JP3590276B2 - 無効電力補償装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統に接続する無効電力補償装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
大容量モータ等が接続されている電力系統においては、大容量モータの起動時等に大きな電圧変動が生じる。
【0003】
このような大容量で急変な負荷変動による電圧変動を抑制するのに有効な装置の一つが静止形無効電力補償装置であり、系統電圧が低下している場合には進み無効電力負荷として動作し、また、系統電圧が上昇している場合には遅れ無効電力負荷として動作して系統の電圧変動を補償するものである。
【0004】
以下に従来の静止形無効電力補償装置(SVC)について説明する。図12は従来の静止形無効電力補償装置を示すものである。2は無効電力制御回路である無効電力発生回路、3は電力系統、1は制御装置、5は電圧計測用変圧器、6は無効電力発生回路用トランス、22は第1のリアクトル、23は第2のリアクトル、24は位相制御スイッチ手段、25はコンデンサ、11は電圧検出部、15は実効値演算部、12は設定電圧記憶部、13は電圧一定制御部である。
【0005】
以上のように構成された従来の静止形無効電力補償装置について、以下その動作について説明する。まず、無効電力負荷として動作する無効電力発生回路2は電力系統3と無効電力発生回路用トランス6を介して低圧側に接続されている。電圧計測用変圧器5に印加された電力系統3の系統電圧に対応した電圧実効値を電圧検出部11及び実効値演算部15で検出し、系統電圧が低下した場合は、電圧一定制御部13により無効電力発生回路2の位相制御スイッチ手段24を制御して、進み無効電力負荷として動作し、逆に電圧が上昇した場合には、遅れ無効電力負荷として動作して系統電圧が設定電圧記憶部12の設定電圧を維持するように電圧一定制御を行う。具体的には、電圧計測用変圧器5の出力は電圧検出部11を通して電圧時間波形に変換後、実効値演算部15に入力され系統電圧値に変換され、その出力は電圧一定制御部13に入力し電力系統3の電圧が設定電圧になるように無効電力発生回路2を制御する。具体的には実効値演算部15の出力が設定電圧記憶部12の電圧設定値と比較され、その差分が電圧一定制御部13に入力される。電圧一定制御部13では電圧差分値が0になるように位相制御スイッチ手段24を制御して無効電力制御を行う。
【0006】
このようにして無効電力を電力系統に供給することにより、電力系統3の系統電圧の変動を抑制することができる。
【0007】
以上のように、静止形無効電力補償装置によって電力系統3の電圧を一定にするためには電力系統3の電圧を検出することが不可欠であり、高電圧対応の電圧計測用変圧器5をトランス6の一次側に接続する必要があった。通常この電圧計測用変圧器自身が高価であるとともに高電圧のかかる一次側に絶縁設計が必要なため無効電力補償装置のコスト低減のネックとなっていた。また、電圧計測用変圧器5を外付けの場合、無効電力補償装置を電力系統3に設置するときに電圧計測用変圧器5を高電圧線に接続する作業が発生し危険を伴っていた。
【0008】
以上、静止形無効電力補償装置について述べたが、他の自励式無効電力補償装置(SVG)や段階的な電圧制御を行う機器、たとえば単体或いは複数のコンデンサとスイッチ素子で電圧制御を行う装置や、単体或いは複数のリアクトルとスイッチ素子で電圧制御を行う装置などでも同様な問題が発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で説明したように、無効電力補償装置によって電力系統の電圧を一定にするためには電力系統の電圧を検出することが不可欠であり、高電圧対応の電圧計測用変圧器を電力系統に接続する必要がある。通常この電圧計測用変圧器自身が高価であるとともに高電圧のかかる一次側に絶縁設計が必要なため無効電力補償装置のコスト低減及び小型化の課題となっていた。また、電圧計測用変圧器を外付けの場合、無効電力補償装置を電力系統に設置するときには電圧計測用変圧器を高電圧線に接続する作業が発生し危険を伴う問題点があった。
【0010】
この発明は、上記従来の問題点を解決するもので、電力系統上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を必要としない無効電力補償装置を提供し、低コスト化を図りながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の無効電力補償装置は、電力系統に接続されて無効電力発生量を制御する無効電力制御回路と、電力系統の電圧を検出する電圧検出部と、無効電力制御回路の無効電流を検出する電流検出部と、設定電圧を記憶し設定電圧を変更可能な設定電圧記憶部と、電圧検出部の出力および電流検出部の出力より電力系統の電圧予測値を演算する検出電圧予測部と、この検出電圧予測部の出力する電圧予測値を入力し電力系統の電圧が設定電圧になるように無効電力制御回路を制御する電圧一定制御部とを備え、電圧検出部は、電力系統に接続した1次巻線と、無効電力制御回路に接続した2次巻線と、電力系統の電圧を変圧して出力する3次巻線からなる3巻線トランスを用いたものである。
【0014】
請求項1記載の無効電力補償装置によれば、電力系統上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を使用せずに電力系統の電圧を制御することができ、低コスト化をはかりながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0015】
また、その際に問題となる電力系統の電圧を計測するための3巻線トランスの3次側出力電圧がトランスの通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を予測することができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0016】
請求項2記載の無効電力補償装置は、請求項1において、検出電圧予測部が、電圧検出部の出力により電圧実効値を演算する電圧実効値演算部と、電流検出部の出力より電流実効値を演算する電流実効値演算部と、電流検出部の出力および電圧検出部の出力の電圧電流位相差を演算する電圧電流位相差演算部の少なくとも1つ以上からなる第1の演算手段と、電圧実効値演算部の出力と電流実効値演算部の出力と電圧電流位相差演算部の出力を補正して電力系統の電圧予測値を出力する補正手段を備えたものである。
【0017】
請求項2記載の無効電力補償装置によれば、請求項1と同様な効果のほか、請求項1における検出電圧予測部の演算処理過程を第1の演算手段と補正手段に独立分離化できるため、システム構成の目標に合わせて検出電圧の補正方式を演算処理部単位で入れ替えが容易となる。例えば、検出電圧予測部をハードウェアで実現する場合に第1の演算手段と補正手段間の信号線仕様を定めて補正手段を単純に入替えるだけで、補正手段を目標の処理速度や処理精度に変更することが自由にできる。
【0018】
すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができると同時に、制御処理の高速化や高精度化への変更を低コストで実現できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0019】
請求項3記載の無効電力補償装置は、請求項2において、第1の演算手段が、電圧検出部の出力より検出電圧実効値を演算する検出電圧実効値演算部と、電流検出部の出力及び電圧検出部の出力より有効電流値を演算する有効電流演算手段と、電流検出部の出力及び電圧検出部の出力より遅れ無効電流であるか進み無効電流であるかを考慮した無効電流値を演算する無効電流演算手段を備えたものである。
【0020】
請求項3記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、請求項1に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。またその際に通過電流中の有効電流成分も考慮した高精度な補正演算をすることができる。また、無効電力補償装置以外の発電装置など電力供給装置にも一般的に適用することができる。
【0021】
請求項4記載の無効電力補償装置は、請求項2において、第1の演算手段が、電圧検出部の出力を入力し検出電圧実効値を出力する検出電圧実効値演算部と、電流検出部の出力を入力し検出電流実効値を出力する検出電流実効値演算手段と、電流検出部の出力及び電圧検出部の出力を入力し無効電力発生回路が発生している無効電流が進みまたは遅れのどちらであるかという進み遅れ判定結果を出力する電流位相判定手段を備えたものである。
【0022】
