JP3643250B2 - エンジンの失火検出装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、クランクシャフトの角速度の変動に基づいてエンジンの失火を検出するようにしたエンジンの失火検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの失火(ミスファイヤ)は、エンジンの燃焼室に吸入された混合気が完全に燃焼しないことを意味する。このため、失火が発生すると、未燃焼の混合気が排気ガスと共にエンジンから排出され、エンジンの出力低下や回転変動を招くという問題がある。そこで、この問題に対処するために、エンジンの失火を検出するようにした失火検出装置が種々提案されている。
【0003】
実開平4−19643号公報は、この種の失火検出装置の一例を開示する。この失火検出装置は、ノッキング制御等により点火時期が遅角されるのに伴い、図6に示すように、最大燃焼圧力の発生時期が実線で示す状態から1点鎖線で示す状態へ遅角されたときに、その遅角の影響を抑え、クランクシャフトの回転角変動に基づいて行われる失火の判定精度を高めるようにしている。そのために、この失火検出装置では、複数気筒を有するエンジンにおいて、各気筒に対応した基準クランク角位置で基準信号を発するクランク角センサと、この基準クランク角位置からの回転角度を検出するためのリングギアセンサとを設けている。そして、コントロールユニットは、基準クランク角位置を基準として計測が開始される計測開始クランク角位置から計測が終了する計測終了クランク角位置までクランクシャフトが回転するのに要する所要時間を各気筒毎に順次に計測し、それら計測される所要時間の変動に基づいて失火を判定し、計測開始クランク角位置及び計測終了クランク角位置を、点火時期の違いに応じて可変的に設定するようにしている。
【0004】
失火検出のためにコントロールユニットが行う具体的な処理内容を図8にフローチャートに示す。即ち、ステップ500では、種々の条件が失火判定の可能な診断領域内にあるか否かを判断する。診断領域内にない場合、ステップ502で、所要時間Tの計測を停止し、更にステップ513で、後述するTRAVMX等の値をクリアする。診断領域内にある場合、ステップ503で、所要時間Tの計測を開始する。
図7に示すように、120°CA毎にクランク角センサから出力されるREF信号が検出された後、リングギアセンサの出力パルスのカウントが開始され、計測開始クランク角位置に対応する個数(例えばP1個)の歯数が検出された時点でプリセットカウンタにより第1のトリガが出力される。更に、REF信号の検出から計測終了クランク角位置に対応する個数(例えばP2個)の歯数が検出された時点でプリセットカウンタにより第2のトリガが出力される。そして、第1のトリガから第2のトリガまでの期間が所要時間Tとして計測される。ここでは、エンジンの気筒数をNとし、最新の所要時間T1、その前の所要時間T2、更にその前の所要時間T3、・・・所要時間T(N+1)というように(N+1)個のデータが、順次更新される形でメモリに保存され、それらが失火判定のために使用される。
その後、ステップ504で、複数の所要時間T1〜T(N+1)のデータに基づいてラフネス度ROを逐次演算する。ラフネス度ROは、所要時間Tの偏差を所要時間Tの平均値で除したものである。ラフネス度ROは、所要時間Tが計測される度、即ちREF信号が出力される度に演算される。従って、個々の気筒番号nのREF信号について演算されたラフネス度ROは各気筒のラフネス度RO(n)として定義され、点火順序に従ったラフネス度RO(n)が順次求められる。ラフネス度ROは、クランクシャフトの角速度に変動が全く無ければ「0」となる。失火があれば、対応する気筒のラフネス度ROは負の値を示し、その他の気筒のラフネス度ROは相対的に正の値を示すことになる。
次に、ステップ505で、ラフネス度RO(n)の絶対値の移動平均TRAVLUを、REF信号が出力される度に演算する。
次に、ステップ506で、移動平均TRAVLUをデータ収集期間中の過去の最大値TRAVMXと比較し、これを上回った場合には、新たな最大値TRAVMXとしてメモリ内容を更新する。
その後、ステップ507で、各気筒nの正負規則性を示す指標FU(n)を演算する。即ち、ある気筒nのラフネス度RO(n)が正であれば指標FU(n)をインクリメントし、負であれば指標FU(n)はデクリメントする。ある気筒nで失火が繰り返し起こるときには、その気筒nの指標FU(n)は負側に大きく減少することになる。
次に、ステップ508で、リングギアの欠け歯を検出する。更に、ステップ509で、演算された移動平均TRAVLUの値が所定の基準値TRAVCO以上であるか否かを判断する。この判断が肯定の場合のみ、ステップ510で、第1のパラメータMMF1の値をインクリメントする。
そして、ステップ511で、所定のデータ収集期間が経過したか否かを判断する。このデータ収集期間が経過する場合のみ、ステップ512で、故障判定、即ち失火判定を行う。この判定は、前述したラフネス度ROから求められる移動平均TRAVLUの最大値TRAVMX及び指標FU(n)の値に基づいて行われる。その後、ステップ513で、TRAVMX等の値をクリアし、その後の処理を一旦終了する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の失火検出装置では、失火判定を行うために、ラフネス度ROが参照される。このラフネス度ROが、第1のトリガから第2のトリガまでの所要時間Tにつき、今回の所要時間Tとその1サイクル前(720°CA前)の前回の所要時間Tとの偏差を所要時間Tの平均値で除したものとして各気筒毎に定義される。従って、ラフネス度ROにつき、正常時の値と失火時の値との間で区別がつき難く、これにより、ラフネス度ROから求められる最大値TRAVMX及び指標FU(n)についても正常時の値と失火時の値との間で区別がつき難くなる傾向にあった。このため、失火の判定精度が低下するおそれがあった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、クランクシャフトの角速度の変動に基づいて失火を判定すると共に点火時期の違いに応じて失火を判定するものにおいて、失火の検出精度を向上させることを可能にしたエンジンの失火検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、点火時期が制御される複数気筒を有するエンジンのクランクシャフトの角速度を所定の回転角度毎に検出するための角速度検出手段と、所定の回転角度毎に検出される角速度に基づいて各気筒の燃焼行程に対応する回転変動量を算出するための回転変動量算出手段と、今回算出される回転変動量と今回より360°CA前に算出された回転変動量との偏差を所定の判定値と比較することにより各気筒の燃焼行程に対応する失火を判定するための失火判定手段とを備えたエンジンの失火検出装置において、回転変動量算出手段は、各気筒の燃焼行程において異なる二つの時期に検出される角速度の差を回転変動量として算出することと、異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方を制御される点火時期の違いに応じて補正するための時期補正手段と、前記異なる二つの角速度が検出される時期は、前記角速度が極小となる時期及び極大となる時期であることと、前記時期補正手段により補正される時期は、前記角速度が極大となる方の時期であることと、を備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記の発明の構成によれば、点火時期が制御されることにより、各気筒の燃焼行程における燃焼圧力の極大時期が変わる。ここで、角速度検出手段により検出される個々の角速度に基づいて各気筒の燃焼行程に対応する回転変動量が回転変動量算出手段により算出される。そして、今回算出される回転変動量と今回より360°CA前に算出された回転変動量との偏差が所定の判定値と比較されることにより、各気筒の燃焼行程に対応する失火が失火判定手段により判定される。例えば、今回算出される回転変動量が正常時のものであり、今回より360°CA前に算出された回転変動量も正常時のものである場合には、回転変動量の偏差が相対的に小さくなり、正常判定がなされることになる。一方、今回算出される回転変動量が失火時のものであり、今回より360°CA前に算出された回転変動量が正常時のものである場合には、回転変動量の偏差が相対的に大きくなり、失火判定がなされることになる。
特に、この発明では、各気筒の燃焼行程において異なる二つの時期に検出される角速度の差が回転変動量として回転変動量算出手段により算出される。そして、上記異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方が点火時期の違いに応じて時期補正手段により補正される。
