JP3590777B2 - 渦巻形ガスケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体や液体等の流体の流路を構成する配管や、その流路上に配置される容器あるいは機器等の接続部に設けられたフランジ端面間に装着され、そのフランジ端面間を封止するための渦巻形ガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
図5(a)は従来の渦巻形ガスケットの構成を示す平面図であり、(b)は(a)のX−X線における断面図である。図5(a)及び(b)において、従来の渦巻形ガスケット50は、帯状の金属製薄板からなるフープ51と、シール性を有する帯状の軟質材からなるフィラー52とを重ね合わせ、渦巻状に巻き付けて形成されたガスケット本体53を備えており、このガスケット本体53の内周側及び外周側に、補強リング部材としての内輪54及び外輪55をそれぞれ設けている。
【0003】
上記フープ51は、図5(b)に示すように、例えば径方向外方に膨出した断面略くの字状に成形されたものが用いられており、ステンレス薄鋼板等のフープ材により構成されている。フィラー52は、上記フープ51の成形形状に沿うように変形されて、フープ51の各層間に巻き込まれた構成となっている。また、フィラー52には、膨張黒鉛、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、無機紙等のフィラー材が用いられており、とりわけ渦巻形ガスケット50が耐熱用途または耐食性用途に供される場合には、上記膨張黒鉛あるいはPTFEが使用されている。
【0004】
上記内輪54は、ガスケット本体53に必要に応じて取り付けられるものであり、例えばステンレス鋼板により構成されている。また、この内輪54の外径はガスケット本体53の最小内径よりも大きく形成されており、ガスケット本体53の内周面53a内に挿嵌されることでガスケット本体53をその内周側から支持している。この内輪54は、渦巻形ガスケット50がフランジ端面間に装着されて所定の締付圧で締付けられた時での径方向内方へのガスケット本体53の変形を抑えて、当該ガスケット本体53の内周側の層が円形状から中心側に反転して局部的に折れ曲がるような座屈変形が生じるのを防止する。
【0005】
上記外輪55は、炭素鋼板やステンレス鋼板等により構成されたものであり、図5(b)に示すように、断面略V字状の溝55aが内周部に形成されている。外輪55は、上記溝55aにガスケット本体53の外周面53bが密接された状態でガスケット本体53と結合されている。詳細にいえば、外輪55では、通常、最小内径がガスケット本体53の最大外径よりも小さく形成されており、作業者が木槌等でガスケット本体53を外輪55の上部に配置した状態から適宜たたいて変形させたり、ガスケット本体53に大きな力を作用させて歪ませて、そのガスケット本体53の外周面53bを上記溝55aに添わせて嵌込むことにより、ガスケット本体53に外輪55を取り付けている。外輪55は、ガスケット本体53を外周側から支持して、上記締付けられた時での径方向外方へのガスケット本体53の変形を抑えるとともに、装着先のフランジ端面間でガスケット本体53を保持する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の渦巻形ガスケット50では、手作業でガスケット本体53の外周面53bを外輪55の溝55aに添わせて嵌込むことにより、ガスケット本体53の外輪55への取付作業を行っていたので、当該渦巻形ガスケット50の生産性が低く、しかも製品品質が低下するという問題があった。特に、ガスケット本体53の外径が小さくなるにつれて、そのガスケット本体53の外周面53bを溝55aに入れにくくなり、上記の問題が顕著に発生していた。
具体的には、この取付作業は熟練を必要とする高等な作業であり、不慣れな作業者が行った場合には、その取付作業に時間を要したり、ガスケット本体53と外輪55との同心性を確保することができずにフランジ端面間に装着された時に良好な装着状態を得ることができなかったり、ガスケット本体53が外輪55から外れたりした。また、木槌などによってガスケット本体53をたたいて変形させたり歪ませていたので、渦巻形ガスケット50の外観品質が低下したり、フランジ端面間に装着した時でのガスケット本体53の締付け面圧が上記変形や歪みによって一定なものとならずに、そのガスケット本体53のシール性が低下することがあった。
【0007】
