JP3582644B2 - 冷蔵庫 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷気を貯蔵室内に送出する冷蔵庫に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の冷蔵庫は、特開平8−75338号公報に開示されているように、冷蔵室の下方に設けた冷却器と、冷蔵室の背面には設けた送風ダクトとを備え、送風ダクト内を複数の流路に分岐させた分岐流路に下方から上方に冷気を流し、少なくとも一つの流路には、冷蔵室の上部においてのみ冷気吹出口を設け、該冷気吹出口から冷蔵室に向けて冷気を送風するように構成されてなるものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の冷蔵庫では、冷蔵室の背壁の中央やその下方及び側壁近くには冷気が行き届きにくく、冷蔵室内の温度分布の均一性に欠け、特に、冷蔵室内を棚板によって複数の空間に区分したときは、一層、冷蔵室内の温度のバラツキが顕著になるという問題があった。また、背壁に冷蔵室内の水分が結露して水滴が付着することがあるが、水滴がそのまま背壁をつたって流下してしまい冷蔵室の底板に水が溜まるという問題があり、それにより、冷蔵室内が乾燥して食品の如き貯蔵物の鮮度等に悪い影響が出るという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされてものであり、貯蔵室内の温度分布を略均一にすることにより、貯蔵室に収容した貯蔵物を一様に冷却できる冷蔵庫を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、貯蔵室内の乾燥を防止することができる冷蔵庫を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る冷蔵庫は、貯蔵物を収納する貯蔵室と、前記貯蔵室に流入する冷気を生成する冷却器と、前記貯蔵室と連通して設けられ前記冷気を前記貯蔵室に導く冷気通路と、該冷気通路の少なくとも一部をなし、熱伝導性を有して前記冷気通路内を流通する冷気による冷熱の少なくとも一部を前記貯蔵室内に放出するとともに、該冷熱を蓄冷して所定の時期に溜めた冷熱を前記貯蔵室内に放出する熱伝導性を有する部材と、前記貯蔵室に導かれる前記冷気の少なくとも一部が前記部材の前記貯蔵室側の表面に沿って流れるようにする指向性吐出部とを備え、前記指向性吐出部の全域から冷気が同時に吐出することを特徴とする。
【0007】
これらの構成によると、冷気通路を流通する冷気による冷熱の一部が部材の広い面積から一様に貯蔵室内に放出される。そして、部材に設けた指向性吐出部から吹き出される冷気は、部材の表面に沿う流れを作るため、結露等により水滴が部材表面に付着しても、前記冷気によりこの水滴の蒸発が促進される。尚、吐き出された冷気の流れを部材の貯蔵室側の表面に沿いやすくするため、前記指向性吐出部に冷気を吐出する孔部を設け、前記孔部の形状は、その先端が部材側に向くように傾けてもよい。
【0008】
尚、前記部材は、前記貯蔵室側の表面に生じた水滴を保持する凹部又は凸部を有するものを使用すれば、部材表面に付着した水滴が流下して貯蔵室の底部に溜まるのを防止できる。
【0009】
この場合、前記部材の一方の面に凹部、他方の面に凸部を形成し、これら凹部及び凸部を部材表面の表裏で相対するように設けることにより、流下しようとする水滴は前記凹部又は凸部に保持されるため、前記部材への保湿機能の付加が容易になる。また、部材の強度が補強されるとともに、表面積が増加して蓄冷能力や冷熱の放出量が向上し、冷却効率の向上が図られる。
【0010】
そして、前記凹部又は凸部は水平方向に延びて形成されるようにするとよい。
【0011】
ところで、前記指向性吐出部を前記部材の中央部付近に設け、前記指向性吐出部に設けた孔部から前記部材の前記貯蔵室側の表面に沿って冷気が前記部材の左右方向に向かって同時に吐出するようにすることにより、簡単な構成で上述した冷気の部材表面に沿う流れを容易に作れる。この場合、その冷気は前記部材の中央付近から周縁部に向かう流れとなる。
