JP3582270B2 - ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構 - Google Patents

ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2個の部材を着脱可能に締結させるロック機構及び電子機器の蓋体部を本体部に対して閉蓋状態に締結させる電子機器の蓋開閉機構に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2個の部材を着脱可能に締結させるロック機構が提案されており、ま、た、このロック機構の応用として、電子機器の蓋体部をこの電子機器の本体部に対して閉蓋状態に締結させる電子機器の蓋開閉機構が提案されている。
【0003】
このような蓋体部を有する電子機器としては、テープカセットを記録媒体として用いるテープレコーダやテーププレーヤ、また、ディスクカートリッジを記録媒体として用いるディスクレコーダやディスクプレーヤ等がある。すなわち、このような電子機器は、図17に示すように、蓋体部102を、図17中矢印aで示すように、開蓋状態とし、記録媒体を本体部101に対して装着させた後、蓋体部102を閉蓋することにより、記録媒体の本体部101からの脱落を防止するように構成されている。
【0004】
このような電子機器においては、蓋体部102は、後縁側部分を支軸103を介して本体部101に対して回動可能に支持されている。そして、この蓋体部102は、閉蓋状態にあるとき、蓋開閉機構を構成するスライダ105により、前縁部分を保持されて、本体部101に対して締結される。
【0005】
スライダ105は、本体部101の前縁部に沿ってスライド可能に取付けられており、図示しない付勢部材により、図17中矢印gで示すように、一方方向に弾性付勢されている。このスライダ105は、蓋体部102の前縁部分に臨む上縁部に、鈎状のロック爪106を有している。そして、このスライダ105には、操作摘部104が設けられている。この操作摘部104は、本体部101の前面部に設けられた開口部を介して、この本体部101の外方側に臨んでいる。
【0006】
そして、蓋体部102の前縁部分には、スライダ105の上縁部に臨む下面部に、被ロック片107が設けられている。蓋体部102が閉蓋状態のとき、スライダ105が付勢部材の付勢力に従ってスライドされると、ロック爪106は、被ロック片107に係合して、蓋体部102を閉蓋状態に保持する。すなわち、この蓋開閉機構においては、蓋体部102を開蓋状態とするだけで、スライダ105が付勢部材によってスライドされるので、この蓋体部102が閉蓋状態に保持される。
【0007】
そして、図17中矢印bで示すように、手指が操作摘部104に押接され、この手指により、図17中矢印cで示すように、操作摘部104を介して、スライダ105が付勢部材の付勢力に抗してスライドされると、ロック爪106の被ロック片107に対する係合が解除され、蓋体部102は、開蓋が可能な状態となされる。
【0008】
そして、このような電子機器における蓋開閉機構においては、図18に示すように、蓋体部102が開蓋状態にあるときに、スライダ105を付勢部材による付勢方向に抗してスライドされた位置に保持しておくためのストッパレバー111が設けられている。すなわち、このストッパレバー111は、基端側を本体部101に設けられた支軸110に回動可能に支持され、先端側をスライダ105の端部に対向させている。このストッパレバー111の先端側が対向するスライダ105の端部は、このスライダ105が付勢部材による付勢力に従ってスライドするときの前端部となる側の端部である。このストッパレバー111は、図示しない付勢部材により、図18中矢印eで示すように、先端側を上方側、すなわち、蓋体部102の側に移動させる方向に回動付勢されている。このストッパレバー111は、先端側にスリット113を有し、このスリット113に、本体部101に設けられた支軸112を挿通させることにより、回動範囲を規制されている。そして、このストッパレバー111の先端側の下方側、すなわち、蓋体部102に臨む側の反対側には、係合突片114が、このストッパレバー111の先端側に向けて突設されている。
【0009】
