JP3591063B2 - 透水性土木シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は主として、水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を防止する透水性土木シートであり、さらには産業廃棄物処理場用遮水シートの保護材としての透水性土木シートおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を防止するシートとして、織布、不織布等が使用されている。
【0003】
しかし、これらのシートでは、例えば海岸護岸工事に長期間(1〜12カ月)敷設した時に波浪により生じるシートと栗石との摩耗によってシートが破損したり、また、台風が通過したり、波浪の多い冬期には、さらに短期間でシートが破損し、堤防内の土砂がシート破損部から流出する問題があった。
【0004】
さらに、産業廃棄物処理場用遮水シートの緩衝材については、廃棄物を投下した衝撃で破損し遮水シートも破損し、汚水が地下に流出する問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため考案されたものであり、すなわち従来の土木工事用シートの有する特徴をそのまま有する上に、緩衝性、施工性、排水性に優れ、かつ、耐久性に優れた透水性土木シートおよびその製造方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の透水性土木シートは、軟質熱可塑性樹脂からなる直径0.2mm以上5mm以下の多数のフィラメントが褶曲し、かつフィラメント同士の交差部分が融着している網状構造体シートと、平均単糸繊度が1〜10dの範囲内の繊維からなる繊維シートとが融着により一体化されてなる積層シートであって、該軟質熱可塑性樹脂がEVAよりなり、該繊維シートが、ポリエステル繊維不織布よりなることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】
本発明は、従来の吸出しシートや洗掘防止シートでは、栗石との摩耗によってシートが破損して土砂がシート破損部から流出する問題を防止するための対策について、鋭意検討したところ、特定な緩衝用シートとフィルター用シートとを組み合わせることにより、従来問題点を全て解消した優れた透水性の土木シートを提供し得ることを究明したものである。すなわち、軟質熱可塑性樹脂フィラメントを未だ溶融状態にある間に形成された、いわば非晶性又は未延伸に近い線状体からなる網状構造体シートが、柔軟性に富み、緩衝機能にも優れた特徴を有することに着目して、かかる網状構造体シートを透水性繊維シートに積層した構造のシートで、上記効果を見事に達成することを究明したものである。
【0008】
本発明における軟質熱可塑性樹脂はEVAよりなり、JIS K-7106による曲げ剛性率が15〜10000kg/cm2であること、さらに好ましくは30〜2000kg/cm2、特に好ましくは50〜1000kg/cm2の範囲にあるものが柔軟性、緩衝性の上からよい。すなわち、本発明の積層シートを、例えば水工用の透水性土木シートとして使用した場合、該軟質熱可塑性樹脂の曲げ剛性率が10000kg/cm2を越えると、基材となる繊維シートの柔軟性に該樹脂フィラメントからなるシートが追従できなくなり、該樹脂フィラメントシートへの波浪エネルギーの集中が発生し、割れ、切れに至るこことなり、逆に、15kg/cm2未満になると実用強度面で採用できる樹脂が存在しないという問題がある。
【0010】
また成型された該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなるシートそのものの柔軟性は、ガーレ式剛軟度で、20000mg以下が好ましい。これは、通常土木シートがロール状にして運搬、施工されるためであり、該軟質熱可塑性樹脂フィラメントシートのガーレ式剛軟度が20000mg以上になると、積層シートのハンドリング性が著しく低下してしまう。
【0011】
さらにかかる該軟質熱可塑性樹脂フィラメントシートは、積層する際に基材となる繊維シートの透水性を損なわない程度の透水空隙を有することが必要である。すなわち該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートの形状としては、例えば多数の線状あるいは帯状のフィラメントが、三次元の網状構造はもとより、該フィラメントが格子状に配列されてなるメッシュ状シート、さらには多数のフィラメントが褶曲してなる網状体などの網状構造のものを使用することができる。なお、これらの網状構造体に、例えば多数のフィラメントを一方向に配列したものや、多数の半球状突起を積層した透水空隙を有する構造にしたものなども含まれる。
