JP3588947B2 - 2サイクルエンジンの制御装置 - Google Patents

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイドリング運転等の低速回転域における回転速度の安定化を図った2サイクルエンジンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両や船舶等に搭載される2サイクルエンジンのように、使用する回転域が低速から高速まで広範囲に及ぶ2サイクルエンジンは、主に高速回転域における出力特性を重視して掃気および排気のタイミングが設定されている。このため、アイドリング運転時のような低速回転域においては、掃気の流速が低下して掃気効率および排気効率が著しく劣化し、爆発行程における燃焼状態がまちまちとなる。
【0003】
即ち、低速回転域における1つのシリンダー内の燃焼状態に着目した場合、燃焼状態の良かった爆発行程ではシリンダー内に多量の排気ガスが排出され切らずに残留するので次回の爆発行程での燃焼条件が悪くなり、反対に燃焼状態の悪かった爆発行程ではシリンダー内に未燃焼の混合気が残留するので次回の爆発行程での燃焼条件が良くなるというように、良い燃焼条件と悪い燃焼条件がほぼ交互に発生する傾向がある。
【0004】
また、複数のシリンダーが1つの排気通路を共用した2サイクルエンジンでは、各シリンダーの排気行程が重複しているので、低速回転時において例えば1つのシリンダーの爆発行程での燃焼状態が良いと、そのシリンダーから排気通路に排出された高圧な排気ガスが他のシリンダーの排気ポートに逆流し、他のシリンダーの掃気効率を低めて燃焼条件を劣化させる場合がある。逆に、1つのシリンダーでの燃焼状態が悪ければ、そのシリンダーから排出される未燃焼ガスが他のシリンダーの排気ポートに逆流し、他のシリンダーの掃気効率を著しく高めて燃焼条件を必要以上に向上させてしまう場合がある。
【0005】
さらに、例えば3気筒の2サイクルエンジンの低速回転時において、第1シリンダー、第2シリンダー、第3シリンダーと連続して良好な燃焼状態が続いた場合には、クランク軸の回転速度が飛躍的に上昇するが、その次の一連のシリンダーの燃焼状態は連続して悪くなる傾向があるため、クランク軸の回転速度が急激に落ち込む。逆に、第1シリンダー、第2シリンダー、第3シリンダーと連続して悪い燃焼状態が続いた場合には、クランク軸の回転速度は急激に落ち込むが、その次の一連のシリンダーの燃焼状態は連続して良くなる傾向があるため、クランク軸の回転速度が急上昇する。したがって、クランク軸の回転速度が周期的に大きく変動する。
【0006】
以上のような現象のため、2サイクルエンジンの低速回転域においては、例えスロットル開度が一定であっても絶えずクランク軸の回転速度が不規則に変動し、不快な振動を伴うばかりかエンストが起こりやすく、燃費も悪化しやすい。
【0007】
このような低速回転域における不規則な回転変動を抑制するには、例えば回転速度に応じて排気ポートの高さを変化させる可変排気タイミングシステムを設け、低速回転域においては排気タイミングを遅め、高速回転域においては排気タイミングを早めるといった制御を行うことが望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような可変排気タイミングシステムは非常に複雑かつ高精度な機構を必要とし、2サイクルエンジンの製造コストを大幅に増大させるばかりでなく、エンジン重量の増加やメンテナンス性の劣化といったデメリットを招く。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、その第一の目的は、簡素かつ安価な構成によって低速回転域における回転速度の安定化を図ることのできる2サイクルエンジンの制御装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第二の目的は、複数のシリンダーが1つの排気通路を共用した2サイクルエンジンにおいて、各シリンダーの排気が相互に干渉することによる低速回転域での回転速度の不安定化を防止することにある。
【0011】
さらに、本発明の第三の目的は、複数のシリンダー持った2サイクルエンジンにおいて、順次爆発するシリンダーの燃焼状態が連続して良くなったり悪くなったりすることを防止し、低速回転域における回転速度の変動を抑えることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、請求項1に記載したように、爆発行程の位置を検出する爆発行程位置検出手段と、クランク軸の瞬間的な回転速度を検出する回転速度検出手段と、上記爆発行程位置検出手段および回転速度検出手段からの入力を受け、爆発行程におけるクランク軸回転速度を演算し、この回転速度を隣接する別な爆発行程におけるクランク軸回転速度と比較することによって回転速度上昇率を演算するとともに、この回転速度上昇率を燃焼状態として記憶し、この燃焼状態に応じて次回の爆発行程における予測燃焼状態を設定し、この予測燃焼状態に応じて予め設定しておいた燃焼条件マップに基づいて次回の爆発行程における燃焼条件を設定するようにプログラムされた制御手段とを備えてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、請求項2に記載したように、多気筒の2サイクルエンジンにおいて、各爆発行程における燃焼状態のデータを、その前後の爆発行程における燃焼状態に応じて補正するように前記制御手段をプログラムした
【0014】
さらに、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、請求項3に記載したように、各シリンダーが1つの排気通路を共用した多気筒の2サイクルエンジンにおいて、前後の爆発行程による排気通路圧力に応じて予測燃焼状態を補正するように前記制御手段をプログラムした。