スライダ105は、スリット109を有し、このスリット109に、本体部101に設けられた支軸108を挿通させることにより、本体部101に対してスライド可能に支持されている。このスリット109の幅は、支軸108の直径に等しくなされている。スリット109の幅を支軸108の直径に等しくするのは、スライダ105の上下方向の移動を阻止して、閉蓋状態に保持された蓋体部102の本体部101に対する接離方向のガタを防止するためである。
【0010】
スライダ105が付勢部材の付勢力に抗してスライドされ、ロック爪106の被ロック片107に対する係合が解除されて蓋体部102が開蓋されたとき、ストッパレバー111は、付勢部材の付勢力に従って回動し、係合突片114をスライダ105の端部に対向させる状態となされる。この状態で、スライダ105に対するスライド操作が解除されると、このスライダ105は、付勢部材の付勢力に従って初期位置に戻ろうとするが、端部を係合突片114に当接させた位置において停止される。このように、スライダ105の端部が係合突片114に当接した状態においては、ロック爪106は、被ロック片107に対する係合を解除させる位置となされている。
【0011】
そして、蓋体部102が閉蓋されるときには、被ロック片107は、スライダ105が端部を係合突片114に当接させた位置で停止していることから、ロック爪106に当接することなく、ストッパレバー111の先端側に当接する。そして、図18中矢印dで示すように、さらに蓋体部102を閉蓋させると、被ロック片107は、ストッパレバー111の先端側を押圧して、このストッパレバー111を、図18中矢印fで示すように、付勢部材の付勢力に抗して回動させる。すると、ストッパレバー111の係合突片114は、スライダ105の端部より下方側に外れて、このスライダ105の付勢部材の付勢力に従ったスライドを可能とする。このとき、スライダ105は、付勢部材の付勢力に従ってスライドし、ロック爪106を被ロック片107に係合させる。ストッパレバー111は、係合突片114をスライダ105の下縁部に係合させることにより、付勢部材の付勢力に抗して回動された位置において保持される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のような電子機器の蓋開閉機構においては、蓋体部102を閉蓋させるとき、ストッパレバー111が被ロック片107によって押圧されて回動されている途中で、このロック片107による押圧力が停止されてしまうと、図18に示すように、係合突片114の先端部がスライダ105の端部の下側の隅の円弧状部(R部)115に当接した状態で、これら係合突片114の先端部及びスライダ105の端部下側隅の円弧状部115間の動摩擦係数が大きいために、スライダ105もストッパレバー111も停止してしまう場合がある。
【0013】
すなわち、蓋体部102の閉蓋操作の途中で、この蓋体部102が特定の位置に至ったときに、この閉蓋操作が中止されると、スライダ105、ストッパレバー111及び蓋体部102がそれぞれの位置で停止してしまい、しかも、ロック爪106が被ロック片107に完全には係合していないという、いわば疑似ロックの状態が生ずる。このような疑似ロックの状態においては、蓋体部102の閉蓋がなされたとの誤解のもとに、記録媒体を用いた情報信号の記録再生動作が開始され、このような記録再生動作の続行中において、振動等により蓋体部102が開蓋してしまうという事故が生ずる虞れがある。
【0014】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、2個の部材を着脱可能に締結させるロック機構において、不完全な締結状態のままで停止してしまう疑似ロックの状態が生じないようになされたロック機構及びこのロック機構を電子機器の本体部と蓋体部との締結のために応用した電子機器の蓋開閉機構の提供という課題を解決しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、本発明に係るロック機構及び電子機器の蓋開閉機構は、第1の部材上にスライド可能に配設され付勢部材により一方方向に弾性付勢されこの付勢部材の付勢力によってスライドされたときに第2の部材に係合してこの第2の部材を第1の部材に対してロックさせるスライダと、第1の部材上に移動可能に配設されスライダに当接してこのスライダを第2の部材への係合を解除する位置において停止させるとともにこのスライダのスライド可能な方向に略々直交する方向に移動されることによりスライダに対する当接を解除してこのスライダの第2の部材に係合する位置へのスライドを可能とするストッパとを備え、スライダは、少なくともストッパに当接される側において、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動が可能となされていることとしたものである。
