JP3590263B2 - 射出成形機の計量スクリュー構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形機の計量スクリュー構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
射出成形機における計量スクリューの一般的な構成例を図3に示す。なお、図3に示したものはスクリューインライン式の射出成形機の計量スクリューであって射出プランジャを兼ねている。
【0003】
図3に示す通り、計量スクリューは、シリンダの樹脂取り入れ口を介して供給される樹脂ペレットを噛み込むための供給部aと、供給部aから送り込まれた樹脂を徐々に圧縮して剪断発熱や摩擦発熱によって溶融させるための圧縮部b、および、溶融樹脂を貯溜するための計量部cによって一体に形成され、従来の計量スクリュー1においては、フライト2の前面2aの立ち上がり部のスミの丸ミRF、および、フライト2の背面2bの立ち上がり部のスミの丸ミRRは、計量スクリュー1の全領域、即ち、供給部aから計量部cにかけて、各々、途切れることなく一定の大きさで形成されていた。
【0004】
一般に、フライト2の前面2aのスミの丸ミRFとフライト2の背面2bのスミの丸ミRRの大小関係はRF≦RRとなるが、これは、フライト2の溝に樹脂が満杯に充填された時にフライト2の背面2bからの抗力で樹脂の送りに支障を来たさないようにするためにフライト2の背面2b側の立ち上がりを鈍く形成した結果に過ぎず、従来、フライト2の前面2a側のスミの丸ミRFの適切な大きさについては格別に考慮されてはいなかった。
【0005】
また、経験上、フライト2の前面2aのスミの丸ミRFが小さすぎると、その部分に溶融樹脂が滞留したりこびり付いたりして劣化し易くなり、炭化物およびコンタミの発生や変色等の発生等が問題となることが知られている。逆に、フライト2の前面2aのスミの丸ミRFを大きくし過ぎると、未溶融の樹脂ペレットを下流側、つまり、計量スクリュー1の基部側から先端側に向けて押す力が減少したり、樹脂取り入れ口からの樹脂ペレットの噛み込みが不安定となる問題が生じる。これらの諸問題は、特に、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やナイロン等の成形作業の場合に顕著である。
【0006】
図4に示すように、供給部aの部分、特に、樹脂の溶融開始位置よりも上流側の部分で樹脂ペレットの噛み込み不良が生じるような場合、フライト2のピッチや幅および高さを調整することで噛み込み不良を解消することが望ましいが、これらの要素を調整しても噛み込み不良が解消されない場合には、最終的に、フライト2の前面2aのスミの丸ミRFを小さくしなければならなくなることもあり、その結果、圧縮部bおよび計量部cでスミの丸ミRFの部分に溶融樹脂が滞留したりこびり付いたりして劣化し易くなり、炭化物およびコンタミの発生や変色等の発生等が問題となる場合がある。
【0007】
また、圧縮部bおよび計量部cにおける炭化物およびコンタミの発生や変色等の発生を防止するためにフライト2の前面2aのスミの丸ミRFを大きくし過ぎると、供給部aの部分で未溶融の樹脂ペレットを下流側に押す力が減少し、樹脂ペレットの噛み込みが安定せずに計量時間が不安定となったり、更に、それに伴なって樹脂の受熱量が変化して成形品の重量にばらつきが生じたりするといった弊害が生じることもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、前記従来技術の欠点を解消し、計量スクリューに溶融樹脂が滞留したりこびり付いたりすることなく、また、樹脂ペレットの噛み込みや搬送も安定して行うことのできる射出成形機の計量スクリュー構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミの大きさを計量スクリュー位置によって変えることによって前記課題を達成した。
【0010】
より具体的には、計量スクリューの領域を基部側と先端側とに分け、前記基部側の領域におけるフライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミを前記先端側におけるフライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミよりも小さく形成する。
【0011】
基部側の領域におけるフライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミは、その領域のフライトの高さの1/2以下、また、先端側の領域におけるフライト前面および背面の立ち上がり部のスミの丸ミは、その領域のフライトの高さの1/2以上5倍以下とすることが望ましい。
【0012】
