JP3584203B2 - 半導体製造・検査装置用セラミック基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製品の製造装置や検査装置に用いられるセラミック基板に関し、とくに半導体製品を乾燥するために用いられるホットプレート(セラミックヒータ)やサセプター、あるいは静電チャックやウエハプローバーに用いて有用な、外部端子との接続信頼性に優れるセラミック基板についての提案である。
【0002】
【従来の技術】
半導体製品に設けられている集積回路等は、シリコンウエハー上にエッチングレジストとして感光性樹脂を塗布したのち、エッチングすることにより形成されるのが普通である。
この場合において、シリコンウエハーの表面に塗布された前記感光性樹脂は、スピンコーターなどにより塗布されているため、塗布後に乾燥する必要がある。その乾燥処理は、該感光性樹脂を塗布したシリコンウエハーをホットプレートの上に載置して加熱することにより行われている。
従来、半導体製造装置に用いられている前記ホットプレート,即ちヒータとしては、金属板(アルミニウム板)からなる基板の裏面に、発熱体を配線したものなどが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような金属製基板からなるヒータを半導体製品の乾燥に用いた場合、次のような問題があった。それは、ヒータの基板が金属製であることから、基板の厚みを15mm以上に厚くしなければならないことに起因していた。なぜなら、薄い金属製基板では、加熱に伴なう熱膨張により、そりや歪みが発生してしまい、この基板上に載置されるウエハーが破損したり傾いたりしてしまうからである。しかも、従来のヒータは厚みがあるため重量が大きく、かさばるという問題もあった。
【0004】
また、基板に取付けた発熱体に印加する電圧や電流量を変えることにより、ヒータの加熱温度を制御する場合、基板の厚みが大きいと、基板の温度が電圧や電流量の変動に迅速に追従せず、基板の温度制御特性が悪いという問題もあった。
【0005】
このような問題に対し、従来、特開平8−213152号公報では、アルミナの如きセラミック基板を利用したセラミックヒータが提案されている。
しかしながら、この従来技術では、表面電極と外部電極との接続が、基板表面に設けた“ろう材”を介して行われている。そのために、ヒータの使用中に発熱体、外部電極(端子)、セラミックそれぞれの熱膨張率差等に起因して発生する応力により、外部端子接続用ピンと発熱体とが、しばしば絶縁してしまうという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、基板としての基本的な特性である昇降温特性と吸着能力とに優れると共に、基板内に埋設されている導電体と外部端子接続用ピンとの接続信頼性に優れた半導体製造・検査装置に用いられるセラミック基板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題に対し、その克服手段として本発明では、次のような要旨構成にかかるセラミック基板を提案する。即ち、本発明は、内部に導電体が埋設された絶縁性セラミック基板に、その埋設導電体を基点として基板表面に向けて穿設された袋孔が設けられていると共に、この袋孔の孔底には、前記導電体に接して導電性接続パッドを設け、さらに、この接続パッド部に接して設けられた前記袋孔内に外部端子接続用ピンを嵌め入れることにより、前記導電体と該外部端子接続用ピンとが、この袋孔内において、その中に充填した導電性のろう材および前記導電性パッドとを介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミック基板である。
【0008】
本発明にかかる上記セラミック基板においては、前記導電体が、ヒータ用,サセプタ用の発熱体、静電チャック用,ウエハプローバ用の電極であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるセラミック基板は、ホットプレート,即ちヒータの他、サセプタや静電チャック,ウエハプローバ用の基板となるものであるが、以下はホットプレート,即ちセラミックヒータの例で説明する。
さて、そのセラミックヒータは、セラミック製の板状体,即ちセラミック基板の部分が、絶縁性の窒化物セラミック,炭化物セラミックまたは酸化物セラミックからなり、そして、この基板には、断面形状が扁平である板状の導電体、例えばヒータの場合にあっては発熱体を、該セラミック基板の内部の、厚み中心から基板厚さ方向に偏芯した位置に埋設し、しかも発熱体からの距離が遠い側にある面を作業面、例えばヒータの場合にあっては加熱面としたものである。
【0010】
