JP2887746B2 - 木材害虫殺虫用くん蒸剤及び木材くん蒸方法 - Google Patents
木材害虫殺虫用くん蒸剤及び木材くん蒸方法Info
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Description
蒸剤及び木材くん蒸方法に関する。さらに詳しくは、有
効成分のメチルイソチオシアネート(CH3N=CS;
以下、MITCと略記することがある。)を液化高圧ガ
スに溶解してなる木材害虫殺虫用くん蒸剤及びその殺虫
用くん蒸剤を使用する木材くん蒸方法に関する。
観点から必ず検査され、必要に応じてくん蒸等により有
害な動植物を駆除することが義務付けられており、日本
国内に生息しない有害動植物の侵入繁殖の防止が図られ
ている。輸入木材についても同様の観点から輸入木材検
疫要項により消毒方法の基準が示され、消毒が実施され
ている。このために現在実用化されている輸入木材の処
理方法は、臭化メチル等の薬剤による処理方法、水中に
水没させて処理する物理的方法及びそれらを組み合わせ
た方法が実施されているが、これらのうちでもっとも頻
繁に実施されているのは臭化メチルを用いたくん蒸方法
である。この方法はきわめて簡便で、効果も確実なた
め、広く実用に供されている。しかし臭化メチルはオゾ
ン層破壊の原因物質の一つであり、近年地球環境保護の
観点から、臭化メチルの使用を規制しようとする動きが
強まっている。
模天幕被覆中に液剤を散布することにより分解してMI
TCを発生する農薬がある。これは松くい虫(マツノマ
ダラカミキリ幼虫およびマツノザイセンチュウ)の寄生
するマツ材のくん蒸処理として使用されている。この場
合の投薬量は0.5〜1.0リットル/m3で、1〜2週間の
被覆期間が必要である。しかし、MITCガス自体を投
薬する剤とは異なるため、液体を散布した後MITCガ
スが発生するまでに時間がかかり、被覆期間が長いた
め、検疫用くん蒸のように短時間で大空間内の木材を処
理するには不向きであると考えられている。このよう
に、MITCの優れた殺虫効果を利用する農薬は既に市
販されているが、これまで大規模かつ短時間にくん蒸す
ることを目的としたガス製剤としては、全く知られてい
ない。
課題は、臭素含有化合物等のオゾン層破壊の原因物質を
含まず、あるいは使用量を削減し、しかも少量で短時間
のうちに大規模の処理ができる新たな木材害虫殺虫用く
ん蒸剤および木材のくん蒸方法を提供することにある。
を解決すべく、これまで輸入木材のくん蒸剤としては用
いられていない各種化合物について検討したところ、常
温で固体であり気温が低い場合はガス化しにくいためく
ん蒸剤としては不向きと考えられていたMITC(融
点:35〜36℃、沸点119℃)は、炭酸ガスなどの
液化高圧ガスによく溶解することを確認した。この溶解
液を液化高圧ガスの圧力を利用して、高圧容器(ガスボ
ンベ)からくん蒸被覆内に噴霧すると、MITCが微粒
子状結晶となって噴霧され、気温が高いほど短時間のう
ち昇華し、被覆内にガスが充満する。その結果、24〜
48時間のくん蒸により、木材の樹皮下および木材内に
穿入している昆虫を駆除することができ、輸入木材のく
ん蒸剤として充分利用可能であることを確認して本発明
を完成するに至った。
液化炭酸ガスと他の液化高圧ガスとの混合物に溶解して
なる木材害虫殺虫用くん蒸剤、 2) 他の液化高圧ガスが臭化メチル、フッ化スルフリ
ルまたはこれらの混合物から選択される前記1に記載の
木材害虫殺虫用くん蒸剤、 3) メチルイソチオシアネート液化炭酸ガスとの混合
割合が、前者2〜95重量%、後者98〜5重量%であ
る前記1または2に記載の木材害虫殺虫用くん蒸剤、 4) メチルイソチオシアネート液化炭酸ガスとの混合
割合が、前者10〜50重量%、後者90〜50重量%
である前記3に記載の木材害虫殺虫用くん蒸剤、 5) 液化炭酸ガスまたは液化炭酸ガスと他の液化高圧
ガスとの混合物に溶解しているメチルイソチオシアネー
トを液化炭酸ガスまたは他の液化高圧ガスの圧力を利用
