JP3586931B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被保持物を静電気力により吸着固定する静電チャックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、吸着対象物を静電気力により吸着固定する静電チャックが、様々な分野で利用されるようになっている。例えば、静電チャックは、プロッタにおける用紙の固定に用いられたり、エッチング装置等の半導体製造装置におけるシリコンウエハ等の固定に用いられている。
【0003】
従来の静電チャックの一例として、イオン注入装置で用いられている静電チャックについて、図4に基づいて説明すると以下の通りである。
【0004】
基本的に静電チャックは、静電チャック本体51と該静電チャック本体51に電力を供給する直流電源52とを備えており、該直流電源52が、静電チャック本体51の有する誘電体52内部に埋設された2枚の金属電極54a・54b間へ、直流電圧を印加するような構成となっている。
【0005】
上記構成の静電チャックでは、上記電極54a・54bを披包する誘電体53において誘電分極現象が起こり、これにより被保持物であるウェハ55との間で静電気力が生じ、ウェハ55が静電チャック本体51の表面である載置面51aに吸着される。静電チャック本体51の吸着力F(N)は、このような誘電分極現象により現れる分極電荷の量によって定まり、基本的には、次式(1)によって表される。
【0006】
F=(S/2)・ε・(V/d)2 ・・・(1)
但し、上式(1)中のεは、
ε=ε0 ・εr
である。ここで、Sは各電極54a・54bの面積(m2 )、ε0 は真空の誘電率(8.85×10−12 C2 N−1m−2)、εr は誘電体53の比誘電率、Vは電源52の印加電圧(V)、dは、金属電極54a・54bとウェハ55の表面との距離であり、静電チャック本体51がウェハ55を正常に吸着している場合には、誘電体53における表面の厚さ、即ち、電極54a・54bから載置面51aまでの距離(m)となる。
【0007】
また、静電チャック本体51は、誘電体53と該誘電体53に接触するウェハ55との間に電流が流れることによって生じるジョンソン・ラーベック力によってもウェハ55を保持する。
【0008】
この静電チャック本体51は、イオン注入処理中、高真空の処理室内で、載置面51aが略垂直になるように保持されることが多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の静電チャックにおいては、静電チャック本体51の載置面51aあるいはウェハ55の裏面にゴミが付着していた場合や、ウェハ55を上記載置面51a上の正しい位置に載置できなかった場合に、上記載置面51aとウェハ55との間に隙間を生じる。この結果、金属電極54a・54bとウェハ55との距離であるdが増加して、静電チャックの吸着力が低下する。さらに、誘電体53とウェハ55との接触面積が減少するので、ジョンソン・ラーベック力による静電チャックの吸着力も低下する。上記のように、吸着力が低下すると、ウェハ55が脱落する虞れがある。また、脱落したウェハ55を処理室から取り除くためには、処理室をベントして処理室内の気圧を大気圧に戻す必要があり非常に手間がかかる。
【0010】
加えて、イオン注入処理中にウェハ55が脱落すると、本来、ウェハ55に照射されるべきイオンビームが静電チャックの載置面1aへ照射される。これにより、該載置面51aの電気的特性が大きく変化して、その機能が著しく損なわれる虞れもある。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、なんらかの理由により静電チャックの吸着力が不所望に低下し、被保持物を保持できなくなった場合に、被保持物の脱落を防止できる静電チャックを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る静電チャックは、上記課題を解決するために、静電気力によって、シリコンウェハなどの被保持物を載置面上に吸着保持する静電チャックであって、上記載置面の外周近傍に配され、載置面上に吸着保持された被保持物の端縁部の一部を当該被保持物とは非接触状態で覆う脱落防止位置と、被保持物の載置面への着脱が可能となるように載置面を開放する退避位置との間を変位自在に設けられた、複数の脱落防止用支持部材と、上記複数の脱落防止用支持部材を、上記脱落防止位置と退避位置との間で切り替えて移動させる駆動手段とを有する脱落防止機構を備えたことを特徴としている。
【0013】
【作用】
請求項1の発明の構成によれば、シリコンウェハなどの被保持物を静電チャックの載置面に載置すると、静電チャックは、静電気力により該ウェハを載置面に吸着する。静電チャックは、イオン注入など、所定の処理を行う間、該ウェハを吸着したまま保持する。駆動手段は、上記載置面の外周近傍に設けられた各脱落防止用支持部材を、載置面上に吸着保持された被保持物の端縁部の一部を当該被保持物とは非接触状態で覆う脱落防止位置に駐止する。ウェハが載置面に正常に吸着保持されている状態では、ウェハと脱落防止用支持部材とは接触しない。
【0014】
上記所定の処理が終了すると、載置したウェハは載置面より取り外される。ウェハを取り外す際、上記駆動手段は、上記各脱落防止用支持部材を、被保持物の載置面への着脱が可能となるように載置面を開放する退避位置まで退避させる。これにより、なんら支障なくウェハを着脱できる。
【0015】
ところで、付着したゴミにより静電チャックの載置面とウェハとの間に隙間ができた場合などには、静電チャックの吸着力が不所望に低下する。静電チャックがウェハを吸着力によって保持できなくなると、自重やその他の該ウェハに加えられる力によりウェハは載置面の上方あるいは側方へ遊動する。遊動したウェハは、載置面の上方あるいは側方に僅かに遊動した後、該ウェハの端縁部の一部を非接触状態で覆っている上記脱落防止用支持部材と当接して係止される。
【0016】
