JP3585172B2 - 青果物の鮮度保持システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、果物、野菜、花卉などの青果物の鮮度を保持するためのシステムに関する。より詳細には、生竹の抽出液を用いて青果物の鮮度を保持する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
果物、野菜、花卉などの青果物を、新鮮なまま一年中安定して供給することに対する社会的ニーズは高く、青果物を新鮮なまま長期間保持できるとなれば、大きな経済効果をもたらす。
しかし、多くの青果物は、特定の時期しか収穫できず、しかも、収穫後は、自ら放出するエチレンガスなどの影響により、鮮度が劣化して長持ちしない。
【0003】
鮮度を保持するための方法として、エチレンガス分解能を有する過マンガン酸カリウムを保管中に共存させて果物や野菜などから放出されるエチレンガスを分解除去する方法(特許文献1)が提案され、一部実用化されているものの、過マンガン酸カリウムは、飲み込んだり吸い込んだりすると有毒で、粘膜、組織を強く刺激するという安全性の問題点がある。また、包装材にゼオライトや活性炭などの物理吸着による吸着剤を配合して放出されるエチレンガスを吸着除去する方法(特許文献2)が提案されているが、十分な効果は奏されていないし、また、ゼオライトや活性炭を用いると、果物や野菜の水分まで除去してしまい、青果物が収縮軟化してしまうという欠点もある。さらに、銅系抗菌剤を共存させて野菜を冷蔵庫内に保存する方法(特許文献3)も提案されているが、実際上充分な効果は得られていない。さらにまた、未熟の、すなわち青い状態のバナナやキウイなど、エチレンガスを吸収する作用のある果物とともに輸送して発酵を抑制する方法(特許文献4)も提案されているが、エチレンガスを吸収する果物自体も発酵が進むために、長時間の効果は期待できない。また、この方法では、別種の果物を混合することで香りが混合してしまい、風味を損なう恐れもあった。
【0004】
そこで、本発明者は、青果物を長時間にわたって鮮度保持するために用いることの出来る人体に安全な手段として、最近、生竹の抽出液を用いる方法を開発して特許出願した(特許文献5)。この方法は、生竹抽出液によるエチレン吸着能を利用するものであって、生竹抽出液を担持したフィルタを用いて、保管庫などの雰囲気のエチレンガス濃度を制御するものである。より詳細には、この方法は、雰囲気のエチレンガス濃度を測定し、送風機を稼動させてエチレンガスを含む雰囲気ガスをフィルタに吸着させたり、逆に放出させたりすることによって、雰囲気のエチレンガス濃度を制御するものである。この方法は、雰囲気のエチレンガス濃度を増加させることも減少させることもできるので、青果物の鮮度保持にも逆に青果物の熟成促進のためにも使える利点を有するが、保管庫によっては、そのようなフィルタを設置することができないことがある。
【0005】
また、青果物を運送あるいは保管するために、冷蔵が一般的に行われているが、いったん冷蔵した青果物を、常温に戻すと、リバウンドにより却って熟成が進んでしまうという欠点があるので、冷蔵保管は好ましくない。
さらにまた、青果物を呼吸させないように、二酸化炭素や窒素ガス中に貯蔵する鮮度保持方法(CA法;Control Atmosphere)もあるが、これもリバウンドがあり好ましくない。
【0006】
さらにまた、冷蔵庫などにおいて、酸性水、オゾン水、次亜塩素酸水などを噴霧することによって、青果物などの殺菌を行うと同時に鮮度を保持しようとする方法もあるが(特許文献6、7)、これらの酸性水、オゾン水、次亜塩素酸水などの噴霧は、やはり人体への安全性を考えると好ましいものではない。
【0007】
【特許文献1】
特開昭54−117060号公報
【特許文献2】
特開昭64−31838号公報
【特許文献3】
特開平11−211342号公報
【特許文献4】