本発明にかかるセラミック基板の特徴は、それがヒータである場合、絶縁性セラミック基板の内部に埋設した発熱体と外部端子とを電気的に接続するための手段として、該基板表面と内部に埋設されている発熱体との間を結ぶ袋孔(端子ピン挿入用のピン立てホール)を形成し、この袋孔内に前記外部端子接続用ピンを嵌め入れることにより、その孔底に露出する前記発熱体と直接に接続し、もしくはさらにその孔底に形成した接続パッドを介して、いわゆる基板内部において電気的に接続するようにした点の構成にある。
【0011】
例示のセラミックヒータについては、埋設発熱体を基点として非加熱面側の基板表面に向けて穿孔形成した円筒状袋孔中に、外部端子接続用ピンの一端部を嵌め入れて支持するようにしている。そのため、該外部端子(ピン)がガタつかず、また、たとえ袋孔内に形成した接続パッドを介して接続した場合であっても、たとえば外部端子に外力が加わったようなときでも該ピンや袋孔に応力の集中が起こらず、力を均等に分散させることができる。従って、発熱体やセラミック基板自体にクラックが発生するのを阻止できるようになり、また、外部端子の脱落防止に効果がある。
【0012】
前記セラミック基板の素材としては、窒化物セラミック,炭化物セラミックまたは酸化物セラミックが用いられる。この理由は、これらのセラミックは熱膨張係数が金属よりも小さく、薄くしても加熱により反ったり、歪んだりしないからである。その結果、本発明では基板自体を薄くて軽いものにすることができる。
また、このようなセラミック基板は、熱伝導率が高く、また基板自体も薄いため、該セラミック基板の表面温度が、発熱体の温度変化に迅速に応答しやすいという特性がある。即ち、該セラミック基板内に埋設した発熱体の電圧、電流量を変えると、その変化が速やかに基板加熱面の温度変化として表われるので、温度制御特性(昇降温特性)に優れるということができる。
このセラミック基板の厚みは、0.5〜5mm程度のものがよい。薄すぎると破損しやすくなるからである。
【0013】
前記窒化物セラミックの例としては、金属窒化物セラミック、例えば、窒化アルミニウム、窒化けい素、窒化ほう素、窒化チタンから選ばれる少なくとも1種以上を用いることが望ましい。
炭化物セラミックの例としては、金属炭化物セラミック、例えば、炭化けい素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステンから選ばれる少なくとも1種以上のものを用いることが望ましい。
また、酸化物セラミックとしては、マグネシア,アルミナ,ベリリア,ジルコニア,コージエライト,ムライト,チタニアから選ばれる1種以上を用いることが望ましい。
これらのセラミックの中で窒化アルミニウムが最も好適である。熱伝導率が180W/m・Kと最も高いからである。
【0014】
前記セラミック基板中には、断面形状が扁平である板状の発熱体が埋設されるが、その埋設位置は基板の中心からその厚さ方向に偏芯した位置に埋設され、そして発熱体からの距離が遠い側にある面を加熱面として構成したものが好ましい。このような構成にすると、熱の伝搬がセラミック基板全体に均一に拡散しやすく、たとえば従来のように加熱面に発熱体のパターンがそのまま加熱面に投影されて不均一な温度分布が発生するようなことがなくなる。即ち、加熱面の温度分布を均一にすることができる。
発熱体の埋設位置としては、基板の一方の面(加熱面)から50%を越え、99%まで偏った位置に埋設することが望ましい。50%以下だと、加熱面に近すぎて発熱体2のパターンに類似した温度分布が発生してしまい、逆に、99%を越えると基板1自体にそりが発生して、ウエハーを破損するからである。
【0015】
かかる発熱体の形状は、断面アスペクト比(発熱体の幅/発熱体の厚さ)で10〜5000の範囲を示すような扁平形状のものが望ましい。このような形状のものは、断面が真円形状のものや断面が正方形に近い形状をしたものよりも、加熱面の温度分布を均一なものにしやすいという特徴がある。
即ち、発熱体の断面アスペクト比が10未満では、発熱体からの上方向(ウエハー加熱面方向)への熱伝搬に対し側面方向(セラミック基板の側面方向)への無駄な熱伝搬が大きくなってしまい、しかも発熱体の配線形に類似した温度分布を示すようになる。一方、上記アスペクト比が5000を越えると、発熱体の中心付近に熱の蓄積が起こって、やはり偏った温度分布が発生してしまい、板面温度の均一性が確保できなくなる。
【0016】
より好ましい発熱体の断面アスペクト比は100〜3000である。即ち、アスペクト比が100未満では、発熱体がクラックの起点となりやすく、一方、3000を越えると製造時のグリーンシート間の焼結を阻害してグリーンシート間に界面ができ、これが起点となってクラックが生じるからである。なお、こうしたアスペクト比をもつ発熱体の場合、セラミック基板の耐衝撃温度ΔT(水中投下でクラックや剥離が発生する温度)を150℃以上にする上でも有効に作用する。