このようにして、ウェハなどの被保持物が静電チャックに載置されている間に、不所望に静電チャックの吸着力が低下しても、脱落防止機構は、上記被保持物を載置面上に保持することができる。それゆえ、例えば、イオンビームを被保持物に照射して、イオン注入やエッチング処理を行う場合に、被保持物の代わりに誤って載置面を加工することがない。この結果、載置面の汚損あるいは破損を防止することができる。
【0017】
また、正常に吸着しているときと略同じ位置に被保持物を保持することができるので、正常時と略同じ動作で被保持物を取り外すことができる。さらに、被保持物が脱落しないので、従来生じていた処理室ベントの手間や脱落した被保持物を探す手間が削減できる。加えて、被保持物に脱落によるダメージを与えることがない。
【0018】
また、被保持物が載置面の正常な位置に載置されている場合、脱落防止機構は該被保持物と接触することがない。それゆえ、被保持物をクリーンに保つことができるという静電チャックの利点を損なうことがない。
【0019】
【実施例】
本発明の一実施例に係る静電チャックについて図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。
【0020】
本実施例に係る静電チャックは、イオン注入装置に適用されるものであり、図3に示すように、静電チャック本体1と該静電チャック本体1に電力を供給する直流電源2とを備えている。静電チャック本体1は、誘電体3、および誘電体3内部に埋設された2枚の金属電極4a・4bを有している。上記直流電源2は、両金属電極4a・4b間に、所定の直流電圧を印加することができる。
【0021】
誘電体3としては、例えば、アルミナ(Al2 O3 )、炭化ケイ素(SiC)、およびチタン酸カルシウム(CaTiO3 )等のセラミック材料を使用することができる。なお、本実施例では、炭化ケイ素からなる誘電体3を使用している。
【0022】
また、図2に示すように、静電チャック本体1は、その一表面である載置面1aが略円形状をなすように形成されている。載置面1a上に、被保持物であるウェハ5を載置した後、直流電源2により金属電極4a・4bへ直流電圧を印加することによって、ウェハ5を静電チャック本体1の載置面1aに吸着することができる。
【0023】
静電チャック本体1は、ウェハ5を着脱する際には、その載置面1aが略水平になるように保持され、イオン注入処理中は、その載置面1aが地面に対して略垂直になるように保持される。以下では、説明の便宜上、載置面1aが略水平になるように保持されている状態を基準として、載置面1a面に垂直かつ載置面1aより離れる方向を上方、それとは逆の方向を下方と呼ぶ。
【0024】
上記静電チャック本体1の載置面1aには、図2に示すように、例えば4つの角穴1b…が形成されている。それぞれの角穴1bは、静電チャック本体1を貫通して設けられていて、該角穴1b内には、ウェハ5を着脱するための持ち上げ機構の作用片であるロッド6が進退可能に収納されている。各ロッド6は、図示しないエアーシリンダにより、略同時に上下に直動させることができる。この結果、図1に示すように、略L字状に曲折されたロッド6の上端(以下では頭部と称する)が載置面1aより没入あるいは突出する。なお、図1は、脱落防止機構7近傍を示す、図2のX−X線矢視断面図である。
【0025】
各ロッド6の頭部が載置面1aより突出することにより、載置面1a上に載置されたウェハ5を持ち上げることができる。また、載置面1aより突出した各ロッド6の頭部にウェハ5を載置し、その後、各ロッド6の頭部を載置面1aより没入させることにより、ウェハ5を載置面1aへ案内することができる。
【0026】
さらに、図2に示すように、静電チャック本体1は、ウェハ5の脱落を防止するために、その載置面1aの外周近傍に、例えば4つの脱落防止機構7…を備えている。各脱落防止機構7は、図1に示すように、ウェハ5の脱落時に該ウェハ5を支持する脱落防止用支持部材である爪部8と、爪部8に付勢する駆動手段であるバネ9と、ウェハ5の持ち上げ時に爪部8を邪魔にならない位置まで移動させるための駆動手段である動力伝達軸10とを有している。
【0027】
上記爪部8は、図1に示すように、略コの字形状をなしており、載置面1aにウェハ5が載置されている状態では、上方突端部8aと下方突端部8bとの間に、ウェハ5の端縁付近と、脱落防止機構7の配設部上端である静電チャック本体1の一部1cとが入るように配置されている。このように、爪部8が脱落防止位置にあるときには、前記上方突端部8aの下面8cは、ウェハ5の表面と対向かつ近接している。また、前記上方突端部8aの中央部は、先端にくらべて上下方向の厚みを増して形成されており、上記下面8cと略垂直に形成された段差を有している。爪部8が脱落防止位置にあるときには、該段差の先端方向の端面8dは、ウェハ5の外縁側端面と対向かつ近接している。
【0028】
一方、爪部8の下方の角部は、載置面1aの周方向に横架された軸により、回動可能なように軸支されている。図1に示すように、爪部8の上方突端部8aが載置面1aの径方向内側へ移動する方向をA方向と呼ぶ。
【0029】
爪部8がA方向に回動すると、爪部8の上方突端部8aは、載置面1aの径方向内側かつ下方に回動する。爪部8が最もA方向に回動した時点である脱落防止位置に配されている場合、上記上方突端部8aは、載置面1aに載置されたウェハ5の上面に数mm張り出している。
【0030】
例えば、ウェハ5が直径200mmの円盤状であるとき、ウェハ5の側端面と上方突端部8aの端面8dとの距離は1.0mm、上方突端部8aの下面8cとウェハ5の表面との距離は0.48mm、かつ上方突端部8のウェハ5の上方に張り出している部分の長さは2mmなどに設定される。
【0031】
また、爪部8が逆A方向に回動したとき、上方突端部8aは、前記ウェハ5の上方より外側に移動する。この結果、上方突端部8aは、ウェハ5を載置面1aの上方向に取り外す際に支障とならない退避位置へ退避できる。
【0032】
下方突端部8bの上部と上記静電チャック本体1の一部1cとの間にはバネ9が縮装されており、爪部8は、図1に示すA方向に常に付勢されている。
【0033】