【0012】
かかる網状構造体シートは、多数のフィラメントが褶曲し、かつフィラメントどうしが交差接触した部分で融着あるいは接着されているため、適度な引っ張り強力を全方向に均等に有し、さらに十分な空隙を有するので、透水性に優れる特徴を有し、さらにフィラメントどうしの重なりにより適度な嵩高性が生じ、この構造が、優れた緩衝性、クッション性を発揮するなど、透水性を損なわずに耐波浪性を向上させる効果を奏する。
【0013】
かかる網状構造体シート、つまり該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを構成するフィラメントの直径としては、その平均直径で0.2〜5.0mmであり、さらに好ましくは0.5〜2.0mmである。直径が細すぎると、栗石との擦過によりフィラメントが切断されやすく、逆に直径が太すぎると適切な目付やループ形状を得るのが困難となるうえ、シート自体の剛性が上がるためハンドリング性、施工性が悪化する傾向がでてくる。
【0014】
次に基材となる繊維シートは、ポリエステル繊維不織布を用いる。また、強度特性が要求される場合には、長繊維で構成された不織布が好ましく使用される。さらに、長期間屋外での使用となるため、たとえばポリエステル繊維製不織布を使用する場合、カーボンブラックを含有させることによって、耐候性を改善することができる。かかるカーボンブラックは1m2当りの重量に対して、好ましくは0.2〜0.6%の範囲で含有させるのが良い。かかる含有のさせ方については、含浸、塗布、さらには原着のいずれでもよいが、耐久性などの点からいえば、原着が好ましい。0.2%未満では耐候性の増加が期待できなく、0.6%を越えると、不織布の生産工程での針抵抗が大きくなり生産性を悪化する傾向があり好ましくない。
【0015】
かかる不織布を構成する繊維の平均単糸繊度は、不織布が要求される物性、特に強度と緩衝性、透水性の上から、1〜10dの範囲のものを用いる。なお、本発明の不織布において、使用する繊維として異繊度のものを混用し、その平均単糸繊度が上記範囲のものであってもさしつかえない。かかる不織布の目付は、100〜1000g/m2、さらに好ましくは200〜400g/m2が好ましい。また、かかる不織布の厚みは緩衝性の上から、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3〜4mmが好ましい。ここでの目付および厚さは、該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを除いた不織布のみの数値である。
【0016】
また、上記不織布は均一な繊維密度や同一単糸繊度を有する繊維で構成された不織布について記載したものであるが、本発明においては、かかる不織布としては、別に異繊度の繊維からなる不織布であっても、また、異繊度密度の不織布からなる積層体であっても、さらにはこれらの混合混成した不織布でもよい。
【0017】
次に、本発明の透水性土木シートの製造方法を図1により説明する。ここでは該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートの成形方法と、該網状構造体シートと繊維シートとの一体化の一例について示す。まず、溶融押し出し機1にて溶融、混練された軟質熱可塑性樹脂を多糸条口金2より多数のフィラメント3として溶融押し出しし、該フィラメントが未だ溶融状態にある間に口金下方にセットしたロール4にて引き取る。ここで、引取り速度をフィラメントの吐出線速度よりも十分小さくすれば、フィラメントは引取りロール4上で各々ループを描くように褶曲し、かつ交差接触した部分が融着し、網状構造体が形成される。ここで、あらかじめ基材となる繊維シート5を上記のロール4上にセットしておけば、網状構造体の形成と同時に繊維シート表面への融着が生じるため、繊維シートと網状構造体の一体化を非常に効率良く行うことができる。また繊維シートと網状構造体をより強固に融着させる必要がある場合は、押さえロール6にて、適宜のクリアランスをとってニップすることにより、所望の強さの融着力、接着力を有する網状構造体シートを形成することができる。
【0018】
次に上記製造方法における加工技術上のポイントについて記述する。該網状構造体を形成する軟質熱可塑性樹脂は、前述の曲げ剛性率を満たすEVA樹脂であれば、特に限定されるものではないが、網状構造体の加工性(ループの発生させやすさ)を考慮すると、溶融樹脂の流動性がメルトフローレイトで10g/10min 以上で押し出すことができるもので、かつ、かかる条件で押し出し、この流動性を満たすように押し出し温度も設定することが好ましい。
