JP3589430B2 - 紫外線吸収剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、化粧料、塗料、ゴム、プラスチック、セラミックス等の配合成分として有用な可視光領域において透明性の高い紫外線吸収剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無機系紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタンや炭化珪素等が知られており、これら無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤に比べて耐候性、耐食性、安全性に優れるため、化粧料や塗料等の配合成分として汎用されている。これらの分野では、上記特性以外にもその用途から、さらに可視光領域での透明性と強い紫外線吸収能を有することが望まれている。
【0003】
しかしながら、炭化珪素はその合成法上、遊離炭素の存在により粉体そのものが黒色であり、これを解決するために、遊離炭素量を低減させたものが提案(特開平6─33036号公報)されているが、含有する遊離炭素や遷移金属化合物の除去は煩雑であり、また炭化珪素原料を加熱昇華させる方法は、反応温度が高く、いずれの手法を用いても工業的に不向きである。
【0004】
また、酸化チタンでは屈折率(2.5〜2.7)が高く、しかも凝集粒子として存在するために、可視光領域での透明性が不十分であった。この分散性を解決する目的で、他の無機基材上ヘナノメートルオーダーの酸化チタンを被着させたものが提案(例えば特開平1−224220号公報)されているが、当該他の無機基材の存在により、可視光領域での透明性及び紫外線吸収能に劣るものである。
【0005】
また、酸化亜鉛や酸化チタンは光触媒活性が強く、他の配合成分の有機物を分解させる問題もあった。これを解決する目的で、粒子表面上にシリコン化合物を被覆して活性を消失させる技術が提案(特開昭63−113081号公報等多数)されているが、これでも完全に活性を消失させることはできないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の問題点を解決すべく、光触媒活性が弱く、紫外線吸収能に優れ、可視光領域での透明性の高い紫外線吸収剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、従来の紫外線吸収剤では知られていないペロブスカイト型構造を有する複酸化物又はその固溶体で、特定の体積平均粒子径及び特定の結晶子サイズを有するものが、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、
(1) 一般式ABO3 (但し、A,Bは金属元素、Oは酸素元素を表す。)で表されるペロブスカイト型構造を有する複酸化物又はその固溶体であって、体積平均粒子径が1μm以下で、かつX線回折による結晶子サイズが150〜300オングストロームである粒子よりなる紫外線吸収剤、
(2) AがCa,Sr,Ba,Pb及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の酸素12配位金属元素であり、BがTi,Zr,及びHfのIVa族元素からなる群より選ばれる1種以上の酸素6配位金属元素である前記(1)記載の紫外線吸収剤、
(3) 紫外線吸収剤1重量部と硫酸バリウム19重量部を混合した錠剤試料の反射スペクトル測定で、250〜380nmの紫外線領域での平均吸光度が0.6以上である前記(1)又は(2)記載の紫外線吸収剤、並びに
(4) 紫外線吸収剤1重量部と硫酸バリウム19重量部を混合した錠剤試料の反射スペクトル測定で、500nmでの反射率が85%以上である前記(1)〜(3)いずれか記載の紫外線吸収剤、に関する。
【0009】
本発明の紫外線吸収剤は、一般式ABO3 (但し、A,Bは金属元素、Oは酸素元素を表す。)で表されるペロブスカイト型構造を有する複酸化物、又はその固溶体からなることを特徴とする。
【0010】
ペロブスカイト型構造とは、一般に組成がABX3 で表される無機化合物に見られる典型的結晶構造の1つであり、ペロブスカイトCaTiO3 の他、多くの化合物がこの構造をもつ。
本発明の紫外線吸収剤は複酸化物であるため、一般式ABO3 (但し、A,Bは金属元素、Oは酸素元素を表す。)で表すことができる。
【0011】
一般式ABO3 において、Aとしては、酸素12配位金属元素であれば特に限定されないが、本発明ではCa,Sr,Ba,Pb及びLa,Ce等の希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の酸素12配位金属元素が好ましく、より好ましくはCa,Sr及びLa,Ce等の希土類元素である。