従って、この発明では、各気筒に対応して算出される回転変動量が、異なる二つの角速度の差によって明確に定義されることになる。しかも、各気筒に対応した回転変動量を算出するために参照される異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方が、点火時期の違いに応じて補正される。例えば、点火時期が遅角されるか否かにより角速度の検出時期が補正される。このため、それら二つの角速度が検出される時期が、点火時期の違いにより変わる燃焼圧力の極大時期に応じて補正され、各気筒の間で均質に定義された回転変動量が失火判定のために使われることになる。
【0009】
【0010】
上記の発明の構成によれば、極小の角速度と極大の角速度とにより回転変動量が算出され、その極大の角速度が検出される時期が、点火時期の違いに応じて補正されることになる。
従って、各気筒に対応して算出される回転変動量が、極小の角速度と極大の角速度との差によって明確に定義されることになる。しかも、その極大の角速度が点火時期の違いに応じて補正される。このため、極大の角速度が検出される時期が、点火時期の違いにより変わる燃焼圧力の極大時期に応じて補正されることになり、各気筒の間で均質に定義された回転変動量が失火判定のために使われることになる。
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明(請求項1〜3に係る発明)のエンジンの失火検出装置を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、自動車に搭載されたエンジンシステムに係る概略構成を示す。エンジン1は周知の構造を有する多気筒タイプのものであり、この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の6つの気筒を有するものである。エンジン1は、吸気通路2を通じて供給される燃料及び空気、即ち可燃混合気を、各気筒#1〜#6の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気ガスを排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を駆動させクランクシャフト4を回転させて動力を得るものである。
【0015】
吸気通路2に設けられたスロットルバルブ5は、同通路2を流れて各気筒#1〜#6に吸入される空気量(吸気量)Qaを調節するために開閉されるものである。このバルブ5は、運転席に設けられたアクセルペダル6の操作に連動して作動するものである。スロットルバルブ5に対して設けられたスロットルセンサ21は、このバルブ5の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。吸気通路2に設けられた吸気圧センサ22は、スロットルバルブ5より下流の吸気通路2における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。
【0016】
各気筒#1〜#6に対応する吸気ポートに設けられた複数のインジェクタ7は、各気筒#1〜#6に対応して燃料を噴射供給するためのものである。これらインジェクタ7は、共通するデリバリパイプ8に設けられる。デリバリパイプ8は、燃料タンク9から圧送される燃料を、各インジェクタ7へ分配するためのものである。
【0017】
各気筒#1〜#6に対応してエンジン1に設けられた複数の点火プラグ10は、ディストリビュータ11から分配される点火信号を受けて作動する。ディストリビュータ11は、イグナイタ12から出力される高電圧をクランクシャフト4の回転角、即ち「クランク角(°CA)」の変化に対応して各点火プラグ10へ分配するものである。各点火プラグ10の作動時期、即ち点火時期は、イグナイタ12から出力される高電圧の出力タイミングにより決定される。従って、イグナイタ12を制御することにより、各気筒#1〜#6における各点火プラグ13による点火時期が制御される。
【0018】
排気通路3に設けられた酸素センサ23は、各気筒#1〜#6から同通路3へ排出される排気ガス中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。
【0019】
ディストリビュータ11に設けられた回転速度センサ24は、クランクシャフト4の角速度、即ち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。ディストリビュータ11には、クランクシャフト4の回転に連動して回転すると共に外周に複数の歯を有するロータ(図示しない)が内蔵される。回転速度センサ24は、このロータと、ロータの外周に対向配置された電磁ピックアップ(図示しない)とを備える。このロータの回転に伴って電磁ピックアップが各歯の通過を検出する毎に、回転速度センサ24からは一つのパルス信号が出力される。この実施の形態では、クランク角が30°CA進む毎に、回転速度センサ24から一つのパルス信号が出力されることになる。この実施の形態では、回転速度センサ24により、クランクシャフト4の角速度を所定の回転角度毎、即ち「30°CA」毎に検出するための角速度検出手段が構成される。
同じく、ディストリビュータ11には、ロータの回転に応じてクランク角の変化を所定の割合で検出するための気筒判別センサ25が設けられる。この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の全てが順次に燃焼行程を終了するまでにクランクシャフト4が2回転するものとして、720°CA毎の割合で、気筒判別センサ25から基準位置信号GSとしての一つのパルス信号が出力されるようになっている。
エンジン1に設けられ水温センサ26は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。
【0020】
この実施の形態において、上記のスロットルセンサ21、吸気圧センサ22、酸素センサ23、回転速度センサ24、気筒判別センサ25及び水温センサ26等は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段を構成する。
【0021】
前述した各インジェクタ7、デリバリパイプ8及び燃料タンク9等は燃料供給装置を構成する。燃料タンク9はガソリン等の燃料を貯留するものである。燃料タンク9に内蔵された電動式の燃料ポンプ13は、同タンク9内の燃料を汲み上げ、吐出するものである。燃料ポンプ13の吐出ポート側に接続された燃料パイプ14は、燃料フィルタ15を介してデリバリパイプ8に接続される。ここで、燃料ポンプ13が作動することにより、燃料タンク9内の燃料は、同ポンプ13から燃料パイプ14へと吐出され、燃料フィルタ15で異物が除去された後、デリバリパイプ8へと圧送され、各インジェクタ7へ分配される。各インジェクタ7に圧送された燃料は、それらインジェクタ7の作動に伴い吸気ポートへと噴射さ、各気筒#1〜#6へと供給される。
【0022】
運転席に設けられた警告ランプ16は、エンジン1に異常が発生した場合に点灯してその異常の発生を運転者に警告するためのものである。
【0023】
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)30は、前述したスロットルセンサ21、吸気圧センサ22、酸素センサ23、回転速度センサ24、気筒判別センサ25及び水温センサ26等から出力される各種信号を入力する。ECU30は、これらの入力信号に基づき、空燃比制御を含む燃料噴射制御、点火時期制御及びエンジン1の失火検出等を実行するために、各インジェクタ7、イグナイタ12及び警告ランプ16等をそれぞれ制御する。
【0024】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ7から噴射される燃料量(燃料噴射量)及びその噴射タイミングを制御することである。
空燃比制御とは、少なくとも酸素センサ23の検出値に基づいてエンジン1における空燃比をフィードバック制御することである。
点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ12を制御することにより、各点火プラグ10による点火時期を制御することである。この実施の形態では、例えば、ノッキング制御等において点火時期が遅角されるようになっている。この点火時期の遅角により、各気筒#1〜#6の燃焼行程で燃焼圧力が極大となる時期が遅角されることになり、これに伴い各気筒#1〜#6におけるクランクシャフト4の角速度の周期的な変動に係る位相が遅角されることになる。失火検出とは、クランクシャフト4の角速度の変動に基づいてエンジン1の失火を検出することである。
【0025】
この実施の形態で、ECU30は、本発明の回転変動量算出手段、失火判定手段及び時期補正手段に相当する。このECU30は中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等よりなる周知の構成を備えたものである。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)30は、これらの制御プログラムに従って前述した各種制御等を実行する。
【0026】
