JP3588115B2 - レセプターキメラによる細胞性免疫の回復 - Google Patents
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Description
本発明は、免疫系の機能を回復させることのできる機能性プロテイン−チロシンキナーゼキメラに関する。特に本発明は、該キメラにより認識される標的に対して細胞を応答させるキメラを細胞内で発現させることによる、リンパ球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、または顆粒球の調節に関する。本発明はまた、治療細胞を、特異的な感染源に感染した細胞、感染源自体、腫瘍細胞、または自己免疫発生細胞のいずれかを特異的に認識し破壊するようにさせることのできる機能性プロテイン−チロシンキナーゼキメラにも関する。特に本発明は、細胞傷害性Tリンパ球を、HIVエンベロープタンパク質を発現する細胞を特異的に認識し溶解するように指向化することができるプロテイン−チロシンキナーゼの作成に関する。それにより、本発明は、HIVウイルスにより引き起こされるAIDS(後天性免疫不全症候群)のような病気に対する治療法を提供する。
発明の背景
T細胞レセプターによるT細胞の抗原認識は、免疫学的現象の領域の基本である。T細胞は、いわゆる細胞性免疫を導く。これには、免疫系の細胞による外来組織または感染細胞の破壊が含まれる。免疫応答を調節する「ヘルパー」および「サプレッサー」細胞、異常細胞を直接殺傷することができる細胞傷害性(または「キラー」)細胞を含む、多様なT細胞が存在する。
別の細胞の表面に提示された特定の抗原を認識し結合したT細胞は、活性化され、それから増殖し、そしてもしそれが細胞傷害性細胞であれば、結合した細胞を殺傷することができる。
自己免疫疾患は、宿主組織と反応する抗体、または自己反応性である免疫エフェクターT細胞の産生により特徴づけられる。自己抗体は、体内組織中の類似の化合物と交差反応する抗原を含む外来物質または臓器により活性化された、正常なT−およびB−細胞反応により産生されることもある。臨床に関連のある自己抗体の例としては、重症筋無力症における抗アセチルコリンレセプター抗体、全身性エリテマトーデスにおける抗DNA抗体、抗赤血球抗体、および抗血小板抗体が挙げられる。
HIVおよび免疫病原
1984年にHIVがAIDSの病原体であることが示された。当時から、AIDSの定義は、どのような基準を診断に含むべきかということに関して、何度も訂正されてきた。しかしながら、診断パラメータの変動にも関わらず、AIDSの共通の特徴は、HIVの感染およびその後の持続性の全身症状の発現、および二次感染、新生物、神経病のようなAIDSを定義づける疾患である。「ハリソン内科書(Harrison's Principles of Internal Medicine)、第12版、マグローヒル(McGraw Hill)(1991)」。
HIVは、レンチウイルス亜科のヒトレトロウイルスである。4つの確認されているヒトレトロウイルスは、ヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV−1とHTLV−2)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV−1とHIV−2)という、二つの異なる群に属する。前者は形質転換ウイルスであり、後者は細胞変性ウイルスである。HIV−1は世界中の最も一般的なAIDSの原因として同定された。HIV−1とHIV−2の間の配列相同性は約40%であり、HIV−2はサル免疫不全ウイルス(SIV)群のうちのいくつかとより関連が深い。「Curran,J.et al.,Science,329:1357−1359(1985);Weiss,R.et al.,Nature,324:572−575(1986)」を参照のこと。
HIVは、通常のレトロウイルス遺伝子(env、gag、およびpol)、およびウイルスの複製やその他の生物学的活性に関わる6つの特別な遺伝子を有している。前述のように、AIDSの共通の特徴は、とりわけ細胞性免疫に対する重篤な免疫不全である。この免疫不全により、多様な日和見疾患、特にある種の感染および新生物が引き起こされる。
AIDSにおける免疫不全の主要な原因は、胸腺由来(T)リンパ球のサブセット、T4群の量的および質的な不全であることが明らかにされている。この細胞サブセットは、HIVの細胞レセプターであることが証明されている、CD4表面分子の存在という表現型により定義される。「Dalgleish et al.,Nature,312:763(1984)」。T4細胞は、HIVが感染する主要な細胞型であるが、本質的には、表面にCD4分子を発現するいかなるヒト細胞もHIVに結合し感染されうる。
従来、CD4+T細胞はヘルパー/インデューサーの役割を与えられている、つまり、その機能はB細胞へ活性化シグナルを提供すること、または相反するCD8マーカーを有するTリンパ球を細胞傷害性/サプレッサー細胞へと誘導することである、とされている。「Reinherz and Schlossman,Cell,19:821−827(1980);Goldstein et al.,Immunol.Rev.,68:5−42,(1982)」。
HIVは、ウイルスエンベロープ(gp120)内のある領域のアミノ酸を介して、N末端付近に位置するCD4分子のV1領域の一部分へ、特異的にそして高親和性で結合する。結合後、ウイルスは標的細胞膜に融合し、そして侵入する。侵入すると、それは逆転写酵素を用いてゲノムRNAをDNAへと転写し、それが細胞DNAに組み込まれてそこで生物または細胞にとっての「プロウイルス」として生存する。
プロウイルスは、潜伏したままでいるか、または活性化され、mRNAおよびゲノムRNAを転写し、タンパク合成、集合、新しいウイルス粒子形成、そして細胞表面からのウイルスの発芽を引き起こす。ウイルスが細胞死を誘導する正確な機構は明らかでないが、細胞表面からの大量のウイルス発芽、それによる細胞膜の破壊、および結果的な浸透圧平衡の崩壊が主要な機構であると考えられる。
感染の過程の間、宿主生物体は、主要なエンベロープ糖タンパク質、gp120およびgp41を含むウイルスタンパク質に対する抗体を発現する。この体液性免疫にも関わらず、疾患は進行し、複数の日和見感染、寄生虫血症、痴呆、および死により特徴づけられる致命的な免疫不全が引き起こされる。宿主の抗ウイルス抗体が疾患の進行を阻止することができないということが、感染の最も困難で不安な面の一つであり、そしてそれは、従来の方法に基づく予防接種には成果を期待できないということを示している。
二つの因子が、免疫不全ウイルスに対する体液性応答の効力においてある役割を果たしているようである。まず第一に、他のRNAウイルスと同様に(そして特にレトロウイルスと同様に)、免疫不全ウイルスは宿主の免疫監視に反応して高い変異速度を示す。第二に、エンベロープ糖タンパク質自体が高度に糖付加された分子であり、高親和性抗体結合に適したエピトープをほとんど提示しない。ウイルスエンベロープが提示する標的は抗原性が乏しいため、宿主には特異的抗体産生によりウイルス感染を抑制するための機会がほとんど与えられない。
HIVウイルスが感染した細胞は、その表面にgp120糖タンパク質を発現する。gp120は、ウイルスが非感染細胞に侵入する場合と類似の反応を介して、CD4+細胞同士の融合現象を仲介し、それにより寿命の短い多核巨細胞を形成する。シンシチウム(syncycium)形成は、gp120エンベロープ糖タンパク質とCD4タンパク質との直接の相互作用に依存する。「Dalgleish et al.,supra;Klatzman,D.et al.,Nature,312:763(1984);McDougal,J.S.et al.,Science,231:382(1986);Sodroski,J.et al.,Nature,322:470(1986);Lifson,J.D.et al.,Nature,323:725(1986);Sodroski,J.et al.,Nature,321:412(1986)」。
特異的な複合体がgp120とCD4との間に形成されるという発見により、CD4−gp120結合がCD4抗原を有する細胞のウイルス感染の原因であるということが証明される。「McDougal et al.,supra」。他の研究者らは、HIVに対して非感染性の細胞株が、ヒトCD4 cDNA遺伝子のトランスフェクションおよび発現により感染性の細胞株へと変換されることを示した。「Maddon et al.,Cell,46:333−348(1986)」。
ウイルス吸着、およびシンシチウムによる細胞伝達を阻止するための、受容剤としての可溶性CD4に基づく治療計画が、多くのグループにより提唱され、インビトロでの成功が示されている(Deen et al.,Nature,3321:82−84(1988);Fisher et al.,Nature,331:76−78(1988);Hussey et al.,Nature 331:78−81(1988);Smith et al.,Science,238:1704−1707(1987);Traunecker et al.,Nature,331:84−86(1988))。そして長い半減期、適度な生物学的活性を有する、CD4免疫グロブリン融合タンパク質が開発されている(Capon et al.,Nature,337:525−531(1989);Traunecker et al.,Nature,339,68−70(1989);Byrn et al.,Nature,344:667−670(1990);Zettlmeissl et al.,DNA Cell Biol.9:347−353(1990))。CD4免疫毒素結合複合体または融合タンパク質は、感染細胞に対してインビトロで強力な細胞毒性を示すが(Chaudhary et al.,Nature,335:369−372(1988);Till et al.,Science,242:1166−1168(1988))、免疫不全症候群の潜在性のため、いかなる治療も一回の処置ではウイルス負荷を除去するのに効果的ではなく、外来の融合タンパク質の抗原性のため、反復投与を要する治療における許容範囲が制限されるという可能性が高い。SIVに感染したサルでの実験において、著しいCD4細胞欠乏症ではない動物に可溶性CD4を投与することにより、SIV力価が減少し、脊髄性ポテンシャル(myeloid potential)のインビトロの測定値が改善されうるということが示された(Watanabe et al.,Nature,337:267−270(1989))。しかし、治療の中止後すぐにウイルスの再出現が観察され、このことは、免疫系の衰弱の進行を防ぐためには一生投与を続ける必要があるということを示している。
細胞表面レセプター関連プロテイン−チロシンキナーゼ
免疫系における細胞性エフェクタープログラムの連動のための最初の刺戟は、細胞によるクラスターをなすリガンドの認識であることが多い。凝集すると同時に活性化シグナルを伝達することが知られているレセプターには、B細胞およびT細胞抗原レセプター(DeFranco,1992,Eur.J.Biochem.210:381−388;Weiss,1991,Annu.Rev.Genet.25:487−510)、IgGおよびIgE Fcレセプターファミリーのレセプター(Fanger et al.,1989,Immunol.Today 10:92−99;Ravetch and Kinet,1991,Annu.Rev.Immunol.9:457−492)、T細胞におけるCD2、CD4、CD8、およびCD28(Yokoyama and Shevach,1989,Year Immunol.4:110−146)、B細胞におけるCD19、CD20、CD21、およびCD40(Clark and Ledbetter,1989,Adv.Cancer Res.52:81−149)、そして単球におけるCD44、CD45、およびCD58(Webb et al.,1990,Science 249:1295−1297)を含む多くの補助レセプターがある。さらに、多くのリン脂質結合タンパク質が、T細胞の表面で架橋されたときに、抗原レセプター依存的に細胞活性化を促進する(Balk and Terhorst,1989,Immunol.Ser.45:411−416;Kroczek et al.,1986,Nature 322:181−184;Yeh et al.,1987,J.Immunol.138:91−97;Yokoyama and Shevach,1989,Yeah Immunol.4:110−146)。
現在のところ、どのようにして単純な物理的な現象、凝集が、明らかに異なる生理学的シグナルを引き起こすのかということは明らかでない。T細胞、B細胞抗原レセプターおよび様々な形態のFcレセプターを介した細胞性エフェクタープログラムの連動は、レセプター複合体の各鎖の細胞内ドメインを有するキメラタンパク質の架橋により模擬できる(Irving and Weiss,1991,Cell 64:891−901;Kolanus et al.,1992,EMBO J.11:4861−4868;Letourneur and Klausner,1992,Science 255:79−82;Romeo and Seed,1991,Cell 64:1037−1046;Wegener et al.,1992,Cell 68:83−95)。最小限の有効な刺激因子は、系統発生的に保存された(Reth,1989,Nature 338:383−384)、10または11残基離れ、親水性の典型的に酸性の環境に埋め込まれた二つのチロシン残基を含むペプチド配列を必要とするようである(Romeo et al.,1992,Cell 68:889−897;Irving et al.,1993,J.Exp.Med.117,1093−1103)。この因子を有するレセプターのクラスター形成により、活性化カスケードが開始し、それにはプロテインチロシンキナーゼ(PTK)活性が不可欠であるようである。PTK阻害剤は、カルシウム動員、およびサイトカイン放出や細胞増殖の続発症のような、BおよびT細胞両方の活性化における初期現象を阻害する(June et al.,1990,J.Immunol.144:1591−1599;Lane et al.,1991,J.Immunol.146:715−722;Mustelin et al.,1990,Science 247:1584−1587;Stanley et al.,1990,J.Immunol.145:2189−2198)。レセプター活性化のより下流の結果は細胞型により異なるが、初期現象は異なる造血系由来の細胞の間で極めてよく類似している。例えば、B細胞抗原レセプター(Gold et al.,1990,Nature 345:810−813;Campbell and Sefton,1990,EMBO J.9:2125−2131)、T細胞抗原レセプター(June,C.H.,et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7722−7726;June,C.H.,et al.,1990,J,Immunol.144:1591−1599)、および高親和性IgEレセプター(Eiseman and Bolen,1992,Nature 355:78−80;Li et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:3176−3182)の架橋の後に見られるPTK活性の急速な増加にはすべて、その初期リン酸化の標的の中に、チロシンリン酸化により直接活性化される(Nishibe et al.,1990,Science 250:1253−1256)、ホスファチジルイノシトール特異的ホスフォリパーゼCのγアイソフォームが含まれる(Carter et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2745−2749;Li et al.,1992,Mol.Cell Biol.12:3176−3182;Park et al.,1991,J.Biol.Chem.266:24237−24240;Park et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5453−5456;Secrist et al.,1991,J.Biol.Chem.266:12135−12139;Weiss et al.,1991,Annu.Rev.Genet.25:487−510)。