【0012】
一般式ABO3 において、Bとしては、酸素6配位金属元素であれば特に限定されず、Ti,Zr,Hf,Sn,W,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Al,Zn等が挙げられ、これらのうち、Ti,Zr,及びHfのIVa族元素からなる群より選ばれる1種以上の酸素6配位金属元素が好ましく、より好ましくはTi,Zr等である。
【0013】
上記において、A,Bの金属元素としてそれぞれ1種以上の金属元素が含有されていてもよいのは、本発明の紫外線吸収剤が複酸化物の固溶体を含むためである。即ち、本発明の紫外線吸収剤は、A,Bの金属元素の一部がそれぞれ他のA,Bの金属元素で置換されている構造の固溶体であってもよい。
【0014】
本発明の紫外線吸収剤の具体的な組成としては、例えば、Ca(Ti,Zr)O3 (一般式でA=Ca,B=Ti,Zrの化合物を意味する。以下同様に記載する。)、(Ca,Sr)TiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 、CaZrO3 、SrZrO3 、(Ca,Sr)ZrO3 、(Ca,Sr)(Ti,Zr)O3 、(Ca,La)TiO3 、(Ca,Ce)TiO3 等が挙げられる。これらのうち、好ましくはCa(Ti,Zr)O3 、(Ca,Sr)TiO3 、(Ca,Ce)TiO3 、(Ca,Ce)(Ti,Zr)O3 である。
【0015】
本発明の紫外線吸収剤は、従来の紫外線吸収剤では知られていないペロブスカイト型構造をとるが、このような結晶構造でもバンドギャップエネルギーの値が紫外線吸収に都合の良い値となり得るため、高い紫外線吸収能を得ることができる。即ち、セラミックスは価電子帯と伝導帯が連続でないため、両準位間のエネルギー差であるバンドギャップエネルギー以上のエネルギーに相当する波長の光を吸収することが知られているが、ペロブスカイト型構造でも高い紫外線吸収能が得られることを見出したのである。また、ペロブスカイト型構造をもつ化合物の多くは、光触媒活性が低いことも知られている。
【0016】
本発明の紫外線吸収剤は、体積平均粒子径が1μm以下であることを特徴とし、好ましくは0.1〜0.4μmである。体積平均粒子径が1μmを超えると、紫外線吸収剤としての表面積が小さくなるため紫外線吸収能が不十分になるとともに、可視光領域での透明性が不十分となる傾向がある。この体積平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定した粒度分布から体積平均により求めた値である。
【0017】
また、本発明の紫外線吸収剤は、X線回折による結晶子サイズが150〜300オングストロームであることを特徴とし、好ましくは170〜250オングストロームである。300オングストロームを超えると、紫外線の波長との関係で紫外線吸収能が不十分となる傾向がある。また150オングストローム未満であると、非晶質構造に近づくため紫外線吸収能が不十分となる傾向がある。ここで、X線回折による結晶子サイズは、試料粉末のX線回折パターンより得られるメインピーク(例えばCaTiO3 では面指数(121))の半値幅を次のScherrer式へ導入することで求めることができる。
Dhkl =kλ/βcos θ
(但し、定数k=0.9 、λ=1.5406(Å)、βはピークの半値幅を示す。)
【0018】
本発明の紫外線吸収剤の紫外線吸収能は、紫外線吸収剤1重量部と硫酸バリウム19重量部を混合した錠剤試料を用いて反射スペクトルを測定した場合、250〜380nmの紫外線領域での平均吸光度が0.6以上であることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2である。
【0019】
また、本発明の紫外線吸収剤の可視光域での透明性は、紫外線吸収剤1重量部と硫酸バリウム19重量部を混合した錠剤試料を用いて反射スペクトルを測定した場合、500nmでの反射率が、85%以上であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。本発明ではこのように、可視光波長の500nmで高い反射率が得られるため、その波長での吸収が少なく、可視光領域での透明性が高くなる。
【0020】
本発明の紫外線吸収剤の製造方法は、ペロブスカイト型複酸化物を合成する方法なら何でもよく、例えば炭酸塩と水酸化物の混合物を仮焼することで得られる固相法、各組成成分の塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の水溶液あるいはアルコール溶液を苛性アルカリ、シュウ酸等の水溶液あるいはアルコール溶液と混合する液相法で得られる沈澱物を仮焼して得る方法、または液相法で得られる水酸化物を水熱処理して得る方法、及びCVDや噴霧熱分解法等による気相法等が挙げられるが、これらの方法に限られるものではない。
