JP3590946B2 - 多自由度加工ステージ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は加工ステージ装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザ光による精密加工が広く普及している。一般に、レーザ加工では、レーザ光の光軸は固定し、移動ステージにより被加工部材を移動させる方式がとられている。このような方式では、移動ステージはレーザ光に対して垂直な平面内を2自由度で動くタイプが一般的である。
【0003】
しかし、3次元加工や、焦点合わせが必要な加工のために、多自由度の移動ステージが必要となってきている。レーザ光による加工では、光軸周りの回転運動は意味をなさないため、それを除く5自由度が意味のある最大の自由度である。すなわち、光軸をZ軸とした時のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、X軸回り方向、Y軸回り方向の5自由度である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまでのレーザ光による加工装置のための移動ステージは、レーザ光に対して垂直な平面内を2自由度(X−Y方向)で動くタイプが一般的である。このような加工装置では、被加工部材に斜めにレーザ光を照射するような加工はできない。また、レーザ光を絞って焦点で加工を行うような方法では、加工装置に生じる歪みや被加工部材の厚みの変化によって焦点がずれてしまい、このずれを補正することができない。
【0005】
これらの問題を解決するために、ピエゾアクチュエータを利用する方法が提案されているが、ストロークが短く、3次元加工や、厚みのある材料の加工には不十分である。
【0006】
また、ボールねじやシリンダを利用したパラレルリンク機構の多自由度ステージは存在するが、加工ステージに応用するのに十分な精度、剛性を持たせることができない。
【0007】
本発明の課題は、多自由度の加工ステージ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による多自由度加工ステージ装置は、X−Yステージ上に搭載されてX軸方向及びY軸方向に移動可能なベーステーブルと、前記ベーステーブルに設けられた複数の板ばねにより支持されている加工テーブルと、前記加工テーブルの複数箇所に設けられた加工テーブル側磁性体と、前記加工テーブル側磁性体に対応してその上側、下側の少なくとも下側に位置する前記ベーステーブルに設けられた複数のベーステーブル側磁性体と、電磁石を構成するために前記複数のベーステーブル側磁性体にそれぞれ巻回された複数のコイルとを備え、該複数の電磁石へのそれぞれの電流を制御することにより、前記加工テーブルをX軸とY軸とで規定されるX−Y平面に対して傾斜可能とするとともに、該X−Y平面に垂直なZ軸方向にも可動としたことを特徴とする。
【0009】
前記板ばねとしては、前記加工テーブルの重心を中心として等角度間隔をおいて放射状に3枚設けるのが好ましい。
【0010】
また、前記加工テーブル側磁性体を前記加工テーブルに等角度間隔をおいて3箇所に設け、これら3つの加工テーブル側磁性体に対応させて前記ベーステーブル側磁性体を設けると共にコイルを巻回して3組の電磁石を備えることが好ましい。
【0011】
前記3つの加工テーブル側磁性体はそれぞれ、加工テーブル側上部磁性体と加工テーブル側下部磁性体とから成り、前記3組の電磁石はそれぞれ、前記加工テーブル側上部磁性体に非接触で対向しているベーステーブル側上部磁性体及びこれに巻回された上部コイルと前記加工テーブル側下部磁性体に非接触で対向しているベーステーブル側下部磁性体及びこれに巻回された下部コイルとから成る。
【0012】
前記3つの加工テーブル側磁性体はそれぞれ、前記加工テーブルの下部に設けられた加工テーブル側下部磁性体から成り、前記3組の電磁石はそれぞれ、前記加工テーブル側下部磁性体に非接触で対向しているベーステーブル側下部磁性体及びこれに巻回された下部コイルとから成るようにしても良い。この場合、前記加工テーブル側下部磁性体、前記ベーステーブル側下部磁性体の一方に永久磁石を組み合わせることが好ましい。
【0013】
【作用】
本発明による多自由度加工ステージ装置は、板ばねの剛性が引っ張り方向には強く、曲げ方向には弱いことを利用して、3つの自由度(すなわち、Z軸、X軸回り、Y軸回り)を残しながらX−Yステージで加工テーブルを駆動する。また、電磁石が非接触で力を伝えられることを利用して、単純な構造の直接駆動3自由度ステージを構成することにより、5自由度加工ステージ装置を実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明による加工ステージ装置を5自由度の場合について説明する。但し、以下の説明では、レーザ光の光軸方向をZ軸(図中、縦方向)、光軸に垂直な平面をX−Y平面(図中、水平方向)と呼ぶ。
