JP3582736B2 - ポリスチレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、良流動性を有し、かつ、剛性や耐衝撃性等の機械的物性バランスに優れるポリスチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術分野】
熱可塑性樹脂に、無機充填剤を添加すると、剛性を始めとする機械的性質に優れた材料が得られることは、広く知られるところであるが、ポリスチレン系樹脂については、単純にポリスチレン系樹脂に無機充填剤をブレンドしても、良好な物性の材料は得られない。
【0003】
そこで、上記のような問題を解決するために、例えば、表面を改質した無機充填剤をポリスチレン系樹脂に配合したり(特開昭50−19848号公報)、粒子状の無機充填剤と繊維状の無機充填剤を併用してポリスチレン系樹脂に配合する(特開昭51−45156号公報)ことによって、無機フィラー充填ポリスチレン系樹脂組成物の機械的性質を向上させる方法が試みられてきた。
【0004】
しかしながら、無機充填剤の表面を改質する方法は、工業的に簡便な方法とは言えないばかりか、表面処理に伴う無機充填剤の価格上昇が避けられない。また、粒子状の無機充填剤と繊維状の無機充填剤を併用する方法は、繊維状の無機充填剤の添加によって材料の伸び特性が著しく低下するのに加え、成形品の異方性が大きくなることに伴うそり等の現象が避けられない。
【0005】
また、熱可塑性樹脂に無機充填剤を添加すると、一般に、樹脂の流動特性が低下するため、射出成形用の材料として好ましくない。
【0006】
ポリスチレン系樹脂が、元来、安価で、良好な流動特性を有し、かつ、機械的物性バランスに非常に優れる樹脂であることを考えれば、これらの諸物性を低下させることなく、剛性を始めとする機械的性質を、より向上させることが、重要な課題であった。
【0007】
しかしながら、これらの課題をすべて満足する安価で、良流動特性を有し、かつ、機械的物性バランスに優れたポリスチレン系樹脂組成物は、これまで得られていないのが現状であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記課題を解決すべく、本発明者らは、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)に添加する各種の無機充填剤と有機系化合物のブレンド処方と流動特性及び機械的性質との関係を中心に鋭意検討した結果、上記の課題を解決するためには、ゴム含有量を限定したHIPSに対して、重量平均粒子径を特定した無機充填剤と特定の化学構造を有するカルボン酸アミド化合物をある一定の配合割合で添加すれば、流動特性および機械的性質に優れた物性バランスの良いポリスチレン系樹脂組成物を得ることが可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の最大の特徴は、重量平均粒子径を特定した無機充填剤と特定の化学構造を有するカルボン酸アミド化合物の複合効果である。すなわち、ゴム含有量を限定したポリスチレン系樹脂、無機充填剤およびカルボン酸アミド化合物の三成分を併用することによって、流動特性および機械的性質に優れた物性バランスの良いポリスチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明でいうハイインパクトポリスチレン樹脂は、ゴム含有量が3〜20重量%、より望ましくは、5〜12重量%の範囲であることが好ましい。HIPS中のゴム含有量が3重量%以下の範囲では、樹脂組成物の耐衝撃性が著しく低下するため好ましくなく、また、20重量%以上になると、成型品の剛性が低下するので好ましくない。なお、本発明でいう樹脂中のゴム含有量の測定方法は、日本分析化学会編、朝倉書店発行、高分子分析化学ハンドブック(P267〜268)に記載されるゴム含量分析の実験手順に従って測定することができる。
【0011】
また、本発明に用いる無機充填剤は、重量平均粒子径が0.5〜5μm、より望ましくは、0.5〜3μmの範囲であることが好ましい。無機充填剤の重量平均粒子径が5μmより大きくなると、樹脂組成物の耐衝撃性が急激に低下し、また、強度や弾性率の低下も生ずるため、好ましくなく、また重量平均粒子系が0.5μm以下だと、粒子が凝集を起こしやすくなり、その結果、成型品の衝撃強度が低下するため好ましくない。さらに、本発明に用いる無機充填剤の添加量の範囲は、10〜50重量%、より望ましくは、15〜40重量%の範囲である。無機充填剤の添加量が10重量%未満の範囲では、一般式化1で表されるカルボン酸アミド化合物との複合効果が低下するため、好ましい機械的性質の向上が得られず、また、無機充填剤の添加量が50重量%を越える範囲では、比重の増大や耐衝撃性の急激な低下が生ずるため、好ましくない。
