JP3586384B2 - 文化財の燻蒸方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オゾン層破壊の少ない燻蒸剤で環境保全に寄与しつつ文化財の保護を達成するための、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤で文化財を燻蒸する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
文化財を保存し活用することは、国民の文化的向上に資するとともに,世界文化の進歩に貢献する。絵画、彫刻、工芸品、典籍、古文書その他の有形の文化的所産である文化財は、国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国語研究所、日本芸術院、東京・京都・奈良の国立博物館、東京・奈良の国立文化財研究所等の各所で、その保存維持作業の一環として防虫、防黴を目的とする燻蒸処理がなされている。
【0003】
燻蒸剤としては文化財の特質を考慮し、文化財に薬害を及ぼさないこと、文化財に吸着されないこと、拡散浸透性に優れること、引火爆発性が少ないこと、害虫の成虫、蛹、幼虫、卵への効果すなわち殺虫力が強く、かつ人畜に対し低毒性であること等の要件を満たすことが必要とされ、我が国では、臭化メチル・エチレンオキシド合剤、二硫化炭素、青酸、リン化水素、クロルピクリン、臭化メチル、四塩化炭素、酸化エチレンなどが使用されている。この中で殺虫力、殺菌効果に優れる点で臭化メチル・エチレンオキシド合剤が特に広く使用されている。
【0004】
ところが近年になり、臭化メチルはオゾン層破壊の原因物質に挙げられ、使用が制限されることとなった。
【0005】
一方、米国特許5,518,692号には、臭化メチルの代替え品としてヨウ化メチルを土壌燻蒸剤に使用し得る旨が開示されている。臭素とヨウ素とは共にハロゲン化合物であるが、ヨウ化物が臭化物より不安定であり、およびヨウ化物の多くが海水に吸収され大気中から迅速に消失することから、ヨウ化物がオゾン層に達する率は少なくオゾン層破壊能がきわめて少ないとしたものである。
【0006】
しかしながら、ヨウ化メチルは本来メチル化剤であって、医薬、農薬の合成原料として使用され、反応性が極めて高い化合物である。土壌燻蒸剤として使用する場合には土壌自体への燻蒸剤の影響は問題とならないが、文化財に使用するには問題がある。すなわち、文化財の燻蒸は、防黴、防虫を対象とするものであるが、その目的は文化財自体の後世への保存維持にある。従って、文化財自体への影響が何より重要なのである。しかしながら当該公報はヨウ化メチルを土壌に燻蒸した場合の殺菌作用、殺虫作用の開示にとどまり土壌自体への影響を評価したものではない。
【0007】
さらに、土壌は、湿度5.85%〜32%という極めて低い湿度状態であるのに対し、文化財は湿度状態50〜70%で保存されるのが一般的である。漆器類は湿度が低いと亀裂を生ずるため、湿度管理の慎重さが要求されるからである。一方、ヨウ化メチルは臭化メチルより沸点が高いため気化しにくくかつ湿気中に吸収される。こため文化財保護環境下では、ヨウ化メチルによる化学的な反応性以外にその物理的特性から、ヨウ化メチル自体が文化財の汚染原因となるおそれがあるのである。この点、土壌燻蒸の場合には燻蒸剤による土壌の着色等は問題とされ難く、わずかの着色汚染も許されない文化財への使用と相違するのである。しかしながら、上記公報では文化財保護環境のための高湿度下でのヨウ化アルキルへの文化財への影響は全く不明である。
【0008】
また、土壌と文化財とは材質が異なるため、これらに発生する黴や虫はおのずから異なるのが一般的である。このため、文化財に発生する黴や虫などに対するヨウ化メチルの効果は、上記公報からは全く不明である。特に、文化財は布片、紙片、木片、金属片等、素材の異なるものから構成されることが多い。従って、文化財への燻蒸剤の選択は、対象とする菌類、虫類の種類のみならず、燻蒸剤の物理的、化学的反応性の対象文化財への実際の影響を評価しなければ使用することが出来ないのである。
【0009】
