JP3587937B2 - 複合逆浸透膜による処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液中の成分を選択的に分離するために複合逆浸透膜を利用した処理方法に関し、詳しくは、処理に使用する複合逆浸透膜が、ポリアミド系スキン層の表面を正荷電性基を有する有機重合体層で被覆されている複合逆浸透膜による溶液の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の複合逆浸透膜を用いて、カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液の脱塩を行う場合、酢酸セルロース系逆浸透膜はカチオン系有機物および/または両性系有機物を吸着しにくいので、比較的透過水量は安定しているが、現在市販されている酢酸セルロース系逆浸透膜はいずれも30kgf/cm2前後の運転圧力が必要で、電気代等のランニングコストが高い。一方15kgf/cm2前後の運転圧力で運転が可能なポリアミド系のスキン層を持つ複合逆浸透膜は一般に若干負荷電性であるために、溶液中のカチオン系有機物および/または両性系有機物が膜に吸着して透過水量が著しく低下し運転が不可能であった。特にカチオン系界面活性剤および/または両性系界面活性剤を含むような下水の複合逆浸透膜を使う高度処理においては、安定して運転することができなかった。また、超純水製造用途において、アニオン交換樹脂などからのカチオン性モノマーの溶出がある液の処理においても、上記の吸着現象のため透過水量が著しく低下するので、あらかじめ複合逆浸透膜エレメントの本数を増やしておいて透過水量の低下分を補うなど高いコストがかかっていた。従って、ポリアミド系のスキン層を持つ複合逆浸透膜を用いて、これらのカチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液の脱塩あるいは有効成分の濃縮などの処理を行うことができる処理方法が期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、運転ランニングコストの安い、全芳香族ポリアミド系のスキン層を持つ複合逆浸透膜を用いて、カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液を、高い透過水量でかつ安定して処理できる脱塩や有効成分の濃縮などに有効な水処理方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の複合逆浸透膜による処理方法は、カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液を複合逆浸透膜で処理する方法において、処理に使用する複合逆浸透膜が、全芳香族ポリアミド系スキン層とこれを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜で、上記ポリアミド系スキン層はその平均面粗さが60nm以上であって、2つ以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミン化合物(但し、芳香環上に塩素置換基を含む化合物を除く)と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物から合成された負荷電性全芳香族架橋ポリアミド系スキン層であり、前記スキン層の表面が正荷電性基を有する有機重合体層で被覆されており、当該複合逆浸透膜の性能が、操作圧力15kgf/cm 2 、温度25℃にて塩化ナトリウム1500ppmを含有するpH6.5の水溶液で評価したときに、塩の膜透過阻止率が90%以上、透過水量が1m 3 /m 2 ・日以上であることを特徴とする。
【0005】
前記ポリアミド系スキン層の表面を正荷電性基を有する有機重合体層で被覆することにより、カチオン系有機物および/または両性系有機物が前記ポリアミド系スキン層に吸着されることを防止でき、複合逆浸透膜の透過水量の低下がなく、安定して連続運転することができる。そして前記ポリアミド系スキン層の平均面粗さを60nm以上、さらに好ましくは60nm以上1000nm以下とすることにより、比較的低圧でも良好な透過水量を実現でき好ましい。
【0006】
また、前記スキン層として全芳香族架橋ポリアミドからなるスキン層を用いることにより、脂肪族ポリアミドからなるスキン層を用いた場合に比べて、耐薬品性等の化学的耐性が優れており、長期使用などによって付着したスライムやスケールなどを化学洗浄によって除去した後、再使用する場合に性能の低下がなく好ましい。
【0007】
そして、複合逆浸透膜の性能が、操作圧力15kgf/cm 2 、温度25℃にて塩化ナトリウム1500ppmを含有するpH6.5の水溶液で評価したときに、塩の膜透過阻止率が90%以上、透過水量が1m 3 /m 2 ・日以上である複合逆浸透膜を用いることにより、透過水量が高いほど低圧で運転できるため、電気代等のランニングコストが安くできる。更に好ましくは透過水量が1.2m 3 /m 2 ・日以上である。
【0008】