【0015】
そして、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、請求項4に記載したように、多気筒の2サイクルエンジンにおいて、爆発行程の度に回転速度上昇率が増加する状態が所定回数連続した場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件を劣化させ、爆発行程の度に回転速度上昇率が減少する状態が所定回数連続した場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件を向上させるように前記制御手段をプログラムした。
【0017】
請求項1に記載したように2サイクルエンジンの制御装置を構成した場合、爆発行程位置検出手段および回転速度検出手段としては従来から2サイクルエンジンに備え付けられている気筒判別およびクランク軸回転速度検出用の機器類を流用することができるため、何等新しい機械的要素を付加することなく、制御手段のプログラムを追加設定するだけで各爆発行程における燃焼状態を判別して次回の爆発行程における燃焼条件を好ましいものに設定することができる。このため、簡素かつ安価な構成によって低速回転域における回転速度の安定化を図ることができる。
【0018】
また、請求項1に記載したように2サイクルエンジンの制御装置を構成することにより、爆発行程におけるクランク軸の回転速度を演算し、これを隣接する別な爆発行程におけるクランク軸回転速度と比較するという非常に簡素なプログラムによって燃焼状態を明確に判別し、次回の爆発行程における燃焼状態を予測することができる。そして、この予測燃焼状態に応じて予め設定しておいた燃焼条件マップに基づいて次回の爆発行程における燃焼条件が設定されるので、極端に良い燃焼状態や極端に悪い燃焼状態が発生しにくくなり、クランク軸回転速度の急激な落ち込みや上昇が緩和されて2サイクルエンジンの低速回転域における回転速度の安定化が図られる。
【0019】
さらに、請求項2に記載したように2サイクルエンジンの制御装置を構成することにより、爆発行程における燃焼状態のデータが、その前後のシリンダーの爆発行程における燃焼状態に応じて補正されるので、多気筒2サイクルエンジンのように各爆発行程の間隔が狭く、隣接する爆発行程によるクランク軸回転速度の変動が燃焼状態のデータに影響するような場合においても精度良く燃焼状態を判別することができ、次回の爆発行程における燃焼状態をより正確に予測して燃焼条件を設定することができる。
【0020】
そして、請求項3に記載したように2サイクルエンジンの制御装置を構成すれば、複数のシリンダーが共通の排気通路を持った2サイクルエンジンの場合には前後の爆発行程による排気通路圧力に応じて各シリンダーの次回の爆発行程における予測燃焼状態が補正されるので、次回の爆発行程における燃焼条件を一層正確に設定することができ、排気干渉によって低速回転域における回転速度が不安定になることを効果的に防止することができる。
【0021】
また、請求項4に記載したように2サイクルエンジンの制御装置を構成すれば、例えば各シリンダーでの燃焼状態が連続して良かった場合には、爆発の度にクランク軸の回転速度上昇率が増加する状態が連続するため、これを制御手段が記憶し、その状態が所定回数連続した場合には次に点火されるシリンダーの燃焼条件を劣化させるので、クランク軸の回転速度が急上昇することが防止される。
【0022】
反対に、各シリンダーでの燃焼状態が連続して悪かった場合には、爆発の度にクランク軸の回転速度上昇率が減少する状態が連続するため、これを制御手段が記憶し、その状態が所定回数連続した場合には次に点火されるシリンダーの燃焼条件を向上させるので、クランク軸の回転速度の落ち込みが小さくなる。
【0023】
このため、一連のシリンダーの燃焼状態が連続して良かったり悪かったりすることがなくなり、低速回転域における回転速度の周期的な変動を防止することができる。また、この制御は各爆発行程におけるクランク軸回転速度を比較するだけなので、制御手段のプログラム内容を簡素化することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、船外機のエンジン部分の横断面図であり、向かって左側が船舶の進行方向となっている。この船外機1は、2サイクルのエンジン2をエンジンカバー3の内部に備えている。エンジン2は、例えば3本のシリンダーを備えた直列3気筒の水冷式エンジンであり、そのクランク軸4が鉛直方向を向くように縦置きに搭載され、本発明に係る制御装置5が備えられている。
【0025】
エンジン2を構成する主な部材は、後方から順に、シリンダーヘッド6、シリンダーブロック7、クランクケース8、サージタンク9となっており、互いに図示しないボルト等で締結固定されている。また、クランクケース8とサージタンク9との接続部にはリードバルブ11が設けられ、サージタンク9の入口側には吸入空気量調整用のスロットルボディー12が設置されている。さらに、エンジン2の進行方向右側には電装品ケース13とスターターモーター14が設置され、進行方向左側にはオイルタンク15が設置されている。
【0026】
図2にも示すように、シリンダーブロック7には上から順に3本のシリンダー#1〜#3が形成されており、それらの周囲にはクランクケース8の内部に繋がる5つの掃気ポート16と1つの排気ポート17が形成されている。また、シリンダー#1〜#3の一側には上下に延びる排気通路18が形成されており、この排気通路18に各シリンダー#1〜#3の排気ポート17が繋がっている。つまり、このエンジン2は各シリンダー#1〜#3が1本の排気通路18を共用するように設計されている。
【0027】
なお、シリンダーヘッド6にはシリンダー#1〜#3に整合する燃焼室21が形成され、その中央部に点火プラグ22が配置されている。また、掃気ポート16には燃料噴射用のインジェクター(燃料噴射装置)23が設置されている。