【0016】
また、本発明は、上記ロック機構において、スライダは、第2の部材に係合する位置にあるときには、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動を阻止されることとしたものである。
【0017】
そして、本発明に係る電子機器の蓋開閉機構は、電子機器の本体部上にスライド可能に配設され付勢部材により一方方向に弾性付勢されこの付勢部材の付勢力によってスライドされたときに電子機器の蓋体部に係合してこの蓋体部を本体部に対して閉蓋状態にロックさせるスライダと、本体部上に移動可能に配設されスライダに当接してこのスライダを蓋体部への係合を解除する位置において停止させるとともにこのスライダのスライド可能な方向に略々直交する方向に移動されることによりスライダに対する当接を解除してこのスライダの蓋体部に係合する位置へのスライドを可能とするストッパとを備え、スライダは、少なくともストッパに当接される側において、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動が可能となされていることとしたものである。
【0018】
また、本発明は、上記電子機器の蓋開閉機構において、スライダは、蓋体部に係合する位置にあるときには、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動を阻止されることとしたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0020】
本発明に係るロック機構は、第1の部材及び第2の部材の2個の部材を着脱可能に締結させる機構である。そして、この実施の形態は、本発明に係るロック機構を、第2の部材となる電子機器の蓋体部を第1の部材となるこの電子機器の本体部に対して閉蓋状態に締結させる電子機器の蓋開閉機構として構成したものである。
【0021】
本体部とこの本体部に対して開閉操作される蓋体部とを有する電子機器としては、図1に示すように、テープカセットを記録媒体として用いるテープレコーダやテーププレーヤ、また、ディスクカートリッジを記録媒体として用いるディスクレコーダやディスクプレーヤ、さらに、メモリカード(ICカード)を記録媒体として用いる記録再生装置等がある。この実施の形態においては、電子機器は、記録媒体としてテープカセットを用いるテーププレーヤであることとしている。
【0022】
このテーププレーヤは、図4に示すように、蓋体部2を、図4中矢印Bで示すように、開蓋状態とし、テープカセット201を本体部1に対して装着させた後、蓋体部2を閉蓋することにより、テープカセット201の本体部1からの脱落を防止するように構成されている。
【0023】
テープカセット201は、薄い筐体状のカセット内に、一対のテープリールが回転可能に収納されて構成されている。テープリールの一方のリールハブには、記録テープの一端側が固定されている。この記録テープは、一方のテープリールに巻回されるとともに、他端側を他方のテープリールのリールハブに固定されている。各テープリールのリールハブの中央の係合孔202,203は、カセットの主面部に設けられた透孔204,205を介して、外方側に臨まされている。カセットの前縁部には、記録テープの各テープリール間を渡る部分を外方側に臨ませるための開口部が設けられている。また、カセットの主面部には、位置決め孔206,207、このカセット内にテーププレーヤのキャプスタン軸が進入するための透孔208,209が設けられている。さらに、カセットの後縁部には、いわゆる誤消去防止のための、切除可能な爪部210,211が設けられている。
【0024】