次に、ECU30が実行する各種制御のうち、エンジン1の失火検出のための処理内容について説明する。図2に失火検出に関する「30°CA割り込みルーチン」のフローチャートを示す。図3に失火検出におけるクランク角、カウント値CCRNK、所要時間T30、回転変動量の偏差DLTMFL及び燃焼圧力の挙動をそれぞれ示す。図4に図3の一部を拡大して示す。
【0027】
ECU30は、このルーチンを回転速度センサ24からのパルス信号に基づいて30°CA毎の割り込みにより実行する。
【0028】
処理がこのルーチンへ移行すると、先ずステップ100で、ECU30は、回転速度センサ24及び気筒判別センサ25からの信号に基づき、エンジン回転速度NEのパルス信号、基準位置信号GSのパルス信号をそれぞれ読み込む。
【0029】
次に、ステップ101で、ECU30は、前回の30°CAの割り込みから今回の30°CAの割り込みまでの所要時間T30を算出する。この所要時間T30は、回転速度センサ24により30°CA毎に検出されるクランクシャフト4の微小角速度に相当するものであり、角速度が高いときに小さくなり、角速度が低いときに大きくなるものである。つまり、この所要時間T30は、個々の角速度の逆数に比例するものである。この実施の形態では、30°CA毎の所要時間T30が30°CA毎の角速度に相当するものとして、30°CA毎の角速度を、大小の関係は逆になるものの、30°CA毎の所要時間T30に置き換えて表すものとする。
【0030】
その後、ステップ102で、ECU30は、気筒判別フラグYGが「1」であるか否かを判断する。この気筒判別フラグYGは、気筒判別センサ25が720°CA毎のタイミングで基準位置信号GSを出力するときに「1」にセットされるものである。従って、ここでは回転速度センサ24から出力されるパルス信号による今回の30°CAの割り込みと、気筒判別センサ25から720°CA毎に出力される基準位置信号GSとが一致しているか否かが判断されることになる。
【0031】
そして、ステップ102で、気筒判別フラグYGが「1」である場合、ステップ103で、ECU30はクランク角の進度を段階的に表すカウント値CCRNKを「0」にリセットする。この実施の形態では、図3に示すように、1番気筒#1のピストンが上死点(TDC)となるタイミングをクランク角で「0°CA」と定義し、そのタイミングに対応するカウント値CCRNKを「0」と表すようにしている。そして、最終的に6番気筒#6の燃焼行程が終了するタイミングをクランク角で「720°CA」と定義し、そのタイミングに対応するカウント値CCRNKを「23」と表すようにしている。
【0032】
一方、ステップ102で、気筒判別フラグYGが「0」である場合、ECU30は、ステップ104で、カウント値CCRNKを「1」だけインクリメントし、ステップ105で、そのカウント値CCRNKが「23」よりも大きいか否かを判断する。図3(a),(b)に示すように、全ての気筒#1〜#6が連続的に燃焼行程を終了するまでに、即ちクランクシャフト4が2回転(720°CA)するまでに回転速度センサ24から30°CA毎のパルス信号が24個出力されることになる。従って、ステップ105では、6番気筒#6の燃焼行程が終了して次の1番気筒#1の燃焼行程へ移行するタイミングであるか否かが判断されることになる。ここで、カウント値CCRNKが「23」よりも大きい場合、ECU30は処理をステップ103へ移行する。カウント値CCRNKが「23」よりも大きくない場合、ECU30は処理をステップ106へ移行する。
【0033】
ステップ103又はステップ105から移行してステップ106において、ECU30は、別途実行される点火時期制御で算出される点火時期に関する遅角値を読み込む。即ち、ECU30は、ノッキング制御等のために点火時期が遅角された場合の遅角値を読み込む。
【0034】
そして、ステップ107で、ECU30は、後述する回転変動量の偏差DLTMFLを算出するタイミングを、読み込まれた遅角値に応じて補正する。即ち、この実施の形態では、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して、点火時期が遅角されていない場合には、カウント値CCRNKが「3,7,11,15,19,23」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとするようにしている。これに対して、点火時期が遅角されている場合には、カウント値CCRNKが「4,8,12,16,20,1」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとして補正するようにしている。
【0035】
その後、ステップ108で、ECU30は偏差DLTMFLの算出タイミングであるか否かを判断する。即ち、カウント値CCRNKが、点火時期に遅角補正がない場合の「3,7,11,15,19,23」であるか、或いは、点火時期に遅角補正がある場合の「4,8,12,16,20,1」であるか否かを判断する。この判断が否定である場合、ECU30は後述するステップ114で、所要時間T30からメモリに置き換えられる所要時間T31を、それ以前の所要時間T32としてメモリに置き換えたり、所要時間T32を、それ以前の所要時間T33としてメモリに置き換えたりする。その後、ステップ114で、ECU30は今回の所要時間T30を前回の所要時間T31としてメモリに置き換え、その後の処理を一旦終了する。
【0036】
一方、ステップ108の判断が肯定である場合、ECU30はステップ110で偏差DLTMFLを算出する。即ち、この実施の形態では、点火時期に遅角補正がない場合に、図3(c),(e)及び図4に実線で示すように、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応した燃焼圧力の極大値がATDC30°CAのタイミングで発生することから、そのとに極小となる所要時間を「T30」と定義し、それよりも60°CA前の所要時間T32との回転変動量tDT3XDを算出する(次式(1)参照)。そして、今回の回転変動量tDT3XDとその3点火前(360°CA前)の回転変動量tDT3XD(i−1)との差を回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLとして算出する(次式(2)参照)。
tDT3XD=T30−T32 …(1)
DLTMFL=tDT3XD−tDT3XD(i−1) …(2)
しかし、点火時期が遅角補正された場合には、図3,4に二点鎖線で示すように、燃焼圧力の極大値がATDC30°CAからATDC60°CAまで遅れることになる。そこで、この実施の形態では、点火時期に遅角補正がある場合に、図3(c),(e)及び図4に二点差線で示すように、燃焼圧力が極大となるATDC60°CAのときに極小となる所要時間を「T30」と定義し、それよりも90°CA前の所要時間T33との回転変動量tDT3XDを算出する(次式(3)参照)。そして、今回の回転変動量tDT3XDとその3点火前(360°CA前)の回転変動量tDT3XD(i−1)との差を回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLとして算出する(次式(4)参照)。
tDT3XD=T30−T33 …(3)
DLTMFL=tDT3XD−tDT3XD(i−1) …(4)
【0037】
その後、ステップ111で、ECU30は、算出された偏差DLTMFLの値が所定の失火判定値LVLMFLよりも大きいか否かを判断する。ここで、偏差DLTMFLが失火判定値LVLMFLよりも大きくない場合、ステップ112で、ECU30はエンジン1に失火が発生していないものとして正常判定処理を実行する。例えば、その処理として、ECU30は、警告ランプ16を消灯させたり、正常判定コードをバックアップRAMに記憶させたりする。そして、ECU30は、ステップ114で所要時間T30を所要時間T31に置き換え、その後の処理を一旦終了する。
一方、偏差DLTMFLが失火判定値LVLMFLよりも大きい場合、ステップ113で、ECU30はエンジン1に失火が発生しているものとして失火判定処理を実行する。例えば、その処理として、ECU30は、警告ランプ16を点灯させたり、失火判定コードをバックアップRAMに記憶させたりする。この失火判定コードは、必要に応じてバックアップRAMより読み出されることにより、点検に供されることになる。そして、ECU30は、ステップ114で所要時間T30を所要時間T31に置き換え、その後の処理を一旦終了する。
【0038】
上記のように「30°CA割り込みルーチン」がECU30により実行される。即ち、ECU30は、点火時期の遅角補正に応じて所要時間T30の回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLの算出タイミングを補正することにより、失火を判定する。
【0039】
