JP3582854B2 - 糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、特に針金や金網に代わる結束材、ネット等として有用な糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、折曲げたり捻ったりした場合に元の形状に戻らない塑性変形性(塑性変形が可能であること)が要求される結束材やネットには針金及び金網が使用されている。このような結束材やネットは、例えば食品の包装、植木の結束、果実園での果実の袋結びや果実棚の作製等、種々の用途に利用されている。しかし針金や金網は、錆やすいため、特に野外での使用において耐久性に問題があるばかりでなく、錆に加えて、食品への混入、及び鋭利な先端を有するため、食品包装における安全性にも問題がある。 このような問題を解決するため、特開昭61−282416号では超高分子量の塑性変形性ポリエチレンワイヤーが提案されている。また、その製造方法として、極限粘度数[η]が4dl/g以上の超高分子量ポリエチレンを特殊なスクリュー押出機で溶融し、特定L/D比の円筒ダイ(押出ノズルは1つ)から押し出し、徐冷して1本の原糸とし、これを特定の延伸比で延伸する方法が記載されている。
【0003】
また特開平2−293407号では極限粘度数[η]が3.5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンを用いた偏平状の塑性変形性ポリオレフィンワイヤーが提案されている。このポリオレフィンワイヤーの製造方法は前記ポリオレフィンを特殊なスクリュー押出機で溶融し、特定L/D比のチューブダイ(押出ノズルは1つ)から押し出し、徐冷して1本のチューブに成形した後、これを▲1▼ 圧縮ロールで圧縮しながら、特定延伸比で延伸するか、或は▲2▼ 長尺方向に沿って複数本に切断、分割して原糸としてから同様に延伸する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前者の提案方法は超高分子量のポリエチレンを用いるため、押出機自体は超高分子量ポリエチレン用として使用されているもので、特殊なスクリュー及びダイを必要とし、押出機1台から1本の延伸糸しか得られないので、生産性が低く、汎用性に欠けている。特に、樹脂の特殊性から、その延伸には時間がかかり、この面でも生産性に欠け、安価な製品を得ることはできない。
【0005】
後者の提案方法では、分子量は若干低いものの、前者の方法と同様に超高分子量のポリオレフィンを使用するため、押出時は、いったん1本のチューブに成形した後、▲1▼の場合はそのまま圧縮状態で延伸するため、1本の延伸糸しか得られないし、▲2▼の場合は複数本の延伸糸は得られるものの、チューブを分割する工程を必要とし、製造工程が増大するので、やはり生産性に欠け、安価な製品を得ることはできない。
【0006】
本発明は、汎用ポリエチレンを原料とし、且つ従来の押出成形装置及びダイを使用することにより、高生産性を達成し得て、安価な糸状又は帯状の塑性変形性ポリエチレン材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような構成とした。即ち、本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料は、極限粘度[η]が3.5dl/g未満の汎用ポリエチレンの溶融固化物を延伸して塑性変形性が付与された延伸物からなり、塑性変形性として、前記延伸物を180度折曲げてから10分経過後の戻り角度が20度以下であり、且つ90度折曲げてから10分経過後の戻り角度が15度以下を示し、且つ最大厚み部の厚さが0.25mm以上である。
【0008】
前記可塑変形性ポリエチレン延伸物は別の観点から見ると、延伸により結晶化されていて、その断面方向における延伸倍率が中心から外側に行くほど大きく、その結果断面方向に重なる階層的な剪断面が軸方向に生じている。
【0009】
また本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法は、まず極限粘度[η]が3.5dl/g未満の汎用ポリエチレンを溶融し、原糸又は原帯状に押し出して、前記ポリエチレン溶融固化物からなる最大厚み部の厚さが1mm以上の原糸又は原帯に成形し、これを60℃以上ポリエチレンの融点未満の温度で、延伸物を180度折曲げてから10分経過後の戻り角度が20度以下であり、且つ90度折曲げてから10分経過後の戻り角度が15度以下になるまで延伸することを特徴とする。
【0010】
本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料について詳細に説明する。一般にポリエチレンモノフィラメントは、溶融紡糸法の場合、ダイから押し出された原糸を100℃程度の延伸槽中で所定の太さまで延伸して得られる。
【0011】
この場合、ポリエチレン原糸は、図1に示すように、引張応力に比例して弾性変形し、伸びが増大し、降伏点に達する。降伏点を越えると、引張応力はいったん低下した後、原糸は塑性変形性を発現し始める。降伏点以降は、伸びはいったん低下した後、原糸は徐々に延び、ついには白化し破断する。
