JP3587476B2 - 沈澱法シリカ造粒体の製造方法及びエラストマー補強用充填剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、沈殿法シリカ2種以上の混合による造粒体の製造方法、及びこの製造方法により得られた造粒体からなるエラストマー補強用充填剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
沈殿法シリカは通称ホワイトカーボンといわれ、シリカ微粉末の単粒子は通常軽く集合して1〜5μm程度の凝集粒になっており、粉体の中でも最も軽い部類に属し、非常にダストになりやすい。それ故、シリカ微粉末はケイ肺のおそれはほとんどないことが知られているとはいえ、粉塵を吸入することは衛生上好ましくないので、これを配合使用するゴム工業などにおいては、該粉末を取り扱う場合、換気装置、防塵装置等を設ける方法が取られている。しかしながら、その若干は吸入を免れず作業条件を損ない、該微粉末の損失も不可避的でありまた、その粉体は流動性が悪くホッパーからの排出供給、輸送等取扱上難点が多く、流動性の改善が望まれていた。更に、沈殿法シリカの粉体は、嵩高く包装、運搬費が嵩み不経済も招いていた。
【0003】
元来、このような微粉体をエラストマー補強充填剤として用いた場合、その本来の機能である補強性能を主体に考えるならば、分散性の良い微粉体であることが望ましいのは勿論である。しかしながら、上述のように種々の難点から、分散性、補強性能とも問題ない粒状品シリカが要望されて、種々の造粒方法が検討されてきた。例えば、特公昭56−41566号、特開平2−302312号には高濃度沈殿ケイ酸スラリーを噴霧乾燥することにより粒状品を得る方法が開示されている。しかし、この方法では粒子径が小さく又、嵩比重も低く造粒品本来の目的である作業性の改善や貯蔵及び輸送費の改善が不十分である。
【0004】
又、粉末状沈殿シリカを減圧並びに機械的圧力の使用下に回転ローラーで初めに予備圧縮し、少なくとも一つのローラーに取り付けられた型溝によって沈殿シリカ顆粒を圧縮成形することにより、沈殿シリカ顆粒を乾式法で製造することは公知である(西ドイツ国特許明細書第1807714号記載による)。
しかし、こうして乾式法で且つ添加剤なしで製造した沈殿シリカ顆粒は実際良好な分散性及び粗粒を含まない点では優れているが、微粉が混在し、粉塵発生の原因となる。また、該顆粒の運搬安定性及び貯蔵安定性も高くなく、圧縮成形工程及び粗砕工程の直後に微粉を篩別けしたとしても、ハンドリングによる摩耗によって微粉が生成する。これはユーザーが顆粒を取り扱う際にダストの飛散の原因となる。又、微粉が多いとコンパウンド原料練りこみ時のシリカ食い込み性が悪く練り時間が長く掛かるという問題を生じる。また、圧縮圧を高くすれば、造粒体の粉化し易いという欠点は確かに改善できるが、ゴムへの分散性が極体に悪くなる。
【0005】
そこで、近年混練機がバンバリーミキサー等の密閉式が主流になったこともあって、輸送コストの低減のみならずコンパウンド原料練り込み時の食い込み性が良く、しかもエラストマー補強充填剤としての機能が落ちない沈殿シリカ造粒体が望まれていた。
本発明の目的は、エラストマー補強充填剤として必要な分散性及び補強性が良好であり、一定以上の粒子径を有し、かつ粒子強度が高い沈殿シリカ造粒体、及びその製造方法を提供することにある。
より具体的には、例えば、平均粒子径が0.5〜5mmの範囲にあり、粒子強度が10〜30g、好ましくは15〜25gの範囲にある沈殿シリカ造粒体を提供することが、本発明の目的である。
さらに本発明は、上記のように優れた物性を有するエラストマー補強用充填剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは研究を積み重ねた結果、沈殿法シリカの2種を、例えばロール式造粒機で混合することにより得られた造粒体は、エラストマー補強充填剤として微粉末シリカと同等のゴム物性が得られ、且つ分散性を損ねることなく、作業性、貯蔵、輸送の改善が極めて向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、平均粒度60μm以上で、且つ粒子硬度10〜30gの沈殿法シリカ粉末100部に対して平均粒度20μm以下の沈殿法シリカ粉末を5〜30部混合し、造粒することを特徴とする沈殿法シリカ造粒体の製造方法に関する。
