JP3588423B2 - 耐熱性繊維紙及びその製造方法並びに該耐熱性繊維紙を用いたプリプレグ - Google Patents

耐熱性繊維紙及びその製造方法並びに該耐熱性繊維紙を用いたプリプレグ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性繊維紙及びその製造方法並びにその耐熱性繊維紙を用いたプリプレグに関し、更に詳しくは、高温高湿度下における電気絶縁性に優れ、電気回路板用積層物に好適に使用できる耐熱性繊維紙及びその製造方法並びにその耐熱性繊維紙を用いたプリプレグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気回路板用積層物に使用される基材には耐熱性や耐熱寸法安定性、耐湿寸法安定性、電気絶縁性、耐変形性(捩じれ、反り、波打ちなどを生じ難いこと)、軽量性などの諸特性が要求される。
【0003】
耐熱性繊維紙は、他素材からなる紙に比べて、耐熱性、電気絶縁性、耐熱寸法安定性、軽量性などの点で優れているため、最近では、電気回路板用積層物の基材に活用されつつある。
【0004】
例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミドの短繊維(帝人(株)製「コーネックス」)とポリメタフェニレンイソフタルアミドのパルプからなる紙(特開平2−236907号公報、特開平2−106840号公報など)や、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(帝人(株)製「テクノーラ」)と有機系樹脂バインダーからなる耐熱性繊維紙(特開平1−92233号公報、特開平2−47392号公報)などが提案されている。
【0005】
しかし、前者は、250℃以上の高温で熱処理されると収縮して寸法変化を生じるばかりでなく、繊維の平衡水分率(含水率)が5〜6%と大きく、且つ、不純イオンの含有量も多いので、特に高湿度下における電気絶縁性に劣り、高度な信頼性が要求される電気絶縁用基材には使用することができない。
【0006】
一方、後者は平衡水分率が小さく、且つ、不純イオンの含有量も少ないが、有機系の樹脂をバインダー成分として使用しているため、当該紙の製造工程でバインダー成分が紙の表裏側にマイグレーションして偏在化する結果、紙の中層部に存在するバインダー成分の量が微小となって、紙の厚さ方向の不均一性、信頼性を悪化させるという問題を有している。
【0007】
このような耐熱性繊維紙を電気回路板用積層物の基材として使用すると、その製造工程、特にエポキシ樹脂などの配合ワニスを含浸、乾燥させるプリプレグ作成工程や該プリプレグ品を積層成形する工程などで、配合ワニスの含浸量(特に厚さ方向)や付着量のバラツキが拡大したり、また、バインダー用樹脂の一部が溶融して繊維間の接着力が低下するため、紙基材の切断を発生させたり、更には、紙を形成する短繊維が相互に移動して、繊維密度分布の均一性を悪化させ、特に高温で処理されるハンダリフロー工程終了後等に、電気回路板用積層物に変形(捩じれ、反り、波打ち等)を生じさせるという問題が発生することがあり、好ましくなかった。
【0008】
また、バインダー成分として有機系樹脂を用いる代わりにメタ型芳香族ポリアミドのフィブリッドを用い、パラ型芳香族ポリアミド短繊維(デュポン(株)製「ケブラー」)とフィブリル化されたパラ型芳香族ポリアミドの微小繊維(デュポン(株)製「ケブラー」)とを、該フィブリッドの絡合作用により機械的に結合せしめた紙(特開昭61−160500号公報、特公平5−65640号公報)も提案されている。
【0009】
この紙は、耐熱性や耐熱寸法安定性、耐湿寸法安定性、耐変形性(捩じれ、反り、波打ちなどを生じ難いこと)などの特性には優れているものの、使用するバインダー成分はフィブリッドのみであり、電気回路板用積層物を製造する各工程において、必要な引張り強力を維持するためには、フィブリッドの添加量を実生産時には多くしなければならなかった。ところがこの紙に用いられるバインダー成分であるメタ型芳香族ポリアミドからなるフィブリッドは、平衡水分率が高く、また、不純イオンの含有量も多いため、高湿度下で行われる電気絶縁性テストでこのような紙は不良品を多発するという問題を抱えていた。
【0010】
即ち、吸水率(平衡水分率)の高い基材を主材として多く用いて作成された電気回路板用積層物は、高湿度下で長時間通電されると含有不純イオンがマイグレーションを生じるため、電気絶縁不良が発生し、長期にわたる信頼性を維持出来ないからである。
【0011】
また、パラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維とメタ型芳香族ポリアミドからなる短繊維とからなる芳香族ポリアミド繊維紙(特願平8−30426号公報)も提案されているが、この紙も、メタ型芳香族ポリアミド繊維を使用しているために、吸水率が高く、不純イオン含有量も多いので、前記の如く、高温度下で行われる基板の電気絶縁性テストで不良が発生し易くなる問題や吸脱湿を繰返した場合におけるプリント配線板の厚さ方向における層間通電抵抗値の変化量が大きくなる問題を同様に抱えてる。
【0012】
以上述べたように、耐熱性繊維紙は種々提案されているが、吸水性や不純イオンの含有量が低く、電気絶縁性に優れると共に、紙の厚さ方向の均一性に優れ、加えて良好な配合ワニスの含浸性を有し、且つ、層間結合性や耐変形性にも優れた電気絶縁材料用の紙基材は今まで実現されていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性や熱寸法安定性、層間剥離強度、高湿度下における電気絶縁性などに優れ、且つ、嵩密度が高いにも拘わらず樹脂含浸性が良好であり、特に電気絶縁材料用基材や電気回路用積層物の基材として好適な耐熱性繊維紙を提供し、該耐熱性繊維紙を使用したプリプレグやその積層物を提供可能することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような従来技術の有する問題を解決するため鋭意検討した結果、現在、市販されている汎用のパラ型芳香族ポリアミド繊維からなる短繊維のような耐熱性の有機高分子重合体からなる1種又は2種以上の短繊維及び比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミドからなら短繊維を、抄造段階でバインダー性能を呈する有機系樹脂バインダー及び/又は耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドで結合せしめて抄紙し、その後、高温、高圧下で処理して該有機系樹脂バインダーを硬化せしめ、及び/又は、該耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド、及び/又は、該未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミドからなる短繊維を部分的に軟化、及び/又は溶融せしめて、紙を形成している単繊維間を強固に結合させることにより所望の耐熱性繊維紙が得られることを究明した。
【0015】
すなわち、本発明によれば、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及び比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維45〜97重量%と、有機系樹脂バインダー及び/又は耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド3〜55重量%とを主成分として形成された耐熱性繊維紙であって、該有機系樹脂バインダーが硬化されて、及び/又は該耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド、及び/又は、該パラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維が部分的に軟化及び/又は溶融されてバインダーの作用を呈していることを特徴とする耐熱性繊維紙にあり、また、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及び比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維45〜97重量%と、有機系樹脂バインダー及び/又は耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド3〜55重量%とを湿式抄紙した後、乾燥して得た乾燥紙を、220〜400℃の温度下、150〜250kg/cmの圧力下で加熱加圧して、該耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドを部分的に軟化、及び/又は、溶融させることを特徴とする耐熱性繊維紙の製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における耐熱性繊維紙とは、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及び比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維と、有機系樹脂バインダー及び/又は耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドとを主成分とし、該有機系樹脂バインダーが硬化され、及び/又は、該耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド、及び/又は、該パラ型芳香族ポリアミド短繊維が部分的に軟化及び/又は溶融されてバインダーの作用を呈している紙状物、不織布状物もしくはシート状物を含むものである。