特開平11−32668号公報
【特許文献5】
特許第3250196号公報
【特許文献6】
特開2000−316956号公報
【特許文献7】
特開2000−220949号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、果物、野菜、花卉などの青果物の鮮度保持に関するこれらの従来技術の問題点を解決しようとするものであって、コンテナなどによる青果物の輸送や、倉庫における保管などに当たって、青果物を長時間にわたって鮮度保持するための安全なシステムを提供することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、生竹の抽出液を用いる方法をさらに鋭意研究した結果、フィルターに換えて生竹抽出液を噴霧すること、および、その噴霧を青果物の糖度に応じてフィードバック制御することによって、上記課題が達成できることを見出した。
また、本発明者らは、生竹抽出液による青果物の鮮度保持を研究していたところ、生竹抽出液にはエチレンガスの吸着能だけでなく、防カビ効果および抗菌効果を有することも見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)青果物の鮮度を保持する方法において、青果物の糖度を測定し、該糖度測定値に応じた量の生竹抽出液を青果物保管庫内に噴霧することを特徴とする青果物の鮮度保持方法、
(2)糖度測定を赤外線センサーによって行う上記(1)の鮮度保持方法、
(3)生竹抽出液の噴霧を超音波噴霧装置によって行う上記(1)または(2)に記載の方法、
(4)糖度測定器と生竹抽出液の噴霧装置とを含むことを特徴とする生鮮品の鮮度保持装置、
(5)糖度測定器が赤外線糖度計である上記(4)の装置、
(6)噴霧装置が超音波噴霧装置であることを特徴とする上記(4)または(5)の装置、
(7)青果物を抗菌・防カビする方法において、生竹抽出液を青果物保管庫内に噴霧することを特徴とする方法、
(8)生竹抽出液を有効成分とする青果物の防カビ剤、及び
(9)生竹抽出液を有効成分とする青果物の抗菌剤、
に関するものである。
【0011】
本発明は、コンテナや倉庫においてフィルタを設置できないような場所でも利用でき、しかも、青果物を常温で鮮度保持することができる。さらに、本発明は、生竹の抽出液を用いるので、人体に安全であり、かつ、液体を噴霧するので、水分減少がなく青果物の収縮軟化を防ぎ硬度を維持することができ、また、保管庫などの湿度調整効果も併せて奏することもできる。さらにまた、本発明では、糖度を常時モニターすることによって、生竹抽出液の噴霧を制御するので、必要なときのみに生竹抽出液を噴霧でき、無駄が無く低コストで青果物を鮮度保持することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明において、生竹の抽出液とは、生竹から抽出により得た液体をいう。抽出媒体は、生竹中の酵素成分を抽出できるものならいずれでも良いが、アルコール、特にエタノールが好ましい。本発明の生竹の抽出液としては、生竹を粉末にして、エタノールで抽出して得られる液体が最も好ましい。本発明の以下の試験においては、生で青い孟宗竹粉末1kgを容器に入れ、4L(リットル)のエタノールで、3時間攪拌抽出して得た抽出液を用いた。
【0013】
本発明においては、青果物を保管するコンテナや倉庫などの保管庫に生竹抽出液を噴霧することによって、青果物の鮮度を保持することを特徴とするが、生竹抽出液の噴霧は、青果物の熟成度に応じて行う。出荷時期より、あまりに早期に熟成が進むと、消費者の手元に届くころには、腐敗が進むことが考えられるため、熟成度をモニターしながら、生竹抽出液の噴霧を調節する。