【0019】
また繊維シートと網状構造体を押さえロールにてニップする場合、該網状構造体の嵩高性と、空隙を損なわないように適切なクリアランスを保ち、ニップ点でバンクを発生させない状態で押さえることが好ましい。これにより、目的の緩衝性と透水性を損なわずに一体化が可能となる。
【0020】
本発明の透水性土木シートは、不織布等の繊維シートに、JIS K−7106による曲げ剛性率が15〜10000kg/cm2 である軟質熱可塑性樹脂よりなり、かつガーレ式剛軟度が20000mg以下となる該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを接着あるいは融着により一体化させることにより、透水性及び施工性を殆ど損なうことなく、柔軟で優れた緩衝効果を有する土木シートを提供することができるのである。特に水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を防止するシートとして、あるいは、産業廃棄物処理場用遮水シート保護材等の用途においては抜群の効果を発揮する。
【0021】
本発明の透水性土木シートは、上述の如き特定な軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを採用した点に特徴を有する。かかる網状構造体シートを採用したことによって、外部からのなんらかの衝撃に対して優れた緩衝機能を発揮し、繊維シートの破損を防ぎ、かつ垂直、面内方向の透水性を保有することで用途が限定されず、前述のような広範囲な工事に利用でき、さらに、剛軟度の低い網状構造体シートを使用しているため、繊維シートと複合しても繊維シートのみと比較して違和感がなく、施工性に優れているという利点を有する。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
図1の製造プロセスにより透水性土木シートを作成する。直径1mmの吐出孔が7mmピッチで180個、3列に千鳥配列させた多糸条口金より、EVA樹脂を口金直下を移動する繊維シート表面に溶融押し出しした。繊維シートの移動スピードをフィラメントの吐出線速度より十分小さくすることにより、フィラメントは各々がループを描くように褶曲し、かつ交差接触部が融着するため、網状構造体シートとなる。ここで網状構造体シートのフィラメントの直径は1.2mm、目付は500g/m2 とし、この網状構造体シートを不織布の上に載せ、ロールクリアランスを5mmにして、室温(25℃) の押さえロールでニップ圧力6 kg/cm2 の条件で圧着した。ここで、不織布シートは単糸3.0d、目付300g/m2 のポリエステル長繊維不織布を使用した。さらに網状構造体シートのフィラメントは、繊維シート表面到達時においては未だ半溶融状態であるので、網状構造体シートの形成と同時に繊維シート表面への融着が発生し、一体化された積層シートを形成した。
【0023】
このようにして得られた積層シートの透水性土木シートとしての性能を評価すべく、比較例として次の3水準を準備した。
【0024】
比較例1
実施例1において使用した単糸3.0d、目付300g/m2 のポリエステル長繊維不織布を単体で使用した。
【0025】
比較例2
比較例1の不織布の高目付品、すなわち、目付が930g/m2 (厚み9.0mm )の不織布を使用した。
比較例3
実施例1と同様の製法で網状体を積層するが、網状構造体シートを構成する樹脂をEVAの代わりに、硬質熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを使用した。
【0026】
これら4水準について、人工的に波を引き起こす造波水槽で波浪と割栗石の摩擦によるシートの破損を確認した。図2に示すように水槽内に実海堤防を想定した堤防を割栗石で作り、こののり面にシートを敷設して波を引き起こした。
【0027】
表1にシートに孔が開いた時の時間と、積層シートの剛軟度を示す。実海での試験結果と、造波水槽での試験結果のサンプル破損状態から、造波水槽で下記条件での試験結果、24時間稼働すると実海での1ヶ月に相当することがわかった。
[造波水槽試験条件]
水槽幅:1.0m
水深:68cm
波高:34cm
波長:1.4m
周期: 2秒
波浪回数:43200回/日
築堤材:割栗石(粒径:15〜30cm )
のり勾配:1:1.2
【表1】
