JP3589330B2 - 食肉加工品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、肉らしい歯ごたえとともに、優れたジューシー感が付与された食肉加工品を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、食肉の色調改善、食味改善、保存性向上等の目的で、食塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、調味料、ゲル化剤、熱凝固性蛋白、油脂等を含む液を用いて、食肉中にこれを含浸させるかインジェクションする方法が行なわれている。特に脂肪分の少ない食肉に対して粉末油脂や液状油、固形脂等を多めに配合することがあり、食肉にある程度のジューシー感を与えることが知られている。
【0003】
例えば、蛋白質もしくはその加水分解物と有機カルボン酸とフィチン酸からなる畜肉加工用ピックル液に関するもの(特開昭57−125648号公報)、食塩、発色剤等を水難溶性物質でコーティングしたインジェクション用ピックル液に関するもの(特開昭62−118841号公報)、牛脂や豚脂が本来有する風味と香りを有する脂肪分を付与し、常温で保管・流通を可能とする、未精製の牛脂や豚脂、酸化安定油脂を含む油脂組成物をO/W型乳化してなる畜肉加工用O/W型エマルジョン組成物に関するもの(特開平3−187343号公報)、熱凝固性タンパク質、常温で液状の油脂、及び水よりなるエマルジョンを加熱して蛋白質を変性させ、これをホモゲナイズ後冷却し、これに未変性熱凝固性タンパク質とピックル成分を配合してピックルエマルジョンを調製し、これを肉塊に注入して加熱し、エマルジョンを固定し、霜降り状組織をもつハム製品を製造する方法に関するもの(特開平4−341159号公報)、大豆蛋白質を含んだ(油脂を含まない)ピックル液を原料肉にインジェクションした後、タンブリングして、1〜3日間冷凍後、成型・スライスして衣を付与し、フライする畜肉フライ製品に関するもの(特開平5−328939号公報)、上記特開平3−187343号公報の改良発明で、油脂組成物からなる油相に対し、アルギン酸ソーダ、塩類及び天然多糖類からなる水相部を加えて乳化した、畜肉加工用O/W型エマルジョン組成物に関するもの(特開平6−62736号公報)、鶏肉塊に、蛋白質と脂肪を乳化して得られるO/W型エマルジョンを注入し、これに肉接着剤をまぶし、接着成型して冷凍し、所定の厚さに切断して肉片とする冷凍鶏肉製品の製造法に関するもの(特開平6−245736号公報)が知られている。
【0004】
しかし油脂やピックル液を食肉の組織内に含有させる態様は、油脂組成物の種類、添加副材料の種類等原料成分や、また注入・製造条件や流通過程の相違により、ジューシー感の発現に差異があり、また他の要求される物性、例えば肉らしい歯ごたえ等の食感と両立させることは実際上容易でない。
本発明者の知見によれば、従来もっともよくジューシー感が発現できたのは、ピックル液と油脂を分散液のまま(乳化せずに)肉中へ強制注入(インジェクション)する場合であるが、得られる製品は、肉らしい歯ごたえに乏しい欠点がある他、冷凍や加熱によって、注入した油脂や水分がドリップとして肉外へ流出しやすく、歩留りの低下や肉原料によってはボソボソした却って食感の低下がおこるという問題がある。熱凝固性蛋白を用いて油脂を油中水型エマルジョンにして強制注入(インジェクション)すると、分散液で注入する場合に比べて、肉らしい歯ごたえが改善される反面、ジューシー感はかなり低下するという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、肉らしい歯ごたえと、優れたジューシ一感の両立を主な課題として種々検討を行い、熱凝固性蛋白を用いたO/W型エマルジョンを用いる場合のジューシー感の低下の原因を探る研究を行う中で、熱凝固性蛋白によるエマルジョンの安定性の向上に抗して解乳化させるのがよいこと、解乳化のためには、油脂の選択と油脂の種類に応じた低温処理が重要であることを見出し、この発明に到達した。
【0006】