【0028】
各シリンダー#1〜#3の内部にはピストン24が摺動自在に挿入されており、これらのピストン24のピストンピン25がクランク軸4のクランクピン26にコンロッド27を介して連結されている。シリンダー#1〜#3内におけるピストン24の往復運動はクランク軸4の回転運動に変換され、この回転がエンジン2の出力として取り出されて船外機1の図示しないプロペラに伝達される。
【0029】
図1および図3に示すように、エンジン2の上部にはフライホイールマグネト装置29が設置されている。この装置29は、シリンダーブロック7およびクランクケース8の上部に固定されたステーターコイル30と、クランク軸4の上端部に回転一体に設けられた椀状のフライホイール31と、このフライホイール31の外周部に鍔状に固着されたリングギヤ32と、フライホイール31の内周部に固着されたマグネット33とを備えて構成されている。
【0030】
フライホイール31はクランク軸4と共に回転し、そのマグネット33がステーターコイル30の周囲を周回することによって発電が行われ、船外機1全体の電源が賄われる。なお、エンジン2の始動時にはスターターモーター14のピニオンギヤ14a(図1参照)がリングギヤ32に噛合し、スターターモーター14の動力がクランク軸4に伝達されてエンジン2が始動される。
【0031】
ところで、図4にも示すようにフライホイール31の外周面には1個のトリガーポール35が固着されており、フライホイール31の周囲には3個のパルサーコイル36a,36b,36cが設置されている。各パルサーコイル36a,36b,36cは、図1に示すようにシリンダーブロック7やクランクケース8の上部に固定されており、120゜の角度間隔で設けられている。フライホイール31(クランク軸4)が回転すると、トリガーポール35が各パルサーコイル36a,36b,36cの内側を通過し、その都度各パルサーコイル36a,36b,36cからそれぞれ異なる3種類のトリガー信号A1,A2,A3(図9参照)が発信される。
【0032】
なお、図5に示すように、フライホイール31の外周面に120゜の円周間隔で第1〜第3のトリガーポール35a,35b,35cを固着し、フライホイール31の周囲に1個のパルサーコイル36を設置するようにしてもよい。この場合は、例えば第1トリガーポール35aの脇にマーキングポール37を設置し、このマーキングポール37の次に通過するトリガーポールが第1トリガーポール35aであるというように規定し、第1〜第3トリガーポール35a,35b,35cの通過によりトリガー信号A1,A2,A3が順に発信されるように設定しておく。
【0033】
図6の縦断面図および図7の行程サイクル図に示すように、3つのシリンダー#1〜#3はクランク軸4の1回転毎に120゜の位相間隔で上死点(TDC)を迎え、その後、爆発(膨脹)行程、排気および掃気行程、圧縮行程が続くサイクルとなっている。そして、前述のトリガー信号A1はシリンダー#1の上死点位置で発信され、トリガー信号A2はシリンダー#2の上死点位置で発信され、トリガー信号A3はシリンダー#3の上死点位置で発信されるように設定されている。従って、トリガーポール35およびパルサーコイル36a〜36cは、3つのシリンダー#1〜#3の爆発行程の位置を検出する爆発行程位置検出手段(請求項1に記載)として機能する。
【0034】
さらに、図1に示すように、例えばスターターモーター14の上部にクランク速度センサー39が設置されている。このクランク速度センサー39は、フライホイールマグネト装置29のリングギヤ32外周に近接して設けられており、クランク軸4と共に回転するリングギヤ32の歯の動きを感知することによって数度毎に信号を発信し、クランク軸4の瞬間的な回転速度を検出する回転速度検出手段(請求項1に記載)として機能する。
【0035】
なお、前記のトリガーポール35およびパルサーコイル36a〜36cは気筒判別用の機器として、また上記のクランク速度センサー39はクランク軸4の回転速度検出用の機器として従来から2サイクルエンジンに設けられているものである。
【0036】
一方、電装品ケース13の中には制御ユニット40が内蔵されている。さらに、制御ユニット40に内蔵される形で大気圧センサー41が設けられ、シリンダーヘッド6には冷却水温センサー42、スロットルボディー12にはスロットル開度センサー43、サージタンク9には吸気温度センサー44、排気通路18には排気通路圧力センサー45がそれぞれ設けられている。
【0037】
図8は、本発明に係る制御装置5の構成を示すブロック図である。ここに示すように、前記制御ユニット40は、この制御装置5の要部となり、かつ請求項1に記載した制御手段となる部分であり、その内部には入力インターフェース47と、マイコン等を用いたCPU48と、出力インターフェース49と、点火装置50等の機器類が内蔵されている。
【0038】
また、前に述べた爆発行程位置検出手段としてのパルサーコイル36a〜36cと、回転速度検出手段としてのクランク速度センサー39、そして大気圧センサー41、冷却水温センサー42、スロットル開度センサー43、吸気温度センサー44、排気通路圧力センサー45といったセンサー類も制御装置5を構成する要素であり、これらは制御ユニット40の入力インターフェース47に接続されている。
【0039】
さらに、制御ユニット40の出力インターフェース49には点火装置50を介してイグニッションコイル51が接続されると共に、インジェクター23、スロットルボディー12、燃料ポンプ(リレー)52、モニターやブザーといった表示手段53が接続されている。
【0040】