また、基部側の領域と先端側の領域との境界は、樹脂の溶融開始点に基づいて決定し、スミの丸ミの大きさの変更は前記境界を含む数ピッチに亘って行うようにする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、PBTおよびナイロンを含む一般的な射出成形作業に対して好適な計量スクリューの実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本実施形態の計量スクリュー3を全体的に示す側面図、また、図2はスクリュー3におけるフライト4の形状について基部側の領域(図2(b)参照)と先端側の領域(図2(a)参照)とに分けて詳細に示す部分拡大図である。この計量スクリュー3は計量スクリューを射出プランジャとして兼用する構成を有するスクリューインライン式射出成形機の計量スクリューである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態においては、樹脂の溶融開始点を考慮して、計量スクリュー3の基端部からフライト4のピッチを基準として6ピッチ目までをスクリュー3の基部側の領域Aとし、残る部分をスクリュー3の先端側の領域Bとして、図2(b)および図2(a)に示すように、基部側領域Aにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF1を、先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF2よりも小さく形成している。
【0016】
なお、この実施形態の場合、樹脂の溶融開始点が計量スクリュー3の基端部から数えて6ピッチ目の位置にあることが実験によって特定されたため、6ピッチ目の位置で基部側領域Aと先端側領域Bとを明確に区分し、基部側領域Aにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF1と先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF2の切り替えを6ピッチ目に位置する1ピッチ分のフライトピッチの区間で達成したが、図4に示される例のように樹脂の溶融開始点が明確に特定できないような場合には、想定される溶融開始点の範囲を包含する区間をどちらの領域にも属さない領域として扱い、それよりも基部側の区間を基部側領域A、また、それよりも先端側の区間を先端側領域Bとして、前述した溶融開始点の範囲を包含する区間でスミの丸ミRF1からRF2への切り替えを行うようにする。
【0017】
従って、図4の例では、基端部から数えて5ピッチ目から11ピッチ目の区間内の数ピッチで、フライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミがRF1からRF2へと徐々に切り替えられることになる。
【0018】
一般に、基部側領域Aと先端側領域Bの境界は樹脂の溶融開始点よりも上流側、つまり、溶融開始点よりも基部側に設置して好適な結果を得ることができるが、成形サイクルが極端に短いような場合には、溶融開始点よりも下流側、例えば、図4の例に示す供給部aと圧縮部bの境目の近傍に移動させた方が好ましい結果が得られる場合があり、また、レンズ成形のように成形サイクルが長くなるようなものでは、樹脂の溶融開始点よりも相当に上流側、例えば、ホッパの近傍に境界を移動させた方が好ましい結果が得られる場合がある。
【0019】
図1に示した実施形態の場合、基部側領域Aにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF1の大きさは、基部側領域Aにおけるフライト4の高さH1の1/4倍(図2(b)参照)、また、先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF2の大きさは、先端側領域Bにおけるフライト4の高さH2の2倍(図2(a)参照)としてRF2>RF1の関係を成立させている。
【0020】
RF1およびRF2は、JIS B 0701−1963で定義される通り、丸み付けの半径Rに関する値である。
従って、基部側領域Aにおけるフライト4の前面4aの外周部には、フライト4の外周から径方向内側に向けて(3/4)・H1に相当する平坦部が形成され、この部分が、樹脂ペレットの噛み込みの安定化と未溶融ペレットの搬送の安定化に貢献する。また、基部側領域Aでは樹脂ペレットが溶融していないので、フライト4の立ち上がり部のスミの丸ミRF1が小さいために樹脂ペレットの細粉が滞留したりこびり付いたとしても、炭化物やコンタミの発生および変色等の問題は生じない。基部側領域Aにおけるフライト4の背面4bのスミの丸ミRR1に関しては格別の制限はない。
【0021】
一方、先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF2の大きさは先端側領域Bのフライト4の高さH2の2倍としているから、先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aに平坦部は形成されず、図2(a)に示される通り、その全面が逆Rの丸ミを有する曲面によって形成されることになる。従って、先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aの部分に溶融樹脂が滞留したりこびり付いたりして劣化する心配はなく、炭化物およびコンタミや変色等の問題も発生しない。この先端側領域Bは専ら図4で示した計量部cや圧縮部bの部分に相当する部分であるから、前述した基部側領域Aのように未溶融の樹脂ペレットの搬送能力を考慮する必要はなく、溶融樹脂の滞留やこびり付きを防止できれば十分である。
【0022】