【0015】
図1〜図3は、第1の実施の形態による加工ステージ装置を示す。本装置は、X−Yステージ1、ベーステーブル2、加工テーブル3、3組のテーブル上部鉄心4、3組のテーブル上部鉄心4のそれぞれに対応して設けられる3組のテーブル下部鉄心5、3組の上部電磁石コイル6、上部電磁石コイル6を巻回するための上部電磁石鉄心7、3組の上部電磁石コイル6のそれぞれに組合わされる3組の下部電磁石コイル8、下部電磁石コイル8を巻回するための下部電磁石鉄心9、3組の電磁石保持台10、3組の板ばね11、3組の板ばね保持台12より構成されている。
【0016】
ベーステーブル2は非磁性体でできており、3組の電磁石と、3つの板ばね保持台12が固定されている。
【0017】
ベーステーブル2は、X−Yステージ1の移動テーブルとなっており、X−Y平面を駆動することができる。なお、本形態ではX−Yステージ1に3自由度駆動機構を積み上げる構成となっているため、X−Yステージ1には既存のX−Yステージを使用することができる。
【0018】
3組の電磁石はそれぞれ、磁性体による上部電磁石鉄心7、磁性体による下部電磁石鉄心9、各上部電磁石鉄心7に巻回された上部電磁石コイル6、及び各下部電磁石鉄心9に巻回された下部電磁石コイル8から成る。上部電磁石鉄心7と下部電磁石鉄心9の間には、非磁性体から成る電磁石保持台10があり、これらは固定されている。
【0019】
上部電磁石コイル6、下部電磁石コイル8には、それぞれ任意の値の電流を流すことができる。
【0020】
3組の板ばね11は、X−Y平面上において加工テーブル3の中心(重心)から放射状に配置されており、その外側は板ばね保持台9に固定されている。板ばね11の先端側には、加工テーブル3が固定されている。加工テーブル3は、ベーステーブル2とは直接固定されておらず、板ばね11の弾性にしたがってZ軸、X軸回り、Y軸回りに動く。
【0021】
加工テーブル3は非磁性体で作られ、これに磁性体によるテーブル上部鉄心4とテーブル下部鉄心5が固定されている。
【0022】
テーブル上部鉄心4は上部電磁石鉄心7の下側に非接触に、テーブル下部鉄心5は下部電磁石鉄心9の上側に非接触にそれぞれ配置する。
【0023】
次に、本装置の動作について以下に説明する。加工テーブル3はベーステーブル2に対して3組の板ばね11で吊られた構造になっている。このため、加工テーブル3はベーステーブル2に対して、X−Y方向及びZ軸周りの回転については高い剛性で締結されるが、Z軸方向及びX−Y平面に対する傾斜に関しては板ばね11の弾性によって容易に動くことができる。
【0024】
したがって、加工テーブル3のX−Y平面内での位置決めは、X−Yステージ1によってベーステーブル2を駆動することにより行うことができる。これは、X軸方向及びY軸方向の自由度が与えられることを意味する。
【0025】
一方、Z軸方向の位置及びX−Y平面に対する傾斜は、ベーステーブル2上の3組の電磁石で操作することができる。すなわち、電磁石の上部電磁石コイル6に電流を流すと磁界が発生し、上部電磁石鉄心7がテーブル上部鉄心4を上側に吸引する力を生じる。同様に、下部電磁石コイル8に電流を流すことにより、下部電磁石鉄心9がテーブル下部鉄心5を下側に吸引する力を発生させることができる。3組の電磁石の上部電磁石コイル6、下部電磁石コイル8には、それぞれ任意の値の電流を流すことができるので、それぞれの電磁石の吸引力を制御することができる。
【0026】
3組の電磁石に同じ値の電流を流す場合、上部電磁石コイル6の電流が下部電磁石コイル8の電流より大きければ加工テーブル3は上に動き、小さければ下に動く。これは、Z軸方向の自由度が与えられることを意味する。一方、3組の電磁石に一様でない電流を流せば、加工テーブル3は傾斜する。これは、X軸回り方向、Y軸回り方向の自由度が与えられることを意味する。電磁石は非接触で駆動できるので、加工テーブル3が傾斜してもアクチュエータの向きを変える必要がない。このため構造が簡単で剛性が高い。加えて、直接、加工テーブル3を駆動できるため大きな力を発生することが可能で制御もし易い。
【0027】
電磁石のストロークには制限があるが、レーザ光による精密加工では、例えばウェハを加工するかウェハ上に載せた材料を加工するのが一般的であるため、Z軸方向の移動及びX−Y平面への傾斜の駆動範囲としては十分である。X−Y方向には大きなストロークが要求されるが、このようなX−Yステージは既に提供されており、既存のステージを採用すれば良い。
【0028】
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施の形態による加工ステージ装置について説明する。本装置は、基本的には第1の実施の形態と同じであるが、第1の実施の形態におけるテーブル上部鉄心4、上部電磁石コイル6、上部電磁石鉄心7、電磁石保持台10が省略されている。また、板ばね保持台12は第1の実施の形態のものよりも位置的に高い。必要に応じて、テーブル下部鉄心5または、下部電磁石鉄心9に永久磁石が入れられる。