一方、下方突端部8bの下方には、動力伝達軸10が配置されている。動力伝達軸10には、ロッド6の図示しない駆動源であるエアーシリンダの動力が、図示しない動力伝達部を介して伝えられる。これにより、動力伝達軸10は、ロッド6の上下と略同時に上下方向に直動する。動力伝達軸10が上方に直動すると、動力伝達軸10の上端は上記下方突端部8bの下部と当接し、これを上方に押圧する。この結果、爪部8は、逆A方向に回動して、退避位置に移動する。
【0034】
また、動力伝達軸10は、下方に直動して、上記下方突端部8bの下方の待機位置まで移動することができる。動力伝達軸10が待機位置にあるときには、該動力伝達軸10の上端は上記下方突端部8bの下部と当接しない。この結果、爪部8は、バネ9の付勢によって図1に示すA方向に回動して脱落防止位置に移動する。
【0035】
このような構成の静電チャック本体1は、高真空となる処理室内に設置されている。ウェハ5を着脱する際、静電チャック本体1は、その載置面1aが略水平になるように保持される。また、ウェハ5が載置されて静電チャック本体1に吸着保持された後は、その載置面1aが地面に対して略垂直になるように保持される。この状態で、吸着保持されたウェハ5に対してイオンビームが照射される。
【0036】
上記の構成において、静電チャック本体1がウェハ5を正しく吸着保持した場合の動作を図1ないし図3に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0037】
すなわち、図1に示すように、静電チャック本体1の載置面1aにはウェハ5が載置されている。この状態では、ロッド6は載置面1aより没入している。ロッド6と略同時に駆動される動力伝達軸10も下方に直動しているため、動力伝達軸10の頭部が爪部8とは当接しておらず、爪部8は、バネ9の付勢によりA方向に回動して脱落防止位置にある。この結果、爪部8の上方突端部8aは、載置面1aに載置されたウェハ5の外縁部の上方に近接している。上記上方突端部8aとウェハ5とは接触していないため、メカニカルクランプのようにウェハ5を挟持するものとくらべて、ウェハ5をクリーンに保つことができるという静電チャックの利点を損なわない。
【0038】
この状態で、図3に示す直流電源2により金属電極4a・4b間に所定の電圧が印加されると、これらの電極4a・4bを披包する誘電体3において誘電分極現象が起こり、ウェハ5が、静電気力によって載置面1aに吸着保持される。
【0039】
ウェハ5が吸着されると、静電チャック本体1は、載置面1aが地面に対して略垂直になるように移動される。その後、上記略垂直に保持されたウェハ5に、図示しないイオン源より引き出されて質量分析されたイオンビームが照射される。爪部8の上方突端部8aが張り出して、ウェハ5の上方にかかっている部分は数mm角と小さいので、ウェハ5の上面の略全体にイオンビームが照射される。
【0040】
イオンビームの照射が終了すると、静電チャック本体1は、載置面1aが水平になるように移動される。その後、ウェハ5が取り外される。
【0041】
すなわち、ロッド6および動力伝達軸10の図示しない駆動源であるエアーシリンダの動力は、図示しない動力伝達部を介して、各ロッド6、および各動力伝達軸10へ伝えられる。この結果、図1に示す各動力伝達軸10、および各ロッド6は、略同時に上方へ直動する。
【0042】
動力伝達軸10の直動により、該動力伝達軸10の上端部は、爪部8の下方突端部8bと当接し、該端部8bを上方へ押圧する。これにより、爪部8は、図1に示すA方向に加えられているバネ9の付勢力に逆らって、逆A方向へ回動する。これに伴い、爪部8の上方突端部8aは、載置面1aに載置されているウェハ5の外側へ回動して退避位置に移動する(図1中、2点鎖線で示した状態)。この結果、前記上方突端部8aは、ウェハ5の上面にはかからない位置まで移動されるので、ウェハ5を取り外すためウェハ5を上昇させるにあたって何ら問題を生じない。
【0043】
一方、上記動力伝達軸10の直動と略同時に、図示しない駆動源によって駆動される各ロッド6も上方へ直動する。この結果、ロッド6の頭部は、載置面1aより突出し、載置面1aに載置されているウェハ5を上方へ持ち上げる。上記のように、爪部8の上方突端部8aは、ウェハ5の上面にはかからない位置まで移動しているので、ロッド6は、支障なくウェハ5を持ち上げることができる。
【0044】
ウェハ5が持ち上げられた後、ウェハ5は、図示しない搬送ロボットによりウェハ5は静電チャック本体1より取り外される。ウェハ5が取り外された後は、ロッド6が下降し、その頭部が載置面1aより没入する。一方ロッド6の下降と略同時に動力伝達軸10も下降し、動力伝達軸10の上端は、爪部8の下方突端部8bとは接触しなくなる。この結果、爪部8は、圧縮されていたバネ9の復元力により、図1に示すA方向へ回動して脱落防止位置へ戻る。
【0045】
ウェハ5を静電チャック本体1の載置面1aに載置する際には、ウェハ5を取り外す動作とは逆の順序で各動作が行われる。
【0046】
続いて、静電チャック本体1がウェハ5を正しく吸着固定できなかったときの動作を図1および図2にしたがって説明すると以下の通りである。
【0047】
例えば、ウェハ5の裏面、あるいは静電チャック本体1の載置面1aにゴミが付着している場合や、ウェハ5を上記載置面1aの所定の位置へ載置することができなかった場合などにより、載置面1aとウェハ5の裏面との間に隙間が生じると、静電チャック本体1の吸着力は低下し、ウェハ5を保持することができないことがある。
【0048】
上記のように、静電チャック本体1にウェハ5が吸着固定されていない場合、イオンビームを照射するために、静電チャック本体1を載置面1aが地面と略垂直になるように移動すると、ウェハ5は、自重により載置面1aから離れようとする。ところが、図2に示すように、載置面1aの外周近傍には例えば4つの脱落防止機構7…が設けられており、前記各脱落防止機構7の有する爪部8の端面8dはウェハ5の側端面に、前記爪部8の上方突端部8aの下面8cは、ウェハ5の表面に、それぞれ近接している。これにより、その中の2つの脱落防止機構7の爪部8の端面8dにウェハ5の外縁が当接して、ウェハ5の載置面1aに沿った動きは抑止される。また、ウェハ5が載置面1aより離れる方向に動いた場合は、ウェハ5の表面と、該ウェハ5の表面に近接する上記爪部8の下面8cとが当接する。これにより、ウェハ5の裏面と載置面1aとの距離は、所定の値以下に抑えられる。