以上説明したように、この実施の形態の失火検出装置によれば、点火時期が制御されることにより、図3(e)及び図4(b)に示すように、各気筒#1〜#6の燃焼行程における燃焼圧力が極大となる時期が変わる。ここで、回転速度センサ24で検出される30°CA毎の角速度により算出される個々の所要時間T30に基づいて各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応する回転変動量tDT3XDがECU30により算出される。そして、その算出される回転変動量tDT3XDに基づいて各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応する失火の有無がECU30により判定される。
【0040】
特に、この実施の形態では、各気筒#1〜#6の燃焼行程において異なる二つの時期に算出される所要時間T30の差が回転変動量tDT3XDとしてECU30により算出される。ここで、回転変動量tDT3XDを算出するために参照される異なる二つの所要時間T30の算出時期の少なくとも一方が、点火時期の違いに応じて、即ち遅角補正の有無に応じてECU30により補正される。そして、今回算出される回転変動量tDT3XDと今回以前、即ち3点火前(360°CA前)に算出された回転変動量tDT3XD(i−1)との偏差DLTMFLが所定の失火判定値LVLMFLと比較されることにより、ECU30により失火が判定されることになる。
即ち、図3(c)に実線及び波線で示すように、時刻t2において今回算出される回転変動量tDT3XDが正常時のものであり、その3点火前の時刻t1に算出された回転変動量tDT3XD(i−1)も正常時のものである場合には、回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLが相対的に小さくなり、正常判定がなされることになる。一方、今回算出される回転変動量tDT3XDが失火時のものであり、その3点火前に算出された回転変動量tDT3XD(i−1)が正常時のものである場合には、回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLが相対的に大きくなり、失火判定がなされることになる。
従って、各気筒#1〜#6に対応して算出される回転変動量tDT3XDが、異なる二つの角速度に対応する所要時間T30,T32(T30,T33)の差、即ち、所要時間T30が極大及び極小となる時期に検出される二つ所要時間T30,T32(T30,T33)の差によって明確に定義されることになる。これにより、各気筒#1〜#6の間で均質に定義された回転変動量tDT3XDが失火判定のために使われることになる。しかも、上記異なる二つの所要時間T30,T32(T30,T33)の検出時期の一方、即ち、所要時間T30が極小となる方の時期が点火時期が遅角されるか否かによって補正される。この結果、点火時期の違いに応じて失火を判定する場合において、正常時及び失火時のそれぞれで点火時期を遅角させたことに起因する誤検出を防止することができ、失火の検出精度を向上させることができるようになる。
即ち、図3(c),(d)に二点鎖線で示すように、時刻t3において、遅角された点火時期に応じて偏差DLTMFLが正確に算出され、その偏差DLTMFLの値が失火判定値LVLMFLを上回わることになり、失火の発生を精度よく検出することができる。これに対して、図3(c),(d)に示す二点鎖線において、通常の点火時期と同様、時刻t2で偏差DLTMFLが算出された場合には、その偏差DLTMFLの値が失火判定値LVLMFLを下回ることもあり、失火が発生しているにも拘わらず、その失火を検出することができなくなるおそれがある。この点で本実施の形態の失火検出装置の優位性は明らかである。
【0041】
この実施の形態の失火検出装置の別の側面として、ECU30は、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して30°CA毎に算出される所要時間T30が極大となる時期の所要時間T30と、算出される所要時間T30が点火時期の遅角補正の違いに応じて極小となる時期の所要時間T30との差を回転変動量tDT3XDとして算出している。そして、ECU30は、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して今回算出される回転変動量tDT3XDと、その3点火前に算出される回転変動量tDT3XD(i−1)との偏差DLTMFLを所定の失火判定値LVLMFLと比較することにより、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応した失火を判定することになる。
従って、この側面においても、各気筒#1〜#6に対応して算出される回転変動量tDT3XDが、極大となる時期の所要時間T30と極小となる時期の所要時間T30との差によって明確に定義されることになり、回転変動量tDT3XDが各気筒#1〜#6の間で均質に定義され、失火の判定に使われることになる。この結果、上記と同様に正常時及び失火時のそれぞれで点火時期を遅角させたことに起因する誤検出を防止することができ、失火の検出精度を向上させることができるようになる。
【0042】
尚、この発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0043】
(1)前記実施の形態では、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して、点火時期が遅角されていない場合には、カウント値CCRNKが「3,7,11,15,19,23」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとし、点火時期が遅角される場合には、カウント値CCRNKが「4,8,12,16,20,1」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとすることにより、偏差DLTMFLの算出タイミングを補正するようにしている。
これに対し、図5に示すような関数データを参照することにより、点火時期の遅角値の違いに応じた算出タイミング(ATDCにおけるクランク角)を決定し、その決定された算出タイミングにより、偏差DLTMFLの算出タイミングを補正するようにしてもよい。
【0044】
【0045】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明の構成によれば、各気筒の燃焼行程において異なる二つの時期に検出される角速度の差を回転変動量として算出し、それら異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方を制御される点火時期の違いに応じて補正するようにしている。
従って、各気筒に対応して算出される回転変動量が異なる二つの角速度の差によって明確に定義され、それら角速度の検出時期の少なくとも一方が点火時期の違いにより変わる燃焼圧力の極大時期に応じて補正されることになり、各気筒の間で均質に定義された回転変動量が失火の判定に使われることになる。この結果、クランクシャフトの角速度の変動に基づいて失火を判定すると共に点火時期の違いに応じて失火を判定するものにおいて、失火の誤検出を防止して失火の検出精度を向上させることができるという効果を発揮する。
【0046】
異なる二つの角速度が検出される時期を、角速度が極小となる時期及び極大となる時期とし、それらのうち角速度が極大となる方の時期を点火時期に応じて補正するようにしている。
従って、この発明においても、クランクシャフトの角速度の変動に基づいて失火を判定すると共に点火時期の違いに応じて失火を判定するものにおいて、失火の誤検出を防止して失火の検出精度を向上させることができるという効果を発揮する。
【0047】
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図である。
【図2】 同じく、「30°CA割り込みルーチン」を示すフローチャートである。
【図3】 同じく、失火検出に係る各種パラメータの挙動を示すタイムチャートである。
【図4】 同じく、図3の一部を拡大して示すタイムチャートである。
【図5】 別の実施の形態に係り、関数データを示すグラフである。
【図6】 従来の失火検出装置に係り、燃焼圧力の挙動を示すグラフである。
【図7】 同じく、失火検出に係る各種パラメータの挙動を示すタイムチャートである。
【図8】 同じく、失火検出の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
4 クランクシャフト
30 ECU(回転変動量算出手段、失火判定手段及び時期補正手段)#1〜#6 1番気筒〜6番気筒
T30 所要時間(角速度に相当する。)
tDT3XD 回転変動量
DLTMFL 偏差
【発明の属する技術分野】
この発明は、クランクシャフトの角速度の変動に基づいてエンジンの失火を検出するようにしたエンジンの失火検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの失火(ミスファイヤ)は、エンジンの燃焼室に吸入された混合気が完全に燃焼しないことを意味する。このため、失火が発生すると、未燃焼の混合気が排気ガスと共にエンジンから排出され、エンジンの出力低下や回転変動を招くという問題がある。そこで、この問題に対処するために、エンジンの失火を検出するようにした失火検出装置が種々提案されている。