【0029】
作用について説明する。本形態では、テーブル上部鉄心4、上部電磁石コイル6、上部電磁石鉄心7が無い。このため、板ばね保持台12を第1の実施の形態のものより高くすることにより、発生する板ばね11の弾性による上方向への力を利用する。
【0030】
3つの電磁石に一様に電流を流す場合、下部電磁石コイル8の電流を大きくすれば、加工テーブル3は下方向に動き、小さくすれば板ばね11の弾性によって上方向に動く。一方、3つの電磁石に一様でない電流を流せば、加工テーブル3は傾斜する。
【0031】
加工テーブル3を所望の位置で動かすためには、板ばね11の弾性力と釣り合う力を電磁石が発生し続けなければならない。この場合、テーブル下部鉄心5または下部電磁石鉄心7に永久磁石を入れることにより、電力の節約ができ、電磁石の発熱も抑えることができる。
【0032】
なお、板ばね11及び電磁石の個数は3個に制限されないことは言うまでも無い。
【0033】
本発明による多自由度加工ステージ装置は、レーザ加工装置に適しているが、マイクロマシン用の加工ステージ、ワイヤボンダ、ステッパ等にも適用できることは言うまでもない。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、微細加工装置において、3次元加工や光線の焦点合わせが必要な加工などのために必要十分な自由度、位置決め精度、剛性、ストローク、発生力を持つ精密加工ステージが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による加工ステージを5自由度の場合について示した模式図である。
【図2】図1の加工ステージをより具体的に示した斜視図である。
【図3】図2の線A−Aによる断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による加工ステージを図3と同じ断面で示した断面図である。
【符号の説明】
1 X−Yステージ
2 ベーステーブル
3 加工テーブル
4 テーブル上部鉄心
5 テーブル下部鉄心
6 上部電磁石コイル
7 上部電磁石鉄心
8 下部電磁石コイル
9 下部電磁石鉄心
10 電磁石保持台
11 板ばね
12 板ばね保持台

Claims (6)

  1. X−Yステージ上に搭載されてX軸方向及びY軸方向に移動可能なベーステーブルと、
    前記ベーステーブルに設けられた複数の板ばねにより支持されている加工テーブルと、
    前記加工テーブルの複数箇所に設けられた加工テーブル側磁性体と、
    前記加工テーブル側磁性体に対応してその上側、下側の少なくとも下側に位置する前記ベーステーブルに設けられた複数のベーステーブル側磁性体と、
    電磁石を構成するために前記複数のベーステーブル側磁性体にそれぞれ巻回された複数のコイルとを備え、
    該複数の電磁石へのそれぞれの電流を制御することにより、前記加工テーブルをX軸とY軸とで規定されるX−Y平面に対して傾斜可能とするとともに、該X−Y平面に垂直なZ軸方向にも可動としたことを特徴とする多自由度加工ステージ装置。
  2. 請求項1記載の多自由度加工ステージ装置において、前記板ばねとして、3枚の板ばねを前記加工テーブルの重心から放射状に延びる方向に設けたことを特徴とする多自由度加工ステージ装置。
  3. 請求項1記載の多自由度加工ステージ装置において、前記加工テーブル側磁性体を前記加工テーブルに等角度間隔をおいて3箇所に設け、これら3つの加工テーブル側磁性体に対応させて前記ベーステーブル側磁性体を設けると共にコイルを巻回して3組の電磁石を備えたことを特徴とする多自由度加工ステージ装置。
  4. 請求項3記載の多自由度加工ステージ装置において、前記3つの加工テーブル側磁性体はそれぞれ、加工テーブル側上部磁性体と加工テーブル側下部磁性体とから成り、前記3組の電磁石はそれぞれ、前記加工テーブル側上部磁性体に非接触で対向しているベーステーブル側上部磁性体及びこれに巻回された上部コイルと前記加工テーブル側下部磁性体に非接触で対向しているベーステーブル側下部磁性体及びこれに巻回された下部コイルとから成ることを特徴とする多自由度加工ステージ装置。
  5. 請求項3記載の多自由度加工ステージ装置において、前記3つの加工テーブル側磁性体はそれぞれ、前記加工テーブルの下部に設けられた加工テーブル側下部磁性体から成り、前記3組の電磁石はそれぞれ、前記加工テーブル側下部磁性体に非接触で対向しているベーステーブル側下部磁性体及びこれに巻回された下部コイルとから成ることを特徴とする多自由度加工ステージ装置。
  6. 請求項5記載の多自由度加工ステージ装置において、前記加工テーブル側下部磁性体、前記ベーステーブル側下部磁性体の一方に永久磁石を組み合わせて成ることを特徴とする多自由度加工ステージ装置。
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