また、上記膨張黒鉛あるいはPTFEを用いてフィラー52を構成したものでは、内輪54を省略することができずに、渦巻形ガスケット50の生産コストが高くなるという問題があった。これは、上記膨張黒鉛あるいはPTFEの摩擦係数が小さいものであるため、フランジ端面間に装着した時、フランジ端面とガスケット本体53の表面との間に作用する摩擦力が小さくなり、上記ガスケット本体53の径方向内方への変形を抑制する抑制力も小さくなって上記座屈変形が生じやすい状態となるからである。それゆえ、上記のような摩擦係数の小さいフィラー材でフィラー52を構成した場合、内輪54が必要不可欠なものとなって渦巻形ガスケット50のコストアップを招いた。
【0008】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、ガスケット本体の外径に関わらずガスケット本体の外輪への取付作業を簡単なものとして生産性を向上することができるとともに、製品品質を向上することができるコスト安価な渦巻形ガスケットを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の渦巻形ガスケットは、帯状の金属製薄板からなるフープと、帯状の軟質材からなるフィラーとを重ねて渦巻状に形成されたガスケット本体と、このガスケット本体の外周を囲う外輪とを備える渦巻形ガスケットであって、
前記外輪の内周部が、その一側面側及び他側面側に、径方向内方に突出する第1の突出部及び前記第1の突出部よりも径方向内方への突出長さが長い第2の突出部をそれぞれ有する非対称な断面形状に形成され、
前記外輪は、複数箇所で前記第1の突出部の部分をカシメることにより、径方向内方側に突出変形させたカシメ部を形成しているとともに、前記第2の突出部と前記カシメ部とにより、前記ガスケット本体を保持していることを特徴とするものである(請求項1)。
【0010】
上記のように構成された渦巻形ガスケットでは、径方向内方への突出長さの短い第1の突出部を外輪の内周部の一側面側に形成しているので、この一側面側から内周部内へのガスケット本体の挿入作業を容易に行うことができるとともに、上記カシメ部を形成することによりガスケット本体を保持しているので、ガスケット本体の外径に関わらず当該ガスケット本体の外輪への取付作業を簡単なものとすることができる。
【0011】
また、上記渦巻形ガスケット(請求項1)において、前記ガスケット本体が、その外周から径方向外方に隙間を形成した状態で前記第2の突出部と前記カシメ部とにより保持されていることが好ましい(請求項2)。
この場合、上記ガスケット本体は径方向外方に隙間を形成した状態で保持されているので、装着先のフランジ端面間で当該渦巻形ガスケットを締付けた時に、ガスケット本体の外周側が径方向外方に移動する外方変形を許容することができ、よってそのガスケット本体の内周側が径方向内方に移動する内方変形を小さくすることができる。
【0012】
また、上記渦巻形ガスケット(請求項1または2)において、前記外輪の内周部には、前記第1及び第2の突出部との間で環状の凹部が形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合、上記環状の凹部がガスケット本体の外周と外輪の内周部との間で、そのガスケット本体の外周外方の全周にわたる隙間を形成するので、ガスケット本体の外周側での上記外方変形をさらに容易に許容することができ、よって内周側での上記内方変形をより小さくすることができる。
【0013】
また、上記渦巻形ガスケット(請求項1〜3のいずれか)において、前記ガスケット本体における内周側のフィラーを、外周側のフィラーよりも摩擦係数の大きいフィラー材で形成してもよい(請求項4)。
この場合、摩擦係数の大きなフィラー材でガスケット本体の内周側のフィラーが形成されているので、そのガスケット本体の内周側でのフランジ端面との間に生じる摩擦力を大きなものとして、その内周側での上記内方変形をさらに抑制することができる。
【0014】
また、上記渦巻形ガスケット(請求項4)において、前記内周側のフィラーを摩擦係数0.3以上の無機質フィラー材で形成し、前記外周側のフィラーを前記無機質フィラー材よりも小さい摩擦係数の膨張黒鉛またはPTFEにより形成することが好ましい(請求項5)。
この場合、上記の膨張黒鉛またはPTFEにより外周側のフィラーを形成することにより、上記ガスケット本体の外周側をフランジ端面によくなじんだ状態で変形させることができるとともに、内周側のフィラーを上記無機質フィラー材により形成しているので、その内周側での上記内方変形をさらに抑制することができる。
【0015】
また、上記渦巻形ガスケット(請求項1〜5のいずれか)において、前記第2の突出部を補助的にカシメてもよい(請求項6)。