請求項4記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、通常の無効電力補償装置のように3巻線トランスの通過電流中の有効電流成分が少ない場合、演算処理を飛躍的に軽減しながら、請求項 1に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0023】
請求項5記載の無効電力補償装置は、請求項2において、第1の演算手段が、電圧検出部の出力を入力し検出電圧実効値を出力する検出電圧実効値演算部と、電流検出部の出力を入力し検出電流実効値を出力する検出電流実効値演算手段と、電流検出部の出力及び電圧検出部の出力を入力し、その電圧電流位相差を出力する電圧電流位相差演算手段を備えたものである。
【0024】
請求項5記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、第1の演算手段において、有効電流及び無効電流を演算せずに請求項 1に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。また、特定の条件下、例えば3巻線トランスを通過する電流の力率がほぼ一定である場合や、電流中の有効電流成分が少ない場合において第1の演算手段での演算負担を大幅に軽減することができる。
【0025】
請求項6記載の無効電力補償装置は、請求項2において、第1の演算手段が、電圧検出部の出力を入力し検出電圧実効値を出力する検出電圧実効値演算部と、電流検出部の出力を入力し検出電流実効値を出力する検出電流実効値演算手段と、電流検出部の出力及び電圧検出部の出力を入力し、その無効電力値に遅れ無効電力であるか進み無効電力であるの情報を符号として加えた符号付無効電力値を出力する符号付無効電力演算手段と、3巻線トランスを通過する有効電流値を記憶する有効電流記憶部と、検出電流実効値、符号付無効電力値、及び有効電流値を入力し無効電流値に遅れ無効電流であるか進み無効電流であるかの情報を符号として加えた符号付無効電流値を出力する符号付無効電流演算部を備えたものである。
【0026】
請求項6記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、請求項3における有効電流及び無効電流を演算する一般的な演算手段に比べて特定の条件下例えば3巻線トランスを通過する有効電流がほぼ一定である場合や、特に電流中の有効電流成分が少ない場合において、検出電圧補正部での演算負担を大幅に軽減することができる。また、無効電力計測装置などの一般的な機器類を処理過程に利用することができる。
【0027】
請求項7記載の無効電力補償装置は、請求項2において、補正手段が、3巻線トランスの通過電流により発生する3巻線トランスの3次側検出電圧の変化値をモデル化した際に電力系統の予測電圧演算式中に定数として現れる定数パラメータを設定保持する第1の電圧補正データ記憶部と、第1の演算手段より出力される変数値の組合せ及び定数パラメータを入力し、予測電圧演算式にあてはめることで電力系統の電圧予測値を出力する第1の電圧補正手段を備えたものである。
【0028】
請求項7記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、3巻線トランスの通過電流により発生する3巻線トランスの3次側検出電圧の変化値をモデル化した際の電力系統の予測電圧演算式と3巻線トランスのインピーダンス設計値から電力系統の直接的な電圧予測が可能となる。また、特定の条件下での予測電圧演算式の近似式を作成し適用することで目的とする精度に合わせた電圧予測を理論的に無駄無く高速に演算可能である。また、3巻トランスを他の特性を持つものに変更した場合にも、インピーダンス設計値を設定し直すだけで対処可能となる。
【0029】
請求項8記載の無効電力補償装置は、請求項2において、補正手段が、第1の演算手段より出力される変数値の組合せを変数とした3巻線トランス3次側の出力電圧変化値を出力電圧変化値テーブルとして保持する第2の電圧補正データ記憶部と、第1の演算手段より出力される変数値の組合せ及び出力電圧変化値テーブルを入力し3巻線トランスの通過電流により発生する3巻線トランス3次側の出力電圧変化分を補正し電力系統の電圧予測値を出力する第4の電圧補正手段を備えたものである。
【0030】
請求項8記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、第1の演算手段より出力される3巻線トランスを通過する電圧電流情報である変数値の組合せ値を変数とする3巻線トランス3次側の出力電圧変化値テーブルを保持するだけで、3巻線トランスの通過電流が大きくなった場合など、トランスのインピーダンス降下に線形性が失われてそのインピーダンス降下を簡単な数式では表現できない場合、高速かつ容易に、請求項1に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。また、実測値をテーブルとして保持した場合には上記に加えて3巻線トランスの設計値からのずれを容易に吸収できる。
【0031】
請求項9記載の無効電力補償装置は、請求項2において、補正手段が、第1の演算手段より出力される変数値の組合せに対する3巻線トランスの3次側出力電圧及び電力系統の電圧を実測して決定した、第1の演算手段より出力される1組の変数値から電力系統の予測電圧を算出する多項式関数の係数群を保持する第3の電圧補正データ記憶部と、第1の演算手段より出力される変数値の組合せ及び多項式関数の係数群とを入力し多項式関数にあてはめることで電力系統の電圧予測値を出力する第5の電圧補正手段を備えたものである。
【0032】
請求項9記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、3巻線トランスの通過電流が存在する時の3巻線トランスの3次側出力電圧から電力系統の電圧を予測する予測電圧演算式が理論的に導き出せない場合や、理論モデルより導き出された予測電圧演算式が実際と合わない場合や、実機の設計値からのずれが発生している場合などに、必要な精度に合わせて電力系統の電圧予測が可能となり、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。また、テーブル方式などで必要な補間処理を行わなくても連続的に電力系統の電圧予測が可能となる。
【0033】
請求項10記載の無効電力補償装置は、無効電力発生量を制御できる無効電力制御回路と、1次巻線を電力系統に接続し、2次巻線を無効電力制御回路に接続し、3次巻線で電力系統の電圧を変圧出力する3巻線トランスと、この3巻線トランスの1次側または2次側に設置された変流器と、3巻線トランスのインピーダンス特性を模擬する等価抵抗及び等価リアクタンスで構成され変流器の出力を入力することで回路両端間にインピーダンス降下電圧を発生するインピーダンス降下検出回路と、インピーダンス降下電圧を入力し3巻線トランスのインピーダンス降下電圧を出力する検出部と、3巻線トランスの3次側出力電圧とインピーダンス降下電圧とを入力してベクトル合成電圧を出力する電圧加算部と、ベクトル合成電圧を入力する電圧検出部と、電圧検出部の出力を入力し電力系統の電圧実効値を出力する実効値演算部と、設定電圧を記憶し設定電圧を変更可能な設定電圧記憶部と、実効値演算部の出力を入力し電力系統の電圧が設定電圧になるように無効電力制御回路を制御する電圧一定制御部とを備えたものである。
【0034】
請求項10記載の無効電力補償装置によれば、電力系統上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を使用せずに電力系統の電圧を制御することができ、低コスト化をはかりながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0035】
また、その際に問題となる電力系統の電圧を計測するための3巻線トランスの3次側出力電圧がトランスの通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を予測することができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0036】
また、3巻線トランスの通過電流によるインピーダンス降下をアナログ回路的に模擬し、3巻線トランスの3次側計測電圧をベクトル的に補正している為、請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項8、請求項9で不可欠な検出電圧補正部での数値演算処理を不要としながら、3巻線トランスの通過電流中に有効電流成分及び無効電流成分が任意に含まれていても高速かつ正確に計測電圧の補正処理を行うことができる。
【0037】