さらに本発明は、上記製造方法により得られた沈殿法シリカ造粒体からなることを特徴とするエラストマー補強用充填剤に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明の製造方法に原料として用いる沈殿法シリカは公知の沈殿法シリカをそのまま用いることができる。そのような沈殿法シリカは、公知の方法で製造できる。
例えば、ケイ酸ソーダ水溶液と硫酸を用いた場合、以下に示す中和反応式に従って、シリカスラリーを得て、ついで濾過、水洗及び乾燥さらに必要な場合には適度の粉砕を行い製造される。
Na2O・nSiO2 + H2SO4 + H2O → nSiO2・H2O ↓+ Na2SO4
【0009】
上述の製法で製造された平均粒度60μm以上で、且つ粒子硬度10〜30gの沈殿法シリカ粉末はこれまでもエラストマー補強充填剤として使用されている。平均粒度が60μm未満では、原体としての嵩比重が低いため作業及び生産性の効率が悪くなり、造粒品としての嵩比重が向上しないことから好ましくない。尚、平均粒度の上限は特にないが、実用的には1mm程度であり、通常は200μm程度である。
また、粒子硬度は10〜30gの範囲であることが良く、さらに好ましくは15〜25gが良い。この範囲を越え、硬すぎた場合、本発明法の造粒体自体の粒子が硬くなり、ゴム中での分散が悪くなる。又、軟らかすぎた場合、2種を混合しても粒子が軟らかく、ひいては粒子の破壊が起きやすく微粉量が多くなる。尚、粒子硬度は後述するJISK−6221の方法に従って測定した値である。
【0010】
平均粒径60μm以上で、且つ粒子硬度10〜30gの沈殿シリカ粉末としては、例えば、乾燥凝集体を粗砕し整粒したもの、噴霧乾燥した顆粒品、ロール圧、ロール間隙を調整し製造されたロール加圧造粒品などが好適に使用できる。
【0011】
本発明の製造方法では、平均粒度60μm以上で、且つ粒子硬度10〜30gの沈殿法シリカ粉末100部に対して、平均粒度20μm以下の沈殿法シリカ粉末を5〜30部を混合し、造粒することで造粒体を製造する。
平均粒度20μm以下の沈殿法シリカは、平均粒度20μmを超えると2種混合の場合、シリカ同志の空隙を十分に埋めることができず、造粒品として満足できる嵩比重のものができないので好ましくない。また、平均粒度20μm以下の沈殿法シリカの平均粒度の下限には特に制限はないが、実用的な観点からは、5μm程度である。平均粒度20μm以下の沈殿法シリカは、農薬、特殊紙、エラストマー(低粘度品)等、比較的滑らかな表面状態が要求される分野、エラストマー分野においては、分散性を重視する低粘度タイプに使用されているシリカ粉末が使用できる。又、大きな平均粒度のシリカを粉砕したものであっても良い。
【0012】
また、平均粒度20μm以下の沈殿法シリカ粉末の混合比率が5部未満の場合、製品収率や生産性は向上するが、シリカ同士間の空隙が十分に埋められず、嵩比重が向上しないので、最終目標となるエラストマーへの食い込み性、分散性が悪くなり、ひいては補強性能を悪化させる。一方30部を超えると、製品収率や生産性が悪くなり、目的とする輸送、生産性の向上も改善ができない。
それに対して、平均粒度20μm以下の沈殿法シリカ粉末を5〜30部の範囲で混合し造粒することにより造粒体を製造する場合は、造粒品の目的とする嵩比重が高くなり、輸送、生産性の向上も改善され、エラストマーに配合しても食い込み性、分散性、補強性能とも良好な造粒体を得ることができる。平均粒度20μm以下の沈殿法シリカ粉末の混合割合は、好ましくは10〜25部の範囲である。
【0013】