そして、このようなテープカセットが装着される本体部1に設けられたテープカセット装着部は、本体部1に収納されたシャーシ上に構成され、蓋体部2が閉蓋されるとこの蓋体部2により覆われ、蓋体部2が開蓋されると外方側に臨まされる。このテープカセット装着部は、カセットの位置決め孔206,207に嵌合してこのカセットの位置決めをする位置決めピン15,16を有している。また、このテープカセット装着部は、各テープリールのリールハブの係合孔202,203に嵌合するリール軸13,14を有している。これらリール軸13,14は、本体部1に内蔵されたモータの駆動力によって回転操作される。また、このテープカセット装着部は、透孔208,209に嵌入するキャプスタン軸17を有している。このキャプスタン軸17は、本体部1に内蔵されたモータの駆動力によって回転操作される。そして、このテープカセット装置部には、このテープカセット装着部に装着されたテープカセット201の前縁部に対向する位置に、磁気ヘッド19及びピンチローラ18が設けられている。これら磁気ヘッド19及びピンチローラ18は、支持板20に取付けられ、テープカセット装着部に装着されたテープカセット201に対して進退可能となされている。
【0025】
このテープカセット装着部にテープカセット201が装着されると、位置決めピン15,16がカセットの位置決め孔206,207に嵌合してこのカセットの位置決めをする。また、各テープリールのリールハブの係合孔202,203にリール軸13,14が対応して嵌合する。各リール軸13,14は、モータにより回転操作されると、嵌合しているテープリールを回転操作する。そして、キャプスタン軸17は、透孔208,209に嵌入する。このとき、記録テープの各テープリール間を渡る部分は、このキャプスタン軸17とピンチローラ18との間に位置する状態となる。ピンチローラ18及び磁気ヘッド19をテープカセット側に移動させると、記録テープの各テープリール間を渡る部分は、キャプスタン軸17とピンチローラ18とにより挟持されるとともに、磁気ヘッド19に接触される状態となる。この状態において、キャプスタン軸17が回転操作されると、磁気テープが送り操作され、この磁気テープに磁気ヘッドが摺接する状態となって、この磁気ヘッドによる磁気テープに対する情報信号の記録再生が行われる。
【0026】
そして、このテーププレーヤにおいては、蓋体部2は、図1に示すように、後縁側部分を支軸3を介して本体部1に対して回動可能に支持されている。この蓋体部2は、支軸3にコイル部を巻回させた捻りコイルバネ4により、図1中矢印Aで示すように、開蓋方向に回動付勢されている。そして、この蓋体部2は、閉蓋状態にあるときには、図2に示すように、蓋開閉機構を構成するスライダ7により、前縁部分を保持されて、本体部1に対して締結される。
【0027】
スライダ7は、図6に示すように、本体部1の前縁部にネジ22,23により取付けられた支持板21上を、本体部1の前縁部に沿ってスライド可能に支持されている。すなわち、このスライダ7は、スリット25,27を有し、これらスリット25,27に、支持板21上に設けられた支軸24,26を挿通させることにより、本体部1に対してスライド可能に支持されている。これらスリット25,27の幅は、支軸24,26の直径に略々等しくなされている。
【0028】
スライダ7は、付勢部材となる引っ張りコイルバネ10により、図6中矢印Dで示すように、一方方向に弾性付勢されている。この引っ張りコイルバネ10は、一端側が支持板21に設けられた掛止片11に掛止されており、他端側がスライダ7に設けられた掛止片12に掛止されている。このスライダ7は、蓋体部2の前縁部分に臨む上縁部に、鈎状のロック爪8を有している。
【0029】
蓋体部2の前縁部分には、スライダ7の上縁部に臨む下面部に、被ロック片9が設けられている。蓋体部2が閉蓋状態のとき、スライダ7が引っ張りコイルバネ10の付勢力に従ってスライドされると、ロック爪8は、被ロック片9に係合して、蓋体部2を閉蓋状態に保持する。この蓋開閉機構においては、蓋体部2を開蓋状態とするだけで、スライダ7が引っ張りコイルバネ10によってスライドされるので、この蓋体部2が閉蓋状態に保持される。
【0030】
そして、このスライダ7は、操作板5に連結されている。この操作板5は、本体部1の前面部にスライド可能に取付けられている。この操作板5は、本体部1の前面部に沿う平板状部分と、本体部の一側側前方部及び他側側前方部に沿う一対の側板部とにより、コ字状に形成されている。そして、この操作板5は、本体部1の前面部に沿う平板状部分に長穴5aを有している。この長穴5aからは、本体部1の前面部に設けられた長円形の突起部6が外方側に臨んでいる。この突起部6上には、このテーププレーヤの種々の動作を実行させるための操作ボタンを設けることができる。
【0031】
図3において矢印Fで示すように、手指により操作板5がスライドされ、この操作板5のスライドに追従してスライダ7が引っ張りコイルバネ10の付勢力に抗してスライドされると、ロック爪8の被ロック片9に対する係合が解除され、蓋体部2は、開蓋が可能な状態となされる。