【0012】
一方、前記指向性吐出部を前記部材の周縁部の互いに対向する位置に少なくとも2つ以上設け、前記指向性吐出部に設けた孔部から前記部材の前記貯蔵室側の表面に沿って冷気が前記部材の中央方向に向かって同時に吐出するようにすることもでき、この場合、冷気は前記部材の周縁部から中央部へ向かう流れを作る。
【0013】
更に、前記部材の下方に前記部材の表面を流下する水滴を捕集する捕集部を前記貯蔵室内に設けることにより、前記部材で保持できる水滴の許容量を超えた場合に、前記部材の表面を流下する水滴は捕集部で捕集され、ここに溜まる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の冷蔵庫を示す側面断面図である。冷蔵庫1は外部を覆う外箱2aの内側に内箱2bが配され、外箱2aと内箱2bとの隙間には発泡ポリウレタン等の断熱材2cが充填されている。冷蔵庫1の内部は上から冷蔵室11、野菜室12、冷凍室13の順に区分けされている。
【0015】
野菜室12と冷凍室13は断熱部材から成る仕切枠17及び断熱部材から成る仕切板19に仕切られており、冷凍室13は更に断熱部材から成る仕切枠18により上部と下部に仕切られている。冷蔵室11と野菜室12は断熱部材から成る仕切枠16及び樹脂成形品から成る仕切板31、32によって仕切られている。仕切板32には貫通口32aが設けられている。
【0016】
冷蔵室11の下部には仕切板46で仕切られる隔離室である氷温室14が設けられている。冷蔵室11には複数の棚45が設けられている。冷蔵室11の前面は回動式の断熱扉3により開閉可能になっている。野菜室12、冷凍室13の上部及び冷凍室13の下部は前面がそれぞれスライド式の断熱扉4、5、6により開閉可能になっており、収納容器54、55、56を引出せるようになっている。
【0017】
冷凍室13の後部には圧縮機20が配されている。圧縮機20には吐出パイプ20aを介して凝縮器(不図示)が連結されており、吸込パイプ20bを介して冷却器21、25が直列に連結されている。凝縮器と冷却器25は第1キャピラリーチューブ(不図示)を介して連結されている。冷却器21、25の間には第2キャピラリーチューブ(不図示)が配されている。
【0018】
これにより冷凍サイクルが構成され、冷凍サイクル運転が行われると冷却器21、25が冷却されるようになっている。冷却器21、25の下方には冷却器21、25の除霜を行う除霜ヒータ61、62が設けられている。63、64はドレン受け部材である。
【0019】
また、凝縮器と第1キャピラリーチューブとの間には切換手段(不図示)が設けられ、切換手段と冷却器21とが第3キャピラリーチューブ(不図示)を介して連結されている。そして、切換手段を切り替えることにより、冷却器21のみの冷却を可能にしている。
【0020】
冷却器21は冷気通路23内に配されており、冷気通路23は内箱2bと樹脂成形品から成るエバカバー33とにより形成されている。冷気通路23内の冷却器21の上方には送風機22が配されている。冷気通路23は背面板33aに設けられた冷凍室13への流入口13a及び流出口13bにより冷凍室13と連通している。
【0021】
冷却器25は冷気通路27内に配されている。冷気通路27の下部は内箱2bと野菜室12の背面板34とにより形成されている。背面板34は断熱部材から成り、冷却器25に近設される野菜室12の過冷却を防止している。冷気通路27内の冷却器25の上方には送風機26が配されている。冷気通路27は流出口12bにより野菜室12と連通している。
【0022】
冷気通路27の上部は氷温室14の背面板35に固着される断熱部材36と内箱2bとにより形成されている。断熱部材36には吐出口36aが設けられている。冷蔵室11の正面図を図2に示すと、背面板35には吐出口36aと同じ位置に吐出口35aが設けられている。吐出口35a、36aにより冷蔵室11は冷気通路27と連通している。
【0023】
