JP3584645B2 - 水質分析計 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は廃水、用水、環境水などの水溶液試料中のTOC(全有機体炭素)やTN(全窒素)を測定する水質分析計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水質分析計は、水溶液試料中の目的成分を酸化物に変換する酸化反応部と、水溶液試料の一定量を採取して酸化反応部に注入する試料注入部と、酸化反応部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、酸化反応部からキャリアガスとともに送られてきた目的成分酸化物を検出する検出部と、その検出部の検出出力に基づいて目的成分濃度を求めるデータ処理部とを備えている。
【0003】
従来の水質分析計は、データ処理部に増幅度の異なる複数の増幅回路を備えているが、測定時にはいずれかの増幅度の増幅回路を選択し、測定の最初から最後までその選択した増幅回路の増幅度に固定して測定を行なっている。TOCやTNなど目的成分の濃度を計算するときは、その固定した増幅度での出力を一定間隔でサンプリングし、その結果を積分することにより測定時のTOC量やTN量を求めている。
積分に代えて、サンプリングした測定値のピーク値を用いてTOC量やTN量を求めることもあるが、増幅回路の増幅度を固定している点には変わりはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
増幅回路の増幅度を固定して測定していると、測定の途中で増幅回路の出力がオーバースケールしてしまうことがある。その場合はその回の測定値が全て無効となってしまい、増幅度を下げるか試料の量を減らすことにより信号値を下げた後、再度試料を供給して測定をやり直さなければならない。
逆に、測定を終えてみて測定途中でのゲイン不足で増幅回路の出力が小さすぎた場合には、測定精度が悪くなるため、増幅度を上げるか試料の量を増やすことにより信号値を上げた後、やはり測定をやり直さなければならない。
そこで、本発明は増幅回路出力のオーバースケールやゲイン不足による測定精度低下を防ぎ、しかも測定のやり直しを不要にすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の水質分析計は、検出部の検出出力に基づいて目的成分濃度を求めるデータ処理部に、検出部からのアナログ信号を異なる増幅度で増幅する複数個の増幅回路と、複数個の増幅回路の出力を順次切り換える切換え手段と、それぞれの増幅回路の出力のうちで、出力が飽和せず、かつ最も増幅度の大きいものを選択してその試料の目的成分濃度を決定する選択演算手段とを備える。
【0006】
【実施例】
図1は本発明をTOC計に適応した一実施例を表わしたものである。
サンプル容器12は流通型で、下側の入口からサンプルが流れ込み、上側の出口からサンプルが排出されていく。試料注入部14はサンプル容器12のサンプルの一定量を採取し、又は標準液23の一定量を採取して、TC(全炭素)反応部16又はIC(無機体炭素)反応部18へ切り換えて導く。TC反応部16には酸化触媒が充填されたTC燃焼管が設けられ、そのTC燃焼管を加熱するためにその外側に加熱炉が設けられている。TC反応部16にはキャリアガス供給部20から純酸素ガス、又はCOや炭化水素を除いた高純度空気が、流量制御されてキャリアガスとして供給される。TC反応部16では供給された試料中の炭素成分が全てCOに変換されてCO検出部である非分散型赤外線式ガス分析計(NDIR)22の測定セルへ導かれて検出される。
IC反応部18では無機体炭素がCOとして発生し、TC反応部16を通ってきたキャリアガスとともにNDIR22の測定セルへ導かれて検出される。
【0007】
標準液23は全炭素や無機体炭素の検量線作成用すなわち校正用にTC反応部16又はIC反応部18へ注入される。データ処理部7はNDIR22での検出出力に基づいてTOC濃度を求めるデータ処理部である。TOCは(TC−IC)として求められる。26はデータ処理結果を表示する表示部、10は外部の機器などへデータ処理結果を出力する出力回路である。
【0008】
図2はデータ処理部7を示したものである。NDIR22からのアナログ出力信号を異なる増幅度で増幅する複数個の増幅回路30a〜30cが並列に設けられている。いま、増幅回路30a〜30cの増幅度をそれぞれ×1,×5,×25であるとする。増幅回路30a〜30cの出力はマルチプレクサ32により順次切り換えられてA/D変換器34に導かれてデジタル信号に変換された後、MPU(マイクロ・プロセッサ・ユニット)36に取り込まれる。
マルチプレクサ32は切換え手段に対応するものであり、MPU36は選択演算手段の機能を実現するものである。
【0009】