【0049】
この結果、ウェハ5は載置面1a上に保持される。これにより、イオンビームは、ウェハ5に照射され、載置面1aへは照射されない。イオンビームが載置面1aへ照射された場合は、載置面1aの電気的特性が大きく変化し、静電チャック本体1の吸着力が著しく損なわれる虞れがあるが、イオンビームが載置面1aに照射されないため、この問題を生じることはない。また、イオンビームが載置面1aに照射されると、載置面1aの電気的特性が変化するため、静電チャック本体1の寿命が短くなり、メンテナンスの機会が増えるが、本実施例に係る静電チャックにおいては、この問題も生じることがない。
【0050】
イオンビームの照射後は、ウェハ5は静電チャック本体1より取り外される。ウェハ5が正常動作時と略同じ位置にあるため、静電チャック本体1は、正常動作時と同じようにして、ウェハ5を取り外すことができる。ウェハ5が完全に脱落した場合は、一度、チャンバをベントした後、処理室内に残されたウェハ5を取り出す必要があるが、本実施例に係る静電チャックでは、この手間を削減できる。
【0051】
ウェハ5を取り出すためにチャンバをベントする必要がないため、搬送ロボットの一時的不具合などにより、上記搬送ロボットがウェハ5を載置面1a上へ載置するときの位置合わせに失敗した場合など、吸着力低下の原因が以降の処理に影響をおよぼさない場合は、次のウェハ5を載置して処理を続行できる。
【0052】
なお、本実施例に係る静電チャックは、図2に示すように、4つの脱落防止機構7を備えているが、これに限るものではない。吸着されなくなったウェハ5が任意の方向に遊動する場合、これを係止するために、少なくとも3つの脱落防止機構7を備える必要がある。ウェハ5の遊動する方向が決まっている場合、例えば、載置面1aの傾きが小さいため、ウェハ5の自重により該ウェハ5が載置面1aに押圧されて載置面1aより離反しない場合は、脱落防止機構7は2つでもよい。
【0053】
また、本実施例に係る静電チャックでは、図2に示すように、脱落防止機構7とロッド6とが載置面1aの同一半径上に配置されているが、これに限るものではなく、互いにずれた位置に配置されていてもよい。なお、脱落防止機構7とロッド6との数は同じである必要はなく、それぞれの目的に応じて個別に設定することができる。
【0054】
さらに、本実施例においては、静電チャック本体1の吸着力が低下した場合、脱落防止機構7の爪部8によりウェハ5の側端面および上面を保持しているが、これに限らず、側端面のみを保持する脱落防止用支持部材と、上面のみを保持する脱落防止用支持部材とをそれぞれ別に設けてもよい。これにより、例えば、載置面1aの上方よりウェハ5を載置する場合には、側端面を保持するための脱落防止用支持部材を固定することができる。また、脱落防止機構7および持ち上げ機構の駆動源としてエアーシリンダを用いているが、これに限らず、モータやソレノイドなど他の駆動源を用いても同じ効果が得られる。さらに、脱落防止機構7と持ち上げ機構の駆動源をそれぞれ別に設けてもよい。これにより、脱落防止機構の動作タイミングと持ち上げ機構の動作タイミングとをそれぞれ別に設定できる。
【0055】
また、本実施例では、静電チャック本体1として、静電チャックの誘電体内に2つの電極を有する双極型の静電チャックを用いているが、これに限らず、静電チャックの誘電体内に1つの電極を有する単極型の静電チャックを用いてもよい。
【0056】
なお、本発明に係る静電チャックは、上記の実施例で示したようにイオン注入装置のみに適用されるものではなく、静電チャックが用いられている様々な装置に適用でき、特に、イオン注入装置やイオンビームエッチング装置などのビーム応用装置に対して有効である。
【0057】
【発明の効果】
請求項1の発明に係る静電チャックは、以上のように、載置面の外周近傍に配され、上記載置面上に吸着保持された被保持物の端縁部の一部を当該被保持物とは非接触状態で覆う脱落防止位置と、被保持物の載置面への着脱が可能となるように載置面を開放する退避位置との間を変位自在に設けられた、複数の脱落防止用支持部材と、上記複数の脱落防止用支持部材を、上記脱落防止位置と退避位置との間で切り替えて移動させる駆動手段とを有する脱落防止機構を備えている構成である。
【0058】
それゆえ、被保持物が静電チャックに載置されている間に、不所望に静電チャックの吸着力が低下しても、脱落防止機構は、上記被保持物を載置面上に保持することができる。被保持物の脱落による汚損および破損を防止すると共に、被保持物が載置面上にあるので、載置面の汚損および破損を防止できるという効果を奏する。
【0059】
また、正常に吸着しているときと略同じ位置に被保持物を保持することができるので、正常時と略同じ動作で被保持物を取り外すことができ、脱落した被保持物を探す手間を削減できるという効果を併せて奏する。
【0060】
加えて、静電チャックが正常に被保持物を吸着している場合、脱落防止用支持部材は該被保持物と接触しないので、被保持物をクリーンに保つことができるという効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すものであり、静電チャックを示す断面図である。
【図2】上記静電チャックを示す平面図である。
【図3】上記静電チャックの要部を示す説明図である。
【図4】従来の静電チャックを示すものであり、静電チャックの要部を示す説明図である。
【符号の説明】
1 静電チャック本体(静電チャック)
1a 載置面
2 直流電源
3 誘電体
4 金属電極
5 ウェハ(被保持物)
6 ロッド
7 脱落防止機構(脱落防止機構)
8 爪部(脱落防止用支持部材)
9 バネ(駆動手段)
10 動力伝達軸(駆動手段)
【産業上の利用分野】
本発明は、被保持物を静電気力により吸着固定する静電チャックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、吸着対象物を静電気力により吸着固定する静電チャックが、様々な分野で利用されるようになっている。例えば、静電チャックは、プロッタにおける用紙の固定に用いられたり、エッチング装置等の半導体製造装置におけるシリコンウエハ等の固定に用いられている。