冷気通路27は冷蔵室11の背面部分の冷気通路28と連通している。図2において、冷気通路28は略中央に配される中央通路28aと、中央通路28aの両側部に設けられる側方通路28bとにリブ28dにより分岐されている。リブ28dは後述する背面板70と一体に形成されている。また、冷気通路27も冷気通路28に対応して分岐通路27a、27bに分岐されている。
【0024】
中央通路28aの下端には送風機29が配されている。送風機29の前面には冷蔵室11に臨む送風機カバー41が取り付けられている。送風機カバー41には複数の開口部41aが形成されている。
【0025】
送風機29部分の詳細図を図3に示すと、中央通路28aは、送風機29により開口部41aを介して冷蔵室11から取入れられる空気と、送風機26(図1参照)により冷気通路27を流通する冷気とが混流するようになっている。冷気通路27を流通する冷気は送風機カバー41の壁面41bに衝突し、案内部41cにより送風機29の方向に導かれる。案内部41cは、送風機カバー41が金属の場合には切り起して一体に形成してもよい。
【0026】
この時、送風機カバー41の内面には相応の断熱部材を冷気通路27からの冷気の流域に設け、結露対策としてもよい。また、送風機カバー41を金属等により形成すると、中央通路28aを通る冷気の冷熱が送風機カバー41から冷蔵室11内に放出されることになる。
【0027】
開口部41aは案内部41cよりも上方に形成され、冷気通路27を流通する冷気の進路外に配されている。これにより、冷気通路27を流通する冷気が開口部41aから冷蔵室11内へ侵入することを防止している。その結果、冷気漏れによる冷蔵室11の局部の過冷却を防止できるようになっている。
【0028】
冷気通路28は冷蔵室11の奥方の内壁を形成する部材42と内箱2b上に設けられた背面板70とにより形成されている。背面板70は上記の背面板35と一体に形成されている。部材42は図6に示すような形状の熱伝導性を有する熱伝導部材(例えば、加工性が良く防錆効果の高いアルミニウム合金やステンレス等)から形成されている。
【0029】
これにより、蓄冷及び冷熱の放出を可能にしている。ここで、前記熱伝導部材の厚みが厚い場合は蓄冷能力が上がり、強度も増加する。厚みが薄い場合は冷熱の放出効率が上がり、軽量化にも有利である。そのため、目的に応じて薄板材や厚板材を適時適所に選び設ければよい。
【0030】
また、図2に示すように、中央通路28aに面した部材42の一部分には、略長方形の開口部42aが設けられており、その開口部42aには後述する吐出部材7が嵌着されている。
【0031】
図7、図8の正面図及び断面図に示すように、部材42の表面には、水平に延びる凸部42j及び凹部42kがプレス加工等により断続的に設けられている。これにより、部材42の強度が補強されるとともに、表面積が増加して蓄冷能力や冷熱の放出量が向上し、冷却効率の向上が図られている。
【0032】
更に、断熱扉3の開閉回数が多く冷蔵室11内の温度や湿度が非常に上昇した際に、部材42の表面で結露して冷蔵室11内が乾燥する。この時、結露による水滴は流下せずに凸部42jの上部42j’に溜って保持される。また、凸部42jによる模様の切れ目42mでも、水滴は表面張力により保持される。
【0033】
その後、冷却器25で冷却された冷気通路28内の冷気の送風を停止すると、部材42の凸部42jに捉えられた水滴が乾燥した冷蔵室11内へ蒸発し、冷蔵室11内を加湿する。従って、水分が冷蔵室11から流出せず、冷蔵室11内の湿度が保持され、部材42は保湿部材として機能する。尚、凹部42kを冷蔵室11側に配すると水滴が溜りやすく、更に保湿能力が向上する。
【0034】
また、図9に示すように、凸部42jを断続的な傾斜した模様により形成してもよい。このようにしても、結露による水滴は流下せずに凸部42jによる模様の切れ目42mで表面張力により保持される。
【0035】
部材42の上端と下端部分の断面詳細図を図10、図11に示す。これらの図によると、部材42は背面板70に設けられた上取付部71及び背面板35に設けられた下取付部72により係止される。上取付部71のレバー部71aを手指で押上げると爪部71bの係合が解除される。