この場合、上記カシメ部と補助的にカシメた第2の突出部との間でガスケット本体をより強固に挟持することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の渦巻形ガスケットの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態である渦巻形ガスケットの構成を示す構造図であり、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のP−P線における拡大断面図であり、(c)は(a)のQ−Q線における拡大断面図である。図において、本実施形態の渦巻形ガスケット1は、ガスケット本体2、及びガスケット本体2の外周を囲う補強リング部材としての外輪3を備えている。
【0017】
ガスケット本体2は、帯状の金属製薄板からなるフープ4と、そのフープ4と同一幅の軟質材からなる帯状のフィラー5とを重ね合わせ、渦巻状に巻装して形成されている。さらに詳細には、ガスケット本体2の内周側及び外周側において、図1(c)に示すように、フィラー5を介装せずにフープ4のみが巻かれた2〜3巻き程度の空巻き部分4a,4bがそれぞれ設けられており、この空巻き部分4a,4bの各端部を隣り合う層の部分にスポット溶接等で固着することにより、ガスケット本体2は全体として所定の内外径を有するリング状に形成されている。
【0018】
上記フープ4は、例えば幅方向(図1(b)における上下方向)の中央領域が径方向外方に膨出した断面略くの字状に成形されたものが用いられており、ステンレス薄鋼板等のフープ材により構成されている。
上記フィラー5は、シール性を備えた緩衝材であるフィラー材により構成されたものであり、上記空巻き部分4a,4bの間でフープ4の成形形状に沿うように変形されて、フープ4の各層間に巻き込まれた構成となっている。また、このフィラー5は、例えば摩擦係数の異なる複数のフィラー材を含んでおり、ガスケット本体2における内周側のフィラーを、外周側のフィラーよりも摩擦係数の大きなフィラー材で形成している。
【0019】
具体的にいえば、フィラー5は、図1(b)に示すように、例えば内側1〜5巻き程度の内側領域Iaと、その内側領域Iaを除く主領域Maとで、使用するフィラー材を変更したものであり、上記内側領域Iaでは例えば0.3以上の摩擦係数を有する無機質フィラー材が用いられ、主領域Maでは摩擦係数がそれぞれ0.15程度及び0.04程度である膨張黒鉛またはPTFEが用いられている。尚、上記0.3以上の摩擦係数を有する無機質フィラー材には、アルミナやシリカ等のセラミックファイバー、あるいはガラスファイバーやステンレスファイバー等の金属のファイバー、またはこれらの粉体を用いた成形体(例えば焼結体や多孔体)、マイカシート等からなるフィラー材などがある。
【0020】
また、上記摩擦係数は、渦巻形ガスケット1が実際に使用される状態、例えば装着先のフランジ端面間の平面座に配置されて所定の締付圧で締め付けられた状態での各フィラー材の値を想定したものであり、本発明の発明者等は図3(a)に示す測定装置を用いて、上記の膨張黒鉛やPTFE等の各摩擦係数を求めた。尚、図3(b)及び(c)の各グラフは、膨張黒鉛の摩擦係数を算出した時の測定結果の一例を示している。
詳細にいえば、図3(a)において、ステンレス(SUS304)製のスライド板21の上下各面に、それぞれ同一種類のフィラー材のみで構成された被測定用ガスケット22,22を配置し、これらに、油圧プレス機23によって上下方向に荷重を負荷して所定の締付荷重Fgで保持する。この状態でサドルモータ24を作動し、スライド板21を水平方向に移動させることにより、スライド板21とガスケット22とを相対的に摺接させる際に必要なせん断荷重Wgを記録計25に記録した。そして、これら締付荷重Fgとせん断荷重Wgとを下記(1)式に代入することにより、摩擦係数μを算出した。
μ=Wg/(2×Fg) …(1)式
【0021】
また、上記スライド板21はその表面粗さ(Hmax)が6μm程度のものを用い、被測定用ガスケット22の寸法は内径69mm及び外径89mmとした。また、締付荷重Fgを3000kgfに設定し、スライド板21の移動速度を17mm/分に設定した。
図3(b)の曲線26に示すように、締付荷重Fgを3000kgfに保持した状態でスライド板21の移動を開始すると、せん断荷重Wgは同図(c)の曲線27に示すように変化して、その最大値が900kgfとなった。尚、スライド板21の移動に伴って、上記曲線26に示すように、締付荷重Fgもわずかに変化しているが、膨張黒鉛の摩擦係数μの算出では、上記(1)式に、締付荷重Fg=3000kgf及びせん断荷重Wg=900kgfを代入して、0.15の値を得た。