【0003】
従来の静電チャックの一例として、イオン注入装置で用いられている静電チャックについて、図4に基づいて説明すると以下の通りである。
【0004】
基本的に静電チャックは、静電チャック本体51と該静電チャック本体51に電力を供給する直流電源52とを備えており、該直流電源52が、静電チャック本体51の有する誘電体52内部に埋設された2枚の金属電極54a・54b間へ、直流電圧を印加するような構成となっている。
【0005】
上記構成の静電チャックでは、上記電極54a・54bを披包する誘電体53において誘電分極現象が起こり、これにより被保持物であるウェハ55との間で静電気力が生じ、ウェハ55が静電チャック本体51の表面である載置面51aに吸着される。静電チャック本体51の吸着力F(N)は、このような誘電分極現象により現れる分極電荷の量によって定まり、基本的には、次式(1)によって表される。
【0006】
F=(S/2)・ε・(V/d)2 ・・・(1)
但し、上式(1)中のεは、
ε=ε0 ・εr
である。ここで、Sは各電極54a・54bの面積(m2 )、ε0 は真空の誘電率(8.85×10−12 C2 N−1m−2)、εr は誘電体53の比誘電率、Vは電源52の印加電圧(V)、dは、金属電極54a・54bとウェハ55の表面との距離であり、静電チャック本体51がウェハ55を正常に吸着している場合には、誘電体53における表面の厚さ、即ち、電極54a・54bから載置面51aまでの距離(m)となる。
【0007】
また、静電チャック本体51は、誘電体53と該誘電体53に接触するウェハ55との間に電流が流れることによって生じるジョンソン・ラーベック力によってもウェハ55を保持する。
【0008】
この静電チャック本体51は、イオン注入処理中、高真空の処理室内で、載置面51aが略垂直になるように保持されることが多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の静電チャックにおいては、静電チャック本体51の載置面51aあるいはウェハ55の裏面にゴミが付着していた場合や、ウェハ55を上記載置面51a上の正しい位置に載置できなかった場合に、上記載置面51aとウェハ55との間に隙間を生じる。この結果、金属電極54a・54bとウェハ55との距離であるdが増加して、静電チャックの吸着力が低下する。さらに、誘電体53とウェハ55との接触面積が減少するので、ジョンソン・ラーベック力による静電チャックの吸着力も低下する。上記のように、吸着力が低下すると、ウェハ55が脱落する虞れがある。また、脱落したウェハ55を処理室から取り除くためには、処理室をベントして処理室内の気圧を大気圧に戻す必要があり非常に手間がかかる。
【0010】
加えて、イオン注入処理中にウェハ55が脱落すると、本来、ウェハ55に照射されるべきイオンビームが静電チャックの載置面1aへ照射される。これにより、該載置面51aの電気的特性が大きく変化して、その機能が著しく損なわれる虞れもある。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、なんらかの理由により静電チャックの吸着力が不所望に低下し、被保持物を保持できなくなった場合に、被保持物の脱落を防止できる静電チャックを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る静電チャックは、上記課題を解決するために、静電気力によって、シリコンウェハなどの被保持物を載置面上に吸着保持する静電チャックであって、上記載置面の外周近傍に配され、載置面上に吸着保持された被保持物の端縁部の一部を当該被保持物とは非接触状態で覆う脱落防止位置と、被保持物の載置面への着脱が可能となるように載置面を開放する退避位置との間を変位自在に設けられた、複数の脱落防止用支持部材と、上記複数の脱落防止用支持部材を、上記脱落防止位置と退避位置との間で切り替えて移動させる駆動手段とを有する脱落防止機構を備えたことを特徴としている。
【0013】
【作用】
請求項1の発明の構成によれば、シリコンウェハなどの被保持物を静電チャックの載置面に載置すると、静電チャックは、静電気力により該ウェハを載置面に吸着する。静電チャックは、イオン注入など、所定の処理を行う間、該ウェハを吸着したまま保持する。駆動手段は、上記載置面の外周近傍に設けられた各脱落防止用支持部材を、載置面上に吸着保持された被保持物の端縁部の一部を当該被保持物とは非接触状態で覆う脱落防止位置に駐止する。ウェハが載置面に正常に吸着保持されている状態では、ウェハと脱落防止用支持部材とは接触しない。
【0014】
上記所定の処理が終了すると、載置したウェハは載置面より取り外される。ウェハを取り外す際、上記駆動手段は、上記各脱落防止用支持部材を、被保持物の載置面への着脱が可能となるように載置面を開放する退避位置まで退避させる。これにより、なんら支障なくウェハを着脱できる。
【0015】
ところで、付着したゴミにより静電チャックの載置面とウェハとの間に隙間ができた場合などには、静電チャックの吸着力が不所望に低下する。静電チャックがウェハを吸着力によって保持できなくなると、自重やその他の該ウェハに加えられる力によりウェハは載置面の上方あるいは側方へ遊動する。遊動したウェハは、載置面の上方あるいは側方に僅かに遊動した後、該ウェハの端縁部の一部を非接触状態で覆っている上記脱落防止用支持部材と当接して係止される。
【0016】
このようにして、ウェハなどの被保持物が静電チャックに載置されている間に、不所望に静電チャックの吸着力が低下しても、脱落防止機構は、上記被保持物を載置面上に保持することができる。それゆえ、例えば、イオンビームを被保持物に照射して、イオン注入やエッチング処理を行う場合に、被保持物の代わりに誤って載置面を加工することがない。この結果、載置面の汚損あるいは破損を防止することができる。
【0017】