【0017】
上記の耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維としては、繊維形成能を有し、熱分解開始温度が330℃以上の芳香族ポリアミド短繊維、ヘテロ環含有芳香族ポリマーからなる短繊維、或いは、ポリエーテルエーテルケトンからなる短繊維などが挙げられ、中でも芳香族ポリアミド短繊維が好ましく使用される。また、上記短繊維は単独で使用されても構わないし、2種以上が混合されて使用されても構わない。
【0018】
さらに、該芳香族ポリアミド短繊維は、ポリアミドを構成する繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、下記式(I)で表される芳香族ホモポリアミド、または、芳香族コポリアミドからなる短繊維である。
【0019】
ここでAr1、Ar2は芳香族基を表し、なかでも、下記式(II)から選ばれた同一の、または、相異なる芳香族基であるものが好ましい。但し、芳香族基の水素原子は、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3個の低級アルキル基、フェニル基などで置換されていてもよい。
【0020】
【化1】
Figure 0003588423
【0021】
【化2】
Figure 0003588423
【0022】
このような芳香族ポリアミド繊維の製造方法や繊維特性については、例えば、英国特許第1501948号公報、米国特許第3733964号公報、第3767756号公報、第3869429号公報、日本国特許の特開昭49−100322号公報、特開昭47−10863号公報、特開昭58−144152号公報、特開平4−65513号公報などに記載されている。
【0023】
本発明において用いる芳香族ポリアミド短繊維の中で特に好ましいのはパラ型芳香族ポリアミド短繊維である。これは、前記Ar1、Ar2の50モル%以上がパラ配位の芳香族基である短繊維であり、具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維(デュポン(株)製「ケブラー」)、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」)等が例示され、特に後者は、製糸の際に使用する溶媒に起因する不純イオンの含有量が少なく電気絶縁性に優れているのでより好ましい。
【0024】
さらに、上記コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維の表面にカチオン変換性で且つ非イオン吸着性の固体状無機化合物を固着させたものは、電気回路板用積層物の製造工程、特にエポキシ樹脂などの配合ワニスを含浸させる工程において、配合ワニスの含浸性が向上するうえ、該無機化合物を介して配合ワニスとの接着性も向上するため、電気回路板用積層物の製造工程における変形量(捩れ、反り、波打ちの量など)が少なくなる効果や、高湿下における電気絶縁性、寸法安定性などを向上させる効果も有しているのでより好ましい態様である。
【0025】
ここで、上記のカチオン変換性で且つ非イオン吸着性の無機化合物とは、カチオンとの変換能を有し、さらに非イオンの吸着能をも有する化合物であり、具体例としてはシリカ・アルミナ、シリカ・マグネシア、カオリン、酸性白土、活性白土、タルク、ベントナイト、オスモス等があげられる。
【0026】
これらの化合物は、特に固体粒子として繊維表面に固着されていると接着効果が更に向上するので好ましく、該粒子の大きさ(粒子径)としては、0.01〜5.00μm程度のものが用いられる。このように繊維表面に無機化合物を固着させるには、例えば、繊維表面が軟化、溶融した状態で該無機化合物粒子を繊維表面に押し付けて繊維の極表層部に食い込ませれるものでよい。
【0027】
なお、パラ型芳香族ポリアミド短繊維は、その末端等の一部がフィブリル化されていてもよいが、その割合が多くなりすぎると配合ワニスの含浸性を不均一にしたり、表面平滑性を低下させる等の問題を生じ、本発明の目的を阻害するようになって好ましくない。
【0028】
次に、本発明に用いる比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド繊維には、パラ型芳香族ポリアミドが好ましく用いられ、現在は通常市販されていない繊維であって、その破断伸度が5.3%以上(高伸度)、且つ、強度が17.5g/デニール以下(低強度)、より好ましくは、該破断伸度が6.0%以上、且つ、強度が16.5g/デニール以下であり、さらに好ましい比重の範囲として、比重が1.375以下であるものが好ましく用いられる。
【0029】
このようなパラ型芳香族ポリアミド繊維は、例えば、前記のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維の製造工程において、延伸しないもの(未延伸繊維)を用いるか、又は、結晶化が促進されないように延伸倍率を低く押さえたり(例えば、延伸倍率が3倍以下、若しくは、最大可能延伸倍率の30〜40%以下の低倍率延伸繊維)、熱履歴を少なくするなど製造条件に工夫をこらすことにより得られる。
【0030】
このようなパラ型芳香族ポリアミド繊維は、通常、市販されている該コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維とは大きく異なる特性、即ち、破断時の伸度が5.3%以上(高伸度)、強度が17.5g/デニール以下(低強度)や、比重が1.380以下(低比重)を有するものである。このような特性を有するパラ型芳香族ポリアミド繊維は、市販繊維と同一組成であるにもかかわらず、加熱加圧条件下で軟化、変形、溶融(半溶融状態も含む)、切断し易いものであり、メタ型芳香族ポリアミド繊維よりも低吸水性であり、この特性を生かした紙の製造を可能にするものである。前記の比重が、1.380を超えるものは、かかる加熱加圧条件下で軟化、変形、溶融が起こりにくく、この特性を生かした紙の製造が困難になる。
【0031】
すなわち、このように加熱加圧条件下で変形、軟化、溶融、切断し易い特殊な性能を有するパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維を少量混合して湿式抄造された紙は、カレンダー加工などの加熱加圧時に、該繊維が軟化、変形、部分溶融、部分切断して他の芳香族ポリアミド短繊維との交絡性や接着性、接着面積を高めて、単繊維相互間の固定度や固着度を向上させ、形成される紙の引張り強度や層間剥離強度を向上ならしめる効果を有し、該紙を使用した電気材料や電気回路板用積層物などの製造工程における変形量を減少させるための有効な好適基材となる。
【0032】
なお、この場合においても前記の如く、該比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド繊維表面には、固体状のカチオン変換性及び非イオン吸着性の無機化合物を固着させた方が、エポキシ樹脂などの配合ワニスを含浸させる工程において、該配合ワニスの含浸性がよく、また、該無機化合物を介して配合ワニスとの接着性も向上するため、電気回路板用積層物等の製造工程における変形量も少なくなる効果や、高湿度下における電気絶縁性、寸法安定性などを向上させる効果も発揮されるのでより好ましい。更に、このような未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド繊維は、メタ型芳香族ポリアミド繊維に比べて不純イオン含有量や吸水率が著しく少なく、吸脱湿に伴う寸法変化も小さいために電気絶縁性、特に高湿度下における電気絶縁信頼性が長期に渡って要求される電気材料用基材や各種環境雰囲気下で寸法安定性が望まれる電気回路板用積層物の基材には好適な材料となる。