表1から明らかなように、実施例1のシートは、不織布単体シートと比較して、著しい耐久性向上効果が見られた。比較例2は繊維シートの目付を3倍にしているが、比例的な効果にとどまっている。ポリプロピレン(JIS K−7106による曲げ剛性率9000kg/cm2 )の網状体を積層した比較例3の場合は、剛軟度が高く敷設がしにくく、敷設しても早い時点で網状体に割れ、切断が発生し、実施例1のような劇的な効果は現れなかった。これは網状体に使用した樹脂の柔軟性、弾力性が適切でなかったことにより、網状体のみに波浪エネルギーが集中した結果と考えられる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の透水性土木シートによれば、従来の土木用工事シートの透水性や施工性を殆ど維持したまま緩衝性、耐久性に著しく優れた透水性土木シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る透水性土木シートの製造プロセス図である。
【図2】実海堤防を想定した造波水槽での耐久試験の実施状況を示したものである。
【図3】造波水槽内築堤の詳細図
【符号の説明】
1: 溶融押し出し機
2: 多糸条口金
3: フィラメント
4: 引取りロール
5: 繊維シート
6: 押さえロール
【産業上の利用分野】
本発明は主として、水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を防止する透水性土木シートであり、さらには産業廃棄物処理場用遮水シートの保護材としての透水性土木シートおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を防止するシートとして、織布、不織布等が使用されている。
【0003】
しかし、これらのシートでは、例えば海岸護岸工事に長期間(1〜12カ月)敷設した時に波浪により生じるシートと栗石との摩耗によってシートが破損したり、また、台風が通過したり、波浪の多い冬期には、さらに短期間でシートが破損し、堤防内の土砂がシート破損部から流出する問題があった。
【0004】
さらに、産業廃棄物処理場用遮水シートの緩衝材については、廃棄物を投下した衝撃で破損し遮水シートも破損し、汚水が地下に流出する問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため考案されたものであり、すなわち従来の土木工事用シートの有する特徴をそのまま有する上に、緩衝性、施工性、排水性に優れ、かつ、耐久性に優れた透水性土木シートおよびその製造方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の透水性土木シートは、軟質熱可塑性樹脂からなる直径0.2mm以上5mm以下の多数のフィラメントが褶曲し、かつフィラメント同士の交差部分が融着している網状構造体シートと、平均単糸繊度が1〜10dの範囲内の繊維からなる繊維シートとが融着により一体化されてなる積層シートであって、該軟質熱可塑性樹脂がEVAよりなり、該繊維シートが、ポリエステル繊維不織布よりなることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】
本発明は、従来の吸出しシートや洗掘防止シートでは、栗石との摩耗によってシートが破損して土砂がシート破損部から流出する問題を防止するための対策について、鋭意検討したところ、特定な緩衝用シートとフィルター用シートとを組み合わせることにより、従来問題点を全て解消した優れた透水性の土木シートを提供し得ることを究明したものである。すなわち、軟質熱可塑性樹脂フィラメントを未だ溶融状態にある間に形成された、いわば非晶性又は未延伸に近い線状体からなる網状構造体シートが、柔軟性に富み、緩衝機能にも優れた特徴を有することに着目して、かかる網状構造体シートを透水性繊維シートに積層した構造のシートで、上記効果を見事に達成することを究明したものである。
【0008】
本発明における軟質熱可塑性樹脂はEVAよりなり、JIS K-7106による曲げ剛性率が15〜10000kg/cm2であること、さらに好ましくは30〜2000kg/cm2、特に好ましくは50〜1000kg/cm2の範囲にあるものが柔軟性、緩衝性の上からよい。すなわち、本発明の積層シートを、例えば水工用の透水性土木シートとして使用した場合、該軟質熱可塑性樹脂の曲げ剛性率が10000kg/cm2を越えると、基材となる繊維シートの柔軟性に該樹脂フィラメントからなるシートが追従できなくなり、該樹脂フィラメントシートへの波浪エネルギーの集中が発生し、割れ、切れに至るこことなり、逆に、15kg/cm2未満になると実用強度面で採用できる樹脂が存在しないという問題がある。
【0010】