さらに、本請求項の方式は、従来の制御装置にインピーダンス降下検出回路と、検出部と、電圧加算部のみを追加するだけでその他の変更無しに電圧計測用変圧器を無くすことができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
この発明の第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。図1はこの発明の第1の実施の形態を示し、これは請求項1から請求項9に対応するものである。
【0039】
図1において、1は制御装置、2は無効電力制御回路である無効電力発生回路、3は電力系統、11は電圧検出部、15は実効値演算部、12は設定電圧記憶部、13は電圧一定制御部であり、以上は従来の構成と同様なものである。また無効電力発生回路2の構成も従来例と同じであり、同じ要素に同一符号を付している。従来の構成と異なるのは、無効電力発生回路用2巻線トランス6の代わりに3巻線トランス4を使用し、従来の電圧計測用変圧器5を無くしたことである。
【0040】
すなわち、3巻線トランス4は電力系統3と無効電力発生回路2とを接続するとともに電力系統3の電圧を変圧して電圧検出部11に出力している。この実施の形態では、3巻線トランス4の1次側を電力系統に、2次側を無効電力発生回路2に、3次側を電圧検出部11にそれぞれ接続しているが、2次側と3次側は呼び方の違いにより入れ替え可能である。無効電力発生回路2は、3巻線トランス4の2次側に接続されて無効電力発生量を制御するもので、実施の形態ではコンデンサ25とリアクトル22,23と半導体スイッチ手段である位相制御スイッチ手段24とからなる。電圧検出部11は、電力系統3の電圧を検出するもので、電力系統3の電圧を変圧する3巻線トランス4の3次側出力を入力している。設定電圧記憶部12は設定電圧を記憶し設定電圧を変更可能なものである。実効値演算部15は、電圧検出部11が出力する電圧時間波形を入力し、その実効値を出力する。電圧一定制御部13は、実効値演算部15の出力を入力し電力系統3の電圧が設定電圧になるように位相制御スイッチ手段24を制御する。
【0041】
上記のように構成された第1の実施の形態では、静止形無効電力補償装置(SVC)は、3巻線トランス4の3次側に変圧出力される電力系統電圧を電圧検出部11及び実効値演算部15で実効値検出し、設定電圧記憶部12の設定電圧を基準値として電圧一定制御部13で電圧一定制御を行う。これにより、従来でも必要であった無効電力発生回路用トランスを3巻線トランス6に置き換えるだけで、従来では不可欠であった電力系統3の電圧計測用の変圧器が不要となる。すなわち、低コスト化をはかりながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
この発明の第2の実施の形態を図2、図3、図4、及び図5に基づいて説明する。図2及び図3はこの発明の第2の実施の形態を示し、これは請求項1、請求項2、請求項3、及び請求項7に対応するものである。図2において、7は制御装置、2は無効電力発生回路、3は電力系統、11は電圧検出部、12は設定電圧記憶部、13は電圧一定制御部、以上は従来の構成と同様なものである。また無効電力発生回路2の構成は従来例と同じであり、同じ要素に同一符号を付している。従来の構成と異なるのは、無効電力発生回路用の2巻線トランス6の代わりに3巻線トランス4を使用し、従来の電圧計測用変圧器5を無くしたこと、並びに変流器8と、電流検出部14と、検出電圧予測部である検出電圧補正部75とを追加したことである。また、図3において、75は検出電圧補正部、90は第1の演算手段、91は補正手段、76は電流検出部14の出力に含まれる電流実効値情報および電流検出部14と電圧検出部11の両出力から演算される電圧電流位相差情報をもとに有効電流値を演算する有効電流演算手段、77は検出電圧実効値演算部、78は第1の電圧補正データ記憶部、80は電流検出部14の出力に含まれる電流実効値情報および電流検出部14と電圧検出部11の両出力から演算される電圧電流位相差情報をもとに進みまたは遅れの符号情報を付加した無効電流値を演算する符号付無効電流演算手段、79は第1の電圧補正手段である。
【0043】
すなわち、3巻線トランス4は電力系統3と無効電力発生回路2とを接続するとともに電力系統3の電圧を変圧して電圧検出部11に出力している。この実施の形態では、3巻線トランス4の1次側を電力系統3に、2次側を無効電力発生回路2に、3次側を電圧検出部11にそれぞれ接続しているが2次側と3次側は呼び方の違いにより入れ替え可能である。無効電力発生回路2は、3巻線トランス4の2次側に接続されて無効電力発生量を制御するもので、実施の形態ではコンデンサ25とリアクトル22,23と半導体スイッチ手段である位相制御スイッチ手段24とからなる。電圧検出部11は、電力系統3の電圧を検出するもので、電力系統3の電圧を変圧する3巻線トランス4の3次側出力を入力している。電流検出部14は無効電力発生回路2の入力電流を検出するもので変流器8の出力を入力している。検出電圧補正部75は3巻線トランス4を通過する電流による3巻線トランス4の3次側出力の電圧変化を補正するもので、電流検出部14の出力及び電圧検出部11の出力を入力し、電力系統3の正確な予測電圧値を出力している。検出電圧実効値演算部77は、電圧検出部11が出力する電圧時間波形を入力し、その実効値Vを出力する。有効電流演算手段76は、電圧検出部11が出力する電圧時間波形及び電流検出部14が出力する電流時間波形を入力して両時間波形より有効電流値Ipを出力する。符号付無効電流演算手段80は、電圧検出部11が出力する電圧時間波形及び電流検出部14が出力する電流時間波形を入力して両時間波形よりその無効電流値に遅れ無効電流であるか進み無効電流であるかの情報を符号として加えた符号付無効電流値Iqを出力する。第1の電圧補正データ記憶部78は、3巻線トランス4の通過電流により発生する3巻線トランス4の3次側検出電圧の変化値をモデル化した際に電力系統3の予測電圧演算式中に定数として現れる定数パラメータを設定保持する。第1の電圧補正手段79は、第1の演算手段90より出力される変数値(Ip,Iq,V)の組合せ及び第1の電圧補正データ記憶部78に保持された定数パラメータを入力し、電力系統3の予測電圧値を出力する。設定電圧記憶部12は設定電圧を記憶し設定電圧を変更可能なものである。電圧一定制御部13は、検出電圧補正部75の出力を入力し電力系統3の電圧が設定電圧になるように位相制御スイッチ手段24を制御する。
【0044】
すなわち、無効電力発生回路2に入力される電流が3巻線トランス4に流れることにより発生する電圧検出部11での電圧計測誤差を検出電圧補正部75で補正することで、電力系統3の正確な電圧値を予測し、電力系統3を常に設定電圧記憶部12に設定された電圧に制御する。
【0045】
図4に検出電圧補正部75の処理原理を示す。図4は、3巻線トランス4の1次側に電力系統3を接続し、同様に無効電力発生回路2を2次側に、同様に電圧検出部11を3次側に接続した場合を示す。また、3巻線トランス4は理想トランス要素41及び等価インピーダンス42で表現している。等価インピーダンス42は等価抵抗R(43)と等価リアクタンスX(44)とから構成される。3巻線トランス4の1次側に電圧V(47)が加えられ、無効電力発生回路2への入力電流I(46)が発生している時、3巻線トランス4の1次側の通過電流がI(3巻線トランス4を通過する皮相電流:45)であり、理想トランス41の1次側電圧をV(49)とする。この時、1次側電圧V(49)のトランス3次側出力電圧V(48)を電圧検出部11に入力している。3巻線トランス4の3次側電流は電圧検出部11で消費されるだけなのでほぼ0であり、V=aVで表されるので(aは3巻線トランス1次側/3次側巻線比)、V(48)でV(49)を正確に測定可能である。この場合、電力系統3の電圧V(47)を3巻線トランス3次側での計測電圧Vで表現すると、予測電圧演算式すなわち電圧補正式は、▲1▼式又は▲2▼式となる。
【0046】
Figure 0003590276
φは理想トランス41の1次側電圧 49)と1次側通過電流I(45)との力率角度(符号は進み側を正とする)、IpはIの有効電流、IqはIの符号(進みを正とする)付無効電流とする。また、電力系統3の電圧が十分大きい場合は、▲3▼式のように近似できる。すなわち、3巻線トランス4の等価インピーダンス値42を定数とし、3巻線トランス4の1次側通過電流I(45)、電圧検出部11により計測した3巻線トランス4の1次側電圧V(49)及びI(45)とV(49)との位相角を変数として、電力系統3の電圧V(47)を正確に演算することができる。図5は3巻線トランス出力電圧降下の通過電流特性(出力電圧降下率(%))、すなわち3巻線トランス4の通過電流が変動した場合の3巻線トランス4の1次側電圧 (49)と電力系統3との電圧差グラフを示す(通過電流の力率はほぼ0の状態とする)。