【0012】
一方、ポリエチレン原糸の伸び(延伸性)は、延伸温度及びポリエチレンの種類(密度)によってかなり差異があるが、図2は、密度0.965の高密度ポリエチレン原糸の延伸温度による引張応力と伸びとの関係を示したものである。本発明で使用される極限粘度[η]が3.5dl/g未満のポリエチレンは、図2の高密度ポリエチレン原糸のような伸びを示すポリエチレンである。
【0013】
この図2から、温度勾配があると、延伸の効果に差が生じ、そのため構造に差が出るものと推定される。本発明は、この特性を利用し、今までいわゆる針金としての機能を有するプラスチックワイヤーとしての利用価値がないとされてきた汎用のポリエチレンを原料として、塑性変形性のあるワイヤーに延伸可能なことを見い出したことに基づくものである。
【0014】
前記延伸操作で、延伸される原糸が細ければ、原糸の表面層と芯部との温度差は小さいため、均一な延伸が可能であるが、原糸が太くなると、この温度差が大きくなって、温度勾配が断面方向に生じるものと推定される。このため、表面層と芯部との間で延伸性に差が生じ、延伸倍率を上げるに従って芯部から表面層に向かって徐々に剪断破壊が進行する。このため、結晶化した延伸ポリエチレンの断面方向に重なる剪断面が階層的に生じると考えられる。
【0015】
この様子は図3、4に示すように推定される。図3は太物ポリエチレン原糸を100℃で延伸した時の原糸の表面層と芯部との延伸性(曵糸性)の差異を模式的に示す縦断面図、図4は前記延伸性の差異による階層的な剪断破壊を模式的に示す横断面図である。これら図に示した温度は一例であり、要は表面層と芯部とで温度差が一定以上あればよい。
【0016】
この階層的な剪断面は延伸ポリエチレンの軸方向に伸び、これを曲げた時、剪断面間でずれが生じ、その間での摩擦抵抗で曲げ状態を保持するものと考えられる。前記剪断破壊は、分子間の滑り及び結晶ラメラ間を結ぶタイポリマーの一部切断及びラメラ自体の部分的破壊が進むことによるものと推定される。剪断破壊の進行と共に、白化も進行し、延伸糸に塑性変形性が発現する。
【0017】
この塑性変形性の有無自体は、実際に小角X線散乱によって確認できる。即ち、塑性変形性のない汎用ポリエチレン延伸糸の場合は、分子中に結晶ラメラが存在するX線散乱パターンが表示され、塑性変形性を発現させたポリエチレン延伸糸の場合は、分子中に結晶ラメラがないX線散乱パターンが表示される。なお、塑性変形性を発現させた延伸糸の場合、結晶ラメラが現れないのは、延伸によって結晶ラメラが破壊されるからである。
【0018】
特に切断寸前まで延伸した糸は、完全に白化され、極めて優れた塑性変形性を示す。従って、同じ太さの延伸糸でも、太い原糸から作ったものの方が細い原糸から作ったものよりも塑性変形性は優れている。あまり細い原糸を最大限の延伸比で延伸、白化させても延伸糸が細すぎては、腰が弱く、ワイヤーのような物性は発現できない。
【0019】
以上は、ポリエチレン糸の例であるが、ポリエチレンバンド(帯状ポリエチレン)の場合も同様である。この場合は、糸の太さをバンドの厚さに置き換えればよい。
【0020】
以上のような理由(腰が強く、ワイヤーのような物性を得ること)から、本発明では最終的な糸状又は帯状延伸製品の厚さ(最大厚み部の厚さとして)は原糸又は原帯に対する延伸倍率及び伸度にもよるが、0.25mm以上、実用的には0.25〜5mm、特に0.25〜3mmであることが好ましい。またこの場合の原糸又は原帯の厚さ(最大厚み部の厚さとして)は、1mm以上、実用的には1〜20mm、特に1〜12mmであることが好ましい。
【0021】
このように本発明の塑性変形性ポリエチレン材料は、糸状製品として従来のポリエチレン延伸糸よりも太いといえるが、この太物ポリエチレン延伸糸が塑性変形性を保持できるのは、図3、4からも判るように、ポリエチレン原糸の延伸性が室温から100℃付近に亘って連続的に変化するという特性を有することから、適度に太い原糸では表層部と芯部との温度差が延伸によって剪断破壊がスムースに誘発されるためであると考えられる。同様なことは帯状製品についてもいえる。
【0022】
一方、同じポリオレフィン系でもポリプロピレン原糸の場合は本発明と同じ条件で延伸しても、塑性変形性を殆ど示さない。この事実は、融点が約170℃のポリプロピレンは、この温度範囲では曵糸性の変化が融点が130℃のポリエチレン程大きくないことによるものと考えられる。
【0023】
本発明の糸状又は帯状ポリエチレン材料の塑性変形性は、具体的には図5〜6に示すように、ポリエチレン材料を180度及び90度に折曲げた時の10分経過後の折曲げ戻り角度θで評価する。この塑性変形性とは、180度戻り角度θが20度以下で且つ90度折曲げ戻り角度θが15度以下のことである。180度及び90度折曲げ時の折曲げ戻り角度θのいずれか一方、特に180度折曲げ戻り角度θが20度を越えると、十分な塑性
変形性、すなわち十分な自在形状保持性が得られない。
【0024】