因みに、上記の先行技術には、「本発明は、肉塊中に熱凝固性タンパク質と常温で液状の油脂とのエマルジョンが霜降り状に分散され、かつ熱凝固性タンパク質が加熱凝固されていて、前記エマルジョンが肉塊中で固定されていることよりなる霜降り状組織をもつハム製品に関する。」(特開平4−341159号公報第2欄2〜6行)、「脂肪を注入することによって鶏肉の風味を改善しそれを蛋白質と水中油型エマルジョンにすることによって、冷凍時のエマルジョンの破壊を防止し、脂肪の流出を防止することができる。」(特開平6−245736号公報第2欄20〜23行)と記載されているように、熱凝固性蛋白によるエマルジョンの安定性の向上に抗して解乳化させると、肉らしい歯ごたえと、優れたジューシ一感が得られるということは知られていなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ちこの発明は、食肉中に熱凝固性蛋白、油脂及び水を含むO/W型(水中油型)エマルジョンを含ませた後、解乳化させることを特徴とする食肉加工品の製造方法である。そして、解乳化のためには、2位に多不飽和脂肪酸(リノール酸、リノレン酸など、二重結合を2以上有する脂肪酸)の結合するトリグリセリドが60%以下の油脂及び上昇融点19℃未満の油脂を用いることや、1,3位飽和2位オレイルグリセリド(以下「SOS」という)を5%以上含有する油脂を用いることが必要である。そして、解乳化については、これらの油脂を用いて調製したO/W型エマルジョンを解乳化が生じるまで低温で保持するのが好ましい。
以下、この発明を詳細に説明する。
【0008】
この発明において、食肉は、牛肉、豚肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉等の畜肉及び家兎、家禽肉の何れであってもよいが、特に、家禽肉等油脂含量が少なくパサついて喉とおりが悪い食肉に適用すると、良好なジューシー感を発現させることができる。
また、この発明における食肉加工品とは、食肉及び食肉を主材とした製品を意味する。
【0009】
この発明において、熱凝固性蛋白は、加熱により凝固する性質を有する蛋白であればよく、大豆蛋白や卵白が特に好ましい。そして、熱凝固性蛋白を欠くと、油脂と水だけではエマルジョンを形成せず、浸漬によっては肉中に含ませることができない。また、熱凝固性蛋白を欠くと、肉らしい歯ごたえに乏しく、加熱や凍結でドリップが生じ、歩留りが悪く、結果的に満足できるジューシー感を付与しがたい。しかし、熱凝固性蛋白の使用は、加熱及び低温での解乳化を抑制するので解乳化作業が必要となる。
【0010】
この発明において、油脂は、2位に多不飽和脂肪酸の結合するトリグリセリドが60%以下であり、かつ、上昇融点19℃未満である油脂、SOS(1,3位飽和、2位オレイルグリセリド)を5%以上含有する油脂、又は、2位に多不飽和脂肪酸の結合するトリグリセリドが60%以下であり、上昇融点19℃未満であり、かつ、SOS(1,3位飽和、2位オレイルグリセリド)を5%以上含有する油脂であって、O/W型エマルジョンとして用いた後、解乳化により食肉にジューシー感を付与できるものであり、天然物の単独油脂、単独油脂のエステル交換や分別等による加工油脂、又はそれらを混合した調合油脂が使用できる。
【0011】
2位に多不飽和脂防酸の結合するトリグリセリドが60%以下の油脂は、60%を越えるものよりも解乳化の点から好ましい。すなわち、その2位に、リノール酸、リノレン酸等構成脂肪酸中に2以上の二重結合を含む多不飽和脂防酸が60%より多い油脂、例えば大豆油(70〜80%)、サフラワー油(86%)、トウモロコシ油(75〜85%)、綿実油(65〜75%)などは、冷凍温度域のような低温に保持して油脂が固化しても、大きい結晶に成長しがたいためか、蛋白の解乳化防止作用に抗して解乳化が困難である。ナタネ油程度の、2位に結合する多不飽和脂肪酸の量が概ね40〜50%程度の油脂なら、長時間例えば20日間以上冷凍温度におくことにより解乳化をおこすことができるが、多不飽和脂肪酸含量40%未満のものがより好ましい。 これらの中でも、例えば、オリープ油(10%)、ハイオレイックサフラワー油(15%)、ハイオレイックヒマワリ油(15%)のようにトリオレインの多く含まれるトリグリセリド組成のものは冷凍すれば比較的短時間の保持で結晶化しやすい。ただし、これらは一般に高価な油脂であり、商業上の利用の点からはあまり有利とはいえない。また、これらの油脂を用いたエマルジョンは、0℃〜数℃程度の温度での保持で解乳化が生じ難いので、冷蔵設備しかもたない生産者には適さない。