【0033】
本発明においては、芳香族ポリアミド短繊維の全重量に対して、該比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維が4〜35重量%、該パラ型芳香族ポリアミド繊維以外の芳香族ポリアミド繊維からなる短繊維が65〜96重量%の範囲で混合されてることが好ましい。
【0034】
また、市販の汎用パラ型芳香族ポリアミド繊維の中には、加熱等により繊維中に含まれる水分(湿分)を脱水(脱湿)処理すると繊維軸方向に伸びる傾向を示すものがあり、また、比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維の中には、同様の条件で、逆に繊維軸方向に収縮する傾向を示す繊維があるため、これらの両繊維を上手く組合わせると、吸湿や乾燥、脱湿を繰返しても寸法変化が起こり難く、耐熱寸法安定性や耐湿寸法安定性に優れた耐熱性繊維紙を得ることができるからである。特に、本発明に使用する比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維は、メタ型芳香族ポリアミドからなる短繊維に比べて、平衡水分や不純イオン含有量が少なく、且つ、前記と同様の処理条件下における繊維軸方向の寸法変化も、汎用のパラ型芳香族ポリアミド繊維と丁度逆方向に、同程度より僅かに多い量だけ変化するので、全体的なバランスを取り易く、寸法安定性に優れた耐熱性繊維紙を設計し易いためである。
【0035】
前記の比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維は、紙の全重量の少なくとも4重量%混合させることが好ましく、更に好ましくは8重量%以上である。但し、該比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維は、市販されている汎用のパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維に比べて平衡水分率(含水率)が高いために、その混合量を多くしすぎると、電気絶縁性、特に高温高湿下における電気絶縁性を低下せしめて、長期に渡って高度な信頼性が要求される電気回路板用積層物の基材には使用出来なくなるおそれがある。このため、該混合量は多くとも35重量%が限界であり、好ましくは20重量%以下である。比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維の混合比率は、同様の効果を奏するメタ型芳香族ポリアミド短繊維の混合量よりもやや少な目の量で同等以上の性能を発揮する利点を有しており、該メタ型芳香族ポリアミド短繊維にはない低吸水率化や不純イオン含有量低減の観点から有利であるが、耐熱性低下がやや懸念されるので、目的とする用途に応じて、前記の範囲で混合使用することが好ましい。
【0036】
なお、芳香族ポリアミド短繊維以外の耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維としては、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールやポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールなどのヘテロ環含有芳香族ポリマーからなる短繊維、或いは、ポリエーテルエーテルケトンからなる短繊維などが挙げられる。
【0037】
このように、使用する耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維の種類や混合割合を調節することによって、280℃の温度で5分間熱処理した後の熱寸法変化率を0.3%以下、好ましくは0.2%以下とすること、また、下記に示す方法で測定した時の耐熱性繊維紙の吸脱湿による寸法変化の最大変化量を65μm以下、好ましくは55μm以下、さらに好ましくは40μm以下にコントロールすることが可能となり、このような紙を使用して耐変形性(捩じれ、反り、波打ち等の現象)や耐熱寸法安定性、耐湿寸法安定性に著しく優れた電気絶縁材料や電気回路板用積層物を作成することができる。
【0038】
ここに、耐熱性繊維紙の吸脱湿による寸法変化量は次の方法により測定する。すなわち、常温下で、且つ、湿度:85%RH以上の雰囲気中に48時間以上放置し、充分吸湿させた耐熱性繊維紙(長さ=20mm、幅=5mm)を、昇温速度10℃/分で常温から280℃まで昇温し、次いで、直ちに降温速度10℃/分で常温まで降温して乾燥処理し、引き続いて同条件で常温から280℃までの昇降温を2回繰り返した後に、該紙の長さ方向の最大変化量(最大伸長量または最大収縮量)を測定して求める。
【0039】
上記の耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維の単繊維繊度は、0.1〜10デニールの範囲のものが好ましく用いられ、さらに0.3〜5.0デニールの範囲のものが好ましい。該単繊維繊度が0.1デニール未満では、製糸技術上困難な点が多く、断糸や毛羽を発生して良好な品質の繊維が生産出来ず、且つ、コストも高くなって好ましくない。一方、該単繊維繊度が10デニールを超えると、繊維の機械的物性、特に強度の低下が大きくなり実用的でなくなる。
【0040】
さらに、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維の繊維長は、0.5〜80mm、好ましくは1〜60mmの範囲にあり、特に、湿式法で紙を形成する場合においては2〜12mmの範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは2.5〜6mmである。該繊維長が0.5mm未満では、得られる芳香族繊維紙の繊維集合体としての機械的物性が不充分なものとなり易く、一方、繊維長が80mmを超えると、短繊維の開繊性、分散性等が悪化し、得られる繊維集合体の均一性が損なわれ、やはり機械的物性が不充分なものとなり易く好ましくない。
【0041】
また前記の如く、2種以上の耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維を混合した場合の繊維長は、同一でもよいが、該繊維長が少なくとも0.6mm以上、好ましくは、1.0mm以上相互に異なっていることが好ましい。その理由は、両者の短繊維長が同一である場合に比べて、両者の短繊維長が異なる場合の方が、紙中における両者の単繊維間の接着点が増加し、特に、紙の厚さ方向の熱寸法安定性を良好ならしめるためである。特に、未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維と該パラ型芳香族ポリアミド短繊維以外の芳香族ポリアミド繊維とを混合した場合にはこの効果が顕著に発現する。なぜなら、カレンダー加工などの加熱加圧時に該比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維は、高伸度で低強度であり、結晶化度が少なく低比重であるため、必要に応じて、該未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維以外の芳香族ポリアミド短繊維の周辺で上手く伸びたり、変形したり、切断したりして単繊維相互間を有効に接着、又は、結着ならしめるためである。
【0042】
次に、本発明で用いる有形樹脂バインダーとしては、熱硬化性の有機系樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂などであるが、中でも分子内にエポキシ官能基を有する水分散可能なエポキシ系の樹脂が、プリプレグ作成工程で含浸させる配合ワニスとの相溶性も良く好適である。
【0043】
また、本発明で使用する有機高分子重合体からなるフィブリッドは、その平衡水分率が7.5%以下であることが好ましく、湿式抄造工程において、バインダー性能を呈する微小フィブリルを有する薄葉状、鱗片状の小片、又は、ランダムにフィブリル化した微小短繊維の総称であり、例えば、特公昭35−11851号公報、特公昭37−5732号公報等に記載の如く、有機高分子重合体溶液を該高分子重合体溶液の沈澱剤及び剪断力が存在する系において混合することにより製造されるフィブリッドや、特公昭59−603号公報に記載の如く、光学的異方性を示す高分子重合体溶液から成形した分子配向性を有する成形物に叩解等の機械的剪断力を与えてランダムにフィブリル化させたフィブリッドが例示され、なかでも前者の方法によるものが最適である。