【0003】
実開平4−19643号公報は、この種の失火検出装置の一例を開示する。この失火検出装置は、ノッキング制御等により点火時期が遅角されるのに伴い、図6に示すように、最大燃焼圧力の発生時期が実線で示す状態から1点鎖線で示す状態へ遅角されたときに、その遅角の影響を抑え、クランクシャフトの回転角変動に基づいて行われる失火の判定精度を高めるようにしている。そのために、この失火検出装置では、複数気筒を有するエンジンにおいて、各気筒に対応した基準クランク角位置で基準信号を発するクランク角センサと、この基準クランク角位置からの回転角度を検出するためのリングギアセンサとを設けている。そして、コントロールユニットは、基準クランク角位置を基準として計測が開始される計測開始クランク角位置から計測が終了する計測終了クランク角位置までクランクシャフトが回転するのに要する所要時間を各気筒毎に順次に計測し、それら計測される所要時間の変動に基づいて失火を判定し、計測開始クランク角位置及び計測終了クランク角位置を、点火時期の違いに応じて可変的に設定するようにしている。
【0004】
失火検出のためにコントロールユニットが行う具体的な処理内容を図8にフローチャートに示す。即ち、ステップ500では、種々の条件が失火判定の可能な診断領域内にあるか否かを判断する。診断領域内にない場合、ステップ502で、所要時間Tの計測を停止し、更にステップ513で、後述するTRAVMX等の値をクリアする。診断領域内にある場合、ステップ503で、所要時間Tの計測を開始する。
図7に示すように、120°CA毎にクランク角センサから出力されるREF信号が検出された後、リングギアセンサの出力パルスのカウントが開始され、計測開始クランク角位置に対応する個数(例えばP1個)の歯数が検出された時点でプリセットカウンタにより第1のトリガが出力される。更に、REF信号の検出から計測終了クランク角位置に対応する個数(例えばP2個)の歯数が検出された時点でプリセットカウンタにより第2のトリガが出力される。そして、第1のトリガから第2のトリガまでの期間が所要時間Tとして計測される。ここでは、エンジンの気筒数をNとし、最新の所要時間T1、その前の所要時間T2、更にその前の所要時間T3、・・・所要時間T(N+1)というように(N+1)個のデータが、順次更新される形でメモリに保存され、それらが失火判定のために使用される。
その後、ステップ504で、複数の所要時間T1〜T(N+1)のデータに基づいてラフネス度ROを逐次演算する。ラフネス度ROは、所要時間Tの偏差を所要時間Tの平均値で除したものである。ラフネス度ROは、所要時間Tが計測される度、即ちREF信号が出力される度に演算される。従って、個々の気筒番号nのREF信号について演算されたラフネス度ROは各気筒のラフネス度RO(n)として定義され、点火順序に従ったラフネス度RO(n)が順次求められる。ラフネス度ROは、クランクシャフトの角速度に変動が全く無ければ「0」となる。失火があれば、対応する気筒のラフネス度ROは負の値を示し、その他の気筒のラフネス度ROは相対的に正の値を示すことになる。
次に、ステップ505で、ラフネス度RO(n)の絶対値の移動平均TRAVLUを、REF信号が出力される度に演算する。
次に、ステップ506で、移動平均TRAVLUをデータ収集期間中の過去の最大値TRAVMXと比較し、これを上回った場合には、新たな最大値TRAVMXとしてメモリ内容を更新する。
その後、ステップ507で、各気筒nの正負規則性を示す指標FU(n)を演算する。即ち、ある気筒nのラフネス度RO(n)が正であれば指標FU(n)をインクリメントし、負であれば指標FU(n)はデクリメントする。ある気筒nで失火が繰り返し起こるときには、その気筒nの指標FU(n)は負側に大きく減少することになる。
次に、ステップ508で、リングギアの欠け歯を検出する。更に、ステップ509で、演算された移動平均TRAVLUの値が所定の基準値TRAVCO以上であるか否かを判断する。この判断が肯定の場合のみ、ステップ510で、第1のパラメータMMF1の値をインクリメントする。
そして、ステップ511で、所定のデータ収集期間が経過したか否かを判断する。このデータ収集期間が経過する場合のみ、ステップ512で、故障判定、即ち失火判定を行う。この判定は、前述したラフネス度ROから求められる移動平均TRAVLUの最大値TRAVMX及び指標FU(n)の値に基づいて行われる。その後、ステップ513で、TRAVMX等の値をクリアし、その後の処理を一旦終了する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の失火検出装置では、失火判定を行うために、ラフネス度ROが参照される。このラフネス度ROが、第1のトリガから第2のトリガまでの所要時間Tにつき、今回の所要時間Tとその1サイクル前(720°CA前)の前回の所要時間Tとの偏差を所要時間Tの平均値で除したものとして各気筒毎に定義される。従って、ラフネス度ROにつき、正常時の値と失火時の値との間で区別がつき難く、これにより、ラフネス度ROから求められる最大値TRAVMX及び指標FU(n)についても正常時の値と失火時の値との間で区別がつき難くなる傾向にあった。このため、失火の判定精度が低下するおそれがあった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、クランクシャフトの角速度の変動に基づいて失火を判定すると共に点火時期の違いに応じて失火を判定するものにおいて、失火の検出精度を向上させることを可能にしたエンジンの失火検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、点火時期が制御される複数気筒を有するエンジンのクランクシャフトの角速度を所定の回転角度毎に検出するための角速度検出手段と、所定の回転角度毎に検出される角速度に基づいて各気筒の燃焼行程に対応する回転変動量を算出するための回転変動量算出手段と、今回算出される回転変動量と今回より360°CA前に算出された回転変動量との偏差を所定の判定値と比較することにより各気筒の燃焼行程に対応する失火を判定するための失火判定手段とを備えたエンジンの失火検出装置において、回転変動量算出手段は、各気筒の燃焼行程において異なる二つの時期に検出される角速度の差を回転変動量として算出することと、異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方を制御される点火時期の違いに応じて補正するための時期補正手段と、前記異なる二つの角速度が検出される時期は、前記角速度が極小となる時期及び極大となる時期であることと、前記時期補正手段により補正される時期は、前記角速度が極大となる方の時期であることと、を備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記の発明の構成によれば、点火時期が制御されることにより、各気筒の燃焼行程における燃焼圧力の極大時期が変わる。ここで、角速度検出手段により検出される個々の角速度に基づいて各気筒の燃焼行程に対応する回転変動量が回転変動量算出手段により算出される。そして、今回算出される回転変動量と今回より360°CA前に算出された回転変動量との偏差が所定の判定値と比較されることにより、各気筒の燃焼行程に対応する失火が失火判定手段により判定される。例えば、今回算出される回転変動量が正常時のものであり、今回より360°CA前に算出された回転変動量も正常時のものである場合には、回転変動量の偏差が相対的に小さくなり、正常判定がなされることになる。一方、今回算出される回転変動量が失火時のものであり、今回より360°CA前に算出された回転変動量が正常時のものである場合には、回転変動量の偏差が相対的に大きくなり、失火判定がなされることになる。
特に、この発明では、各気筒の燃焼行程において異なる二つの時期に検出される角速度の差が回転変動量として回転変動量算出手段により算出される。そして、上記異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方が点火時期の違いに応じて時期補正手段により補正される。
従って、この発明では、各気筒に対応して算出される回転変動量が、異なる二つの角速度の差によって明確に定義されることになる。しかも、各気筒に対応した回転変動量を算出するために参照される異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方が、点火時期の違いに応じて補正される。例えば、点火時期が遅角されるか否かにより角速度の検出時期が補正される。このため、それら二つの角速度が検出される時期が、点火時期の違いにより変わる燃焼圧力の極大時期に応じて補正され、各気筒の間で均質に定義された回転変動量が失火判定のために使われることになる。
【0009】
【0010】