【0017】
このような発熱体2は、具体的には図1,図2に示すように、セラミック基板1全体の温度を均一にする上で、たとえば同心円状の配線パターンとすることが好ましく、その厚さは、前記アスペクト比の範囲内において、1〜50μm、幅は5〜20mmの扁平な板状にすることが好ましい。そして、上記範囲内であれば、断線等を防止する目的で発熱体の相対的な厚みを厚くすることは可能である。厚さ、幅をこのように限定する意味は、抵抗値を制御する上で、この範囲が最も実用的だからである。
また、この発熱体2の構造(厚さ,幅)を上記のように限定する他の理由は、発熱体自体の幅を拡げる必要があることに対応している。即ち、発熱体2を基板1の内部に埋設した場合、加熱面1aと発熱体2との距離が短くなると表面の温度均一性が低下するため、幅広にすることが有効になるからである。
【0018】
なお、発熱体2は基板内部に埋設されるものであるから、基板材料である窒化物セラミック等との密着性をあまり考慮する必要がなくなり、W,Moなどの高融点金属、WやMoなどの炭化物の使用が可能になり、ひいては抵抗値を高くすることができる。なお、抵抗値は、発熱体2を薄く、細くするほど大きくなる。
【0019】
この発熱体2は、扁平な板状体である限り、断面が方形、楕円、紡錘、蒲鉾形状のいずれでもよい。扁平な板状体を採用した理由は、内部に発熱体を設ける場合は、扁平形状の方が加熱面に向かって放熱しやすいため、加熱面の偏った温度分布ができにくいからである。なお、発熱体の断面が扁平でも螺旋コイル形状のものは断面が円形状と同じ熱伝搬効果を示すので本発明には含まない。
【0020】
この発熱体2は、基板1厚み方向に複数層にわたって配設してもよい。この場合は、各層のパターンは、平面からみて、相互に補完するような位置に埋設されることが好ましく、加熱面のどこかが必ずいずれかの層のパターンがカバーしているような状態に埋設されるようにする。例えば、互いに千鳥模様の如き配置になっている構造である。
【0021】
本発明において、前記発熱体を基板1の所定の位置に埋設する方法としては、金属粒子等を含む導電ペーストを積層するグリーンシートの1つに、塗布、印刷することなどによって形成することができる。その導電ペーストは、導電性を確保するための金属粒子または導電性セラミックの他、樹脂、溶剤、増粘剤などを含むものが一般的である。
金属粒子としては、W、Moから選ばれる少なくとも1種以上がよい。これらの金属は比較的酸化しにくく、発熱するに十分な抵抗値を有するからである。また、導電性セラミックとしては、W,Moの炭化物から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。
これら金属粒子あるいは導電性セラミックの粒径は、0.1〜100μmであることが望ましい。微細すぎると酸化しやすく、大きすぎると焼結しにくくなり、抵抗値が大きくなるからである。
【0022】
導電ペーストに使用される樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などがよい。また、溶剤としては、イソプロピルアルコールなどが使用される。増粘剤としては、セルロースなどが挙げられる。
【0023】
なお、本発明に係るセラミック基板では、発熱体をセラミック基板内部に形成するので、発熱体表面が酸化されることがない。このため、該発熱体表面を酸化防止剤などで被覆する必要はない。
【0024】
本発明では、セラミック基板1の内部に発熱体2を埋設することになるが、この場合、外部の端子と接続するために、上述したように、セラミック基板1の非加熱面側表面から発熱体2に向けて接続用ピン挿入のための袋孔5を穿設することを基本としている。さらに、それに加えて、該発熱体2に接して該袋孔5の孔底に接続パッド4を設け、この接続パッド4を介して外部端子接続用ピン3と発熱体2とを接続するようにしてもよい。
なお、前記接続パッド4は、該基板1の加熱面とは反対側にある表面から発熱体2に向けて穿設した袋孔(スルーホール,ビアホール)5の孔底中に、WやMo,Niのペーストなどを充填することにより形成することができる。
この袋孔5ならびに接続パッド4の直径は、0.1〜10mmの大きさにすることが好ましい。つまり、袋孔5や接続パッド4の大きさがこの程度であれば、ピンの損壊や断線を防止しつつ、さらに発熱体や基板のクラックや歪みを防止する上で効果的だからである。
【0025】
上述したところからわかるように、本発明の特徴は、かかる発熱体2と外部端子との接続を、該発熱体2に接して露出した状態にある袋孔5の孔底に外部端子接続用ピン3を嵌め入れ、いわゆる基板内部において、この両者の電気的な接続がなされるようにしたことにある。とくに、その接続を確実にするために、袋孔5内に、金ろうあるいは銀ろうなどの高融点ろう材13を充填すると共に、前記接続用ピン3を挿入することにより行う点にある。