して処理室内へ噴射し木材をくん蒸することを特徴とす
る木材くん蒸方法を提供する。
おいて、くん蒸剤の有効成分として使用するメチルイソ
チオシアネートは、前述の通り、融点:35〜36℃、
沸点119℃の通常は室温で固体の刺激性物質であり、
殺菌・殺虫作用を有し、農業用の土壌処理剤として広く
使用されている。しかし、くん蒸剤として使用するには
蒸気圧が低い。そこで本発明者らは、各種液化高圧ガス
に対するMITCの溶解性を調べた。その結果、MIT
Cは炭酸ガス(液化状態の容器内の圧力約50kg/c
m2)、臭化メチル(同じく約1kg/cm2)、プロパ
ン(同じく、約10kg/cm2)、1,1,1,2−
テトラフルオロエタン(同じく、約6kg/cm2)及
びフッ化スルフリル (同じく、約18kg/cm2)に
よく溶解すること、溶解したMITCは液化 高圧ガス
の持つ圧力で吐出できるために容器から吐出すると微粒
子状に噴霧、拡散され、MITCの速やかな気化を容易
にし、検疫くん蒸の目的に使用可能であることを確認し
た。中でも、液化炭酸ガスは、低価格であること、不活
性、安定で毒性が殆どないことから有効成分が本来有す
る薬効のみの発現が期待できること、不燃性であるこ
と、圧力が高く広い空間に大量に噴霧できること等の特
長を有し極めて好ましく使用できる。
挙げて本発明を説明する。試験例1:MITCの各種ガスに対する溶解性 耐圧ガラス瓶に一定量のMITCを秤り入れたのち、下
記表1に記載した各種高圧ガスを充填し、肉眼にて溶解
性を確認し、下記の結果を得た。
度の影響を検討するため以下の試験を行った。高圧ボン
ベに濃度を変えて、MITCを液化炭酸ガスに溶解さ
せ、口径0.5mmの噴霧ノズルより噴霧したときのMI
TCの粒子径をマルバーン粒子径測定装置を用い計測し
た。その結果を表2に示す。
圧が高い程)、微粒子状のMITCが生成することが分
かる。なお、実用上、MITC含有量は2〜98重量%
で使用可能であるが、10〜50重量%が好ましく、更
に20〜40重量%が好ましい。濃度が高すぎると、充
分な噴射圧が得られず、MITCの粒子径が大きくな
り、揮発蒸散効果が低下する。また濃度が低すぎると、
所望の効果を得るために多量の炭酸ガスを必要とし効率
的でない。
を調べるために以下の試験を行った。 (i)マツノマダラカミキリ材内幼虫殺虫試験:炭酸ガス
に溶解させた際に必要な薬液量を知るために以下の方法
で予備試験を実施した。すなわち、マツノマダラカミキ
リ越冬幼虫が寄生する松材(樹皮付き,長さ約30c
m,直径8〜10cm)を30リットル密封容器(デシ
ケータ)に入れ、この中にMITC原体の所定量をエタ
ノール10mlに溶かしたビーカーを入れて15±1℃
及び25±1℃にて24時間放置し、開封後7日目に幼
虫の生死を判定した。その結果をエタノール10mlの
みを気化させた対照の結果と共に表3に示す。
化量)は、処理域の温度に依って異なり、環境温度25
℃前後の場合には1.0g原体/30lの薬量で材内幼虫
を完全に殺虫できることが分かる。
30cm、直径6.7〜7.4cmのマツノマダラカミキリ卵
在中アカマツ材3本(樹皮付)を30リットル密封容器
(デシケータ)に入れ、この中にMITC原体の所定量
をエタノール10mlに溶かしたビーカーを入れて5±
1℃、15±1℃及び25±1℃にて24時間放置し、
くん蒸後、開封して10日間25℃の恒温下に保管した
後、孵化の有無を調査した。その結果をエタノール10
mlのみを気化させた対照の結果と共に表4に示す。
(%)(B)と薬剤未処理の対照の生存率(%)(A)
とから下記式により算出した。 生存率(%)=〔(生幼虫)÷{(生幼虫)+(死幼
虫)+(未孵化卵)}〕×100 補正死亡率(%)=〔{(A)−(B)}÷(A)〕×
100
(気化量)は、幼虫の場合に比べて、はるかに少なくて
よく、5℃の低温において0.1g/30lの量で充分な
効果が 得られることが分かる。
置してゾウムシ類などが寄生しているアカマツ材を、1
0個の20リットル容器(容器番号:1〜8,容器内温