また成型された該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなるシートそのものの柔軟性は、ガーレ式剛軟度で、20000mg以下が好ましい。これは、通常土木シートがロール状にして運搬、施工されるためであり、該軟質熱可塑性樹脂フィラメントシートのガーレ式剛軟度が20000mg以上になると、積層シートのハンドリング性が著しく低下してしまう。
【0011】
さらにかかる該軟質熱可塑性樹脂フィラメントシートは、積層する際に基材となる繊維シートの透水性を損なわない程度の透水空隙を有することが必要である。すなわち該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートの形状としては、例えば多数の線状あるいは帯状のフィラメントが、三次元の網状構造はもとより、該フィラメントが格子状に配列されてなるメッシュ状シート、さらには多数のフィラメントが褶曲してなる網状体などの網状構造のものを使用することができる。なお、これらの網状構造体に、例えば多数のフィラメントを一方向に配列したものや、多数の半球状突起を積層した透水空隙を有する構造にしたものなども含まれる。
【0012】
かかる網状構造体シートは、多数のフィラメントが褶曲し、かつフィラメントどうしが交差接触した部分で融着あるいは接着されているため、適度な引っ張り強力を全方向に均等に有し、さらに十分な空隙を有するので、透水性に優れる特徴を有し、さらにフィラメントどうしの重なりにより適度な嵩高性が生じ、この構造が、優れた緩衝性、クッション性を発揮するなど、透水性を損なわずに耐波浪性を向上させる効果を奏する。
【0013】
かかる網状構造体シート、つまり該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを構成するフィラメントの直径としては、その平均直径で0.2〜5.0mmであり、さらに好ましくは0.5〜2.0mmである。直径が細すぎると、栗石との擦過によりフィラメントが切断されやすく、逆に直径が太すぎると適切な目付やループ形状を得るのが困難となるうえ、シート自体の剛性が上がるためハンドリング性、施工性が悪化する傾向がでてくる。
【0014】
次に基材となる繊維シートは、ポリエステル繊維不織布を用いる。また、強度特性が要求される場合には、長繊維で構成された不織布が好ましく使用される。さらに、長期間屋外での使用となるため、たとえばポリエステル繊維製不織布を使用する場合、カーボンブラックを含有させることによって、耐候性を改善することができる。かかるカーボンブラックは1m2当りの重量に対して、好ましくは0.2〜0.6%の範囲で含有させるのが良い。かかる含有のさせ方については、含浸、塗布、さらには原着のいずれでもよいが、耐久性などの点からいえば、原着が好ましい。0.2%未満では耐候性の増加が期待できなく、0.6%を越えると、不織布の生産工程での針抵抗が大きくなり生産性を悪化する傾向があり好ましくない。
【0015】
かかる不織布を構成する繊維の平均単糸繊度は、不織布が要求される物性、特に強度と緩衝性、透水性の上から、1〜10dの範囲のものを用いる。なお、本発明の不織布において、使用する繊維として異繊度のものを混用し、その平均単糸繊度が上記範囲のものであってもさしつかえない。かかる不織布の目付は、100〜1000g/m2、さらに好ましくは200〜400g/m2が好ましい。また、かかる不織布の厚みは緩衝性の上から、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3〜4mmが好ましい。ここでの目付および厚さは、該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを除いた不織布のみの数値である。
【0016】
また、上記不織布は均一な繊維密度や同一単糸繊度を有する繊維で構成された不織布について記載したものであるが、本発明においては、かかる不織布としては、別に異繊度の繊維からなる不織布であっても、また、異繊度密度の不織布からなる積層体であっても、さらにはこれらの混合混成した不織布でもよい。
【0017】
次に、本発明の透水性土木シートの製造方法を図1により説明する。ここでは該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートの成形方法と、該網状構造体シートと繊維シートとの一体化の一例について示す。まず、溶融押し出し機1にて溶融、混練された軟質熱可塑性樹脂を多糸条口金2より多数のフィラメント3として溶融押し出しし、該フィラメントが未だ溶融状態にある間に口金下方にセットしたロール4にて引き取る。ここで、引取り速度をフィラメントの吐出線速度よりも十分小さくすれば、フィラメントは引取りロール4上で各々ループを描くように褶曲し、かつ交差接触した部分が融着し、網状構造体が形成される。ここで、あらかじめ基材となる繊維シート5を上記のロール4上にセットしておけば、網状構造体の形成と同時に繊維シート表面への融着が生じるため、繊維シートと網状構造体の一体化を非常に効率良く行うことができる。また繊維シートと網状構造体をより強固に融着させる必要がある場合は、押さえロール6にて、適宜のクリアランスをとってニップすることにより、所望の強さの融着力、接着力を有する網状構造体シートを形成することができる。