前記金ろうとしては、Au−Ni合金が望ましい。Au−Ni合金は、タングステンとの密着性に優れるからである。この金ろうにおけるAu/Niの比率は81.5〜82.5Au/18.5〜17.5Niのものが望ましい。また、このAu−Ni金ろう層の厚さは、接続を確保するために0.1〜50μm程度にすることが望ましい。このような金ろうは、10−6〜10−5Pa×1000℃という高温・高真空下でも、Au−Cu合金のような劣化がないので好ましい材料といえる。
【0026】
本発明では、必要に応じてセラミック基板1に熱電対6を埋め込んでおくことができる。この熱電対6により該セラミック基板1の温度を測定し、そのデータをもとに電圧、電流量を変えて、該基板の温度を制御することができるからである。
【0027】
セラミックヒータの使用形態においては、図2(a)に示すように、セラミック基板1に貫通孔7を複数設け、その貫通孔7に支持ピン8を挿通させ、基板1の加熱面側に突出した該支持ピン8頂部に、上記加熱面に対向させて半導体ウエハー9等を支持し、加熱乾燥する。
なお、この使用形態については、支持ピン8を上下動させて半導体ウエハー9を図示しない搬送機に渡したり、搬送機から半導体ウエハー9を受け取ったりすることもできる。
【0028】
次に、上記セラミックヒータの製造方法について説明する。
(1)窒化物セラミック、炭化物セラミックなどのセラミックの粉体をバインダーおよび溶剤と混合してグリーンシート(生成形体)を得る工程:
この工程の処理において、かかるセラミック粉体としては窒化アルミニウム、炭化けい素などを使用でき、必要に応じてイットリアなどの焼結助剤などを加えてもよい。上記バインダの例としては、アクリル系バインダ、エチルセルロース、ブチルセロソルブ、ポリビニラールから選ばれる少なくとも1種以上が望ましい。上記溶媒の例としては、α−テルピオーネ、グリコールから選ばれる少なくとも1種以上が望ましい。これらを混合して得られるペーストを、ドクターブレード法でシート状に成形してグリーンシートを製造する。
得られるグリーンシートには、シリコンウエハー用の支持ピン8を挿通するための貫通孔7や熱電対を埋め込む凹部10を開口しておくことができる。これらの貫通孔7や凹部10は、パンチング法などを適用して形成することができる。グリーンシートの厚さは、0.1〜5mm程度がよい。
【0029】
(2)グリーンシートに発熱体となる導電ペーストを印刷する工程:
この工程の処理において、前記グリーンシート上の発熱体形成部分に金属ペーストあるいは導電性セラミックの如きからなる導電性ペーストを、厚さ5〜40μmで幅0.5〜12μmの形状となるように塗布し、または印刷する。
これらの導電性ペースト中には金属粒子あるいは導電性セラミック粒子が含まれており、このような金属粒子としてはタングステンまたはモリブデンが、また導電性セラミック粒子としてはタングステンまたはモリブデンの炭化物が最適である。酸化しにくく熱伝導率が低下しにくいからである。
タングステン粒子またはモリブデン粒子の平均粒子径は0.1〜5μmがよい。大きすぎても小さすぎてもペーストを印刷しにくいからである。
このようなペーストとしては、金属粒子または導電性セラミック粒子85〜97重量部、アクリル系、エチルセルロース、ブチルセロソルブ、ポリビニラールから選ばれる少なくとも1種以上のバインダー1.5〜10重量部、α−テルピオーネ、グリコールから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒を1.5〜10重量部混合して調整したタングステンペーストまたはモリブデンペーストが最適である。
【0030】
(3)工程(2)で得られた発熱体2用の導電ペースト印刷グリーンシートと、工程(1)と同様の工程で得られたペーストを印刷していないグリーンシートとを各々少なくとも1枚以上積層する工程:
この工程において、2種類のグリーンシートを各1層以上積層する場合は、(2)のペーストつきグリーンシートの上側(加熱面側の意味)に積層されるグリーンシートの数を、下側に積層される(1)のグリーンシートの数よりも少なくして、発熱体2の埋設位置を厚さ方向に偏芯させることが重要である。具体的には、上側に20〜50枚、下側に5〜20枚を積層する。
【0031】
(4)上記のようにして得られたグリーンシート積層材に対し、袋孔と、必要に応じ導電性パッドとを形成する工程:
この工程では、セラミック基板1の非加熱側の表面から、前記発熱体2に向けて穿孔することにより袋孔5が形成される。この袋孔5の孔底には、必要に応じ、該発熱体2に隣接して接続パッド4部を形成してもよい。