度は25℃に保持)に2本ずつ入れる。各20リットル
容器の入り口下部に電気的に加熱する装置を備えた金属
板を設置し、温度を50〜60℃に設定しその上に所定
量のMITC原体をビーカーに入れたものをのせ、完全
に気化させた後容器内温度を25℃にして24時間保持
しくん蒸した。その結果を、MITC原体を処理しない
対照(容器番号9〜10)の結果と共に表5に示す。
リなど樹皮下に寄生していた昆虫は、処理区において気
化量0.54g〜1.00g/20リットル程度の薬量で全て死
亡していた。したがって、樹皮下の昆虫類は、マツノマ
ダラカミキリ材内幼虫よりも低薬量で効果があることが
分かる。なお、ゾウムシ類はマツノクロキボシゾウム
シ、ニセマツノシラホシゾウムシであり、キクイムシ類
はキイロコキクイムシであり、カミキリムシ類はヒゲナ
ガモモブトカミキリなどである。
験:シラホシゾウムシ類幼虫(主としてマツノシラホシ
ゾウムシ樹皮下越冬幼虫)が寄生する松丸太(長さ約3
0cm,直径8〜10cm)を樹皮の付いたまま3本ず
つ20リットル容器に入れる。20リットル容器のビー
カー内で、所定量のMITC原体をエタノールに溶か
し、ろ紙を立てて気化させる。これを25℃の定温庫に
入れ、24時間後に効果判定した。結果を表6に示す。
ルイソチオシアネートを利用する方法が輸入木材のくん
蒸処理法としても充分有効であることが分かる。
内幼虫の殺虫試験を行った。具体的手順は以下の通りで
ある。図1に斜視図を示すように、ビニール被覆の鉄製
のパイプ(径 2.5cm)を使用して、内容積が約0.7m3
(100cm×100cm×70cm)となる枠を作
り、所定数の材木を収納した後その外側を、厚さ0.2m
mの積層タイプのフィルムで被覆密封した。試験室内に
収納する材木は、図2(実施例1)及び図3(実施例
2)に示すような配置で、直径10〜20cm、長さ9
0cmのマツ材を18本(図2)及び17本(図3)と
し(被覆内材積約0.3m3)、被覆内にガスボンベのノズ
ルを突刺してMITCを30重量%含有する炭酸ガス製
剤を、噴射時間を変えて投薬し、投入口を密封した。噴
射時間及び薬量は表7に示す通りとした。試験室の温度
は概ね25℃に保ち(最大温度差は6〜7℃)、開封後
6日間放置して、図2及び図3のNo.1〜No.9の
マツ材について幼虫の生死を判定した。その結果を表8
及び表9に示し、またそのデータを総括した結果を表7
に示す。
124.3g/m3以上試験室内に噴射しくん蒸処理し
た場合、マツノマダラカミキリ材内幼虫はマツ材の配置
場所のいかんによらず完全に死滅していることが分か
る。
た、カシノナガキクイムシ及びその近似種のヨシブエナ
ガキクイムシの寄生するミズナラ材。なお、下記の結果
では両種を区別せずカシノナガキクイムシとして集計し
ている。 (2)アカマツ材I:ファイルキクイムシの寄生するアカ
マツ材。 (3)アカマツ材II:北海道のアカマツ材から採集したカ
ラマツヤツバキクイムシの成虫をアカマツ材に産卵さ
せ、終齢幼虫と蛹に成長したことを確認して供試した。 (4)スギ材I:茨城県内のスギ林縁に放置してヒメスギ
カミキリを寄生させたスギ材。 (5)スギ材II:栃木県で採集したスギカミキリ成虫を産
卵させ、5月に長さ30cmのスギ材に孵化幼虫を7〜
8頭接種して、終齢幼虫と蛹に成長したことを確認して
供試した。
計:0.11m3)を内容積0.5m3のくん蒸庫に収め、ガス
ボンベの投薬ノズルをくん蒸庫上部の投薬口に差し込み
MITCを30重量%含有する炭酸ガス製剤を27秒間
噴射した。製剤としての投薬量は89.0g/0.5m3であ
り、これは、MITCとしては53.4g/m3の薬量にあ
たる。薬剤噴射直後は木材の表面にMITCの白色結晶
が付着しているのが観察されたが、これらは噴射後2時
間後にはすべて昇華していた。噴射後24時間目にくん
蒸庫のガスを排気装置で屋外に排出してからくん蒸庫を
開封し、翌日まで放置した。その後、木材を飼育室に保
管した。飼育室での保管を開始してから、アカマツ材II
(供試昆虫:カラマツヤツバキクイムシ)については1