また、前記本発明の複合逆浸透膜による処理方法に於いては、複合逆浸透膜の前記全芳香族ポリアミド系スキン層が、溶解度パラメーターが8〜14( cal / cm 3 ) 1/2 の化合物の存在下で、2つ以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミン化合物(但し、芳香環上に塩素置換基を含む化合物を除く)と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官 能性酸ハロゲン化物から合成された平均面粗さが60nm以上の全芳香族ポリアミド系スキン層であることが好ましい。
【0009】
また、前記本発明の複合逆浸透膜による処理方法に於いては、複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層の自乗平均面粗さが65nm以上であることが好ましい。さらに好ましくは70nm以上2000nm以下である。自乗平均面粗さが65nm以上の前記ポリアミド系スキン層を用いることにより、比較的低圧でも良好な透過水量を実現でき好ましい。
【0010】
また、前記本発明の複合逆浸透膜による処理方法に於いては、複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層の10点平均面粗さが300nm以上であることが好ましい。さらに好ましくは305nm以上10000nm以下である。10点平均面粗さが300nm以上の前記ポリアミド系スキン層を用いることにより、比較的低圧でも良好な透過水量を実現でき好ましい。
【0011】
また、前記本発明の複合逆浸透膜による処理方法に於いては、複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層の最大高低差が400nm以上であることが好ましい。さらに好ましくは410nm以上20000nm以下である。最大高低差が400nm以上の前記ポリアミド系スキン層を用いることにより、比較的低圧でも良好な透過水量を実現でき好ましい。
【0012】
前記における平均面粗さは、下記式(数1)で定義される。
【0013】
【数1】
【0014】
また、前記における自乗平均面粗さは、下記式(数2)で定義される。
【0015】
【数2】
【0016】
また、前記における10点平均面粗さは、下記式(数3)で定義される。
【0017】
【数3】
【0018】
また、前記における最大高低差は下記式(数4)で定義される。
【0019】
【数4】
【0020】
これらの平均面粗さ、自乗平均面粗さ、10点平均面粗さ、最大高低差を求める方法は、一般に表面粗さを求める手法に従い求めることができる。
【0021】
例えば、原子間力顕微鏡(AFM)、摩擦力顕微鏡(FFM)、非接触原子間力顕微鏡(NC−AFM)、トンネル顕微鏡(STM)、電気化学−原子間力顕微鏡(EC−AFM)、走査電子顕微鏡(SEM,FE−SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等が挙げられるが、表面粗さを求めることができれば特に手法は制限されない。
【0022】
また、前記本発明の複合逆浸透膜による処理方法に於いては、前記複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層の表面を被覆している正荷電性基を有する有機重合体層が架橋されていることが好ましい。架橋された有機重合体層とすることにより、連続運転時や薬品による洗浄時などに、表面を被覆している正荷電性基を有する有機重合体層の部分的脱落を防止でき、カチオン系有機物および/または両性系有機物による透過水量低下抑制効果の低下を防止することができ好ましい。
【0023】
また、前記本発明の複合逆浸透膜による処理方法に於いては、前記複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層の表面を被覆している正荷電性基を有する有機重合体層が、4級アンモニウム基および水酸基を有する重合体の分子内および/または分子間架橋有機重合体層であることが好ましい。この架橋有機重合体層は製造が容易であり、且つ、前述した処理性能を効率よく発揮でき好ましい。
【0024】
また、前記本発明の複合逆浸透膜による処理方法に於いては、前記複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層の表面を被覆している正荷電性基を有する有機重合体層が、ポリエチレンイミンを架橋した有機重合体層であることが好ましい。この架橋有機重合体層は製造が容易であり、且つ、前述した性能を効率よく発揮でき好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される逆浸透膜の製造方法自体は、上記特性を満足する複合逆浸透膜が得られる製法であれば、特に限定されず、例えば、全芳香族ポリアミド系スキン層を有する複合逆浸透膜の従来知られている各種の製造法を参照して製造することができる。
【0026】
前記した本発明に使用される複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層は、たとえば2つ以上の反応性のアミノ基を有する前記多官能性アミン化合物(但し、芳香環上に塩素置 換基を含む化合物を除く)と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する前記多官能性酸ハロゲン化合物との界面重縮合反応時に、溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の化合物、例えばアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類、及び含硫黄化合物類などから選ばれる少なくとも一つの化合物の存在させることにより製造することができる。かかるアルコール類としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、t−アミルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ウンデカノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、ペンチルアルコール、アリルアルコール等が挙げられる。