【0018】
次に上記製造方法における加工技術上のポイントについて記述する。該網状構造体を形成する軟質熱可塑性樹脂は、前述の曲げ剛性率を満たすEVA樹脂であれば、特に限定されるものではないが、網状構造体の加工性(ループの発生させやすさ)を考慮すると、溶融樹脂の流動性がメルトフローレイトで10g/10min 以上で押し出すことができるもので、かつ、かかる条件で押し出し、この流動性を満たすように押し出し温度も設定することが好ましい。
【0019】
また繊維シートと網状構造体を押さえロールにてニップする場合、該網状構造体の嵩高性と、空隙を損なわないように適切なクリアランスを保ち、ニップ点でバンクを発生させない状態で押さえることが好ましい。これにより、目的の緩衝性と透水性を損なわずに一体化が可能となる。
【0020】
本発明の透水性土木シートは、不織布等の繊維シートに、JIS K−7106による曲げ剛性率が15〜10000kg/cm2 である軟質熱可塑性樹脂よりなり、かつガーレ式剛軟度が20000mg以下となる該軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを接着あるいは融着により一体化させることにより、透水性及び施工性を殆ど損なうことなく、柔軟で優れた緩衝効果を有する土木シートを提供することができるのである。特に水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を防止するシートとして、あるいは、産業廃棄物処理場用遮水シート保護材等の用途においては抜群の効果を発揮する。
【0021】
本発明の透水性土木シートは、上述の如き特定な軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートを採用した点に特徴を有する。かかる網状構造体シートを採用したことによって、外部からのなんらかの衝撃に対して優れた緩衝機能を発揮し、繊維シートの破損を防ぎ、かつ垂直、面内方向の透水性を保有することで用途が限定されず、前述のような広範囲な工事に利用でき、さらに、剛軟度の低い網状構造体シートを使用しているため、繊維シートと複合しても繊維シートのみと比較して違和感がなく、施工性に優れているという利点を有する。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
図1の製造プロセスにより透水性土木シートを作成する。直径1mmの吐出孔が7mmピッチで180個、3列に千鳥配列させた多糸条口金より、EVA樹脂を口金直下を移動する繊維シート表面に溶融押し出しした。繊維シートの移動スピードをフィラメントの吐出線速度より十分小さくすることにより、フィラメントは各々がループを描くように褶曲し、かつ交差接触部が融着するため、網状構造体シートとなる。ここで網状構造体シートのフィラメントの直径は1.2mm、目付は500g/m2 とし、この網状構造体シートを不織布の上に載せ、ロールクリアランスを5mmにして、室温(25℃) の押さえロールでニップ圧力6 kg/cm2 の条件で圧着した。ここで、不織布シートは単糸3.0d、目付300g/m2 のポリエステル長繊維不織布を使用した。さらに網状構造体シートのフィラメントは、繊維シート表面到達時においては未だ半溶融状態であるので、網状構造体シートの形成と同時に繊維シート表面への融着が発生し、一体化された積層シートを形成した。
【0023】
このようにして得られた積層シートの透水性土木シートとしての性能を評価すべく、比較例として次の3水準を準備した。
【0024】
比較例1
実施例1において使用した単糸3.0d、目付300g/m2 のポリエステル長繊維不織布を単体で使用した。
【0025】
比較例2
比較例1の不織布の高目付品、すなわち、目付が930g/m2 (厚み9.0mm )の不織布を使用した。
比較例3
実施例1と同様の製法で網状体を積層するが、網状構造体シートを構成する樹脂をEVAの代わりに、硬質熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを使用した。
【0026】