現在までに、細胞表面レセプターと相互作用することが知られているPTK活性は、Srcガン原遺伝子関連キナーゼのファミリーに属するもの、および最近同定されたSykキナーゼに関連するもの、という二種類に分類できる。前者の中では、FynキナーゼがT細胞レセプターと相互作用することが示され(Gassmann et al.,1992,Eur.J.Immunol.22:283−286;Samelson et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:4358−4362)、Lyn、Fyn、Blk、およびLckキナーゼがB細胞IgMレセプターと相互作用することが報告され(Burkhardt et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7410−7414;Campbell and Sefton,1992,Mol.Cell.Biol.12:2315−2321;Yamanashi et al.,1991,Science 251:192−194)、そしてLynおよびYesキナーゼが高親和性IgEレセプターと相互作用することが示されている(Eiseman and Bolen,1992,Nature 355:78−80;Hutchcroft et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9107−9111;Hutchcroft,J.E.,et al.,1992,J.Biol.Chem.267:8613−8619)。観察された相互作用の機構は詳細には明らかにされていないが、予備データによると、レセプター複合体の鎖の細胞内ドメインがSrcファミリーキナーゼと物理的に相互作用する可能性がある(Clark et al.,1992,Science 258:123−126;Timson Gauen et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:5438−5446)。現在、これらの相互作用が直接的であるか、間接的であるかということは明らかでない。
現在までのところ、細胞活性化においてSrcファミリーキナーゼが重要であるという最も強力な証拠は、T細胞におけるFynおよびLckキナーゼの研究より得られている。トランスジェニックマウスにおいてFynを過剰発現するとその結果得られるT細胞に抗原過剰反応性の表現型がもたらされるが、一方触媒不活性型を過剰発現させるとT細胞レセプターを介した増殖が遮断される(Cooke et al.,1991,Cell 65:281−291)。Fynキナーゼ活性を欠損した変異マウスから単離した胸腺T細胞は、ホルボールエステルと抗CD3抗体またはコンカナバリンAのいずれかとの組み合わせでの処理に対する反応における増殖反応に関与する能力を重度に欠損している(Appleby et al.,1992,Cell 70:751−763;Stein et al.,1992,Cell 70:741−750)。このようなマウスから単離した脾臓T細胞では、比較的程度は低いがしかし相当の細胞活性化反応の衰弱が見られる(Appleby et al.,1992,Cell 70:751−763;Stein et al.,1992,Cell 70:741−750)。
T細胞において、Lckキナーゼは、CD4およびCD8共通レセプターを介してTCRと間接的に相互作用する(Rudd et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5190−5194;Shaw et al.,1989,Cell 59:627−636;Turner et al.,1990,Cell 60:755−765;Veillette et al.,1988,Cell 55:301−308)。抗原反応性細胞株におけるLckの過剰発現により、Fynで見られるのと同様にレセプターの感受性が強化される(Abraham and Veillette,1990,Mol.Cell.Biol.10:5197−5206;Davidson et al.,1992,J.Exp.Med.175:1483−1492;Luo and Sefton,1992,Mol.Cell.Biol.12:4724−4732)。CD4依存的なマウスT細胞ハイブリドーマモデルにおいて、抗原特異的ヘルパー機能の再構成はLckと相互作用することができるCD4分子でのみ達成される(Glaichenhaus et al.,1991,Cell 64:511−520)。
しかし、抗原レセプターを介したシグナル伝達にLckキナーゼが直接参加しているということの最も強力な証拠は、Lckを欠損したマウス細胞株の研究から得られる。ジャーカット(Jurkat)ヒト白血病性T細胞株に由来する株(Goldsmith and Weiss,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:6879−6883;Straus and Weiss,1992,Cell 70:585−593)、およびマウス細胞傷害性T細胞クローンCTLL−2(Karnitz et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:4521−4530)、という二つの株が研究されている。いずれのLck陰性変異株もTCRを介したシグナル伝達を欠損しており、そしてLck発現プラスミドでのトランスフェクションによる両変異株の相補により、TCR架橋刺激に対する反応性が回復する(Karnitz et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:4521−4530;Straus and Weiss,1992,Cell 70:585−593)。
密接に関連したまたは同一のキナーゼSyk(Taniguchi et al.,1991,J,Biol.Chem.266:15790−15796)およびPTK 72(Zioncheck et al.,1986,J.Biol.Chem.261:15637−15643;Zioncheck et al.,1988,J.Biol.Chem.263:19195−19202)により当初は代表されていた新しいチロシンキナーゼファミリーのキナーゼが、細胞表面レセプターと相互作用することが、最近示された。PTK 72およびSykが同一であるということは明確には証明されていないが、それらは共通の組織分布(胸腺および脾臓)、分子量、およびタンパク分解に対する不安定さを有している。PTK 72は、B細胞IgMレセプターと相互作用し(Hutchcroft et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9107−9111;Hutchcroft,J.E.,et al.,1992,J,Biol.Chem.267:8613−8619)、そして抗IgM抗体によるレセプターの架橋と同時にリン酸化される(Hutchcroft et al.,1991,J.Biol.Chem.266:14846−14849)ということが示されている。自己リン酸化および他のタンパク質断片のリン酸化による測定で、酵素の同時活性化は、表面IgMの架橋の後に起るということが示された(Hutchcroft et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9107−9111;Hutchcroft,J.E.,et al.,1992,J.Biol.Chem.267:8613−8619)。PTK 72は、ラットの好塩基性白血病細胞株で高親和性IgEレセプターとも相互作用することが見いだされている(Hutchcroft et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9107−9111;Hutchcroft,J.E.et al.,1992,J.Biol.Chem.267:8613−8619)。
Sykファミリーのうちの二番目のZAP−70は、レセプター架橋の後のT細胞レセプターのゼータ鎖と相互作用するPTKであることが示されている(Chan et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9166−9170)。ZAP−70、FynまたはLckのCOS細胞における発現により細胞の総リン酸化チロシンは穏やかに増加するが、ZAP−70とFynまたはLckのいずれかとの共発現により最終的なチロシンリン酸化は劇的に増加する(Chan et al.,1992,Cell 71:649−662)。もしCD8−ゼータ鎖キメラも存在すれば、キメラはリン酸化され、そしてZAP−70はそれと相互作用することが見いだされている(Chan et al.,1992,Cell 71:649−662)。現在、ZAP−70がSrcファミリーキナーゼを活性化するのか、および/またはその逆であるのかということ、また、なぜCOS細胞におけるキナーゼの共発現により明らかな構成性活性化が引き起こされるのかということは明らかでない。にもかかわらず、ZAP−70の架橋TCRとの活発な相互作用により、このPTKがレセプター反応の伝達において役割を果たしているということが示される。
Srcファミリーキナーゼとは異なり、SykおよびZAP−70は二つのSH2ドメインを有し、N−末端のミリストイル化部位を有しない(Taniguchi et al.,1991,J,Biol.Chem.266:15790−15796;Chan et al.,1992,Cell 71:649−662)。キナーゼ−レセプター相互作用の機構についての通常の予想は、リン酸化された後に、二つのSH2ドメインが抗原レセプターの引き金モチーフの二つのチロシンに結合するというものである。しかしながら、現在の時点では、これは単なる仮説にすぎない。
発明の概要
本発明は、プロテイン−チロシンキナーゼ分子の細胞内ドメインと、標的認識という機能を遂行することのできる細胞外ドメインとのキメラを作成する可能性を示している。特に、SykまたはZAP−70キナーゼ配列を有するキメラのクラスター形成は、カルシウム動員の引き金となる。Sykキメラのみの凝集、またはFynもしくはLckキナーゼを有するキメラとZAP−70キナーゼを有するキメラとの共凝集は、細胞溶解エフェクター機能を開始させるのに十分である。このようなエフェクター機能は、標的細胞、例えば病原体、病原体感染細胞、腫瘍細胞、または自己免疫細胞、のような不要細胞の特異的な認識および破壊を促進する。
本発明に従い、有用なキメラ分子がいくつでも作成されうる。例えば、好ましくは遺伝子工学により作成した抗体分子の細胞外部分と結合した、プロテイン−チロシンキナーゼの細胞内部分を含むキメラの形成により、免疫系細胞の標的認識の潜在能力を、細胞外の抗体部分が認識する抗原へと特異的に再指向させることができる。このように、病原体表面の何らかの決定基を認識することができる抗体部分により、キメラを有する免疫系細胞はその系統にとって適当なエフェクタープログラムで病原体の存在に応答する。例えば、ヘルパーTリンパ球は標的に対して細胞溶解活性により反応し、Bリンパ球は抗体を合成するように活性化される。マクロファージおよび顆粒球は、サイトカイン放出、ファゴサイトーシス、および活性酸素生成を含むエフェクタープログラムを行う。同様に、腫瘍細胞を認識することができる抗体部分により、腫瘍に対する免疫応答が有益に増強される。自己決定基と不適切に反応する免疫細胞を認識することができる抗体により、自己反応性の細胞を選択的に破壊の標的とすることができる。
これらの例では、簡便に説明するための手段として、抗体キメラの使用について記述したが、本発明は抗体キメラの範囲に限定されるものではなく、実際、特異的な非抗体細胞外ドメインの使用にも重要な利点がある。例えば、ウイルス、細菌、または寄生虫に対するレセプターである細胞外部分により、キメラを有する細胞はウイルス、細菌または寄生虫の決定基を発現する細胞を特異的に標的とする。この方法の抗体の使用よりすぐれている点として、病原体に対する天然のレセプターは病原体に対して特別に高い選択性および親和性を有し、それにより結果として起こる免疫応答の正確さが増大する。同様に、自己抗原と不適切に反応する免疫系細胞を除くには、抗原(B細胞枯渇治療の場合は完全なタンパク質として、またT細胞枯渇治療の場合はMHC複合体として)を細胞内プロテイン−チロシンキナーゼキメラ鎖に結合させ、そしてそれにより自己決定基に対して不適切に応答する細胞の特異的な指向化に影響を与えることで十分である。
もう一つのキメラの使用は、他の形態の遺伝子工学による、インビボの細胞群の制御である。例えば、腫瘍部位に細胞毒性を輸送するための、腫瘍浸潤リンパ球またはナチュラルキラー細胞の使用が提唱されている。本発明は、インビトロの増殖のために患者の体内から取り出すことなく、そのようなリンパ球や細胞の数および活性を調節するための便利な手段を提供する。このように、キメラレセプターの細胞内ドメインが細胞の増殖反応を媒介するため、細胞外ドメインに特異的な様々な凝集刺激(例えば、細胞ドメインに特異的な抗体)を細胞外ドメインに与えることにより、キメラを有する細胞の増殖が引き起こされる。
本発明の特別な態様は、プロテイン−チロシンキナーゼのSykまたはSykとSrcファミリーとのキメラを含むが、これらの分子と類似の機能を有するいかなるチロシンキナーゼも本明細書で開示した目的に使用することができる。望ましい免疫細胞刺激分子の本質的な特徴は、自律的に発現する能力、結果として生じるキメラが治療細胞の表面に存在するように(直接的に、または膜貫通ドメインを通して間接的に)細胞外ドメインに融合する能力、および標的リガンドとの衝突の後の凝集と同時に細胞性エフェクタープログラムを開始する能力を含む。
現在、キメラを免疫系細胞へと輸送する最も便利な方法は、何らかの形態の遺伝子治療によるものである。しかし、細胞を、好適に可溶化し精製したキメラタンパク質と混合することにより、キメラレセプターを有する免疫系細胞を再構成することによっても、キメラの細胞外ドメインの認識する標的に応答することのできる人工的な細胞群が形成される。例えば、完全なHIVレセプター、CD4を治療の目的で赤血球に導入するために、同様の方法が用いられてきた。この場合、その人工的な細胞群は自己再生することができない。
本発明は、免疫系機能を回復させることができる、機能性の単純なプロテイン−チロシンキナーゼキメラに関する。特に本発明は、該キメラが認識する標的に対して細胞を応答させるキメラを細胞内で発現させることによる、リンパ球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、または顆粒球の調節に関する。本発明はまた、感染源、腫瘍もしくはガン細胞、または自己免疫発生細胞に対する細胞性応答を回復する方法に関する。哺乳類における細胞性応答を回復させる方法は、該感染源、腫瘍、ガン細胞、または自己免疫発生細胞を認識し破壊することができる、有効量の治療細胞を該哺乳類に投与することを含む。
もう一つの態様として、感染源に対する細胞性応答を回復させる方法は、特異的なウイルス、細菌、原生動物、または真菌のいずれかである病原体を認識し破壊することができる治療細胞を投与することを含む。特に、本方法は、HIVおよびニューモシスティス・カリニー(Pneumocystis carinii)のような病原体に対して向けられる。
HIV感染を治療するために、有効量のキメラ−レセプター発現細胞傷害性Tリンパ球を患者に投与する。リンパ球は、HIVに感染した細胞および循環系のウイルスを特異的に認識に溶解することができる。