本発明の製造方法では、上記2種の沈殿法シリカ粉末を所定の割合で混合し、次いで造粒する。上記混合は、常法により行うことができる。また、造粒方法は乾式法であれば得制限はない。造粒方法は、大きく分けて混合造粒、強制造粒及び熱利用造粒の3種がある。本発明では特に強制造粒法を用いることが好ましい。強制造粒法には、圧縮ロール、ブリケッティングロール、打錠等の圧縮成形法やスクリュー等を用いる押し出し造粒法等がある。本発明では、圧縮成形法を用いることが好ましい。
【0014】
圧縮ロールを用いる圧縮成形法について以下に説明する。
圧縮ロールを用いる圧縮成形機は、ロール式造粒機として市販されている。
ロール式造粒機として工率3.7kWの二本のロール式(径160mmφ、幅60mm)成形機を用いた場合の運転条件は、例えば、以下のとおりである。尚、ロールには平滑、溝付き、波付き等がある。まず、上部ホッパに入れた粉体原料は、フィードスクリュー(0.75W)の回転により加圧されながらプレスローラ間に押し込まれる。ロール回転(15RPM)につれて、噛込まれた粉体は圧縮され、粒子が密になり、板状に形成される。食い込み点から下のロールの間隙の減少割合が成形圧を決め、成形体の比重及び強度を決定する。圧力は油圧シリンダーにより目的の圧力に調整する。
【0015】
本発明法により2種の沈殿法シリカを混合造粒することによって分散性が良く、しかも加工性、生産性、ゴム補強性の良好なシリカ造粒体が得られる。本発明法のシリカ造粒体及びその製造方法に用いられる沈殿法シリカは望ましくは、BET比表面積が150〜250m2 /g、吸油量が150〜250ml/100gのものが良い。本発明法の造粒体をエラストマーに充填する方法は公知の方法が特に制限されず採用できる。例えば、SBR等有機固形ゴムへの混練においてはロールあるいはバンバリーミキサー等を用いて行うことができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。尚、各実施例の粒子硬度、分散性、加工性、エラストマー組成物の物性試験及び未加硫物の物性試験(ムーニー粘度試験)の測定は以下に示す方法で行った。
1)粒子硬度測定法
カーボンブラック粒子硬度測定法のJIS K6221、6.3.3造粒粒子の硬さ測定法に準じて測定した。
2)嵩比重
一定重量をメスシリンダーに流し込み、その時の数値を読み取り重量で割った数値とした。
【0017】
3)生産性
造粒時の生産性が高いものを○、普通のものを△、悪いものを×で表示した。
4)分散性
加硫ゴム片の目視判定及び加硫物性について、優れているものを◎、普通のものを○で表示した。
5)加工性
嵩比重が高く1バッチに仕込める量が多い程、ロール混練作業時の作業性、混入性は優れており、優れているものを○、中間のものを△、悪いものを×で表示した。
6)加硫物特性(引張強度)
JIS K6301の試験法に準じ測定した。
7)ムーニー粘度
ムーニー粘度計(島津製作所製、SMV−200型粘度計)を用い、温度125℃でL型ローターにて測定した。
【0018】
実施例1〜3及び比較例1
平均粒度185μmm、嵩比重250g/リットル、BET比表面積200m2 /g、粒子硬度19g、吸油量200ml/100gの沈殿シリカ(商品名;ニップシール(Nipsil)AQ)100部に対してニップシールAQを粉砕して平均粒度約18μmm、嵩比重125g/リットルの沈殿シリカ(沈殿シリカA)5、20、30又は40部をロール加圧式造粒機(ターボ工業社製、テスト機WP230−80)を用いて、ロール間隔2.1mm、圧縮圧0.5トン/cm、及びロール回転数15.6rpmで混合造粒し、さらに粒度を1mm〜5mmの範囲に調整し、表1に示す嵩比重276〜300g/l、粒子硬度19〜22gの沈殿シリカ造粒体を得た。尚、粉体のフィードは60mmφのスクリューフィダーを用いて160rpmで実施した。このときの粉体供給速度は約130〜150kg/hrであった。
【0019】