【0022】
図1に戻って、上記外輪3は、例えば冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等の金属材を用いて構成されたものであり、その厚さをガスケット本体2のものより所定の寸法だけ薄くして形成されている。また、この外輪3の内周部3aは、図1(b)及び(c)に示すように、軸線方向に対して非対称な断面形状に形成されている。
詳細にいえば、この内周部3aには、同図(c)に示すように、上記空巻き部分4b、つまりガスケット本体2の外周に対して離間する環状の溝3bが設けられており、さらに溝3bの表面と当該外輪3の一側面3d及び他側面3eとにそれぞれ挟まれ、径方向内方に突出する突出長さが互いに異なる環状の第1及び第2の突出部3f,3gが形成されている。上記溝3bの最大外径は、予めガスケット本体2の最大外径と略同一若しくは若干小さい寸法に設定されている。また、ここでいう突出長さとは、後述のカシメ部3hの形成工程が終了した後の当該カシメ部3h以外の任意の箇所における溝3bの最大外径の箇所からの突出寸法をいう。尚、カシメ部3hが形成された時、上記第1の突出部3f側の溝3bの表面が突出変形又は一部隆起し、これによりガスケット本体2の外周部が外輪3の内径側でその溝3bの表面変形部3cと接した状態でガスケット本体2は保持される(図1(b)参照)。また、上記表面変形部3cが形成されることにより対応する接面箇所からガスケット本体2の径方向内方に力が作用し、ガスケット本体2が若干内径方向へ縮径することにより、ガスケット本体2の外周と溝3bとが部分的に又は全面的に互いに離間した状態でガスケット本体2は保持される(図1(c)参照)。
【0023】
上記第1の突出部3fでは、カシメ部3hの形成工程前の突出長さが第2の突出部3gのものよりも短い寸法に設定されている。この第1の突出部3fの突出長さは、ガスケット本体2の外径やフープ4とフィラー5の材質等に基づき決定されるものであり、フープ4及びフィラー5に塑性変形を極力生じることなくガスケット本体2の外輪3への挿入作業を容易なものとする値が適宜選択されている。具体的には、第1の突出部3fの突出長さは0.9mm以下に設定されている。また、上記第2の突出部3gの突出長さは、当該第2の突出部3gの最小内径がガスケット本体2の最大外径よりも小さくなるように決定されている。これら断面非対称の第1及び第2の突出部3f,3gを設けたことにより、外輪3の内周部3aには、フープ4及びフィラー5に塑性変形を極力生じることなく一側面3d側上方から第1の突出部3fを通してガスケット本体2を容易に挿入することができ、かつ第2の突出部3gでガスケット本体2を支持できる段差構造が形成される。尚、例えばガスケット本体2が最大外径88mmのものでは、第1及び第2の突出部3f,3gの最小内径は87.0mm及び85.8mmにそれぞれ設定され、第1及び第2の突出部3f,3gの突出長さの差は0.6mmに設定される。また、第1の突出部3fの突出長さは、第2の突出部3gのものに対して40〜80%となるようにするのが好ましく、特に好ましくは60%である。
【0024】
また、上記外輪3には、例えば図1(a)に示す4箇所の円周等配の各位置にカシメ部3hが設けられており、当該外輪3は、上記表面変形部3cの介在により、図1(b)及び(c)に示す隙間3iを形成した状態で、カシメ部3hと第2の突出部3gとによりガスケット本体2の外周を挟持してこれを保持している。このように、外輪3との間に隙間3iを形成した状態でガスケット本体2を保持しているので、渦巻形ガスケット1をフランジ端面間に介装し所定の締付圧で締付けた時に、ガスケット本体2の外周側が径方向外方に移動する外方変形を許容することができ、当該ガスケット本体2の内周側が径方向内方に移動する内方変形を小さくすることができる。
【0025】
上記カシメ部3hは、隙間3i(図1(b)及び(c))が形成されるように、上記の円周等配の各位置で第1の突出部3fの部分を径方向内方側にカシメることによって当該部分を塑性変形させたものである。具体的には、例えば図2(a)に示すように、尖った先端部30aを有するポンチ30を、外輪3の一側面3dと垂直な方向に打ち下ろすことにより、上記第1の突出部3fの所定の部分を径方向内方側に突出変形させたカシメ部3hと隙間3iとを形成している。尚、上記の説明以外に、図2(b)に示すように、上記一側面3dに対して、球面状の先端部31aを有するポンチ31を斜めに打ち下ろすことにより、上記カシメ部3hと隙間3iとを形成してもよい。