次に、糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法について説明する。 この塑性変形性材料の原料として使用されるポリエチレンは、高密度ポリエチレンのような極限粘度[η]が3.5dl/g未満、好ましくは1dl/g以上3.5dl/g未満のものである。極限粘度[η]が3.5dl/g以上のポリエチレンでは、押出機1台から1本の延伸糸しか得られないか、或は製造工程が増加し、生産性が低下するので、使用できない。
【0025】
本発明では極限粘度[η]が3.5dl/g未満のポリエチレンは、単独で使用しても、或はポリプロピレン等の他のポリオレフィンと混合して使用しても、或は樹脂用として通常使用されている各種無機充填剤を添加して使用してもよい。特に充填剤を添加した場合は、ポリエチレンの剪断破壊を誘発し、塑性変形を容易にすることができる。
【0026】
このような充填剤としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫化モリブデン、酸化アンチモン、クレー、ケイソウ土、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、アスベスト、酸化鉄、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、モンモリロナイト、ベントナイト、鉄粉、鉛粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、炭素繊維、カーボンブラック等が例示できる。
【0027】
前記ポリエチレン又はこのポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物は、公知の押出機、例えば円周上に複数個のノズルを有するトーピード付円形ダイを備えたスクリュー押出機、Tダイ(先端に複数個のノズルを付けていてもよい)を備えたシート押出成形機、インフレーションダイを備えたインフレーションフィルム押出成形機、リップ部分に円形、楕円形、長方形、多角形等、所望の断面形状を持ったダイを備えた異形押出成形機等で溶融後、それぞれのダイから押し出して、最大厚み部の厚さが1mm以上の原糸又は原帯(原糸又は原帯の本数はノズルの数によって決まる)とする。なお、押出機の種類によってチューブ、シート等の形状で得られる場合は、ダイに直接、切口や回転刃を付けるなどして、押出時に、所望形状の原糸又は原帯に切断する。また、原糸はモノフィラメントでもよいし、複数本のモノフィラメントが互いに横方向に一体的につながった連糸等でもよい。
【0028】
次にこの原糸又は原帯を、必要ならば冷却後、60℃以上ポリエチレンの融点未満の温度、好ましくは60〜120℃に保持した延伸槽中で所望の塑性変形性が生じるまで延伸する。この場合、2つの延伸槽を用いて延伸を2回に分けて行ってもよい。この場合の原糸又は原帯に対する延伸倍率及び伸度(%)は、原糸又は原帯の最大厚み部の厚さ及び得られる延伸製品の最大厚み部の所望厚さによって大幅に変化するが、一般に延伸倍率は7〜16倍、伸度は50%未満である。延伸倍率が7倍未満では、伸度が50%未満でも所望の塑性変形性が得られないことがあり、また延伸倍率が16倍を越えると、伸度が50%未満でも延伸物の強度が低下するか切断する恐れがある。また、伸度が50%以上では、延伸倍率が7〜16倍の範囲でも、所望の塑性変形性が得られないことがある。
【0029】
本発明の製造方法で使用される製造装置の一例を図7に示す。この製造装置は、円周上に複数個のノズルを有するトーピード付円形ダイ2を備えたスクリュー押出機1と、冷却槽4(冷媒としては水、又はエチレングリコール等の高沸点液体を使用)と、引き取り機5と、第一延伸槽6(沸騰水のような熱媒体を含む)と、第一延伸機7と、第二延伸槽8(沸騰水のような熱媒体を含む)と、第二延伸機9とを備えている。なお、3は原糸、10は延伸製品である。冷却槽4の代わりに空気を用いてもよい。また延伸槽6、8は、エアーオーブン又はスチーム等でもよい。
【0030】
以上のようにして得られる本発明の塑性変形性ポリエチレン材料の形状例を図8〜17に示す。即ち、図8は基本的な形状を有する板状帯(延伸帯に相当する)の例であり、図9は基本的な形状を有する円形棒(延伸糸に相当する)の例である。図10以下は図9の円形棒同士、又は図8の板状帯と図9の円形棒とを組み合わせた形状例である。即ち、図10は図9の円形棒を芯として、その両側(直径方向両側)に図8の板状帯を一体的に並設した例であり、図11は図9の円形棒4本を一体的に並設した例(連糸)であり、また図12は図9の円形棒2本を芯として、その間に図8の板状帯を一体的に挿設した例である。
【0031】
更に、図13、14のように、複数本の円形棒(図13では2本、図14では3本)を芯として、各芯間に板状帯を一体的に挿設すると共に、芯全体の両側に板状帯を一体的に並設した形状でもよいし、図15のように、一体的に併設された複数本の円形棒(この図の場合は2本)の各々を芯として、芯全体の両側に板状帯を一体的に並設した形状でもよい。更に図16、17のように、少なくとも1本の円形棒を芯として、この円形棒を、円形棒よりも幅広の1枚の板状帯上に一体的に載荷した形状でもよい。
