JP3590816B2 - 支持機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被支持体を支持する支持機構に係り、特に、座標測定機の載置台や基準鏡保持枠等の構造物を支持する支持機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、超精密加工に対する高精度化の要求が高まり、それに伴って、加工対象物の測定に用いられる測定機についても高精度化が求められている。この測定機の中には、例えば、図5に示すような、加工対象物31の3次元形状を測定する座標測定機30がある。座標測定機30は、加工対象物31を測定するためのプロ−ブ32と、加工対象物31が載置される載置台33と、載置台33を固定する移動台34と、移動台34を所定の方向に案内する移動ガイド35と、移動ガイド35を固定する基盤36とを有して構成されている。プロ−ブ32は、上下に移動可能に設けられている。また、移動台34は、図示しない駆動モ−タによって、前記移動ガイド35に沿って移動する。
【0003】
ところで、当該座標測定機30を構成する各部材をはじめ、一般的に、構造物を構成する各部材は、与えられた外力や熱により変形が生じる。例えば、図5において、移動台34が移動ガイド35上を移動した場合には、移動ガイド35の真直度の悪さ加減に応じて載置台33に変形が生じてしまう。
【0004】
また、座標測定機のなかには、前述した移動台や移動ガイドを用いずに、プロ−ブ側を3次元的に移動させるタイプのものもある。この場合、載置台は、基盤に直接固定される。また、プロ−ブは、前記基盤に固定された駆動機構(図示せず)によって、その測定位置を変えることができる。
【0005】
しかしながら、このタイプの座標測定機においても、前記基盤上を移動する物体、例えば、前記駆動機構が存在する場合には、その移動による基盤の変形が、前記載置台に伝播してしまう。
【0006】
載置台に変形が生じると、その変形にならうように、前記加工対象物も変形してしまう。高精度を要求される測定においては、この変形量は、無視出来ない量となる。
【0007】
このような問題点を考慮して、従来では、載置台への変形の伝播をできるだけ小さくするために、図6、図7に示すような支持機構(いわゆる、キネマチックマウント)を用いていた。
【0008】
図6の支持機構40は、載置台41に3本の脚42、43、44を設けている。各脚の先端には、球形部材42a、43a、44aが設けられている。基盤45(前述の移動台として用いてもよい)の上面には、V溝46と、三角錐状の穴47が形成されている。V溝46には、球形部材42aが、穴47には、球形部材43aが配置されている。一方、球形部材44aは、基盤45の上面に置かれている。
【0009】
各球形部材が図6に示すように配置された場合、載置台41と基盤45との相対的位置関係が一意的に決定される。そして、基盤45に何らかの変形が生じた場合には、その変形に応じて各球形部材の配置位置が変化し、基盤45の変形の伝播を吸収する。図7の支持機構50においても同様であり、基盤51の上面に形成されたV溝52、53、54に、各球形部材が配置されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6、図7に示した支持機構では、載置台への変形の伝播を小さくすることができるが、この伝播を定量的に把握することが困難であった。具体的には、載置台への変形の伝播量を求めるために、各球形部材と基盤との摩擦が関係する、各部材間の接触状態を考慮しなければならならなかった。載置台の変形を極限まで小さくしなければならない現在、載置台への変形の伝播量をはじめ、支持機構の特性を定量的に把握することは不可欠である。
【0011】
一方、載置台の移動に対して、高速かつ高精度に制御を行うためには、載置台や支持機構を含む構造物全体の固有振動数を正確に把握する必要がある。この固有振動数を求めるためには、例えば、図6に示した支持機構を用いた場合、脚42、43、44のバネ定数を知る必要がある。しかしながら、加工対象物や載置台の重量が大きくなると、球形部材の支持点の圧縮応力が弾性限界を越えるため、この従来の支持機構においては、支持方向のバネ定数が不確定となると共に、支持方向に直角な方向のバネ定数も容易に計算することができない等の問題があった。
【0012】