【0044】
このようなフィブリッドを形成する有機高分子重合体としては、繊維、若しくは、フィルム形成能を有する耐熱性高分子重合体であって熱分解開始温度が310℃以上のものであればどれでも使用できる。
【0045】
例えば、芳香族ポリアミド、溶融液晶性全芳香族ポリエステル、ヘテロ環含有芳香族ポリマー等を用いることが出来るが、それらの中でも、特に、不純イオン含有量の少ないコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド(帝人(株)製「テクノーラ」)や、平衡水分率の小さいp−ヒドロキシ安息香酸と2,6−ヒドロキシナフトエ酸の共重合体からなる溶融液晶性全芳香族ポリエステル((株)クラレ製「ベクトラン」)が好ましく使用され、また、耐熱性が要求される場合には、前述のポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(東洋紡績(株)製「PBO」)を使用するものが好ましい。
【0046】
上記有機高分子重合体からなるフィブリッドの耐熱性繊維紙中に占める比率は、3〜55重量%の範囲であり、好ましくは4〜45重量%、さらに好ましくは、5〜30重量%の範囲にあるものである。該フィブリッドの混合比率を比較的低めに設定する場合には、例えば、特公昭35−11851号公報や特公昭37−5732号公報等に記載された製造方法から得られるフィブリッドを用いるのが好ましく、また、混合比率を比較的高めに設定する場合には、特公昭59−603号公報に記載された方法により製造されたフィブリッドを用いるのが好ましく、さらにこれら両方の製造方法からなるフィブリッドを混合使用しても良い。
【0047】
上記フィブリッドの混合比率が3%未満では、湿式抄造工程で紙形成に必要な引張強力を維持出来ず、一方、55重量%を超えると、得られる耐熱性繊維紙の嵩密度が大きくなり過ぎ、配合ワニスの含浸性を阻害する。
【0048】
また、前述の短繊維の場合と同様、有機高分子重合体からなるフィブリッドの中にも、含有する水分(湿分)を脱水(脱湿)処理すると収縮又は伸長するフィブリッドがあるため、これらの両方を上手く組み合わせることにより、水洗や乾燥を繰り返しても寸法が変化し難く、耐熱寸法安定性や耐湿寸法安定性に優れた耐熱性繊維紙が得られるので、2種以上のフィブリッドを混合して使用しても構わない。
【0049】
また、上記有機高分子重合体からなるフィブリッドは、湿式抄造工程において、短繊維間を結合せしめるバインダーとしての機能を有するが、その結合力(接着力)は、熱硬化性の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂等に比べて劣るため、これら熱硬化性樹脂からなる水分散型の結合剤を少量添加して湿式抄造工程における抄造性能を高めても構わないし、場合によっては、全量を上記の有機系バインダー樹脂で代替してもよい。特に、前記のように分子内にエポキシ官能基を有する水分散可能なエポキシ系の樹脂を用いたものがプリプレグ工程で使用する配合ワニスとの相溶性が良く結合剤として最適である。
【0050】
該結合剤(有機系樹脂バインダー)が本発明の芳香族繊維紙中に占める割合としては、前記有機系高分子重合体からなるフィブリッドの重量の1/2以下、好ましくは1/3以下、さらに好ましくは、1/4以下の範囲で用いるものがよい。該結合剤の割合が該フィブリッド重量の1/2を超えると、湿式抄造工程における樹脂のマイグレーションをフィブリッドが抑制出来なくなるおそれがあり、紙の表裏面側部と中層部との層間接着力が不均一となって、その後のカレンダー工程で紙中層部の単繊維の配向性や繊維密度分布の均一性を低下せしめる場合もあるためである。しかし用途によっては、紙の中層部における空隙量を多くして配合ワニスの紙中層部における含浸量を多めにした方が良い場合もあるので、この場合にはフィブリッドの全量を上記の有機系バインダー樹脂で代替えしてもよい。なお、本発明の耐熱性繊維紙には、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維などを混合させてもよい。
【0051】
一般に電気回路板用積層物においては、積層物基材の耐熱寸法安定性、耐湿熱寸法安定性、耐変形性(捩じれ、反り、波打ち等の現象)等の特性が重要な品質項目になり、これらの特性は積層物基材として用いた紙の嵩密度、引張強力、層間剥離強力等の値により影響される。
【0052】
従って、本発明の耐熱性繊維紙は、その嵩密度が0.45〜1.13g/cm3、好ましくは、0.50〜0.88g/cm3、更に好ましくは、0.55〜0.75g/cm3の範囲内にあるものがよい。該嵩密度が0.45g/cm3未満の場合は、紙の中層部における短繊維相互間の接着力が低下して配合ワニスの紙内部への含浸量が多くなりすぎ、プリプレグ製造工程や電気回路板用積層物の製造工程、特に、積層プレス工程で含浸ワニスの流れに起因する単繊維の部分的な移動が生じ、得られる電気回路板用積層物内部で繊維の密度ムラが発生して、耐熱寸法安定性や耐変形性の低下を招くことがある。
【0053】
一方、該嵩密度が1.13g/cm3を超える場合は、配合ワニスの紙内部への含浸がほとんどなくなり、得られる電気回路板用積層物の電気絶縁性、耐熱寸法安定性、耐変形性が低下することがあるので好ましくない。
【0054】
また、本発明の耐熱性繊維紙の引張強力は、1.5kg/15mm以上、好ましくは、2.5kg/15mm以上、さらに好ましくは、3.5kg/15mm以上であることが好ましく、また、層間剥離強力は、12g/15mm以上、好ましくは、15g/15mm以上、さらに好ましくは、20g/15mm以上であることが好ましい。
【0055】
該層間剥離強力が、12g/15mm未満であると紙中層部における単繊維相互間の接着力が低下して配合ワニスの紙内部への含浸量が多くなりすぎ、プリプレグ製造工程や電気回路板用積層物の製造工程、特に、積層プレス工程で含浸ワニスの流れに起因する単繊維の部分的な移動が生じ、得られる電気回路板用積層物内部で繊維の密度ムラが発生して、耐熱寸法安定性や耐変形性の低下を招くことがある。また、紙の引張強力が、1.5kg/15mm未満になると、配合ワニスの含浸工程で、紙の切断が生じ易くなる傾向があるので好ましくない。
【0056】
このような耐熱性繊維紙は、公知の方法で製造することができ、例えば、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及び比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維と、有機系樹脂バインダー及び/又は、耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドとを所定の比率になるように秤量して混合し、該短繊維とフィブリッドの混合物の濃度が約0.15〜0.35重量%となるように水中に投入して均一分散、調整した水性スラリー中に、必要に応じて、分散剤や粘度調整剤を加えた後、短網式や丸網式等の抄紙機による湿式抄造法で湿紙を形成し、この湿紙にもし必要ならば、有機系のバインダー樹脂をスプレー、シャワー、ローラーピックアップ、浸漬などの方式等により付与した後、乾燥して得た乾燥紙を前記の嵩密度になるように加熱加圧し、有機系樹脂バインダーを部分硬化させ、及び/又は、該有機高分子体からなるフィブリッド及び/又は比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維を部分的に軟化及び/または溶融させることにより得られる。
【0057】
上記の加熱加圧を、カレンダー機を用いて行う場合は、直径約15〜80cmの硬質表面ロールと直径約30〜100cmの表面変形可能な弾性ロールとの間で、好ましくは、直径約20〜80cmからなる2ケの硬質表面ロール同士の間で行えばよい。その際、乾燥等で部分硬化された有機系樹脂バインダーを更に硬化させ、及び/又は、耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド及び/又は比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維を軟化及び/又は部分溶融させ、バインダーとしての機能を充分に発揮させるためには、220〜400℃の温度範囲で加熱することが好ましく、より好ましくは250〜350℃、さらに好ましくは280℃〜330℃の温度範囲を採用するのが良い。
【0058】
また、圧力は150〜250kg/cmの線圧力で加圧することが好ましく、さらに好ましくは180〜250kg/cmの線圧力を採用するのが良い。なお、上記のカレンダー加工は、1段の処理でもよいが、厚さ方向により均質な紙を得るためには、予備的に加熱加圧処理を施す2段処理を採用することが好ましい。