上記の発明の構成によれば、極小の角速度と極大の角速度とにより回転変動量が算出され、その極大の角速度が検出される時期が、点火時期の違いに応じて補正されることになる。
従って、各気筒に対応して算出される回転変動量が、極小の角速度と極大の角速度との差によって明確に定義されることになる。しかも、その極大の角速度が点火時期の違いに応じて補正される。このため、極大の角速度が検出される時期が、点火時期の違いにより変わる燃焼圧力の極大時期に応じて補正されることになり、各気筒の間で均質に定義された回転変動量が失火判定のために使われることになる。
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明(請求項1〜3に係る発明)のエンジンの失火検出装置を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、自動車に搭載されたエンジンシステムに係る概略構成を示す。エンジン1は周知の構造を有する多気筒タイプのものであり、この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の6つの気筒を有するものである。エンジン1は、吸気通路2を通じて供給される燃料及び空気、即ち可燃混合気を、各気筒#1〜#6の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気ガスを排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を駆動させクランクシャフト4を回転させて動力を得るものである。
【0015】
吸気通路2に設けられたスロットルバルブ5は、同通路2を流れて各気筒#1〜#6に吸入される空気量(吸気量)Qaを調節するために開閉されるものである。このバルブ5は、運転席に設けられたアクセルペダル6の操作に連動して作動するものである。スロットルバルブ5に対して設けられたスロットルセンサ21は、このバルブ5の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。吸気通路2に設けられた吸気圧センサ22は、スロットルバルブ5より下流の吸気通路2における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。
【0016】
各気筒#1〜#6に対応する吸気ポートに設けられた複数のインジェクタ7は、各気筒#1〜#6に対応して燃料を噴射供給するためのものである。これらインジェクタ7は、共通するデリバリパイプ8に設けられる。デリバリパイプ8は、燃料タンク9から圧送される燃料を、各インジェクタ7へ分配するためのものである。
【0017】
各気筒#1〜#6に対応してエンジン1に設けられた複数の点火プラグ10は、ディストリビュータ11から分配される点火信号を受けて作動する。ディストリビュータ11は、イグナイタ12から出力される高電圧をクランクシャフト4の回転角、即ち「クランク角(°CA)」の変化に対応して各点火プラグ10へ分配するものである。各点火プラグ10の作動時期、即ち点火時期は、イグナイタ12から出力される高電圧の出力タイミングにより決定される。従って、イグナイタ12を制御することにより、各気筒#1〜#6における各点火プラグ13による点火時期が制御される。
【0018】
排気通路3に設けられた酸素センサ23は、各気筒#1〜#6から同通路3へ排出される排気ガス中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。
【0019】
ディストリビュータ11に設けられた回転速度センサ24は、クランクシャフト4の角速度、即ち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。ディストリビュータ11には、クランクシャフト4の回転に連動して回転すると共に外周に複数の歯を有するロータ(図示しない)が内蔵される。回転速度センサ24は、このロータと、ロータの外周に対向配置された電磁ピックアップ(図示しない)とを備える。このロータの回転に伴って電磁ピックアップが各歯の通過を検出する毎に、回転速度センサ24からは一つのパルス信号が出力される。この実施の形態では、クランク角が30°CA進む毎に、回転速度センサ24から一つのパルス信号が出力されることになる。この実施の形態では、回転速度センサ24により、クランクシャフト4の角速度を所定の回転角度毎、即ち「30°CA」毎に検出するための角速度検出手段が構成される。
同じく、ディストリビュータ11には、ロータの回転に応じてクランク角の変化を所定の割合で検出するための気筒判別センサ25が設けられる。この実施の形態では、1番気筒#1〜6番気筒#6の全てが順次に燃焼行程を終了するまでにクランクシャフト4が2回転するものとして、720°CA毎の割合で、気筒判別センサ25から基準位置信号GSとしての一つのパルス信号が出力されるようになっている。
エンジン1に設けられ水温センサ26は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力するものである。
【0020】
この実施の形態において、上記のスロットルセンサ21、吸気圧センサ22、酸素センサ23、回転速度センサ24、気筒判別センサ25及び水温センサ26等は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段を構成する。
【0021】
前述した各インジェクタ7、デリバリパイプ8及び燃料タンク9等は燃料供給装置を構成する。燃料タンク9はガソリン等の燃料を貯留するものである。燃料タンク9に内蔵された電動式の燃料ポンプ13は、同タンク9内の燃料を汲み上げ、吐出するものである。燃料ポンプ13の吐出ポート側に接続された燃料パイプ14は、燃料フィルタ15を介してデリバリパイプ8に接続される。ここで、燃料ポンプ13が作動することにより、燃料タンク9内の燃料は、同ポンプ13から燃料パイプ14へと吐出され、燃料フィルタ15で異物が除去された後、デリバリパイプ8へと圧送され、各インジェクタ7へ分配される。各インジェクタ7に圧送された燃料は、それらインジェクタ7の作動に伴い吸気ポートへと噴射さ、各気筒#1〜#6へと供給される。
【0022】
運転席に設けられた警告ランプ16は、エンジン1に異常が発生した場合に点灯してその異常の発生を運転者に警告するためのものである。
【0023】
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)30は、前述したスロットルセンサ21、吸気圧センサ22、酸素センサ23、回転速度センサ24、気筒判別センサ25及び水温センサ26等から出力される各種信号を入力する。ECU30は、これらの入力信号に基づき、空燃比制御を含む燃料噴射制御、点火時期制御及びエンジン1の失火検出等を実行するために、各インジェクタ7、イグナイタ12及び警告ランプ16等をそれぞれ制御する。
【0024】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ7から噴射される燃料量(燃料噴射量)及びその噴射タイミングを制御することである。
空燃比制御とは、少なくとも酸素センサ23の検出値に基づいてエンジン1における空燃比をフィードバック制御することである。
点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ12を制御することにより、各点火プラグ10による点火時期を制御することである。この実施の形態では、例えば、ノッキング制御等において点火時期が遅角されるようになっている。この点火時期の遅角により、各気筒#1〜#6の燃焼行程で燃焼圧力が極大となる時期が遅角されることになり、これに伴い各気筒#1〜#6におけるクランクシャフト4の角速度の周期的な変動に係る位相が遅角されることになる。失火検出とは、クランクシャフト4の角速度の変動に基づいてエンジン1の失火を検出することである。
【0025】
この実施の形態で、ECU30は、本発明の回転変動量算出手段、失火判定手段及び時期補正手段に相当する。このECU30は中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等よりなる周知の構成を備えたものである。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)30は、これらの制御プログラムに従って前述した各種制御等を実行する。
【0026】
次に、ECU30が実行する各種制御のうち、エンジン1の失火検出のための処理内容について説明する。図2に失火検出に関する「30°CA割り込みルーチン」のフローチャートを示す。図3に失火検出におけるクランク角、カウント値CCRNK、所要時間T30、回転変動量の偏差DLTMFL及び燃焼圧力の挙動をそれぞれ示す。図4に図3の一部を拡大して示す。
【0027】
ECU30は、このルーチンを回転速度センサ24からのパルス信号に基づいて30°CA毎の割り込みにより実行する。
【0028】