【0047】
上記のように構成された静止形無効電力補償装置について、以下その動作を説明する。すなわち、この第2の実施の形態でも従来例と同じように設定電圧記憶部12の設定電圧を基準値として、電圧一定制御部13で電圧一定制御を常時行う。それに加えて第2の実施の形態では、無効電力発生回路用2巻線トランス6の代わりに3巻線トランス4を使用し、その3次側出力電圧を電圧検出部11にてレベル変換し、電圧時間波形を計測すると同時に電流検出部14にて変流器8により検出した3巻線トランス4の1次側通過電流を電圧変換した電流時間波形を検出する。そして、検出電圧補正部75の有効電流演算手段76で上記の電圧時間波形及び電流時間波形からその有効電流成分Ipを演算し、同様に符号付無効電流演算手段80で電圧時間波形及び電流時間波形から、無効電流成分Iqを演算すると同時にその無効電流が遅れ無効電流であるか進み無効電流であるかを判定し、進みであれば正符号の無効電流値を出力し、反対に遅れであれば負符号の無効電流値を出力する。また、検出電圧補正部75の検出電圧実効値演算部77で上記の電圧時間波形から3巻線トランス4の1次側電圧V(49)を演算する。そして、3巻線トランス4の3次側検出電圧の降下をモデル化した際に電圧補正式(▲1▼式、▲2▼式、▲3▼式など)中に定数として現れる定数パラメータ(図4の例では3巻線トランス4の等価インピーダンスの抵抗成分R及びリアクタンス成分X)を第1の電圧補正データ記憶部78に予め設定保持しておき、第1の電圧補正手段79において、上記の定数パラメータと、電圧補正式(▲1▼式、▲2▼式、▲3▼式など)に含まれる変数(図3の例では有効電流成分Ip、無効電流成分Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧V)からモデルの電圧補正式(図3の例では▲2▼式)に基づいて電力系統3の電圧V(47)を演算するという特徴がある。
【0048】
これにより、電力系統3の電圧を計測するための3巻線トランス4の3次側出力電圧がトランス4の通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統3上の電圧を予測することができる。
【0049】
またその際に、請求項3のように有効電流値を検出することにより、通過電流中の有効電流成分も考慮した高精度な補正演算をすることができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統3を目標の設定電圧で正確に制御することができる。また、無効電力補償装置以外の発電装置などの電力供給装置にも一般的に適用することができる。
【0050】
また、請求項7のように、3巻線トランス4の3次側検出電圧の変化値をモデル化し電力系統電圧の予測演算式中に現れる定数をパラメータ保持する方式にすることで、3次側電圧変動値を実測せずとも、3巻線トランス4のインピーダンス設計値のみから電力系統3の直接的な電圧予測が可能となる。また、3巻トランス4を他の特性を持つものに変更した場合にも、インピーダンス設計値を設定し直すだけで対処可能となる。また電力系統3の電圧が通常の配電系統の定格電圧(6600V程度)以上の場合では電力系統3の電圧VT (47)を演算する際に丸3式の1次近似式を用いることができるように、特定の条件下での予測電圧演算式の近似式を作成し適用することで:目的とする精度に合わせた電圧予測を理論的に無駄無く高速に演算可能である。すなわち、演算処理の負担を大幅に軽減することができる。
【0051】
また、請求項2のように、検出電圧補正部75を第1の演算手段90と補正手段91に演算処理過程を独立分離するため、システム構成の目標に合わせて検出電圧の補正方式(請求項7、請求項8、請求項9など)を演算処理部単位で入れ替えが容易となる。例えば、検出電圧補正部75をハードウェアで実現する場合に第1の演算手段90と補正手段91間の信号線仕様を定めて補正手段91を単純に入替えるだけで、補正手段91を目標の処理速度や処理精度に変更することが自由にできる。すなわち、制御処理の高速化や高精度化への変更を低コストで実現できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0052】
また、通常の無効電力補償装置のように3巻線トランス4の通過電流に有効電流成分が極端に少ない場合や、無効電力補償装置以外の電力供給装置で有効電力または無効電力の何れかが一定の場合などは図5の3巻線トランス出力電圧降下の通過電流特性は単純な線形関数のグラフになる。すなわち、3巻線トランス出力電圧を2点以上実測することにより、容易に電圧補正用定数パラメータを決定できると共に、3巻線トランス4の設計値を用いる場合よりも、製造誤差を含まないより正確な電力系統3の電圧予測も可能となる。
【0053】
以上のように、第2の実施の形態によれば、電力系統3上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を使用せずに電力系統の電圧を制御することができ、低コスト化をはかりながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することができる。また、その際に問題となる電力系統の電圧を計測するための3巻線トランス4の3次側出力電圧がトランス4の通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を予測することができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統3を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0054】
(第3の実施の形態)
この発明の第3の実施の形態を図2及び図6に基づいて説明する。図6はこの発明の第3の実施の形態を示し、これは請求項4に対応するものである。
【0055】
図2及び図6において、各構成は検出電圧補正部75の一部を除いて第2の実施の形態と同じであり、検出電圧補正部75での有効電流演算手段76、符号付無効電流演算手段80、及び、第1の電圧補正手段79の機能を検出電流実効値演算手段61、電流位相判定手段62、及び第2の電圧補正手段791で実現していることを特徴としている。
【0056】
この第3の実施の形態における検出電圧補正部75は通常の無効電力補償装置のように3巻線トランス4を通過する電流の有効電流成分が少ない場合、3巻線トランス4の3次側出力の電圧変化を効率的に補正するもので、検出電流実効値演算手段61は電流検出部14の出力する電流時間波形を入力し検出電流の実効値Iを出力する。電流位相判定手段62は電流検出部14の出力する電流時間波形と電圧検出部11の出力する電圧時間波形を入力して電流時間波形が電圧時間波形に対して進みまたは遅れのどちらであるかという進み遅れ判定結果を出力する。検出電圧実効値演算部77は電圧検出部が出力した電圧時間波形の実効値を出力する。第1の電圧補正データ記憶部78は3巻線トランス4のインピーダンス特性パラメータを設定保持する。第2の電圧補正手段791は第1の演算手段90から出力される検出電圧実効値、検出電流実効値、進み遅れ判定結果及び3巻線トランス4のインピーダンス特性パラメータを入力し、通過電流により発生する3巻線トランス3次側の出力電圧変化分を補正する。
【0057】
第3の実施の形態によれば、通常の無効電力補償装置、すなわち3巻線トランス4を通過する電流の有効電流成分が少ない場合において、第2の電圧補正手段79に入力する変数、すなわち検出電流実効値、検出電圧実効値及び進み遅れ判定結果)を以下のように演算する。
【0058】
まず、検出電流実効値演算手段61では、入力した電流時間波形から電圧時間波形との位相は考慮せずに独立に検出電流実効値を算出する。同様に検出電圧実効値演算部77では、入力した電圧時間波形から電流時間波形との位相は考慮せずに独立に検出電圧実効値を算出する。また、電流位相判定手段では、電流時間波形が電圧時間波形に対して進みまたは遅れのどちらであるかという進み遅れ判定結果を演算する。その際、検出電圧時間波形及び検出電流時間波形の特定のタイミング、例えば電圧時間波形の位相角度0の時での電流時間波形値の正負判定を行い、判定が正の場合には進み無効電流とみなし、逆に負の場合には遅れ無効電流とみなす。次に、第2の電圧補正手段791では、検出電流実効値、検出電圧実効値、進み遅れ判定結果及び3巻線トランス4のインピーダンス特性パラメータ値を▲1▼式または▲2▼式または▲3▼式の何れかの補正式に代入して電力系統の予測電圧を求める。但し、▲1▼の補正式を用いる場合にはcosφの項は0となるため省略し、進み遅れ判定結果が進みの場合は力率角φがπ/2よりsinφ=1とし、進み遅れ判定結果が遅れの場合は力率角φが−π/2よりsinφ=−1とした補正式を使用する。同様に▲2▼式または▲3▼式の補正式を用いる場合にはIpの項は0となるため省略し、進み遅れ判定結果が進みの場合は符号付無効電流Iq=Iとし、進み遅れ判定結果が遅れの場合は符号付無効電流Iq=−Iとした補正式を使用する。