次いで、上記で得た造粒体50部とスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR1502;日本合成ゴム社製)100部、加硫剤として硫黄2.0部、加硫促進剤として市販のD(ジフェニルグアニジン)1.2部、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)0.8部及び加硫助剤として、酸化亜鉛3部とステアリン酸1部、更に活性剤としてPEG(ポリエチレングリコール)#4000(第一工業薬品製)2部を8インチロールを用いて練り温度30℃にて混練し、ゴム組成物を得た(実施例1〜3、比較例1)。
上記4点のゴム組成物について未加硫のもの及び加硫物(150℃で10分間加硫したもの)について各種物性試験を行い、ロール混練時の加工性評価と合わせて結果を表2に示した。
【0020】
実施例4〜6
平均粒度85μmm、嵩比重220g/リットル、BET比表面積190m2 /g、粒子硬度16g、吸油量210ml/100gの沈殿シリカ(商品名;ニップシール(Nipsil)AQ−S)100部に対してニップシールAQ−Sを粉砕して平均粒度約18μm、嵩比重127g/リットルの沈殿シリカ(沈殿シリカB)5、20又は30部をロール加圧式造粒機を用いて実施例1〜3と同様に混合造粒し、さらに粒度を1mm〜5mmの範囲に調整し、表1に示す嵩比重285〜290g/l、粒子硬度20〜21gの沈殿シリカ造粒体を得た。
得られた造粒体を実施例1〜3と同様の組成で混練し、ゴム組成物を得た(実施例4〜6)。これらのゴム組成物について未加硫のもの及び加硫物(150℃で10分間加硫したもの)について各種物性試験を行い、ロール混練時の加工性評価と合わせて結果を表2に示した。
【0021】
比較例2〜4
実施例1〜3で2種混合造粒に用いた沈殿シリカの内、ニップシールAQを単独で実施例1〜3と同様の条件でロール加圧式造粒機で造粒後、粒度を調整した(比較例2)。
実施例1〜3で2種混合造粒に用いた沈殿シリカの内、沈殿シリカAを単独で実施例1〜3と同様の条件でロール加圧式造粒機で造粒後、粒度を調整した(比較例3)。
ニップシールAQを微粉砕し平均粒径10μmm、嵩比重80g/リットルの微粉末とし、造粒しないものを沈殿シリカCとして得た(比較例4)。
これらのシリカを用いて、実施例1〜3と同様にしてゴム組成物を得、各ゴム組成物について未加硫のもの及び加硫物(150℃で10分間加硫したもの)について各種物性試験を行い、ロール混練時の加工性評価と合わせて結果を表2に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
表1及び2から明らかなように、本実施例の造粒品は、分散性、加工性、引張強さが、比較例4の沈殿シリカCと、ほぼ同等の値を示した。このことは、本発明の造粒シリカは、嵩比重が大きくなったにも拘わらず、ゴム組成物中に均一に分散配合されていることを示す。又、造粒品を得る際の生産性については、造粒前の沈殿シリカの嵩比重が極端に小さくなることもなく、更には造粒機でのワンパスの収率も優れており、トータルでの生産性も優れていることが分かる。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、エラストマー補強充填剤として必要な分散性及び補強性が良好であり、一定以上の粒子径を有し、かつ粒子強度が高い沈殿シリカ造粒体、及びその製造方法を提供することができる。
さらに本発明によれば、上記のように優れた物性を有するエラストマー補強用充填剤を得ることができる。
Claims (3)
- 平均粒度が60μm以上で、且つ粒子硬度10〜30gの沈殿法シリカ粉末100部に対して、平均粒度が20μm以下の沈殿法シリカ粉末を5〜30部混合し、造粒することを特徴とする沈殿法シリカ造粒体の製造方法。
- 前記2種の沈殿法シリカ粉末をロール式造粒機で造粒する請求項1記載の製造方法。
- 請求項1又は2記載の製造方法により得られた沈殿法シリカ造粒体からなることを特徴とするエラストマー補強用充填剤。
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