【0012】
また、使用する油脂としては上昇融点19℃未満のものが好ましい。
上昇融点が、例えば、牛脂(融点45℃)、豚脂(融点38℃)、パーム油(融点35℃)、パームオレイン(パーム油を一段分別した液体側画分で融点20℃)、ヤシ油(融点24℃)、ヤシ硬化油(融点32℃)のように、19℃以上の油脂を用いると、衛生上の観点からせいぜい15℃以下、好ましくは0℃〜数℃という低温で行われることが多い食肉中へのエマルジョンの浸透が困難であり、結果的に良好なジューシー感を付与しがたい場合が多い。特に30℃程度以上の高融点の油脂であると、たとえインジェクションにより肉の内部へ強制注入しても調理後常温で放置され冷えた状態で食する場合、低融点の油脂の場合に比べてジューシー感に劣る。
【0013】
上昇融点は、試料油脂を毛細管ガラス管中に仕込み、水中で当該温度より約15℃低い温度から昇温させて、軟化して流動し始める温度を測定するもので、この方法による測定下限は、水が凍らない範囲から昇温を始める結果、融点10℃程度である。上昇融点が低くて測定できないものは、この発明における「上昇融点19℃未満」に該当する。
【0014】
上記のように、融点10℃以下の油脂については、厳密な意味での上昇融点は測定できない。しかし、このような場合、DSC(示差走査熱量計)での油脂の結晶吸熱ピークをとって融点と称する場合がある。例えば、DSCによると、上記ハイオレイックヒマワリ油は−0.5℃、ナタネ油は−14.8℃、サフラワー油は−13.5℃である。係るDSCでの融点が−15℃未満の低温の油脂、例えば−27℃の大豆油の場合は、冷凍により解乳化を図っても、エマルジョン中の油脂の結晶化が極めて遅く、解乳化による効果が小さい。
【0015】
単独油脂として最も好ましい油脂として、パームスーパーオレインを例示することができる。これは、通常、前述のパームオレイン(パーム軟質油とも称され、沃素価55〜60程度)をさらに分別(即ちパーム油を2段以上の多段で分別)した液体側画分として得られる、沃素価60〜75程度、融点10〜13℃、2位に多不飽和脂肪酸の結合するトリグリセリドが20〜30%、酸価0.1以下、AOM35時間以上の油脂である。このパームスーパーオレインのSOS(炭素数16〜18の脂肪酸により構成されるP0P/P0St/St0St等のグリセリド、P;パルミチン酸,O;オレイン酸、St;ステアリン酸)は、JAOCS,Vol62,No2(1985)p382の表7によると、24.3〜29.6%であり、「パームエース」(株式会社不二製油製)では11%程度である。なお、油化学便覧35〜36頁によると、SOSは大豆油中1.1%、綿実油中4.5%、豚脂中4.0%含まれているに過ぎない。
また、SOSの高い油脂、例えば、カカオ脂(SOS74%),イリッペ脂など公知のテンパリング型ハードバターやパーム油(SOS30%程度)を、SOSをほとんど含まない菜種油などの液体油と混合調合して、パームスーパーオレインと同様SOSを5%以上、好ましくはl0〜25%含有する油脂を調製することができる。
SOSグリセリドが5%以上含まれている油脂と熱凝固性蛋白とを用いたO/W型エマルジョンは、冷蔵温度乃至数℃の温度でも蛋白の解乳化防止作用に抗して容易に解乳化をおこさせることができる。またこの成分を含む油脂を内包させた食肉製品は、この成分を含まない液体油脂が喉にまとわりつくような喉ごしの食感があるのに対して、喉ごしの点でも優れている。ただしSOSは多過ぎると、上昇融点が高くなり、前述の欠点が生じうるので多過ぎないようにすることが望ましい。
【0016】
この発明においては、熱凝固性蛋白、油脂及び水を含むO/W型エマルジョンを食肉中に含ませる。O/W型エマルジョンの組成としては、水50〜90重量部(以下、部及び%は重量基準を意味する)、油脂10〜50部(好ましくは20〜40部)、熱凝固性蛋白1〜10部の範囲が適当である。
また、所望により、エマルジョン中には、熱凝固性蛋白の他、公知の添加剤、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、公知のピックル液成分、例えば、食塩、砂糖、硝酸塩、亜硝酸塩、その他の調味料、香辛料等を添加することができる。