【0059】
以上のことから、電流実効値、電圧実効値、電流位相差判定及び電圧補正という検出電圧補正部75すべての演算処理を飛躍的に軽減しながら電力系統の正確な電圧を予測することができる。更に、検出する電流時間波形や電圧時間波形に歪みが少ない場合、もしくは検出部で歪みをカットした場合では検出電流実効値や検出電圧実効値を演算する際、各時間波形のピーク値から実効値を求めればさらにトータル演算負担が軽減される。
【0060】
以上のように、第3の実施の形態によれば、通常の無効電力補償装置、すなわち3巻線トランス4を通過する電流の有効電流成分が少ない場合において、電力系統上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を使用せずに電力系統の電圧を制御することができ、低コスト化をはかりながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することができる。また、その際に問題となる電力系統の電圧を計測するための3巻線トランス4の3次側出力電圧がトランスの通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を演算処理を飛躍的に軽減しながら予測することができる。
【0061】
(第4の実施の形態)
この発明の第4の実施の形態を図2及び図7に基づいて説明する。図7はこの発明の第4の実施の形態を示し、これは請求項5に対応するものである。
【0062】
図7において、各構成は検出電圧補正部75の一部を除いて第2の実施の形態と同じであり、検出電圧補正部75を構成する第1の演算手段90の有効電流演算手段76及び符号付無効電流演算手段80を、検出電流実効値演算手段61及び電圧電流位相差演算手段63で実現し、また、補正手段91における第1の電圧補正手段79を第3の電圧補正手段792で実現していることを特徴としている。
【0063】
この第4の実施の形態における検出電圧補正部75は第2の実施の形態と同様に3巻線トランス4を通過する電流による3巻線トランス4の3次側出力の電圧変化を補正するもので、検出電流実効値演算手段61は電流検出部14の出力する電流時間波形を入力し検出電流の実効値Iを出力する。電圧電流位相差演算手段63は電流検出部14の出力する電流時間波形と電圧検出部11の出力する電圧時間波形を入力して電流時間波形の電圧時間波形に対する位相差φを出力する。第3の電圧補正手段792は第1の演算手段90から出力される検出電流の実効値I、位相差φ、電圧実効値 及び第1の電圧補正データ記憶部78に保持された定数パラメータを入力し、▲1▼式、▲2▼式、または▲3▼式により演算して、電力系統3の電圧予測値を出力する。
【0064】
第4の実施の形態によれば、第2の実施の形態の第1の演算手段90のように検出電圧及び検出電流よりその有効電流及び無効電流を演算すること無く電圧補正をすることができる。また、(a)特定の条件下、例えば3巻線トランス4を通過する電流の力率がほぼ一定である場合において、検出電圧と検出電流の位相差φは固定となり、演算処理負担を軽減できる。特に電流歪みが少ない場合では検出電流の時間波形のピーク値から実効値を求めればさらにトータル演算負担が削減できる。また、(b)特定の条件下、例えば3巻線トランス4を通過する電流中の有効電流成分が無視できる場合(多くの無効電力補償装置)において、検出電圧時間波形及び検出電流時間波形の特定のタイミングでの波形値の簡単な比較処理で電圧及び電流の位相差φがπ/2、または−π/2のどちらであるかを判定するだけで良い。このため、第1の演算手段90における演算負担が飛躍的に軽減できる。
【0065】
すなわち、請求項1のような有効電流及び無効電流を演算すること無く電圧補正することができるとともに、特定の条件下(3巻線トランスを通過する電流の力率がほぼ一定である場合や、電流中の有効電流成分が少ない場合)において、第1の演算手段90での演算負担を飛躍的に軽減することができる。
【0066】
(第5の実施の形態)
この発明の第5の実施の形態を図2及び図8に基づいて説明する。図8はこの発明の第5の実施の形態を示し、これは請求項6に対応するものである。
【0067】
図8において、各構成は検出電圧補正部75の一部を除いて第2の実施の形態と同じであり、検出電圧補正部75を構成する第1の演算手段90の有効電流演算手段76及び符号付無効電流演算手段80を、検出電流実効値演算手段61、符号付無効電力演算手段81、有効電流記憶部83及び符号付無効電流演算部82で実現していることを特徴としている。
【0068】
この第5の実施の形態における検出電圧補正部75は第2の実施の形態と同様に3巻線トランス4を通過する電流による3巻線トランス4の3次側出力の電圧変化を補正するもので、検出電流実効値演算手段61は電流検出部14の出力する電流時間波形を入力し検出電流の実効値Iを出力する。符号付無効電力演算手段81は、電圧検出部11が出力する電圧時間波形及び電流検出部14が出力する電流時間波形を入力して両時間波形よりその無効電流値に遅れ無効電流であるか進み無効電流であるかの情報を符号として加えた符号付無効電力値Qを出力する。有効電流記憶部83は3巻線トランス4の通過電流の有効電流Ipを設定保持して出力する。符号付無効電流演算部82は、入力した検出電流の実効値I、符号付無効電力Q、有効電流Ipを入力して検出電流の無効電流Iqを出力する。検出電圧実効値演算部77は電圧検出部11が出力した電圧時間波形の実効値 を出力する。第1の電圧補正手段79は、有効電流Ip、符号付無効電流Iq、検出電圧の実効値 及び第1の電圧補正データ記憶部78に保持された定数パラメータを入力して電力系統3の正確な予測電圧を出力する。
【0069】
この第5の実施の形態では第2の実施の形態において、3巻線トランス4の通過電流の有効電流Ipがほぼ一定の場合に適用され、符号付無効電流演算部82において符号付無効電流Iqの絶対値は入力する検出電流の実効値IとIpから簡単に求まる。
【0070】
Figure 0003590276
Iqの符号は入力する符号付無効電力Qと同じにする。
【0071】
以上のように、第5の実施の形態によれば、(a)特定の条件下、例えば3巻線トランス4を通過する電流の有効電流成分がほぼ一定である場合において、無効電流Iqを演算する場合、電流検出部11から出力される電流時間波形から電圧との位相を考慮せずに独立に電流実効値Iを算出し、▲4▼式により無効電流Iqを演算できるので演算処理負担を軽減できる。特に電流歪みが少ない場合では検出電流の時間波形のピーク値から実効値を求めればさらにトータル演算負担が削減できる。また、(b)特定の条件下、例えば3巻線トランス4を通過する電流中の有効電流成分がほぼ0の場合(多くの無効電力補償装置)においては、(a)で演算のIとQの符号判定とよりIqを簡単に求めることができる。
【0072】
すなわち、第5の実施の形態によれば、第2の実施の形態における有効電流演算手段76や符号付無効電流演算手段80による演算に比べて特定の条件下(3巻線トランスを通過する有効電流がほぼ一定ある場合や、特に電流中の有効電流成分がほぼ0の場合)において有効電流値及び無効電流値の演算負担を飛躍的に軽減することができる。また、無効電力計測装置などの一般的な機器類を符号付無効電力演算部81の処理過程に活用することができ、無効電力補償装置開発の省力化が可能である。
【0073】
(第6の実施の形態)
この発明の第6の実施の形態を図9及び図2に基づいて説明する。図9はこの発明の第4の実施の形態を示し、これは請求項8に対応するものである。図9において、各構成は検出電圧補正部75の補正手段91を除いて第2の実施の形態と同じであり、補正手段91での第1の電圧補正データ記憶部78及び第1の電圧補正手段79を、第2の電圧補正データ記憶部781及び第4の電圧補正手段793で実現していることを特徴としている。
【0074】
この実施の形態では第2の実施の形態と同様に、第1の演算手段90は検出電流時間波形と検出電圧時間波形を入力して有効電流成分Ip、符号付無効電流Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧Vを出力する。第2の電圧補正データ記憶部781は、第1の演算手段90から出力されるパラメータを変数とする3巻線トランス4の3次側検出電圧の電圧降下量ΔVの特性テーブルを予め設定保持しておく。第4の電圧補正手段793は、第1の演算手段90から出力されるパラメータ(有効電流成分Ip、符号付無効電流Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧 )及び3次側検出電圧の電圧降下量ΔVの特性テーブルを入力して3巻線トランス4の電圧降下量ΔVを離散的なテーブル値より補完演算して決定する。そして、3巻線トランス4の1次側電圧Vに上記のΔVを加えることにより電力系統3の電圧V(47)を決定する。