また、このカシメ部3hの形成工程は、例えばポンチ30を備えた機械装置によって上記4箇所同時に行われる。また、この機械装置には、外輪3を固定する固定部材が設けられており、チャック部材等でつかんだガスケット本体2を上記一側面3d側から内周部3a内に挿入する挿入作業が上記カシメ部3hの形成工程の前に行われている。
【0026】
上記のように構成された本実施形態の渦巻形ガスケット1では、上記第1の突出部3fの突出長さを適切に選択することにより、フープ4及びフィラー5に塑性変形を極力生じることなく一側面3d側から内周部3a内へのガスケット本体2の挿入作業を容易に行うことができるとともに、カシメ部3hを設けて第2の突出部3gとによりガスケット本体2を保持しているので、ガスケット本体2の外径に関わらず当該ガスケット本体2の外輪3への取付作業を簡単なものとすることができる。また、このような一連の取付作業を機械装置によって行っているので、上述の従来例と異なり、その取付作業に熟練した作業者を必要とせず、しかもガスケット本体2を木槌などでたたいて変形させたり、大きな力を作用させて歪ませていないので、渦巻形ガスケット1の外観品質の低下を防ぐことができるとともに、ガスケット本体2と外輪3との同心性やシール性を容易に向上することができる。
また、上記隙間3iにより、ガスケット本体2の外周側での上記外方変形を許容して、そのガスケット本体2の内周側での上記内方変形を小さくすることができるので、上述の従来例と異なり、内輪を設けることなくガスケット本体2の座屈変形が生じるのを防止することができる。
【0027】
また、ガスケット本体2における内周側(内側領域Ia)のフィラー5を、外周側(主領域Ma)のフィラー5よりも摩擦係数の大きなフィラー材で形成しているので、当該ガスケット本体2の内周側での装着先のフランジ端面との間に生じる摩擦力を大きなものとして、その内周側での上記変形をさらに抑制することができる。したがって、たとえフランジ端面間において締付圧を大きくした場合でも、上記座屈変形が生じるのを確実に防止することができ、良好なシール性を維持することができる。
さらに、内周側のフィラー5を摩擦係数0.3以上の無機質フィラー材により形成し、外周側のフィラー5を上記無機質フィラー材よりも小さい摩擦係数の膨張黒鉛またはPTFEにより形成しているので、ガスケット本体2の外周側を上記フランジ端面によくなじんだ状態で変形させることができるとともに、そのガスケット本体2の内周側での上記変形をさらに抑制することができ、上記締付圧を大きくした場合でも、シール性を容易に向上することができる。
【0028】
尚、上記の説明では、カシメ部3hを4箇所に設けた構成について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、複数箇所好ましくは3箇所以上の円周等配の各位置でカシメ部3hが第2の突出部3gとともにガスケット本体2を保持できるものであればよい。つまり、このカシメ部3hの形成数は、ガスケット本体2の外径や重量、フープ4あるいはフィラー5の材質、または装着先のフランジ端面間の締付圧等に応じて適宜変更可能なものである。具体的には、ガスケット本体2の外輪3への挿入作業を容易なものとするために、上記第1の突出部3fの最小内径とガスケット本体2の最大外径とが同一寸法に設定されている場合などでは、カシメ部3hの形成数を上記の4箇所よりも多くすることでガスケット本体2をより確実に保持することができる。
また、カシメ部3hの形成数を適宜決定することにより、ガスケット本体2の内周側での上記内方変形を小さくすることができるので、上記フィラー5の内側領域Ia及び主領域Maが、ともに摩擦係数の小さいフィラー材、例えば膨張黒鉛のみで形成されているガスケット本体2の場合でも、上記内方変形を抑えることができ、上記内輪を設けることなく上記座屈変形が生じるのを防止することができる。尚、カシメ部3hの最適な形成数nは、例えば上記材質のガスケット本体2の場合、nは3以上で下記(2)式を満足する個数であればよい。
Dπ/180<n<Dπ/30 …(2)式
但し、Dはガスケット本体2の最外径を示す。
さらに、第2の突出部3gの所定部分を補助的にカシメてもよい。これにより、外輪3によるガスケット本体2の保持がより確実なものとなる。
【0029】
図4は、他の実施形態の渦巻形ガスケットの構成を示す構造図であり、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のR−R線における拡大断面図であり、(c)は(a)のS−S線における拡大断面図である。図において、この実施形態と図1に示した実施形態との主な相違点は、外輪3の内周部3aにおいて、環状の凹部3jを第1及び第2の突出部3f,3gの間に形成した点である。尚、以下の説明では、上記実施形態のものと同様な部分は、同一の符号を附してその重複した説明を省略する。