処理がこのルーチンへ移行すると、先ずステップ100で、ECU30は、回転速度センサ24及び気筒判別センサ25からの信号に基づき、エンジン回転速度NEのパルス信号、基準位置信号GSのパルス信号をそれぞれ読み込む。
【0029】
次に、ステップ101で、ECU30は、前回の30°CAの割り込みから今回の30°CAの割り込みまでの所要時間T30を算出する。この所要時間T30は、回転速度センサ24により30°CA毎に検出されるクランクシャフト4の微小角速度に相当するものであり、角速度が高いときに小さくなり、角速度が低いときに大きくなるものである。つまり、この所要時間T30は、個々の角速度の逆数に比例するものである。この実施の形態では、30°CA毎の所要時間T30が30°CA毎の角速度に相当するものとして、30°CA毎の角速度を、大小の関係は逆になるものの、30°CA毎の所要時間T30に置き換えて表すものとする。
【0030】
その後、ステップ102で、ECU30は、気筒判別フラグYGが「1」であるか否かを判断する。この気筒判別フラグYGは、気筒判別センサ25が720°CA毎のタイミングで基準位置信号GSを出力するときに「1」にセットされるものである。従って、ここでは回転速度センサ24から出力されるパルス信号による今回の30°CAの割り込みと、気筒判別センサ25から720°CA毎に出力される基準位置信号GSとが一致しているか否かが判断されることになる。
【0031】
そして、ステップ102で、気筒判別フラグYGが「1」である場合、ステップ103で、ECU30はクランク角の進度を段階的に表すカウント値CCRNKを「0」にリセットする。この実施の形態では、図3に示すように、1番気筒#1のピストンが上死点(TDC)となるタイミングをクランク角で「0°CA」と定義し、そのタイミングに対応するカウント値CCRNKを「0」と表すようにしている。そして、最終的に6番気筒#6の燃焼行程が終了するタイミングをクランク角で「720°CA」と定義し、そのタイミングに対応するカウント値CCRNKを「23」と表すようにしている。
【0032】
一方、ステップ102で、気筒判別フラグYGが「0」である場合、ECU30は、ステップ104で、カウント値CCRNKを「1」だけインクリメントし、ステップ105で、そのカウント値CCRNKが「23」よりも大きいか否かを判断する。図3(a),(b)に示すように、全ての気筒#1〜#6が連続的に燃焼行程を終了するまでに、即ちクランクシャフト4が2回転(720°CA)するまでに回転速度センサ24から30°CA毎のパルス信号が24個出力されることになる。従って、ステップ105では、6番気筒#6の燃焼行程が終了して次の1番気筒#1の燃焼行程へ移行するタイミングであるか否かが判断されることになる。ここで、カウント値CCRNKが「23」よりも大きい場合、ECU30は処理をステップ103へ移行する。カウント値CCRNKが「23」よりも大きくない場合、ECU30は処理をステップ106へ移行する。
【0033】
ステップ103又はステップ105から移行してステップ106において、ECU30は、別途実行される点火時期制御で算出される点火時期に関する遅角値を読み込む。即ち、ECU30は、ノッキング制御等のために点火時期が遅角された場合の遅角値を読み込む。
【0034】
そして、ステップ107で、ECU30は、後述する回転変動量の偏差DLTMFLを算出するタイミングを、読み込まれた遅角値に応じて補正する。即ち、この実施の形態では、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して、点火時期が遅角されていない場合には、カウント値CCRNKが「3,7,11,15,19,23」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとするようにしている。これに対して、点火時期が遅角されている場合には、カウント値CCRNKが「4,8,12,16,20,1」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとして補正するようにしている。
【0035】
その後、ステップ108で、ECU30は偏差DLTMFLの算出タイミングであるか否かを判断する。即ち、カウント値CCRNKが、点火時期に遅角補正がない場合の「3,7,11,15,19,23」であるか、或いは、点火時期に遅角補正がある場合の「4,8,12,16,20,1」であるか否かを判断する。この判断が否定である場合、ECU30は後述するステップ114で、所要時間T30からメモリに置き換えられる所要時間T31を、それ以前の所要時間T32としてメモリに置き換えたり、所要時間T32を、それ以前の所要時間T33としてメモリに置き換えたりする。その後、ステップ114で、ECU30は今回の所要時間T30を前回の所要時間T31としてメモリに置き換え、その後の処理を一旦終了する。
【0036】
一方、ステップ108の判断が肯定である場合、ECU30はステップ110で偏差DLTMFLを算出する。即ち、この実施の形態では、点火時期に遅角補正がない場合に、図3(c),(e)及び図4に実線で示すように、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応した燃焼圧力の極大値がATDC30°CAのタイミングで発生することから、そのとに極小となる所要時間を「T30」と定義し、それよりも60°CA前の所要時間T32との回転変動量tDT3XDを算出する(次式(1)参照)。そして、今回の回転変動量tDT3XDとその3点火前(360°CA前)の回転変動量tDT3XD(i−1)との差を回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLとして算出する(次式(2)参照)。
tDT3XD=T30−T32 …(1)
DLTMFL=tDT3XD−tDT3XD(i−1) …(2)
しかし、点火時期が遅角補正された場合には、図3,4に二点鎖線で示すように、燃焼圧力の極大値がATDC30°CAからATDC60°CAまで遅れることになる。そこで、この実施の形態では、点火時期に遅角補正がある場合に、図3(c),(e)及び図4に二点差線で示すように、燃焼圧力が極大となるATDC60°CAのときに極小となる所要時間を「T30」と定義し、それよりも90°CA前の所要時間T33との回転変動量tDT3XDを算出する(次式(3)参照)。そして、今回の回転変動量tDT3XDとその3点火前(360°CA前)の回転変動量tDT3XD(i−1)との差を回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLとして算出する(次式(4)参照)。
tDT3XD=T30−T33 …(3)
DLTMFL=tDT3XD−tDT3XD(i−1) …(4)
【0037】
その後、ステップ111で、ECU30は、算出された偏差DLTMFLの値が所定の失火判定値LVLMFLよりも大きいか否かを判断する。ここで、偏差DLTMFLが失火判定値LVLMFLよりも大きくない場合、ステップ112で、ECU30はエンジン1に失火が発生していないものとして正常判定処理を実行する。例えば、その処理として、ECU30は、警告ランプ16を消灯させたり、正常判定コードをバックアップRAMに記憶させたりする。そして、ECU30は、ステップ114で所要時間T30を所要時間T31に置き換え、その後の処理を一旦終了する。
一方、偏差DLTMFLが失火判定値LVLMFLよりも大きい場合、ステップ113で、ECU30はエンジン1に失火が発生しているものとして失火判定処理を実行する。例えば、その処理として、ECU30は、警告ランプ16を点灯させたり、失火判定コードをバックアップRAMに記憶させたりする。この失火判定コードは、必要に応じてバックアップRAMより読み出されることにより、点検に供されることになる。そして、ECU30は、ステップ114で所要時間T30を所要時間T31に置き換え、その後の処理を一旦終了する。
【0038】
上記のように「30°CA割り込みルーチン」がECU30により実行される。即ち、ECU30は、点火時期の遅角補正に応じて所要時間T30の回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLの算出タイミングを補正することにより、失火を判定する。
【0039】
以上説明したように、この実施の形態の失火検出装置によれば、点火時期が制御されることにより、図3(e)及び図4(b)に示すように、各気筒#1〜#6の燃焼行程における燃焼圧力が極大となる時期が変わる。ここで、回転速度センサ24で検出される30°CA毎の角速度により算出される個々の所要時間T30に基づいて各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応する回転変動量tDT3XDがECU30により算出される。そして、その算出される回転変動量tDT3XDに基づいて各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応する失火の有無がECU30により判定される。
【0040】