【0075】
すなわち、この発明の第4の実施の形態によれば、図5に示すグラフデータのような3巻線トランス4を通過する有効電流値及び符号付無効電流値に対応する3巻線トランス3次側の出力電圧変化値テーブルを保持するだけで3巻線トランス4の通過電流が大きくなった場合などトランスのインピーダンス降下量に線形性が失われて3巻線トランス4の通過電流の簡単な数式では表現できない場合、高速かつ容易に、請求項1に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0076】
なお、実測値をテーブルとして保持した場合には上記に加えて3巻線トランス4の設計値からのずれを容易に吸収できる。また、請求項7に記載のモデルから決定される電力系統の予測電圧演算式からテーブルを作成することもできる。
【0077】
(第7の実施の形態)
この発明の第7の実施の形態を図10及び図2に基づいて説明する。図10はこの発明の第7の実施の形態を示し、これは請求項9に対応するものである。
【0078】
図10において、各構成は検出電圧補正部75の補正手段91を除いて第2の実施の形態と同じであり、補正手段91での第1の電圧補正データ記憶部78及び第1の電圧補正手段79を、第3の電圧補正データ記憶部782及び第5の電圧補正手段794で実現していることを特徴としている。
【0079】
この実施の形態では第2の実施の形態と同様に、第1の演算手段90は検出電流時間波形と検出電圧時間波形を入力して有効電流成分Ip、符号付無効電流Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧Vを出力する。第3の電圧補正データ記憶部782は、第1の演算手段90より出力される複数のパラメータ値から電力系統の電圧を予測補正する多項式関数の係数を設定保持する。第5の電圧補正手段794は、第1の演算手段90から出力されるパラメータ値(有効電流成分Ip、符号付無効電流Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧V)及び多項式関数の係数を入力して電力系統電圧を算出する多項式に入力パラメータ値を代入して電力系統3の電圧V(47)を決定する。
【0080】
この実施の形態では、第1の演算手段90から出力されるパラメータ値(この例では有効電流成分Ip、符号付無効電流Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧Vを選択しているが、最低限、3巻線トランス通過電流の皮相電流値及びその電流の電圧との位相関係を含む情報であれば良い)を変化させた時の3巻線トランス4の1次側電圧Vと実際の電力系統3の電圧を同時に計測し、選定した入力パラメータから電力系統3の電圧が必要な精度で求まるように適切な次数で多項式近似式を想定し、最小二乗法などによりその係数を決定後、第3の電圧補正データ記憶部782に設定保持する。一例として、設計値通りのインピーダンスを持つ3巻線トランス4の場合、入力パラメータを有効電流成分Ip、符号付無効電流Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧Vとして選定し一次近似式を想定すると、▲3▼式と等価な補正式として多項式係数が決定される。そして、第5の電圧補正手段794では、入力した有効電流成分Ip、符号付無効電流Iq及び3巻線トランス4の1次側電圧Vのパラメータ値を、電力系統電圧を算出する多項式関数に代入して電力系統3の電圧V(47)を決定する。
【0081】
例えば、多項式関数をf(V,Ip,Iq)と置いた場合、
Figure 0003590276
において、上記の一次近似式例の場合、二次以上の係数を0と置き、その他の係数はつぎの通り計算され、a=0、a11=1、a12=R、a13=−X
であるから、V=V+R・Ip−X・Iq
となる。
【0082】
すなわち、この発明の第7の実施の形態によれば、3巻トランス4の3次側出力電圧から電力系統3の電圧を補正する補正式が理論的に導き出せない場合や、電圧補正モデルより導き出された補正式が実際と異なる場合や、実機の設計値からのずれが発生している場合などに、必要な電圧補正精度に合わせて電力系統の電圧予測が可能となる。また、テーブル方式などで必要な補間処理を行わなくても連続的に電力系統の電圧予測が可能となる。
【0083】
(第8の実施の形態)
この発明の第8の実施の形態を図11及び図4に基づいて説明する。図11はこの発明の第8の実施の形態を示し、これは請求項10に対応するものである。
【0084】
図11において、2は無効電力発生回路、3は電力系統、11は電圧検出部、15は実効値演算部、12は設定電圧記憶部、13は電圧一定制御部、以上は従来の構成と同様なものである。また無効電力発生回路2の構成は従来例と同じであり、同じ要素に同一符号を付している。従来の構成と異なるのは、無効電力発生回路用2巻線トランス6の代わりに3巻線トランス4を使用し、従来の電圧計測用変圧器5を無くしたこと及び、変流器8と、インピーダンス降下検出回路94と、検出部97と、電圧加算部98とを追加したことである。
【0085】
すなわち、3巻線トランス4は電力系統3と無効電力発生回路2とを接続するとともに電力系統の電圧を変圧して電圧加算部98に出力している。この実施の形態では、3巻線トランス4の1次側を電力系統に、2次側を無効電力発生回路に、3次側を電圧検出部にそれぞれ接続しているが2次側と3次側は呼び方の違いにより入れ替え可能である。無効電力発生回路2は、3巻線トランス4の2次側に接続されて無効電力発生量を制御するもので、実施の形態ではコンデンサ25とリアクトル22,23と半導体スイッチ手段である位相制御スイッチ手段24とからなる。インピーダンス降下検出回路94は無効電力発生回路2の入力電流が3巻線トランス4を通過する時に発生するインピーダンス降下を模擬出力するもので変流器8の出力を入力しており、検出部97ではそのインピーダンス降下量を検出し出力する。電圧加算部98は電力系統3の電圧を検出するもので、電力系統3の電圧を変圧する3巻線トランス4の3次側出力と検出部97から出力されるインピーダンス降下量を入力してそれらをベクトル加算し、電力系統3の正確な予測電圧を電圧検出部11に出力している。電圧検出部11は、電力系統3の電圧を検出するもので、電力系統3の電圧を変圧する3巻線トランス4の3次側出力を入力している。設定電圧記憶部12は設定電圧を記憶し設定電圧を変更可能なものである。実効値演算部15は、電圧検出部が出力する電圧時間波形を入力し、その実効値を出力する。電圧一定制御部13は、実効値演算部15の出力を入力し電力系統3の電圧が設定電圧になるように位相制御スイッチ手段24を制御する。
【0086】
すなわち、無効電力発生回路2に入力される電流が3巻線トランス4に流れることにより発生する3巻線トランス4のインピーダンス降下分をインピーダンス降下検出回路94及び検出部97で模擬的に検出し、3巻線トランス4の3次側電圧にベクトル加算補正することで電力系統3の正確な電圧を予測し、電力系統3を常に設定電圧記憶部12に設定された電圧に制御する。
【0087】
上記のように構成された静止形無効電力補償装置について、以下その動作を説明する。すなわち、この第8の実施の形態でも従来例と同じように設定電圧記憶部12の設定電圧を基準値として電圧一定制御部13で電圧一定制御を常時行う。それに加えて第8の実施の形態では、無効電力発生回路用2巻線トランス6の代わりに3巻線トランス4を使用し、その3次側出力電圧を電圧加算部98に出力する。また、第2の実施の形態で説明の3巻線トランス4の等価抵抗R43と等価リアクタンスX44とから構成される等価インピーダンス42と、3巻線トランス4の1次側の通過電流I(45)により発生するインピーダンス降下を、3巻線トランス4の1次側通過電流を変流器8により変流出力して、インピーダンス降下回路94に流すことで模擬する。そして、インピーダンス降下回路94の両端間に発生するインピーダンス降下分(ベクトル量)を検出部97により検出する。この際、インピーダンス降下回路94の両端間に発生するインピーダンス降下分が3巻線トランス4の3次側電圧レベルで模擬出力できるように、変流器8の変流比及びインピーダンス降下回路94の等価抵抗95の値と等価リアクタンス96の値を設定しておく。電圧加算部98で3巻線トランス4の3次側出力電圧と3巻線トランス4によるインピーダンス降下電圧とをベクトル加算したものを電力系統3の電圧として電圧検出部11に出力し、電圧検出部11は入力した電圧を検出して電圧時間波形を実効値演算部15に出力する。実効値演算部15は入力した電圧時間波形より電力系統3の電圧実効値V(47)を演算出力する。