【0021】
これらの方法において、本発明で特定されるような体積平均粒子径、結晶子サイズのものを調製するには、例えば各組成塩水溶液とシュウ酸水溶液とからシュウ酸塩を沈殿させる場合、シュウ酸水溶液を60℃以上に加熱し、この水溶液に組成塩水溶液を滴下するのが好ましく、また得られたシュウ酸塩の仮焼温度は、500〜900℃が好ましい。また、噴霧熱分解法では、各塩水溶液を超音波噴霧器等で煙霧体とし、N2 ガスをキャリアガスとして反応管に導入するが、このガス流量は2〜8L/min、反応温度は600〜1000℃とすればよい。
【0022】
【実施例】
以下、実施例、および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例等中の各データの評価方法は、次のとおりである。
【0023】
(1)体積平均粒子径
ポリアクリル酸ナトリウム(商品名;ポイズ530)の0.1重量%水溶液に試料粉末を分散させ、粒度分布測定装置(堀場製作所製;形式LA−700)により測定した。
【0024】
(2)結晶子サイズ
試料粉末のX線回折パターンより得られるメインピークの半値幅を前記のScherrer式へ導入することで求めた。
【0025】
(3)紫外線吸収能
試料粉末0.1gと硫酸バリウム粉末1.9gの合計2.0gをメノウ乳鉢で充分に混合して錠剤試料とし、分光光度計(日立製作所製;形式U−4000型)を用いて、190〜700nmの波長範囲での反射スペクトルを測定し、得られたスペクトルを吸光度に変換し、250〜380nmの紫外線領域での平均吸光度を算出して評価基準とした。
【0026】
(4)可視光域での透明性
上記の紫外線吸収能測定で得られる反射スペクトルの500nmでの反射率をもって評価基準とした。
【0027】
実施例1
塩化カルシウム1×10−1モル、塩化チタン9.5×10−2モル、オキシ塩化ジルコニウム5×10−3モルをイオン交換水400mlに溶解した。次いでシュウ酸2×10−1モルをイオン交換水400mlに溶解し、この溶液を攪拌しながら100℃に加熱し、上記塩化物水溶液を20秒で投入して10分間攪拌を続けた後、炭酸カリウム水溶液を添加して中和し、5時間熟成した。熟成終了後、沈澱物をろ過・洗浄し、100℃で乾燥した。得られた粉末を粉砕後700℃で1時間仮焼して目的の紫外線吸収粉末を得た。
【0028】
得られた粉末は、X線回折パターンより、Ca(Ti,Zr)O3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。図1にそのX線回折パターンを示す。また、この粉末の体積平均粒子径は0.3μm、結晶子サイズが210オングストロームであり、紫外線吸収能0.75、透明性93%であった。
【0029】
実施例2
仮焼温度を900℃としたほかは、実施例1と同様の操作を行った。
得られた粉末は、X線回折パターンより、Ca(Ti,Zr)O3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は、0.35μm、結晶子サイズが240オングストロームであり、紫外線吸収能0.65、透明性92%であった。
【0030】
実施例3
塩化カルシウム2×10−3モル、塩化チタン1.9×10−3モル、オキシ塩化ジルコニウム1×10−4モルを0.1mol/Lの塩酸水溶液1000mlに溶解した。この水溶液を超音波噴霧器で煙霧体とし、N2 ガスをキャリアガスとしてガス流量4L/minで800℃に加熱した反応器へ導入し、熱分解することで目的とする紫外線吸収粉末を得た。
ここで得られた粉末は、X線回折パターンより、Ca(Ti,Zr)O3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末は、体積平均粒子径0.27μm、結晶子サイズが250オングストロームで、紫外線吸収能0.70、透明性90%であった。
【0031】
実施例4
塩化カルシウム9.5×10−2モル、塩化ストロンチウム5×10−3モル、塩化チタン1×10−1モルをイオン交換水400mlに溶解した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
得られた粉末は、X線回折パターンより、(Ca,Sr)TiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末は、体積平均粒子径0.4μm、結晶子サイズが225オングストロームであり、紫外線吸収能0.60、透明性93.5%であった。
【0032】
実施例5