【0036】
この状態で部材42の上部を手前に倒して、上方に引上げることにより部材42を脱着でき、部材42は着脱自在になっている。これにより中央通路28a、側方通路28b及び部材42の裏側の清掃等を容易に行うことができるようになっている。尚、部材42の下部は断熱部材36に固着されるシール材73により密閉されている。
【0037】
更に、部材42の下端部分は図12に示すようにしてもよい。即ち、背面板35の上端に水溜り部35d(捕集部)を一体に成形し、部材42を受けるように設置する。このようにすることにより、部材42の凸部42j又は凹部42k(図6参照)で保持できなかった水滴が流下しても水溜り部35dに溜められる。そして、部材42が冷蔵室11内の温度に近づくと、水溜り部35dに捉えられた水滴は蒸発し、冷蔵室11内を加湿する。従って、冷蔵室11内の水分の減少を更に効果的に防止することができる。
【0038】
冷蔵室11の上面断面図を図4に示すと、側方通路28bを覆う部材42の側方通路28b側の面には、側方通路28bを通る冷気の冷熱の多くを部材42に伝達させないように断熱部材28cが配されている。側方通路28bの側壁は背面板70により形成されており、側壁には複数の開口部70aが設けられている。
【0039】
背面板70には部材42の外側周辺を覆う壁面部70cが形成されている。壁面部70cには開口部70aと連通する複数の吐出部70bが凹設されている。従って、吐出部70b及び開口部70aを介して、側方通路28bは冷蔵室11と連通し、冷気を冷蔵室11に吐出できるようになっている。
【0040】
ところで、中央通路28aに面した部材42には、略長方形の開口部42aが一部に設けられており、吐出部材7が嵌着されている。即ち、図5に示すように、吐出部材7の両側縁近傍から突出するリブ7b,7bの先端には爪部7c,7cが形成されており、これら爪部7cを開口部42aに掛止させることにより、吐出部材7は部材42に取り付けてられている。
【0041】
また、吐出部材7のリブ7bの付け根部分には左右方向に貫通する孔部7aが設けられており、この孔部7aを介して中央通路28aと冷蔵室11とが連通している。従って、この孔部7aから中央通路28aを流通する冷気の一部Aが部材42の冷蔵室11側表面に沿うかたちで吹き出される。尚、吐き出された冷気Aの流れを部材42の冷蔵室11側の表面に沿いやすくするため、前記孔部7aの形状は、その先端が部材42側に向くように傾けてもよい。
【0042】
尚、部材42に開口部42aを設けず、この開口部42aの配設位置付近をプレスで押し出し、吐出部材7同様の飛び出しを部材42から連続的に突出させて前記吐出部材7の代わりとし、前記孔部7a同様の左右方向に貫通する孔部を、上記のように飛び出させた部材42の壁面に相応する位置に切り込んで設けてもよい。この場合は、部材42の前記中央通路28aに面した部分の面積が充分にとれるようになるため、前記中央通路28a内を流通する冷気による冷熱の一部が、部材42を介して冷蔵室11内に充分放出され、庫内温度の更なる均一化が図られる。
【0043】
図2において、壁面部70cは載置部74に載置される棚45(図1)と同じ高さ付近に形成され、棚45上に載置される食品等が吐出部70bに落下しないようになっている。そして、開口部70aは貯蔵物が側方通路28bに落込まないようにスリット状になっている。また、背面板70には冷気を吐出部70bに導くリブ70dが形成されている。
【0044】
冷蔵室11の天井部分には樹脂成形品から成る上面板43と内箱2bにより天井ダクト54が形成されている。天井ダクト54は左右に並設されており、中央通路28aと連通している。中央通路28aを通る冷気は背面板70に形成されるリブ70eにより左右に拡散されて天井ダクト54に導かれる。
【0045】
そして、上面板43の前後方向に複数設けられた天井吐出部43aにより左右に分散して冷気を吐出できるようになっている。中央通路28aを通る冷気は天井ダクト54に流入する前に左右に拡散されているため、冷蔵室11の背面板70に近い位置に設けられた天井吐出部43aからも充分冷気が吐出される。尚、左右の天井ダクト54の間には透明な照明カバー53で覆われる照明灯51(図1)が設けられている。