このように、一つの態様として、本発明により、HIVに感染した細胞を特異的に認識し溶解することができる、有効量の細胞傷害性Tリンパ球を患者に投与することを含む、細胞性応答を回復する方法が提供される。
さらにもう一つの態様として、HIV感染細胞を認識し溶解するように、細胞傷害性T細胞を指向化させる、キメラレセプタータンパク質が提供される。本発明のさらにもう一つの態様は、キメラレセプターを含むベクターで形質転換した宿主細胞を含む。
本発明のこれらおよびその他の非限定的な態様は、以下の発明の詳細な説明より、当業者にとって明らかとなるであろう。
以下の詳細な説明において、分子生物学および免疫学の当業者に既知の様々な方法が参照される。このような既知の方法について記述してある参照された出版物およびその他の資料は、全文を記述したものとして完全に参照として本明細書に含まれる。
組換えDNA技術の一般原理を述べた参照文献には、「Watson,J.D.ら、遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of the Gene)、第IおよびII巻、ベンジャミン・カミングス出版社(Benjamin/Cummings Publishing Company,Inc.)メンロ・パーク(Menlo Park)、カリフォルニア州(1987)」、「Darnell,J.E.ら、分子細胞生物学(Molecular Cell Biology)、サイエンティフィック・アメリカン・ブックス(Scientific American Books,Inc.)ニューヨーク、ニューヨーク州(1986)」、「Lewin,B.M.遺伝子II(Genes II)、ジョン・ウィリー&ソンズ(Jone Wiley&Sons)、ニューヨーク、ニューヨーク州(1985)」、「Old,R.W.ら、遺伝子操作の基礎:遺伝子工学入門(Principles of Genes Manipulaton:An Introduction to Genetic Engineering)、第2版、カリフォルニア大学出版(University of California Press)、バークリー(Berkeley)、カリフォルニア州(1981)」、「Maniatis,T.ら、分子クローニング:実験手引き(Molecular cloning:A Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州(1989)」、および「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Ausubelら、ウィリー出版(Wiley Press)、ニューヨーク、ニューヨーク州(1989)」が含まれる。
定義
「クローニング」とは、ある特定の遺伝子またはその他のDNA配列をあるベクター分子に挿入するための、インビトロの組換え技術の使用を意味する。所望の遺伝子のクローニングを成功させるためには、断片をベクター分子に結合させるためのDNA断片を作成する方法、その複合体DNA分子を宿主細胞に導入してそれを複製する方法、そして受容宿主細胞の中から標的遺伝子を有するクローンを選択する方法を用いる必要がある。
「cDNA」とは、RNA依存DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)の作用によりRNA鋳型から作成した、相補的な、またはコピーのDNAを意味する。したがって、「cDNAクローン」とは、クローニングベクターにより運搬される、問題とするRNA分子に相補的な二本鎖DNA配列を意味する。
「cDNAライブラリー」とは、cDNAライブラリーを作成したときに細胞が発現するmRNAのDNAコピーを含む、cDNA挿入物を含む組換えDNA分子の集合体を意味する。このようなcDNAライブラリーは、当業者に既知の、そして例えば「Maniatisら、分子クローニング:実験手引き、前記」に記述された方法により調製しうる。一般的には、まず、特定の遺伝子をクローニングしたいゲノムを有する組織の細胞からRNAを単離する。本発明の目的に好適であるのは、哺乳類、そして特にヒト、リンパ球株である、現在の該目的に好適なベクターは、ワクシニアウイルスWR株である。
「ベクター」とは、DNAの断片を挿入またはクローニングした、例えばプラスミド、バクテリオファージ、または哺乳類もしくは昆虫ウイルスに由来する、DNA分子を意味する。ベクターは、一つまたは複数の特定の制限部位を含み、限られた宿主または媒体組織中で自律的に複製することができ、それによりクローニングされた配列が再生産されうる。従って「DNA発現ベクター」とは、組換えペプチドの合成を行うこともできる、いかなる自律的な分子をも意味する。このような発現ベクターには、細菌のプラスミド、ファージ、および哺乳類、昆虫のプラスミド、ウイルスが含まれる。
「実質的に純粋」とは、天然に付随する化合物が実質的に含まれない、例えばタンパク質、ポリペプチド、または抗体などの化合物を意味する。一般的に、試料中の全物質の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、そして最も好ましくは少なくとも90%が目的の化合物である場合に、化合物は実質的に純粋である。純度は、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析などの、いかなる適切な方法によっても測定できる。核酸に関して、「実質的に純粋」とは、本発明のDNAが由来する組織の天然のゲノム中で(例えば、5'末端および3'末端において)それが直接隣接しているコード配列のいずれにも直接隣接(例えば共有結合)していない、核酸の配列、セグメント、または断片を意味する。
「機能性誘導体」とは、ある分子の「断片」、「異型(variations)」、「アナログ」、または「化学誘導体」を意味する。分子の「断片」とは、本発明のすべてのcDNA配列のような、分子のいかなるヌクレオチドサブセットにも関する。このような分子の「異型」とは、分子全体またはその断片に実質的に類似した天然の分子に関する。分子の「アナログ」とは、分子全体またはその断片に実質的に類似した非天然の分子に関する。両分子のアミノ酸配列が実質的に同じであれば、分子は、もう一つの分子に「実質的に類似」しているといえる。実質的に類似したアミノ酸分子は、類似の生物学的活性を有する。従って、二つの分子が類似の活性を有するならば、一方の分子が他方には見いだされないアミノ酸を余分にまたは少なく含むとしても、またはアミノ酸残基の配列が同一でないとしても、それらは本明細書において異型であると見なされる。本明細書で用いているように、分子が、その分子の一部ではない化学基を余分に含む場合、それはもう一つの分子の「化学誘導体」である。そのような基により、分子の溶解性、吸収、生物学的半減期などが改善されうる。また、そのような基により、分子の毒性を減少させたり、分子の有害な副作用を除去または減少させたりすることができる。そのような効果を起こすことのできる基は、例えば、「レミングトンの薬剤学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版、マック出版社(Mack Publishing Co.)、イーストン、ペンシルバニア州(1980)」に開示されている。
同様に、本発明のレセプターキメラ遺伝子の「機能性誘導体」には、核酸配列が「実質的に類似」した、またはプロテイン−チロシンキナーゼキメラと類似の活性を有する分子をコードする、遺伝子の「断片」、「異型」、または「アナログ」が含まれる。
従って、本明細書で用いているように、プロテイン−チロシンキナーゼキメラタンパク質もまた、「野生型」キメラと実質的に類似した、または類似の活性(すなわち、野生型レセプターキメラの活性の最も好ましくは90%、より好ましくは70%、好ましくは40%、または少なくとも10%)を有する、いかなる機能性誘導体、断片、変異体、アナログ、または化学誘導体をも含む。機能性キメラレセプター誘導体の活性には、標的病原体または細胞への(その細胞外部分による)特異的な結合、およびその結果起こる(その細胞内部分による)病原体または細胞の破壊が含まれる。そのような活性は、例えば本明細書に記載のアッセイ法のいずれを用いても試験することができる。
本発明のキメラをコードするDNA配列またはその機能性誘導体は、ライゲーションのための平滑または付着末端、適当な末端を得るための制限酵素消化、適当な接着末端の充填、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および適当なリガーゼによるライゲーションを含む、従来の手法に従い、ベクターDNAと組み換えることができる。このような操作の手法は、「Maniatis,T.,et al.,前記」により開示されており、そして当業者によく知られている。
DNAのような核酸分子は、転写および翻訳の調節の情報を含む核酸分子を含み、その配列がポリペプチドをコードする核酸配列に「機能的に結合」している場合、ポリペプチドを「発現することができる」といえる。機能性結合とは、調節性DNA配列および発現されるべきDNA配列が、遺伝子の発現を起こすような様式で連結している結合である。遺伝子発現に必要な調節性領域の正確な性質は、組織により異なるが、一般的に、原核細胞では(RNA転写を開始させる)プロモーター、およびRNAに転写されたときにタンパク質合成開始のシグナルを与えるDNA配列の両方を含む、プロモーター領域を含む。このような領域には通常、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などの5'−非コード配列が含まれる。
必要であれば、タンパク質をコードする遺伝子配列の3'側の非コード領域を、上記の方法で得ることができる。この領域は、終結やポリアデニル化のような、転写終結調節配列のために保持される。従って、タンパク質をコードするDNA配列に天然に隣接する3'−領域を保持することにより、転写終結シグナルが提供される。発現宿主細胞内で転写終結シグナルが十分に機能しない場合、宿主細胞内で機能する3'領域で置換することができる。
(プロモーター領域配列、およびプロテイン−チロシンキナーゼキメラをコードする配列のような)二つのDNA配列は、その二つのDNA配列の間の結合の性質が(1)フレームシフト変異を誘導せず、(2)プロモーター領域配列がレセプターキメラ遺伝子配列の転写を行わせる能力を阻害せず、また(3)レセプターキメラ遺伝子配列がプロモーター領域配列により転写される能力を阻害しないならば、機能的に結合しているといえる。プロモーターがそのDNA配列の転写を生じさせることができるならば、プロモーター領域は機能的にDNA配列に結合している。このように、タンパク質を発現させるためには、適当な宿主により認識される転写および翻訳のシグナルが必要である。
原核細胞または真核細胞いずれにおけるプロテイン−チロシンキナーゼキメラタンパク質(またはその機能性誘導体)の発現もまた、本発明の範囲内であるが、真核細胞(そして特に、ヒトリンパ球)における発現がより好ましい。
本発明による抗体は、多様な方法のうちのいずれによっても調製できる。例えば、レセプターキメラタンパク質を発現する細胞、またはその機能性誘導体を、キメラに結合することのできるポリクローナル抗体を含有する血清の作成を誘導するために動物に投与することができる。
好ましい方法において、本発明による抗体はモノクローナル抗体である。このようなモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler et al.,Nature 256:495(1975);Kohler et al.,Eur.J.Immunol.6:511(1976);Kohler et al.,Eur.J.Immunol.6:292(1976);Hammerling et al.,In:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,Elsevier,N.Y.,pp.563−684(1981))を用いて調製できる。一般的に、この方法には、動物にキメラ抗原を免疫することが含まれる。その動物の脾細胞を抽出し、適当な骨髄腫細胞株と融合させる。いかなる適当な骨髄腫細胞株も、本発明に従い用いることができる。融合の後、得られたハイブリドーマ細胞をHAT培地中で選択的に培養し、「Wands,J.R.et al.,Gastroenterology 80:225−232(1981)」に記載の限界希釈によりクローニングする。それから、このような選択により得られたハイブリドーマ細胞をアッセイし、キメラに結合することができる抗体を分泌するクローンを同定する。
本発明による抗体は、ポリクローナル抗体、または、好ましくは領域特異的なポリクローナル抗体であってもよい。
本発明によるキメラに対する抗体は、キメラレセプター(または、キメラレセプターを有する細胞)の量をモニターするために用いることができる。このような抗体は、フォワードサンドイッチ(foward sandwich)、リバースサンドイッチ(reverse sandwich)、および同時サンドイッチ(simultaneous sandwich)アッセイのような、イムノメトリック(immunometric)または「サンドイッチ」アッセイを含む、当業者に既知の標準的な免疫診断アッセイにおいて好適に用いられる。抗体は、過度の実験をすることなしに当業者が決定できるような、許容される特異性、感受性、および正確さを有するイムノアッセイを行うために、いかなる数の組み合わせでも用いられうる。
免疫学の一般原理が記述された標準的な参照文献には、「Roitt,I.、エッセンシャル免疫学(Essential Immunlogy)、第6版、ブラックウェル・サイエンティフィック出版(Blackwell Scientific Publications)、オックスフォード(1988)」、「Kimball,J.M.、免疫学入門(Introduction to Immunology)、第2版、マクミラン出版社(Macmillan Publishing Co.)、ニューヨーク(1986)」、「Roitt,I.ら、免疫学、ガウワー・メディカル出版社(Gower Medical Publishing Ltd.)、ロンドン(1985)」、「Burdon,R.ら編、生化学および分子生物学における実験方法(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology)、第13巻、エルスビア(Elsevier)、アムステルダム(1984)」中の「Campbell,A.、モノクローナル抗体法」、「Klein,J.、免疫学:自己−非自己区別の科学(Immunology:The Science of Self−Nonself Discrimination)、ジョン・ウィリー&ソンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク(1982)」および「Kennett,R.ら編、モノクローナル抗体、ハイブリドーマ:生化学的分析の新しい次元(Monoclonal Antibodies,Hybridoma:A New Dimension In Biological Analyses)、プレナム出版(Plenum Press)、ニューヨーク(1980)」などが含まれる。
「検出」には、物質の有無を決定すること、または物質の量を測定することが含まれるものとする。したがってこの用語は、定性的および定量的な決定のための本発明の物質、組成物、および方法の使用に関する。
本明細書に記載のものと同一の特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するその他のハイブリドーマの単離は、抗イデオタイプスクリーニング法(Potocmjak,et al.,Science 215:1637(1982))により達成できる。簡潔に述べると、抗イデオタイプ抗体とは、目的のクローンにより産生される抗体上に存在する特定の決定基を認識する抗体である。抗イデオタイプ抗体は、モノクローナル抗体の供給源と同種の動物を、目的のモノクローナル抗体で免疫することにより調製する。免疫された動物は、これらのイデオタイプ決定基に対する抗体(抗イデオタイプ抗体)を産生することにより、免疫抗体のイデオタイプ決定基を認識し応答するようになる。