【0032】
そして、この蓋開閉機構においては、図6に示すように、蓋体部2が開蓋状態にあるときに、スライダ7を引っ張りコイルバネ10による付勢方向に抗してスライドされた位置に保持しておくためのストッパとなるストッパレバー28が設けられている。
【0033】
すなわち、このストッパレバー28は、基端側を支持板21に設けられた支軸29に回動可能に支持され、先端側をスライダ7の端部に対向させている。このストッパレバー28の先端側が対向するスライダ7の端部は、このスライダ7が引っ張りコイルバネ10による付勢力に従ってスライドするときの前端部となる側の端部である。このストッパレバー28は、引っ張りコイルバネ35により、図7において矢印Eで示すように、先端側を上方側、すなわち、蓋体部2の側に移動させる方向に回動付勢されている。引っ張りコイルバネ35は、一端側を支持板21に設けられた掛止片37に掛止させ、他端側をストッパレバー28に設けられた掛止片36に掛止させている。このストッパレバー28は、先端側にスリット32を有し、このスリット32に、支持板21に設けられた支軸31を挿通させることにより、先端側を下方に移動させる方向の回動範囲を規制されている。また、このストッパレバー28は、図5に示すように、基端側に突起部39を有し、この突起部39を支持板21に設けられた当接片30に当接させることにより、先端側を上方に移動させる方向の回動範囲を規制されている。
【0034】
また、ストッパレバー28の先端側の下方側、すなわち、蓋体部2に臨む側の反対側には、係合突片33が、このストッパレバー28の先端側に向けて突設されている。このストッパレバー28は、図5に示すように、係合突片33をスライダ7の端部に当接させてこのスライダ7を被ロック片9へのロック爪8の係合を解除させる位置において停止させるとともに、図6に示すように、引っ張りコイルバネ35の付勢力に抗して回動操作されると、係合突片33をスライダ7のスライド可能な方向に略々直交する方向に移動させ、スライダ7に対する当接を解除し、このスライダ7のロック爪8を被ロック片9に係合させる位置へのスライドを可能とする。
【0035】
そして、スライダ7は、図11に示すように、図11中矢印Lで示すスリット27の幅が図11中矢印Mで示す支軸26の直径よりもやや広くなされていることにより、上記ストッパレバー28に当接される側において、スライド可能な方向に対して略々直交する方向、すなわち、上下方向への微動が可能となされている。このようなスライダ7の上下方向への微動可能な距離は、スライダ7の端部の下側の隅の円弧状部(R部)34の曲率半径程度となされている(ただし、スライダ7の上下方向への微動可能な距離は、円弧状部34と係合突片33との間の動摩擦係数に拠って異なるので、この点については後述する)。
【0036】
この蓋開閉機構において、スライダ7が引っ張りコイルバネ10の付勢力に抗してスライドされ、ロック爪8の被ロック片9に対する係合が解除されて蓋体部2が捻りコイルバネ4の付勢力により開蓋したとき、ストッパレバー28は、図7に示すように、引っ張りコイルバネ35の付勢力に従って回動し、係合突片33をスライダ7の端部に対向させる状態となされる。この状態で、スライダ7に対するスライド操作が解除されると、このスライダ7は、引っ張りコイルバネ10の付勢力に従って初期位置に戻ろうとするが、端部を係合突片33に当接させた位置において停止される。このように、スライダ7の端部が係合突片33に当接した状態においては、ロック爪8は、被ロック片9に対する係合を解除させる位置となされている。
【0037】
そして、蓋体部2が閉蓋されるときには、被ロック片9は、図5に示すように、スライダ7が端部を係合突片33に当接させた位置で停止していることから、ロック爪8に当接することなく、ストッパレバー28の先端側に当接する。そして、図5中矢印Cで示すように、さらに蓋体部2を閉蓋させると、被ロック片9は、ストッパレバー28の先端側を押圧して、このストッパレバー28を、図8において矢印Hで示すように、引っ張りコイルバネ35の付勢力に抗して回動させる。すると、ストッパレバー28の係合突片33は、図10に示すように、スライダ7の端部より下方側に外れて、このスライダ7の引っ張りコイルバネ10の付勢力に従ったスライドを可能とする。このとき、スライダ7は、図10中矢印Kで示すように、引っ張りコイルバネ10の付勢力に従ってスライドし、図6に示すように、ロック爪8を被ロック片9に係合させる。ストッパレバー28は、係合突片33をスライダ7の下縁部に係合させることにより、引っ張りコイルバネ35の付勢力に抗して回動された位置において保持される。