【0059】
これらの加熱加圧の条件が前記温度範囲、或いは前記圧力範囲を外れる場合は、有機系樹脂バインダーが充分に性能を発揮できなくなり、または、有機高分子重合体からなるフィブリッド及び/又は比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維がバインダーとしての機能を充分に発揮しなくなり、得られる耐熱性繊維紙の嵩密度が、0.45g/cm3未満になるか、若しくは、1.13g/cm3を超えるようになり、また、得られる芳香族繊維紙の引張強力が、1.5kg/15mm未満に、また、層間剥離強力も12g/15mm未満になるおそれがある。
【0060】
さらに、上記の条件下で加熱加圧処理して得られた耐熱性繊維紙は、温度280℃×5分間熱処理した後の熱寸法変化率が0.30%以下であり、耐熱寸法安定性に優れているうえに、平衡水分率が低く、電気回路板用積層物に好適に使用できるものである。
【0061】
【発明の作用】
このようにして得られる本発明の耐熱性繊維紙は、比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維や耐熱性の有機高分子体からなるフィブリッド、及び/又は有機系樹脂バインダーがバインダーの作用を呈しているために、低い嵩密度であっても高い引張強力と高い層間剥離強度を有しており、吸水率も少ないため、紙の厚さ方向や面方向の熱や温度、湿度に対する寸法変化も小さく、更に、樹脂含浸工程などにおける紙基材の切断が少なくなって、配合ワニスなどの樹脂含浸性が良好で、プレス積層成形工程における短繊維の部分的な移動もなくなるので、電気材料や電気回路板用積層物の製造工程などにおける変形量も少なくなって、平坦で均一な積層物を得ることができる。
【0062】
つまり、本発明の耐熱性繊維紙においては、(1)比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミドからなる短繊維が低水分性であり、これをバインダーの一部として使用しているために、抄造時の乾燥工程における有機系樹脂バインダーのマイグレーション現象が抑制され、樹脂バインダーの偏在化が緩和されて、紙の厚さ方向における均一性が向上する。
【0063】
(2)所定の嵩密度になるように乾燥紙をカレンダー加工して紙中でほぼ均一分散している短繊維を結合せしめる際に、比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミド短繊維や耐熱性の有機系高分子重合体からならフィブリッドが部分的に軟化及び/または変形、溶融しているために、該単繊維相互間を容易に固定又は固着せしめ、又は、有機系樹脂バインダーを硬化させて、紙内部の単繊維の相互移動を抑制し、単繊維配列の乱れを防止する。
【0064】
(3)フィブリッドを使用するために単繊維間相互の充填が少なく、樹脂含浸性が良好であることの相乗効果により、紙の断面方向と面方向の単繊維密度や繊維配列が均一になって、熱寸法変化や変形が起こりにくくなるのである。
【0065】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中で用いた物性の測定法は以下の通りである。
【0066】
(1)嵩密度:
JIS C−2111の6.1に準拠する方法で測定した。
(2)引張強力:
定速伸長型引張試験機を用い、JIS C−2111の7に準拠する方法で測定した。
(3)比重:
密度勾配管法(N−へプタン/四塩化炭素、25℃)により求めた。
(4)層間剥離強力:
定速伸長型引張試験機を用い、長さ200mm,幅15mmの試料の中間層部をT字状に剥離する時の強力(g/15mm)を測定した。
【0067】
(5)熱寸法変化率:
高精度二次元座標測定機(ムトウ工業株式会社製)を用い、長さ300mm、幅50mmの試料の長さ方向について、熱処理前と温度:280℃で5分間熱処理した後の長さを測定し、下記計算式により熱寸法変化率を算出した。なお、測定用の試料は、連続紙の長さ方向と幅方向から採取して測定し、その平均値で比較判定した。
【0068】
【数1】
Figure 0003588423
【0069】
(6)平衡水分率:
短繊維、フィブリッド及び繊維紙の平衡水分率は、JIS L―1013に準拠し、試料を120℃の雰囲気中で絶乾した後、温度20℃かつ相対湿度65%RHにおいて72時間調整し、該試料中に含まれる水分率を求めて、該試料の絶乾状態での重量に対する割合を算出し、これを百分率(%)にて表す。
尚、試料が2種類以上の短繊維やフィブリッドを含む場合は、各構成成分の平衡水分率を独立に測定し、混合比に従って重量平均にて表すものとする。
【0070】
(7)温度及び湿度(吸脱湿)に対する寸法安定性評価:
熱分析装置[TMA;理学電機株式会社製サーモフレックス型]を用い、チャック間初期サンプル距離200mm,幅5mm、昇降温速度10℃/分で測定した。なお、測定用試料は常温下で相対湿度85%RH以上の雰囲気中に48時間以上保管し、十分吸湿させたものを用いた。温度及び湿度に対する寸法安定性の比較判定は、上記試料を常温から280℃までの範囲内で昇温と降温を繰り返した場合における試料の寸法変化軌跡を描き、最初の昇温時と降温時又は2回目以降の昇温時と降温時の試料の寸法変化軌跡について比較観察し、昇降温操作前後または昇降温操作中における寸法変化軌跡の最大乖離量(最大変化量=最大伸長量または最大収縮量)を測定して、その大小により適否を判定した。即ち昇温時と降温時の寸法変化軌跡の乖離量の少ないもの程、温度及び湿度変化に対して安
定であり、耐熱寸法安定性、耐変形性に優れていると判断した。
【0071】
(8)積層物の変形量:
高純度のブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂に硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤として2−エチル−4メチルイミダゾールを配合してなるエポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトンとメチルセルソルブの混合溶液に溶解して得た配合ワニスを耐熱性繊維紙に含浸させた後、110〜120℃の温度で5〜10分間乾燥して、樹脂分の体積含有率が55%であるBステージのプリプレグ紙を作成した。該プリプレグ紙を18μ厚さの銅箔の両側に積層し、更に、その外側に同一の銅箔を積層し、ホットプレスにより、減圧下で170℃×40kg/cm×50分間、プレスを行い、樹脂を硬化せしめて電気回路板用積層物を得、更に200℃の温度で熱風乾燥機内で約20分間後硬化処理を行った。
【0072】
この電気回路板用積層物を150mm角に裁断し、該積層物の端部から20mmの幅で両面の銅箔を枠状に残して、中央部の110mm角相当部を全部エッチングにより銅箔を取り除いて評価用のサンプルを作成する。
【0073】
この部分エッチングされた電気回路板用積層物を260℃の温度で10分間熱処理した後の中央部分を起点とした最大変形量(反り量、又は捩じれや波み打ちによる浮き上がり量)を測定し、変形量とする。
【0074】
(9)積層物の絶縁抵抗値:
前記(8)で作成した銅箔エッチング前の電気回路板用積層物を用い、その片面に、0.15mm間隔の櫛型電極パターンをエッチングにより形成し、60℃、95%RHの雰囲気内で、この櫛形電極間に35Vの直流電圧を印加しながら1000時間保管した。次いで、該櫛形電極を20℃、60%RHの雰囲気内に1時間保管後、この櫛形電極間に直流電圧(35〜90V)を60秒間印加して絶縁抵抗値を測定した。
【0075】
[実施例1]
耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなり、その繊維表面にタルクが0.5重量%、オスモスが0.1重量%固着した破断時の伸度が4.6%で破断時の強度が29.4g/デニール、比重が1.398である単繊維繊度1.5デニール、繊維長3mm、平衡水分率1.8%の短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」):83重量%を用い、未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維として、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなり、その繊維表面にタルクが0.6重量%、オスモスが0.2重量%固着した破断時の伸度が13.2%で、破断時の強度が4.2g/デニール、比重が1.355である単繊維繊度2.5デニール、繊維長5mm、平衡水分率4.1%の短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」、延伸倍率:1.2):12重量%を用い、平衡水分率が4.4%のコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッド(帝人(株)製):5重量%とをパルパーにより水中に離解分散させ、これに0.02%濃度になるように分散剤(松本油脂(株)製「YM−80」)を添加して、繊維濃度0.15重量%の抄紙用スラリー液を作成した。