【0088】
これにより、電力系統の電圧を計測するための3巻線トランス4の3次側出力電圧がトランスの通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を予測することができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0089】
以上のことより、電力系統上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を使用せずに電力系統の電圧を制御することができる。また、その際に問題となる電力系統の電圧を計測するための3巻線トランス4の3次側出力電圧がトランスの通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を予測することができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0090】
また、3巻線トランス4の通過電流によるインピーダンス降下をアナログ回路的に模擬し、3巻線トランス4の3次側計測電圧をベクトル的に補正している為、請求項1、請求項3、請求項8、請求項5、請求項6で不可欠な電圧補正のための演算処理を不要としながら、3巻線トランス4の通過電流中に有効電流成分及び無効電流成分が任意に含まれていても高速かつ正確に計測電圧の補正処理を行うことができる。
【0091】
また、本請求項(第8の実施の形態)の方式は、従来の制御装置にインピーダンス降下検出回路94と、検出部97と、電圧加算部98のみを追加するだけでその他の変更無しに電圧計測用変圧器を無くすことができる。
【0092】
なお、本実施の形態ではインピーダンス降下をアナログ回路的に模擬しているが、変流器8からの出力を電流検出回路を通してマイクロコンピュータなどに取り込み、あらかじめ設定した等価抵抗値及び等価リアクタンス値からソフトウェア的にインピーダンス降下量を演算することで電力系統3の電圧を予測することも可能である。
【0093】
なお、本発明の各実施の形態では無効電力発生回路2をTCR方式の回路例で説明して来たが、他の回路構成においても本発明は適用可能である。例えば、22、23のリアクトルとトランス間にさらにリアクトルを追加した回路や、コンデンサやリアクトルを入り切りすることによる無効電力発生回路や、さらに、インバータ制御の無効電力発生回路等である。また、発電機や負荷等の系統連系点の電圧計測にも活用できる。
【0094】
【発明の効果】
【0095】
請求項1記載の無効電力補償装置によれば、電力系統上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を使用せずに電力系統の電圧を制御することができ、低コスト化をはかりながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0096】
また、その際に問題となる電力系統の電圧を計測するための3巻線トランスの3次側出力電圧がトランスの通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を予測することができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0097】
請求項2記載の無効電力補償装置によれば、請求項1と同様な効果のほか、請求項1における検出電圧予測部の演算処理過程を第1の演算手段と補正手段に独立分離化できるため、システム構成の目標に合わせて検出電圧の補正方式を演算処理部単位で入れ替えが容易となる。例えば、検出電圧予測部をハードウェアで実現する場合に第1の演算手段と補正手段間の信号線仕様を定めて補正手段を単純に入替えるだけで、補正手段を目標の処理速度や処理精度に変更することが自由にできる。
【0098】
すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができると同時に、制御処理の高速化や高精度化への変更を低コストで実現できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0099】
請求項3記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、請求項2に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。またその際に通過電流中の有効電流成分も考慮した高精度な補正演算をすることができる。また、無効電力補償装置以外の発電装置など電力供給装置にも一般的に適用することができる。
【0100】
請求項4記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、通常の無効電力補償装置のように3巻線トランスの通過電流中の有効電流成分が少ない場合、演算処理を飛躍的に軽減しながら、請求項2に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0101】
請求項5記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、第1の演算手段において、有効電流及び無効電流を演算せずに請求項2に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。また、特定の条件下、例えば3巻線トランスを通過する電流の力率がほぼ一定である場合や、電流中の有効電流成分が少ない場合において第1の演算手段での演算負担を大幅に軽減することができる。
【0102】
請求項6記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、請求項3における有効電流及び無効電流を演算する一般的な演算手段に比べて特定の条件下例えば3巻線トランスを通過する有効電流がほぼ一定である場合や、特に電流中の有効電流成分が少ない場合において、検出電圧補正部での演算負担を大幅に軽減することができる。また、無効電力計測装置などの一般的な機器類を処理過程に利用することができる。
【0103】
請求項7記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、3巻線トランスの通過電流により発生する3巻線トランスの3次側検出電圧の変化値をモデル化した際の電力系統の予測電圧演算式と3巻線トランスのインピーダンス設計値から電力系統の直接的な電圧予測が可能となる。また、特定の条件下での予測電圧演算式の近似式を作成し適用することで目的とする精度に合わせた電圧予測を理論的に無駄無く高速に演算可能である。また、3巻トランスを他の特性を持つものに変更した場合にも、インピーダンス設計値を設定し直すだけで対処可能となる。
【0104】
請求項8記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、第1の演算手段より出力される3巻線トランスを通過する電圧電流情報である変数値の組合せ値を変数とする3巻線トランス3次側の出力電圧変化値テーブルを保持するだけで、3巻線トランスの通過電流が大きくなった場合など、トランスのインピーダンス降下に線形性が失われてそのインピーダンス降下を簡単な数式では表現できない場合、高速かつ容易に、請求項1に記載の3巻線トランス3次側出力電圧のトランスの通過電流に依存した電圧変動分を補正することができ、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。また、実測値をテーブルとして保持した場合には上記に加えて3巻線トランスの設計値からのずれを容易に吸収できる。
【0105】
請求項9記載の無効電力補償装置によれば、請求項2と同様な効果のほか、3巻線トランスの通過電流が存在する時の3巻線トランスの3次側出力電圧から電力系統の電圧を予測する予測電圧演算式が理論的に導き出せない場合や、理論モデルより導き出された予測電圧演算式が実際と合わない場合や、実機の設計値からのずれが発生している場合などに、必要な精度に合わせて電力系統の電圧予測が可能となり、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。また、テーブル方式などで必要な補間処理を行わなくても連続的に電力系統の電圧予測が可能となる。
【0106】
請求項10記載の無効電力補償装置によれば、電力系統上の設置点電圧を計測する電圧計測用変圧器を使用せずに電力系統の電圧を制御することができ、低コスト化をはかりながら設置時の高電圧配線という危険な作業工数を低減できる無効電力補償装置を提供することができる。
【0107】