また、正常に吸着しているときと略同じ位置に被保持物を保持することができるので、正常時と略同じ動作で被保持物を取り外すことができる。さらに、被保持物が脱落しないので、従来生じていた処理室ベントの手間や脱落した被保持物を探す手間が削減できる。加えて、被保持物に脱落によるダメージを与えることがない。
【0018】
また、被保持物が載置面の正常な位置に載置されている場合、脱落防止機構は該被保持物と接触することがない。それゆえ、被保持物をクリーンに保つことができるという静電チャックの利点を損なうことがない。
【0019】
【実施例】
本発明の一実施例に係る静電チャックについて図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。
【0020】
本実施例に係る静電チャックは、イオン注入装置に適用されるものであり、図3に示すように、静電チャック本体1と該静電チャック本体1に電力を供給する直流電源2とを備えている。静電チャック本体1は、誘電体3、および誘電体3内部に埋設された2枚の金属電極4a・4bを有している。上記直流電源2は、両金属電極4a・4b間に、所定の直流電圧を印加することができる。
【0021】
誘電体3としては、例えば、アルミナ(Al2 O3 )、炭化ケイ素(SiC)、およびチタン酸カルシウム(CaTiO3 )等のセラミック材料を使用することができる。なお、本実施例では、炭化ケイ素からなる誘電体3を使用している。
【0022】
また、図2に示すように、静電チャック本体1は、その一表面である載置面1aが略円形状をなすように形成されている。載置面1a上に、被保持物であるウェハ5を載置した後、直流電源2により金属電極4a・4bへ直流電圧を印加することによって、ウェハ5を静電チャック本体1の載置面1aに吸着することができる。
【0023】
静電チャック本体1は、ウェハ5を着脱する際には、その載置面1aが略水平になるように保持され、イオン注入処理中は、その載置面1aが地面に対して略垂直になるように保持される。以下では、説明の便宜上、載置面1aが略水平になるように保持されている状態を基準として、載置面1a面に垂直かつ載置面1aより離れる方向を上方、それとは逆の方向を下方と呼ぶ。
【0024】
上記静電チャック本体1の載置面1aには、図2に示すように、例えば4つの角穴1b…が形成されている。それぞれの角穴1bは、静電チャック本体1を貫通して設けられていて、該角穴1b内には、ウェハ5を着脱するための持ち上げ機構の作用片であるロッド6が進退可能に収納されている。各ロッド6は、図示しないエアーシリンダにより、略同時に上下に直動させることができる。この結果、図1に示すように、略L字状に曲折されたロッド6の上端(以下では頭部と称する)が載置面1aより没入あるいは突出する。なお、図1は、脱落防止機構7近傍を示す、図2のX−X線矢視断面図である。
【0025】
各ロッド6の頭部が載置面1aより突出することにより、載置面1a上に載置されたウェハ5を持ち上げることができる。また、載置面1aより突出した各ロッド6の頭部にウェハ5を載置し、その後、各ロッド6の頭部を載置面1aより没入させることにより、ウェハ5を載置面1aへ案内することができる。
【0026】
さらに、図2に示すように、静電チャック本体1は、ウェハ5の脱落を防止するために、その載置面1aの外周近傍に、例えば4つの脱落防止機構7…を備えている。各脱落防止機構7は、図1に示すように、ウェハ5の脱落時に該ウェハ5を支持する脱落防止用支持部材である爪部8と、爪部8に付勢する駆動手段であるバネ9と、ウェハ5の持ち上げ時に爪部8を邪魔にならない位置まで移動させるための駆動手段である動力伝達軸10とを有している。
【0027】
上記爪部8は、図1に示すように、略コの字形状をなしており、載置面1aにウェハ5が載置されている状態では、上方突端部8aと下方突端部8bとの間に、ウェハ5の端縁付近と、脱落防止機構7の配設部上端である静電チャック本体1の一部1cとが入るように配置されている。このように、爪部8が脱落防止位置にあるときには、前記上方突端部8aの下面8cは、ウェハ5の表面と対向かつ近接している。また、前記上方突端部8aの中央部は、先端にくらべて上下方向の厚みを増して形成されており、上記下面8cと略垂直に形成された段差を有している。爪部8が脱落防止位置にあるときには、該段差の先端方向の端面8dは、ウェハ5の外縁側端面と対向かつ近接している。
【0028】
一方、爪部8の下方の角部は、載置面1aの周方向に横架された軸により、回動可能なように軸支されている。図1に示すように、爪部8の上方突端部8aが載置面1aの径方向内側へ移動する方向をA方向と呼ぶ。
【0029】
爪部8がA方向に回動すると、爪部8の上方突端部8aは、載置面1aの径方向内側かつ下方に回動する。爪部8が最もA方向に回動した時点である脱落防止位置に配されている場合、上記上方突端部8aは、載置面1aに載置されたウェハ5の上面に数mm張り出している。
【0030】
例えば、ウェハ5が直径200mmの円盤状であるとき、ウェハ5の側端面と上方突端部8aの端面8dとの距離は1.0mm、上方突端部8aの下面8cとウェハ5の表面との距離は0.48mm、かつ上方突端部8のウェハ5の上方に張り出している部分の長さは2mmなどに設定される。
【0031】
また、爪部8が逆A方向に回動したとき、上方突端部8aは、前記ウェハ5の上方より外側に移動する。この結果、上方突端部8aは、ウェハ5を載置面1aの上方向に取り外す際に支障とならない退避位置へ退避できる。
【0032】
下方突端部8bの上部と上記静電チャック本体1の一部1cとの間にはバネ9が縮装されており、爪部8は、図1に示すA方向に常に付勢されている。
【0033】
一方、下方突端部8bの下方には、動力伝達軸10が配置されている。動力伝達軸10には、ロッド6の図示しない駆動源であるエアーシリンダの動力が、図示しない動力伝達部を介して伝えられる。これにより、動力伝達軸10は、ロッド6の上下と略同時に上下方向に直動する。動力伝達軸10が上方に直動すると、動力伝達軸10の上端は上記下方突端部8bの下部と当接し、これを上方に押圧する。この結果、爪部8は、逆A方向に回動して、退避位置に移動する。
【0034】