エンジン2の作動時において、制御ユニット40のCPU48は、パルサーコイル36a〜36cおよび各センサー39,41〜45から入力インターフェース47を介して入力されるクランク軸回転速度、大気圧、エンジン(冷却水)温度、スロットル開度、吸気温度、排気圧力等のデータを基に吸気量を演算し、各種補正を施した後に燃料噴射量や点火時期を演算し、出力インターフェース49を介してインジェクタ23やスロットルボディー12、燃料ポンプ52、点火装置50等に出力し、エンジン2の運転を制御する。なお、パルサーコイル36a〜36cから制御ユニット40に入力されるトリガー信号A1,A2,A3は、燃料噴射量や点火時期を設定するための基準信号として従来から用いられている。
【0041】
ところで、図9は、エンジン2の低速回転域における3つのシリンダー#1〜#3の内部圧力C1〜C3の変化と、エンジン回転速度Nの変化、そしてパルサーコイル36a〜36cから発信されるトリガー信号A1,A2,A3およびクランク軸回転速度信号Bを示している。
【0042】
前に述べたように、トリガー信号A1,A2,A3は各シリンダー#1〜#3の上死点位置で発信されるため、120゜の角度間隔で順次発信される。この実施形態では、例えば上死点前(BTDC)35゜の位置で一旦マイナス信号が発信され、さらに上死点前5゜の位置でプラス信号が発信されるようになっている。
【0043】
また、クランク軸回転速度信号Bは、クランク速度センサー39から発信されるパルス信号であり、このクランク信号Bのパルス幅や周期等を基に制御ユニット40のCPU48が演算したものがクランク軸回転速度N(以下、回転速度Nと略す)である。このNは低速回転域におけるクランク軸4の回転速度の変動を明確に示している。
【0044】
さらに、C1,C2,C3は、それぞれシリンダー#1〜#3の内部圧力の変化を示している(ここでは実験的に圧力センサー等を設けて測定している)。各シリンダー内部圧力C1〜C3は圧縮行程時に上昇し、ピストン24の上死点(TDC)にて最高になる。その後、爆発行程に移ってピストン24が下降するに連れ、シリンダー内容積が増大するためC1〜C3は下がるが、爆発時の燃焼状態によっては斜線で示すような燃焼圧力部kが発生する。
【0045】
この燃焼圧力部kの面積は燃焼状態の良否を表しており、燃焼圧力部kの面積が大きければ燃焼状態は良く、面積が小さければ燃焼状態は悪いと判断できる。そして、前にも述べたように燃焼状態の良かった爆発行程ではシリンダー内に多量の排気ガスが残留するので次回の爆発行程での燃焼条件が悪くなりやすく、燃焼状態の悪かった爆発行程ではシリンダー内に未燃焼の混合気が残留するので次回の爆発行程での燃焼条件が良くなりやすいため、良い燃焼条件と悪い燃焼条件がほぼ交互に発生する。従って、燃焼圧力部kの面積もほぼ交互に大きくなったり小さくなったり、あるいは燃焼圧力部kが発生したり発生しなかったりする。
【0046】
低速回転域における回転速度Nは、各シリンダー#1〜#3が圧縮行程に入る度に圧縮抵抗により低下し、その後の燃焼状態が良ければ(燃焼圧力部kの面積が大きければ)再び上昇する。このように、低速回転域における回転速度Nは、各シリンダー#1〜#3の圧縮行程時における圧縮抵抗と爆発行程時における燃焼状態(燃焼圧力部kの面積)とに影響されながら大幅に変動する。
【0047】
このように、低速回転域における回転速度Nは各シリンダー#1〜#3の燃焼状態によって大幅に変動するものであり、燃焼状態はほぼ交互に良かったり悪かったりするため、回転速度Nを監視することによって逆に各シリンダー#1〜#3の燃焼状態を判別し、次のサイクルでの燃焼状態を予測することができる。
【0048】
例えば、図9に示すように、シリンダー#1のある爆発行程をa1とし、これに続くシリンダー#2およびシリンダー#3の爆発行程を、それぞれb1,c1とするとともに、これらの爆発行程a1,b1,c1の上死点付近の所定角度域Gにおけるクランク軸4の回転速度をN1,N2,N3とした場合、爆発行程a1による回転速度N1の上昇率ΔN1はN2−N1の式で求まり、爆発行程b1による回転速度N2の上昇率ΔN2はN3−N2の式で求まり、爆発行程c1による回転速度N3の上昇率ΔN3はN1−N3(ここでのN1はシリンダー#1の爆発行程a2における回転速度となる)の式で求まる。
【0049】
この場合、爆発行程a1およびb1における燃焼状態には有効な燃焼圧力を示す燃焼圧力部kが見られず、良好な燃焼状態ではないため、回転速度N2はN1よりも低下しており、N3はN2よりもさらに低下している。このため、回転速度上昇率ΔN1およびΔN2はマイナスとなる。一方、爆発行程c1における燃焼状態にはやや有効な燃焼圧力を示す燃焼圧力部kが見られるため、回転速度N1は向上しており、回転速度上昇率ΔN3はプラスとなる。
【0050】
このように、各爆発行程における燃焼状態の良し悪しに応じて回転速度上昇率ΔNnが増減するため、シリンダーの内部圧力を直接測定するような高価な検出手段(圧力センサー等)を用いることなく、またシリンダー毎に特定の検出手段を設けることもなく、全部のシリンダーの燃焼状態を検出することができる。そして、各シリンダーにおける燃焼状態は、ほぼ交互に良くなったり悪くなったりするため、次回の爆発行程にける燃焼状態を予測することができる。
【0051】
そこで本発明の第1実施形態では、各爆発行程における回転速度Nnの上昇率ΔNnを演算することにより燃焼状態Xnを判別し、この燃焼状態Xnに応じて次回の爆発行程における燃焼条件Znを設定するように制御ユニット40(CPU48)をプログラムした。
【0052】
具体的には、シリンダー#1〜#3の各爆発行程における回転速度Nnをクランク軸回転速度信号Bを基準に演算し、この回転速度Nnを隣接する別な爆発行程における回転速度Nn+1またはNn−1と比較する(例えば前記のようにNn+1からNnを引く)ことによって回転速度上昇率ΔNnを演算する。
【0053】