特に、この実施の形態では、各気筒#1〜#6の燃焼行程において異なる二つの時期に算出される所要時間T30の差が回転変動量tDT3XDとしてECU30により算出される。ここで、回転変動量tDT3XDを算出するために参照される異なる二つの所要時間T30の算出時期の少なくとも一方が、点火時期の違いに応じて、即ち遅角補正の有無に応じてECU30により補正される。そして、今回算出される回転変動量tDT3XDと今回以前、即ち3点火前(360°CA前)に算出された回転変動量tDT3XD(i−1)との偏差DLTMFLが所定の失火判定値LVLMFLと比較されることにより、ECU30により失火が判定されることになる。
即ち、図3(c)に実線及び波線で示すように、時刻t2において今回算出される回転変動量tDT3XDが正常時のものであり、その3点火前の時刻t1に算出された回転変動量tDT3XD(i−1)も正常時のものである場合には、回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLが相対的に小さくなり、正常判定がなされることになる。一方、今回算出される回転変動量tDT3XDが失火時のものであり、その3点火前に算出された回転変動量tDT3XD(i−1)が正常時のものである場合には、回転変動量tDT3XDの偏差DLTMFLが相対的に大きくなり、失火判定がなされることになる。
従って、各気筒#1〜#6に対応して算出される回転変動量tDT3XDが、異なる二つの角速度に対応する所要時間T30,T32(T30,T33)の差、即ち、所要時間T30が極大及び極小となる時期に検出される二つ所要時間T30,T32(T30,T33)の差によって明確に定義されることになる。これにより、各気筒#1〜#6の間で均質に定義された回転変動量tDT3XDが失火判定のために使われることになる。しかも、上記異なる二つの所要時間T30,T32(T30,T33)の検出時期の一方、即ち、所要時間T30が極小となる方の時期が点火時期が遅角されるか否かによって補正される。この結果、点火時期の違いに応じて失火を判定する場合において、正常時及び失火時のそれぞれで点火時期を遅角させたことに起因する誤検出を防止することができ、失火の検出精度を向上させることができるようになる。
即ち、図3(c),(d)に二点鎖線で示すように、時刻t3において、遅角された点火時期に応じて偏差DLTMFLが正確に算出され、その偏差DLTMFLの値が失火判定値LVLMFLを上回わることになり、失火の発生を精度よく検出することができる。これに対して、図3(c),(d)に示す二点鎖線において、通常の点火時期と同様、時刻t2で偏差DLTMFLが算出された場合には、その偏差DLTMFLの値が失火判定値LVLMFLを下回ることもあり、失火が発生しているにも拘わらず、その失火を検出することができなくなるおそれがある。この点で本実施の形態の失火検出装置の優位性は明らかである。
【0041】
この実施の形態の失火検出装置の別の側面として、ECU30は、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して30°CA毎に算出される所要時間T30が極大となる時期の所要時間T30と、算出される所要時間T30が点火時期の遅角補正の違いに応じて極小となる時期の所要時間T30との差を回転変動量tDT3XDとして算出している。そして、ECU30は、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して今回算出される回転変動量tDT3XDと、その3点火前に算出される回転変動量tDT3XD(i−1)との偏差DLTMFLを所定の失火判定値LVLMFLと比較することにより、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応した失火を判定することになる。
従って、この側面においても、各気筒#1〜#6に対応して算出される回転変動量tDT3XDが、極大となる時期の所要時間T30と極小となる時期の所要時間T30との差によって明確に定義されることになり、回転変動量tDT3XDが各気筒#1〜#6の間で均質に定義され、失火の判定に使われることになる。この結果、上記と同様に正常時及び失火時のそれぞれで点火時期を遅角させたことに起因する誤検出を防止することができ、失火の検出精度を向上させることができるようになる。
【0042】
尚、この発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0043】
(1)前記実施の形態では、各気筒#1〜#6の燃焼行程に対応して、点火時期が遅角されていない場合には、カウント値CCRNKが「3,7,11,15,19,23」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとし、点火時期が遅角される場合には、カウント値CCRNKが「4,8,12,16,20,1」となるときを各気筒#1〜#6に対応した偏差DLTMFLの算出タイミングとすることにより、偏差DLTMFLの算出タイミングを補正するようにしている。
これに対し、図5に示すような関数データを参照することにより、点火時期の遅角値の違いに応じた算出タイミング(ATDCにおけるクランク角)を決定し、その決定された算出タイミングにより、偏差DLTMFLの算出タイミングを補正するようにしてもよい。
【0044】
【0045】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明の構成によれば、各気筒の燃焼行程において異なる二つの時期に検出される角速度の差を回転変動量として算出し、それら異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方を制御される点火時期の違いに応じて補正するようにしている。
従って、各気筒に対応して算出される回転変動量が異なる二つの角速度の差によって明確に定義され、それら角速度の検出時期の少なくとも一方が点火時期の違いにより変わる燃焼圧力の極大時期に応じて補正されることになり、各気筒の間で均質に定義された回転変動量が失火の判定に使われることになる。この結果、クランクシャフトの角速度の変動に基づいて失火を判定すると共に点火時期の違いに応じて失火を判定するものにおいて、失火の誤検出を防止して失火の検出精度を向上させることができるという効果を発揮する。
【0046】
異なる二つの角速度が検出される時期を、角速度が極小となる時期及び極大となる時期とし、それらのうち角速度が極大となる方の時期を点火時期に応じて補正するようにしている。
従って、この発明においても、クランクシャフトの角速度の変動に基づいて失火を判定すると共に点火時期の違いに応じて失火を判定するものにおいて、失火の誤検出を防止して失火の検出精度を向上させることができるという効果を発揮する。
【0047】
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図である。
【図2】 同じく、「30°CA割り込みルーチン」を示すフローチャートである。
【図3】 同じく、失火検出に係る各種パラメータの挙動を示すタイムチャートである。
【図4】 同じく、図3の一部を拡大して示すタイムチャートである。
【図5】 別の実施の形態に係り、関数データを示すグラフである。
【図6】 従来の失火検出装置に係り、燃焼圧力の挙動を示すグラフである。
【図7】 同じく、失火検出に係る各種パラメータの挙動を示すタイムチャートである。
【図8】 同じく、失火検出の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
4 クランクシャフト
30 ECU(回転変動量算出手段、失火判定手段及び時期補正手段)#1〜#6 1番気筒〜6番気筒
T30 所要時間(角速度に相当する。)
tDT3XD 回転変動量
DLTMFL 偏差
Claims (1)
- 点火時期が制御される複数気筒を有するエンジンのクランクシャフトの角速度を所定の回転角度毎に検出するための角速度検出手段と、
前記所定の回転角度毎に検出される角速度に基づいて前記各気筒の燃焼行程に対応する回転変動量を算出するための回転変動量算出手段と、
今回算出される回転変動量と今回より360°CA前に算出された回転変動量との偏差を所定の判定値と比較することにより前記各気筒の燃焼行程に対応する失火を判定するための失火判定手段と
を備えたエンジンの失火検出装置において、
前記回転変動量算出手段は、前記各気筒の燃焼行程において異なる二つの時期に検出される角速度の差を回転変動量として算出することと、
前記異なる二つの角速度が検出される時期の少なくとも一方を前記制御される点火時期の違いに応じて補正するための時期補正手段とを備え、
前記異なる二つの角速度が検出される時期は、前記角速度が極小となる時期及び極大となる時期であることと、
前記時期補正手段により補正される時期は、前記角速度が極大となる方の時期であることと、
を特徴とするエンジンの失火検出装置。
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