【0076】
次にタッピー式角型手抄機を用い、該抄紙用スラリー液を使用して抄紙し、軽く加圧脱水後、温度:160℃の熱風乾燥機中で約15分間乾燥して、繊維紙を得た。
【0077】
更に、直径約400mmの一対の硬質表面金属ロールからなるカレンダー機を用い、200℃、160kg/cmの条件で加熱、加圧した後、直径約500mmの一対の硬質表面金属ロールからなる高温ハイカレンダー機を用い、320℃、200kg/cmの条件で加熱、加圧して、前記の未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミドであるコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる短繊維(単繊維繊度:2.5デニール)及びコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドを軟化、及び/又は、部分溶融させてバインダーとして用い、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維であるコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる単繊維同士を固着させて、坪量72g/m2の耐熱性繊維紙を得た。
【0078】
[実施例2〜8、比較例1〜2]
耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として、実施例1で使用したコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(単繊維繊度1.5デニール)を用い、未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミドからなる短繊維として、実施例1で使用したコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(単繊維繊度2.5デニール)を用い、フィブリッドとして実施例1で使用したコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドを用い、それぞれの混合割合を表1に示す如く変更した以外は実施例1と同様に実施して繊維紙を得た。
【0079】
[実施例9]
耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として、実施例2で使用したコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(単繊維繊度1.5デニール)を用い、さらに、未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミドからなる短繊維として、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなり、その繊維表面にタルクが0.6重量%、オスモスが0.2重量%固着した破断時の伸度が5.8%で、破断時の強度が6.1g/デニール、比重が1.377である単繊維繊度2.5デニール、繊維長5mm、平衡水分率3.8%の短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」、延伸倍率:1.8)を用い、さらに、フィブリッドとして実施例2で用いたコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドを用い、それらの混合比率を表1に示す如く変更した以外は実施例2と同様に実施して繊維紙を得た。
【0080】
[比較例3]
耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及びフィブリッドとして、実施例1で使用したものと同様のものを使用し、比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミドからなる短繊維としては一切使用せず、それらの混合比率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に実施して繊維紙を得た。
【0081】
[比較例4]
比較例3において、フィブリッドを使用せず、代わりに固形分濃度:10重量%のビスフェノールAエピクロルヒドリン型水分散性エポキシ樹脂バインダー(大日本インキ化学工業(株)製)を該樹脂成分が5重量%となるようにスプレー方式で付与して実施する以外は比較例3と同様に実施して繊維紙を得た。
【0082】
[比較例5]
比較例3において、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及びフィブリッドの混合比率を表1に示す如く変更して実施する以外は、比較例3と同様に実施して繊維紙を得た。
【0083】
[比較例6]
比較例4において、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及び水分散型エポキシ樹脂バインダーの混合比率を表1に示すように変更して実施する以外は、比較例4と同様に実施して繊維紙を得た。
【0084】
[実施例10]
実施例2において、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドに代えて、平衡水分率が5.4%のポリパラフェニレンテレフタルアミドからなるフィブリッド(コーロン(株)製)を使用する以外は実施例2と同様に実施して繊維紙を得た。
【0085】
[実施例11]
実施例2において、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として使用したコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維に代えて、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる繊維を400℃の高温雰囲気中で熱処理して得た単繊維繊度:1.42デニール、比重:1.463、繊維長:3mm、平衡水分率:1.7%である短繊維(デュポン(株)製「ケブラー」)を用いる以外は実施例2と同様に実施して繊維紙を得た。
【0086】
[実施例12]
実施例11において、平衡水分率が5.4%のポリパラフェニレンテレフタルアミドからなるフィブリッド(コーロン(株)製):10重量%を使用する以外は実施例11と同様に実施して繊維紙を得た。
【0087】
[実施例13]
実施例2において、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッド(帝人(株)製)の混合比率を5重量%とし、さらに、固形分濃度:10重量%の水分散性エポキシ樹脂バインダー(大日本インキ化学工業(株)製)を、該樹脂分が5重量%となるようにスプレー方式で付与した以外は、実施例2と同様に実施して繊維紙を得た。
【0088】
[実施例14〜21、比較例7〜10]
実施例2において、ハイカレンダー機による加熱加圧条件を表1に示す如く変更した以外は実施例2と同様に実施して繊維紙を得た。
【0089】
[実施例22〜25]
実施例2において、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として使用したコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維の繊維長を表1に示す如く変更した以外は実施例2と同様に実施して繊維紙を得た。
【0090】
[実施例26]
実施例2において、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」):59重量%とポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる短繊維(東洋紡(株)製):20重量%とを用いた以外は、実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0091】
[実施例27]
