。
【0036】
更にトルク復帰モードにおいて、トランスミッションECU40は図5(a)の処理を実行する。つまり、先ずステップ151では、エンジン出力トルクを復帰させる旨を表すトルク復帰コマンドをエンジンECU30に対して送信する。ステップ152,153では、エンジンECU30から受信した信号に基づき、エンジンECU30のモード状態とエンジン出力トルクとを読み込み、続くステップ154では、前記読み込んだモード状態とエンジン出力トルクとからトルク復帰モードが終了したか否かを判別する。トルク復帰モードの完了でなければ、ステップ151〜154を繰り返し実行し、トルク復帰モードの完了であれば、ステップ155でクルーズ復帰要求をエンジンECU30へ送信した後、本ルーチンを終了する。
【0037】
なお、ステップ155のクルーズ復帰要求とは、後述するクルーズ制御において、変速要求によりクルーズ制御が中断された時に、クルーズ制御を再開させるための指示信号である。
【0038】
これに対し、エンジンECU30は図5(b)の処理を実行する。つまり、図5(b)において、ステップ251では、トルク復帰コマンドをトランスミッションECU40から受信したか否かを判別する。そして、トルク復帰コマンドを受信すると、ステップ252で回転数指示モードを解除すると共に、ステップ253でトルク復帰コマンドに従いトルク復帰モードに突入する。
【0039】
その後、ステップ254では、燃料噴射装置11による燃料噴射量を制御してトルク復帰の処理を実施し、続くステップ255では、エンジン出力トルクがドライバの要求値まで復帰したか否かを判別する。ステップ255がNOであればトルク復帰の処理を継続し、ステップ255がYESであれば、ステップ256でトルク復帰モードを解除した後、本ルーチンを終了する。
【0040】
図6のタイムチャートでは、時刻t5以降、トランスミッションECU40からエンジンECU30へトルク復帰コマンドが送信され(図のA3)、その逆にエンジンECU30からトランスミッションECU40へはトルク復帰モード突入を示す信号と、エンジン出力トルクを示す信号とが送信される(図のB3)。そして、トルク復帰の処理によりエンジン出力トルクが増加し、時刻t6では、トルク復帰完了の旨が判断される。また、この時刻t6では、トランスミッションECU40からエンジンECU30へクルーズ復帰要求が送信される(図のA4)。
【0041】
次に、エンジンECU30により実施されるクルーズ制御について図7及び図8のフローチャートに従い説明する。なお、図7はクルーズ制御の概要を示すフローチャート、図8はクルーズ制御中に変速操作が行われた時の処理を示すフローチャートであり、これらは何れも所定の時間周期(例えば4ms周期)で実行される。
【0042】
図7において、先ずステップ301では、クルーズ完全解除要求が有ったか否かを判別し、ステップ302では、クルーズ一時解除要求が有ったか否かを判別する。例えば、目標車速に対して車速が所定値以上低下したり、システム上に何らかの異常が発生したり、クルーズコントロールスイッチ28がキャンセルされたりすると、クルーズ完全解除が要求されたとみなされる。また、クルーズ制御の実行中にドライバがブレーキ操作をすると、クルーズ一時解除が要求されたとみなされる。
【0043】
ステップ301,302が何れもNOであれば、ステップ303でクルーズ開始条件が成立するか否かを判別する。クルーズ開始条件としては、クルーズコントロールスイッチ28のメインスイッチによって定速モードに設定されている状態で、セットスイッチがONに操作されることを含む。
【0044】
クルーズ開始条件が成立する場合、ステップ304では、クルーズコントロールスイッチ28のセットスイッチが操作された時の車速をクルーズ目標車速として設定する。続くステップ305,306では、クルーズ実施フラグXCCに「1」をセットすると共に、クルーズ復帰許可フラグXRSに「1」をセットする。
【0045】
また、クルーズ開始条件が不成立の場合(ステップ303がNO)、ステップ307では今現在、クルーズ復帰許可フラグXRSが「1」であり且つ、クルーズ実施フラグXCCが「0」であるか否かを判別し、XRS=1で且つXCC=0の時、ステップ308では、クルーズ復帰要求の有無を判別する。この場合、XRS=1で且つXCC=0はクルーズ制御の一時解除状態であることを意味し、その状態でクルーズコントロールスイッチ28のリジュームスイッチがONに操作されれば、すなわちクルーズ復帰要求が有ればステップ305に進み、クルーズ復帰要求が無ければステップ311に進む。
【0046】