加えて、環境保全の観点からは、かかる物質を燻蒸処理等の使用後に大気中に放出することは好ましくない。従って、可能な限り少ない燻蒸剤の使用量で、環境保護および文化財保護の観点を留意しつつ文化財を燻蒸処理する方法が望まれるのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、必要に応じて湿度や温度の管理を行い、かつ文化財の損傷を最小限に止めるとともに、少ない使用量で確実に燻蒸効果を上げることができる文化財の燻蒸方法を提供することにある。特に、環境保全および文化財保護等の観点から、オゾン層を破壊することなく防菌、防虫効果に優れかつ文化財自体の保護維持に適する文化財の燻蒸方法を提供するものである。
【0011】
すなわち上記課題は、下記(1)〜(11)により達成できる。
【0012】
(1) 文化財を隔離容器に収納し、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤で、ヨウ化アルキル濃度0.02〜1.0mM/Lで燻蒸することを特徴とする文化財の燻蒸方法。
【0013】
(2) 前記燻蒸剤が、前記ヨウ化アルキルおよび、殺虫剤または殺菌剤との併用であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
【0014】
(3) 前記燻蒸剤におけるヨウ化アルキルの濃度が、5〜95wt%である上記(1)記載の方法。
【0015】
(4) 前記燻蒸剤を気化装置で気化させ燻蒸することを特徴とする上記(1)〜(3)記載の方法。
【0016】
(5) 前記ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤および、殺虫剤または殺菌剤とをそれぞれ単独で順次気化させ燻蒸することを特徴とする上記(1)記載の方法。
【0017】
(6) 前記殺虫剤が、クロルピクリン、二硫化炭素、フッ化サルフリル、臭化メチルおよび青酸よりなる群から選択される1種類以上の物質である上記(2)または(5)記載の方法。
【0018】
(7) 前記殺菌剤が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタアクロレイン、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、アリルアルコール、ブチルアルコールおよび過酸化水素よりなる群から選択される1種類以上の物質である上記(2)または(5)記載の方法。
【0019】
(8) 前記ヨウ化アルキルが、炭素数1から4のアルキルモノヨードである上記(1)〜(7)記載の方法。
【0020】
(9) 文化財の構成部分を材質別に分け、材質毎に隔離容器に収納し、燻蒸することを特徴とする上記(1)記載の方法。
【0021】
(10) 燻蒸条件が、温度0〜40℃、湿度5〜100%であることを特徴とする上記(1)〜(9)記載の方法。
【0022】
(11) 前記文化財が、文化財保護法第2条に規定する第1号に規定する有形文化財および第3号に規定する民俗文化財であって、建築物を除いたものである上記(1)〜(10)記載の方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、文化財を隔離容器に収納し、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤で燻蒸することを特徴とするものである。一般にアルキルハロゲン化物は、有機体に含まれるアミノ酸やペプチド中のNH基やSH基への2分子求核置換反応を起こし、殺生物作用を奏すると考えられる。その一方、ヨウ化アルキル自体は、アルキル化剤として使用されることからもその反応性が極めて高く、文化財自体に対する変質などが懸念される。この点文化財保護環境下における、ヨウ化アルキルを燻蒸剤として用いて反応性、殺生物性、環境への影響など詳細にわたり調査したところ、文化財を構成部分ごとに隔離容器に収納しヨウ化アルキルで燻蒸処理を行うと文化財に対して変色や変質などを及ぼさず、しかも従来品である臭化メチルよりも広域かつ強度の抗菌作用を奏することが判明したのである。これにより殺菌を目的として配合されたエチレンオキシドの配合量を低減させ得るのである。エチレンオキシドは、使用する際の爆発性の人や文化財に与える危険性を回避するための高度な技術が必要とされ、かかるエチレンオキシドの配合量を低減することは、文化財の燻蒸方法として極めて優れた方法であるといえる。またヨウ化アルキルの殺生物性に優れる点から、ヨウ化アルキル自体の使用量を低減し得るのである。