週間目に、ミズナラ材(供試昆虫:カシノナガキクイム
シ)及びアカマツ材I(供試昆虫:ファイルキクイム
シ)については5週間目に、スギ材I・II(供試昆虫:
スギカミキリ、ヒメスギカミキリ)については8週間目
に、それぞれ樹皮下及び材内の幼虫、蛹及び成虫の生死
を判定した。結果を表10に示す。なお、いずれの例に
ついても、供試材と同一条件で昆虫を寄生させた木材を
未処理のまま飼育室に保管し、割材して同種の昆虫が生
存していることを確認している。
m3の薬量でいずれの材内穿孔虫も100%殺虫できて
いる。樹皮下昆虫だけをターゲットにした場合にはさら
に薬量を減らすことが可能である。なお、スギ材につい
て判定までに8週間の期間を置いたのは、スギカミキリ
及びヒメスギカミキリについては蛹の生死の判定が困難
であるためである。8週間の期間を置いてなお羽化して
いないものは蛹期に死亡したものと判定できる。また、
カシノナガキクイムシ(ミズナラ材)は、材積当たりの
個体数が非常に多く、特に供試材の辺材部分に多く観察
されるが、一部の個体は最も深い部分(心材付近)にも
及んでいる。事前に行ったMITCエタノール製剤によ
るくん蒸試験では、心材付近の個体は、薬量によっては
開封から暫時経過の後死亡していくという結果が得られ
ていたため、本実施例でも正確な計測を行うため開封後
5週間を経て生死の判定を行った。
開封後保管時にその致死率が高まる理由としては、保管
期間中に木材内に吸着した薬剤が効果を発揮する結果と
も考えられるが、日数の経過とともに死亡した幼虫等は
黒く変色し腐敗に至るので、材内の環境条件の変化が関
係しているとも思われる。例えば、MITCには殺菌効
果も知られているので、幼虫の餌となるアンブロシア菌
にMITCが作用して幼虫等の栄養状態が低下すること
が考えられる。また、カシノナガキクイムシは成虫が幼
虫等の世話をする習性を有するため、材内成虫が死亡し
た場合に幼虫等の成育に支障を来たして死に至ることも
考えられる。
試験したが、これらの例と同様に処理を行えば、試験例
3(iii)及び(iv)に示すような、あるいはその他の害虫
類の駆除にも本発明のくん蒸剤は有効である。
メチルイソチオシアネートを液化高圧ガスに溶解してな
る木材害虫殺虫用くん蒸剤を液化高圧ガスの圧力により
噴霧し微粒子状態にて導入してメチルイソチオシアネー
トを効率よく気化させて木材をくん蒸する方法及びくん
蒸剤を提供したものであり、臭素含有化合物等に代わる
オゾン層破壊の原因物質を用いない、あるいは使用量を
削減させた木材のくん蒸方法及びくん蒸剤として利用可
能である。
ん蒸剤を用いた中規模試験を実施した試験室の斜視図で
ある。
ん蒸剤を用いた中規模試験番号1における木材の配置状
態を示す図である。
ん蒸剤を用いた中規模試験番号2における木材の配置状
態を示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 メチルイソチオシアネートを液化炭酸ガ
スまたは液化炭酸ガスと他の液化高圧ガスとの混合物に
溶解してなる木材害虫殺虫用くん蒸剤。 - 【請求項2】 他の液化高圧ガスが臭化メチル、フッ化
スルフリルまたはこれらの混合物から選択される請求項
1に記載の木材害虫殺虫用くん蒸剤。 - 【請求項3】 メチルイソチオシアネートと液化炭酸ガ
スとの混合割合が、前者2〜95重量%、後者98〜5
重量%である請求項1または2に記載の木材害虫殺虫用
くん蒸剤。 - 【請求項4】 メチルイソチオシアネートと液化炭酸ガ
スとの混合割合が、前者10〜50重量%、後者90〜
50重量%である請求項3に記載の木材害虫殺虫用くん
蒸剤。 - 【請求項5】 液化炭酸ガスまたは液化炭酸ガスと他の
液化高圧ガスとの混合物に溶解しているメチルイソチオ
シアネートを液化炭酸ガスまたは他の液化高圧ガスの圧
力を利用して処理室内へ噴射し木材をくん蒸することを
特徴とする木材くん蒸方法。
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