【0027】
またエーテル類としては例えば、アニソール、エチルイソアミルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、クラウンエーテル、クレジルメチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、シネオール、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、トリオキサン、ジクロロエチルエーテル、ブチルフェニルエーテル、フラン、メチル−t−ブチルエーテル、モノジクロロジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレンクロロヒドリン等が挙げられる。
【0028】
またケトン類としては例えば、エチルブチイルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0029】
またエステル類としては例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル等が挙げられる。
【0030】
またハロゲン化炭化水素類としては例えば、アリルクロライド、塩化アミル、ジクロロメタン、ジクロロエタン等が挙げられる。
【0031】
また含硫黄化合物類としては例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオラン等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも特に上記アルコール類、エーテル類が好ましい。これらの化合物は単独であるいは複数で存在させることができる。
【0033】
これらの溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の化合物の使用量は、その化合物の種類や界面重縮合に用いられる多官能性アミン化合物、多官能性酸ハロゲン化合物の種類や、前記多官能性アミン化合物を含む溶液(以下溶液Xと言う)あるいは多官能性酸ハロゲン化合物を含む溶液(以下溶液Yと言う)のいずれの方に添加するかなどによって異なるので、特に限定するものではないが、溶液Xに溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の物質(以下物質Zと言う)を添加する場合、その好ましい添加量は溶液Xと物質Zの合計重量に基いて10〜50重量%である。10重量%未満では水透過性を向上させる効果が十分発揮されない傾向にあり、50重量%を越えると塩の膜透過阻止率が低下する傾向となる。また溶液Yに物質Zを添加する場合、その好ましい添加量は溶液Yと物質Zの合計重量に基いて0.001〜10重量%である。0.001重量%未満では水透過性を向上させる効果が十分発揮されない傾向にあり、10重量%を越えると塩の膜透過阻止率が低下する傾向となる。尚、この溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の化合物は前記多官能性アミン化合物を含む溶液あるいは前記多官能性酸ハロゲン化合物を含む溶液の少なくとも一方、あるいは、両方に添加してもよい。
【0034】
この溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の化合物の使用量や種類を適宜選定することにより、前記ポリアミド系スキン層の前述した表面粗さなどを調整することができる。
【0035】
前記した本発明に使用される複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層は、前述した様に、2つ以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミン化合物(但し、芳香環上に塩素置換基を含む化合物を除く)と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化合物との界面重縮合反応によって合成されるが、用いられる多官能性アミン化合物としては、2つ以上の反応性のアミノ基を有する芳香族の多官能アミンが挙げられる。
【0036】
かかる芳香族多官能アミンとしては、例えば、炭素数6〜11の芳香族多官能アミンが挙げられ、具体的には、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、8,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0037】
これらのアミンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