さらに、かかる袋孔5の内壁面の少なくともその一部に導電体を形成してもよい。例えば、この袋孔5の外まわりの少なくとも3か所に、図4に示すような導電性支持部材12を等間隔に設ける。そして、これらの導電性支持部材12を袋孔5の内壁面に露出させ、この袋孔5に挿入される外部端子接続用ピン3との電気的な接続がこの導電性支持部材12を介しても行われるように構成する。
【0032】
(5)上記グリーンシート積層体を加熱加圧してグリーンシートおよび導電ペーストを焼結し、セラミック基板、発熱体ならびに接続パッドを形成する工程:
この工程において、加熱の温度は、1000〜2000℃で、加圧は100〜200kg/cm2で不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素などを使用できる。
【0033】
(6)最後に、発熱体2に接して直接設けられた袋孔5、またはその孔底にある接続パッド4部に、金ろうとしてAu−Ni合金ペーストを印刷した後、外部端子接続用ピン3を深く挿入したのち、加熱して前記ペーストをリフローする。加熱温度は200〜500℃が好適である。さらに、必要に応じて凹部11に熱電対6を埋め込むことができる。
なお、例示のセラミックヒータについては、基板のウエハー加熱面と発熱体との間に、静電チャック電極など(図示を省略)を形成しておいてもよい。
【0034】
以上、半導体製造・検査装置用セラミック基板として、ホットプレート(ヒータ)を例にとって説明した。本発明の他の実施形態としては、上記セラミックヒータのほかに、例えば、静電チャックやウエハプローバ、サセプタ等が挙げられる。
例えば、半導体製造・検査装置を構成するセラミック基板の内部に埋設する前記導電体として、静電電極を埋設する場合には、静電チャック101として機能する。
その導電体としての静電電極に用いられる導電ペースト等は、上述したセラミックヒータのものと同一のものが用いられる。
【0035】
図5は、静電チャックとして用いられるセラミック基板を模式的に示す縦断面図である。この静電チャック用のセラミック基板では、セラミック基板1の内部にチャック正負電極層52、53が埋設され、それぞれスルーホール56,57と接続され、その電極上にセラミック誘電体膜54が形成されている。
【0036】
一方、セラミック基板1の内部には、発熱体55とスルーホール58とが設けられ、シリコンウエハ等の被加熱物半導体製品9を加熱することができるようになっている。なお、セラミック基板1には、必要に応じて、RF電極を埋設してもよい。
本発明にかかるセラミック基板が静電チャックとして用いられると、導電体,即ち電極配置が優れているため、ウエハー等の吸着特性が頗る良好である。
【0037】
次に、本発明にかかる半導体製造・検査装置用セラミック基板はまた、その表面に、チャックトップ導体層を設け、内部の導電体として、ガード電極やグランド電極を設けた場合には、ウエハプローバ102として機能するものが得られる。
【0038】
図6は、そのウエハプローバを構成するセラミック基板の一実施形態を模式的に示した断面図である。
このウエハプローバでは、平面視円形状のセラミック基板1の表面に、同心円形状の溝62が形成されるとともに、この溝62の一部にシリコンウエハを吸引するための複数の吸引孔63が設けられており、上記溝62を含むセラミック基板1の大部分にシリコンウエハの電極と接続するためのチャックトップ導体層64が円形状に形成されている。
【0039】
一方、該セラミック基板1内の前記チャックトップ導体層64とは反対側の面に近い位置には、シリコンウエハの温度をコントロールするために、平面視同心円形状に配設される抵抗発熱体65が埋設されている。この抵抗発熱体65の両端には、スルーホール66を介して外部端子が接続、固定されている。
【0040】
また、この実施形態においては、該セラミック基板1の内部には、その他にストレイキャパシタやノイズを除去するために格子形状のガード電極67とグランド電極68とが設けられている。
このようなウエハプローバ102では、セラミック基板1の上に集積回路が形成されたシリコンウエハを載置した後、このシリコンウエハにテスタピンを持つプローブカードを押しつけ、加熱、冷却しながら電圧を印加して導通テストを行うことができるが、吸着特性に優れることから、検査工程における処理能力の向上を図る上で有効である。
【0041】
【実施例】
実施例1
(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ製、平均粒径1.1μm)100重量部、イットリア(酸化イットリウムのこと、平均粒径0.4μm)4重量部、アクリルバインダー11.5重量部、分散剤0.5重量部および1−ブタノールおよびエタノールからなるアルコール53重量部を混合した組成物を、ドクターブレードによって厚さ0.47mmのグリーンシートを得た。