塩化カルシウム1×10−1モル、塩化チタン1×10−1モルをイオン交換水400mlに溶解した。次いでシュウ酸2×10−1モルをイオン交換水400mlに溶解し、この溶液を攪拌しながら100℃に加熱し、上記塩化物水溶液を20秒で投入して10分間攪拌を続けた後、炭酸カリウム水溶液を添加して中和し、5時間熟成した。熟成終了後、沈澱物を濾過・洗浄し、100℃で乾燥した。得られた粉末を粉砕後700℃で1時間仮焼して目的の紫外線吸収粉末を得た。
得られた粉末は、X線回折パターンより、CaTiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.33μm、結晶子サイズが215オングストロームであり、紫外線吸収能0.72、透明性89.5%であった。
【0033】
実施例6
塩化ストロンチウム1×10−1モル、塩化チタン1×10−1モルをイオン交換水300mlとエチルアルコール100mlの混合溶液に溶解した。次いでシュウ酸2×10−1モルをエチルアルコール400mlに溶解し、この溶液を攪拌しながら70℃に加熱し、上記塩化物水溶液を20秒で投入して10分間攪拌を続けた後、アンモニア水を添加して中和し、5時間熟成した。熟成終了後、沈澱物を濾過・洗浄し、100℃で乾燥した。得られた粉末を粉砕後800℃で1時間仮焼して目的の紫外線吸収粉末を得た。
得られた粉末は、X線回折パターンより、SrTiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.65μm、結晶子サイズが250オングストロームであり、紫外線吸収能0.60、透明性88.8%であった。
【0034】
実施例7
塩化ストロンチウムを塩化バリウムとしたほかは、実施例6と同様の操作を行った。
得られた粉末は、X線回折パターンより、BaTiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.53μm、結晶子サイズが245オングストロームであり、紫外線吸収能0.65、透明性92.7%であった。
【0035】
実施例8
塩化カルシウム9.5×10−2モル、塩化セリウム5×10−3モル、塩化チタン1×10−1モルをイオン交換水400mlに溶解した。次いでシュウ酸2×10−1モルをイオン交換水400mlに溶解し、この溶液を攪拌しながら100℃に加熱し、上記塩化物水溶液を20秒で投入して10分間攪拌を続けた後、炭酸カリウム水溶液を添加して中和し、5時間熟成した。熟成終了後、沈澱物を濾過・洗浄し、100℃で乾燥した。得られた粉末を粉砕後700℃で1時間仮焼して目的の紫外線吸収粉末を得た。
得られた粉末は、X線回折パターンより、(Ca,Ce)TiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.35μm、結晶子サイズが205オングストロームであり、紫外線吸収能0.75、透明性90%であった。
【0036】
実施例9
塩化カルシウム3×10−1モル、塩化チタン3×10−1モルをイオン交換水300mlに溶解した。次いで48%水酸化ナトリウム水溶液130gにイオン交換水40gを加えた水溶液を攪拌しながら40℃に加熱し、上記塩化物水溶液を5ml/minで滴下し、1時間熟成を行った。熟成終了後、スラリー濃度(CaTiO3 換算)となるようにイオン交換水を添加した。
次いで得られたスラリー600mlをステンレス製の1リットルの容器に分取し、攪拌しながら150℃で5時間水熱処理を行った。処理終了後、生成物を濾過し、充分に洗浄した後、100℃で乾燥して目的の紫外線吸収粉末を得た。
得られた粉末は、X線回折パターンより、CaTiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.87μm、結晶子サイズが270オングストロームであり、紫外線吸収能0.63、透明性87%であった。
【0037】
実施例10
塩化カルシウム1×10−1モル、塩化チタン7.5×10−2モル、オキシ塩化ジルコニウム2.5×10−2モルをイオン交換水400mlに溶解した。次いでシュウ酸2×10−1モルをイオン交換水400mlに溶解し、この溶液を攪拌しながら100℃に加熱し、上記塩化物水溶液を10分で滴下して10分間攪拌を続けた後、炭酸カリウム水溶液を添加して中和し、5時間熟成した。熟成終了後、沈澱物を濾過・洗浄し、100℃で乾燥した。得られた粉末を粉砕後700℃で1時間仮焼して目的の紫外線吸収粉末を得た。
得られた粉末は、X線回折パターンより、Ca(Ti,Zr)O3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.45μm、結晶子サイズが240オングストロームであり、紫外線吸収能0.62、透明性92.5%であった。
【0038】
実施例11
塩化セリウムを塩化ランタンとし、仮焼温度を800℃としたほかは、実施例8と同様の操作を行った。