【0038】
そして、この蓋開閉機構においては、蓋体部2を閉蓋させるとき、ストッパレバー28が被ロック片9によって押圧されて回動されている途中で、このロック片9による押圧力が停止されてしまうと、図9に示すように、係合突片33の先端部がスライダ7の端部の下側の隅の円弧状部(R部)34に当接した状態で、スライダ7もストッパレバー28も停止しようとする。このとき、スライダ7は、引っ張りコイルバネ10による付勢力によって、図9中矢印Jで示すように、ストッパレバー28に臨む端部の側の部分を、このスライダ7のスライド可能な方向に直交する方向である上方側に微動させ、係合突片33の先端部を乗り越えるようにして、引っ張りコイルバネ10による付勢力に従ってスライドする。
【0039】
スライダ7とストッパレバー28の係合突片33との間に生ずる力は、スライダ7の端部が係合突片33に当接しているときにおいては、図13に示すように、引っ張りコイルバネ10によるスライダ7のスライド方向の力Nであり、この力Nは、スライダ7が係合突片33に与える垂直分力Oとスライダ7が係合突片33に対して滑ろうとする分力Pとに分解できる。なお、この分力Pは、スライダ7の端部38が円弧状となされていることによって生じており、図14において破線で示すように、スライダ7の端部がこのスライダ7のスライド方向に垂直な直線状である場合には、生じない。
【0040】
そして、係合突片33がスライダ7の端部の下方側に移動し円弧状部34に当接するようになると、図15に示すように、引っ張りコイルバネ10によるスライダ7のスライド方向の力Nの分力O及び分力Pについては、スライダ7が係合突片33に与える垂直分力Oが小さくなり、スライダ7が係合突片33に対して滑ろうとする分力Pが大きくなる。ここで、係合突片33の先端部とスライダ7の円弧状部34との間の動摩擦係数をμとすると、
μO<P ・・・(第1式)
が成立したときに、スライダ7の端部38の側の部分は、係合突片33に対して滑りながらこの係合突片33の斜め上方側に移動し、この係合突片33を乗り越えて、引っ張りコイルバネ10の付勢力によってスライドされる。
【0041】
ここで、分力Oの方向が力Nの方向に対してなす角度をθとすると、
O=Ncosθ ・・・(第2式)
P=Nsinθ ・・・(第3式)
であり、これらを上記の(第1式)に代入すると、
μNcosθ<Nsinθ ・・・(第4式)
μcosθ<sinθ ・・・(第6式)
μ<(sinθ)/(cosθ) ・・・(第7式)
μ<tanθ ・・・(第8式)
となる。すなわち、分力Oの方向が力Nの方向に対してなす角度θが上記の(第8式)成立させる角度となったときに、スライダ7の係合突片33に対する乗り越えが始まる。
【0042】
そして、上記の(第8式)が成立した状態において、図16に示すように、スライダ7の円弧状部34の下端部より係合突片33の上端部までの距離(高さ距離)を距離Qとすると、スライダ7の上方側への微動可能距離は、この距離Q以上である必要がある。ここで、円弧状部34を中心Rを中心とする半径rの円弧とすると、この円弧状部34の下端部よりこの円弧状部34と係合突片33との接点までの距離(高さ距離)Tは、
T=r(1−sinθ) ・・・(第9式)
である。同様に、係合突片33の先端部を中心Sを中心とする半径rの円弧とすると、この係合突片33の上端部よりこの係合突片33と円弧状部34との接点までの距離(高さ距離)Q−Tは、
Q−T=r(1−sinθ) ・・・(第10式)
である。したがって、距離Qは、
Q=(r+r)(1−sinθ) ・・・(第11式)
となる。ここで、r=r=rならば、
Q=2r(1−sinθ) ・・・(第12式)
となる。
【0043】
上記(第8式)中の動摩擦係数μは、鉄と銅との間で1.4で、この場合には、(第8式)が成立する角度θは、54°程度となる。この角度θ(=54°)を(第12式)に代入し、r(=r=r)を0.5mmとすると、距離Qは、約0.2mmとなる。また、(第8式)中の動摩擦係数μは、鋳鉄と軟鉄との間では0.2で、この場合には、(第8式)が成立する角度θは、11°程度となる。この角度θ(=11°)を(第12式)に代入し、r(=r=r)を0.5mmとすると、距離Qは、約0.8mmとなる。なお、スライダ7及びストッパレバー28は、ステンレスによっても形成することができ、この場合にも、ステンレスについての動摩擦係数μに相当する角度θを(第8式)より求め、(第11式)中のr,r、または、(第12式)中のrを決定して、これら(第11式)、または、(第12式)に代入すれば、距離Qを求めることができる。