実施例2において、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」):69重量%とポリエーテルエーテルケトンからなる短繊維(帝人(株)製):10重量%を用いた以外は、実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0092】
[実施例28]
実施例2において、耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維として、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」):69重量%と溶融液晶性全芳香族ポリエステルからなら短繊維((株)クラレ製「ベクトラン」):10重量%を用いた以外は、実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0093】
[実施例29]
実施例2において、未延伸若しくは低倍率延伸の芳香族ポリアミドからなる短繊維として、実施例2で用いたコポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミド短繊維(帝人(株)製「テクノーラ」):8重量%を用い、さらに、ポリメタフェニレンイソフタルアミドからなり、単繊維繊度が3.0デニール、繊維長:5mmの短繊維(帝人(株)製「コーネックス」):3重量%を併用する以外は、実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0094】
[実施例30]
実施例29において、ポリメタフェニレンイソフタルアミドからなる短繊維に代えてポリエーテルエーテルケトンからなる短繊維(帝人(株)製)を用いた以外は実施例29と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0095】
[実施例31]
実施例2において、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドに代えて、平衡水分率が7.2%のポリメタフェニレンイソフタルアミドからなるフィブリッドを用いた以外は実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0096】
[実施例32]
実施例2において、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドに代えて、平衡水分率が約0.05%の溶融液晶性芳香族ポリエステルからなるフィブリッド((株)クラレ製「ベクトラン」)を用いた以外は実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0097】
[実施例33]
実施例2において、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドに代えて、平衡水分率が4.0%のポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなるフィブリッドを用いた以外は実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0098】
[実施例34]
実施例2において、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドに代えて、平衡水分率が4.6%のポリパラフェニレンテレフタルアミドからなるフィブリッド(デュポン(株)製「ケブラー」):3重量%と平衡水分率が5.4%のポリパラフェニレンテレフタルアミドからなるフィブリッド(コーロン(株)製):7重量%を用いた以外は実施例2と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0099】
[実施例35]
実施例3において、コポリパラフェニレン・3,4’―オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドを使用せず、固形分濃度:10重量%のビスフェノールAエピクロルヒドリン型水分散性エポキシ樹脂バインダー(大日本インキ化学工業(株)製)を、該樹脂分が15重量%となるようにスプレー方式で付与した以外は実施例3と同様に実施して耐熱性繊維紙を得た。
【0100】
以上の各実施例や比較例に示した耐熱性繊維紙の製造条件を表1に、前記の測定方法により評価した諸特性を表2に示す。なお、表1に示すA/Bについて、Aは耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維を、Bは未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維を表わす。
【0101】
更に、該繊維紙を用い、前記の測定法のところで記載した方法により、配合ワニスを含浸させてプリプレグを作成し、これを使用して作成した電気回路板用積層物について変形量と高湿度下での絶縁抵抗値を測定した結果を併せて表1に示す。
【0102】
【表1】
Figure 0003588423
【0103】
【表2】
Figure 0003588423
【0104】
【発明の効果】
このように本発明の芳香族繊維紙は、従来技術で作成された耐熱性繊維紙が電気回路板用積層物に使用された際に有していた諸問題を解決し、特に、温度や湿度の変化による寸法変化を低下させ、吸水率(平衡水分率)を低下させて電気絶縁性を改良せしめたものであり、引張強力や層間剥離強力の高い耐熱性繊維紙を得たものである。該耐熱性繊維紙を基材に使用した電気回路板用積層物は、その製造工程や用途において、捩じれや反り、波打ちなどが殆ど発生しないため、微細回路の設計が可能で、且つ、リードレスセラミックチップキャリヤー(LCCC)やベアーチップ等の温度湿度膨張係数の小さな電子部品を直接搭載しても長期に渡って高い信頼性を維持できる画期的なものであり、特に、本発明の耐熱性繊維紙は高度の軽量性や高度の耐熱、耐湿寸法安定性、電気絶縁性が要求される用途で電気回路板用積層物の基材として好適である。

Claims (33)

  1. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及び比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維45〜97重量%と、有機系樹脂バインダー及び/又は耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド3〜55重量%とを主成分として形成された耐熱性繊維紙であって、該有機系樹脂バインダーが硬化されて、及び/又は該耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド、及び/又は、該パラ型芳香族ポリアミドからなる短繊維が部分的に軟化及び/又は溶融されてバインダーの作用を呈していることを特徴とする耐熱性繊維紙。
  2. 未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維が、破断時の伸度:5.3%以上、且つ、破断時の強度:17.5g/デニール以下の強伸度を有するものである請求項1に記載の耐熱性繊維紙。
  3. 未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維の比重が、1.375以下である請求項1、又は、請求項2に記載の耐熱性繊維紙。
  4. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維が、芳香族ポリアミド短繊維である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  5. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維である芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維である請求項4に記載の耐熱性繊維紙。
  6. パラ型芳香族ポリアミド短繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる短繊維及び/又はコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる短繊維である請求項5に記載の耐熱性繊維紙。
  7. コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる短繊維が、その表面に固体状のカチオン変換性、且つ、非イオン吸着性の無機化合物が固着された短繊維である請求項6に記載の耐熱性繊維紙。