図2のデータ処理部の動作を図3により説明する。従来の水質分析計のサンプリング周期をTとすると、マルチプレクサ32はT/3の周期で増幅回路30a〜30cの出力を順次採取する。図3(A)はマルチプレクサ32により切り換えられてA/D変換器34へ入力されるアナログ信号を示したものである。図3(B−1),(B−2),(B−3)は、×1,×5,×25のそれぞれの増幅度によるアナログ信号をデジタル信号に変換したものを示している。MPU36はそれぞれの増幅度の信号強度を積分する。
【0010】
この例の場合、×25の増幅度の出力でオーバースケールしており、その1段下の×5の増幅度の出力ではオーバースケールしていないので、×5の増幅度の積分結果を使って炭素量が計算される。
【0011】
本発明の動作を、さらに図4及び図5を用いて説明する。
図4はデータ採取の動作を示したものである。まず増幅度の選択を初期化(S=1)する。マルチプレクサ32では最も増幅度の低い増幅回路の出力が選択されてA/D変換器34へ導かれ、A/D変換器34でデジタル信号に変換されてMPU36に記憶される。つづいて、次の増幅度の増幅回路の出力に切り換えられ、同様にデジタル信号に変換されて記憶されていく。最も大きい増幅度の増幅回路の出力について同様にA/D変換と記憶がなされた後、次の測定時間まで待機し、次の測定時間がくれば再び最も小さい増幅度の増幅回路の出力から順次をA/D変換と記憶がなされていく。この動作は予定の測定時間が終了するまで繰り返えされる。
【0012】
図5はこのようにしてデータ取得され記憶された異なる増幅度での出力信号をもとに濃度を計算する動作を表わしたものである。時間t=0,増幅度を最大の増幅度SNに初期化する。記憶されているそれぞれの増幅度のデータに対し、最大の増幅度SNのものの信号が飽和しているか否かを判断する。飽和していれば増幅度を一段下げ、その増幅度での信号が飽和しているか否かを判断する。
【0013】
飽和していない増幅度まで下げたところで次の時刻(t+Δt)の信号に切り換え、その下げた増幅度での信号が飽和しているか否かを判断していく。
全ての時刻について判断すると、その時の増幅度が飽和をしない最大の増幅度となる。その増幅度での信号強度を積分し、炭素量に変換する。
【0014】
この例では積分演算を行なってTOCやTNの濃度を計算するようにしているが、積分値ではなく全測定時間の内のピーク値を用いて炭素量を求めるようにしてもよい。
実施例はTOC計であるが、化学発光法を利用して試料中の全窒素値を求めるTN計にも同様に適用することができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明では複数の増幅度の出力をそれぞれ記憶させておき、測定終了後に信号が飽和しない増幅度のうちの最大の増幅度の信号を用いて目的成分濃度を求めるようにした。そのため、複数の増幅回路のうちのいくつかがオーバースケールしたり、逆に出力が小さすぎた場合にも、複数の増幅度のうちで最適なものを採用することができるので、再測定の必要がなくなる。したがって、ユーザーにとってあらかじめ出力結果の目的成分濃度を推定して増幅度や試料量を決める手間がいらなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をTOC計に適応した一実施例を示すブロック図である。
【図2】一実施例におけるデータ処理部を示すブロック図である。
【図3】同実施例におけるデータ処理部の動作を示す図であり、(A)はマルチプレクサにより切り換えられてA/D変換器へ入力されるアナログ信号を示す波形図、(B−1),(B−2),(B−3)は×1,×5,×25のそれぞれの増幅度によるアナログ信号をデジタル信号に変換したものを示す波形図である。
【図4】同実施例におけるデータ採取動作を示すフローチャート図である。
【図5】同実施例におけるデータの選択演算動作を示す図である。
【符号の説明】
7 データ処理部
14 試料注入部
16 TC反応部
18 IC反応部
20 キャリアガス供給部
22 NDIR
30a〜30c 増幅回路
32 マルチプレクサ
34 A/D変換器
36 MPU

Claims (1)

  1. 水溶液試料中の目的成分を酸化物に変換する酸化反応部と、水溶液試料の一定量を採取して前記酸化反応部に注入する試料注入部と、前記酸化反応部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、前記酸化反応部からキャリアガスとともに送られてきた目的成分酸化物を検出する検出部と、その検出部の検出出力に基づいて目的成分濃度を求めるデータ処理部とを備えた水質分析計において、
    前記データ処理部は、前記検出部からのアナログ信号を異なる増幅度で増幅する複数個の増幅回路と、
    前記複数個の増幅回路の出力を順次切り換える切換え手段と、
    前記増幅回路の出力のうちで、出力が飽和せず、かつ最も増幅度の大きいものを選択してその試料の目的成分濃度を決定する選択演算手段と、を備えていることを特徴とする水質分析計。
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