このことは、環境保全および文化財保護の観点から極めて優れたことといえる。さらに、文化財の中には、漆器や絵画など乾燥により激しく損傷するものがあり湿度管理は欠かすことができない。しかし文化財を隔離容器内に収納し、必要な温度管理の下に燻蒸したところ、当該使用量の範囲内で、湿気とヨウ化アルキルとの反応による文化財の着色もなく、極めて環境保全および文化財保護に優れることが判明したのである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明の隔離容器とは、燻蒸剤の燻蒸処理の間、燻蒸剤の機密性が維持される容器であればよくその材質や大きさは問わない。さらに、容器といっても燻蒸剤の密封性が保持される隔離された空間が確保されればよい。従って、樹脂フィルムやシートで密封性が保持されるよう燻蒸物をくるむ場合(被覆燻蒸または包み込み燻蒸)、樹脂フィルムやシートを粘着剤等を用いて張り合わせて作成した容器に文化財を収納するする場合(密閉燻蒸)も隔離容器への収納に該当する。さらに、チャンバーや燻蒸室、燻蒸専用倉庫などの燻蒸専用施設であってもよい。燻蒸の準備面からは、チャンバーや燻蒸室の使用が好ましい。本発明ではこの様に隔離容器を使用することで、燻蒸剤の使用量を低減することができ、しかも燻蒸剤の大気中への放出を抑制し、回収処理も可能となるのである。加えて、かかる隔離容器に気温や湿度調整装置を備えれば、天候の変化を考慮せずに文化財の燻蒸処理が行えると共に、文化財の材質、サイズ等の特性に適合する燻蒸処理が可能となるのである。
【0025】
本発明では、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤を使用する。ヨウ化アルキルとしては、炭素数1から4のアルキルモノヨード、例えばヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ノルマルプロピルが好ましい。これらは、文化財に用いられる素材全般にわたって腐蝕等の作用が比較的少く、殺生物効果が確実であり、沸点以下でも揮発性が高いために、本発明の使用条件下において効果が確実な濃度で揮発し液化せず、しかも従来品である臭化メチルよりも抗菌性に優れるからである。特に好ましくヨウ化メチルである。臭化メチルよりも抗菌性に優れると共にコクゾウ虫に対する殺虫効果にも優れるからである。また、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤には、ヨウ化アルキルが5〜95wt%、より好ましくは10〜90wt%、とくには15〜85wt%含有されていることが好ましい。この範囲で、特に殺生物性に優れると共に、文化財への変質腐食などの影響が少ないからである。
【0026】
本発明では、ヨウ化アルキル単独使用の他に、他の殺菌剤や殺虫剤をヨウ化アルキルと共に使用することができる。使用できる殺菌剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタアクロレイン、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、アリルアルコール、ブチルアルコール、過酸化水素がある。これらはヨウ化アルキルとの併用が可能であると共に、併用においても他の殺菌効果が損なわれない。本発明では、これら殺菌剤の1種を併用する場合の他2種以上を併用してもよい。
【0027】
さらに本発明では、殺虫剤をヨウ化アルキルと共に燻蒸することができる。殺虫剤としては、クロルピクリン、二硫化炭素、フッ化サルフリル、臭化メチルおよび青酸が例示され、本発明では、これらの1種を併用する場合の他、2種以上を併用することもできる。本発明では、これら殺虫剤のなかでもフッ化サルフリル、臭化メチルを使用することが好ましい。これらは、文化財への影響が比較的少ないからである。なお、本発明では、ヨウ化アルキルと共に、上記殺菌剤の1種以上にさらに上記殺虫剤の1種以上を併用することもできる。これにより、環境保全に留意しつつ殺虫および殺菌効果に優れる文化財の燻蒸が可能だからである。
【0028】
隔離容器内では、文化財の保存に適した温度範囲内で燻蒸処理を行うが、滅菌域内のガス成分の引火性等に注意しつつ、好ましくは保温性の高い厚手の樹脂フィルムやシートを使用するか更にシート上を保温材で覆い温度調節または湿度調節器を使用して行うことが好ましい。従って、燻蒸温度は、対象とする文化財によって適宜選択しうるのであるが、温度0〜40℃であることが好ましく、より好ましくは20〜30℃である。