【0032】
なお、図示しないが、図9以下において、各円形棒の代わりに、断面が楕円形の棒を用いてもよい。また複数本の芯を用いた場合は、円形棒と楕円棒とを適当に組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明では、以上図示した形状の中でも、図10、13、14、15のように、少なくとも1本の芯の両側(複数本の芯を用いた場合は芯全体の両側)に板状帯を一体的に並設した形状や、図16、17のように、少なくとも1本の芯を1枚の板状帯上に載荷した形状が好ましく、特に図10、16のような形状が好ましい。
【0034】
これらの好ましい形状の可塑変形性ポリエチレン材料では、特に捻って使用した場合、芯全体に対し両側の板状帯部分が互いに食い込むように捻れるため、芯の可塑変形性と両側の板状帯部分(複数本の芯の間に板状帯を挿設した場合にはその板状帯部分も)の可塑変形性とが相乗的に作用し、芯又は板状帯をそれぞれ単独に使用したものや、これらを組み合わせたものでも両側に板状帯部分のないものに比べて優れた自在形状保持性を発現することができる。
【0035】
本発明の塑性変形性ポリエチレン材料は、そのまま単独で、或は同種材料又は他の繊維、フィルム、シート等の材料と組合せて(前記ポリエチレン材料に他のプラスチックフィルム又はシートを一体的に被覆したような複合体を含む)、包装、果樹棚等の結束材として、また自在形状保持性が要求される織物及び編物(例えば洋服の芯材、Yシャツのカラー芯材、帽子の縁部分等)として利用することができる。
【0036】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明する。
【0037】
【実施例1〜7、比較例1〜2】
極限粘度[η]が2.5dl/gのポリエチレン(東燃化学社製ポリエチレンY6013;MFR 0.50)を図7の製造装置のスクリュー押出機1で溶融し、円形ダイ2からポリエチレン原糸3(太さは表1に記載)として押し出し、この原糸3を冷却槽4に通して冷却しながら、引き取り機5で引き取り、第一延伸槽6及び第一延伸機7で一次延伸しながら、第二延伸槽8及び第二延伸機9で二次延伸し、3000デニール(0.66mmφ)の延伸糸10を製造した。
【0038】
押出機、冷却槽、延伸槽の詳細、及び押し出し条件、延伸条件等の成形条件は下記の通りである。
得られた延伸糸の引張強力、伸度、180度折曲げ戻り角度、及び90度折曲げ戻り角度を表1に示す。
【0039】
【表1】
試験方法は次の通りである。
引張強力(g/d)、伸び(%):
東洋精機製作所製インストロン型万能試験機(STRONGRAPH−R1)を用いて引張速度500mm/分、チャック間距離500mmの条件で測定。
断面方向に階層的な剪断面が存在するか否かの試験
本発明に係る延伸糸や帯を切断するのではなく、軸方向に鋏を入れ、その切り口から2本或は3本に裂く。この場合、階層的な剪断面が存在しないモノフィラメントであればその切り口から糸を裂くのは難しい。しかし、本実施例のものでは、上記試験において、するめのように複数の糸に裂くことができ、互いにずれたり剥離可能な剪断面が存在することが確認できた。
【0040】
【比較例3〜11】
押出機のダイとして0.9mmφ×100孔の円形ダイを使用し、且つ原糸径を表2に示すように変化させた他は、上記実施例と同じ方法で400デニール(0.24mmφ)の延伸糸を製造した。
【0041】
得られた延伸糸の引張強力、伸度、180度折曲げ戻り角度、及び90度折曲げ戻り角度を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、汎用ポリエチレンを原料とし、且つ従来の押出成形装置をそのまま使用できるので、安価な糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の延伸物を高生産性で提供することができる。特に糸状及び帯状の延伸物を組み合わせ、少なくとも1本の糸状延伸物を芯として、その両側に帯状延伸物を並設したものは、塑性変形性糸状延伸物と塑性変形性帯状延伸物との相乗効果により、単独のものに比べていっそう優れた自在形状保持性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエチレン原糸の引張応力と伸びとの関係を示す図。
【図2】高密度ポリエチレン原糸の延伸温度による引張応力と伸びとの関係を示す図。
【図3】太物ポリエチレン原糸を100℃で延伸した時の原糸の表面層と芯部との延伸性の差異を模式的に示す縦断面図。
【図4】図3の太物ポリエチレン原糸における表面層と芯部との延伸性の差異による階層的な剪断状態を模式的に示す横断面図。
【図5】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の180度折曲げ時の折曲げ戻り角度θの測定法についての説明図。