  8. 芳香族ポリアミド短繊維の全重量に対して、未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維を4〜35重量%と、該パラ型芳香族ポリアミド繊維以外の芳香族ポリアミドからなる短繊維を65〜96重量%含んで形成されてなる請求項4〜7のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  9. 未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる短繊維及び/又はコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる短繊維である請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  10. コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる短繊維が、その表面に固体状のカチオン変換性、且つ、非イオン吸着性の無機化合物が固着された短繊維である請求項9に記載の耐熱性繊維紙。
  11. 有機系樹脂バインダーが、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フルオロ重合体樹脂からなる群から選ばれた水分散性の1種、又は、2種以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  12. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維が、ヘテロ環含有芳香族ポリマーからなる短繊維である請求項1〜3、又は、請求項9〜11のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  13. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維が、ポリエーテルエーテルケトンからなる短繊維である請求項1〜3、又は、請求項9〜11のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  14. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維の繊維長が、2〜12mmの範囲にある請求項1〜13のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  15. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維の繊維長と未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維の繊維長とが0.6mm以上異なっている請求項1〜14のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  16. 耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドが、7.5%以下の平衡水分率を有するフィブリッドである請求項1〜15のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  17. 耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドが、ポリパラフェニレンテレフタルアミド及び/又はコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなるフィブリッドである請求項16に記載の耐熱性繊維紙。
  18. 耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドが、ポリメタフェニレンテレフタルアミドからなるフィブリッドである請求項16に記載の耐熱性繊維紙。
  19. 耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドが、溶融液晶性全芳香族ポリエステルフィブリッドである請求項16に記載の耐熱性繊維紙。
  20. 耐熱性の有機系高分子重合体からなるフィブリッドが、ヘテロ環含有芳香族ポリマーからなるフィブリッドである請求項16に記載の耐熱性繊維紙。
  21. 耐熱性繊維紙の嵩密度が、0.45〜1.13g/cm3である請求項1〜20のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  22. 下記方法で測定した紙の最大寸法変化量が、65μm以下である請求項1〜21のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
    <紙の脱湿による寸法変化量の測定方法>
    室温下の85%RH以上の雰囲気中に48時間以上保管し、充分吸湿させた耐熱性繊維紙(長さ=20mm、幅=5mm)を、昇温速度10℃/分で室温から280℃まで昇温し、次いで直ちに降温速度10℃/分で室温まで降温して乾燥処理し、続けて同条件で常温から280℃まで昇降温を2回繰り返した後の該紙の長さ方向の最大寸法変化量(最大伸長量または最大収縮量)を測定する。
  23. 280℃の温度で5分間熱処理した時の長さ方向の寸法変化率が0.30%以下である請求項1〜22のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  24. 引張強力が1.5kg/15mm以上、層間剥離強力が12g/15mm以上である請求項1〜23のずれか1項に記載の耐熱性繊維紙。
  25. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維及び比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維45〜97重量%と、有機系樹脂バインダー及び/又は耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッド3〜55重量%とを湿式抄紙した後、乾燥して得た乾燥紙を、220〜400℃の温度下、150〜250kg/cmの圧力下で加熱加圧して、該耐熱性の有機高分子重合体からなるフィブリッドを部分的に軟化、及び/又は、溶融させることを特徴とする耐熱性繊維紙の製造方法。
  26. 湿式抄紙した後に該湿式抄紙に有機系樹脂バインダーを付与する請求項25に記載の耐熱性繊維紙の製造方法。
  27. 比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド繊維が、破断時の伸度:5.3%以上、且つ、破断時の強度:17.5g/デニール以下の強伸度を有するものである請求項25、又は、請求項26に記載の耐熱性繊維紙の製造方法。
  28. 耐熱性の有機高分子重合体からなる短繊維が、芳香族ポリアミド短繊維である請求項25〜27のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙の製造方法。
  29. 芳香族ポリアミド短繊維が、パラ型芳香族ポリアミド短繊維である請求項28記載の耐熱性繊維紙の製造方法。
  30. 芳香族ポリアミド短繊維の全重量に対して、比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維:4〜35重量%と、該パラ型芳香族ポリアミド繊維以外の芳香族ポリアミド短繊維:65〜96重量%とを用いる請求項28、又は、請求項29に記載の耐熱性繊維紙の製造方法。
  31. 比重が1.380以下である未延伸若しくは低倍率延伸のパラ型芳香族ポリアミド短繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる短繊維及び/又コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる短繊維である請求項25〜30のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙の製造方法。
  32. 耐熱性繊維紙に熱硬化性樹脂を含浸して形成されたプリプレグであって、該耐熱性繊維紙が、請求項1〜24のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙であることを特徴とするプリプレグ。
  33. 熱硬化性樹脂を含浸した耐熱性繊維紙を加熱加圧成形して形成された積層板であって、該耐熱性繊維紙が、請求項1〜24のいずれか1項に記載の耐熱性繊維紙であることを特徴とする積層板。
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