青果物の熟成度は、その質量、呼吸量、庫内温度によってモニターすることも出来るが、本発明では、糖度をモニターすることによって、噴霧を制御する。消費者は、果実に糖度を中心とする甘さを求め、これを美味しい果実とすることが多いので、これを直接モニターして指標とするのが最も好ましい。しかも、糖度は、市販の赤外線糖度計によって非破壊的に簡便に測定することができるという利点も有している。
【0014】
本発明の鮮度保持方法および装置の概略を図1に示した。図1において、コンテナや倉庫などの保管庫(1)に保管される青果物(2)の糖度を糖度測定器(3)で測定する。糖度測定器(3)で測定した糖度測定値を基に、コンピューター(4)で超音波噴霧器(5)の超音波発振強度を制御する。
【0015】
図1に示すような鮮度保持システムを用いて、メロンの鮮度保持試験を行った結果を図2に示す。この試験では、40L(リットル)の保管庫に、18ml/hr、1日に1時間の条件で生竹抽出液を噴霧した。噴霧に用いた超音波噴霧器は、(株)ミクニ製パーソナル加湿器で、DC12V、300mAで噴霧した。糖度測定器として、(株)アステム製AMAICA(据置型)の赤外線糖度計を用いた。
図2において、横軸には経過時間、縦軸には青果物から発生する二酸化炭素の濃度を示している。果実などの青果物は、収穫後一定時期後にクライマクテリックと呼ぶ呼吸の急激な上昇があり、この呼吸上昇と前後して種々の成分変化が急速に起こり、熟成し、望まれる品質になる。つまり、呼吸活動を観察することで熟成期を知ることができる。縦軸の二酸化炭素濃度は、この呼吸活動を測るもので、太線が生竹抽出液を噴霧する場合、細線が生竹抽出液を噴霧しない対照を示している。図2から、生竹抽出液を噴霧しないとき、約6日でクライマクテリックになるが、生竹抽出液を噴霧する場合は、それより3日以上遅れてクライマクテリックに達することが分かる。同様の試験により、生竹抽出液を噴霧しないときに比べて、最高で14日遅らせることができた。
【0016】
同じ装置を用いて、メロンの保管を続けたところ、生竹抽出液を噴霧した場合には、14日経過後にも、メロンにカビが生えることはなかったが、生竹抽出液の噴霧を行わなかった場合には、カビが発生した。このことから、生竹抽出液には防カビ効果がることが分かった。
なお、生竹抽出液にはアルコールが含まれているので、この防カビ効果がアルコールに因る可能性があると考え、生竹抽出液に換えて、アルコールのみ噴霧する試験を同様に行ってみたところ、アルコールのみを噴霧したときには防カビ効果は得られなかった。
【0017】
次に、生竹抽出液による抗菌力試験を行った。
生竹抽出液を浸透させた試験片と、生竹抽出液を浸透させない無処理の試験片(対照)とをシャーレに置き、細菌の繁殖状況を試験した。結果を、表1及び表2に示す。
【表1】
Figure 0003585172
【表2】
Figure 0003585172
表1及び2から分かるように、大腸菌、黄色ぶどう球菌、サルモネラ菌、O157のいずれの細菌においても、無処理の試験片では細菌が繁殖したのに対して、生竹抽出液を浸透させた試験片では、細菌数が急激に減少しており、生竹抽出液が優れた抗菌効果を有することが分かった。
【0018】
続いて、青果物の重量、青果物の呼吸、湿度、青果物の糖度及び硬度に与える生竹抽出液の噴霧の影響を調べた。以下には、本発明の生竹抽出液の噴霧を、活性炭、エタノール噴霧、無処理(対照)と対比して試験した結果を示した。以下
の試験例では、前記
【0013】と同じ条件で生竹抽出液の噴霧を行った。
【0019】
(試験例1)
図3には、青果物の重量に与える影響を示した。メロンを保管庫に載置し、生竹抽出液を噴霧する場合、活性炭と共に保存する場合、エタノールを噴霧する場合、無処理(対照)のそれぞれについて、重量の経時変化を測定した。横軸が時間、縦軸が重量(g)である。図3から分かるとおり、生竹抽出液を噴霧する場合が一番重量減少が少なかった。活性炭が、最も重量減少が大きいのは、活性炭がメロンの水分を奪ったものと推測される。高湿であるエタノール噴霧でも、重量減少している。
【0020】