【0044】
上述のように、この蓋開閉機構においては、蓋体部2の閉蓋操作の途中で、この蓋体部2が特定の位置に至ったときにこの閉蓋操作が中止されても、スライダ7、ストッパレバー28及び蓋体部2がそれぞれの位置で停止し、かつ、ロック爪8が被ロック片9に完全には係合していないという、いわば疑似ロックの状態が生ずることがない。
【0045】
そして、スライダ7に設けられるスリット27は、図12に示すように、蓋体部2を閉蓋状態にロックした状態において支軸26が挿通されている部分の幅をこの支軸26の直径に等しい幅Mとし、蓋体部2を開蓋可能な状態としたときに支軸26が挿通されている部分の幅をこの支軸26の直径よりも広い幅Lとして形成してもよい。この場合には、スライダ7は、蓋体部2を開蓋可能としている状態においては、上述した実施の形態と同様に、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動が可能となされている。そして、この場合には、スライダ7は、蓋体部2を閉蓋状態にロックする位置にあるときには、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動を阻止される。したがって、この場合には、閉蓋状態に保持された蓋体部2の本体部1に対する接離方向のガタが防止される。
【0046】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係るロック機構は、第1の部材上にスライド可能に配設され一方方向に弾性付勢されこの付勢力によってスライドされたときに第2の部材に係合してこの第2の部材を該第1の部材に対してロックさせるスライダと、第1の部材上に移動可能に配設されスライダに当接してこのスライダを第2の部材への係合を解除する位置において停止させるとともにこのスライダのスライド可能な方向に略々直交する方向に移動されることによりスライダに対する当接を解除してこのスライダの第2の部材に係合する位置へのスライドを可能とするストッパとを備えている。
【0047】
そして、上記スライダは、少なくとも上記ストッパに当接される側において、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動が可能となされている。そのため、ストッパがスライダに対する当接を解除する寸前の状態でこれらストッパ及びスライダが停止してしまう疑似ロックの状態が生じようとするとき、このスライダがストッパから逃げる方向に微動し、疑似ロックの状態の発生が防止される。
【0048】
すなわち、本発明は、2個の部材を着脱可能に締結させるロック機構において、不完全な締結状態のままで停止してしまう疑似ロックの状態が生じないようになされたロック機構及びこのロック機構を電子機器の本体部と蓋体部との締結のために応用した電子機器の蓋開閉機構を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るロック機構及び電子機器の蓋開閉機構を適用した電子機器の構成を一部を破断して示す斜視図である。
【図2】上記電子機器の要部の構成を一部を破断して示す斜視図である。
【図3】上記電子機器においてロック機構が操作された状態における要部を一部を破断して示す斜視図である。
【図4】上記電子機器において蓋体が開蓋された状態を示す斜視図である。
【図5】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構の要部の構成を示す正面図である。
【図6】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構が操作された状態を示す正面図である。
【図7】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構が操作される前の状態を示す要部正面図である。
【図8】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構において操作が開始された状態を示す要部正面図である。