(2)前記グリーンシートを80℃で5時間乾燥させた後、パンチングにて直径1.8mm、3.0mm、5.0mmの半導体ウエハー支持ピン8を挿入するための貫通孔7用孔、および発熱体2と外部端子接続用ピン3とを接続するための袋孔5を形成した。
発熱体2を形成するグリーンシートに下記導電性ペーストAをスクリーン印刷法を用いてパターンを描いて印刷した。印刷パターンは図1のような同心円とした。また、外部端子接続用ピン3と接続するための袋孔5には下記導電性ペーストBを印刷充填した。
(3)発熱体2となるWのペーストAを印刷したグリーンシートを中心とし、その上側(加熱面側)には、発熱体2形成用導電ペーストを印刷していないグリーンシートを37枚積層し、その反対の下側には13枚のグリーンシートを重ね合わせ、130℃、80kg/cm2の圧力で積層した。
▲1▼導電性ペーストA:
平均粒子径1μmのタングステンカーバイド粒子100重量部、アクリル系バインダー3.0重量部、α−テルピオーネ溶媒を3.5重量部、分散剤0.3重量部を混合して導電性ペーストAとした。
▲2▼導電性ペーストB:
平均粒子径3μmのタングステン粒子100重量部、アクリル系バインダー1.9重量部、α−テルピオーネ溶媒を3.7重量部、分散剤0.2重量部を混合して導電性ペーストBを調整とした。
(4)前記グリーンシート積層体を窒素ガス中で600℃で5時間脱脂し、1890℃、圧力150kg/cm2で3時間ホットプレスし、厚さ3mmの窒化アルミニウム板状体を得た。これを直径230mmの円状に切り出して内部に厚さ6μm、幅10mmの発熱体を有するセラミック製の板状体とした(図3(a))。
(5)(4)で得た板状体を、ダイアモンド砥石で研磨した後、マスクを載置し、ガラスビーズによるブラスト処理で熱電対6のための凹部11を設けた(図3(b))。
(6)さらに、前記袋孔5に接続用ピン3とともにNi−Au合金からなる金ろう13を充填し、700℃で加熱リフローしてコバール製の外部端子接続用ピン3を固着した(図3(c))。
(7)温度抑制のための複数の熱電対6を前記凹部11に埋め込み、セラミックヒータ100を得た(図3(d))。
【0042】
実施例2
実施例1と基本的に同様であるが、袋孔5内にAu:38wt%−Cu:62wt%の金ろうを用いた。
実施例3
基本的には実施例1と同様であるが、袋孔内にAu:82wt%−Cu:18wt%の金ろうを充填してピンと発熱体との接続を行った。
【0043】
本発明に適合する実施例のヒータと、その比較例のヒータとについて、室温〜600℃の昇降温試験を1000回行い、4個所の端子ピンの寿命(電気的絶縁の有無)を調べた。その結果を表1に示す。この表から明らかなように、本発明例の接続寿命が良好なことが確かめられた。
【表1】
【0044】
実施例4 (静電チャック)
(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径1.1μm)100重量部、イットリア(平均粒径:0.4μm)4重量部、アクリルバインダ11.5重量部、分散剤0.5重量部および1−ブタノールとエタノールとからなるアルコール53重量部を混合したペーストを用い、ドクターブレード法による成形を行って、厚さ0.47mmのグリーンシートを得た。
(2)次に、このグリーンシートを80℃で5時間乾燥させた後、パンチングにより直径1.8mm、3.0mm、5.0mmの半導体ウエハ支持ピンを挿通する貫通孔となる部分、外部端子と接続するためのスルーホールとなる部分を設けた。
【0045】
(3)平均粒子径1μmのタングステンカーバイト粒子100重量部、アクリル系バインダ3.0重量部、α−テルピネオール溶媒3.5重量部および分散剤0.3重量部を混合して導体ペーストAを調製した。
平均粒子径3μmのタングステン粒子100重量部、アクリル系バインダ1.9重量部、α−テルピネオール溶媒3.7重量部および分散剤0.2重量部を混合して導体ペーストBを調製した。
この導体ペーストAをグリーンシートにスクリーン印刷で印刷し、導体ペースト層を形成した。印刷パターンは、同心円パターンとした。また、他のグリーンシートに図7に示した形状の静電電極パターンからなる導体ペースト層を形成した。
【0046】
さらに、外部端子を接続するためのスルーホール用の貫通孔に導体ペーストBを充填した。上記処理の終わったグリーンシートに、さらに、WペーストAを印刷していないグリーンシートを上側(加熱面)に34枚、下側に13枚積層し、その上に静電電極パターンからなる導体ペースト層を印刷したグリーンシートを積層し、さらにその上にWのペーストを印刷していないグリーンシートを2枚積層し、これらを130℃、80kg/cm2の圧力で圧着して積層体を形成した。