そして、この回転速度上昇率ΔNnを各シリンダー#1〜#3の燃焼状態Xnとして記憶し、この燃焼状態Xnに応じて次回の爆発行程における予測燃焼状態Ynを設定し、この予測燃焼状態Ynに応じて予め設定しておいた燃焼条件マップに基づいて各シリンダー#1〜#3の次回の爆発行程における燃焼条件Znを設定するように制御ユニット40をプログラムした。
【0054】
これを図9に基づいて説明すると、例えばシリンダー#1の爆発行程a1における回転速度はN1であり、これに隣接する別な爆発行程はシリンダー#2の爆発行程b1となり、その回転速度はN2である。そして、N2からN1を引いた値ΔN1がシリンダー#1の爆発行程a1による回転速度上昇率として演算され、このΔN1が爆発行程a1の燃焼状態Xnおよび次回の予測燃焼状態Ynとして記憶される。そして、各Ynに対応した燃焼条件Znが設定される。
【0055】
また本発明の第1実施形態では、このエンジン2のように多気筒の2サイクルエンジンの場合には、各爆発行程における燃焼状態Xnのデータを、その前後の爆発行程における燃焼状態Xn−1,Xn+1に応じて補正するように制御ユニット40をプログラムした。
【0056】
例えば、シリンダー#1の爆発行程a2における燃焼状態がX2であるとすれば、このX2のデータが、その前に爆発したシリンダー#3の爆発行程c1における燃焼状態X1と、その後に爆発したシリンダー#2の爆発行程b2における燃焼状態X3とに応じて補正される。これは、3気筒以上の多気筒エンジンの場合には各爆発行程の間隔が狭くなるためであり、隣接する爆発行程による回転速度Nの変動が燃焼状態Xnのデータに影響を及ぼすからである。
【0057】
さらに本発明の第1実施形態では、このエンジン2のように各シリンダー#1〜#3が1つの排気通路18を共用した多気筒の2サイクルエンジンの場合には、前後の爆発行程による排気通路18内の圧力に応じて予測燃焼状態Ynを補正するように制御ユニット40をプログラムした。
【0058】
例えば、図9に示すシリンダー#1の特定の爆発行程a2について言えば、この爆発行程a2の前に爆発するシリンダー#3の爆発行程c1による排気通路圧力と、爆発行程a2の後に爆発するシリンダー#2の爆発行程b2による排気通路圧力とに応じてシリンダー#1の次回の爆発行程a3における予測燃焼状態Ynが補正される。
【0059】
これは、図7の行程サイクル図に示すように、3気筒以上の2サイクルエンジンの場合には、例えばシリンダー#1の掃気行程の始めの部分と終りの部分が、それぞれ前後に爆発するシリンダー#3とシリンダー#2の排気行程にオーバーラップしているためであり、シリンダー#3とシリンダー#2の燃焼状態が良い場合には排気通路18からシリンダー#1への排気ガスの逆流が起こり得るためである。
【0060】
図10に、本発明の第1実施形態で実行される上記一連の制御の流れをフローチャートで示す。このフローチャートにおいて、各ステップはS1,S2,…で示される。
【0061】
まず、S1においてトリガー信号A1,A2,A3が検出され、シリンダーが判別されると共に、その爆発行程の位置が検出される。次に、S2においてクランク軸回転速度信号Bが検出され、S3において上記信号A1,A2,A3およびBより、爆発行程における回転速度Nnが演算される。そして、S4においてスロットル開度が一定であるかどうか判断され、このS4がNOの場合はS1に戻ってS1〜S4のルーチンが反復され、YESの場合はS5に進む。
【0062】
S5では、回転速度Nnと、次の爆発行程における回転速度Nn+1との差ΔNnが回転速度上昇率として演算される。本実施形態のような3気筒エンジンの場合には、図9に示すように、例えば回転速度上昇率ΔN1の値がN2−N1となり、ΔN2の値がN3−N2となり、ΔN3の値がN1−N3となる。
【0063】
次にS6において上記回転速度上昇率ΔNnが燃焼状態Xnとして記憶される。本実施形態の場合は、回転速度上昇率ΔN1がX1、ΔN2がX2、ΔN3がX3としてそれぞれ記憶される。
【0064】
さらに、多気筒エンジンの場合には、前後の爆発行程での燃焼状態に応じて燃焼状態Xnが補正される(S7)。本実施形態のような3気筒エンジンの場合には、例えば燃焼状態X1がΔN1−y×ΔN3−z×ΔN2となり、燃焼状態X2がΔN2−y×ΔN1−z×ΔN3となり、燃焼状態X3がΔN3−y×ΔN2−z×ΔN1となる。なお、上記yおよびzは補正係数である。
【0065】
S8では、各燃焼状態Xnに応じて次回の爆発行程における予測燃焼状態Ynが設定される。前にも述べたように、燃焼状態の良い爆発行程の次は燃焼状態が悪くなりやすく、逆に燃焼状態の悪い爆発行程の次は燃焼状態が良くなりやすいため、予測燃焼状態Ynは燃焼状態Xnの程度に応じて自ずと定めることができる。
【0066】
また、本実施形態のように各シリンダー#1〜#3が共通の排気通路18を持ったエンジンの場合には、前後の爆発行程による排気通路18の圧力に応じて予測燃焼状態Ynが補正される(S9)。この補正の基本式は、Yn=AXn+BXn+1+CXn−1+DXn−2となる。
【0067】
なお、上記補正係数A〜Dはシリンダー毎に異なる値になる。これは、排気通路18に対する各シリンダー#1〜#3の位置によって前後のシリンダーの燃焼状態の影響量が異なってくるためである。例えば、シリンダー#1の場合はAがd×E、Bがe×E、Cがf×E、Dがg×Eとなり、シリンダー#2の場合はAがh×E、Bがi×E、Cがj×E、Dがk×Eとなり、シリンダー#3の場合はAがl×E、Bがm×E、Cがn×E、Dがo×Eとなる。なお、ここでのEは排気圧力による補正係数である。また、上記d〜oの値は、図11のマップに示すように回転速度Nによって個別に設定することができる。
【0068】
そして最後に、予測燃焼状態Ynに応じて次回の爆発行程における燃焼条件Znが設定される(S10)。このZnは、予め設定された燃焼条件マップに基づいて設定され、例えば点火時期や燃料噴射量を調節することにより実行される。