【0046】
上記構成の冷蔵庫1における冷気の流れについて図1、図2及び図4を参照して説明する。送風機22が駆動されると、冷凍室13内の空気は流出口13bから冷気通路23に導かれる。該空気は冷却器21と熱交換して冷却され、流入口13aから冷凍室13に流入する。これにより冷凍室13内が冷却される。
【0047】
送風機26、29が駆動されると、野菜室12内の空気は流出口12bから冷気通路27に導かれる。該空気は冷却器25と熱交換して冷却され冷気が生成される。該冷気の一部は開口部35a、36aから氷温室14に流入する。これにより氷温室14内が例えば−1℃に冷却される。
【0048】
他の冷気は中央通路28a及び側方通路28bに分岐して進行する。側方通路28bを通る冷気はリブ70dに案内されて吐出部70bから冷蔵室11内に吐出される。一方、中央通路28aを通る冷気は、開口部41aから中央通路28aに導かれる冷蔵室11内の空気と混流される。そして、この冷気は天井ダクト54を通り、天井吐出部43aから吐出される。
【0049】
更に、図4に示すように、中央通路28aを流通する冷気の一部Aは、吐出部材7から吹き出され、部材42の冷蔵室11側の表面に沿って左右方向に流れる。この冷気Aの流れに追従して冷蔵室11内の比較的温度の高い冷気Bが混ざり合い、混合冷気Cとして、前記吐出部70bから吐出される冷気Dと共に冷蔵室11内に導入される。これにより、冷蔵室11内の空気は絶えず攪拌されるため、冷蔵室11内の温度分布を略均一に維持できる。
【0050】
また、中央通路28a内を流通する冷気による冷熱の一部は部材42に伝えられ、側方通路28bの前面を含む全面から冷蔵室11に冷熱として放出される。そして、上述したように部材42の冷蔵室11側表面には、常に新たな混合冷気Cが流れるため、部材42から放出される冷熱が速やかに取り去られる。このため、冷熱の放出効率が更に上昇するばかりでなく、部材42の冷蔵室11側表面に結露して水滴が付着した場合は、吐出部材7から吹き出す冷気Aや庫内冷気Bが水分の蒸発を促し、冷蔵室11内は加湿されて適度な湿度に維持される。従って、部材42から放出される冷熱と、吐出部材7、吐出部70b及び天井吐出部43aから分散して吐出される冷気とにより、冷蔵室11内が効率良く均一に冷却される。
【0051】
また、部材42の冷蔵室11側の表面に結露して水滴が付着した場合は、吐出部材7より吹き出す冷気Aにより蒸発が促進されるので、断熱部材28cを省いてもよい。
【0052】
冷蔵室11内の空気は棚45の間や棚45の前面を通り氷温室14の下方から開口部32aを介して冷気通路30を流通し、野菜室12内の前方に流入する。更に収納容器54の前面から下方を通り、野菜室12内が冷却される。そして、流出口12bから冷却器25の下部に導かれて冷気が循環する。
【0053】
温度センサー(不図示)の検知結果に基づいて圧縮機20及び送風機26が運転及び停止され、冷蔵室11及び野菜室12の温度は例えば3℃に維持されるようになっている。
【0054】
また、冷却器25による冷却を停止して送風機26、29の一方または両方を運転すると、部材42に蓄積された冷熱により中央通路28aを通る冷気が冷却され、該冷気によって冷蔵室11内の冷却が行われる。送風機26を運転する場合は、更に冷却器25の除霜をして冷蔵室11内の加湿を行うこともできる。
【0055】
本実施形態によると、中央通路28aを通る冷気の冷熱の一部は熱伝導板として機能する部材42を熱伝導し、全面から冷蔵室11内に放出される。従って、冷蔵室11は中央通路28aと側方通路28bを覆う広い面積から一様に放出される冷熱により均一に冷却される。
【0056】
この時、断熱部材28cにより、側方通路28bを通る冷気から部材42に多くの冷熱は伝達されない。このため、冷気通路27に多くの冷気を流した際に部材42や吐出部70bの結露を防止することができる。そして、断熱部材28cを設置する面積を可変することにより、所望の温度や流量の冷気を流通させることができる。