(試験例2)
図4には、メロンの呼吸を試験した結果を示した。試験例1と同様の試験で、二酸化炭素の発生量を測定した。図4には、それぞれのクライマクテリックも記した。クライマクテリックは、それぞれの場合において、メロンが傷み始めた時期と一致している。図4から分かるとおり、エタノール、無処理、活性炭、生竹抽出液の順にクライマクテリックに達する時期は遅くなっている。鮮度保持能において、その順に優位であることが分かる。
【0021】
(試験例3)
図5には、試験例1と同様の試験において、保管庫内の相対湿度及び絶対湿度の経時変化を示した。生竹抽出液とエタノールを噴霧するときには、湿度が保持されるのに対して、活性炭では、湿度が下がっていくことが分かる。
【0022】
(試験例4)
試験例1と同様の試験におけるメロンの糖度変化を図6に示した。糖度は赤外線糖度計によって測定した。図6から分かるように、生竹抽出液と活性炭と無処理はいずれも、360時間の経過時間中、変化がなかったが、エタノール噴霧だけは、糖度が急激に上昇し異常を示した。
【0023】
(試験例5)
メロンの硬度における経時変化を図7に示した。生竹抽出液の噴霧では、硬度に殆ど変化が見られず、無処理と活性炭とではほぼ同時期に軟化し、エタノール噴霧は、生竹抽出液の噴霧と無処理及び活性炭との中間的変化を示した。
【0024】
以上のとおり、青果物の重量、青果物の呼吸、湿度、青果物の糖度及び硬度のいずれに対しても、生竹抽出液の噴霧が一番優位であることが分かった。
【0025】
以下には、メロンの鮮度保持の実施例を記載するが、本発明はこれに限られるわけではない。
【実施例】
容量40L(リットル)の保管庫にメロンを入れ、糖度計による糖度が10%になったら、噴霧を開始した。噴霧は、18ml/hrで、1日に1時間噴霧した。その結果、14日間たっても、色も形も変わらず、カビも発生しなかった。
【0026】
【発明の効果】
本発明によると、青果物を常温で安全に鮮度保持することができた。また、糖度を常時モニターすることによって、生竹抽出液の噴霧を制御するので、必要なときのみに生竹抽出液を噴霧でき、無駄が無く低コストで青果物を鮮度保持することができるという効果を奏することができた。さらに、水分減少がないので青果物の硬度も糖度も維持することができるという効果も併せて奏することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の青果物の鮮度保持システムの概略を示す。
【図2】図2は、本発明の鮮度保持システムと青果物の熟成度との関係を示す。
【図3】図3には、青果物の重量変化を示す。
【図4】図4には、青果物の呼吸の程度を示す。
【図5】図5には、本発明の鮮度保持システムの湿度に与える影響を示す。
【図6】図6には、本発明の鮮度保持システムと青果物の糖度との関係を示す。
【図7】図7には、本発明の鮮度保持システムと青果物の硬度との関係を示す。
【符号の説明】
1:保管庫
2:青果物
3:糖度測定計
4:コンピューター
5:超音波噴霧器

Claims (6)

  1. 青果物の鮮度を保持する方法において、青果物の糖度を常時測定し、該糖度測定値が一定値以上になったら生竹抽出液を青果物保管庫内に噴霧することを特徴とする青果物の鮮度保持方法。
  2. 糖度測定を赤外線センサーによって行う請求項1記載の鮮度保持方法。
  3. 生竹抽出液の噴霧を超音波噴霧装置によって行う請求項1または2に記載の方法。
  4. 糖度測定器と生竹抽出液の噴霧装置とを含むことを特徴とする生鮮品の鮮度保持装置。
  5. 糖度測定器が赤外線糖度計である請求項4記載の装置。
  6. 噴霧装置が超音波噴霧装置であることを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
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