また、動力伝達軸10は、下方に直動して、上記下方突端部8bの下方の待機位置まで移動することができる。動力伝達軸10が待機位置にあるときには、該動力伝達軸10の上端は上記下方突端部8bの下部と当接しない。この結果、爪部8は、バネ9の付勢によって図1に示すA方向に回動して脱落防止位置に移動する。
【0035】
このような構成の静電チャック本体1は、高真空となる処理室内に設置されている。ウェハ5を着脱する際、静電チャック本体1は、その載置面1aが略水平になるように保持される。また、ウェハ5が載置されて静電チャック本体1に吸着保持された後は、その載置面1aが地面に対して略垂直になるように保持される。この状態で、吸着保持されたウェハ5に対してイオンビームが照射される。
【0036】
上記の構成において、静電チャック本体1がウェハ5を正しく吸着保持した場合の動作を図1ないし図3に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0037】
すなわち、図1に示すように、静電チャック本体1の載置面1aにはウェハ5が載置されている。この状態では、ロッド6は載置面1aより没入している。ロッド6と略同時に駆動される動力伝達軸10も下方に直動しているため、動力伝達軸10の頭部が爪部8とは当接しておらず、爪部8は、バネ9の付勢によりA方向に回動して脱落防止位置にある。この結果、爪部8の上方突端部8aは、載置面1aに載置されたウェハ5の外縁部の上方に近接している。上記上方突端部8aとウェハ5とは接触していないため、メカニカルクランプのようにウェハ5を挟持するものとくらべて、ウェハ5をクリーンに保つことができるという静電チャックの利点を損なわない。
【0038】
この状態で、図3に示す直流電源2により金属電極4a・4b間に所定の電圧が印加されると、これらの電極4a・4bを披包する誘電体3において誘電分極現象が起こり、ウェハ5が、静電気力によって載置面1aに吸着保持される。
【0039】
ウェハ5が吸着されると、静電チャック本体1は、載置面1aが地面に対して略垂直になるように移動される。その後、上記略垂直に保持されたウェハ5に、図示しないイオン源より引き出されて質量分析されたイオンビームが照射される。爪部8の上方突端部8aが張り出して、ウェハ5の上方にかかっている部分は数mm角と小さいので、ウェハ5の上面の略全体にイオンビームが照射される。
【0040】
イオンビームの照射が終了すると、静電チャック本体1は、載置面1aが水平になるように移動される。その後、ウェハ5が取り外される。
【0041】
すなわち、ロッド6および動力伝達軸10の図示しない駆動源であるエアーシリンダの動力は、図示しない動力伝達部を介して、各ロッド6、および各動力伝達軸10へ伝えられる。この結果、図1に示す各動力伝達軸10、および各ロッド6は、略同時に上方へ直動する。
【0042】
動力伝達軸10の直動により、該動力伝達軸10の上端部は、爪部8の下方突端部8bと当接し、該端部8bを上方へ押圧する。これにより、爪部8は、図1に示すA方向に加えられているバネ9の付勢力に逆らって、逆A方向へ回動する。これに伴い、爪部8の上方突端部8aは、載置面1aに載置されているウェハ5の外側へ回動して退避位置に移動する(図1中、2点鎖線で示した状態)。この結果、前記上方突端部8aは、ウェハ5の上面にはかからない位置まで移動されるので、ウェハ5を取り外すためウェハ5を上昇させるにあたって何ら問題を生じない。
【0043】
一方、上記動力伝達軸10の直動と略同時に、図示しない駆動源によって駆動される各ロッド6も上方へ直動する。この結果、ロッド6の頭部は、載置面1aより突出し、載置面1aに載置されているウェハ5を上方へ持ち上げる。上記のように、爪部8の上方突端部8aは、ウェハ5の上面にはかからない位置まで移動しているので、ロッド6は、支障なくウェハ5を持ち上げることができる。
【0044】
ウェハ5が持ち上げられた後、ウェハ5は、図示しない搬送ロボットによりウェハ5は静電チャック本体1より取り外される。ウェハ5が取り外された後は、ロッド6が下降し、その頭部が載置面1aより没入する。一方ロッド6の下降と略同時に動力伝達軸10も下降し、動力伝達軸10の上端は、爪部8の下方突端部8bとは接触しなくなる。この結果、爪部8は、圧縮されていたバネ9の復元力により、図1に示すA方向へ回動して脱落防止位置へ戻る。
【0045】
ウェハ5を静電チャック本体1の載置面1aに載置する際には、ウェハ5を取り外す動作とは逆の順序で各動作が行われる。
【0046】
続いて、静電チャック本体1がウェハ5を正しく吸着固定できなかったときの動作を図1および図2にしたがって説明すると以下の通りである。
【0047】
例えば、ウェハ5の裏面、あるいは静電チャック本体1の載置面1aにゴミが付着している場合や、ウェハ5を上記載置面1aの所定の位置へ載置することができなかった場合などにより、載置面1aとウェハ5の裏面との間に隙間が生じると、静電チャック本体1の吸着力は低下し、ウェハ5を保持することができないことがある。
【0048】
上記のように、静電チャック本体1にウェハ5が吸着固定されていない場合、イオンビームを照射するために、静電チャック本体1を載置面1aが地面と略垂直になるように移動すると、ウェハ5は、自重により載置面1aから離れようとする。ところが、図2に示すように、載置面1aの外周近傍には例えば4つの脱落防止機構7…が設けられており、前記各脱落防止機構7の有する爪部8の端面8dはウェハ5の側端面に、前記爪部8の上方突端部8aの下面8cは、ウェハ5の表面に、それぞれ近接している。これにより、その中の2つの脱落防止機構7の爪部8の端面8dにウェハ5の外縁が当接して、ウェハ5の載置面1aに沿った動きは抑止される。また、ウェハ5が載置面1aより離れる方向に動いた場合は、ウェハ5の表面と、該ウェハ5の表面に近接する上記爪部8の下面8cとが当接する。これにより、ウェハ5の裏面と載置面1aとの距離は、所定の値以下に抑えられる。
【0049】