先端側領域Bにおけるフライト4の背面4bのスミの丸ミRR2に関しては格別の制限はないが、図4の計量部cに相当する部分ではフライト4の溝に溶融樹脂が満杯に充填されるのが普通であるから、本実施形態においては、背面4bのスミの丸ミRR2の部分に溶融樹脂が滞留したりこびり付いたりするのを防止するため、背面4bのスミの丸ミRR2の大きさを先端側領域Bにおける前面4aのスミの丸ミRF2と同じ大きさ、要するに、先端側領域Bにおけるフライト4の高さH2の2倍の大きさにしている。
【0023】
以上、基部側領域Aにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF1を基部側領域Aにおけるフライト4の高さH1の1/4倍とし、先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aの立ち上がり部のスミの丸ミRF2を先端側領域Bにおけるフライト4の高さH2の2倍とした最適な一実施形態について述べたが、適切な作用を得るためのRF1およびRF2の許容範囲は、最終的に、RF1<RF2の条件を満たし、かつ、RF1が(1/5)・H1≦RF1≦(1/2)・H1の範囲、また、RF2が5・H2≧RF2≧(1/2)・H2といった程度の範囲である。
【0024】
RF1の値をRF1≦(1/2)・H1とするのは、前述した通り、基部側領域Aにおけるフライト4の前面4aの外周部に十分な平坦部を形成して樹脂ペレットの噛み込みや未溶融ペレットの搬送の安定化を図るためであり、また、RF1の値を(1/5)・H1≦RF1とするのは、専らコストパフォーマンスを考慮した結果である。無論、技術的にはRF1 0、即ち、RF1をシャープコーナーとすることも可能であるが、敢えてRF1をシャープコーナーとしても樹脂ペレットの噛み込みや未溶融ペレットの搬送の安定化が著しく向上するわけではないので、ここでは、加工の容易さと作用効果のバランスを考慮して、RF1の最小値を(1/5)・H1に規定している。
【0025】
一方、RF2の値をRF2≧(1/2)・H2とするのは、前述した通り、先端側領域Bにおけるフライト4の前面4aの部分で溶融樹脂の滞留やこびり付きが生じて炭化物やコンタミの発生および変色等の問題の原因となるのを防止するためであり、また、RF2の値を5・H2≧RF2とするのは、先端側領域B、つまり、図4に示される計量部c等の部分でフライト4の溝に必要十分な溶融樹脂を充填できるようにするためである。無論、溶融樹脂の滞留やこびり付きを防止するためにはRF2の値を大きくするに越したことはないが、この値を大きくし過ぎると、フライト4の間の溝形状が全体として円弧状になってしまい、計量部c等の部分に必要十分な溶融樹脂を充填できなくなるので、その限界値を5・H2≧RF2として定めている。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、計量スクリューにおける溶融樹脂の滞留やこびり付きの防止と樹脂ペレットの噛み込みや搬送の安定化を同時に達成することができる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のスクリューを全体的に示す側面図である。
【図2】同実施形態のスクリューのフライトの形状について詳細に示す部分拡大図である。
【図3】射出成形機における計量スクリューの一般的な構成例である。(従来例)
【図4】計量スクリューの各位置と樹脂の溶融状態とを対比させて示す概念図である。
【符号の説明】
1 計量スクリュー(従来例)
2 フライト(従来例)
2a フライトの前面(従来例)
2b フライトの背面(従来例)
3 計量スクリュー
4 フライト
4a フライトの前面
4b フライトの背面
a 供給部
b 圧縮部
c 計量部
RF フライトの前面のスミの丸ミ(従来例)
RR フライトの背面のスミの丸ミ(従来例)
A 基部側の領域
B 先端側の領域
RF1,RF2 フライトの前面のスミの丸ミ
RR1,RR2 フライトの背面のスミの丸ミ
Claims (4)
- 射出成形機の計量スクリュー構造において、前記計量スクリューの領域を基部側と先端側とに分け、前記基部側の領域におけるフライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミを前記先端側におけるフライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミよりも小さく形成したことを特徴とする射出成形機の計量スクリュー構造。
- 前記基部側の領域におけるフライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミをその領域のフライトの高さの1/2以下に形成すると共に、前記先端側の領域におけるフライト前面および背面の立ち上がり部のスミの丸ミをその領域のフライトの高さの1/2以上5倍以下に形成したことを特徴とする請求項1記載の射出成形機の計量スクリュー構造。
- 前記基部側の領域と先端側の領域との境界を含む数ピッチ間に亘ってフライト前面の立ち上がり部のスミの丸ミの大きさの変更が行われていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の射出成形機の計量スクリュー構造。
- 前記基部側の領域と先端側の領域との境界は、樹脂の溶融開始点に基づいて決められている請求項1、請求項2または請求項3のいずれか一項記載の射出成形機の計量スクリュー構造。
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