また本発明で用いられる前記多官能性酸ハロゲン化物としては、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する芳香族の多官能性酸ハロゲン化物が挙げられる。
【0039】
かかる芳香族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、炭素数8〜16の芳香族多官能性酸ハロゲン化物が挙げられ、具体的には、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ビフェニルジカルボン酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
【0040】
これらの酸ハライドは単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0041】
また、前記ポリアミド系スキン層は、架橋されていることが必要であるので、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物の一方もしくは両方の少なくとも一部として3官能以上の多官能性アミン化合物および/または3官能以上の多官能性酸ハロゲン化物を使用することが必要である。もちろん多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物の一方もしくは両方が3官能以上の化合物であってもよい。3官能以上の多官能性アミン化合物および/または3官能以上の多官能性酸ハロゲン化物の使用量は目的とする架橋の程度によって適宜選択すればよいが、通常、使用する多官能性アミン化合物または多官能性酸ハロゲン化物の各量に対して10モル%〜100モル%の範囲、より好ましくは20モル%〜100モル%の範囲で用いられる。
【0042】
尚、本発明において前記負荷電性架橋ポリアミド系スキン層の負荷電性架橋ポリアミドとは、pHが7の時の前記ポリアミド系スキン層からなる膜の荷電が負を示すものを言う。一般にポリアミドは−NH2基と−COOH基とを有しており、酸性領域に於いては−NH2基が−NH3 +になるため正荷電性を示す傾向が強くなり、アルカリ性領域に於いては−COOH基が−COO-になるため負荷電性を示す傾向が強くなる。通常のポリアミドではpH7の領域では、負の荷電性が強い。
【0043】
本発明においては、前記多官能性アミン化合物と前記多官能性酸ハロゲン化物とを、微多孔性支持体上で、界面重合させることにより、微多孔性支持体上に架橋全芳香族ポリアミドを主成分とする薄膜、すなわち、全芳香族ポリアミド系スキン層が形成された複合逆浸透膜が得られる。
【0044】
本発明において前記ポリアミド系スキン層を支持する微多孔性支持体は、前記ポリアミド系スキン層からなる薄膜を支持し得る物であれば特に限定されず、複合逆浸透膜の微多孔性支持体として使用されている各種のものが用いられる。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンなど種々のものを挙げることができるが、特に、化学的、機械的、熱的に安定である点から、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンからなる微多孔性支持膜が好ましく用いられる。かかる微多孔性支持体は、通常、約25〜125μm、好ましくは約40〜75μmの厚みを有するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0045】
より詳細には、微多孔性支持体上に、前記多官能性アミン化合物(アミン成分)を含有する溶液(通常水溶液が用いられる。)からなる第1の層を形成し、次いで前記多官能性酸ハロゲン化物(酸ハライド成分)を含有する溶液(通常有機溶媒溶液が用いられる。)からなる層を前記第1の層上に形成し、界面重縮合を行って、架橋ポリアミドからなる薄膜(全芳香族ポリアミド系スキン層)を微多孔性支持体上に形成させることによって得ることができる。
【0046】
多官能性アミン化合物を含有する溶液は、製膜を容易にし、あるいは得られる複合逆浸透膜の性能を向上させるために、さらに、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の重合体や、ソルビトール、グリセリン等のような多価アルコールを少量含有させることもできる。
【0047】
また、特開平2−187135号公報に記載のアミン塩、例えばテトラアルキルアンモニウムハライドやトリアルキルアミンと有機酸とによる塩等も、製膜を容易にする、アミン溶液の微多孔性支持体への吸収性を良くする、縮合反応を促進する等の点で好適に用いられる。
【0048】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を含有させることもできる。これらの界面活性剤は、前記多官能アミン化合物を含有する溶液の微多孔性支持体への濡れ性を改善するのに効果がある。
【0049】
さらに、前記界面での重縮合反応を促進するために、界面重縮合反応にて生成するハロゲン化水素を除去するための水酸化ナトリウムやリン酸三ナトリウムを用い、あるいは触媒として、アシル化触媒等を用いることも有益である。
【0050】