この結果、ウェハ5は載置面1a上に保持される。これにより、イオンビームは、ウェハ5に照射され、載置面1aへは照射されない。イオンビームが載置面1aへ照射された場合は、載置面1aの電気的特性が大きく変化し、静電チャック本体1の吸着力が著しく損なわれる虞れがあるが、イオンビームが載置面1aに照射されないため、この問題を生じることはない。また、イオンビームが載置面1aに照射されると、載置面1aの電気的特性が変化するため、静電チャック本体1の寿命が短くなり、メンテナンスの機会が増えるが、本実施例に係る静電チャックにおいては、この問題も生じることがない。
【0050】
イオンビームの照射後は、ウェハ5は静電チャック本体1より取り外される。ウェハ5が正常動作時と略同じ位置にあるため、静電チャック本体1は、正常動作時と同じようにして、ウェハ5を取り外すことができる。ウェハ5が完全に脱落した場合は、一度、チャンバをベントした後、処理室内に残されたウェハ5を取り出す必要があるが、本実施例に係る静電チャックでは、この手間を削減できる。
【0051】
ウェハ5を取り出すためにチャンバをベントする必要がないため、搬送ロボットの一時的不具合などにより、上記搬送ロボットがウェハ5を載置面1a上へ載置するときの位置合わせに失敗した場合など、吸着力低下の原因が以降の処理に影響をおよぼさない場合は、次のウェハ5を載置して処理を続行できる。
【0052】
なお、本実施例に係る静電チャックは、図2に示すように、4つの脱落防止機構7を備えているが、これに限るものではない。吸着されなくなったウェハ5が任意の方向に遊動する場合、これを係止するために、少なくとも3つの脱落防止機構7を備える必要がある。ウェハ5の遊動する方向が決まっている場合、例えば、載置面1aの傾きが小さいため、ウェハ5の自重により該ウェハ5が載置面1aに押圧されて載置面1aより離反しない場合は、脱落防止機構7は2つでもよい。
【0053】
また、本実施例に係る静電チャックでは、図2に示すように、脱落防止機構7とロッド6とが載置面1aの同一半径上に配置されているが、これに限るものではなく、互いにずれた位置に配置されていてもよい。なお、脱落防止機構7とロッド6との数は同じである必要はなく、それぞれの目的に応じて個別に設定することができる。
【0054】
さらに、本実施例においては、静電チャック本体1の吸着力が低下した場合、脱落防止機構7の爪部8によりウェハ5の側端面および上面を保持しているが、これに限らず、側端面のみを保持する脱落防止用支持部材と、上面のみを保持する脱落防止用支持部材とをそれぞれ別に設けてもよい。これにより、例えば、載置面1aの上方よりウェハ5を載置する場合には、側端面を保持するための脱落防止用支持部材を固定することができる。また、脱落防止機構7および持ち上げ機構の駆動源としてエアーシリンダを用いているが、これに限らず、モータやソレノイドなど他の駆動源を用いても同じ効果が得られる。さらに、脱落防止機構7と持ち上げ機構の駆動源をそれぞれ別に設けてもよい。これにより、脱落防止機構の動作タイミングと持ち上げ機構の動作タイミングとをそれぞれ別に設定できる。
【0055】
また、本実施例では、静電チャック本体1として、静電チャックの誘電体内に2つの電極を有する双極型の静電チャックを用いているが、これに限らず、静電チャックの誘電体内に1つの電極を有する単極型の静電チャックを用いてもよい。
【0056】
なお、本発明に係る静電チャックは、上記の実施例で示したようにイオン注入装置のみに適用されるものではなく、静電チャックが用いられている様々な装置に適用でき、特に、イオン注入装置やイオンビームエッチング装置などのビーム応用装置に対して有効である。
【0057】
【発明の効果】
請求項1の発明に係る静電チャックは、以上のように、載置面の外周近傍に配され、上記載置面上に吸着保持された被保持物の端縁部の一部を当該被保持物とは非接触状態で覆う脱落防止位置と、被保持物の載置面への着脱が可能となるように載置面を開放する退避位置との間を変位自在に設けられた、複数の脱落防止用支持部材と、上記複数の脱落防止用支持部材を、上記脱落防止位置と退避位置との間で切り替えて移動させる駆動手段とを有する脱落防止機構を備えている構成である。
【0058】
それゆえ、被保持物が静電チャックに載置されている間に、不所望に静電チャックの吸着力が低下しても、脱落防止機構は、上記被保持物を載置面上に保持することができる。被保持物の脱落による汚損および破損を防止すると共に、被保持物が載置面上にあるので、載置面の汚損および破損を防止できるという効果を奏する。
【0059】
また、正常に吸着しているときと略同じ位置に被保持物を保持することができるので、正常時と略同じ動作で被保持物を取り外すことができ、脱落した被保持物を探す手間を削減できるという効果を併せて奏する。
【0060】
加えて、静電チャックが正常に被保持物を吸着している場合、脱落防止用支持部材は該被保持物と接触しないので、被保持物をクリーンに保つことができるという効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すものであり、静電チャックを示す断面図である。
【図2】上記静電チャックを示す平面図である。
【図3】上記静電チャックの要部を示す説明図である。
【図4】従来の静電チャックを示すものであり、静電チャックの要部を示す説明図である。
【符号の説明】
1 静電チャック本体(静電チャック)
1a 載置面
2 直流電源
3 誘電体
4 金属電極
5 ウェハ(被保持物)
6 ロッド
7 脱落防止機構(脱落防止機構)
8 爪部(脱落防止用支持部材)
9 バネ(駆動手段)
10 動力伝達軸(駆動手段)
Claims (1)
- 静電気力によって被保持物を載置面上に吸着保持する静電チャックにおいて、
上記載置面の外周近傍に配され、載置面上に吸着保持された被保持物の端縁部の一部を当該被保持物とは非接触状態で覆う脱落防止位置と、被保持物の載置面への着脱が可能となるように載置面を開放する退避位置との間を変位自在に設けられた、複数の脱落防止用支持部材と、
上記複数の脱落防止用支持部材を、上記脱落防止位置と退避位置との間で切り替えて移動させる駆動手段とを有する脱落防止機構を備えたことを特徴とする静電チャック。
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