【0017】
肉中にエマルジョンを含ませるには、漬け込み法(長時間浸漬槽などに静置する方法、混合による方法、マッサージ法、タンブリング法を含む)、強制注入(インジェクション)法のいずれでもよいが、家禽肉等油脂含量の少ない食肉は概して小さい塊が多く、係る家禽肉等小塊肉や肉片には前者の方法が適している。他方、後者の方法は、装置が大掛かりになる傾向がある他、肉中での分散の均一性確保のためインジェクションの後もマッサージ乃至タンブリングを施した方がよい場合が多い。
【0018】
次に、エマルジョンとしてはO/W型エマルジョンがよい。エマルジョンがW/O型(油中水型)エマルジョンであると、漬け込み法による肉の内部への浸透が悪い他、強制注入法による場合であっても、O/W型エマルジョンに比べて概してジューシー感がかなり低下する。
エマルジョンの調製は公知の方法で行うことができ、例えば、5℃〜20℃の水に熱凝固性蛋白を溶解させた後、所定量の油脂を撹拌しながら徐々に加えて行う。ここで用いられる撹拌機としては、プロペラ式撹拌機やホモミキサーなどがあげられるが、均一なエマルジョンを調製するためには高速回転(3000rpm以上)の乳化機を使用することが望ましい。また、必要に応じて、リン酸塩、調味料、香辛料などをO/W型エマルジョン組成物を調製した後に添加することも可能である。
【0019】
この発明において解乳化とは、O/W型エマルジョンとして乳化している油滴中の油脂が結晶化し凝集し水と油が分離した状態となり、乳化状態が壊れる、又は壊す現象をいう。そして、解乳化は加熱、冷却、冷凍、解凍によって促進されるが、特に、冷却・凍結、油脂の性状及び熱凝固性蛋白の組成による影響が大きい。解乳化は低温で保持することにより行うのが好ましい。解乳化させるのに要する冷却温度及び時間は、既述のとおり油脂の種類により異なり、例えば、前記パームスーパーオレインのエマルジョンでは5℃で数時間おけば解乳化するが、菜種油のエマルジョンでは解乳化に−25℃で1週間程度必要である。
必要なら、冷凍状態の食肉切片を顕微鏡観察により解乳化の進行を確認、制御することができる。
【0020】
解乳化のために、低温に冷却する対象は、0/W型エマルジョンを含ませた生の状態の製品そのままでもよいし、一旦予備フライした後の製品であってもよい。すなわち、業務用としてはセントラルキッチンなどで集中調理されるので生の状態でもよいが、家庭用小売り商品としては予備フライしてある方がレンジ、オープン等で温めるだけで食することができるので好まれる形態である。
解乳化のために食品に対して行なわれる冷却・冷凍処理は、通常の冷蔵庫の他、例えばスパイラルフリーザー等のエアブラスト方式の急速冷凍装置、スチールベルトフリーザー等のエアブラスト、コンタク卜方式併用型の急速冷凍装置、ショックフリーザー等の冷凍装置を用いることができるが、速やかに目標の温度まで冷却できるものであれば特に限定されない。
【0021】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を掲げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
20℃の水に対し、熱凝固性蛋白として粉末状大豆蛋白「サンラバー50」(不二製油株式会社製)を溶解させ、「T.Kホモミキサー」(特殊機化工業株式会社製)を用い5000rpmで撹拌しながら、その中に油脂として上昇融点13℃以下、2位多不飽和脂肪酸含量25%、SOS11%のパームスーパーオレイン「パームエース」(不二製油株式会社製)を徐々に加え、ポリリン酸ナトリウム、食塩を最後に加えて、その配合割合が次のA〜Cからなる3種類のO/W型エマルジョン組成物を調製した。
配合A:水88部、大豆蛋白5部、油脂5部、ポリリン酸ナトリウム1部、食 塩1部
配合B:水78部、大豆蛋白5部、油脂15部、ポリリン酸ナトリウム1部、 食塩1部
配合C:水63部、大豆蛋白5部、油脂30部、ポリリン酸ナトリウム1部、 食塩1部
次に、1片の重量を20〜30gにカッティングしたブロイラーのムネ肉1000gに対して上記3種類のO/W型エマルジョン組成物300gを加えて、タンブラー(ヒガシモトキカイ株式会社製)で浸漬を行なった。このときの条件は5℃で12rpm、3時間であった。