前記多官能性酸ハロゲン化物を含有する溶液及び多官能性アミン化合物を含有する溶液において、多官能性酸ハロゲン化物及び多官能性アミン化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、多官能性酸ハロゲン化物は、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%であり、多官能性アミン化合物は、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0051】
このようにして、微多孔性支持体上に多官能性アミン化合物を含有する溶液を被覆し、次いでその上に多官能性酸ハロゲン化物を含有する溶液を被覆した後、それぞれ余分の溶液を除去し、次いで、通常約20〜150℃、好ましくは約70〜130℃で、約1〜10分間、好ましくは約2〜8分間加熱乾燥して、負荷電性全芳香族架橋ポリアミドからなる水透過性の薄膜、即ち負荷電性全芳香族架橋ポリアミド系スキン層を形成させる。この薄膜は、その厚さが、通常約0.05〜2μm、好ましくは約0.10〜1μmの範囲にある。
【0052】
次に本発明においては、前記負荷電性架橋ポリアミド系スキン層の表面が、正荷電性基を有する有機重合体層で被覆されていなければならない。正荷電性基を有する有機重合体層で被覆されていないと、カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液を処理した時に透過水量が著しく低下する。
【0053】
本発明で用いる複合逆浸透膜に於いては、負荷電性架橋ポリアミド系スキン層の表面が、正荷電性基を有する有機重合体層で被覆されたものであればよく、その正荷電性基を有する有機重合体の化学構造は特に限定されるものではない。但し、耐久性、長期安定性の面から、当該有機重合体は架橋するものが好ましい。
【0054】
本発明においては作業性、加工性などの点から、当該有機重合体自体は溶媒に可溶であることが望ましく、そのため複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層上に被覆後に3次元架橋するものが好ましい。このような有機重合体としては、分子内に正荷電性基と、架橋反応を起こす官能基を持つもので、それ自体は溶媒に可溶なものが用いられる。例えば一例として、正荷電性基と共に分子内に少なくとも2つの水酸基及び/またはアミノ基を有する重合体(以下重合体Aという)や、正荷電性基と共に分子内に少なくとも2つの水酸基及び/またはアミノ基と2つの保護されたイソシアネート基を有する重合体(以下重合体Bという)などが挙げられる。
【0055】
ここで正荷電性基としては、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基などを挙げることができる。また、保護されたイソシアネート基とは、ブロック化剤を用いてブロックされたイソシアネート基、またはアミンイミド基の形で保護されているイソシアネート基などをいう。
【0056】
イソシアネート基をブロックするためのブロック化剤は、種々のものが知られており、例えば、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、メタノール、エタノール、メチルセロソルブなどのアルコール類、メチルエチルケトオキシム、アセトアルデヒドオキシムなどのオキシム類を挙げることができる。
【0057】
上記重合体Aとしては、例えばメタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの単独重合体および他の重合可能なモノマーとの共重合体、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドとメタクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体、4−ビニルピリジンとメタクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の4級化物などを挙げることができる。
【0058】
また、上記重合体Bとしては、例えば2−メタクリロイルオキシエチレンイソシアネートを適宜のブロック化剤でブロックしてなるイソシアネート単量体とメタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体、上記ブロック化イソシアネートと4−ビニルピリジンおよびメタクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の4級化物、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミンメタクリルイミドのようなアミンイミド基を有するビニル単量体とメタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体などを挙げることができる。
【0059】
上記の重合体AおよびBは、いずれも水やアルコールに可溶性である。したがって、本発明において正荷電性基を有する有機架橋重合体層は、例えば次のような種々の方法によって複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層の上に形成することができる。
【0060】
重合体Aを架橋してなる架橋重合体層を形成するには、重合体Aの水溶液またはアルコール溶液を複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層上に塗布した後、乾燥し、多官能架橋剤としてのポリイソシアネート化合物を溶解させた溶液を接触させ、必要に応じて加熱して、重合体Aを分子間にて架橋させればよい。