複製のために、ハイブリッド細胞をインビトロおよびインビボいずれにおいても培養することができる。高インビボ生産は、現在の好ましい培養法である。簡潔に述べると、個々のハイブリッド種から得た細胞をプリスタン処置済のBALB/cマウスに腹腔内注射し、目的のモノクローナル抗体が高濃度に含まれる腹水を作成する。アイソタイプIgMまたはIgGのモノクローナル抗体を、当業者によく知られたカラムクロマトグラフィー法を用いて培養上清から精製することができる。
本発明による抗体は、それらを液相で、または固相担体に結合させて利用するイムノアッセイにおいて特に好適に使用される。さらに、これらのイムノアッセイにおける抗体は、様々な方法で検出可能に標識することができる。
多くの異なる標識、および標識の方法が当業者に知られている。本発明において用いられうる型の標識の例には、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化学物および金属キレートが含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、抗体へ結合させるその他の好適な標識を知り、習慣的な実験を用いて同じことを確認することができるであろう。さらに、抗体へのこれらの標識の結合は、当業者に一般的に知られた標準的な手法を用いて達成できる。
本発明による抗体を検出可能に標識する方法の一つは、抗体と酵素とを結合させることによる。次に、この酵素をその基質にさらすと、基質と反応し、例えば分光法または蛍光法により検出できるような化学基が生じる。抗体を検出可能に標識するのに用いられうる酵素の例には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(malate dehydrogenase)、スタフィロコッカスヌクレアーゼ(staphylococcal nuclease)、デルタ−V−ステロイドイソメラーゼ(delta−V−steroid isomerase)、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ(yeast alcohol dehydrogenase)、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ(alpha−glycerophosphate dehydrogenase)、トリオースリン酸イソメラーゼ(triose phosphate isomerase)、ビオチンアビジンペルオキシダーゼ(biotinavidin peroxidase)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、グルコースオキシダーゼ(glucose oxidase)、β−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase)、リボヌクレアーゼ(ribonuclease)、ウレアーゼ(urease)、カタラーゼ(catalase)、グルコース−VI−リン酸デヒドロゲナーゼ(glucose−VI−phosphate dehydrogenase)、グルコアミラーゼ(glucoamylase)、およびアセチルコリンエステラーゼ(acetylcholine esterase)が含まれる。
検出可能標識抗体の存在はまた、抗体を、ガンマ検出器またはシンチレーション検出器の使用のような方法により決定することができる放射性同位体で標識することによっても検出できる。本発明の目的のために特に有用な同位体は、3H、125I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、58Co、59Feおよび75Seである。
抗体を蛍光化合物で標識することにより、検出可能標識抗体の結合を検出することもまた可能である。蛍光標識抗体を適当な波長の光にさらすと、その存在が、色素の蛍光により検出される。最も一般に用いられる蛍光標識化合物には、フルオレセイン(fluorescein)、イソチオシアネート(isothiocyanate)、ローダミン(rhodamine)、フィコエリスリン(phycoerythrin)、フィコシアニン(phycocyanin)、アロフィコシアニン(allophycocyanin)、o−フタルアルデヒド(o−phthalaldehyde)、およびフルオレサミン(fluorescamine)が含まれる。
本発明の抗体は、152Euやその他のランタン系列のような、発蛍光金属を用いて検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチルエンテリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)のような金属キレート剤を用いることにより抗体分子に結合させることができる。
抗体は、化学発光化合物に結合させることによっても検出可能に標識することができる。化学発光標識抗体の存在は、化学反応の進行中に生じる化学発光の存在を検出することにより決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミナール(luminal)、イソルミナール(isoluminal)、セロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール(imidazole)、アクリジニウム塩(acridinium salt)、シュウ酸エステル(oxalate ester)、およびジオキセタン(dioxetane)である。
同様に、生物発光化合物が、本発明による抗体を標識するために用いられうる。生物発光は、触媒性タンパク質が化学発光反応の効率を増大させる生物学的な系においてみられる一種の化学発光である。生物発光抗体の存在は、蛍光の存在を検出することにより決定する。標識の目的に重要な生物発光化合物には、ルシフェリン(luciferin)、ルシフェラーゼエクオリン(luciferase aequolin)が含まれる。
本発明の抗体および実質的に精製された抗原は、キットの調製に理想的に適している。このようなキットは、区分された担体手段を含み、その狭い制限内にバイアル、チューブのような一つまたは複数の容器手段を受け入れることができる。該容器手段の各々は、用いられる別々のアッセイの成分を含む。
キットの形態に統合できるアッセイの種類は数多くあり、例えば競合的および非競合的アッセイが含まれる。本発明の抗体を利用することができるアッセイの典型的な例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELIZA)、およびイムノメトリックまたはサンドイッチイムノアッセイである。
「イムノメトリックアッセイ」または「サンドイッチイムノアッセイ」という用語には、同時サンドイッチ、フォワードサンドイッチ、およびリバースサンドイッチイムノアッセイが含まれる。これらの用語は、当業者によく理解されている。当業者は、本発明による抗体が、現在知られている、または将来開発されるかもしれない、他の変形や形態のアッセイにおいて有用であるということもまた評価するであろう。これらは本発明の範囲内に含まれるものとする。
アッセイを行うための好ましい態様として、(通常、標識可溶性抗体を添加した)インキュベーション培地中に、ある種の「阻害剤」が存在することが重要である。「阻害剤」は、実験試料中に存在する非特異的なタンパク質、プロテアーゼ、あるいはマウス免疫グロブリンに対するヒト抗体が、固相支持体上の抗体あるいは放射能標識指示抗体を架橋または破壊し、正しくない陽性または陰性の結果を生じさせることがないことを確実にするために添加する。従って、「阻害剤」の選択により、本発明に記載されたアッセイの特異性が実質的に増加する。
アッセイに用いたのと同じクラスまたはサブクラス(イソタイプ)の非選択的な(すなわち非特異的な)抗体(例えば、IgG1、IgG2a、IgMなど)が、「阻害剤」として用いられうることが数多く見いだされている。適当な感受性を維持し、しかしヒト血清中の交差反応性のタンパク質によるいかなる不要な干渉をも阻害するためには、「阻害剤」の濃度(通常、1〜100μg/μl)が重要である。さらに、「阻害剤」を含む緩衝系を最適化する必要がある。好ましい緩衝液は、イミダゾール、HEPPS、MOPS、TES、ADA、ACES、HEPES、PIPES、TRISなどのような弱い有機酸を基本にし、生理的pHの範囲にあるものである。次に好ましい緩衝液は、リン酸、ホウ酸、またはカルボン酸のような非有機的な緩衝液である。最後に、既知のプロテアーゼ阻害剤を、「阻害剤」を含む緩衝液に添加する(通常、0.01〜10μg/ml)。
多くの固相免疫吸着剤が、本発明において用いられており、そして用いられうる。有名な免疫吸着剤には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、デキストラン、ナイロンおよびその他の物質が含まれ、それらは、そのような物質などからできた、または覆われたチューブ、ビーズ、およびマイクロタイタープレートの形態をしている。固定化抗体は、アミドやエステル結合を介した共有結合または吸着のような、共有結合または物理的な結合により固相免疫吸着体に結合させられる。当業者は、多くのその他の好適な固相免疫吸着剤、およびそれらに抗体を固定化する方法を知り、また通常の実験のみを使いそれらを確認することができる。
インビボ、インビトロ、またはインサイチュの診断において、放射核種のような標識を、直接にまたは媒介官能基を介して、本発明による抗体に結合させることができる。金属陽イオンとして存在する放射能同位体を抗体に結合させるのに頻繁に用いられる媒介基は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)である。この方法で結合する金属陽イオンの典型的な例は、99mTc、123I、111IN、131I、97Ru、67Cu、67Gaおよび68Gaである。本発明の抗体を、診断の目的で非放射能同位体で標識することも可能である。この方法において特に有用である元素は、157Gd、55Mn、162Dy、52Crおよび56Feである。
本発明の抗原は、本発明による抗体を用いることにより実質的に純粋に単離することができる。従って、本発明の一つの態様は、実質的に純粋なプロテイン−チロシンキナーゼキメラを提供する。該抗原は、本発明による抗体により認識され、結合するという点が特徴である。もう一つの態様として、本発明は、該抗原とレセプターキメラに対する一つまたは複数の抗体との複合体を形成することにより、キメラレセプター抗原を単離または精製する方法を提供する。
本発明の実質的に純粋なキメラ抗原は、次に、血清や尿のような試料中のキメラに対する抗体を検出または測定することに用いることができる。従って、本発明の一つの態様は、キメラ抗原に対する抗体を含む試料を、検出可能に標識したレセプターキメラと接触させ、該標識を検出することを含む、試料中のプロテイン−チロシンキナーゼ抗原に対する抗体の存在または量を検出する方法を含む。キメラの免疫応答性断片および免疫応答性アナログもまた用いられるということが評価される。「免疫応答性断片」とは、レセプターキメラに対する抗体に対して同等の免疫応答を示す、キメラ抗原のいかなる部分をも意味する。「免疫応答性アナログ」とは、レセプターキメラと一つまたは複数のアミノ酸が異なるが、本発明の抗体に対して同等の免疫応答を示すタンパク質である。
「特異的に認識し結合する」とは、抗体がキメラレセプターポリペプチドを特異的に認識し結合するが、試料、例えば生物学的試料中の他の関係のない分子に対しては実質的に認識し結合しないことを意味する。
「自己免疫発生細胞」とは、宿主組織と反応する抗体、または自己反応性の免疫エフェクターT細胞を産生する細胞を意味する。このような細胞は、アセチルコリンレセプターに対する抗体(例えば重症筋無力症を引き起こす)、または抗DNA抗体、抗赤血球抗体、および抗血小板抗体(例えば全身性エリテマトーデスを引き起こす)を含む。
「治療細胞」とは、本発明のキメラにより形質転換し、特異的な感染源、特異的な病原体に感染した細胞、腫瘍あるいはガン細胞、または自己免疫発生細胞を認識し破壊することができるようにした細胞を意味する。好ましくは、このような治療細胞は造血系の細胞である。
「標的感染源」とは、キメラレセプターを有する治療細胞により認識されうる、いかなる感染源(たとえば、ウイルス、細菌、原生動物、または真菌)をも意味する。「標的細胞」とは、キメラレセプターを有する治療細胞により認識されうるいかなる宿主細胞をも意味する。標的細胞には、ウイルス、細菌、原生動物、または真菌に感染した宿主細胞、および腫瘍あるいはガン細胞、および自己免疫発生細胞が含まれるが、これに限定されない。
「細胞外」とは、分子の少なくとも一部分が細胞表面に露出していることを意味する。「細胞内」とは、分子の少なくとも一部分が治療細胞の細胞質側に露出していることを意味する。「膜貫通」とは、分子の少なくとも一部分が細胞膜を通過していることを意味する。「細胞外部分」、「細胞内部分」、および「膜貫通部分」は、本明細書で用いているように、隣接する細胞分画へと延びている隣接アミノ酸配列を含んでいてもよい。
「重合」とは、他のタンパク質と複合体を形成し、ダイマー(二量体)、トリマー(三量体)、テトラマー(四量体)、またはその他のより高次のオリゴマーを形成することを意味する。そのようなオリゴマーは、同種オリゴマーまたは異種オリゴマーである。「重合部位」とは、複合体(すなわち、オリゴマー)形成を行う分子の領域である。
「細胞溶解性」とは、細胞(例えば、病原体に感染した細胞、腫瘍あるいはガン細胞、または自己免疫発生細胞)を破壊することができるか、または感染源(例えば、ウイルス)を破壊することができることを意味する。
「免疫不全ウイルス」とは、野生型において、霊長類の宿主のT4細胞に感染することができ、レンチウイルス亜科のウイルスの形態形成および形態学的特徴を有するレトロウイルスを意味する。この用語には、HIV−1、HIV−2、SIVmac、SIVagm、SIVmnd、SIVsmm、SIVman、SIVmand、およびSIVcpzを含む、HIVおよびSIVのあらゆる異型を含むが、これに限定されない。
「MHC非依存的」とは、細胞性細胞溶解反応に、標的細胞の表面上のMHCクラスII抗原の存在が必要ではないことを意味する。
「機能性細胞溶解シグナル伝達誘導体」とは、野生型分子の生物学的活性の少なくとも10%、好ましくは40%、より好ましくは70%、または最も好ましくは少なくとも90%を行う能力がある、機能性誘導体(上記で定義した)を意味する。本明細書で用いているように、「機能性細胞溶解シグナル伝達誘導体」は、直接治療細胞にシグナルを与えレセプターに結合した病原体または細胞を破壊させるか(例えば、細胞内キメラレセプター部分の場合)、または治療細胞の細胞溶解シグナル伝達タンパク質との重合を促進することにより間接的に作用する(例えば、膜貫通ドメインの場合)。このような誘導体は、例えば本明細書に記載のインビトロアッセイを用いて、効果を試験することができる。
「機能性HIVエンベロープ結合性誘導体」とは、いかなるHIVエンベロープタンパク質にも結合できる、機能性誘導体(上記で定義した)を意味する。機能性誘導体は、例えば本明細書に記載のインビトロアッセイを用いて、同定することができる。
治療のための投与
本発明の形質転換した細胞は、数多くの疾患の治療に用いることができる。このような形質転換細胞を投与する現在の方法は、養子免疫治療または養子細胞転移治療を含む。これらの方法では、形質転換免疫系細胞を血流に返還する。「Rosenberg,S.A.,Scientific American,62(May 1990);Rosenberg et al.,The New England Journal of Medicine,323(9):570(1990)」
本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物から有益な効果を得るいかなる動物にも投与される。そのような動物のうち主要なのはヒトであるが、本発明はそれに限定されない。