得られた粉末は、X線回折パターンより、(Ca,La)TiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.33μm、結晶子サイズが202オングストロームであり、紫外線吸収能0.73、透明性94%であった。
【0039】
実施例12
塩化カルシウム9.5×10−2モル、塩化セリウム5×10−3モル、塩化チタン9.5×10−2モル、オキシ塩化ジルコニウム5×10−3モルをイオン交換水250mlとイソプロピルアルコール150mlの混合溶液に溶解した。次いでシュウ酸2×10−1モルをイソプロピルアルコール400mlに溶解し、この溶液を攪拌しながら80℃に加熱し、上記塩化物水溶液を30分で滴下し、滴下終了後10分間を続けた後、アンモニア水で中和し、2時間熟成を行った。熟成終了後、沈澱物を濾過・洗浄し、80℃で真空乾燥した。得られた粉末を粉砕後700℃で1時間仮焼して目的の紫外線吸収粉末を得た。
得られた粉末は、X線回折パターンより、(Ca,Ce)(Ti,Zr)O3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は0.29μm、結晶子サイズが215オングストロームであり、紫外線吸収能0.75、透明性89.1%であった。
【0040】
比較例1
仮焼温度を1000℃としたほかは、実施例1と同様の操作を行った。
得られた粉末は、X線回折パターンより、Ca(Ti,Zr)O3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末は、体積平均粒子径1.5μm、結晶子サイズ330オングストロームで、紫外線吸収能0.27、透明性84%であった。
【0041】
比較例2
気相法である高周波プラズマCVDで得られたβ形の炭化珪素(体積平均粒子径0.02μm)について、紫外線吸収能及び透明性を評価したところ、紫外線吸収能0.13、透明性50%であった。
【0042】
比較例3
仮焼温度、時間を1000℃、3時間としたほかは、実施例7と同様の操作を行った。
得られた粉末は、X線回折パターンより、BaTiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末は、体積平均粒子径1.1μm、結晶子サイズが313オングストロームであり、紫外線吸収能0.22、透明性81.3%であった。
【0043】
比較例4
仮焼温度を450℃としたほかは、実施例5と同様の操作を行った。
得られた粉末は、X線回折パターンより、CaTiO3 で表されるペロブスカイト型構造であることが判明した。また、この粉末の体積平均粒子径は1.35μm、結晶子サイズが132オングストロームであり、紫外線吸収能0.45、透明性84.5%であった。
【0044】
以上の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果より、実施例で得られた紫外線吸収粉末は、いずれも高い紫外線吸収能と高い透明性を示した。
これに対して、体積平均粒子径が大きすぎる比較例1や、β形の炭化珪素を用いた比較例2、結晶子サイズが大きすぎる比較例3、逆に結晶子サイズが小さすぎる比較例4では、いずれも紫外線吸収能と透明性が劣るものであった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の紫外線吸収剤は、光触媒活性が弱く、紫外線吸収能に優れ、可視光領域での透明性の高いものである。従って、化粧料、塗料、ゴム、プラスチック、セラミックス等の配合成分として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた紫外線吸収粉末のX線回折パターンを示すものである。
Claims (4)
- 一般式ABO3 (但し、A,Bは金属元素、Oは酸素元素を表す。)で表されるペロブスカイト型構造を有する複酸化物又はその固溶体であって、体積平均粒子径が1μm以下で、かつX線回折による結晶子サイズが150〜300オングストロームである粒子よりなる紫外線吸収剤。
- AがCa,Sr,Ba,Pb及び希土類元素からなる群より選ばれる1種以上の酸素12配位金属元素であり、BがTi,Zr,及びHfのIVa族元素からなる群より選ばれる1種以上の酸素6配位金属元素である請求項1記載の紫外線吸収剤。
- 紫外線吸収剤1重量部と硫酸バリウム19重量部を混合した錠剤試料の反射スペクトル測定で、250〜380nmの紫外線領域での平均吸光度が0.6以上である請求項1又は2記載の紫外線吸収剤。
- 紫外線吸収剤1重量部と硫酸バリウム19重量部を混合した錠剤試料の反射スペクトル測定で、500nmでの反射率が85%以上である請求項1〜3いずれか記載の紫外線吸収剤。
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