【図9】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構において操作が続行中の状態を示す要部正面図である。
【図10】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構において操作が完了された状態を示す要部正面図である。
【図11】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構のスライダの要部の構成を示す要部正面図である。
【図12】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構のスライダの要部の構成の他の例を示す要部正面図である。
【図13】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構におけるスライダとストッパとの初期状態における関係を示す要部拡大正面図である。
【図14】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構におけるスライダとストッパとの操作が開始されたときの関係を示す要部拡大正面図である。
【図15】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構におけるスライダとストッパとの操作途中における関係を示す要部拡大正面図である。
【図16】上記ロック機構及び電子機器の蓋開閉機構におけるスライダとストッパとの操作途中における関係及び本発明の成立条件を示す要部拡大正面図である。
【図17】従来のロック機構及び電子機器の蓋開閉機構が適用された電子機器の構成を示す斜視図である。
【図18】従来のロック機構及び電子機器の蓋開閉機構の要部の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 本体部、2 蓋体部、7 スライダ、10 引っ張りコイルバネ、28 ストッパ

Claims (4)

  1. 第1の部材上にスライド可能に配設され、付勢部材により一方方向に弾性付勢され、この付勢部材の付勢力によってスライドされたときに第2の部材に係合してこの第2の部材を該第1の部材に対してロックさせるスライダと、
    上記第1の部材上に移動可能に配設され、上記スライダに当接してこのスライダを上記第2の部材への係合を解除する位置において停止させるとともに、このスライダのスライド可能な方向に略々直交する方向に移動されることにより、該スライダに対する当接を解除してこのスライダの該第2の部材に係合する位置へのスライドを可能とするストッパとを備え、
    上記スライダは、少なくとも上記ストッパに当接される側において、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動が可能となされていることとなされた
    ロック機構。
  2. スライダは、第2の部材に係合する位置にあるときには、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動を阻止されることとなされた
    請求項1記載のロック機構。
  3. 電子機器の本体部上にスライド可能に配設され、付勢部材により一方方向に弾性付勢され、この付勢部材の付勢力によってスライドされたときに該電子機器の蓋体部に係合してこの蓋体部を該本体部に対して閉蓋状態にロックさせるスライダと、
    上記本体部上に移動可能に配設され、上記スライダに当接してこのスライダを上記蓋体部への係合を解除する位置において停止させるとともに、このスライダのスライド可能な方向に略々直交する方向に移動されることにより、該スライダに対する当接を解除してこのスライダの該蓋体部に係合する位置へのスライドを可能とするストッパとを備え、
    上記スライダは、少なくとも上記ストッパに当接される側において、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動が可能となされていることとなされた
    電子機器の蓋開閉機構。
  4. スライダは、蓋体部に係合する位置にあるときには、スライド可能な方向に対して略々直交する方向への微動を阻止されることとなされた
    請求項3記載の電子機器の蓋開閉機構。
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