【0061】
また別の方法として、重合体Aの水溶液またはアルコール溶液に前記したようなブロック剤にてブロック化した多官能ポリイソシアネート化合物を加え、得られた溶液を複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層上に塗布した後、このブロック化ポリイソシアネートの解離温度以上の温度に加熱し、ポリイソシアネート化合物を遊離させ、重合体Aと架橋反応させてもよい。
【0062】
ここで用いる架橋剤としてのポリイソシアネート化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート、それらの多量体、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの付加体、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとの付加体などを挙げることができる。
【0063】
また、前記重合体Bの架橋重合体層を複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層上に形成するには、例えば重合体Bの水またはアルコール溶液をポリアミド系スキン層上に塗布し、ブロック化イソシアネートの解離温度以上の温度に加熱し、イソシアネート基を遊離させて、分子間及び/または分子内で架橋させればよい。
【0064】
また、上述したイソシアネート基と水酸基による架橋反応を促進するために、架橋反応に際して、必要に応じて、3級アミンや有機スズ化合物などの触媒を用いることもできる。
【0065】
また上記のように有機重合体が架橋性の官能基を持たなくても、複合逆浸透膜の前記ポリアミド系スキン層上に正荷電性基を有する有機重合体を被覆後、電子線を照射したり、あるいは有機重合体溶液中に過酸化物を混入し、前記複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層上に被覆後加熱するなどの方法によって、この有機重合体骨格上にラジカルを生じさせ、3次元架橋させることもできる。
【0066】
本発明において、このようにして形成される正荷電性基を有する架橋有機重合体層の膜厚は、通常10オングストローム(1nm)乃至10μmの範囲が好ましい。
【0067】
前記正荷電性基を有する有機重合体としてポリエチレンイミンを用い、グルタルアルデヒドを架橋剤として用いた場合、下記式(化1)のような反応によりポリエチレンイミン架橋層が形成される。
【0068】
【化1】
【0069】
前記において使用するポリエチレンイミンの好ましい平均分子量は、300以上、さらに好ましくは500以上である。ポリエチレンイミンの平均分子量の上限は特に限定されるものではないが、通常500,000程度である。また得られたポリエチレンイミン架橋層の好ましい厚さは1nm〜10μmの範囲である。
【0070】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例中、前記式(数1)で定義される平均面粗さ(Ra)、前記式(数2)で定義される自乗平均面粗さ(Rms)、前記式(数3)で定義される10点平均面粗さ(Rz)、前記式(数4)で定義される最大高低差(PV)は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した値を使って算出した。
【0071】
また、平均面粗さ(Ra)はJIS B0601で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したもので、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値である。ここで測定面とは全測定データの示す面をいい、指定面とは粗さ計測の対象となる面で、測定面のうち測定装置のクリップで指定した範囲の面をいい、基準面とは指定面の高さの平均値をZ0とするとき、Z=Z0で表される平面をいう。
【0072】
次に自乗平均面粗さ(Rms)は、断面曲線に対するRmsを、測定面に対して適用できるようRaと同様に三次元に拡張したもので、基準面から指定面までの偏差の自乗を平均した値の平方根である。
【0073】
次に10点平均面粗さ(Rz)は、JIS B0601で定義されているRzを三次元に拡張したもので、指定面における、最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値の差である。
【0074】
次に最大高低差(PV)は、指定面において、最も高い山頂の標高Zmaxと最も低い谷底の標高Zminの差である。
【0075】
なお、以上の測定方法そのものは良く知られた方法であり、測定装置の取り扱い説明書などにも説明されている。
【0076】
(参考例1)
正荷電性基を有する有機重合体形成用モノマーの一成分の合成例。
【0077】
メチルエチルケトキシム29gをベンゼン50gに溶解し、この溶液に25℃の温度で2−メタクロイルオキシエチレンイソシアネート51.6gを約40分を要して滴下し、さらに45℃で2時間攪拌した。得られた反応生成物をプロトンNMRにて分析して、2−メタクロイルオキシエチレンイソシアネートにほぼ定量的にメチルエチルケトキシムが付加しているブロック化物であることを確認した。
【0078】
(参考例2)
正荷電性基を有する有機重合体の合成例。