すなわち、本実施形態の渦巻形ガスケット1では、図4(c)に示すように、外輪3の内周部3aにおいて、環状の凹部3jがガスケット本体2の外周と溝3bの表面との間に形成されている。この凹部3jは、第1及び第2の突出部3f,3gの間の内周部3aの部分を、同図(c)に”H”にて示す所定の間隔寸法で切欠くことによって形成したものであり、ガスケット本体2の外周外方の全周にわたる隙間を形成している。
以上のように、凹部3jが、ガスケット本体2の外周外方の全周にわたる隙間を形成しているので、ガスケット本体2の外周側での上記外方変形をさらに許容することができ、よって内周側での上記内方変形をより小さくすることができる。
【0030】
ここで、上記凹部3jの効果を検証するために、本発明の発明者等が実施した試験結果を表1に示す。
この試験では、表1に示すNo.1〜12の各試験品を板材を介して油圧試験機により押圧し、その押圧した状態を10分間保持した後、ガスケット本体2の変形状態を視認により確認した。また、上記の各試験品では、内径171.4mm、外径209.6mm、厚さ4.5mmのガスケット本体2を用いた。また、フープ4には、厚さ0.2mmのSUS304を用いた。また、外輪3は厚さ3.2mm及び外径317.5mmのSPCCを用いたものであり、試験品No.1〜3では第1及び第2の突出部3f,3gの最小内径、及び溝3bの最大外径がそれぞれ208.2mm、207.0mm、及び210.0mmのものを使用した。また、試験品No.4〜6では第1及び第2の突出部3f,3gの最小内径、及び溝3bの最大外径がそれぞれ209.0mm及び207.8mm、及び210.8mmのものを使用し、試験品No.7〜12では第1及び第2の突出部3f,3gの最小内径がそれぞれ208.2mm及び207.0mmのものを使用した。また、試験品No.7〜12では、図4(c)に”H”にて示した寸法を2.0mmとしたものを用いた。尚、試験品No.1〜6は、図1に示した実施形態に対応した試験品である。また、表2に示すフィラー5の各フィラー材の具体的な摩擦係数は、図3に示した測定装置を用いて算出した値である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表1から明らかなように、凹部3jを形成した試験品No.7〜12は、凹部3jを形成していない試験品No.1〜6に比べて、締付圧を大きくした場合でも、カシメ部3hの形成数を多くすることなく座屈変形が生じるのを防止することができる。尚、試験品No.3,6,9,11から明らかなように、フィラー5の内側領域Iaに、摩擦係数0.3の無機質フィラー材を用いることにより、締付圧を大きくした場合でも、座屈変形の発生をより効果的に抑えることができる。
【0034】
尚、上記の説明では、第1及び第2の突出部3f,3gを環状に形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数箇所で部分的に突出した第1及び第2の突出部を設ける構成でもよい。
また、上記の説明では、内輪を省略した構成について説明したが、本発明はガスケット本体2の外輪3への取付作業を簡単に行えるものであれば何等限定されるものではなく、装着先のフランジ端面間の締付圧等によっては内輪を設けてもよい。
【0035】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1の渦巻形ガスケットによれば、ガスケット本体の外径に関わらず当該ガスケット本体の外輪への取付作業を簡単なものとすることができるので、渦巻形ガスケットの生産性を向上することができるとともに、例えばガスケット本体と外輪との同心性を容易に確保することができ、その確保した状態でカシメ部によりガスケット本体を確実に保持することができる。したがって、製品品質を向上することができ、しかもコストを削減することができる渦巻形ガスケットを提供することができる。
【0036】
請求項2の渦巻形ガスケットによれば、ガスケット本体の外周側が径方向外方に移動する外方変形を許容することができ、よってガスケット本体の内周側が径方向内方に移動する内方変形を小さくすることができるので、内輪を設けることなく座屈変形が生じるのを防いでシール性を向上することができる。
【0037】