【0047】
(4)次に、得られた積層体を窒素ガス中、600℃で5時間脱脂し、1890℃、圧力0〜150kg/cm2(詳細は表1)で3時間ホットプレスし、厚さ3mmの窒化アルミニウム板状体を得た。これを230mmの円板状に切り出し、内部に厚さ6μm、幅10mmの抵抗発熱体55および厚さ10μmのチャック正極静電層52、チャック負極静電層53を有する窒化アルミニウム製の板状体とした。
【0048】
(5)次に、(4)で得られた板状体を、ダイヤモンド砥石で研磨した後、マスクを載置し、SiC等によるブラスト処理で表面に熱電対のための有底孔(直径:1.2mm、深さ:2.0mm)を設けた。
(6)さらに、スルーホールが形成されている部分をえぐり取って袋孔とし、この袋孔にNi−Auからなる金ろうを用い、700℃で加熱リフローしてコバール製の外部端子59を接続した。
なお、外部端子59の接続は、図4に示すような、タングステンの支持体を3点で支持するような構造にすることが望ましい。接続信頼性を確保する上で有効だからである。
【0049】
(7)次に、温度制御のための複数の熱電対を凹部11に埋め込み、抵抗発熱体を有する静電チャック101の製造を完了した。
この静電チャックは、400℃で5000時間使用しても、外部端子の劣化が見られなかった。
【0050】
実施例5(ウエハプローバ)
(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径1.1μm)100重量部、イットリア(平均粒径0.4μm)4重量部、実施例1で得られた非晶質カーボン0.9重量部、および、1−ブタノールおよびエタノールからなるアルコール53重量部を混合して得た混合組成物を、ドクターブレード法を用いて成形し、厚さ0.47mmのグリーンシートを得た。
(2)次に、このグリーンシートを80℃で5時間乾燥させた後、パンチングにて発熱体と外部端子と接続するためのスルーホール用の貫通孔を設けた。
【0051】
(3)平均粒子径1μmのタングステンカーバイド粒子100重量部、アクリル系バインダ3.0重量部、α−テルピネオール溶媒3.5重量部および分散剤0.3重量部を混合して導電性ペーストAとした。
また、平均粒子径3μmのタングステン粒子100重量部、アクリル系バインダ1.9重量部、α−テルピネオール溶媒を3.7重量部、分散剤0.2重量部を混合して導電性ペーストBとした。
次に、グリーンシートに、この導電性ペーストAを用いたスクリーン印刷で、格子状のガード電極用印刷体、グランド電極用印刷体を印刷した。
また、外部端子と接続するためのスルーホール用の貫通孔に導電性ペーストBを充填した。
さらに、印刷されたグリーンシートおよび印刷がされていないグリーンシートを50枚積層して130℃、80kg/cm2の圧力で一体化することにより積層体を作製した。
【0052】
(4)次に、この積層体を窒素ガス中で600℃で5時間脱脂し、1890℃、圧力150kg/cm2で3時間ホットプレスし、厚さ3mmの窒化アルミニウム板状体を得た。得られた板状体を、直径300mmの円形状に切り出してセラミック製の板状体とした。スルーホール16の大きさは、直径0.2mm、深さ0.2mmであった。
また、ガード電極67、グランド電極68の厚さは10μm、ガード電極67の形成位置は、ウエハ載置面から1mm、グランド電極68の形成位置は、ウエハ載置面から1.2mmであった。また、ガード電極67およびグランド電極68の導体非形成領域の1辺の大きさは、0.5mmであった。
【0053】
(5)上記(4)で得た板状体を、ダイアモンド砥石で研磨した後、マスクを載置し、SiC等によるブラスト処理で表面に熱電対のための凹部およびウエハ吸着用の溝62(幅0.5mm、深さ0.5mm)を設けた。
【0054】
(6)さらに、ウエハ載置面に対向する面に発熱体65を形成するための層を印刷した。印刷は導電ペーストを用いた。導電ペーストは、プリント配線板のスルーホール形成に使用されている徳力化学研究所製のソルベストPS603Dを使用した。この導電ペーストは、銀/鉛ペーストであり、酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素、アルミナからなる金属酸化物(それぞれの重量比率は、5/55/10/25/5)を銀100重量部に対して7.5重量部含むものであった。
また、銀の形状は平均粒径4.5μmでリン片状のものであった。
【0055】