一方、クルーズ完全解除が要求された場合(ステップ301がYES)、ステップ309でクルーズ復帰許可フラグXRSを「0」にクリアすると共に、ステップ310でクルーズ実施フラグXCCを「0」にクリアする。また、クルーズ一時解除が要求された場合(ステップ302がYES)、ステップ310でクルーズ実施フラグXCCを「0」にクリアする。
【0047】
その後、ステップ311では、クルーズ実施条件が成立するか否かを判別する。具体的には、クルーズ実施フラグXCCが「1」であるか否かを判別する。そして、クルーズ実施条件の成立時に限り、ステップ312〜315で実際の車速(実車速)が前記設定した目標車速になるよう、燃料噴射装置11による燃料噴射量を制御する。より詳しくは、ステップ312では、実車速が目標車速に一致するか否かを判別し、ステップ313では、実車速が目標車速よりも小さいか否かを判別する。そして、実車速=目標車速であれば、燃料噴射量を増減させることなく本処理を終了する。これに対し、実車速<目標車速であれば、燃料噴射量を増量補正し(ステップ314)、実車速>目標車速であれば、燃料噴射量を減量補正する(ステップ315)。
【0048】
次に、クルーズ制御中に変速操作を実施する場合の処理を図8に従い説明する。因みに、車両が坂道を定速モードで走行する場合や、クルーズ制御中に目標車速が増速又は減速される場合等に変速操作が要求される。
【0049】
図8において、ステップ401では、トランスミッションECU40より変速要求信号を受信したか否かを判別し、変速要求信号の受信有りの場合、ステップ402では、その時のクルーズ実施フラグXCCの状態をエンジンECU30内のメモリに記憶する。これにより、変速要求を受けた時にクルーズ制御中であったことを示すデータ(クルーズ実施データ)が記憶される。続くステップ403では、クルーズ制御の実施を一時的に解除する。すなわち、クルーズ実施フラグXCCを「0」にクリアする。
【0050】
その後、ステップ404では、トランスミッションECU40からの実施要求に従い変速操作のためのトルク減少、回転数指示、トルク復帰の各処理モードを実施する。この変速操作のための一連の処理は、上述した図2〜図5のフローチャートに従い実施される。
【0051】
更にステップ405では、トランスミッションECU40からクルーズ復帰要求信号を受信したか否かを判別する。このクルーズ復帰要求は、変速操作のための一連の処理が終了した後、トランスミッションECU40からエンジンECU30へ送信されることは前述した(図5(a)のステップ155)。続くステップ406では、前記ステップ402で記憶したクルーズ実施フラグXCCに基づき、変速操作前にクルーズ制御を実施していたか否かを判別する。
【0052】
ステップ405,406が共にYESの場合、すなわち、クルーズ復帰要求を受信し且つ、変速操作前にクルーズ制御を実施していた場合、ステップ407に進み、クルーズ実施フラグXCCに「1」をセットしてクルーズ制御への復帰を許可する。これに対し、ステップ405,406の何れかがNOの場合、クルーズ制御への復帰を許可することなく、そのまま本ルーチンを終了する。
【0053】
例えば、トランスミッションECU40側の異常や両ECU30,40間の通信異常等が原因で、誤ってクルーズ復帰要求がエンジンECU30に送信されても、ドライバの意志に反してクルーズ制御が開始されるといった従来の不具合が解消される。つまり、ギア変速前にクルーズ制御を実施していないにも拘わらず、クルーズ制御を不当に実施することはない。
【0054】
また一般に、クルーズ制御中にマニュアルレンジでギア変速が操作された場合には、ギア変速後にクルーズ復帰させないこととしている。かかる場合、変速開始時に記憶したクルーズ実施フラグXCCが「1」であっても、トランスミッションECU40からクルーズ復帰要求が送信されないため、やはりクルーズ制御を不当に実施することはない。
【0055】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
エンジンECU30は、クルーズ制御中に変速操作が行われる場合、クルーズ制御中である旨を示すクルーズ実施フラグXCC(クルーズ実施データ)を記憶してクルーズ制御を中断し、ギア変速の終了後、クルーズ実施フラグXCCに応じてクルーズ制御への復帰を許可するので、ギア変速後のクルーズ制御への復帰を適正に行い、ひいては良好なる車両走行を実現することができる。
【0056】
トランスミッションECU40からのクルーズ復帰要求と、クルーズ実施フラグXCCとのAND条件によりクルーズ制御への復帰を許可するので、本車両制御の信頼性がより一層向上する。
【0057】
特に本実施の形態の車両制御システムは、エンジンから駆動系への伝達トルクが大きく、流体トルクコンバータを採用するには不向きなトラック等の車両に好適に具体化できる。
【0058】