以上のような問題点を考慮して、本発明の目的は、基盤に生じた変形の被支持体への伝播を抑えることができる支持機構を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様によれば、基盤と、当該基盤に固定された、第1、第2および第3の支持部材と、当該第1、第2および第3の支持部材に固定され、かつ、これらの支持部材によって支持された被支持体とを備え、前記第1、第2および第3の支持部材の各バネ定数の相互関係は、当該3つの支持部材を通る仮想平面を想定した場合に、前記第1の支持部材と前記第3の支持部材とを通る軸である、前記仮想平面上のX軸の軸方向において、前記第1の支持部材のバネ定数が、前記第3の支持部材のバネ定数よりも大きくなっており、前記仮想平面上のあらゆる方向において、前記第2の支持部材のバネ定数が、前記第1の支持部材のバネ定数よりも小さくなっており、前記X軸に垂直な軸である、前記仮想平面上のY軸の軸方向における前記第3の支持部材のバネ定数が、前記仮想平面上のあらゆる方向における前記第2の支持部材のバネ定数よりも大きくなっていることを特徴とする支持機構が提供される。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、前記仮想平面は、前記被支持体が前記第1、第2および第3の支持部材に支持される3つの支持点を通る平面であることを特徴とする支持機構が提供される。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様において、前記第1、第2および第3の支持部材のそれぞれは、前記被支持体に固定されている部分の断面積が、前記基盤に固定されている部分の断面積よりも小さいことを特徴とする支持機構が提供される。
【0016】
上記目的を達成するための本発明の第4の態様によれば、基盤と、当該基盤に固定された、少なくとも3つの支持部材と、各支持部材に固定され、かつ、これらの支持部材によって支持された被支持体とを備え、各支持部材のバネ定数は、前記基盤に生じた変形に起因する、前記被支持体の変形が減少するように、それぞれ異なっていることを特徴とする支持機構が提供される。
【0017】
【作用】
第1、第2の態様では、前記第1、第2および第3の支持部材の各バネ定数の相互関係により、前記基盤に生じた変形が前記被支持体に対して伝搬しにくくなる。第3の態様では、前記支持部材の変形による前記被支持体への影響が減少する。第4の態様では、前記基盤に生じた変形に起因する、前記被支持体の変形が減少する。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0019】
図1には、本発明に係る支持機構の第1の実施例が示されている。
【0020】
支持機構1は、被支持体(本実施例では、目的の対象物が載置される載置台)2と、載置台2の下面に固定され、かつ、載置台2を支持する3つの支持部材(第1の支持部材3、第2の支持部材4、第3の支持部材5)と、これらの支持部材を、その上面に固定する基盤6とを備えている。載置台2と基盤6とは、互いに平行に配置されている。3つの支持部材のそれぞれは、同一円周上において、当該円周を3等分する位置に配置されている。前記3つの支持部材の各バネ定数の相互関係は、以下のようになっている。
【0021】
いま、図1に示すようなX軸、Y軸、Z軸からなる3次元座標を想定したとする。X軸は、各支持部材の3つの支持点によって決定される平面(載置台2の下面)において、第1の支持部材3および第3の支持部材5を通る軸である。Y軸は、載置台2の下面において、第1の支持部材3を通り、かつ、前記X軸に垂直な軸である。Z軸は、第1の支持部材3の軸線であり、前記X軸および前記Y軸のそれぞれに対して垂直である。
【0022】
第1の支持部材3のバネ定数は、この座標空間のX軸方向において、第3の支持部材5のバネ定数よりも大きくなっている。また、XY平面上のあらゆる方向において、第2の支持部材4のバネ定数は、第1の支持部材3のバネ定数よりも小さくなっている。そして、Y軸方向における、第3の支持部材5のバネ定数は、XY平面上のあらゆる方向における、第2の支持部材4のバネ定数よりも大きくなっている。なお、各支持部材のZ軸方向のバネ定数をはじめ、各支持部材の断面寸法、支持部材長は、各支持部材の発生応力、座屈限界、必要な最低固有振動を考慮して決定されている。
【0023】
また、各支持部材の外形は、以上説明したような関係が保たれていれば、特に限定されない。本実施例では、第1の支持部材3および第2の支持部材4に、円柱状のものを用いており、第3の支持部材5には、直方体のものを用いている。もちろん、各支持部材に、その断面形状が楕円、正方形、多角形等になっているものを用いてもよい。
【0024】
つぎに、支持機構1の動作について説明する。
【0025】
支持機構1において、載置台2のZ軸方向の並進運動が生じた場合には、第1、第2および第3の支持部材のそれぞれは、Z軸方向の剛性によって、この運動を抑制する。また、X軸、Y軸まわりの回転運動に対しても、各支持部材のZ軸方向の剛性で、これを抑制する。