請求項3の渦巻形ガスケットによれば、ガスケット本体の外周側での上記外方変形をさらに容易に許容することができ、よって内周側での上記内方変形をより小さくすることができるので、装着先のフランジ端面間において締付圧を大きくした場合でも、上記座屈変形が生じるのを確実に防止することができ、良好なシール性を維持することができる。
【0038】
請求項4の渦巻形ガスケットによれば、ガスケット本体の内周側でのフランジ端面との間に生じる摩擦力を大きなものとして、その内周側での上記内方変形をさらに抑制することができるので、装着先のフランジ端面間において締付圧を大きくした場合でも、上記座屈変形が生じるのをより確実に防止することができ、良好なシール性をさらに維持することができる。
【0039】
請求項5の渦巻形ガスケットによれば、ガスケット本体の外周側をフランジ端面によくなじんだ状態で変形させることができるとともに、そのガスケット本体の内周側での上記内方変形をさらに抑制することができるので、上記締付圧を大きくした場合でも、シール性を容易に向上することができる。
【0040】
請求項6の渦巻形ガスケットによれば、上記カシメ部と補助的にカシメた第2の突出部との間でガスケット本体をより強固に挟持することができるので、外輪によるガスケット本体の保持をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である渦巻形ガスケットの構成を示す構造図であり、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のP−P線における拡大断面図であり、(c)は(a)のQ−Q線における拡大断面図である。
【図2】(a)は図1に示したカシメ部の具体的な形成方法を示す説明図であり、(b)は同カシメ部の別の形成方法を示す説明図である。
【図3】摩擦係数の測定方法を示す説明図であって、(a)は測定装置の構成を示す概略図であり、(b)は同測定装置による締付荷重の測定結果の一例を示すグラフであり、(c)は同測定装置によるせん断荷重の測定結果の一例を示すグラフである。
【図4】別の実施形態の渦巻形ガスケットの構成を示す構造図であり、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のR−R線における拡大断面図であり、(c)は(a)のS−S線における拡大断面図である。
【図5】(a)は従来の渦巻形ガスケットの構成を示す平面図であり、(b)は(a)のX−X線における断面図である。
【符号の説明】
1 渦巻形ガスケット
2 ガスケット本体
3 外輪
3a 内周部
3d 一側面
3e 他側面
3f 第1の突出部
3g 第2の突出部
3h カシメ部
3i 隙間
3j 凹部
4 フープ
5 フィラー
Ia 内側領域(内周側のフィラー)
Ma 主領域(外周側のフィラー)
Claims (6)
- 帯状の金属製薄板からなるフープと、帯状の軟質材からなるフィラーとを重ねて渦巻状に形成されたガスケット本体と、このガスケット本体の外周を囲う外輪とを備える渦巻形ガスケットであって、
前記外輪の内周部が、その一側面側及び他側面側に、径方向内方に突出する第1の突出部及び前記第1の突出部よりも径方向内方への突出長さが長い第2の突出部をそれぞれ有する非対称な断面形状に形成され、
前記外輪は、複数箇所で前記第1の突出部の部分をカシメることにより、径方向内方側に突出変形させたカシメ部を形成しているとともに、前記第2の突出部と前記カシメ部とにより、前記ガスケット本体を保持していることを特徴とする渦巻形ガスケット。 - 前記ガスケット本体が、その外周から径方向外方に隙間を形成した状態で前記第2の突出部と前記カシメ部とにより保持されていることを特徴とする請求項1記載の渦巻形ガスケット。
- 前記外輪の内周部には、前記第1及び第2の突出部との間で環状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の渦巻形ガスケット。
- 前記ガスケット本体における内周側のフィラーを、外周側のフィラーよりも摩擦係数の大きいフィラー材で形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の渦巻形ガスケット。
- 前記内周側のフィラーを摩擦係数0.3以上の無機質フィラー材で形成し、前記外周側のフィラーを前記無機質フィラー材よりも小さい摩擦係数の膨張黒鉛またはPTFEにより形成していることを特徴とする請求項4記載の渦巻形ガスケット。
- 前記第2の突出部を補助的にカシメたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の渦巻形ガスケット。
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