詳細な説明
まず、図面について説明する。
図面の説明
図1Aは、本発明のレセプター−キナーゼ融合タンパク質の概略的な構成を示す図である。図1Bは、ジャーカット細胞でワクシニア組換え体により発現させたCD16/7/ゼータ、CD16/7/Lck、CD16/7Fyn(T)、CD16/7/Syk、およびCD16/7/ZAP−70のフローサイトメトリーの結果である。図1Cは、免疫沈降したCD16/7/ゼータ(陰性対照)、CD16/7/Lck、CD16/7Fyn(T)、CD16/7/Syk、およびCD16/7/ZAP−70のインビトロキナーゼ活性アッセイを示す図である。Fynキメラ免疫沈降物において出現した低分子量の種は、同定されていない。
図2は、TCR−陰性ジャーカット細胞における、キナーゼキメラの架橋により刺激される細胞質カルシウム反応を示す図である。陽性群の相対的な細胞内カルシウム濃度(Indo−1紫対青蛍光比により測定)を示した。異なる融合タンパク質を発現するワクシニア組換え体を感染させたジャーカット細胞を、抗CD16mAb 3G8にさらし、次に時間0において、フィコエリスリンを結合したマウスIgGに対するヤギF(ab')2抗体にさらした。TCRゼータ鎖およびFcR II B2を基本としたキメラは、各々陽性および陰性の対照としてはたらく。
図3は、Sykキナーゼキメラを発現するTCR陽性細胞における、早発のカルシウム反応の連動を示す図である。感染および分析は、上記の図2と同様に行った。相当の割合のSykキメラ発現細胞が、一次抗体の添加前に高い紫対青蛍光比を示した。
図4Aおよび図4Bは、抗ハイブリドーマ殺傷アッセイを示す図である。図4Aは、ハイブリドーマ標的細胞から放出される51Cr−クロム酸のパーセントを、エフェクター細胞(TCL発現キナーゼキメラ)と標的細胞の比の関数として示す図である。TCRゼータ鎖およびFcR II B2の細胞内ドメインを有するレセプターキメラを発現する細胞は、各々陽性および陰性の対照としてはたらく。図4Bは、殺傷の特異性(無関係のものを殺傷しないこと)を示す図である。BW5147細胞(表面抗CD16抗体を欠く)に、51Cr−クロム酸を負荷し、そして平行して行うクロム酸負荷3G8細胞(抗CD16抗体を発現)の試料と等しい条件下でCTL発現キナーゼキメラにさらした。BW5147細胞からは、クロム酸の放出は検出されなかった。
図5A、5B、および5Cは、ZAP−70とFynまたはLckとの共発現により、細胞溶解が誘導され、そしてカルシウム反応の効率が減少することを示す図である。CTLを、示されたキメラを発現するワクシニア組換え体と共感染させ、細胞溶解能力またはカルシウム動員を分析した。両キメラを発現する細胞分画は独立には測定しなかったため(少なくとも一つのキメラを発現している細胞分画を活性の標準化に用いた)、キメラの効果はこの分析により推定した。図5Aは、CD16/7/キナーゼキメラ対を発現するCTLを用いた細胞溶解アッセイを示す図である。図5Bは、CD16/7/キナーゼキメラ対を発現するTCR陰性細胞のカルシウム反応を示す図である。図5Cは、CD4/7/FynキメラおよびCD16/CD7/ZAP−70キメラを共発現するCTLの細胞溶解アッセイを示す図である。CD16/7/ゼータキメラは陽性対照として、CD16/7/FcR II B2キメラは陰性対照としてはたらく。
図6Aおよび6Bは、キナーゼ欠失または点変異を有するキメラは、カルシウム動員および細胞溶解の回復に効果がないことを示す図である。キナーゼ陽性融合タンパク質異型は、欠失(Sykの場合)または点突然変異(ZAP−70の場合)により作成し、カルシウム反応および細胞溶解を試験した。図6Aは、TCR陰性細胞におけるカルシウム反応を示す図である。図6Bは、細胞溶解の回復アッセイを示す図である。
図7A、7B、および7Cは、ヒトSykを基本としたキメラが、ブタSykを基本としたキメラと実質的に等しい効果を有するということを示す図である。図7Aは、ヒトSykの配列およびブタSykとの比較である。最初の11および最後の7残基をプライマー配列として決定した。図7Bは、ヒトSykキメラを発現するTCR陰性細胞のカルシウム動員分析を示している。図7Cは、ヒトSykキメラを発現するCTLの細胞溶解の回復アッセイを示す図である。
図8は、キメラキナーゼの架橋の後のチロシンリン酸化パターンの変化を示す図である。示されたキメラまたはキメラ対を発現するT細胞抗原レセプター陰性ジャーカット細胞を、抗CD16抗体およびヤギ抗マウスIgG二次抗体で処理し、それから溶解し、ポリアクリルアミドゲルで分離し、ニトロセルロースへ転写して抗リン酸化チロシン抗体をプローブとして検出した。「+」の印のついたレーンは、架橋をさせた細胞からの抽出物を表し、一方「−」の印のついたものは、二次抗体にさらさずに直接溶解した。対照のレーンは、細胞内ドメインを含まないCD16/7融合タンパク質を発現するTCR陰性細胞の同様な処理により作成した。比較のために、TCR陽性ジャーカット細胞(野生型ワクシニアウイルス感染をしたもの、またはしないもの)の抗CD3処理の効果を右側に示した。左側のパネルの100kD付近の顕著なバンドは、キナーゼキメラの予想分子量と一致する。
図9は、キメラの凝集後のホスホリパーゼC−γ1のチロシンリン酸化を示す図である。PLC−γ1を抗体架橋させた細胞から免疫沈降させ、免疫沈降物をゲルで分離し、ニトロセルロースに転写し、そして抗リン酸化チロシン抗体をプローブとして検出した。Sykキメラの凝集後にリン酸化PLC−γ1の実質的な増加が観察され、一方FynおよびZAP−70キメラの共凝集後にはより限定的ではあるが容易に増加が観察された。
図10Aおよび10Bは、インビトロキナーゼアッセイを示す図である。キメラキナーゼを発現する細胞に抗体によるキメラ架橋を行わせ、その後キナーゼを免疫沈降させて、免疫沈降物の外因性基質のリン酸化を評価した。図10Aは、架橋した(+)または架橋していない(−)細胞から単離した免疫沈降物を用いた、10分間にわたるインキュベートで免疫沈降したキナーゼキメラの活性の比較を示す図である。図10Bは、架橋した(+)または架橋していない(−)Sykキナーゼキメラによる、外因性基質へのリン酸標識の同化の時間経過を示す図である。
クラスター形成したチロシンキナーゼによるT細胞活性化
以下は、本発明の特定の態様の説明である。この説明において、非レセプターキナーゼが単純なクラスター形成過程により活性化されることを示す。細胞内ドメインに完全なSrcまたはSykファミリーキナーゼ配列を含む、人工的なレセプターキナーゼを作成し、そして外部の架橋刺激による凝集の結果を検討した。SykおよびSrcファミリーキナーゼ活性の間には、明白な違いが現れた。後者の架橋では有意な細胞活性化は引き起こされなかったが、一方前者の架橋では遊離の細胞内カルシウムイオン、およびSykの場合、細胞溶解能力の出現が引き起こされた。ZAP−70キメラは遠位のレセプターによるプログラムを誘導できないが、そのことはZAP−70キメラをFynまたはLckキナーゼキメラのいずれかと共クラスター形成させることにより克服される。上記の例は、本発明を具体的に説明するために提供されたものであり、本発明を限定するものではない。
プロテイン−チロシンキナーゼキメラの作成および効果の説明
細胞表面レセプターキナーゼに類似したタンパク質をコードする遺伝子融合体は、CD16分子の細胞外ドメインをコードするDNA断片をCD7の膜平行および膜貫通ドメインをコードする短いスペーサーセグメントへと追加し、次に完全なヒトLck(Koga et al.,1986,Eur.J.Immunol.16:1643−1646)、マウスFyn(T)(Cooke and Perlmutter,1989,New.Biol.1:66−74)、ブタSyk(Taniguchi et al.,1991,J.Biol.Chem.266:15790−15796)、およびヒトZAP−70(Chan et al.,1992,Cell 71:649−662)チロシンキナーゼ(図1A)のコード配列へと結合させることにより作成した。得られた3部分からなる遺伝子融合体を、大腸菌gpt遺伝子産物の共発現のために、相同的組み換えおよび選択により組換え体ワクシニアウイルスへと導入した。細胞への組換え体の感染により、4種のキナーゼキメラ(図1B)すべてが効果的に細胞表面に発現した。得られたタンパク質キメラの抗CD16抗体による免疫沈降により、インビトロのリン酸化アッセイ(図1C)において活性であった、予想分子量の分子種の存在が明らかにされた。
本発明者らは次に、T細胞レセプター細胞内ドメインを基本とした融合タンパク質で見られたのと同様に、融合タンパク質の架橋により遊離細胞内カルシウムの蓄積が起こるか否かを検討した。これを行うために、本発明者らは様々な細胞にワクシニア組換え体を感染させ、そして細胞外ドメインの抗体による架橋後の相対的な細胞質カルシウム濃度を測定した。色素Indo−1を負荷した細胞で、分光蛍光(集団)およびフローサイトメトリー(単一細胞)両方の測定を行った(Grynkiewicz et al.,1985,J.Biol.Chem.260:3440−3450;Rabinovitch et al.,1986,J.Immunol.137:952−961)。フローサイトメトリー分析は、フィコエリスリン蛍光強度により決定したCD16の細胞表面発現が、比較的狭いあらかじめ決定された範囲内に入るような細胞から得たデータについて行った。平均蛍光強度には依然この範囲内で小さい変動が見られたが(細胞が発現するキメラの基本的な分布の違いによる)、本方法によりほぼ同じ数のレセプターを有する細胞の反応を対照させることができた。図2は、T細胞抗原レセプターを欠いたジャーカットヒト白血病性T細胞株の変異型の細胞から集めたデータの分析を示す(Weiss and Stobo,1984,J.Exp.Med.160:1284−1299)。これらの細胞において、LckおよびFynキメラいずれにも、架橋後にカルシウムを動員させる能力はなかった。いくつかの実験において、Lck融合タンパク質のクラスター形成により、陰性対照である、低親和性IgGレセプターFcR II B2細胞内ドメイン(Kolanus et al.,1992,EMBO J.11:4861−4868)を基本とした融合タンパクと比較して、休止カルシウム濃度がわずかに減少した。ZAP−70およびSyk両方を基本とした融合タンパク質の凝集では、遊離細胞質カルシウムイオン出現の促進の効果が高く、T細胞レセプターゼータ鎖の細胞内ドメインを有する類似のキメラの凝集とおよそ等しい効果であった。ZAP−70およびSykキナーゼキメラではいずれも、ゼータキメラによるカルシウム動員の開始時間と比較して、カルシウム反応の開始にわずかに遅れが見られた。T細胞レセプター陽性細胞において(図3)、Sykキメラの流入評価は、部分的に遊離カルシウムイオンの高い休止濃度により混同され、このことは、カルシウム調節装置の構成的な連動を示している。
細胞溶解性T細胞株へのキメラの導入により、融合タンパク質のエフェクター機能を連動させる能力を検討することが可能となった。このアッセイにおいて、細胞表面にCD16に対するIgG抗体を発現する抗CD16ハイブリドーマ細胞(Fleit et al.,1982,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:3275−3279;Shen et al.,1989,Mol.Immunol.26:959−969)を標的細胞として用いた。ハイブリドーマ細胞を51Cr−クロム酸の取り込みにより標識し、ヒトアロ特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)株にCD16/CD7/キナーゼ融合タンパク質を発現するワクシニア組換え体を感染させることにより調製した、エフェクター細胞と共沈殿させた。キメラレセプターキナーゼの発現により、感染CTL細胞は標的細胞に結合するようになり、そしてもしそれらを溶解する能力があるなら、その過程を、取り込んだ51Cr−クロム酸の放出により測定する。負荷CTLの相対的な効果を、一定の割合の51Cr放出を達成するために必要な、標的細胞に対するエフェクターの比の比較により決定した。図4Aは、SrcファミリーキナーゼのLckあるいはFyn(T)、またはSykファミリーキナーゼのZAP−70を含むキメラレセプターを発現するCTLが、抗CD16ハイブリドーマ標的体に対して細胞溶解を行うことができないことを示している。しかし、Sykタンパク質産物を基本としたキナーゼキメラを発現するCTLは、T細胞レセプターゼータ鎖の細胞内ドメインと同様に融合したCD16を含むキメラを発現するCTLと本質的に同じ効果を示した。CD16/CD7/キナーゼキメラにより引き起こされる細胞溶解活性は、細胞傷害性顆粒の非特異的な放出の原因とはいえない。なぜなら、無関係のクロム−負荷標的体とキナーゼ−負荷CTLとの共沈殿により標識クロムの放出は検出されないからである。(図4B)。
細胞溶解アッセイにおいてSykおよびZAP−70の活性が異なっていることは、カルシウム反応アッセイにおける二つのキメラの活性が類似していることを考慮すると意外である。非キメラZAP−70とSrc−ファミリーキナーゼとの共発現によりCOS細胞が活性化されるという証拠(Chan et al.,1992,Cell 71:649−662)を考慮し、本発明者らは、キナーゼキメラ対が細胞溶解を行う相対的な能力の評価を行った。CTLエフェクターに、ZAP−70およびLckキメラ、ZAP−70およびFyn(T)キメラ、またはLckおよびFyn(T)キメラをコードする組換え体ワクシニアウイルスを共感染させた。図5Aは、ZAP−70およびFyn(T)キメラ、またはZAP−70およびLckキメラの共発現により、CTLにCD16/CD7/Sykキナーゼキメラのみを発現するCTLと本質的に等しい活性が与えられたことを示す。また、その活性の強さは、CD16/CD7/ゼータキメラの示す活性と等しかった。LckおよびFyn(T)キメラの共発現では、抗CD16標的細胞に対する細胞溶解能力は有意には回復しなかった(図5A)。キナーゼ融合タンパク質対を共感染させた細胞のカルシウム動員能力の評価で、ZAP−70およびSrcファミリーキナーゼキメラの共発現によりカルシウムがレセプター架橋に反応して動員される迅速さが増大すること、そしてLckおよびFyn(T)キメラの共発現により遊離の細胞内カルシウムが有意に蓄積されるということが示された(図5B)。さらに、共凝集により誘導される活性化反応におけるFynキメラの役割を探求するために、本発明者らは、CD16キメラのものと類似の方法で、Fynに融合したCD4の細胞外および膜貫通ドメインを含むFynキメラを調製した。図5Cでは、細胞溶解アッセイにおけるこのキメラの効果が、CD16キメラと比較して10から20倍低いということが示されており、このことは、活性化にはキメラキナーゼの物理的な相互作用が重要であるということを示している。しかしながら、二つのキメラを発現する細胞の細胞溶解活性は、ZAP−70キメラのみを発現する細胞で見られるよりも有意に大きい。この系におけるキナーゼ発現のレベルは比較的高いため、残りの活性はCD4/FynキメラとCD16/ZAP−70との自発的な無秩序の相互作用を反映しているということを考慮せざるを得ない。
カルシウム反応および細胞溶解アッセイ両方で見られる活性化が、キナーゼと現存するシグナル伝達因子との受動的な相互作用で起こる、間接的な凝集によって開始される活性化反応によるものではなく、関連するキナーゼ活性に直接に起因するということを確認するため、本発明者らは、ブタSykおよびヒトZAP−70レセプターキメラ両方のキナーゼ陰性異型を作成した。図6では、実質的にすべてのキナーゼドメインを欠いているか(Sykの場合)、または点変異ホスフォトランスフェラーゼ活性を有している(ZAP−70の場合)レセプターキメラは、インビトロキナーゼ活性を欠き、架橋後のカルシウム動員、またはレセプターによる細胞溶解を媒介することができないということが示されている。