これら4水準について、人工的に波を引き起こす造波水槽で波浪と割栗石の摩擦によるシートの破損を確認した。図2に示すように水槽内に実海堤防を想定した堤防を割栗石で作り、こののり面にシートを敷設して波を引き起こした。
【0027】
表1にシートに孔が開いた時の時間と、積層シートの剛軟度を示す。実海での試験結果と、造波水槽での試験結果のサンプル破損状態から、造波水槽で下記条件での試験結果、24時間稼働すると実海での1ヶ月に相当することがわかった。
[造波水槽試験条件]
水槽幅:1.0m
水深:68cm
波高:34cm
波長:1.4m
周期: 2秒
波浪回数:43200回/日
築堤材:割栗石(粒径:15〜30cm )
のり勾配:1:1.2
【表1】
表1から明らかなように、実施例1のシートは、不織布単体シートと比較して、著しい耐久性向上効果が見られた。比較例2は繊維シートの目付を3倍にしているが、比例的な効果にとどまっている。ポリプロピレン(JIS K−7106による曲げ剛性率9000kg/cm2 )の網状体を積層した比較例3の場合は、剛軟度が高く敷設がしにくく、敷設しても早い時点で網状体に割れ、切断が発生し、実施例1のような劇的な効果は現れなかった。これは網状体に使用した樹脂の柔軟性、弾力性が適切でなかったことにより、網状体のみに波浪エネルギーが集中した結果と考えられる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の透水性土木シートによれば、従来の土木用工事シートの透水性や施工性を殆ど維持したまま緩衝性、耐久性に著しく優れた透水性土木シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る透水性土木シートの製造プロセス図である。
【図2】実海堤防を想定した造波水槽での耐久試験の実施状況を示したものである。
【図3】造波水槽内築堤の詳細図
【符号の説明】
1: 溶融押し出し機
2: 多糸条口金
3: フィラメント
4: 引取りロール
5: 繊維シート
6: 押さえロール
Claims (15)
- 軟質熱可塑性樹脂からなる直径0.2mm以上5mm以下の多数のフィラメントが褶曲し、かつフィラメント同士の交差部分が融着している網状構造体シートと、平均単糸繊度が1〜10dの範囲内の繊維からなる繊維シートとが融着により一体化されてなる積層シートであって、該軟質熱可塑性樹脂がEVAよりなり、該繊維シートが、ポリエステル繊維不織布よりなることを特徴とする透水性土木シート。
- 軟質熱可塑性樹脂が、JIS K-7106による曲げ剛性率が30〜2000kg/cm2の範囲にあるものである請求項1記載の透水性土木シート。
- 該軟質熱可塑性樹脂が、50〜1000kg/cm2の範囲の該曲げ剛性率である請求項2記載の透水性土木シート。
- 該積層シートが、ガーレ式剛軟度で20000mg以下の剛軟度を有するものである請求項1記載の透水性土木シート。
- 該網状構造体シートが、多数の線状あるいは帯状のフィラメントが格子状に配列された構造体を含むものである請求項1記載の透水性土木シート。
- 該繊維シートが、100〜1000g/m2の目付を有するものである請求項1記載の透水性土木シート。
- 該繊維シートが、長繊維不織布である請求項1記載の透水性土木シート。
- 該繊維シートが、ニードルパンチング不織布である請求項1記載の透水性土木シート。
- 該繊維シートが、カーボンブラックを含有するものである請求項1記載の透水性土木シート。
- 該積層シートが、2〜20mmの厚みを有するものであることを特徴とする請求項1記載の透水性土木シート。
- 該土木シートが、水工事用である請求項1記載の透水性土木シート。
- EVAよりなる軟質熱可塑性樹脂を溶融押出して直径0.2mm以上5mm以下のフィラメントとして溶融押し出しし、該フィラメントが未だ溶融状態にある間に、平均単糸繊度が1〜10dの範囲内のポリエステル繊維からなる繊維シート表面に積層し、融着させることを特徴とする透水性土木シートの製造方法。
- 該繊維シート表面に積層する方法が、該フィラメントが該繊維シート上で、網状構造を形成する方法である請求項12記載の透水性土木シートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂フィラメントの形態を保持する程度のクリアランスを保ったまま圧着させることを特徴とする請求項12記載の透水性土木シートの製造方法。
- 圧着前後の熱可塑性樹脂フィラメント層の厚み減少率が5〜50%となるようにクリアランスを調整することを特徴とする請求項14記載の透水性土木シートの製造方法。
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