(7)導電ペーストを印刷したのち780℃で加熱焼成して、導電ペースト中の銀、鉛を焼結させるとともにセラミック基板1に焼き付けた。さらに硫酸ニッケル30g/l、ほう酸30g/l、塩化アンモニウム30g/lおよびロッシェル塩60g/lを含む水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴に基板を浸漬して、銀の焼結体の表面に、厚さ1μm、ホウ素の含有量が1重量%以下のニッケル層(図示せず)を析出させた。この後、基板は、120℃で3時間アニーリング処理を施した。銀の焼結体からなる発熱体は、厚さが5μm、幅2.4mmであり、面積抵抗率が7.7mΩ/□であった。
【0056】
(8)溝62が形成された面に、スパッタリング法により、順次、チタン層、モリブデン層、ニッケル層を形成した。スパッタリングのための装置は、日本真空技術株式会社製のSV−4540を使用した。スパッタリングの条件は気圧0.6Pa、温度100℃、電力200Wであり、スパッタリング時間は、30秒から1分の範囲内で、各金属によって調整した。
得られた膜の厚さは、蛍光X線分析計の画像から、チタン層は0.3μm、モリブデン層は2μm、ニッケル層は1μmであった。
【0057】
(9)硫酸ニッケル30g/l、ほう酸30g/l、塩化アンモニウム30g/lおよびロッシェル塩60g/lを含む水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴に、上記(8)で得られたセラミック基板を浸漬し、スパッタリングにより形成された金属層の表面に厚さ7μm、ホウ素の含有量が1重量%以下のニッケル層を析出させ、120℃で3時間アニーリングした。
発熱体表面は、電流を流さず、電解ニッケルめっきでの被覆はない。
さらに、表面にシアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/lおよび次亜リン酸ナトリウム10g/lを含む無電解金めっき液に、93℃の条件で1分間浸漬し、ニッケルめっき層上に厚さ1μmの金めっき層を形成した。
【0058】
(10)溝62から裏面に抜ける空気吸引孔63をドリル加工により形成し、さらにスルーホール16を露出させるための袋孔(図示せず)を設けた。この袋孔にNi−Au合金(Au:81.5重量%、Ni:18.4重量%、不純物:0.1重量%)からなる金ろうを用い、970℃で加熱リフローしてコバール製の外部端子を接続させた。また、発熱体に半田(スズ90重量%/鉛10重量%)を介してコバール製の外部端子を形成した。
【0059】
(11)次に、温度制御のための複数熱電対を凹部に埋め込み、ウエハプローバ102を得た。
このようにして得られたウエハプローバ102については、150℃で5000時間使用しても、外部端子の劣化が見られなかった。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる半導体製造・検査装置用セラミック基板は、昇降温特性(ヒータ,サセプタ)と吸着能力(静電チャック,ウエハプローバ)とに優れると共に、内部に埋設した発熱体や電極の如き導電体と外部端子との接続信頼性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】発熱体のパターンを示す模式図である。
【図2】ヒータの使用状態における従来と本発明のピン接続の模様を示す説明図である。
【図3】セラミックヒータの製造工程を表す模式図である。
【図4】端子の接続構造部分を示す斜視図である。
【図5】静電チャックの縦断面図である。
【図6】ウエハプローバの縦断面図である。
【図7】内装電極パターンの模式図である。
【符号の説明】
1 セラミック基板
2 発熱体
3 外部端子接続用ピン
4 接続パッド
5 袋孔
6 熱電対
7 貫通孔
8 ウエハー支持ピン
9 ウエハー
11 凹部
12 導電性支持部材
13 ろう材
100 セラミックヒータ
101 静電チャック
102 ウエハプローバ
Claims (2)
- 内部に導電体が埋設された絶縁性セラミック基板に、その埋設導電体を基点として基板表面に向けて穿設された袋孔が設けられていると共に、この袋孔の孔底には、前記導電体に接して導電性接続パッドを設け、さらに、この接続パッド部に接して設けられた前記袋孔内に外部端子接続用ピンを嵌め入れることにより、前記導電体と該外部端子接続用ピンとが、この袋孔内において、その中に充填した導電性のろう材および前記導電性パッドとを介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミック基板。
- 前記導電体は、ヒーター用,サセプター用の発熱体、静電チャック用,ウエハプローバー用の電極であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック基板。
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