ブタSykとヒト細胞装置との相互作用は、ヒトSykの相互作用と同一ではないかもしれないため、本発明者らは、ブタタンパク質配列のアミノおよびカルボキシル末端に対応するプライマーを用いてPCRによりヒトSyk配列を単離した後、ヒトSykを基本とした類似のタンパク質キメラをも作成した。図7Aでは、キナーゼのいくつかの部分および第二のSH2ドメインに対応するPCR産物の分析により示されたように(Chan et al.,1992,Cell 71:649−662)、ブタおよびヒトSykが極めてよく類似したタンパク質であることが示されている。このことと一致して、ヒトSykキメラレセプタータンパク質は、カルシウム放出および細胞溶解アッセイにおいてブタ構築体と本質的に同様に作用した(図7Bおよび図7C)。
キメラチロシンキナーゼの凝集が大量のリン酸化チロシンタンパク質の有意な変化をもたらすのか否かを確認するため、T細胞レセプター陰性細胞にキメラキナーゼをコードするワクシニア組換え体を感染させた。キメラの細胞外ドメインを抗体で架橋させ、そして活性化細胞の細胞溶解物すべてを電気泳動により分離し、膜に転写し、リン酸化チロシンを認識する抗体で分析した。溶解物は、バナジウム酸塩の存在下、EDTAを含む、または含まない非イオン性界面活性剤中で細胞を破壊するか、またはドデシル硫酸ナトリウムの存在下で溶解し、次に遊離のDNAを取り出すために超音波処理することにより調製した。リン酸化チロシンタンパク質のパターンは場合により異なり、バナジウム酸塩存在下EDTA非存在下に調製した溶解物では、SDSのみで調製した溶解物には存在しない種がさらに出現した。このことは、EDTAが、チロシンキナーゼおよびホスファターゼの溶解後作用を阻害するのかもしれないということを示している。SDSでの直接の溶解では、EDTAおよびバナジウム酸塩存在下における非イオン性界面活性剤での溶解よりも、再現性のあるタンパク質チロシンリン酸化パターンが観察された。図8では、Syk、ZAP−70、またはFynおよびZAP−70を有するキメラの凝集により、抗原レセプター架橋後にリン酸化の増加を示すタンパク質と同じ位置に現れるいくつかのタンパク質種が出現、またはそのリン酸化が増加することが示されている。特に、Sykキメラのクラスター形成により誘導されるバンドのパターンは、T細胞レセプター陽性細胞における抗CD3抗体により誘導されるパターンに非常によく類似している(図8)。これらの中には、Sykキメラの凝集により誘導され、FynおよびZAP−70キメラの共凝集によっても誘導される、およそ150kDのタンパク質が含まれる。予備実験において、このリン酸化タンパク質はホスホリパーゼC−γと同じ位置に現れることが示された(データは示していない)。
キナーゼキメラクラスター形成のPLC−γへの効果を直接確認するため、本発明者らは、キメラを架橋し、PLC−γをモノクローナル抗体の混合物で沈殿させ、得られた免疫沈降物にリン酸化チロシンタンパク質が存在するかどうかを分析した。図9では、Sykのクラスター形成によりPLC−γのリン酸化チロシン含量は実質的に増加するが、一方、FynおよびZAP−70キメラの共架橋によりリン酸化チロシンの容易に検出できる増加が劇的に減少することが示されている。Fynキメラのみを発現する細胞では、PLC−γの正常な適度なリン酸化を示し、それはレセプター凝集の後に増加しなかった(図9)。Syk、Fyn、またはZAP−70およびFynにより同一のチロシン残基がリン酸化されるのかどうかは、現在のところ未知である。Fynキメラを発現する細胞では休止または誘導カルシウム動員いずれも見られないため、これらの細胞で見られるリン酸化チロシンシグナルは、ホスフォリパーゼ活性化を媒介する部位以外のPLC−γ上の部位の利用を表しているのかもしれない。
リン酸化チロシンパターンの変化を説明するための予備的な試みにおいて、本発明者らは、インビトロ自己リン酸化アッセイにおけるクラスター形成後の様々なキナーゼの活性を評価した。キメラを凝集させ、免疫沈降させ、そして免疫沈降体物に存在するタンパク質種へリン酸レベルを取り込む能力を評価した。図10Aでは、これらの条件下で、キナーゼアッセイを10分間行ったとき、架橋後のキナーゼ活性の増加は検出されなかったことを示している。標識リン酸の取り込みは本アッセイにおいて30分まで増加し続けるが、どのような要因により活性が制限されるのかは明らかでない。特に、観察された動力学は、未利用の基質に対してキナーゼを拡散させる、免疫複合体の解離の速度により支配されているのかもしれない。この効果を制御しそしてアッセイの感受性を最大化することを試みて、本発明者らは、5から30秒間という非常に短い時間で架橋を行う場合、または行わない場合で、Sykキナーゼ活性を評価した。しかし、依然としてキナーゼ活性は有意に増加しなかった(図10B)。現在のところ、活性の増加は適当な基質で証明されるという可能性を排除することはできないが、凝集により誘導されるSykキメラ活性の増加は、キナーゼ活性の測定に外因性のペプチド基質(cdc2残基6−20のY19K置換)を用いた場合にも観察されなかった。
可能な機構
単純な物理的刺激、レセプターの凝集により、免疫系細胞に対して区別される化学的なシグナルの伝達が引き起こされる機構は、解明されていない。以前の研究では、Srcファミリーキナーゼは多くの重要な凝集により活性化される免疫系のレセプターと相互作用することが観察され、そしてこのようなレセプターによりキナーゼ活性の増加が引き起こされることが多いということが明らかとされた。さらに最近、関連のあるSykおよびZAP−70キナーゼは、BおよびT細胞抗原レセプターと、それぞれ安定に(Sykの場合)または一時的に(ZAP−70の場合)相互作用することが見いだされ、そして少なくともSykの場合、レセプター架橋によりキナーゼ活性が増加するということが報告された。
この研究において、本発明らは、Sykファミリーキナーゼの凝集により、T細胞レセプターを欠いた細胞においてカルシウム反応が引き起こされるが、SrcファミリーキナーゼのLckまたはFynでは引き起こされないことを示した。キナーゼ陰性異型はカルシウム反応を誘導することができないため、この反応は、他のT細胞レセプターまたはシグナル伝達成分との間接的な相互作用が原因ではないようである。Sykキナーゼを含むキメラの凝集は特異的細胞溶解を誘導するのに十分であるが、一方、ZAP−70キメラによる類似の細胞溶解の誘導にはさらにSrcファミリーキナーゼの関与が必要である。現在、Sykファミリーキナーゼのうちのどのキナーゼが、T細胞活性化においてより重要な役割を果たしている可能性が高いかということは明らかでない。ZAP−70およびSykはいずれも、本実験に用いた細胞株を含む、T細胞において発現しており、そして少なくとも一つの反応性ヒトT細胞株は、特異的なPCR増幅産物により判断したところ、Sykを含むがZAP−70は含まない。Sykキメラクラスター形成後に見られるタンパク質チロシンリン酸化の増加のパターンは、T細胞抗原レセプターの架橋後に見られるパターンに非常によく類似している。
非レセプターチロシンキナーゼによる免疫系細胞の活性化の一つの単純なモデルは、レセプター関連キナーゼの凝集により、物理的相互作用(例えば、活性型キナーゼダイマーの形成)または協同的な酵素作用(例えば、交差リン酸化)のいずれかによる活性化が引き起こされるというものである。活性化された酵素はそれから、カルシウム動員およびイノシトールリン酸合成のために必要な鍵となる細胞内基質に作用する。この一連の過程に対する証拠は、レセプター架橋後にレセプター関連キナーゼ活性が増加することが報告された研究(例えば、Bolen et al.,1991,Adv.Cancer Res.57:103−149;Burkhardt et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7410−7414;Eiseman and Bolen,1992,Nature 355−:78−80;Hutchcroft et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9107−91111/J.Biol.Chem.267:8613−8619;Tsygankov et al.,1992,J.Biol.Chem.267:18259−18262;Wong et al.,1992,Oncogene 7:2407−2415)に見られる。しかし、報告されたキナーゼ活性の変化はほとんどの場合穏和なものであり、インビボで見られるリン酸化チロシンタンパク質パターンの劇的な変化と対照的である。インビトロキナーゼアッセイを手段として用いて、微弱なアロステリック相互作用による活性化を明確に除外することは困難であるため、この点において、シグナル伝達の開始におけるキナーゼ活性化の相対的な重要性に関して明確な見解を述べることは不可能である。しかし、本明細書に示したデータにより、凝集により誘導される酵素および基質の再配分が、存在する活性を適当な生理学的な標的に向けるための重要な要因であるかもしれないということが示される。
Sykファミリーキナーゼを基本としたキメラの凝集により、外因性のT細胞レセプターを欠いた細胞において、ゼータレセプターキメラの凝集後に見られる反応よりわずかに遅れるが、大きさが類似したカルシウム反応が引き起こされる。遊離カルシウムイオン出現のより明白な遅れはZAP−70キメラの架橋後に見られ、そしてこの遅れはZAP−70およびFynキメラを共架橋させることにより実質的に取り除かれる。現在、この観察される遅れに対する説明は明らかでない。共架橋によりカルシウム動員は促進されるため、この遅れは、凝集を介した自己活性化に対するZAP−70の効果が相対的に低いことが原因であるかもしれない。しかし、その他の要因も同様に重要であり、ZAPおよびSykキナーゼを細胞表面で束縛すると、正常な過程と比較して実際に活性化が妨げられるかもしれない。例えば、もし正常な過程において、Sykファミリーキナーゼを一時的にクラスターを形成したレセプターに補充し、活性化し、それから基質へと拡散するように放出すると、キメラレセプターがキナーゼ活性化のための一種の触媒中心として機能することができなくなるために、キナーゼドメインの細胞膜への永久的な結合は、基質への接近の阻害および/またはシグナル増幅の制限により限定的なものとなりうる。
カルシウム反応の二つ目の特性は、ヒトまたはブタSykを基本としたキメラを発現しているT細胞レセプター陽性細胞では、遊離カルシウムイオンの基線濃度が高いということの発見である。このことは、カルシウム放出が自発的に引き起こされているということを示す。同様な発見は、レセプター陰性細胞では観察されていない。この結果は、T細胞腫瘍株のT細胞レセプター陰性異型は典型的に外因的に導入された刺激分子に過剰反応性であるという、本発明者らが観察してきた一般的な傾向に反する。自発的な活性化過程においてT細胞レセプターが必要であるらしいということを説明するために、本発明らは、二つの可能性のある、そして関連のある説明を提供する。一つは、キメラSykキナーゼはT細胞レセプター細胞内ドメイン上で構成的に作用し、レセプターキメラのSH2ドメインのためのリン酸化チロシン標的を作り出し、それにより、多価のT細胞レセプター架橋を介した細胞内凝集が引き起こされ、次にキナーゼ活性化が促進されるというものである。もう一つの可能性は、T細胞レセプター陰性細胞株では、全体的な調節回路により仮説的なキナーゼのデノボ合成が減少するためか、または抗原レセプターが存在しないことにより細胞内輸送が無制御になるために、低レベルの膜関連キナーゼがSykの活性化に必要であるのかもしれないというものである。
B細胞において、Sykキナーゼは、IgM抗原レセプターの細胞内因子と構成的に相互作用していることが報告されている(Hutchcroft et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9107−91111;Hutchcroft et al.,1992,J.Biol.Chem.267:8613−8619)。この相互作用の正確な機構は明らかでないが、一つの可能性として、リン酸化チロシンは、Syk SH2ドメインと、mb−1の細胞質ドメインおよびB29レセプター鎖に存在するチロシン刺激モチーフとの相互作用に必要ではない。この説の一部の先例は、フィラデルフィア染色体ブレークポイントクラスター領域(breakpoint cluster region)遺伝子産物BCRが、リン酸化チロシン非依存的に様々なSH2ドメインに結合するという報告である(Pendergast et al.,1991,Cell 66:161−171;Muller et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:5087−5093)。しかしこの場合、リン酸化セリンおよび/またはリン酸化スレオニン残基が、相互作用において重要な役割を果たしている可能性が高い。また、Sykは、Syk SH2因子と触媒性ドメインとの間に位置する特別な領域を介して、IgMレセプター細胞内モチーフと相互作用するのかもしれない。三つ目の可能性は、ごく少量のチロシンリン酸化ペプチドのみが、機能的に重要なレベルのSykを細胞膜の内面に補充するのに必要であり、そしてこのようにリン酸化チロシンが低レベルであるためにこれまで検出されていなかったというものである。
B細胞において活性化にSrcファミリーキナーゼが必要であるということは明確にはされていないが、T細胞においては二つのキナーゼLckおよびFyn(T)が重要な役割を果たしていることが身体的または生物的遺伝学により示された(Appleby et al.,1992,Cell 70:751−763;Karnitz et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:4521−4530;Stein et al.,1992,Cell 70:741−750;Straus and Weiss,1992,Cell 70:585−593)。現在のところ、これらのキナーゼの作用が通常、Sykファミリーキナーゼの作用に先行するのか、または後に起こるのかということに結論を下すことは不可能である。T細胞活性化におけるZAP−70の作用を説明するための一つの仮説は、レセプター関連Srcファミリーキナーゼの凝集によりレセプター鎖の一時的なリン酸化が起こり、次にそれによりZAP−70の相互作用およびその後の細胞活性化が起こるというものである。このモデルで仮定されているレセプター鎖の最初のリン酸化は、レセプター架橋後に長期的に見られるゼータの安定なリン酸化とは区別されなければならない。
マウスT細胞においては、低い割合のT細胞レセプター複合体が、異なるスプライシングをうけた型である(Clayton et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5202−5206)、エタと呼ばれるゼータ関連分子を含んでいる(Baniyash et al.,1988,J.Biol.Chem.263:9874−9878)。エタは、ゼータとカルボキシル末端が異なり、そしてマウスゼータに見られる6つのチロシンのうち最も遠位のものを欠いている(Jin et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3319−3323)。マウスTCRゼータ−ゼータイソフォームのゼータ鎖のリン酸化は、抗体によるレセプター架橋の後に容易に検出できるが、同様の条件においてTCRエタ鎖ではリン酸化が検出されない(Bauer et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3842−3846)。ゼータ−エタ異種ダイマーを有するTCRイソフォームはレセプター架橋後にリン酸化されないことから、ゼータ鎖の安定なリン酸化には二つの近接するゼータ鎖が必要であるようである(Bauer et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3842−3846)。リン酸化における違いにも関わらず、エタ同種ダイマーのみを含むTCRアイソフォームを含む細胞株は、ゼータ同種ダイマーのみを有する細胞株と機能的に区別できない(Bauer et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3842−3846)。このように、抗体によるレセプター凝集の30分後に見られるゼータのリン酸化は、活性化とは無関係である。別の実験において、TCR凝集後のリン酸化チロシンリン酸化タンパク質の蓄積の時間経過を検討したところ、初期に見られる種は分子量135および100kDの二つのタンパク質であり、そのリン酸化はそれぞれ架橋の5秒後および15秒後に最初に検出され、いずれの場合もおよそ30秒で最大リン酸化の半分に達し、これはカルシウム動員およびイノシトールリン酸形成が最大量の半分に達する時間よりも早い(June et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7722−7726;June et al.,1990,J.Immunol.144:1591−1599)。対照的に、ゼータのリン酸化の速度は、実質的に低く、刺激後約3から5分で最大置換の半分に達し、これはカルシウム動員およびイノシトールリン酸の遊離が観察されるよりもかなり遅い(June et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7722−7726;June et al.,1990,J.Immunol.144:1591−1599)。