【0079】
メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド16gと参考例1で得たブロック化イソシアネート化合物8gとをメタノール60gに溶解させ、これにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加え、窒素ガス雰囲気下に60℃で6時間攪拌して、4級アンモニウム基及び水酸基を有する共重合体を得た。
【0080】
(実施例1)
m−フェニレンジアミン 3.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウム 0.15重量%、トリエチルアミン 3.0重量%、カンファースルホン酸 6.0重量%、イソプロピルアルコール 10重量%を含有した水溶液を溶液Aとして、微多孔性ポリスルホン支持膜に接触させて、余分の溶液Aを除去して支持膜上に上記溶液Aの層を形成した。
【0081】
次いで、かかる支持膜の表面に、トリメシン酸クロライド 0.20重量%を含むヘキサン溶液を溶液Bとして調整し、溶液Aと接触させ、その後120℃の熱風乾燥機の中で3分間保持して、支持膜上に重合体薄膜(ポリアミド系スキン層)を形成させ、複合逆浸透膜を得た。(複合逆浸透膜A)
得られた複合逆浸透膜の一部を水洗し、乾燥後、原子間力顕微鏡(AFM)にて複合逆浸透膜表面のポリアミド系スキン層の表面粗さを測定したところ、Raは76.8nm、Rmsは93nm、Rzは324nm、PVは555nmであった。これは溶液Aにイソプロピルアルコールを添加したことにより、界面重縮合反応の際に逆浸透膜の表面形状が変化したものである。イソプロピルアルコール以外であっても溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の化合物を界面重縮合反応の際に存在させると、同様に逆浸透膜の表面形状が変化することを本発明者らは確認している。
【0082】
参考例2で得た共重合体1gを水に溶解させ、1重量%水溶液を作製した。これに架橋触媒として1,4−アザビシクロ(2,2,2)オクタン0.005gを加えた。このようにして得られた溶液を、上記の複合逆浸透膜Aのポリアミド系スキン層の上に塗布し、150℃で10分間加熱し、前記共重合体を架橋させて正荷電性基を有する複合逆浸透膜を得た(複合逆浸透膜B)。
【0083】
複合逆浸透膜Bを塩化ナトリウム1500ppmを含有するpH6.5の水溶液で操作圧力15kgf/cm2、温度25℃にて評価したところ、塩の膜透過阻止率は99%、透過水量は1.5m3/m2・日であった。この評価液にカチオン系界面活性剤を1000ppm混合し、更に1hr運転した。1hr後、評価液を同様の組成の新しい評価液と入れ換え透過水量を測定したところ、1.3m3/m2・日と初期値に対し、約1割透過水量が低下するものの、十分に高い透過水量を示した。
【0084】
(比較例1)
複合逆浸透膜Aを実施例1と同様に、塩化ナトリウム1500ppmを含有するpH6.5の水溶液を用いて初期評価したところ、塩の膜透過阻止率は99%、透過水量は2.2m3/m2・日であった。続いてこの評価液に更にカチオン系界面活性剤を1000ppm混合した評価液を用いて実施例1と同様に運転した後、透過水量を測定したところ、0.6m3/m2・日と初期値に対し、約7割透過水量が著しく低下した。
【0085】
(比較例2)
イソプロピルアルコールを添加しない以外は、実施例1の複合逆浸透膜Aと同様にして複合逆浸透膜を得た。(複合逆浸透膜C)
得られた複合逆浸透膜Cの一部を水洗し、乾燥後、原子間力顕微鏡(AFM)にて複合逆浸透膜表面のポリアミド系スキン層の表面粗さを測定したところ、Raは50nm、Rmsは61nm、Rzは294nm、PVは341nmであった。
【0086】
次いで実施例1と同様に参考例2で得た共重合体1gを水に溶解させ、1重量%水溶液を作製し、これに架橋触媒として1,4−アザビシクロ(2,2,2)オクタン0.005gを加えた。このようにして得られた溶液を、上記の複合逆浸透膜Cのポリアミド系スキン層の上に塗布し、150℃で10分間加熱し、前記共重合体を架橋させて正荷電性基を有する複合逆浸透膜を得た(複合逆浸透膜D)。
【0087】
複合逆浸透膜Dを実施例1と同様に、塩化ナトリウム1500ppmを含有するpH6.5の水溶液を用いて初期評価したところ、塩の膜透過阻止率は99%、透過水量は0.6m3/m2・日であった。続いてこの評価液に更にカチオン系界面活性剤を1000ppm混合した評価液を用いて実施例1と同様に運転した後、透過水量を測定したところ、0.5m3/m2・日と初期値に対し、約1割透過水量が低下した。透過水量の低下は、小さいものの、初期の透過水量そのものが低いため、高圧運転もしくは膜面積を多く必要とするなどのため経済性がない。
【0088】
(実施例2)
複合逆浸透膜Aにポリエチレンイミン1重量%を供給純水中に添加し、逆浸透処理した後、系内を水洗し、供給純水中にグルタルアルデヒドを1重量%を添加し、処理を行いポリエチレンイミンを架橋させて、正荷電性基を有する複合逆浸透膜を得た(複合逆浸透膜E)。
【0089】
複合逆浸透膜Eを実施例1と同様に、塩化ナトリウム1500ppmを含有するpH6.5の水溶液を用いて初期評価したところ、塩の膜透過阻止率は99%、透過水量は1.2m3/m2・日であった。続いてこの組成の評価液にカチオン系界面活性剤を1000ppm混合した評価液を用いて実施例1と同様に運転した後、透過水量を測定したところ、1.1m3/m2・日と十分に高い透過水量を示した。