【0057】
また、冷気通路28を通る冷気の温度を低くするか冷気の流量を増やして冷却能力を上げることにより、中央通路28a付近の部材42の冷蔵室11側に結露が生じる恐れのある場合や、部材42の冷気による冷却を和らげるために、薄い断熱部材を中央通路28aの部材42側に設けてもよい。
【0058】
また、吐出部70b及び天井吐出部43aは冷蔵室11の背面及び上面に複数設けられるため、冷気が分散して冷蔵室11に流入する。このため、冷蔵室11は均一且つ迅速に冷却される。
【0059】
吐出部70bは、部材42を開口して形成してもよいが、本実施形態のように部材42の外側周辺に設ける方が望ましい。即ち、正面側に開口しないため、第1に、冷気通路28が覆われて美観が向上する。第2に、前面へ直接冷気が吐出されないので、側方通路28b内の騒音や開口部70aでの吐出風の音が正面へ直接出ず、それらの騒音の低減がなされる。第3に、部材42に開口部がないため部材42の全面が均一な冷熱の放出に寄与して更に庫内温度が均一となるとともに、照明灯51等の光反射面としても機能し、ムラなく広範囲に冷蔵室11内を明るくできる等の効果を得ることができる。
【0060】
また、中央通路28aに面した部材42は冷気による冷熱が直接伝えられるが、側方通路28bに面した部材42は中央通路28a部分から冷熱が伝えられる。このため、放出される冷熱は側方通路28b部分で若干減少し、冷蔵室11内の温度ばらつきが生じる。
【0061】
このため、吐出部70bを例えば中央通路28a上に配するとこの温度ばらつきがより大きくなるが、本実施形態では吐出部70bを中央通路28aの側壁を成すリブ28dと冷蔵室11の側壁との間の略中央に配している。これにより、この温度ばらつきが低減されてより均一な冷熱放出による冷却を行うことができる。更に、部材42も吐出部70bの配置を考慮した上で最大限の広さが採れ、双方の吐出部70bからの冷気吐出と部材42による冷熱放出とで冷蔵室11内をより均一に冷却できる。
【0062】
また、冷却器25により低温に生成された冷気は、冷蔵室11内の空気と混合することにより若干昇温される。これにより、部材42や天井吐出部43a付近に生じる結露や氷結をより防止することができ、冷蔵室11及び野菜室12の乾燥を防止することができる。
【0063】
更に、冷蔵室11及び野菜室12を冷却する冷却器25と冷凍室13を冷却する冷却器21を設けることにより、冷気通路27、28を流通する冷気の温度を冷気通路23内の冷気の温度より高く設定することができる。これにより、部材42に生じる結露や氷結をより防止することができる。
【0064】
また、部材42は冷蔵室11の背面に立設されて上下方向に延在している。このため、断熱扉3の開閉回数が多く冷蔵室11内の温度や湿度が非常に上昇した際に、部材42に結露して水滴が生じても貯蔵物上に直接滴下することがない。従って、貯蔵物を傷めず、良好な保存状態を維持できる。
【0065】
この時、冷却器25で冷却された冷気通路28内の冷気の送風を停止すると、部材42が冷蔵室11内の温度に近づくとともに温度上昇により冷蔵室11内が乾燥する。これにより、該水滴は部材42や背面板35を流下する間に一部が蒸発する。従って、再び冷蔵室11内の湿度を上昇させることができる。更に、部材42の前方に空気流通可能な多孔性(例えば、小判穴、丸穴等)のフェンス状の防護壁を設けると、部材42をさらに薄くできるので、冷熱の放出効果が向上し、キズ付防止や破損防止にもなる。
【0066】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。尚、本実施形態を示す図面において、上記第1の実施形態と共通の部材については同一の符合を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
図13に示すように、本実施形態では、側方通路28bの吐出部70bの上流側に左右一対で互いに対向する複数の吐出部材8,9を併設している。図15は、吐出部材9周辺を拡大した要部詳細図を示している。これらの吐出部材8,9は、図15に示すように、水平断面がL字状の部材であり、部材42の両側縁部と背面板70の開口部70aの上流側との間に爪嵌合にて取り付けられている。