【図6】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の90度折曲げ時の折曲げ戻り角度θの測定法についての説明図。
【図7】本発明方法を実施するための一例の製造装置図。
【図8】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の一例の形状を示す斜視図。
【図9】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の一例の形状を示す斜視図。
【図10】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の特に好ましい一例の形状を示す斜視図。
【図11】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の一例の形状を示す斜視図。
【図12】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の一例の形状を示す斜視図。
【図13】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の好ましい一例の形状を示す斜視図。
【図14】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の好ましい一例の形状を示す斜視図。
【図15】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の好ましい一例の形状を示す斜視図。
【図16】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の特に好ましい一例の形状を示す斜視図。
【図17】本発明の糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の好ましい一例の形状を示す斜視図。
【符号の説明】
1………スクリュー押出機
2………円形ダイ
3………ポリエチレン原糸
6、8………延伸槽
7、9………延伸機
10………塑性変形性ポリエチレン糸
Claims (11)
- 極限粘度[η]が3.5dl/g未満の汎用ポリエチレンの溶融固化物
を延伸して塑性変形性が付与された延伸物からなり、塑性変形性として、前記延伸物を180度折曲げてから10分経過後の戻り角度が20度以下であり、且つ90度折曲げてから10分経過後の戻り角度が15度以下を示し、且つ最大厚み部の厚さが0.25mm以上である糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料。 - 前記延伸物が少なくとも1本の延伸糸と複数枚の延伸帯とからなり、この延伸糸を芯として、その両側に前記延伸帯を一体的に並設した形状を有する請求項1記載の塑性変形性ポリエチレン材料。
- 延伸糸が1本であり、延伸帯が2枚である請求項2記載の塑性変形性ポリエチレン材料。
- 前記延伸物が少なくとも1本の延伸糸とこの延伸糸よりも幅広の1枚の延伸帯とからなり、前記延伸糸を芯として、これを前記延伸帯上に一体的に載荷した形状を有する請求項1記載の塑性変形性ポリエチレン材料。
- 延伸糸が1本である請求項4記載の塑性変形性ポリエチレン材料。
- 極限粘度[η]が3.5dl/g未満の汎用ポリエチレンを溶融し、原糸又は原帯状に押し出して、前記ポリエチレン溶融固化物からなる最大厚み部の厚さが1mm以上の原糸又は原帯に成形し、これを60℃以上ポリエチレンの融点未満の温度で、延伸物を180度折曲げてから10分経過後の戻り角度が20度以下であり、且つ90度折曲げてから10分経過後の戻り角度が15度以下になるまで延伸することを特徴とする糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法。
- 延伸を、原糸又は原帯に対する延伸倍率7〜16倍及び伸度50%未満の条件で行なう請求項6記載の塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法。
- 延伸温度が60〜120℃である請求項6記載の塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法。
- 延伸を、最大厚み部の厚さが1mm以上の原糸又は原帯から最大厚み部の厚さが0.25mm以上の延伸物が得られるまで行う請求項6記載の塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法。
- 原糸又は原帯の最大厚み部の厚さが1〜20mmであり、且つ延伸物の最大厚み部の厚さが0.25〜5mmである請求項6記載の塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法。
- 原糸又は原帯の最大厚み部の厚さが1〜12mmであり、且つ延伸物の最大厚み部の厚さが0.25〜3mmである請求項6記載の塑性変形性ポリエチレン材料の製造方法。
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