したがってこの2段階モデルが正しいなら、ZAP−70を細胞膜の内面に補充する必要があるチロシンリン酸化は、上記の実験で観察されたよりも迅速な、そしておそらくは一時的な過程でなければならない。最近、適度な速さの(およそ15秒)開始のチロシンリン酸化が、レセプター架橋後にゼータおよびCD3イプシロン鎖両方で検出されること(Wange et al.,1992,J.Biol.Chem.267:11685−11688)、そしてリン酸化チロシンを有する70kDのタンパク質がゼータおよびイプシロン鎖両方と相互作用することが示された。リン酸化レセプター鎖との安定な相互作用が、T細胞活性化が成功するための必須条件であるかどうかは、現在のところ明らかではない。
しかし一般的な主張として、本明細書に報告した結果は、Sykファミリーキナーゼが、T細胞のエフェクター装置にSrcファミリーキナーゼよりも直接に作用するということを示している。Srcファミリーキナーゼは、CD2(Bell et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:5548−5554)、CD23(Sugiw et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9123−9135)、CD36(Huang et al.,1992,J.Biol.Chem.267:5467−5473)、IL−2レセプターβ鎖(Hatakeyama et al.,1991,Science 252:1523−1528)、および様々なホスファチジルイノシトールに結合したタンパク質(Stefanova et al.,1991,Science 254:1016−1019;Thomas and Samelson,1992,J.Biol.Chem.267:12317−12322)を含む、抗原/Fcレセプターファミリーに属さない数多くの細胞表面分子と相互作用しうるということが、次々と報告されてきている。上記のもののいくつかは、T細胞での活性化を促進するために、抗原レセプターがさらに存在することが必要であることが知られている。この必要性に対する単純な説明は、抗原レセプター上の刺激モチーフがSrcファミリーキナーゼの基質として作用し、その結果としてSykファミリーキナーゼの結合が起こり、それからおそらくそれらの活性化を促進する修飾過程が起こるというものである。リン酸化および活性化の原因となる鎖を確定することが困難であるなら、刺激モチーフがエフェクターキナーゼの補充、活性化および放出のための一種の触媒中心として機能するために、一時的な役割のみを果たしているということも同様である。
Srcファミリーキナーゼは、非造血系に広範に分布しており、そしてFyn陰性マウスを用いた最近の研究により、長期増強の維持におけるFynの役割が示された。長期増強とは、連合記憶の初期強化の基礎となっていると考えられている、促進された神経伝達の現象である(Grant et al.,1992,Science 258:1903−1910)。もし同様な活性化経路が他の細胞型でSrcファミリーキナーゼにより媒介されるなら、Sykファミリーキナーゼも、造血系以外により広く分布しているということが判明するかもしれない。
実験方法
キメラの作成
ヒトLck(Koga et al.,1986,Eur.J.Immunol.16:1643−1646)、マウスFyn(T)(Cooke and Perlmutter,1989,New.Biol.1:66−74)、ブタSyk(Taniguchi et al.,1991,J.Biol.Chem.266:15790−15796)、およびヒトZAP−70(Chan et al.,1992,Cell 71:649−662)キナーゼのコード領域全体を、CD7の短い「柄(stalk)セグメントおよび膜貫通ドメインに結合したCD16細胞外ドメインを含む、キメラ膜貫通タンパク質の細胞内ドメインに結合させた。CD7細胞内ドメインは、Mlu部位を付加することにより停止転移配列(stop transfer sequence)において切断した。多様なキナーゼに適切なリーディングフレーム内でMlu部位を付加させ、3部分からなる融合タンパク質を発現させた。ブタSyk配列を、適当な制限部位を有するプライマーを用いて、ブタリンパ球RNAすべての逆転写およびPCRにより得た。ZAP−70配列は、同様にヒトT細胞cDNAライブラリーからPCRにより得た。単離したもののいくつかを同時に配列決定し、制限断片交換により各キナーゼについて変異を含まないコード配列を得た。得られたコード配列を、CD16/CD7配列から下流でワクシニアウイルス発現ベクターに挿入した。ヒトSykを、ブタ配列の末端に対応するプライマーを用いて、ナチュラルキラー細胞cDNAライブラリーおよびダウジ(Daudi)細胞ライブラリーから単離した。順向きプライマーは、「atg gca gac agt gcc aac cac ttg ccc ttc ttc t」という配列を有し、逆向きプライマーは、「cgc ggg gcg gcc gct tta att cac cac gtc gta gta gta」という配列を有していた。初期増幅で予想通りの大きさのバンドの存在を確認した後、「cgc ggg acg cgt acc atg gca gac agt gcc aac」という配列を有する5'末端に伸長したプライマーを用いて、再増幅(10サイクル)を行い、そして断片をMlu切断ベクターへ結合させた。
カルシウム動員分析 前述のように、カルシウム感受性フルオロホア(fluorophore)Indo−1を用いて、組換え体キナーゼを発現する細胞についてフローサイトメトリーおよび集団分光分析を行った(Romeo and Seed,1991,Cell 64:1037−1046;Romeo et al.,1992,Cell 68:889−897)。簡潔に述べると、10の感染多重度で血清を含まないIMDM中で1時間、ジャーカット異型亜株JRT3.T3.5(Weiss and Stobo,1984,J.Exp.Med.160:1284−1299)に、組換え体ワクシニアウイルスを感染させ、そして「IMDM,10%FBS」中で3から9時間インキュベートした。細胞を遠心分離により集め、1mM Indo−1アセトメトキシエステル(Grynkiewicz et al.,1985,J.Biol.Chem.260:3440−3450)(モレキュラープローブ(Molecular Probes)、ユージーン(Eugene)、オレゴン州)を含む完全培地中に3x106/mlで再懸濁し、37℃で45分間インキュベーションした。Indo−1負荷細胞をペレットにし、そして血清を含まないIMDM中に1x106/mlで再懸濁して、暗所で室温で保存した。フローサイトメトリー(Ravinovitch et al.,1986,J.Immunol.137:952−961)により紫と青の蛍光を同時に測定することにより細胞の遊離カルシウムイオンを分析した。カルシウム流入を開始させるため、未結合の3G8(抗CD16)モノクローナル抗体(1μg/ml)を細胞懸濁液に添加し、さらに時間0においてフィコエリスリン(PE)−結合Fab02ヤギ抗マウスIgGを添加するか、またはPE−結合抗CD4抗体(Leu−3,Becton Dickinson)を添加し、さらに未結合二次抗体を添加した。紫/青蛍光比のヒストグラムを、典型的に細胞の40〜80%を表す、PE陽性(感染)細胞群から集めた。抗体の添加前の紫/青蛍光比を、統一するための標準初期比とするために用いた。
リンパ球細胞溶解アッセイ CD8+CD4-HLA B44制限細胞溶解性株(WH3)を「IMDM,100U/mlのIL−2を含む10%ヒト血清」中で培養し、HLA B44ハプロタイプを有する放射線照射した(3000rad)単核球で周期的に刺激した。細胞は、細胞傷害性アッセイで用いる前に、刺激後少なくとも10日間培養した。細胞に、血清を含まない培地中で1時間、少なくとも10の感染多重度で組換え体ワクシニアを感染させ、次に3時間完全培地でインキュベートした。細胞を遠心分離により集め、そして1x107/mlの濃度で再懸濁した。100μl/ウェルの完全培地を含むU底マイクロタイタープレートの各ウェルに、100μlを添加した。細胞を2回段階希釈した。各試料について2ウェルにはリンパ球を含ませず、自発的なクロム放出および全クロム取り込みを測定するようにした。106 3G8 10−2標的細胞(Shen et al.,1989,Mol.Immunol.26:959−969)を等分したものを、遠心分離し、37℃で断続的に攪拌しながら1時間、50μlの滅菌51Crクロム酸ナトリウム(1mCi/ml,DuPont)に再懸濁して、それからPBSで3回洗浄した。培地中に105/mlで再懸濁した標識細胞を100μl、各ウェルに添加した。マイクロタイタープレートを750xgで1分間回転させ、そして37℃で4時間インキュベートした。インキュベート時間の最後に、各ウェル中の細胞を穏和にピペットで上下させることにより再懸濁した。取り込まれた全値を決定するために試料を取り出し、そしてマイクロタイタープレートを750xgで1分間回転させた。上清のうちの100μlを取り出し、ガンマ線シンチレーション検出器で検出した。標的に対するエフェクターの比を、感染したエフェクター細胞のパーセント数に補正した(通常>70%)。
異型キナーゼキメラの作成 ブタSykキナーゼタンパク質変異体を、キメラをStu IおよびNot Iで切断し(後者はカルボキシル末端のちょうど3'に位置する)、Not I部位を充填し、末端を相互に結合させることにより作成した。得られた配列は、ブタSykの最初の298残基を終結前に4つの外来残基(GPRL)と結合させた。ZAP−70のATP結合部位における点変異体(K369G)は、Chanら(1992,Cell 71:649−662)により報告された配列の最初の鎖のヌクレオチド残基1319と1345の間に位置するBal IおよびEar I部位の間の二本鎖オリゴヌクレオチド断片の挿入により、作成した。得られた配列は、残基369においてジリンの代わりにグリシンをコードしていた。
免疫沈降およびキナーゼアッセイ およそ2x106のヒーラ(Hela)S3細胞に、血清を含まないDME培地中で1時間、少なくとも10の感染重度で組換え体ワクシニアを感染させた。感染の5時間後、細胞を集め、リン酸緩衝生理食塩水で二回洗浄し、そして「1%トリトン(Triton)X−100、0.15M NaCl、0.02M HEPES pH7.3、5mM EDTA、5mM NaF、0.2mM MNaVO3、10μg/mlロイペプチン(leu peptin)、10μg/mlプロチニン(protinin)、および1mM PMSF」中に溶解した。氷上で10分間インキュベートした後、核酸を遠心分離で除去し、CD16融合タンパク質を抗体BMA209/2およびプロテイン/Aセファロースで免疫沈降させた。樹脂に加えた融合タンパク質を溶解用緩衝液で3回洗浄し、それから最後に「20mM HEPES pH7.3」で洗浄した。各試料に、10μCiの「γ−32P」ATP(〉3000Ci/mmole)を含む、10μlのキナーゼ用緩衝液(20mM HEPES pH7.3、10mM MgCl2、10mM MnCl2)」を添加した。反応液を、室温で10分間インキュベートし、20μlの2X試料ロード用緩衝液(4%SDS、100mMトリスpH6.8、20%グリセロール、および10%β−メルカプトエタノール)を添加することにより停止した。試料を3分間加熱した後、等分したものを4〜15%勾配のゲルにかけた。tyr20がlysに置き換わった、cdc2の6〜20位に対応する可溶性ペプチド基質で、「munufacturer's recommendations(UBI)」に従い、キナーゼアッセイを行った。
タンパク質チロシンリン酸化のイムノブロッティング分 析 TCR陰性3.5細胞に、一時間、(少なくとも10の感染多重度で)組換え体ウイルスストックを感染させた。続いて、細胞を37℃で8〜12時間インキュベートし、遠心分離し、107細胞/mlの血清を含まないイスコブ(Iscove)培地中で洗浄、再懸濁した。細胞を等分したものを、2〜3x106細胞につき1μg抗体で、抗CD16 mAb(3G8,MedarexBMAまたは209/2,Behringwerke)と共にインキュベートした。刺激した試料をさらに、3〜5倍過剰のアフィニティ精製した抗マウスIgG1抗体(サザンバイオテクノロジー社/Southern Biotechnology)と共に5分間インキュベートした。それから、細胞を「Secrist,J.P.,Burns,L.A.,Karnitz,L.,Koretzky,G.A.,and Abraham,R.T.(J.Biol.Chem.268.5886−5893,1993)」を少し変形したものに従い操作した。最終濃度1%になるようSDSを添加することによりインキュベートを停止し、試料を3分間煮沸した。「Heat Systems Ultrasonics,Inc.」を用いて1分間超音波処理することによりDNAを取り出し、2X試料用緩衝液を添加し、105から2.5x105細胞に相当するように等分したものをポリアクリルアミドゲルで分離し、そしてタンパク質を「semidry electroblotting(Hoefer)」によりニトロセルロース(Schleicher and Schuell BA45)へと転写した。フィルターを、1時間、1.5%トリオブアルブミン(シグマ社)を含む0.05%ツイーン(Tween)−20を加えたトリス緩衝生理食塩水(TBST)でブロッキングし、TBSTで洗浄し、そして抗リン酸化チロシン抗体4G10(UBI)を1:10000希釈で含む溶液へと移し、22℃で1〜2時間インキュベートした。TBST洗浄後、フィルターを「TBSTおよび1:5000希釈の抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体」中で1時間インキュベートした。リン酸化されたタンパク質のバンドを化学発光(ECL、アムシャム社)により検出した。露出時間は2秒から5分までの間で変化させた。
ヒトIgG1:プロテイン−チロシンキナーゼキメラの作成