また、その際に問題となる電力系統の電圧を計測するための3巻線トランスの3次側出力電圧がトランスの通過電流に依存して変動する場合にもその電圧変動分を補正することで正確な電力系統上の電圧を予測することができる。すなわち、無効電力補償装置の無効電力出力量に関係なく常に電力系統を目標の設定電圧で正確に制御することができる。
【0108】
また、3巻線トランスの通過電流によるインピーダンス降下をアナログ回路的に模擬し、3巻線トランスの3次側計測電圧をベクトル的に補正している為、請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項8、請求項9で不可欠な検出電圧補正部での数値演算処理を不要としながら、3巻線トランスの通過電流中に有効電流成分及び無効電流成分が任意に含まれていても高速かつ正確に計測電圧の補正処理を行うことができる。
【0109】
さらに、本請求項の方式は、従来の制御装置にインピーダンス降下検出回路と、検出部と、電圧加算部のみを追加するだけでその他の変更無しに電圧計測用変圧器を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態の無効電力補償装置の構成図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態の無効電力補償装置の構成図である。
【図3】その検出電圧補正部の構成図である。
【図4】その3巻線トランスの通過電流により発生する3次側検出電圧の変化値をモデル化した説明図である。
【図5】3巻線トランス出力電圧降下の通過電流特性、すなわち3巻線トランスの通過電流により発生する3次側検出電圧の出力電圧降下率(%)のグラフ例である。
【図6】この発明の第3の実施の形態の無効電力補償装置の検出電圧補正部の構成図である。
【図7】この発明の第4の実施の形態の無効電力補償装置の検出電圧補正部の構成図である。
【図8】この発明の第5の実施の形態の無効電力補償装置の検出電圧補正部の構成図である。
【図9】この発明の第6の実施の形態の無効電力補償装置の検出電圧補正部の構成図である。
【図10】この発明の第7の実施の形態の無効電力補償装置の検出電圧補正部の構成図である。
【図11】この発明の第8の実施の形態の無効電力補償装置の構成図である。
【図12】従来の無効電力補償装置の構成図である。
【符号の説明】
1 制御装置
2 無効電力発生回路
3 電力系統
4 3巻線トランス
7 制御装置
8 変流器
11 電圧検出部
12 設定電圧記憶部
13 電圧一定制御部
14 電流検出部
15 実効値演算部
22 第1のリアクトル
23 第2のリアクトル
24 位相制御スイッチ
25 コンデンサ
75 検出電圧補正部
90 第1の演算手段
91 補正手段
94 インピーダンス降下検出回路
95 等価抵抗
96 等価リアクタンス
97 検出部
98 電圧加算部

Claims (10)

  1. 電力系統に接続されて無効電力発生量を制御する無効電力制御回路と、前記電力系統の電圧を検出する電圧検出部と、前記無効電力制御回路の無効電流を検出する電流検出部と、設定電圧を記憶し前記設定電圧を変更可能な設定電圧記憶部と、前記電圧検出部の出力および前記電流検出部の出力より前記電力系統の電圧予測値を演算する検出電圧予測部と、この検出電圧予測部の出力する電圧予測値を入力し前記電力系統の電圧が前記設定電圧になるように前記無効電力制御回路を制御する電圧一定制御部とを備え、前記電圧検出部は、前記電力系統に接続した1次巻線と、前記無効電力制御回路に接続した2次巻線と、前記電力系統の電圧を変圧して出力する3次巻線からなる3巻線トランスを用いた無効電力補償装置。
  2. 検出電圧予測部は、電圧検出部の出力により電圧実効値を演算する電圧実効値演算部と、電流検出部の出力より電流実効値を演算する電流実効値演算部と、前記電流検出部の出力および前記電圧検出部の出力の電圧電流位相差を演算する電圧電流位相差演算部の少なくとも1つ以上からなる第1の演算手段と、前記電圧実効値演算部の出力と前記電流実効値演算部の出力と前記電圧電流位相差演算部の出力を補正して電力系統の電圧予測値を出力する補正手段を備えた請求項1記載の無効電力補償装置。
  3. 第1の演算手段は、電圧検出部の出力より検出電圧実効値を演算する検出電圧実効値演算部と、電流検出部の出力及び前記電圧検出部の出力より有効電流値を演算する有効電流演算手段と、前記電流検出部の出力及び前記電圧検出部の出力より遅れ無効電流であるか進み無効電流であるかを考慮した無効電流値を演算する無効電流演算手段を備えた請求項2記載の無効電力補償装置。
  4. 第1の演算手段は、電圧検出部の出力より検出電圧実効値を演算する検出電圧実効値演算部と、電流検出部の出力より検出電流実効値を演算する検出電流実効値演算手段と、前記電流検出部の出力及び前記電圧検出部の出力より無効電力制御回路が制御している無効電流が進みまたは遅れのどちらであるかを判定する電流位相判定手段を備えた請求項2記載の無効電力補償装置。
  5. 第1の演算手段は、前記電圧検出部の出力を入力し検出電圧実効値を出力する検出電圧実効値演算部と、前記電流検出部の出力を入力し検出電流実効値を出力する検出電流実効値演算手段と、前記電流検出部の出力及び前記電圧検出部の出力を入力し、その電圧電流位相差を出力する電圧電流位相差演算手段を備えた請求項2記載の無効電力補償装置。
  6. 第1の演算手段は、前記電圧検出部の出力を入力し検出電圧実効値を出力する検出電圧実効値演算部と、前記電流検出部の出力を入力し検出電流実効値を出力する検出電流実効値演算手段と、前記電流検出部の出力及び前記電圧検出部の出力を入力し、その無効電力値に遅れ無効電力であるか進み無効電力であるの情報を符号として加えた符号付無効電力値を出力する符号付無効電力演算手段と、前記3巻線トランスを通過する有効電流値を記憶する有効電流記憶部と、前記検出電流実効値、前記符号付無効電力値、及び前記有効電流値を入力し無効電流値に遅れ無効電流であるか進み無効電流であるかの情報を符号として加えた符号付無効電流値を出力する符号付無効電流演算部を備えた請求項2記載の無効電力補償装置。
  7. 補正手段は、3巻線トランスの通過電流により発生する前記3巻線トランスの3次側検出電圧の変化値をモデル化した際に電力系統の予測電圧演算式中に定数として現れる定数パラメータを設定保持する第1の電圧補正データ記憶部と、第1の演算手段より出力される変数値の組合せ及び前記定数パラメータを入力し、前記予測電圧演算式にあてはめることで前記電力系統の電圧予測値を出力する第1の電圧補正手段を備えた請求項2記載の無効電力補償装置。
  8. 補正手段は、第1の演算手段より出力される変数値の組合せを変数とした前記3巻線トランス3次側の出力電圧変化値を出力電圧変化値テーブルとして保持する第2の電圧補正データ記憶部と、第1の演算手段より出力される変数値の組合せ及び前記出力電圧変化値テーブルを入力し前記3巻線トランスの通過電流により発生する前記3巻線トランス3次側の出力電圧変化分を補正し前記電力系統の電圧予測値を出力する第4の電圧補正手段を備えた請求項2記載の無効電力補償装置。
  9. 補正手段は、第1の演算手段より出力される変数値の組合せに対する前記3巻線トランスの3次側出力電圧及び電力系統の電圧を実測して決定した、第1の演算手段より出力される1組の変数値から前記電力系統の予測電圧を算出する多項式関数の係数群を保持する第3の電圧補正データ記憶部と、第1の演算手段より出力される変数値の組合せ及び前記多項式関数の係数群とを入力し前記多項式関数にあてはめることで前記電力系統の電圧予測値を出力する第5の電圧補正手段を備えた請求項2記載の無効電力補償装置。
  10. 無効電力発生量を制御できる無効電力発生回路と、1次巻線を電力系統に接続し、2次巻線を前記無効電力発生回路に接続し、3次巻線で前記電力系統の電圧を変圧出力する3巻線トランスと、前記3巻線トランスの1次側または2次側に設置された変流器と、前記3巻線トランスのインピーダンス特性を模擬する等価抵抗及び等価リアクタンスで構成され前記3巻線トランスの1次側または2次側に設置された前記変流器の出力を入力することで回路両端間にインピーダンス降下電圧を発生するインピーダンス降下検出回路と、前記インピーダンス降下電圧を入力し前記3巻線トランスのインピーダンス降下電圧を出力する検出部と、前記3巻線トランスの3次側出力電圧と前記インピーダンス降下電圧とを入力してベクトル合成電圧を出力する電圧加算部と、前記ベクトル合成電圧を入力する電圧検出部と、前記電圧検出部の出力を入力し前記電力系統の電圧実効値を出力する実効値演算部と、設定電圧を記憶し前記設定電圧を変更可能な設定電圧記憶部と、前記実効値演算部の出力を入力し前記電力系統の電圧が前記設定電圧になるように前記無効電力発生回路を制御する電圧一定制御部とを備えた無効電力補償装置。
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