【0026】
一方、載置台2のXY平面と平行な並進運動は、第1の支持部材3の軸直角方向の剛性で抑制する。そして、載置台2のZ軸と平行な軸回りの回転運動は、第1の支持部材3と第3の支持部材5のY方向の剛性で抑制する。このとき、前述のバネ定数の大小関係から、第3の支持部材5のX方向、および、第2の支持部材2のX方向、Y方向における剛性は、比較的小さいものとなり、過剰な拘束を避けることができる。
【0027】
つぎに、本発明に係る支持機構の第2の実施例について、図2〜図4を用いて説明する。図2に示すように、本実施例における支持機構10の各支持部材(第1の支持部材13、第2の支持部材14、第3の支持部材15)は、載置台2に固定されている部分の断面積が、基盤6に固定されている部分の断面積よりも小さくなるように形成されている。具体的には、各支持部材は、断面積が異なるように段差がつけられており、その先端に形成された突起部で載置台2を支持している。このように構成すれば、支持部材と載置台2との固定面積が小さくなり、支持部材の曲げ変形による載置台2への曲げモーメントの伝播が小さくなる。なお、突起部の断面積は、出来るだけ小さくすることが望ましいが、発生応力を勘案して決定する。突起部の断面形状については、任意で良く、円形にこだわらないが、円形、正方形等の、その中心に対して対称となる形が望ましい。また、突起部の軸方向寸法は、XY平面(図1参照)に沿った方向のバネ定数に影響を与えるため、小さい方が望ましい。
【0028】
つぎに、各突起部の断面積と載置台の変形量との関係について具体的に説明する。
【0029】
この例では、図3に示すような支持機構20を用いている。載置台2には、縦600mm、横600mm、厚さ20mm、縦弾性係数9200kg/mm(940N/mm)、重量18kgのガラス材を用いている。第1の支持部材23は、直径70mm、長さ80mmの円柱部材と、その上面に設けられた突起部23aとから構成されている。第1の支持部材23のバネ定数は、9.5×10N/mである。第2の支持部材24は、縦横2.5mm、長さ65mmの角柱9本を格子状に束ねた部分と、この上面に設けられた突起部24aとから構成されている。第2の支持部材24のバネ定数は、7.3×10N/mである。第3の支持部材25は、その中央部が、幅60mm、厚さ1.5mm、長さ40mmの板状に形成された円柱部材と、突起部25aとから構成されている。第3の支持部材25のバネ定数は、X軸方向(図1参照)が1.1×10N/m、Y軸方向が1.7×10N/mである。各支持部材には、ニッケルを含有した合金であるインバ−を用いており、また、縦弾性係数は、14000kg/mm(1430N/mm)である。なお、各支持部材は、直径400mmの円周上において、当該円周を3等分するように配置されている。基盤6は、縦600mm、横600mm、厚さ100mm、縦弾性係数8000kg/mm(820N/mm)となっており、ニッケルを含有した鋳造合金を用いている。
【0030】
各支持部材の突起部の長さは、2mmとなっている。そして、図4には、基盤6に一定の変形を付与した場合における、各突起部の直径と載置台2の変形量(平面度の変化量)との関係が示されている。図4に示すように、各突起部の直径すなわち断面積が小さいほど、基盤6に生じた変形の載置台2への伝播が減少する。なお、基盤6に対する付与変形は、基盤6の下面4隅のうち、対角2点を固定し、残る2点に1μmの変位を付与して行っている。
【0031】
また、図3に示す支持機構20において、載置台2の厚さを60mm、載置台2の重量を55kg、各支持部材の突起部の直径を5mmとし、当該基盤6に1μmの変形を与えた場合には、載置台2の平面度変化は0.8nmとなり、変形の伝播が1/1000以下となった。また、最低固有振動数は、第1の支持部材3を軸とした載置台2の下面内の回転振動となり、102Hzが達成できた。なお、この場合の基盤6の付与変形は、基盤6の下面の相対する2辺を固定し、U字形に1μmの変形を付与して行った。
【0032】
以上、第1、第2の実施例について記述したが、このように本発明に係る実施例によれば、外部要因によって基盤に生じる変形の載置台への伝播を大幅に減衰させることが可能となり、載置台上に固定あるいは積載された対象物の変形あるいは位置関係変化を低く抑えることが出来る。また、バネ定数が明らかな支持部材を用いて基盤と載置台とを固定しているので、このバネ定数を用いた有限要素法等の構造解析手法を行えば、変形伝播、固有振動数、発生応力等の支持機構の特性を定量的に把握することができる。
【0033】
また、第2の実施例によれば、支持部材と載置台との結合部の断面積が小さくなっているので、基盤に生じる変形の載置台への伝播を更に減衰させることができる。