【0068】
また、これらの吐出部材8,9は内部が中空になっており、左右方向に貫通形成された孔部8a,9aによって冷蔵室11と側方通路28bとは連通している。そして、開口部70aの上流側は二股に分岐しているため、側方通路28bを流通する冷気は、吐出部材9内を通過して開口部9aから吹き出され、部材42の表面に沿って流れる冷気A’と、吐出部70bを通って冷蔵室11の前方に吹き出される冷気D’とに分かれて冷蔵室11内に導かれる。尚、部材42の表面には前述の図6〜図9と同様の凸部42jや凹部42kが形成されている。
【0069】
以上の構成で冷却器20(図1)が運転されると、図14に示すように、側方通路28bを流通する冷気の一部A’は、吐出部材8,9から吹き出され、部材42の冷蔵室11側の表面に沿って部材42の中央付近に向けて左右両方から流れる。一方、前記吐出部70bから吐出される冷気D’は冷蔵室11内に導入された後、冷蔵室11内を循環し、比較的温度の高い冷気B’となって冷蔵室11の奥方に戻ってくる。
【0070】
そして、この冷気B’は前記冷気A’に追従するかたちで混ざり合い、混合冷気C’として左右両方から部材42の中央付近でぶつかり合い、冷蔵室11の前方へ向かう気流となる。これにより、冷蔵室11内の空気は絶えず攪拌されるため、冷蔵室11内の温度分布を略均一に維持できるとともに、冷蔵室11内の水分が結露して部材42の表面に水滴が付着した場合でも、冷気A’又は混合冷気C’により水滴の蒸発が促進され、冷蔵室11内を適度な湿度に維持して乾燥を防止できる。
【0071】
尚、図15における吐出部材9は、別物にて部材42に爪嵌合にて取り付けてあるが、前記吐出部材9と同様の形状を背面板70に一体に吐出部として形成し、中央方向に冷気の一部を吐き出しても同様の効果が得られる。ただし、この場合、背面板70の前記吐出部材9に対向する壁面は金型構造上から孔が開くことになるが、その後方には内箱2bがあり、塞がれているため性能的にはさほど影響はない。しかしながら、部材42は前記吐出部材9に相当する前記吐出部材9に相当する前記吐出部の中央側端部までの大きさとなり、冷熱の放出量としては、微小ながら減ることとなる。
【0072】
更に、部材42の表面に形成された凸部42jにより、部材42の強度の補強、部材42の表面に水滴が保持されることによる水滴の流下防止、部材42の表面積の増加による部材42からの冷熱の蓄熱及び放出能力の向上等が図られることついては、上記第1の実施形態と同様である。
【0073】
尚、本発明において、冷気通路を通る冷気による冷熱の一部が部材を介して貯蔵室内に放出されるとは、冷気通路を通る冷気の一部が部材から吸熱して該部材を冷却し、前記部材が貯蔵室内から吸熱して貯蔵室内を冷却することを意味する。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によると、貯蔵室に冷気を導く冷気通路の少なくとも一部をなす熱伝導性を有する部材を設け、該部材から冷気通路内を流通する冷気による冷熱を貯蔵室に放出させて貯蔵室を冷却するとともに、前記部材に設けた指向性吐出部により前記部材の表面に沿って前記冷気の少なくとも一部を前記部材の表面に沿って流れるようにしたので、冷気通路内と貯蔵室内との温度差が大きい際等に結露により部材に付着する水滴を速やかに解消できるとともに、貯蔵室内を均一に効率よく冷却することができる。
【0075】
また本発明によると、部材の表面に凹凸部を形成したことにより、結露による水滴は流下せずに凹凸部の上部に貯溜或は表面張力により保持される。そして、保持された水滴が蒸発することにより、簡単に加湿し貯蔵室内の乾燥を防止することができる。更に、保湿部材の強度を補強するとともに、表面積を増加させて蓄冷や冷熱の放出量が増加し、冷却効率の向上を図ることができる。
【0076】