【0012】
なお、本発明でいう重量平均粒子径0.5〜5μmの無機充填剤とは、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、セピオライト、マイカ等の無機充填剤が代表的であり、これらの混合物でも差支えないが、これらの中でも、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムは、機械的性質のバランス面から、特に好ましい。
【0013】
また、本発明でいう一般式化1〜化3で表されるカルボン酸アミド化合物の1種以上からなる化合物は0.3〜3重量%添加することが好ましく、望ましくは、0.5〜1.5重量%添加することがより好ましい。カルボン酸アミド化合物の添加量が0.3重量%未満の範囲では、無機充填剤との複合効果が低下するため、好ましい機械的性質の向上が得られず、また、カルボン酸アミド化合物の添加量が3重量%を越える範囲では、耐熱性や弾性率の急激な低下が生ずるため、いずれも好ましくない。
【0014】
なお、本発明でいう一般式化1で表されるカルボン酸アミド化合物は、R1 が、炭素数6〜30の炭化水素基で示されるものであるが、より望ましくは、炭素数が12〜25の炭化水素基であるものが好ましい。R2 は、炭素数1〜12のアルキレン基で示されるものであるが、より望ましくは、炭素数が1〜6のアルキレン基であることが好ましい。さらに、一般式化1で表されるカルボン酸アミド化合物として望ましい具体的化合物としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスモンタン酸アミド、メチレンビス安息香酸アミド、エチレンビス安息香酸アミド、テトラメチレンビスステアリン酸アミドおよびテトラメチレンビスラウリン酸アミドなどがある。
【0015】
また、本発明でいう一般式化2で表されるカルボン酸アミド化合物は、R3 が炭素数1〜20のアルキル基で示されるものであるが、より望ましくは、炭素数が6〜18のアルキル基であることが好ましい。R4 は炭素数4〜40の炭化水素基で示されるものであるが、より望ましくは、炭素数が6〜18の炭化水素基であることが好ましい。一般式化2で表されるカルボン酸アミド化合物として望ましい具体的化合物としては、アジピン酸ジオクチルアミド、アジピン酸ジラウリルアミドおよびテレフタル酸ジオクチルアミドなどがある。
【0016】
また、本発明でいう一般式化3で表されるカルボン酸アミド化合物は、R5 が炭素数10〜40の炭化水素基で示されるものであるが、より望ましくは、炭素数が12〜30の炭化水素基であることが好ましい。R6 は水素若しくは炭素数1〜40のアルキル基で示されるものであるが、より望ましくは、水素若しくは炭素数が1〜25のアルキル基で示されるものであることが好ましい。さらに、一般式化3で表されるカルボン酸アミド化合物として望ましい具体的化合物としては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、ベヘニン酸アミドおよびモンタン酸アミドなどがある。
【0017】
上記の一般式化1〜化3の中から選ばれるカルボン酸アミドは、本発明の範囲内であれば、1種類を添加してもよいし、2種類以上を添加して用いても差し支えない。
【0018】
上記のカルボン酸アミドの中でも、特に、メチレンビスステアリン酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドが、特性バランスおよび低価格等の面から好ましい。
【0019】
なお、本発明のポリスチレン系樹脂組成物においては、目的に応じて、可塑剤、離型剤、耐候剤、酸化防止剤、着色剤、安定剤等を併用しても、本発明の範囲を著しく損なわない範囲であれば、特に差し支えはない。
【0020】
【実施例】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例および比較例に限定されるものではない。
【0021】
実施例1〜4、比較例1〜6
ゴム含有量7重量%のハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS−A)、ゴム含有量2重量%のハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS−B)、重量平均粒子径1μmの炭酸カルシウム(CaCo3 )、重量平均粒子径2μmの硫酸バリウム(BaSO4 )、重量平均粒子径2μmのタルク(タルクA)、重量平均粒子径9μmのタルク(タルクB)、メチレンビスステアリン酸アミド(MBS)およびエチレンビスステアリン酸アミド(EBS)を用いて、表1〜表3に示す材料を作成した。