上記で得られた食肉加工品の重量は、配合A〜Cとも1300gであった。これらに市販されている唐揚げ粉(理研ビタミン株式会社製)をまぶして、170℃で3分間フライした。これらを5℃の冷蔵庫で一夜保存するか、又は、ショックフリーザーで−25℃に急速凍結し一晩凍結保存し、解乳化が生じていることを確認した後、いずれもオーブン(250℃、8分間)で再加熱し官能評価(ジューシー感)を行った。官能評価(ジューシー感)結果を次の5段階評価で表す。
評価1:非常にぱさつく
評価2:ややぱさつく
評価3:ややジューシー
評価4:かなりジューシー
評価5:非常にジューシー
官能評価結果は、5℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは、それぞれ評価3、評価4、評価5であった。また、−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのものも、それぞれ評価3、評価4、評価5であった。
【0023】
比較例1
大豆蛋白等熱凝固性蛋白を含まない組成として、水68部、油脂30部、ポリリン酸ナトリウム1部、食塩1部を配合したものを使用する他は実施例1と同様に行った。しかし、撹拌によって懸濁液とはなるものの、エマルジョンが形成されず、浸漬によっては肉中に浸透せず、官能評価結果は、5℃で一夜保存後のもの及び−25℃で一夜保存後のもの、いずれも評価1であった。
【0024】
比較例2
冷却による解乳化を行わない他は実施例1と同様に行った。いずれのものもエマルジョンが解乳化をせず乳化状態のまま含まれているので、ジューシーさが感じられず、官能評価結果は、すべて評価2であった。
【0025】
実施例2
油脂としてSOSをほとんど含まないハイオレイックヒマワリ油(上昇融点は測定できないが、DSCで−0.5℃、2位多不飽和脂肪酸含量15%)を用いる他は実施例1と同様に行った。
5℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは、いずれも解乳化が不十分であり、官能評価結果はいずれも評価2であったが、−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは解乳化が進み、それぞれ評価3、評価4、評価5であった。なお、タンブリング後の歩留まりは、配合A〜Cのいずれのものも1300gであった。
【0026】
実施例3
油脂として軟質パーム油を再分別して調製したパームダブルオレイン(上昇融点17℃、2位不飽和脂肪酸含量19%、SOS30%)を用いる他は実施例1と同様に行った。
タンブリング後の歩留まりは、配合Aのものが1300g、配合Bのものが1250g、配合Cのものが1200gであり、油脂含量が高くなるにつれて食肉中へのO/W型エマルジョンの浸透が不十分であった。官能評価結果は、5℃で一夜保存後の配合A〜Cのもの及び−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのものすべて評価3であった。
【0027】
比較例3
油脂として軟質パーム油(上昇融点20℃、2位不飽和脂肪酸含量14%、SOS30%)を用いる他は実施例1と同様に行った。
タンブリング後の歩留まりは、配合Aのものが1200g、配合B及びCのものが共に1100gであり、食肉中へのO/W型エマルジョンの浸透が十分でなく、解乳化は生じているものの、官能評価結果は、5℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは、それぞれ評価3、評価2、評価1であり、−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのものも、それぞれ評価3、評価2、評価1であり、上記パームスーパーオレイン「パームエース」(不二製油株式会社製)やハイオレイックヒマワリ油の場合と比べるとジューシー感に劣っていた。
【0028】
実施例4 油脂としてトウモロコシ油(上昇融点は測定できないが、DSCで−13℃、2位多不飽和脂肪酸含量80%、SOS2%)を用いる他は実施例1と同様に行った。
5℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは、いずれも解乳化が不十分であり、官能評価結果はいずれも評価2であったが、−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは解乳化が進み、いずれも評価3であった。なお、タンブリング後の歩留まりは、配合A〜Cのいずれのものも1300gであった。
【0029】
実施例5 油脂として大豆油(上昇融点は測定できないが、DSCで−27℃、2位多不飽和脂肪酸含量70〜80%、SOS1.1%)と菜種油(上昇融点は測定できないが、DSCで−12〜0℃、2位多不飽和脂肪酸含量45〜65%、SOSは殆どない)を等重量部混合調合した油脂(上昇融点は測定できないが、DSCで−20℃、2位多不飽和脂肪酸含量65%、SOS0.6%)を用いる他は実施例1と同様に行った。
5℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは、いずれも解乳化が不十分であり、官能評価結果はいずれも評価2であったが、−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのものは解乳化が進み、いずれも評価3であった。なお、タンブリング後の歩留まりは、配合A〜Cのいずれのものも1300gであった。
【0030】
比較例4 油脂として上記の大豆油を用いる他は実施例1と同様に行った。
5℃で一夜保存後の配合A〜Cのもの、及び−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのものとも、解乳化が観察されず、官能評価結果はすべての場合で評価2であった。なお、タンブリング後の歩留まりは、配合A〜Cのいずれのものも1300gであった。
【0031】
比較例5 油脂としてヤシ硬化油(上昇融点32℃、2位多不飽和脂肪酸殆どなし、SOS殆どなし)を用いる他は実施例1と同様に行った。
タンブリング後の歩留まりは、配合A〜Cのものいずれも1050gであり、食肉中へのO/W型エマルジョンの浸透が少なく、一応解乳化は生じているものの、官能評価結果は、5℃で一夜保存後の配合A〜Cのもの、−25℃で一夜保存後の配合A〜Cのもの、すべて評価1であった。
【0032】
比較例6 O/W型エマルジョンの注入法として、タンブラーで浸漬を行なうことに代えて強制注入(インジェクション)を行う他は比較例4と同様にヤシ硬化油を使用して行った。5℃で一夜保存後、解乳化は生じているものの、官能評価結果は配合A〜Cのものについて、揚げたて時はすべて評価3であったが、少し冷めると極端にジューシーさが失われ、すべて評価1であった。
【0033】
【発明の効果】
本発明によると、肉らしい歯ごたえ、優れたジューシー感、良好な喉ごし等食感に優れ、冷凍や加熱によって注入した油脂や水分がドリップとして流出することがない等歩留まりが高い、優れた品質の食肉加工品の製造方法を提供することができる。
Claims (4)
- 食肉中に熱凝固性蛋白、油脂及び水を含むO/W型エマルジョンを含ませた後、解乳化させる食肉加工品の製造方法であって、上記油脂が、2位に多不飽和脂肪酸の結合するトリグリセリドが60%以下であり、かつ、上昇融点19℃未満であることを特徴とする食肉加工品の製造方法。
- 食肉中に熱凝固性蛋白、油脂及び水を含むO/W型エマルジョンを含ませた後、解乳化させる食肉加工品の製造方法であって、上記油脂が、SOS(1,3位飽和、2位オレイルグリセリド)を5%以上含有することを特徴とする食肉加工品の製造方法。
- 食肉中に熱凝固性蛋白、油脂及び水を含むO/W型エマルジョンを含ませた後、解乳化させる食肉加工品の製造方法であって、上記油脂が、2位に多不飽和脂肪酸の結合するトリグリセリドが60%以下であり、上昇融点19℃未満であり、かつ、SOS(1,3位飽和、2位オレイルグリセリド)を5%以上含有することを特徴とする食肉加工品の製造方法。
- 低温で保持することにより解乳化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の食肉加工品の製造方法。
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JPH09266769A (ja) | 1997-10-14 |
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