【0029】
燻蒸剤は、気化器を使用して燻蒸することが好ましい。ヨウ化アルキルの気化に適すると共に、燻蒸時間の短縮に効果的だからである。また、ヨウ化アルキルが液体の場合には、ヨウ化アルキルが直接文化財に接触し、文化財の汚染につながる虞れもあるからである。なお、燻蒸時間は、対象とする文化財の種類や燻蒸剤の種類により適宜選択できるが、一般には、5〜24時間で十分である。
【0030】
燻蒸は、ヨウ化アルキルに殺菌剤または殺虫剤を配合した合剤を投与して用いる他、同一隔離容器内にヨウ化アルキルと殺菌剤または殺虫剤をそれぞれ別個に投与して密封して用いてもよい。本発明では、上記隔離容器内のヨウ化アルキルの濃度は、好ましくは0.02〜1.0mM/L、特には0.05〜0.5mM/Lである。また、殺菌剤の濃度は、0.005〜1.5mM/Lであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1.0mM/L、特には0.05〜0.5mM/Lである。また、殺虫剤の濃度は、0.005〜1.5mM/Lであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1.0mM/L、特には0.05〜0.5mM/Lである。この範囲で、十分な殺生物性が得られると共に、文化財の変質、腐食などが少ないからである。なお、燻蒸濃度は、対象とする文化財の材質などを考慮して適宜上記範囲内で選択することができる。これにより、より文化財の変質などを防止した燻蒸処理が可能となる。
【0031】
本発明の文化財の燻蒸方法においては、文化財の特質を考慮した湿度を選択することができる。従って、文化財が主として金属である場合には、湿度60%以下で燻蒸することにより燻蒸処理中の金属の腐食を防止することができる。その一方、屏風、掛け軸、書籍、本、紙、漆器や絵画等の乾燥に弱い文化財には、湿度60〜80%、より好ましくは60〜70%で燻蒸することにより、文化財の収縮、亀裂などの乾燥による破損を防止することができる。
【0032】
本発明では、燻蒸の対象たる文化財を予め構成素材ごとに分解し、同一素材のものについてその素材に適した燻蒸剤を用いて燻蒸処理を行うことが好ましい。特に文化財は、例えば金属片一つをとっても出土地や出土年代により合金組成が異なり、使用する燻蒸条件に対する反応性も異なる場合からである。このため、燻蒸の対象物たる文化財を可能な限り分別し、燻蒸処理に対する反応性が同じものを集めた上で燻蒸することにより、文化財の腐食、変質などを更に防止することができるのである。これにより、文化財の光沢、変色、腐食、発錆等を可能な限り抑制することができるからである。
【0033】
例えば、染色品には、温度15〜22℃、湿度20〜40%が好ましい。また、金工品には、温度20〜24℃、湿度55%以下が好ましい。
【0034】
なお、本発明において、文化財とは文化財保護法第2条に規定する第1号に規定する有形文化財および第3号に規定する民俗文化財であって、建築物を除いたものをいう。従って、従来から文化財の燻蒸処理の対象となる一般に使用することができる。具体的には、絵画、彫刻、工芸品、書籍、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で、歴史上または芸術上価値の高いもの、考古資料およびその他の学術上価値の高い歴史資料および衣食住、生業、信仰、年中行事などに関する風俗習慣、民族芸能に用いられる衣服、器具その他の物件で、国民の推移の理解のために欠くことのできないものが対象となる。より具体的には、土器、石器、木器、骨角牙器、玉、銅鐸、銅鉾、宮殿や寺院跡などからの出土品、被服、装身具、飲食容器、光熱用具、家具調度品、農具、漁猟具、工匠用具、紡織用具、計算具、看板、鑑札、刑罰用具、奉納物、偶像類、呪術用具、暦類、占い用具、医療用具、楽器、面、人形、玩具、産育用具、冠婚葬祭用具、正月用具、節供用具、盆用具などが例示できる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。なお、本発明では、コクゾウ虫(Sitophilus zeamais)および黒コウジカビ(Aspergillus niger)を文化財の燻蒸効果判定の指標生物として使用した。