【0090】
以上の様に、透過水量が著しく低下するカチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液の脱塩処理においても、本発明の複合逆浸透膜を用いる処理方法であれば、透過水量が著しく低下することもなく安定して運転することができる。
【0091】
【発明の効果】
本発明の複合逆浸透膜による処理方法は、運転ランニングコストの安い、全芳香族ポリアミド系のスキン層を持つ複合逆浸透膜を用いて、カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液を、高い透過水量でかつ安定して処理できる溶液の処理方法を提供できる。
【0092】
前記効果を奏する事から、本発明方法は、例えば、カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液の脱塩やTOC(全有機炭素 Total organic carbon)などの有機物の除去などに好適に用いられ、また染色排水や電着塗料排水などの公害発生原因である汚れ等から、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去回収し、ひいては処理された溶液が再使用できるので排水を少なくする排水のクローズ化に寄与することができる。また食品用途等での有効成分の濃縮等や、浄水や下水用途等での有害成分の除去などの高度処理に用いることができる。
【0093】
かかる複合逆浸透膜を利用した処理方法は、従来の複合逆浸透膜では透過水量が著しく低下し運転が不可能であったカチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液での運転が可能である。例えば、カチオン系界面活性剤や両性界面活性剤を含む排水の処理や、アニオン交換樹脂などからのカチオン性モノマーの溶出がある液の処理などに好適に用いることができる。
Claims (8)
- カチオン系有機物および/または両性系有機物を含む溶液を複合逆浸透膜で処理する方法において、処理に使用する複合逆浸透膜が、全芳香族ポリアミド系スキン層とこれを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜で、上記ポリアミド系スキン層はその平均面粗さが60nm以上であって、2つ以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミン化合物(但し、芳香環上に塩素置換基を含む化合物を除く)と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物から合成された負荷電性全芳香族架橋ポリアミド系スキン層であり、前記スキン層の表面が正荷電性基を有する有機重合体層で被覆されており、当該複合逆浸透膜の性能が、操作圧力15kgf/cm 2 、温度25℃にて塩化ナトリウム1500ppmを含有するpH6.5の水溶液で評価したときに、塩の膜透過阻止率が90%以上、透過水量が1m 3 /m 2 ・日以上であることを特徴とする複合逆浸透膜による処理方法。
- 複合逆浸透膜の前記全芳香族ポリアミド系スキン層が、溶解度パラメーターが8〜14( cal / cm 3 ) 1/2 の化合物の存在下で、2つ以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミン化合物(但し、芳香環上に塩素置換基を含む化合物を除く)と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物から合成された平均面粗さが60nm以上の全芳香族ポリアミド系スキン層である請求項1記載の複合逆浸透膜による処理方法。
- 複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層の自乗平均面粗さが65nm以上である請求項1〜2のいずれかに記載の複合逆浸透膜による処理方法。
- 複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層の10点平均面粗さが300nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の複合逆浸透膜による処理方法。
- 複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層の最大高低差が400nm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の複合逆浸透膜による処理方法。
- ポリアミド系スキン層の表面を被覆している正荷電性基を有する有機重合体層が、架橋された有機重合体膜である請求項1〜5のいずれかに記載の複合逆浸透膜による処理方法。
- 正荷電性基を有する有機重合体層が、4級アンモニウム基および水酸基を有する重合体の分子内および/または分子間架橋有機重合体層である請求項1〜6のいずれかに記載の複合逆浸透膜による処理方法。
- 正荷電性基を有する有機重合体膜が、ポリエチレンイミンを架橋した有機重合体層である請求項1〜6のいずれかに記載の複合逆浸透膜による処理方法。
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