標的細胞に特異的な抗体分子の細胞外ドメイン、およびプロテイン−チロシンキナーゼ(例えば、本明細書記載のキナーゼ)の細胞内ドメインを含むキメラ分子を作成した。このような分子を作成するために、CH3ドメイン内の配列を、膜貫通型の抗体mRNAの3'末端に由来するcDNA断片に結合させることにより、ヒトIgG1重鎖配列を調製した。3'末端断片は、扁桃腺cDNAライブラリーを基質として、そして各々目的のDNA断片の5'および3'末端に相当する「CGC GGG GTG ACC GTG CCC TOC AGC AGC TTG GGC」および「CGC GGG GAT CCG TCG TCC AGA GCC CGT CCA GCT CCC CGT CCT GGG CCT CA」という配列を有するオリゴヌクレオチドを用いて、ポリメラーゼチェーン反応により得た。5'オリゴはヒトIgG1のCH1ドメイン内の部位に相補的であり、3'オリゴは膜を通過するドメインをコードする配列のちょうど5'の部位に相補的である。PCR産物をBst XIおよびBamH Iで消化し、可変および定常領域を有する半合成IgG1抗体遺伝子のBst XIおよびBamH I部位の間で結合させた。BamH I断片へのBst XIの挿入の後、構築体の増幅部分を制限断片交換によりCH3内のSma I部位まで置換し、Sma I部位と3'オリゴの間の部分のみがPCR反応に由来するようにした。
ヒトIgG1キメラレセプターを作成するため、標準的な手法により、BamH I部位で終っている重鎖遺伝子を目的のキナーゼ細胞内ドメインに結合させた。キメラレセプター発現のレベルは、フローサイトメトリーにより決定した。発現の増加は、抗体軽鎖cDNAをコードするプラスミドの共発現により達成できた。
重鎖と軽鎖両方が単一のプロモーターから発現するような単一の転写単位を作成するために、重鎖および軽鎖コード配列、およびgrp78もしくはBiPとしても知られている78kDのグルコース調節タンパク質をコードするmRNAの5'非翻訳部分より二シストロン性のmRNAをコードするプラスミドを作成した。grp78配列は、各々5'および3'末端の「CGC GGG CGG CCG CGA CGC CGG CCA AGA CAG CAC」および「CGC GTT GAC GAG CAG CCA GTT GGG CAG CAG CAG」という配列を有するプライマーを用いて、ヒトゲノムDNAのPCRにより得た。これらのオリゴでのポリメラーゼチェーン反応は、10%ジメチルスルホキシドの存在下で行った。PCRにより得られた断片はNot IおよびHinc IIで消化し、ヒトIgG1コード配列から下流で、Not IとHpa I部位の間に挿入した。それから、Hinc II部位およびベクター内のもう一つの部位を用いて、ヒトIgGカッパ軽鎖cDNAをコードする配列をgrp78リーダー(leader)から下流に挿入した。これらの操作より得られた発現プラスミドは、順に、半合成重鎖遺伝子、grp78リーダー配列、カッパ軽鎖cDNA配列、SV40 DNA断片由来のポリアデニル化シグナルを含む。本発明者らは、すでに、COS細胞にこの発現プラスミドをトランスフェクションすることにより、重鎖決定基のみをコードするプラスミドのトランスフェクションと比較して、重鎖決定基の発現が著しく改善されることを示した。
重鎖/レセプターキメラおよび軽鎖を含む二シストロン性遺伝子を作成するために、上流の重鎖配列を本明細書に記載のいかなる重鎖/レセプター遺伝子と置き換えることも可能である。
作成後、IgG−チロシンキナーゼキメラを発現ベクター中にクローニングし、それを宿主細胞内に導入し、そして本明細書に記載のアッセイ(例えば、カルシウム動員または細胞溶解アッセイ)のいずれによっても試験することができる。
CD4−チロシンキナーゼキメラの作成
CD4分子の細胞外ドメイン、およびプロテイン−チロシンキナーゼ(例えば、本明細書に記載のキナーゼ)の細胞内ドメインを含むキメラ分子を作成した。このような分子を作成するため、チロシンキナーゼをコードする配列(例えば、cDNA)を単離した(例えば、上記記載のように)。それから標準的な手法により、この配列を、膜通過ドメインのすぐ上流にBamH I部位を有する遺伝子操作をしたCD4(Aruffo et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:8573−8577(1987b);Zettlemeissl et al.,DNA Cell Biol.,9347−353(1990))の細胞外ドメインと結合させた。この融合タンパク質を作成するため、遺伝子工学によりBamH I部位を適当な位置の配列に組み込むことができる(これも、標準的な手法により)。遺伝子融合体をワクシニアウイルス発現プラスミドに導入し(本明細書記載のように)、そして相同的組み換えおよびマイコフェノール酸中での増殖に対する選択によりワクシニアWR株のゲノムに挿入する(Falkner et al.,J.Virol.62:1849−1854(1988);Boyle et al.,Gene,65:123−128(1988))。フローサイトメトリー分析を用いて、細胞表面でのCD4−チロシンキナーゼ融合タンパク質のワクシニア組換え体による発現を調べた。ワクシニア組換え体を感染させた細胞の免疫沈降を、結果の確認に用いた(上記記載のように)。
CD4キメラの効果は、本明細書に記載のカルシウム動員または細胞溶解アッセイのいずれを用いても試験することができる。一つの特別な例として、HIVエンベロープgp120/gp41複合体のCD4認識を基本とした、モデル標的:エフェクター系を作成した。ヒーラ(HeLa)細胞に、gp120/gp41を発現する組換え体ワクシニアウイルスを感染させ(Chakrabarti et al.,Nature,320:535−537(1986);Earl et al.,J.Virol.,64:2448−2451(1990))、51Crで標識した。標識細胞を、CD4−チロシンキナーゼキメラを発現するワクシニア組換え体を感染させたヒトアロ特異的(CD8+、CD4-)細胞傷害性Tリンパ球株由来の細胞と共に、インキュベートし、特異的な溶解を試験した。
ワクシニア感染により、CTLによる人為的な確認が促進されるかもしれない可能性を制御するため、ホスファチジルイノシトール結合型CD16(CD16PI)を発現するワクシニア組換え体を感染させ、そして51Crで標識した標的細胞、およびCD16キメラを発現する対照組換え体を感染したCTLについて、同様な細胞溶解実験を行った。
もう一つの例として、循環系中での寿命が極めて短く(およそ4時間)、そして細胞溶解性が強力な好中顆粒球は、CD4−チロシンキナーゼキメラの発現にとって好適な細胞である。好中球にHIVを感染させることによりウイルスの放出が引き起こされる可能性は低く、これらの細胞が豊富(白血球のうちで最も普遍的)であることにより宿主の防御は促進されるはずである。宿主細胞に好適かもしれないもう一つの細胞は、現在レトロウイルスの遺伝子工学により入手できる群である(Rosenberg,S.A.Sci.Am.,262:62−69(1990))、成熟T細胞である。組換え体IL−2の補助により、T細胞群を比較的容易に培地中で増殖させることができ、そしてその増殖した群は典型的に、再注入したときに限られた寿命を持つ(Rosenberg et al.,N.Engl.J.Med.,323:570−578(1990))。
適当な条件下において、CD4キメラを発現する細胞によるHIV認識により、マイトジェニックな刺激も提供され、それにより武装細胞群がウイルス負荷に対して活発に応答することが可能となる。本発明者らは、本明細書において、細胞溶解性Tリンパ球における融合タンパク質の作用について焦点を当てたが、ヘルパーリンパ球におけるキメラの発現により、AIDSにおけるヘルパー細胞サブセットの破壊に対抗することができるサイトカインのHIV動員供給源が提供される。ウイルス侵入以外の段階での感染に対する抵抗を作り出すためのいくつかの計画が最近記述され(Friedman et al.,Nature,335:452−454(1988);Green et al.,Cell,58:215−223(1989);Malim et al.,Cell,58:205−214(1989);Trono et al.,Cell,59:113−120(1989);Buonocore et al.,Nature,345:625−628(1990))、細胞内作用部位を有する適当な剤の発現により、CD4キメラを有する細胞を、ウイルス産生を妨げるように設計することができるということが示されている。
自律的なキメラによるTリンパ球へのシグナル伝達能力によっても、インビボのレトロウイルスの遺伝子工学によるリンパ球の制御のための能力が提供される。例えば、遺伝子操作により補体結合ドメインを除去した特異的なIgM抗体が媒介する架橋刺激により、このようなリンパ球の数をインサイチュで増加させることができるが、一方、類似の(例えば、キメラ鎖に遺伝子操作により組み込まれたアミノ酸変異を認識する)特異的なIgG抗体での処理では、遺伝子工学による群が選択的に減退する。本発明者らは、すでに、抗CD4 IgM抗体には、CD4:ζキメラを発現するジャーカット細胞においてカルシウムを動員するために、さらなる架橋は必要でないことを決定した。反復的な体外増殖を用いずに細胞群を調節することができることにより、遺伝子工学によるT細胞について提唱されている現在の使用の範囲および効率が実質的に拡大するかもしれない。
他の態様
プロテインキナーゼ細胞内配列を含むその他のキメラを作成するため、レセプターの細胞外ドメインをコードするcDNAまたはゲノム配列に、選ばれた細胞外ドメインの直前の位置に制限部位を導入することができる。また、制限部位で終わる細胞外ドメイン断片を、プロテインキナーゼ配列に結合させることができる。典型的な細胞外ドメインは、補体、炭水化物、ウイルスタンパク質、細菌、原生動物あるいは後生動物の寄生虫、またはそれらに誘導されるタンパク質を認識するレセプターに由来する。同様に、病原体や腫瘍細胞が発現するリガンドまたはレセプターを、プロテインキナーゼ配列に結合させ、それらのリガンドを認識するレセプターを有する細胞に対して免疫応答を行わせることもできる。
細胞溶解に必要な最小限のプロテインキナーゼ配列を同定するため、一連の欠失変異体を、キナーゼ細胞内ドメインを連続的に多く除去していくという標準的な手法により調製した。このような欠失変異体を、本明細書に記載のアッセイのいずれかによりその効果を試験した。Sykプロテインキナーゼの有用な細胞内ドメインには、例えば、ブタSyk配列のアミノ酸336−628およびヒトSyk配列のアミノ酸338−630が含まれる。
本発明に関してこれらの特別な態様に関して記述されたが、本発明はさらに改変することが可能であり、そして本出願は、本発明の改変、使用、または適用をすべて含み、そして本発明が属する技術分野において通常行われ、本明細書および添付の請求の範囲において開示した重要な特徴に対して適用される、本開示の改良を含むということを理解されたい。
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人:Brian Seed
Charles Romeo
Waldemar Kolanus
(ii)発明の表題:レセプターキメラによる細胞性免疫の回復
(iii)シーケンス数:8
(iv)文書通信住所:
(A)宛名:Fish & Richardson
(B)街路名:225 Franklin Street
(C)市名:Boston
(D)州名:Massachusetts
(E)国名:U.S.A.
(F)郵便番号:02110−2804
(v)コンピュータ読取りフォーム:
(A)メディア形式:3.5"Diskette,1.44Mb
(B)コンピュータ:IBM PS/2 Model 50Z or 55SX
(C)運転システム:MS−DOS(Version 5.0)
(D)ソフトウェア:WordPerfect(Version 5.1)
(vi)現行出願情報:
(A)出願番号:08/093,210
(B)出願日:July 16,1993
(C)分類:
(viii)弁護士/代理人情報:
(A)氏名:Paul T.Clark
(B)登録番号:30,162
(C)参照/明細書番号:00786/195001
(ix)電気通信情報:
(A)電話:(617)542−5070
(B)ファックス:(617)542−8906
(C)テレックス:200154
(2)配列番号:1の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:33
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:1
(2)配列番号:2の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:50
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:2
(2)配列番号:3の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:33
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:3
(2)配列番号:4の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:33
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:4
(2)配列番号:5の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:630
(B)配列の型:アミノ酸
(C)鎖の数:N/A
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:5
(2)配列番号:6の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:628
(B)配列の型:アミノ酸
(C)鎖の数:N/A
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:6
(2)配列番号:7の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:34
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:7
(2)配列番号:8の情報:
(i)配列の特性:
(A)配列の長さ:39
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列の記載:配列番号:8
Claims (5)
- 膜結合型キメラタンパク質レセプターを発現するT細胞であって、
キメラレセプターは、(a)レセプター結合標的細胞またはレセプター結合標的感染源を破壊させるシグナルを前記T細胞に与えることができるSykプロテイン−チロ シンキナーゼの細胞内部分、および(b)前記標的細胞または前記標的感染源に対して特異的に認識し結合することができる細胞外部分とを含み、
それによって、前記標的細胞または標的感染源を特異的に認識し破壊することができる、前記T細胞。 - 細胞内部分が、ブタSykアミノ酸336−628またはヒトSykアミノ酸338−630を含む、請求の範囲1記載の細胞。
- 少なくとも2つの異なった膜結合型キメラタンパク質レセプターを発現するT細胞であって、
第一のキメラレセプターは、(a)レセプター結合標的細胞またはレセプター結合標的感染源を破壊させるシグナルを前記細胞に与えることができるZAP−70プロテイン−チロシンキナーゼの細胞内部分、および(b)前記標的細胞または前記標的感染源に対して特異的に認識し結合することができる細胞外部分とを含み、
第二のキメラレセプターは、(a)レセプター結合標的細胞またはレセプター結合標的感染源を破壊させるシグナルを前記細胞に与えることができるSrcキナーゼファミリーのプロテイン−チロシンキナーゼの細胞内部分、および(b)前記標的細胞または前記標的感染源に対して特異的に認識し結合することができる細胞外部分とを含み、
それによって、前記標的細胞または前記標的感染源を特異的に認識し破壊することができる、前記T細胞。 - Srcキナーゼファミリーのプロテイン−チロシンキナーゼがFynである、請求の範囲3記載の細胞。
- Srcキナーゼファミリーのプロテイン−チロシンキナーゼがLckである、請求の範囲3記載の細胞。
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