【0036】
まず、密封系作製の手順を以下(1)〜(6)に示す。
【0037】
(1)ポテトデキストロース寒天平板培地で27℃、5日間培養し得た黒コウジカビ(Aspergillus niger)のコロニーの一部を、滅菌した生理食塩水に懸濁した。その一部を無菌的に所定倍率に希釈して、各希釈液を再びポテトデキストロース寒天平板培地に塗抹した。残りの懸濁液は4℃で保存した。
【0038】
(2)塗抹をしたポテトデキストロース寒天平板培地を27℃、3日間培養し、出現したコロニーの数から保存中の懸濁液の菌数を算出した。懸濁液中の生菌濃度は、2×10CFU/mlであった。
【0039】
(3)保存中の懸濁液の0.1mlを10mm径の滅菌したペーパーディスクにしみ込ませ、クリーンベンチ内で4時間風乾燥した。乾燥後のペーパーディスクをガラス製サンプル管に入れ、内径1mm長さ60mmの中空なガラス管を中央に貫通させたゴム栓で蓋をし、供試菌とした。
【0040】
(4)玄米にて飼育中のコクゾウ虫10匹を飼育床の古玄米1gと共に20ml容量のガラス製サンプル管に入れ、内径1mm長さ60mmの中空なガラス管を中央に貫通させたゴム栓で蓋をし、供試虫とした。
【0041】
(5)投薬口を設けた内容量1.5Lのガラス製デシケータ内にある陶器製の中板上に上記供試虫および供試菌を入れ、蓋の接面をシリコングリスを塗布し密封性を確保した。
【0042】
(6)ゴム製のシリンジ差し込み栓を装着したガラス管を貫通させたゴム栓で上記(5)の投薬口を密封した。
【0043】
(実施例1)
予め供試虫および供試菌を配置した密封系内に、表1に示すヨウ化メチルの所定量をシリンジで秤量し、投薬口のシリンジ差し込み栓にシリンジの針を内部まで貫通させたのち注入し、それぞれの投薬量のデシケータを25℃にて24時間放置した。尚、デシケータ内の湿度は70%とした。なお、高湿度下におけるヨウ化メチルの燻蒸効果を評価するため、上記手順(5)のデシケーターの陶器製中板の下に精製水を浸した脱脂綿を置き、温度25℃、湿度100%の環境を調製した。
【0044】
結果の判定はコクゾウ虫の成虫に対する効果を試験終了後の成虫の致死で、蛹および卵については25℃、湿度75%の孵卵器内でその後30日までの孵化を確認することで評価した。また、黒コウジカビの殺菌効果を試験したペーパーデイスクをポテトデキストロース寒天平板培地上に移しその後7日間の増殖の確認において行い、有効性の判断は試供した虫並びに菌の100%致死をもって有効とし、ヨウ化メチルの燻蒸効果を評価検討した。また、比較として臭化メチルの有効性も同様に試験した。結果を表1に示す。
【0045】
表1に示すように、コクゾウ虫(成虫、蛹、卵)の殺虫を目的とするヨウ化メチルの最低有効投薬量は0.01mM/Lであり高湿度下においてもその効果はかわらなかった。また、黒コウジカビの殺菌を目的とするヨウ化メチルの最低有効投薬量は0.50mM/Lであった。
【0046】
【表1】
Figure 0003586384
【0047】
(実施例2)
予め供試虫および供試菌を配置した密封系内にヨウ化メチルの0.02mM/Lまたは0.2mM/Lを投薬した後、他の薬剤成分の所定量をさらに投薬してヨウ化メチルとの共存による燻蒸効果を評価した。各投薬量のデシケータは、温度25℃で24時間放置したものである。尚、デシケータ内の湿度は65〜75%であった。結果を表2に示す。
【0048】
コクゾウ虫成虫においては試験した投薬系全てで100%の致死を確認した。その一方、黒コウジカビに対する殺菌効果は、ヨウ化メチル単剤では殺菌不可能な投薬量下においてもヨウ化メチルと殺菌効果を期待した種々薬剤殺菌との併用によって、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド、グルタルアルデヒド、プロピレンオキシド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタアクロレイン、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、アリルアルコール、ブチルアルコールあるいは過酸化水素おいて殺虫と殺菌を目的とした場合の投薬量を低減することができた。
【0049】
【表2】
Figure 0003586384
【0050】
(実施例3)