また本発明によると、熱伝導性を有する部材により捉えきれなかった水滴を捕集部により捕集するので、貯蔵室からの水分の流出を更に防止し、貯蔵室内の乾燥をより防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る冷蔵庫の側面断面図である。
【図2】その冷蔵庫の冷蔵室の正面図である。
【図3】その冷蔵庫の要部詳細図である。
【図4】その冷蔵庫の水平断面図である。
【図5】その冷蔵庫の要部詳細図である。
【図6】その冷蔵庫の部材を示す斜視図である。
【図7】その部材の他の例を示す正面図である。
【図8】その部材の要部側面断面図である。
【図9】その部材の更に他の例を示す正面図である。
【図10】その部材の上端における要部断面図である。
【図11】その部材の下端における要部断面図である。
【図12】その部材の下端における他の例の要部断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る冷蔵庫の冷蔵室の正面図である。
【図14】その冷蔵庫の水平断面図である。
【図15】その冷蔵庫の要部詳細図である。
【符号の説明】
1 冷蔵庫
2a 外箱
2b 内箱
3、4、5、6 断熱扉
7、8、9 吐出部材
11 冷蔵室
12 野菜室
13 冷凍室
14 氷温室
20 圧縮機
21、25 冷却器
22、26、29 送風機
23、27、28、30 冷気通路
28a 中央通路
28b 側方通路
28c、36 断熱部材
42 部材
51 照明灯
53 照明カバー
54 天井ダクト
61、62 除霜用ヒータ
70 背面板
Claims (8)
- 貯蔵物を収納する貯蔵室と、前記貯蔵室に流入する冷気を生成する冷却器と、前記貯蔵室と連通して設けられ前記冷気を前記貯蔵室に導く冷気通路と、該冷気通路の少なくとも一部をなし、熱伝導性を有して前記冷気通路内を流通する冷気による冷熱の少なくとも一部を前記貯蔵室内に放出するとともに、該冷熱を蓄冷して所定の時期に溜めた冷熱を前記貯蔵室内に放出する熱伝導性を有する部材と、前記貯蔵室に導かれる前記冷気の少なくとも一部が前記部材の前記貯蔵室側の表面に沿って流れるようにする指向性吐出部とを備え、前記指向性吐出部の全域から冷気が同時に吐出することを特徴とする冷蔵庫。
- 前記指向性吐出部に冷気を吐出する孔部を設け、前記孔部の形状は、その先端が前記部材側に向くように傾いていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
- 前記部材は、前記貯蔵室側の表面に生じた水滴を保持する凹部又は凸部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷蔵庫。
- 前記部材は、一方の面に凹部、他方の面に凸部を有し、これら凹部及び凸部を部材表面の表裏で相対するように設けたことを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
- 前記凹部又は凸部は水平方向に延びて形成されることを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
- 前記指向性吐出部を前記部材の中央部付近に設け、前記指向性吐出部に設けた孔部から前記部材の前記貯蔵室側の表面に沿って冷気が前記部材の左右方向に向かって同時に吐出するようにしたことを特徴とする特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記指向性吐出部を前記部材の周縁部の互いに対向する位置に少なくとも2つ以上設け、前記指向性吐出部に設けた孔部から前記部材の前記貯蔵室側の表面に沿って冷気が前記部材の中央方向に向かって同時に吐出するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記部材の下方に前記部材の表面を流下する水滴を捕集する捕集部を前記貯蔵室内に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の冷蔵庫。
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