【0069】
図12および図13は、このような燃焼条件マップの一例を示している。図12の燃焼条件マップは、予測燃焼状態Y1〜Ynならびに回転速度N1〜Nnに対応して点火時期PをP11〜Pnnまで個別に設定したものである。また、図13の燃焼条件マップは、予測燃焼状態Y1〜Ynならびに回転速度N1〜Nnに応じて燃料噴射量QをQ11〜Qnnまで個別に設定したものである。
【0070】
予測燃焼状態Ynが良い場合には、回転速度Nnの急上昇が起こり得るため、これを避けるために次回の燃焼条件Znを劣化させる必要がある。よって点火時期Pの遅角または失火、ならびに燃料噴射量Qの減量またはカット等を行って燃焼条件Znを劣化させる。
【0071】
一方、予測燃焼状態Ynが悪い場合には、回転速度Nnの急激な落ち込みが起こり得るため、これを避けるために次回の燃焼条件Znを向上させる必要がある。よって点火時期Pの進角または多重点火、ならびに燃料噴射量Qの増量等を行って燃焼条件Znを劣化させる。
【0072】
このように、本発明の第1実施形態に基づく制御を行えば、各シリンダー#1〜#3の爆発行程における燃焼状態を判別すると同時に次回の爆発行程における燃焼条件を適確に予測し、これを好ましいものに設定することができるため、極端に良い燃焼状態や極端に悪い燃焼状態が発生しにくくなり、回転速度Nの急激な上昇や落ち込みが緩和されてエンジン2の低速回転域における回転速度Nの安定化を図ることができる。
【0073】
しかも、この制御装置5は、従来から設置されている気筒判別用のトリガーポール35およびパルサーコイル36a〜36c、ならびにクランク軸4の回転速度検出用のクランク速度センサー39といった機器類を爆発行程位置検出手段および回転速度検出手段として流用するとともに、制御ユニット40にプログラムを追加設定しただけなので、エンジン2に新しい機械的要素を一切付加することなく、非常に簡素かつ安価な構成によって低速回転域における回転速度Nの安定化を達成することが可能である。
【0074】
また、爆発行程における回転速度を演算し、これを隣接する別な爆発行程における回転速度と比較するという非常に簡素なプログラムであるため、制御ユニット40(CPU48)の高性能化が要求されることもなく、この面でのコストアップも考えられない。
【0075】
さらに、多気筒の2サイクルエンジンにおいては、爆発行程における燃焼状態Xnのデータが、その前後の爆発行程における燃焼状態Xn−1,Xn+1に応じて補正されるようにプログラムされているので、このエンジン2のように多気筒で各爆発行程の間隔が狭く、隣接する爆発行程によるクランク軸回転速度Nの変動が燃焼状態Xnのデータに影響するような場合においても精度良く燃焼状態Xnを判別することができ、次回の爆発行程における燃焼状態Ynをより正確に予測して燃焼条件Znを設定することができる。
【0076】
しかも、このエンジン2のように3つのシリンダー#1〜#3が1つの排気通路18を共用しているものでも、前後の爆発行程による排気通路圧力に応じて各シリンダー#1〜#3の次回の爆発行程における予測燃焼状態Ynが補正されるので、次回の爆発行程における燃焼条件Znを一層正確に設定することができ、排気干渉によって低速回転域における回転速度Nが不安定になることを効果的に防止することができる。
【0077】
ところで、図14は、エンジン2の回転変動の一例を示すグラフであり、縦軸が回転速度N、横軸が時間tを表している。前に述べたように、基本的には(他のシリンダーの影響もあるが)燃焼状態の悪かったシリンダーは次のサイクルで燃焼状態が良くなることが多く、反対に燃焼状態の良かったシリンダーは次のサイクルで燃焼状態が悪くなることが多いため、例えばシリンダー#1→#2→#3と連続して燃焼状態が良かった場合には、次のサイクルでシリンダー#1→#2→#3と連続して燃焼状態が悪くなる可能性が高い。
【0078】
このため、図14のαのような状態とβのような状態が交互に繰り返されてしまう場合がある。αは各シリンダーの良い燃焼状態および悪い燃焼状態が連続して発生しない区間であり、βは良い燃焼状態および悪い燃焼状態がそれぞれ連続して発生する区間である。αとβは、その平均回転速度はほぼ同一だが、βは回転変動が大きく、回転がスムーズでないことに加え、回転速度Nが極度に低下する瞬間があり、エンストの恐れがある。このため、アイドリング時の回転速度Nを高めに設定せざるを得ず、燃費や静粛性の劣化を余儀なくされる。
【0079】
そこで、本発明の第2実施形態では、このエンジン2のように多気筒の2サイクルエンジンの場合において、爆発行程の度に回転速度上昇率ΔNnが増加する状態が所定回数連続した場合、つまり燃焼状態が連続して良かったと見なされる場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件Znを劣化させ、爆発行程の度に回転速度上昇率ΔNnが減少する状態が所定回数連続した場合、つまり燃焼状態が連続して悪かったと見なされる場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件Znを向上させるように制御ユニット40をプログラムした。
【0080】
より具体的には、前述の燃焼状態Xnの判別後(または予測燃焼状態Ynの設定後)からn回(例えばこのエンジン2のように3つのシリンダー#1〜#3を備えている場合には2回)連続して燃焼状態が良かった場合には、次のシリンダーの燃焼状態Znを劣化させて回転速度の上昇を抑え、反対に燃焼状態Xnの判別後(または予測燃焼状態Ynの設定後)からn回連続して燃焼状態が悪かった場合には、次のシリンダーの燃焼状態Znを向上させて回転速度の低下を抑えるようにした。
【0081】