予め供試虫および供試菌を配置した密封系内に表3に示す被試験物質を投薬し、燻蒸効果を検討した。各投薬量のデシケータを温度25℃で24時間放置した。尚、デシケータ内の湿度は65〜75%であった。結果を表3に示す。コクゾウ虫に対する殺虫効果は、測定した濃度範囲においてヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化nプロピルおよびヨウ化nブチルにおいて殺虫効果が認められた。
【0051】
【表3】
Figure 0003586384
【0052】
【発明の効果】
(1) 実施例に示されるごとく、本発明の燻蒸方法は高湿度下においても確実な殺虫を果たし、ヨウ化アルキルを他の薬剤と共存することで殺虫のみならず殺菌にも十分な効果を期待できる。このため文化財保護環境下で文化財を変質などすることなく優れた殺菌、殺虫効果を得ることができる。
【0053】
(2) 本発明では、文化財の燻蒸効果判定の指標生物であるコクゾウ虫に対する効果を、温度25℃、湿度70%、24時間暴露の良好な密封系でヨウ化アルキルの最低有効投与量がヨウ化メチル0.01mM/Lであって、従来品の臭化メチルの0.02mM/Lと比較しても優れた殺菌効果を奏することが判明した。
【0054】
(3) 実施例3から、ヨウ化メチルを単独で使用すると黒コウジカビへの最低有効投与量は0.5mM/L程度であるのに対し、実施例2で示すように、ヨウ化メチルと他の殺菌剤を併用すると、より低濃度で優れた殺菌効果を得ることができた。
【0055】
(4) 本発明は文化財の特殊性に配慮した機能的な燻蒸方法であり、湿度管理を行うことができ、被燻蒸物への損傷を少なくすることができる。隔離容器を使用することにより、少スペースで燻蒸でき、これにより使用薬剤を少量化させかつ薬剤の回収が簡便に行える。上記したごとく、ヨウ化アルキルと他の薬剤成分との併用でより一層の使用薬剤を少量化することができる。加えて、ヨウ化アルキルと他の薬剤成分との組成により広範囲の殺生物効果を得ることができる。

Claims (11)

  1. 文化財を隔離容器に収納し、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤で、ヨウ化アルキル濃度0.02〜1.0mM/Lで燻蒸することを特徴とする文化財の燻蒸方法。
  2. 前記燻蒸剤が、前記ヨウ化アルキルおよび、殺虫剤または殺菌剤との併用であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記燻蒸剤におけるヨウ化アルキルの濃度が、5〜95wt%である請求項1記載の方法。
  4. 前記燻蒸剤を気化装置で気化させ燻蒸することを特徴とする請求項1〜3記載の方法。
  5. 前記ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤および、殺虫剤または殺菌剤とをそれぞれ単独で順次気化させ燻蒸することを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記殺虫剤が、クロルピクリン、二硫化炭素、フッ化サルフリル、臭化メチルおよび青酸よりなる群から選択される1種類以上の物質である請求項2または5記載の方法。
  7. 前記殺菌剤が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタアクロレイン、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、アリルアルコール、ブチルアルコールおよび過酸化水素よりなる群から選択される1種類以上の物質である請求項2または5記載の方法。
  8. 前記ヨウ化アルキルが、炭素数1から4のアルキルモノヨードである請求項1〜7記載の方法。
  9. 文化財の構成部分を材質別に分け、材質毎に隔離容器に収納し、燻蒸することを特徴とする請求項1記載の方法。
  10. 燻蒸条件が、温度0〜40℃、湿度5〜100%であることを特徴とする請求項1〜9記載の方法。
  11. 前記文化財が、文化財保護法第2条に規定する第1号に規定する有形文化財および第3号に規定する民俗文化財であって、建築物を除いたものである請求項1〜10記載の方法。
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