なお本発明は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
ギア変速の要求時におけるクルーズ制御の状態を表すクルーズ実施データとして、2ビット以上のデータを使ってもよい。例えば、ギア変速時にクルーズ制御中であれば「11」のクルーズ実施データを記憶させる。これにより、データ破壊(文字化け)による誤動作が回避できる。
【0059】
上記実施の形態では、ギア変速時にトルク減少、回転数制御及びトルク復帰の各処理を実施する際、燃料噴射量を制御したが、これに代えてアクセル開度を制御するようにしてもよい。この場合、ギア変速後に、ドライバの意志に反したアクセル操作が継続されるといった不都合が解消される。
【0060】
上記実施の形態では、クラッチアクチュエータ17、ギアシフトアクチュエータ22を空圧制御することとしたが、これを油圧制御に代えるなど、他の構成としてもよい。また、ディーゼルエンジン以外に、ガソリンエンジンへの適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態における車両制御システムの概要を示す全体構成図。
【図2】トランスミッションECUのメインルーチンを示すフローチャート。
【図3】トルク減少モードの処理を示すフローチャート。
【図4】回転数指示モードの処理を示すフローチャート。
【図5】トルク復帰モードの処理を示すフローチャート。
【図6】ギア変速時の動作をより具体的に示すタイムチャート。
【図7】クルーズ制御の概要を示すフローチャート。
【図8】クルーズ制御中に変速操作が行われる時の処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…エンジン、13…摩擦クラッチ、14…トランスミッション、30…エンジンECU(第1のマイクロコンピュータ,エンジン制御用マイクロコンピュータ)、40…トランスミッションECU(第2のマイクロコンピュータ)。

Claims (4)

  1. 少なくともクルーズ制御を含むエンジン制御を実施するための第1のマイクロコンピュータと、
    トランスミッションのギア変速を実施するための第2のマイクロコンピュータと
    前記クルーズ制御の実施中である旨を示すクルーズ実施データを記憶する記憶手段と
    を備え、
    前記第1及び第2のマイクロコンピュータが互いに通信可能に接続される車両制御装置において、
    前記第1のマイクロコンピュータは、前記クルーズ制御の実施中に一時解除要求があった場合、前記クルーズ制御を中断するものであって、
    前記一時解除要求がギア変速の要求である場合には、前記クルーズ実施データを前記記憶手段に記憶して前記クルーズ制御を中断し、前記第2のマイクロコンピュータによるギア変速の終了後、前記記憶手段に記憶したクルーズ実施データに応じて前記クルーズ制御への復帰を許可することを特徴とする車両制御装置。
  2. 前記クルーズ制御の実施中にギア変速が実施された後、前記第2のマイクロコンピュータは、前記クルーズ制御への復帰を前記第1のマイクロコンピュータに指示し、第1のマイクロコンピュータは、前記第2のマイクロコンピュータからの前記クルーズ制御の復帰指示を入力し且つ、前記クルーズ実施データがクルーズ制御中を示すデータであるときに、前記クルーズ制御への復帰を許可する請求項1に記載の車両制御装置。
  3. 少なくともクルーズ制御を含むエンジン制御を実施するエンジン制御用マイクロコンピュータであり、
    前記クルーズ制御の実施中である旨を示すクルーズ実施データを記憶する記憶手段を備えるとともに、前記クルーズ制御の実施中に一時解除要求があった場合、前記クルーズ制御を中断するものであって、
    前記一時解除要求がトランスミッションのギア変速の要求である場合には、前記クルーズ実施データを前記記憶手段に記憶して前記クルーズ制御を中断し、ギア変速の終了後、前記記憶手段に記憶したクルーズ実施データに応じて前記クルーズ制御への復帰を許可することを特徴とする車両制御装置に用いるエンジン制御用マイクロコンピュータ。
  4. 前記トランスミッションのギア変速を実施する別のマイクロコンピュータに対して通信可能に接続されるエンジン制御用マイクロコンピュータであり、
    前記クルーズ制御の実施中にギア変速が実施された後、前記別のマイクロコンピュータより前記クルーズ制御への復帰の指示を受け且つ、前記クルーズ実施データがクルーズ制御中を示すデータであるときに、前記クルーズ制御への復帰を許可する請求項3に記載の車両制御装置に用いるエンジン制御用マイクロコンピュータ。
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