【0034】
また、第1、第2の実施例では、各支持部材は、載置台を下から支持しているが、本発明に係る支持機構は、重力方向による制限は無い。すなわち、重力方向を考慮した各支持部材の発生応力を勘案し、必要な精度が得られるバネ定数、固有振動数を、支持部材の形状、寸法を選択することにより決定すれば、様々な姿勢の支持機構を実現することができる。例えば、図1の支持機構1の上下を入れ換えた懸垂構造、また、壁面から載置台を支持する構造等も可能である。
【0035】
【発明の効果】
三つの支持部材のバネ定数の相互関係が定められた支持機構に係る発明によれば、三つの支持部材のX,Y方向の剛性に関して、少なくとも一つの支持部材の剛性が低いので、被支持体の過剰拘束を避けることができ、基盤に生じた変形の被支持体への伝播を抑えることができる。また、各支持部材の被支持体に固定されている部分の断面積が基盤に固定されている部分の断面積よりも小さい支持機構に係る発明によれば、各支持部材の曲げ変形による被支持体への曲げモーメントの伝播が小さくなり、結果として、外部要因によって基盤に生じる変形の被支持体への伝播を大幅に減衰させることができる。
また、支持部材の製作過程で、支持部材の各方向のバネ定数を把握することになるので、このバネ定数を用いた有限要素法等の構造解析手法を行えば、変形伝播、固有振動数、発生応力等の支持機構の支持特性を定量的に把握することができる。
【0036】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る支持機構の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】本発明に係る支持機構の第2の実施例を示す構成図である。
【図3】本発明に係る支持機構の第2の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明に係る支持機構の第2の実施例において、基盤に生じた変形と各支持部材の突起部の断面積との関係の一例を示すグラフである。
【図5】従来の測定機の一例を示す構成図である。
【図6】従来の支持機構の一例を示す構成図である。
【図7】従来の支持機構の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
1、10、20、40、50・・・支持機構、 2、33、41、51・・・載置台、 3、13、23・・・第1の支持部材、 4、14、24・・・第2の支持部材、5、15、25・・・第3の支持部材、 6、36、45・・・基盤、 30・・・座標測定機、 31・・・加工対象物、 32・・・プロ−ブ、 34・・・移動台、 35・・・移動ガイド、 42、43、44・・・脚、 46、52、53、54・・・V溝、 47・・・孔

Claims (4)

  1. 基盤と、当該基盤に固定された、第1、第2および第3の支持部材と、当該第1、第2および第3の支持部材に固定され、かつ、これらの支持部材によって支持された被支持体とを備え、
    前記第1、第2および第3の支持部材の各バネ定数の相互関係は、当該3つの支持部材を通る仮想平面を想定した場合に、前記第1の支持部材と前記第3の支持部材とを通る軸である、前記仮想平面上のX軸の軸方向において、前記第1の支持部材のバネ定数が、前記第3の支持部材のバネ定数よりも大きくなっており、前記仮想平面上のあらゆる方向において、前記第2の支持部材のバネ定数が、前記第1の支持部材のバネ定数よりも小さくなっており、前記X軸に垂直な軸である、前記仮想平面上のY軸の軸方向における前記第3の支持部材のバネ定数が、前記仮想平面上のあらゆる方向における前記第2の支持部材のバネ定数よりも大きくなっていること
    を特徴とする支持機構。
  2. 請求項1において、
    前記仮想平面は、前記被支持体が前記第1、第2および第3の支持部材に支持される3つの支持点を通る平面であること
    を特徴とする支持機構。
  3. 請求項1または2において、
    前記第1、第2および第3の支持部材のそれぞれは、前記被支持体に固定されている部分の断面積が、前記基盤に固定されている部分の断面積よりも小さいこと
    を特徴とする支持機構。
  4. 基盤と、当該基盤に固定された、少なくとも3つの支持部材と、各支持部材に固定され、かつ、これらの支持部材によって支持された被支持体とを備え、
    各支持部材のバネ定数は、前記基盤に生じた変形に起因する、前記被支持体の変形が減少するように、それぞれ異なっていること
    を特徴とする支持機構。
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