図15に、本発明の第2実施形態で実行される制御の第1実施例をフローチャートで示す。このフローチャートは、各シリンダーにおける燃焼状態が連続して良かった場合の制御例を示している。なお、このフローチャートにおいて、各ステップはS11,S12,…で示される。
【0082】
まず、S11においてトリガー信号A1,A2,A3が検出され、シリンダーが判別されると共に、その爆発行程の位置が検出される。次に、S12においてクランク軸回転速度信号Bが検出され、さらにS13において上記信号A1,A2,A3およびBより、爆発行程における回転速度Nnと回転速度上昇率ΔNnが演算され、記憶される。
【0083】
そして、S14においてΔNnが所定回数(例えば2回)連続して向上したかどうか判断され、S14がYESであればS15に進んでスロットル開度が一定であるかどうか判断され、S15がYESであればS16に進む。
【0084】
S16は、場合によっては省くこともできるステップであるが、ここでは次回点火されるシリンダーが#1であるかどうかが判定され、YESであればS17に進んで次回点火されるシリンダー#1の燃焼条件Znが劣化するように設定される。この燃焼条件Znの劣化は、例えば点火時期の遅延や失火、あるいは燃料噴射量を減量あるいはカットする等して実行される。なお、S14〜16がNOの場合は全てS11に戻るようにプログラムされている。
【0085】
S16において次回点火されるシリンダーが#1である場合にのみS17に進んで燃焼条件を劣化させるように設定したのは、シリンダーが#1が排気通路18の最も上流側に位置しているためであり、このシリンダー#1の燃焼条件の劣化させた際に出る未燃焼ガスが、他のシリンダー#2および#3内に逆流して外部に排出されにくくなるので大気汚染を阻止できるからである。
【0086】
このような制御を行えば、シリンダーが#1〜#3の燃焼状態が連続して良くなることがなくなり、回転速度Nの急上昇が防止される。そして、燃焼条件を劣化させたシリンダーでは次サイクルでの新気充填効率が良くなるので燃焼状態が向上し、連続燃焼不良の防止にもつながる。
【0087】
図16に、本発明の第2実施形態で実行される制御の第2実施例をフローチャートで示す。このフローチャートは、各シリンダーにおける燃焼状態が連続して悪かった場合の制御例を示している。なお、このフローチャートにおいて、各ステップはS21,S22,…で示される。
【0088】
まず、S21においてトリガー信号A1,A2,A3が検出され、シリンダーが判別されると共に、その爆発行程の位置が検出される。次に、S22においてクランク軸回転速度信号Bが検出され、さらにS23において上記信号A1,A2,A3およびBより、爆発行程における回転速度Nnと回転速度上昇率ΔNnが演算され、記憶される。
【0089】
そして、S24においてΔNnが所定回数(例えば2回)連続して減少したかどうか判断され、S24がYESであればS25に進んでスロットル開度が一定であるかどうか判断され、S25がYESであればS26に進んで次回点火されるシリンダー#1の燃焼条件Znが向上するように設定される。この燃焼条件Znの向上は、例えば点火時期の進角または多重点火、あるいは燃料噴射量の増量等によって実行される。なお、S24,S25がNOの場合はS21に戻るようにプログラムされている。従って、シリンダー#1〜#3の燃焼状態が連続して悪くなることがなくなり、回転速度Nの急激な落ち込みが回避される。
【0090】
このように、本発明の第2実施形態の第1実施例および第2実施例に基づく制御を行えば、一連のシリンダー#1〜#3の燃焼状態が連続して良くなったり悪くなったりすることがなくなり、低速回転域における回転速度Nの周期的な変動を防止することができる。また、この制御は各爆発行程における回転速度を比較して次の燃焼条件Znを設定するだけであり、前述の第1実施形態の制御のように予測燃焼状態Ynを設定するといった必要がないため、この制御(第2実施形態の第1実施例および第2実施例)だけを実行するようにすれば制御ユニット40(CPU48)のプログラム内容を大幅に簡素化することができる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、爆発行程の位置を検出する爆発行程位置検出手段と、クランク軸の瞬間的な回転速度を検出する回転速度検出手段と、上記爆発行程位置検出手段および回転速度検出手段からの入力を受け、爆発行程におけるクランク軸回転速度を演算し、この回転速度を隣接する別な爆発行程におけるクランク軸回転速度と比較することによって回転速度上昇率を演算するとともに、この回転速度上昇率を燃焼状態として記憶し、この燃焼状態に応じて次回の爆発行程における予測燃焼状態を設定し、この予測燃焼状態に応じて予め設定しておいた燃焼条件マップに基づいて次回の爆発行程における燃焼条件を設定するようにプログラムされた制御手段とを備えてなることを特徴とするものである。
【0092】
このように構成した場合、従来からエンジンに設けられている気筒判別およびクランク軸回転速度検出用の機器類を爆発行程位置検出手段および回転速度検出手段として流用するとともに、制御手段のプログラムを追加設定するだけで、エンジンに新しい機械的要素を一切付加することなく、各爆発行程における燃焼状態を判別して次回の爆発行程における燃焼条件を好ましいものに設定することができる。このため、簡素かつ安価な構成によって低速回転域における回転速度の安定化を図ることができる。
【0094】
また、このようにすれば、非常に簡素なプログラムによって燃焼状態を明確に判別し、次回の爆発行程における燃焼状態を予測することができる。そして、この予測燃焼状態に応じて予め設定しておいた燃焼条件マップに基づいて次回の爆発行程における燃焼条件が設定されるので、極端に良い燃焼状態や極端に悪い燃焼状態が発生しにくくなり、クランク軸回転速度の急激な上昇や落ち込みが緩和されて2サイクルエンジンの低速回転域における回転速度の安定化が図られる。
【0095】