【0022】
試料の調整は、(株)池貝製の30mmφ−2軸押出機を用いて、シリンダ−温度210℃の条件で混練し、実施例1〜4および比較例1〜5のペレットを得た後、(株)日本製鋼所製の100tの射出成形機を用いてテストピ−スを作成した。
【0023】
物性評価は、流動特性(200℃、5kg荷重下でのMFR測定)、曲げ弾性率およびIz値より判断した。判定基準として、MFRが12g/10min以上、曲げ弾性率が20000kgf/cm2 以上および、Iz値が4kgf−cm/cm以上と設定し、3つの物性をすべてクリアーしたものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
表2、表3より、無機充填材の配合量が5重量%以下の範囲では、充分な剛性が得られず、また、50重量%を越える範囲では、耐衝撃性が急激に低下し、無機充填剤とカルボン酸アミドの複合効果が充分に得られないことがわかる。さらに、重量平均粒子径が5μmを越える無機充填材を使用した場合では、本発明の配合量の範囲内であっても、Iz値やMFRが急激に低下していることがわかる。また、カルボン酸アミド化合物の添加量が0.3重量%よりも小さな範囲では、MFRやIz値の向上が得られず、逆に、添加量が5重量%を越える範囲では、弾性率等の低下が生じている。また、ベースとするHIPSのゴム含有量が3重量%より小さな範囲では、耐衝撃性が急激に低下し、無機充填剤とカルボン酸アミドの複合効果が充分に得られない。
【0028】
これに対して、用いるHIPSのゴム含有量と、HIPSに添加する無機充填材の配合量および重量平均分子量、カルボン酸アミド化合物の種類および添加量を、本発明の方法に従って適切に選べば、特異的な2つの複合効果によって、良流動性を有し、かつ高い曲げ弾性率およびIz値を有する優れた物性バランスを有する材料を得ることができる。
【0029】
本発明によるポリスチレン系樹脂組成物は、機械的物性のバランスに優れ、かつ高流動性であることから、特に射出成形用材料に最適で、自動車内装部品や家電製品に使用されるプラスチック材料として極めて有用なものである。
Claims (5)
- (A)ゴム含有量が3〜20重量%の範囲であるハイインパクトポリスチレン系樹脂(HIPS)47〜89.7重量%、(B)重量平均粒子径が0.5〜5μmの範囲である無機充填剤10〜50重量%、(C)下記一般式化1〜化3で表されるカルボン酸アミド化合物から選ばれた1種もしくは2種以上からなる化合物0.3〜3重量%を配合してなるポリスチレン系樹脂組成物。
【化1】R1 −CONH−R2 −NHCO−R1
(式中のR1 は炭素数6〜30の炭化水素基を、R2 は炭素数1〜12のアルキレン基を示す。)
【化2】R3 −NHCO−R4 −CONH−R3
(式中のR3 は炭素数1〜20のアルキル基を、R4 は炭素数4〜40の炭化水素基を示す。)
【化3】R5 −CONH−R6
(式中のR5 は炭素数10〜40の炭化水素基を、R6 は水素若しくは炭素数1〜40のアルキル基を、各々示す。) - (B)重量平均粒子径が0.5〜5μmの範囲である無機充填剤20〜50重量%である請求項1記載のポリスチレン系樹脂組成物。
- 重量平均粒子径が0.5〜5μmの範囲である無機充填剤が、硫酸バリウムあるいは炭酸カルシウムである請求項1又は2記載のポリスチレン系樹脂組成物。
- カルボン酸アミド化合物が、メチレンビスステアリン酸アミドおよび/またはエチレンビスステアリン酸アミドである請求項1〜3のいずれか1項記載のポリスチレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリスチレン系樹脂組成物からなる射出成形品。
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JP03515894A JP3582736B2 (ja) | 1994-02-09 | 1994-02-09 | ポリスチレン系樹脂組成物 |
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- 1994-02-09 JP JP03515894A patent/JP3582736B2/ja not_active Expired - Lifetime
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