さらに、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、多気筒の2サイクルエンジンにおいて、各爆発行程における燃焼状態のデータを、その前後の爆発行程における燃焼状態に応じて補正するように前記制御手段をプログラムしたので、各爆発行程の間隔が狭くて隣接する爆発行程でのクランク軸回転速度の変動が燃焼状態のデータに影響するような多気筒エンジンの場合においても精度良く燃焼状態を判別することができ、次回の爆発行程における燃焼状態をより正確に予測して燃焼条件を設定することができる。
【0096】
そして、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、各シリンダーが1つの排気通路を共用した多気筒の2サイクルエンジンにおいて、前後の爆発行程による排気通路圧力に応じて予測燃焼状態を補正するように前記制御手段をプログラムしたため、次回の爆発行程における燃焼条件を一層正確に設定することができ、排気干渉によって低速回転域における回転速度が不安定になることを効果的に防止することができる。
【0097】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの制御装置は、多気筒の2サイクルエンジンにおいて、爆発行程の度に回転速度上昇率が増加する状態が所定回数連続した場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件を劣化させ、爆発行程の度に回転速度上昇率が減少する状態が所定回数連続した場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件を向上させるように前記制御手段をプログラムしたので、一連のシリンダーの燃焼状態が連続して良くなったり悪くなったりすることがなくなり、低速回転域における回転速度の周期的な変動を防止することができる。また、この制御は各爆発行程におけるクランク軸回転速度を比較して次の燃焼条件を設定するだけなので、制御手段のプログラム内容を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】船外機のエンジン部分の横断面図。
【図2】図1の II−II線に沿うシリンダーブロックの縦断面図。
【図3】図1の III−III線に沿うフライホイールマグネト装置の縦断面図。
【図4】フライホイールマグネト装置の平面図。
【図5】フライホイールマグネト装置の別な実施例を示す平面図。
【図6】エンジンの各シリンダーボアにおける行程を示す縦断面図。
【図7】エンジンの行程サイクル図。
【図8】本発明に係る制御装置の構成を示すブロック図。
【図9】エンジンの低速回転域におけるシリンダー内部圧力の変化と、エンジン回転速度およびトリガー信号ならびにクランク軸回転速度信号をグラフで示した図。
【図10】本発明の第1実施形態で実行される一連の制御の流れをフローチャートで示した図。
【図11】排気通路の圧力に応じて予測燃焼状態を補正する場合の補正係数を回転速度に応じたマップで表した図。
【図12】予め設定した燃焼条件マップの一例を示す図。
【図13】予め設定した燃焼条件マップの一例を示す図。
【図14】エンジンの回転変動の一例をグラフで示した図。
【図15】本発明の第2実施形態で実行される制御の第1実施例をフローチャートで示した図。
【図16】本発明の第2実施形態で実行される制御の第2実施例をフローチャートで示した図。
【符号の説明】
1 船外機
2 エンジン
4 クランク軸
5 制御装置
18 排気通路
#1〜#3 シリンダー
35 爆発行程位置検出手段としてのトリガーポール
36a〜36c 爆発行程位置検出手段としてのパルサーコイル
39 回転速度検出手段としてのクランク速度センサー
40 制御手段としての制御ユニット
Nn クランク軸回転速度
ΔNn 回転速度上昇率
Xn 燃焼状態
Yn 予想燃焼状態
Zn 燃焼条件

Claims (4)

  1. 爆発行程の位置を検出する爆発行程位置検出手段と、クランク軸の瞬間的な回転速度を検出する回転速度検出手段と、上記爆発行程位置検出手段および回転速度検出手段からの入力を受け、爆発行程におけるクランク軸回転速度を演算し、この回転速度を隣接する別な爆発行程におけるクランク軸回転速度と比較することによって回転速度上昇率を演算するとともに、この回転速度上昇率を燃焼状態として記憶し、この燃焼状態に応じて次回の爆発行程における予測燃焼状態を設定し、この予測燃焼状態に応じて予め設定しておいた燃焼条件マップに基づいて次回の爆発行程における燃焼条件を設定するようにプログラムされた制御手段とを備えてなることを特徴とする2サイクルエンジンの制御装置。
  2. 多気筒の2サイクルエンジンにおいて、各爆発行程における燃焼状態のデータを、その前後の爆発行程における燃焼状態に応じて補正するように前記制御手段をプログラムした請求項1に記載の2サイクルエンジンの制御装置。
  3. 各シリンダーが1つの排気通路を共用した多気筒の2サイクルエンジンにおいて、前後の爆発行程による排気通路圧力に応じて予測燃焼状態を補正するように前記制御手段をプログラムした請求項1および2のいずれかに記載の2サイクルエンジンの制御装置。
  4. 多気筒の2サイクルエンジンにおいて、爆発行程の度に回転速度上昇率が増加する状態が所定回数連続した場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件を劣化させ、爆発行程の度に回転速度上昇率が減少する状態が所定回数連続した場合には、次に点火されるシリンダーの燃焼条件を向上させるように前記制御手段をプログラムした請求項1〜3のいずれかに記載の2サイクルエンジンの制御装置。
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